説明

合成樹脂製ボトル容器

【課題】 周リブに弱化部を設けた構成により、ボトル容器全体としての減圧吸収能力をも増大させ、もって減圧発生時に、永久変形の発生を確実に防止し、またボトル容器全体としての減圧吸収能力を無理なく高めることを目的とする。
【解決手段】 角部を形成する柱壁4と平坦壁2とで多角筒状に構成された胴部1に、周リブ5を周設し、周リブ5の平坦壁2に位置する部分に、溝深さを浅くした弱化部6を形成し、弱化部6に近い平坦壁2部分に、弱化部6の略全横幅範囲に亘って対向する長さで、補強リブ7を設け、所望の平坦壁2に、周リブ5を避けて減圧吸収パネル3を形成して構成し、弱化部6で柔軟性を高めて永久変形の発生を防止すると共に、吸収容量を高め、また弱化部6による柔軟化の程度を、補強リブ7で抑制して、減圧吸収度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧吸収機能を有する合成樹脂製ボトル容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
減圧吸収機能を有するペットボトル等の合成樹脂製ボトル容器として、高い減圧吸収力を無理なく発揮することのできる大きな平坦壁を簡単に得ることのできる、四角筒に代表される多角筒ボトル容器が知られている。
【0003】
この多角筒ボトル容器の内、軽量化されたものにあっては、その強度を保つ目的で周溝構造の周リブを設けるのが普通であるが、この周リブは容器胴部の強度を高めることができるものの、減圧吸収能力を阻害し、冷却時等の減圧吸収変形時に、周リブ部分に永久変形が発生することがある、と云う不都合があった。
【0004】
この不都合を解消する従来技術として、多角筒ボトル容器の胴部に設けた横方向リブ(周リブ)の一部に、リブのない不連続部からなる潰れ防止リブ部を設け、この潰れ防止リブ部を設けることにより、周リブを設けた胴部部分の柔軟性を高め、もって周リブを設けることによる永久変形の発生を防止するものがある。
【特許文献1】特開平11−255229号公報
【0005】
この特許文献1に示された従来技術は、角取りした四角筒形状をした胴部の下端を、連設した底部で閉鎖すると共に、胴部の上端に、上方に縮径するテーパ筒状の肩部を介して口部を連設して構成されており、胴部の上部に、潰れ防止リブ部と組合わさった複数の横方向リブを設けることにより、この胴部の上部を、潰れ防止リブ部部分で柔軟性を発揮する状態で、強度の高いものとし、胴部の下部に、減圧吸収変形する補強パネルを設けて、所望する減圧吸収能力を得ている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、減圧吸収パネルを設けていない胴部の上部は、充分な減圧吸収能力を発揮することはなく、このためボトル容器の大きさの割には、発揮される減圧吸収能力が小さく、このため発生する減圧吸収変形形態が、不均一で体裁の悪いものとなる、と云う問題があった。
【0007】
また、横方向リブは、その潰れ防止リブ部で柔軟性を高め、この高められた柔軟性により胴部の上部にある程度の減圧吸収能力を発揮させることができるものの、減圧吸収変形の主体部分である胴部の下部と協働して減圧吸収能力を高めると云う働きが全くないので、潰れ防止リブ部が発揮する柔軟性を減圧吸収作用に有効に結びつけることができず、このためボトル容器全体として発揮される減圧吸収能力が不足する、と云う問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、周リブ(横方向リブ)に弱化部を設けた構成により、ボトル容器全体の減圧吸収能力をも増大させることを技術的課題とし、もって減圧発生時に、永久変形の発生を確実に防止し、またボトル容器全体としての減圧吸収能力を、無理なく高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項1記載の発明の手段は、
角取りした角部を形成する柱壁と、平板状の平坦壁とで多角筒状に構成された胴部を有すること、
この胴部に、周溝状の周リブを周設し、この周リブの平坦壁に位置する部分に、溝深さを浅くした弱化部を形成すること、
この弱化部に近い平坦壁部分に、弱化部の略全横幅範囲に亘って対向する横溝状の補強リブを設けること、
所望の平坦壁に、周リブを避けて減圧吸収パネルを形成すること、
にある。
【0010】
この請求項1記載の発明にあっては、平坦壁に位置した周リブ部分に設けられた弱化部は、周リブの溝深さを浅くして構成されているので、周リブの他の部分に比べて、平坦壁に対する補強力が小さく、このため平坦壁は、この弱化部が位置している部分で、作用した外力(減圧力)により、比較的柔軟に変形することになる。
【0011】
この弱化部が位置する平坦壁部分の減圧力による変形は、弱化部を中心とした陥没変形となるが、この平坦壁部分の陥没変形は、減圧吸収作用を発揮する。
【0012】
特に、減圧吸収パネルを設けた平坦壁にあっては、弱化部を中心とした陥没変形により、減圧吸収パネルを全体的に陥没変位させることになり、このため発揮される減圧吸収作用は、大きなものとなる。
【0013】
周リブの弱化部に近い平坦壁部分には、弱化部の全横幅範囲に亘って対向する補強リブが設けられているので、この補強リブは、弱化部を中心とした陥没変形が発生した状態で、陥没変形の変形力が、補強リブを越えて他の平坦壁部分に作用するのを阻止し、弱化部を中心とした陥没変形により、平坦壁に不体裁な陥没変形が発生するのを防止する。
【0014】
特に、減圧吸収パネルを設けた平坦壁にあっては、補強リブは、弱化部を中心とした陥没変形の変形力が減圧吸収パネルに作用するのを阻止し、減圧吸収パネルの設計された本来の適正な減圧吸収変形動作を確保する。
【0015】
すなわち、減圧吸収パネルは、弱化部を中心とした平坦壁部分の陥没変形により陥没変位したとしても、単に変位するだけでそれ自体が変形することはなく、これにより本来の減圧吸収変形動作を確保することができるのである。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に、減圧吸収パネルを形成した平坦壁に設けられる補強リブを、減圧吸収パネルの弱化部側の端縁部に設けた、ことを加えたものである。
【0017】
この請求項2記載の発明にあっては、補強リブを減圧吸収パネルと一体に形成した構成であるので、補強リブと減圧吸収パネルとの組合せによる構造の複雑化を軽減化することができると共に、補強リブにより減圧吸収パネルの大きさが制限される、と云う不都合の発生することがない。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の構成に、各平坦壁における弱化部を、左右対称に設けた、ことを加えたものである。
【0019】
この請求項3記載の発明にあっては、各平坦壁における弱化部を左右対称に設けることにより、弱化部を中心とした平坦壁部分の陥没変形の横幅を大きくすることが容易となり、これにより弱化部を中心とした平坦壁部分の陥没変形が、局部的なものとならず、弱化部を設けることによる柔軟性が、無理なく高められることになる。
【0020】
また、弱化部は、左右対称に設けられているので、発生する平坦壁部分の陥没変形が、略左右均等に発生することになり、これにより減圧吸収パネルの陥没変位姿勢に、左右端部の陥没変位深さが異なることによる傾きを生じることがない。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3記載の発明の構成に、周リブを、減圧吸収パネルを間に位置させて、胴部の上下に設けた、ことを加えたものである。
【0022】
この請求項4記載の発明にあっては、減圧吸収パネルの上下両端縁部に近接する平坦壁部分が、共に陥没変形するので、減圧吸収パネルは、略上下に傾くことなく、その全体が均等に陥没変位するので、大きな減圧吸収力が発揮されると共に、各減圧吸収パネルを陥没変位させたボトル容器の外観体裁を、劣化させる恐れがない。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
請求項1記載の発明にあっては、周リブの弱化部が位置する平坦壁部分の柔軟性を高めることができるので、減圧力が作用した際に、この平坦壁部分を、減圧力を弱める方向に、無理なく円滑に、永久変形を生じさせることなく陥没変形させ、これにより周リブを設けることによる強度アップを得た状態のまま、好適な柔軟性を発揮させることができる。
【0024】
弱化部が位置する平坦壁部分の減圧力による陥没変形は、減圧吸収作用を発揮し、特に減圧吸収パネルを設けた平坦壁にあっては、弱化部を中心とした陥没変形により、減圧吸収パネルを全体的に陥没変位させ、その分、得られる減圧吸収作用を大きくすることができ、もって減圧吸収能力の増大を容易に達成することができる。
【0025】
補強リブにより、平坦壁部分の弱化部を中心とした陥没変形状態を規制して、平坦壁および減圧吸収パネルに不都合な陥没変形が発生するのを防止するので、減圧吸収変形状態で、ボトル容器全体の外観を劣化させることがないと共に、減圧吸収パネルの適正な減圧吸収変形動作を確保して、確実で安定した減圧吸収作用を得ることができる。
【0026】
請求項2記載の発明にあっては、補強リブと減圧吸収パネルとの組合せ構造を簡単化することができ、その分、ボトル容器の製造が簡単となり、また減圧吸収パネルを大きくすることが可能であるので、減圧吸収能力の増大が容易となる。
【0027】
請求項3記載の発明にあっては、弱化部を中心とした平坦壁部分の陥没変形の横幅を大きくすることが容易であり、これにより弱化部を中心とした平坦壁部分の陥没変形が、局部的なものとならず、弱化部を設けることによる柔軟性を、無理なく高めることができ、もって弱化部を中心とした平坦壁部分の陥没変形を、速やかに安定して確実に得ることができる。
【0028】
また、減圧吸収パネルは、その陥没変位姿勢が、左右に傾くことがないので、陥没変位した減圧吸収パネルがボトル容器の外観体裁を損なう恐れがない。
【0029】
請求項4記載の発明にあっては、各減圧吸収パネルを均等に陥没変位させることができるので、大きな減圧吸収力を得ることができると共に、各減圧吸収パネルを陥没変位させたボトル容器の外観体裁が劣化せず、減圧吸収変形が商品価値を低下させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、本発明によるボトル容器の一実施形態例を示す、一つの減圧吸収パネル3を正面から見た全体正面図で、ボトル容器は、角取りした正四角筒形状をした胴部1の下端に、中央部をドーム状に陥没させた底部10を連設すると共に、胴部1の上端に、下端の角取りした正四角形から上端の円形に平断面が徐々に変化する錐台筒形状をした肩部8を介して、外周面に螺条とビードリングとネックリングを上から順に設けた短円筒状の口筒部9を連設して構成されている。
【0032】
角取りした正四角筒形状をした胴部1は、角取りした角部を形成する、平断面形状が円弧状に湾曲して上下方向に直線状に延びる四つの柱壁4と、平板状の四つの平坦壁2を、周方向に沿って交互に位置させて構成されており、各平坦壁2の中央部分には、縦長となって屈曲反転しながら陥没した減圧吸収パネル3(図4参照)が設けられ、また胴部1の上下両端部には、減圧吸収パネル3の端縁部に近接して、周溝状の周リブ5が、それぞれ周設されている。
【0033】
周リブ5の各平坦壁2に位置する部分の略左右両端部分には、周リブ5の溝深さを浅くした弱化部6(図3参照)が形成されており、周リブ5は、この弱化部6で、平坦壁2に対する補強力を弱める、すなわち柔軟性を高めることになる。
【0034】
このため、ボトル容器内に減圧が発生すると、この減圧により弱化部6が位置する平坦壁2部分が、永久変形を生じることなく、比較的容易に陥没変形するが、この平坦壁2部分の陥没変形は、弱化部6を中心とした変形であるので、弱化部6が、周リブ5の平坦壁2に位置する部分の左右両端部に位置することから、両弱化部6に跨る幅範囲の平坦壁2部分の全体が陥没変形することになる。
【0035】
この周リブ5が位置する平坦壁2部分の陥没変形は、各平坦壁2の上下両端部で行われるので、この上下の周リブ5の間に位置している減圧吸収パネル3は、平坦壁2部分の陥没変形に伴って、その直立姿勢を維持したまま陥没変位する。
【0036】
各減圧吸収パネル3は、周リブ5に近接した上下両端縁部に補強リブ7を設けており、この補強リブ7により、平坦壁2部分に発生した変形の影響が、減圧吸収パネル3に及ぶのを阻止しており、これにより各減圧吸収パネル3は、陥没変位とは関係なしに、設計された通りの減圧吸収変形を行うことになる。
【0037】
図5は、図1に示した構造例における周リブ5の弱化部6と減圧吸収パネル3の補強リブ7を設けない構造のボトル容器Aと、図1に示した本発明によるボトル容器Bの、減圧度―吸収容量特性線図を示すもので、図中Aはボトル容器Aの特性線図を、Bは本発明によるボトル容器Bの特性線図を示している。
【0038】
また、図6は、図5に示した特性線図を作成した際における、測定データを示す表を示すもので、図中Aはボトル容器Aの測定データを、Bはボトル容器Bの測定データを示している。
【0039】
この図5に示した特性線図と、図6に示した測定データとから明らかなように、本願発明を実施することにより、減圧度の上限が81mmHgから107mmHgに高められ、また吸収容量の上限が46mlから60mlに高められていることが分かる。
【0040】
なお、正四角筒状の胴部1を有する例だけを、図示実施形態例として示したが、本発明のボトル容器の胴部1は、正四角筒状に限定されることはなく、長方形筒状、六角筒状等の多角筒状とすることが可能である。
【0041】
また、図示実施形態例は、全ての平坦壁2に減圧吸収パネル3を設けた構成例を示したが、減圧吸収パネル3は、必ずしも全ての平坦壁2に設けられなければならない、と云うものではなく、必要に応じて、周方向に沿って一つおきの平坦壁2に設けても良いし、特定の一つの平坦壁2だけに設けても良く、例えば、長方形筒状の胴部1の場合には、長手辺を形成する平坦壁2だけに減圧吸収パネル3を設けることにより、大きな減圧吸収能力を得ることができる共に、減圧吸収パネル3部分を握持部分として好適に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、全体正面図である。
【図2】図1に示した実施形態例の、平面図である。
【図3】図1に示した実施形態例の、周リブにおける胴部平断面図である。
【図4】図1に示した実施形態例の、減圧吸収パネルにおける胴部平断面図である。
【図5】ボトル容器の減圧度―吸収容量特性を示す、比較特性線図である。
【図6】図5に示した特性線図を得るための測定データを示す、データ表である。
【符号の説明】
【0043】
1 ; 胴部
2 ; 平坦壁
3 ; 減圧吸収パネル
4 ; 柱壁
5 ; 周リブ
6 ; 弱化部
7 ; 補強リブ
8 ; 肩部
9 ; 口筒部
10; 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角取りした角部を形成する柱壁(4)と、平板状の平坦壁(2)とで多角筒状に構成された胴部(1)に、周溝状の周リブ(5)を周設し、該周リブ(5)の平坦壁(2)に位置する部分に、溝深さを浅くした弱化部(6)を形成し、該弱化部(6)に近い平坦壁(2)部分に、前記弱化部(6)の略全横幅範囲に亘って対向する横溝状の補強リブ(7)を設け、所望の前記平坦壁(2)に、前記周リブ(5)を避けて減圧吸収パネル(3)を形成した合成樹脂製ボトル容器。
【請求項2】
減圧吸収パネル(3)を形成した平坦壁(2)に設けられる補強リブ(7)を、前記減圧吸収パネル(3)の弱化部(6)側の端縁部に設けた請求項1記載の合成樹脂製ボトル容器。
【請求項3】
各平坦壁(2)における弱化部(6)を、左右対称に設けた請求項1または2記載の合成樹脂製ボトル容器。
【請求項4】
周リブ(5)を、減圧吸収パネル(3)を間に位置させて、胴部(1)の上下に設けた請求項1、2または3記載の合成樹脂製ボトル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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