説明

合成樹脂製の押し出しブロー成形容器と、その製造方法

【課題】容器内に残った内容物を効率的に注出することができる新規な合成樹脂製容器を提供する。
【解決手段】本発明は、底部5を2つに分割するようにパーティングラインPLが形成された合成樹脂製の押し出しブロー成形ボトル1であって、パーティングラインPLを、底部5の二等分線L0に対して偏心させている。これにより、底部壁内面は、必然的に、パーティングラインPLの偏り側が厚肉になると共に、パーティングラインPLの偏り側から遠ざかるに従って薄肉になるように偏肉する。このため、底部壁内面5fは、必然的に、パーティングラインPLの偏り側から遠ざかるに従って緩やかに傾斜する面となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、吸上げチューブ備えたポンプを装着して使用する合成樹脂製の押し出しブロー(ダイレクトブロー)成形容器と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸上げチューブを備えたポンプを装着して使用する容器には、内容物を無駄なく注出させることを目的として、容器の底部隅に傾斜を付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−37476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した構成の容器では、内容物が残り少なくなったときに容器そのものを傾けなければならない。このため、ポンプが存在するにもかかわらず、使用者に煩雑な操作を強いることになる。
【0004】
また、かかる構成の容器は、底部隅そのものを傾斜させていることから、従来と同様の接地面積を確保しようとすると、容器の横幅を広くする必要が生じる。このように、容器の横幅が広くなると、流通経路に載せた場合や、商品として陳列する場合において不利である。
【0005】
本発明の目的とするところは、容器の取り扱いを煩雑化させることなく、容器内に残った内容物を効率的に吐出することができる新規な合成樹脂製の押し出しブロー成形容器と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明である、合成樹脂製の押し出しブロー成形容器は、自立するための接地面を備えた底部に、この底部を2つに分割するようにパーティングラインが形成された合成樹脂製の押し出しブロー成形容器であって、前記パーティングラインが、前記底部の二等分線に対して偏心したものであることを特徴とする。
【0007】
この場合、容器の底部は、後述のように、押し出しブロー成形に起因する作用効果により、必然的に、パーティングラインの偏り側が厚肉になると共に、パーティングラインの偏り側から遠ざかるに従って薄肉になるように偏肉する。このため、底部の内面はパーティングラインの偏り側から遠ざかるに従って緩やかに傾斜する面となる。
【0008】
即ち、本発明である、合成樹脂製の押し出しブロー成形容器によれば、充填された内容物は、パーティングラインの偏り側から遠ざかる側に集中することになる。
【0009】
また、本発明は、円筒形状の容器や、多角形状の容器に適用することができる。
【0010】
例えば、本発明に従う容器が円筒形状である場合、パーティングラインとしては、底部の直径部分の両端を基点として、これら両端に係る線分を基準としたとき、かかる両端から当該線分の中点に向かうに従って当該中点から遠ざかるように一方向に湾曲した曲線状のものや、この直径部分を平行移動させたときのその両端を基点として、当該直径部分と平行な直線状のものや、この直径部分を平行移動させたときのその両端を基点として、当該両端に係る線分の中点に向かうに従って当該中点から底部の二等分線よりも更に遠ざかるように湾曲する曲線状のもの、或いは、前記曲線に換えて複数の直線(V字状など)で構成したものなどが挙げられる。
【0011】
また、本発明に従う容器が多角形状である場合、特に、多角形状が偶数角であるときは、本発明に係る二等分線として、その対角を採用することが好ましいが、本発明に従えば、かかる二等分線として、対辺を二分する線分を採用してもよい。
【0012】
また、本発明の如く、押し出しブロー成形容器のパーティングラインを、一方向に湾曲した形状とすれば、底部の内面は、必然的に、底部の二等分線に対して偏心した最深部を有する、すり鉢状の形状となる。
【0013】
また、かかる押し出しブロー成形容器の製造方法としては、押出し機から押出されたパリソンを用いて、合成樹脂製容器をブロー成形するに際し、パリソンの底部を2つの型で挟むことで合成樹脂製容器を自立させるための接地面を形成するに際し、パリソンの底部を挟む2つの型の合わせ面を、合成樹脂製容器の底部の二等分線に対して偏心させる。こうした製造方法を採用すれば、底部の内面は、必然的に、パーティングラインの偏り側から遠ざかるに従って緩やかに傾斜する面となる。
【0014】
こうした製造方法を採用するにあたっては、前記合わせ面を曲線状にすることが好ましい。こうした製造方向を採用すれば、必然的に、底部の内面が、底部の二等分線に対して偏心した最深部を有する、すり鉢状に形成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明である、合成樹脂製の押し出しブロー成形容器によれば、底部の内面は、必然的に、パーティングラインの偏り側から遠ざかるに従って緩やかに傾斜する面となる。このため、充填された内容物は、パーティングラインの偏り側から遠ざかる側に集中することになる。従って、吸上げチューブの先端をパーティングラインの偏り側から遠い位置に配置すれば、容器そのものを傾けることなく、残った内容物を注出することができる。
【0016】
従って、本発明によれば、容器の取り扱いを煩雑化させることなく、容器内に残った内容物を効率的に注出することができる。
【0017】
また、本発明の如く、押し出しブロー成形容器のパーティングラインを、一方向に湾曲した形状とすれば、底部の内面は、必然的に、底部の二等分線に対して偏心した最深部を有する、すり鉢状の形状となる。この場合、残った内容物を効率的に集めることができる。
【0018】
また、本発明である、押し出しブロー成形容器によれば、パーティングラインを目視するだけで薄肉部の位置を判別できる。このため、吸上げチューブを組み付ける際の当該チューブの位置決めも容易に行うことができる。
【0019】
また、本発明の製造方法によれば、パリソンの底部を挟む2つの型の合わせ面を、合成樹脂製容器の底部の二等分線に対して偏心させることで、底部に対する占有面積が小さい型での延伸量が抑えられる一方で、底部に対する占有面積の大きい型での延伸量が大きくなる。このため、パーティングラインの偏り側から遠ざかるに従って緩やかに傾斜する底部の内面を容易に形作ることができる。
【0020】
従って、本発明の製造方法を用いれば、従来の成形機を用いて、型を変更するだけの簡単な作業で、本発明である容器を製造することができる。
【0021】
また、本発明の製造方法において、前記合わせ面を曲線状にすれば、底部の二等分線に対して偏心して内容物を効率的に集め易いすり鉢状の内面を容易に形作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明である、合成樹脂製容器を詳細に説明する。
【0023】
図1(a),(b)はそれぞれ、本発明の一形態である、合成樹脂製のダイレクトブローボトル(以下、「ボトル」という)1を採用したポンプ付きボトル10を一部断面で示す側面図及び、その底面図である。
【0024】
ボトル1は、円筒形であって、ポンプPが装着される口部壁2と、この口部壁2に肩部壁3を介して繋がる胴部壁4と、この胴部壁4を閉じる底部壁5とで形作られている。また、ボトル1は、その底部壁5に接地面5gを有し、ボトル1そのものを自立させることができる。
【0025】
底部壁5の内面(以下、「底部壁内面」という)5fは、図1(a)に示すように、口部壁2の内面2f、肩部壁3の内面3f及び胴部壁4の内面4fと共に、ボトル1の内側に、内容物を充填するための空間Rを形成する。
【0026】
本発明に従えば、ボトル1のパーティングラインPLを、底部壁5の二等分線Loに対して偏心させるが、本形態では、図1(b)に示すように、底部壁5の直径が底部壁5の二等分線Lo(=Lo')としてなる。このため、パーティングラインPLは、当該直径部分を通る二等分線Lo'に対して偏心している。
【0027】
また、本発明に従えば、ボトル1のパーティングラインPLは、底部壁5の二等分線Lo'に対して偏心させればよいが、本形態のパーティングラインPLは、図1(b)に示すように、底部壁5の最外縁と底部壁5の二等分線Lo'との交点P1,P2を基点として、交点P1,P2に係る線分の中点(本形態では、ボトル軸線O)を基準に、交点P1,P2から中点Oに向かうに従って当該中点Oから遠ざかるように一方向に湾曲した曲線状のものとなっている。
【0028】
この場合、底部壁内面5fは、後述のように、押し出しブロー成形に起因する作用効果により、必然的に、図1(b)に示すように、二等分線Lo'と直交する他の二等分線Lo''に沿って、パーティングラインPLの偏り側が厚肉(厚みt2)になると共に、パーティングラインの偏り側から遠ざかるに従って薄肉(厚みt1(>t2))になるように偏肉する。このため、底部壁内面5fは、図1(a)に示すように、必然的に、パーティングラインPLの偏り側から遠ざかるに従って緩やかに傾斜する面となる。
【0029】
特に、本形態の如く、パーティングラインPLを、一方向に湾曲した形状とすれば、底部壁内面5fは、必然的に、底部壁5の二等分線Lo'に対して偏心した最深部51を有する、すり鉢状の形状となる。
【0030】
即ち、本形態のボトル1によれば、充填された内容物は、パーティングラインPLの偏り側から遠ざかる側に集中することになる。なお、符号52は、接地面5g側に形成された底上げ部である。このため、本形態の接地面は、実質上環状を形成する。
【0031】
本形態のボトル1によれば、図1(a)に示すように、底部壁内面5fは、パーティングラインPLの偏り側から遠ざかるに従って緩やかに傾斜する面となる。このため、充填された内容物は、パーティングラインPLの偏り側から遠ざかる側の薄肉壁51に集中することになる。従って、吸上げチューブTの先端(以下、「チューブ先端」という)TeをパーティングラインPLの偏り側から遠い位置(薄肉壁51)に配置すれば、ボトル1そのものを傾けることなく、残った内容物を吐出することができる。
【0032】
従って、本形態によれば、ボトル1の取り扱いを煩雑化させることなく、ボトル1内に残った内容物を効率的に注出することができる。
【0033】
また、本形態の如く、ボトル1のパーティングラインPLを、一方向に湾曲した形状とすれば、底部壁内面5fは、必然的に、底部壁5の二等分線Lo'に対して偏心した最深部を有する、すり鉢状の形状となる。この場合、残った内容物を効率的に集めることができる。
【0034】
ところで、本形態のボトル1は、押し出しブロー成形ボトルである。
【0035】
通常の押し出しブロー成形ボトルの場合、底部5に形成されるパーティングラインPLは、底部壁5の二等分線Lo'と同一線上に存在するのに対し、本形態のボトル1は、上述のように、そのパーティングラインPLが、底部壁5の二等分線Lo'に対して偏心している。
【0036】
本形態のボトル1のように、パーティングラインPLが底部壁5の二等分線Lo'に対して偏心している場合、パーティングラインPLを目視するだけで薄肉壁51の位置を判別できる。このため、吸上げチューブTを組み付ける際の当該チューブ先端Teの位置決めも容易に行うことができる。
【0037】
ここで、ボトル1の製造方法の概略を説明する。図2は、ボトル1の製造にあたって用いられる合わせ型の要部を模式的に示す側面図である。
【0038】
ボトル1の製造にあたっては、押出し機から押出されたパリソンの底部を2つの型M1,M2で挟むと共に、当該パリソンを2つの型M1,M2で形作られた空間(キャビティ)に配置する工程と、この空間に配置されたパリソンの内部に空気を吹き込む工程とを有する。
【0039】
本形態のボトル1を押し出しブロー成形するにあたって用いられる、合わせ型M1,M2は、図2に示すように、互いを合せたときに形成されるパーティングラインPLが、底部壁5の二等分線Lo'に対して偏心する形状となる合わせ面F1,F2を有する。
【0040】
かかる製造方法を用いれば、パリソンの底部を挟む2つの型M1,M2の合わせ面F1,F2を、ボトル1の底部壁5の二等分線Lo'に対して偏心させることで、底部5に対する占有面積が小さい型M2での延伸量が抑えられる一方で、底部5に対する占有面積の大きい型M1での延伸量が大きくなる。このため、パーティングラインPLの偏り側から遠ざかるに従って緩やかに傾斜する底部壁内面5fを容易に形作ることができる。
【0041】
従って、本発明の製造方法を用いれば、従来の成形機を用いて、型を変更するだけの簡単な作業で、本発明に従うボトル1を製造することができる。
【0042】
また、本形態の如く、前記合わせ面F1,F2を曲線状にすれば、底部壁5の二等分線Lo'に対して偏心して内容物を効率的に集め易いすり鉢状の内面5fを容易に形作ることができる。
【0043】
上述したところは、本発明の好適な形態を説明するものであるが、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、本形態のボトル1は、口部壁2に螺合するカバー30に対し、押し込み及び復帰可能に保持されたノズルヘッド31が取り付けられた蓄圧式ポンプPを装着したものであるが、同ボトル1は、容器口部に吐出ノズルを装着したスクイズ吐出用のボトルとしても用いることができ、ボトル単体で使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、化粧品や医薬品の分野等に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a),(b)はそれぞれ、本発明の一形態である、合成樹脂製の押し出しブロー成形ボトルを採用したポンプ付きボトルを一部断面で示す側面図及び、その底面図である。
【図2】同形態のボトルを製造するにあたって用いられる合わせ型の要部を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 押し出しブロー成形ボトル
2 ボトル口部壁
2f ボトル口部壁内面
3 ボトル肩部壁
3f ボトル肩部壁内面
4 ボトル胴部壁
4f ボトル胴部壁内面
5 ボトル底部(底部壁)
5e ボトル底部壁内面の外縁
5f ボトル底部壁内面
30 カバー
31 ノズルヘッド
51 薄肉壁(底部)
1,F2 合わせ面
Lo 底部の二等分線
1,M2 型(合わせ型)
L パーティングライン
P ポンプ
1,P2 交点
T チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立するための接地面を備えた底部に、この底部を2つに分割するようにパーティングラインが形成された合成樹脂製の押し出しブロー成形容器において、
前記パーティングラインが、前記底部の二等分線に対して偏心したものであることを特徴とする合成樹脂製の押し出しブロー成形容器。
【請求項2】
請求項1において、底部に形成されるパーティングラインが一方向に湾曲した形状であることを特徴とする合成樹脂製の押し出しブロー成形容器。
【請求項3】
押出し機から押出されたパリソンを用いて、合成樹脂製容器をブロー成形するに際し、パリソンの底部を2つの型で挟むことで合成樹脂製容器を自立させるための接地面を備えた底部を形成する合成樹脂製の押し出しブロー成形容器の製造方法において、
パリソンの底部を挟む2つの型の合わせ面を、合成樹脂製容器の底部の二等分線に対して偏心させたことを特徴とする、合成樹脂製の押し出しブロー成形容器の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、前記合わせ面を曲線状にしたことを特徴とする、合成樹脂製の押し出しブロー成形容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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