説明

合成樹脂製壜体

【課題】ブロー成形により薄肉に成形された合成樹脂製壜体に関し、従来の詰替え容器に係る問題を解消しようとするものであり、壜体としての安定な姿勢を保持しながら内部の減圧化に伴う周壁の減容変形をスムーズに進行させることが可能な壜体形状を創出することにある。
【解決手段】口筒部とテーパー筒状の肩部3と筒状の胴部4と底部5を有するブロー成形による合成樹脂製壜体において、胴部の周壁は壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成し、またこの周壁は、山折状に縦方向に略等間隔に形成される3本の稜線12a,12bを有し、隣接する稜線を3ケのパネル壁11abで連結した構成であり、各パネル壁には一方の稜線の上端部と他方の稜線の下端部を対角線状に連結する谷折状の折り目線13abを形成し、3本の折り目線が周方向に並列状に傾斜するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部の減圧化に伴って減容変形が進行するように薄肉に形成された合成樹脂製壜体に関するものである。

【背景技術】
【0002】
近年、価格の低減化あるいは省資源や環境の観点から、たとえば洗剤や食品調味料等の多くの用途で詰替え容器の利用が進展している。
普段内容液を収納して使用する、比較的厚肉で注出口に計量機能部を付帯させる等した容器(以下、継続使用容器とする。)は継続使用するものとし、補充する内容液は安価な詰替え容器に収納し、継続使用容器に移し替えて使用する。
【0003】
従来、この種の詰替え容器としては、たとえば特許文献1に記載があるような、柔軟なシート片を重ねるようにして袋状とした、所謂、パウチ容器が多く使用されている。
従来、パウチ容器から継続使用容器への内容液の詰め替えに際しては、液跳ねや、液ダレ等により周囲を汚してしまうことがあったが、特許文献1に記載のあるパウチ容器は、注出口となるノズル受け部を配設し、このノズル受け部を、継続使用容器の注出ノズルに外嵌組付けして内容液を移し替えることができるようにしたものであり、内容液がノズル受け部と注出ノズルを通して詰め替えられるので、内容液の液跳ねや液ダレをなくすことができる。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−267403公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1のパウチ容器では、ノズル受け部を継続使用容器の注出ノズルに外嵌組付けすることにより、一応その倒立姿勢を保持することが可能である。しかしながら、内容液の注出が進行するに従ってパウチ容器は扁平状に減容変形するので、倒立姿勢を安定して保持することは難しく、扁平状になった部分で折れ曲り、バランスを失くして継続使用容器と共に転倒する恐れもあり、詰め替え中は監視しながら、あるいはある程度手で支えてやる必要があり、使い勝手がいいものとは云い難い、と云う問題を有する。
【0006】
そこで本発明は、ブロー成形により薄肉に成形された合成樹脂製壜体に関し、上記した従来の詰替え容器に係る問題を解消しようとするものであり、その技術的な課題は壜体としての安定な姿勢を保持しながら内部の減圧化に伴う周壁の減容変形をスムーズに進行させることが可能な壜体形状を創出することにある。

【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する手段のうち、本発明の主たる構成は、
口筒部とテーパー筒状の肩部と筒状の胴部と底部を有するブロー成形による合成樹脂製壜体において、
胴部の周壁は壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成され、
また、この周壁は、山折状に縦方向に略等間隔に形成される3本の稜線を有し、隣接する稜線を3ケのパネル壁で連結した構成であり、
各パネル壁には一方の稜線の上端部と他方の稜線の下端部を対角線状に連結する谷折状の折り目線を形成し、3本の折れ目線が周方向に並列状に傾斜するように構成する、
と云うものである。
【0008】
上記構成において、胴部の周壁を、壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成することにより、特に外部から強制的に壜体に押圧力や捩れ力を作用させること無く、壜体内部の減圧化に伴って、内外の圧力差により壜体は自発的に減容変形することができ、稜線や折り目線の形成はこの自発的な周壁の減容変形を安定な姿勢を保持しながらスムーズに進行させるための要件である。
【0009】
上記した構成の壜体を詰替え容器として利用することを想定すると、満杯状に近く内容液を充填した上記構成の壜体を、口筒部を固定した状態で倒立姿勢にし、外気を内部に侵入させることなく一定量の内容液を口筒部から自重により注出させることができる。
【0010】
この際、内容液の注出の進行に伴って、肩部や底部はほぼ元の形状を保持しながら、比較的薄肉に形成され陥没変形の起点となる谷折り状の折れ目線が形成された胴部の周壁が捩れ状に変形し、その結果胴部が高さ方向に縮小し、この胴部の捩れ状の変形と高さ方向の縮小により、初期の形状からその倒立姿勢を略真直ぐに保持しつつ壜体の減容変形を進行させることが可能となる。
このため、パウチ容器のように注出に伴う容器の横倒れの心配もないので、手で支えてやる必要もなく、安心して詰替え操作を実施することができる。
【0011】
ここで、注出の進行に伴う壜体の周壁の減容変形の態様の詳細を説明する。
内容液の注出に伴って、内部と外部の圧力差により壜体の周壁全体に押圧力が作用するが、胴部の周壁の各パネル壁に傾斜状に谷折り状、すなわち陥没状に形成される3本の折り目線が、壜体の中心軸に近づくように変位して減容変形が進行する。この際、各パネル壁は折り目線を起点として、折り目線に沿って折り畳まれるようにして陥没状に変形する。
【0012】
一方、縦方向に形成される3本の山折り状の稜線は押圧力に対して柱部としての機能を発揮するものであり、減容変形の進行中も壜体の中心軸に対して略初期の距離を保持しながら、周壁の平断面の外郭的な形状を正3角形状に保持して、減容変形状態においても壜体の倒立姿勢を安定して保持する機能を発揮する。
この際、各稜線は上記のように中心軸に対して略初期の距離を保持しながら、折り目線に沿ったパネル壁の陥没変形の進行に従って傾斜状に変位する。
そしてその結果、前述したように胴部の周壁が捩れ状に変形すると共に胴部が高さ方向に縮小する。
【0013】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、胴部の周壁の肉厚の平均値を0.2mm以下とする、と云うものである。
【0014】
上記構成により胴部の周壁の肉厚の平均値を0.2mm以下とすることにより、壜体内部の減圧化に伴う減容変形をスムーズに達成させることが可能となる。
なお、周壁の肉厚の下限値については壜体の自立性等の点から適宜設定することができる。
【0015】
なお、上記胴部の周壁の肉厚の平均値は、より好ましくは0.05〜0.15mmの範囲とするのがよく、胴部の周壁をこの範囲の肉厚にすることにより、壜体内部の減圧化に伴う減容変形をよりスムーズに、また確実に達成させることが可能となる。
【0016】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、隣接する稜線間の距離と稜線の高さの比である、距離/高さの値を0.6〜1.7の範囲とすると云うものである。
【0017】
上記構成は、パネル壁に形成される折れ目線の傾斜角度に関連するものであり、距離/高さの値を0.6〜1.7の範囲とすることは、縦方向に形成される稜線に対する折れ目線の傾斜角度を略30°〜60°の範囲にすることに相当し、傾斜角度をこの範囲とすることにより、胴部の捻り変形とそれに伴う高さ方向の縮小を共に十分に進行させて、壜体の倒立姿勢を略真直ぐに保持しながら減容変形をスムーズに進行させることができる。
ここで、この傾斜角度が小さすぎると、すなわち折れ目線が縦方向に向きすぎると、捩れ状の変形における捩れ角度を大きくすることはできるが、3本の折れ目線が相互に当接し、その結果高さ方向の縮小が不十分となる。
一方、傾斜角度が大きすぎると、すなわち折れ目線が横方向に向きすぎると、捩れ状の変形における捩れ角度を大きくすることができず、この場合も高さ方向の縮小が不十分となる。
【0018】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、肩部を半球殻状、底部を有底短円筒状とする、と云うものである。
【0019】
上記構成により、肩部を半球殻状、また底部を有底短円筒状と、いずれも減圧化による陥没変形が進行し難い形状とすることにより、減圧化に伴う減容変形が胴部で優先的に進行するようにすることができ、壜体の倒立姿勢を略真直ぐに保持しながら、減容変形をよりスムーズに進行させることができる。
【0020】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、3本の稜線を底部の側周壁にまで延設し、底部を3本の稜線により有底短3角筒状とする、と云うものである。
【0021】
上記構成は、底部の形状を予め3角形状とすることにより、胴部の捻り変形をスムーズに進行させ、壜体の減容変形をスムーズに進行させるようにしたものである。
【0022】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、底部の底面の中央部に底面壁を壜体の内部方向に陥没させて形成した陥没部を形成する、と云うものである。
【0023】
上記構成により、底部の底面の中央部に陥没部を形成することにより、その周縁に残存形成されるリング状の周縁部により周リブとして機能が発揮され、内容液を注出後、底部の底面に押圧力を作用させて壜体を上下方向に押し潰す際、この周縁部で押圧力が分散されるので、底面の形状を保持しながらスムーズに、また胴部あるいは底部を半球殻状の肩部に埋め込むように十分に押し潰すことができる。

【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、本発明の主たる構成を有する壜体にあっては、
詰替え容器として利用することを想定すると、内容液の注出の進行に伴って、肩部や底部はほぼ元の形状を保持しながら、比較的薄肉に形成され陥没変形の起点となる谷折り状の折れ目線が形成された胴部の周壁が捩れ状に変形すると共に高さ方向に縮小しながら、初期の形状からその倒立姿勢を略真直ぐに保持しつつ壜体の減容変形が進行する。
このため、パウチ容器のように注出に伴う容器の横倒れの心配もないので、手で支えてやる必要もなく、安心して詰替え操作を実施することができる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の壜体の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の壜体の(a)は側面図、(b)は背面図である。
【図3】図1の壜体の平面図である。
【図4】図1の壜体の底面図である。
【図5】図1中のA−A線に沿った平断面図である。
【図6】図1の壜体を付替え容器として継続使用容器に装着し、減容変形が進行した状態を一部縦断して示す正面図である。
【図7】図6の壜体の斜視図である。
【図8】図6の変形状態での壜体の平面図である。
【図9】図6の状態から壜体をさらに押潰した状態を示す正面図である。
【図10】本発明の壜体の他の実施例を示す側面図である。
【図11】図10中のB−B線に沿った平断面図である。
【図12】図10の壜体の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の合成樹脂製壜体の実施の形態について、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1〜5は本発明の壜体の一実施例を示すものであり、図1は正面図、図2(a)は側面図、図2(b)は背面図(図2では口筒部を図示省略している)、図3は平面図、図4は底面図、そして図5は図1中のA−A線に沿った平断面図である。
この壜体1はポロプロピレン樹脂製の2軸延伸ブロー成形品であり、口筒部2、半球殻状でテーパー筒状の肩部3、筒状の胴部4、有底短円筒状の底部5を有し、全高さ125mm、横幅70mmで、容量300mlの壜体である。
そして、底部5の側周壁5sは短円筒状で、底面の中央部には底面壁を壜体の内部方向に陥没させて陥没部5aが形成されており、その周縁にはリング状の周縁部5pが配設されている。
【0027】
また、胴部4の周壁には、山折状に縦方向に等間隔で3本の稜線12(12a、12b、12c)が形成されており、周壁は隣接する稜線12を図5に見られるように平断面形状が円弧状の3ケのパネル壁11(11ab、11bc、11ca)で連結して構成されている。
また、各パネル壁11には一方の側端に位置する稜線12の上端部と他方の側端に位置する稜線12の下端部を対角線状に連結する谷折状の折り目線13(13ab、13bc、13ca)を形成し、これら3本の折れ目線13が周方向に並列状に傾斜するようにしている(図1、2では右斜め上から左斜め下に傾斜している。)。
なお、変形の態様がわかり易いように、各図面では稜線12を、12a、12b、12cと云うように3本の稜線が区別できるように示し、図面間で相互に対応が取れるようにした。パネル壁11と折り目線13についても同様である。
【0028】
ここで、3本の稜線12は図5の平断面図に見られるように、正3角形の頂点に配置され、壜体1に作用する横方向の力に対して柱部としての機能を発揮する。また、この胴部4の周壁は、稜線12部分を除いて、上端と下端から中央高さ位置に向けて縮径するように形成されている。
また、本実施例の壜体1では、図1に見られるように、隣接する稜線12間の距離Lと稜線13の高さHの比である、L/Hの値は略1であり、折り目線13の中心軸Axに対する傾斜角度Dを約45°程度としている。この傾斜角度は、壜体の形状や、内容液のスムーズな注出性に係る胴部4の周壁の減容変形の態様を考慮して適宜に決めることができるものであるが、L/Hの値は0.6〜1.7の範囲(中心軸Axに対する傾斜角度Dでは30°〜60°の範囲)とするのが好ましい。
【0029】
次に、図6〜9は上記した実施例の壜体1を詰替え容器Aの容器本体として利用した例を説明するためのものであり、この説明の中で本発明の壜体1の減容変形の態様を説明する。
図6は図1の壜体1を倒立姿勢で継続使用容器Bに装着した状態を示す正面図、図7は図6中の減容変形した壜体の斜視図、図8は図6中の減容変形した壜体の平面図、そして図9は図6の減容状態から壜体をさらに押潰した状態を示す正面図である。
【0030】
本例において、詰替え容器Aは壜体1と壜体1の口筒部2に装着される結合蓋20から構成されている。
結合蓋20は壜体1の口筒部2に螺合状に組付き固定する組付き筒21を有し、組付き筒21の頂壁の開口縁から円筒状の嵌合筒22が起立設し、この嵌合筒22の上端開口部には係合周条23を利用して、図中二点鎖線で示されるように中栓24が配設されている。
【0031】
一方、継続使用容器Bは容器本体30、容器本体30の口筒31に液密状に組付き固定する本体キャップ40、そして押上げ体48から構成されている。
本体キャップ40は容器本体30の口筒31内に嵌入する嵌入筒41を有し、この嵌入筒41の底板42には注出開口43が形成され、その開口縁からは前述した結合蓋20の嵌合筒22に外嵌する平断面形状がC状の注出筒片44が起立設されている。
【0032】
また、押上げ体48はリング状の組付きリング51を有し、この組付きリング51から軸対称の位置に2本の梁片50を水平状に延設し、その先端から押上げ片49を起立設したものであり、本体キャップ40の注出筒片44の内周面に周設された結合リブ47を利用して注出筒片44内部に組付き固定し開口Kを形成する。
【0033】
そして、内容液(図示省略)を略充満した壜体1に結合蓋20を装着した詰替え容器Aを倒立姿勢として、結合蓋20の嵌合筒22を継続使用容器Bの本体キャップ40の注出筒片44に嵌入する。
この際、押上げ体48の押上げ片49により中栓24が嵌合筒22内に押上げられ、開口K、さらに注出開口43を通して壜体1内の内容液が自重により継続使用容器Bの容器本体30内に流入する。
【0034】
次に、上記した継続使用容器Bへの内容液の詰め替えの進行、すなわち壜体1からの内容液の注出に伴う壜体1の減容変形について説明する。
概略的にみると、壜体1からの内容液の注出の進行に伴って、図6〜8に示されるように、肩部3や底部5はほぼ元の形状を保持しながら、比較的薄肉に形成され、陥没変形の起点となる折り目線13が形成された胴部4の周壁が捩れ状に変形すると共に高さ方向に縮小しながら、図6中二点鎖線で示した初期の形状からその倒立姿勢を略真直ぐに保持しつつ壜体1の減容変形が進行する。
ここで、底部5は、壜体の中心軸Ax回りに口筒部2に対して相対的に回動変位する(図7、8中の白抜き矢印参照)と共に下降変位する。
【0035】
なお、図6、7、8に示した状態では底部5は口筒部2に対して60°程度回動している。
また、壜体1の初期の形状では図3、4に示されるように肩部3の下端部及び底部5の平面形状は円形であるが、図8の状態では捻り変形に伴う力が作用して、それぞれが3本の稜線12の上端を頂点とした3角形あるいは下端を頂点とした3角形に近い形状に変化している。
この3角形状は、4角形状やさらなる多角形状に比較して横方向の力が作用しても扁平に変形し難く、壜体1の倒立姿勢を安定して保持することが可能となる。
【0036】
さらに、上記した注出の進行に伴う壜体1の各構成要素の減容変形の態様は次のようである。
内部の減圧化が進行すると、壜体1の周壁全体に押圧力が作用するが、肩部3は半球殻状で底部5は胴部4に比較して厚肉であるので、胴部4を構成する比較的薄肉で陥没変形の起点となる谷折り状の折れ目線13が形成された各パネル壁11の陥没変形が進行する。
【0037】
この際、3本の折り目線13は、壜体1の中心軸Axに近づくように変位し、各パネル壁11は各折り目線13を起点として、各折り目線13に沿って折り畳まれるようにして陥没状に変形する。図8の平面図には、口筒部2の開口部を通して、3本の折目線13ab、13bc、13caが中心軸Axに近接した様子が見られる。
【0038】
一方、縦方向に形成される3本の山折り状の稜線12a、12b、12cは、上記各パネル壁11の陥没変形に従って、たとえば図7中の稜線12b、12cに明確に示されるように傾斜状に変位するが、図8中に示されるように、減容変形の進行中も壜体1の中心軸Axに対して初期の距離を保持しながら、周壁の平断面の外郭的な形状を正3角形状に保持し、減容変形状態においても壜体1に横方向に作用する力に対する柱部として倒立姿勢を安定して保持する機能を発揮する。
【0039】
そして、上記したような中心軸Axに対する初期の距離を保持しながら傾斜状に変位する各稜線12の変位により、底部5が壜体1の中心軸Ax回りに口筒部2に対して相対的に回動変位する捻り変形が進行すると共に、底部5の下降変位が進行する。
【0040】
なお、図8からも分かるように、内容液の注出がさらに進行すると3本の稜線12a、12b、12cがその中央高さ位置近傍で相互に当接し、まだ肩部3から口筒部2にかけての部分に内容液を残した状態で内容液の自重による注出は一端停止するが、この壜体1は全体として薄肉に形成されているので、底部5に図9中の白抜き矢印の方向に押圧力を強制的に作用させることにより、壜体1を図9中に示されように容易に押し潰すことができ、内容液を略全量注出することができる。
また、図8では底部5が口筒部2に対して60°程度回動した状態が記載されているが、図9のように壜体1を押し潰す際には、強制的に120°程度まで回動させ、三角形状の底部5の頂点を三角形状の肩部3の隣の頂点にまで変位させて底部5と肩部3の三角形状の形状が一致するようにすることにより、底部5を半球殻状の肩部3の中に埋め込むようにして、十分に押し潰すと共にこの押し潰し状態を安定して維持することができ、十分に押し潰した状態を維持しながら廃棄することができる。
【0041】
他方、継続使用容器Bの押上げ体48により形成される開口Kの開口面積を大きくしておけば、上記のように内容液の自重による注出が一端停止した後、壜体1の内外の圧力差により開口Kを通して外気を気泡として壜体1内に進入させることができ、上記のように押圧力を強制的に作用させることなく残りの内容液を注出することもできる。
なお、この場合も内容液を注出した後は、前述したように押圧力を強制的に作用させて押し潰した状態で廃棄することができる。
【0042】
次に、図10〜12は本発明の壜体の他の実施例を示すもので、図10は側面図(図1〜5に示される実施例(以降、先の実施例と記す。)の側面図を示す図2(a)に相当する。)、図11は図10中のB−B線に沿って示す平断面図、図12は底面図であり、先の実施例に比較して、肩部3から胴部4にかけての基本的な形状は同様とし、口筒部2には螺条の替わりに周条2aを配設し、底部5の底面の形状を3角形状にしている。
底部5の形状をさらに詳述すると、胴部4に形成される3本の稜線12a、12b、12cを底部5の側周壁5sにまで延設し、この3本の稜線12を図11の平断面図に示されるのと同様に円弧状に連結して側周壁5sを3角筒状とし、底部5を有底短3角筒状としている。
【0043】
ここで、図8に示されるように先の実施例の壜体1では、捻り変形に伴う力が作用すると底部5の形状は円形から3本の稜線12の下端を頂点とした3角形に近い形状に変化するが、
図10〜12に示される実施例の壜体1は、底部6の形状を予め3角形状とすることにより、図8に示されるような捻り変形をスムーズに進行させ、壜体1の減容変形をよりスムーズに進行させるようにしたものである。
なお、先の実施例では底部5の形状を図4に示されるように円形状とし、上記実施例では図12に示されるように3角形状としたが、底部5の形状は特に限定されるものではなく、さらに多角形状とすることもでき、外観デザインや、減容変形時の壜体の、姿勢の保持性や捩れ変形性を考慮して適宜選択することができる。
【0044】
以上、実施例に沿って本願発明の壜体の実施の形態、およびその作用効果を説明したが、勿論、本願発明はこれら実施例に限定されるものではない。
壜体の容量は300ml程度のものに限定されるものではないし、ポリプロピレン樹脂製の2軸延伸ブロー成形の壜体に限らず、PET樹脂製の2軸延伸ブロー成形壜体、あるいはポリエチレン樹脂製のダイレクトブロー成形壜体と、さまざまな樹脂製のブロー成形品を使用することができる。
また、上記実施例では詰替え容器として利用する例を説明したが、本発明の壜体は前述したように使用後は高さ方向に十分に押し潰して、その押し潰し形状を維持した状態で廃棄可能なものであり、省資源、易廃棄性と云う特徴を生かして壜体単体としても使用することができる。

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の合成樹脂製壜体は上記説明したように、壜体としての起立あるいは倒立姿勢を保持しながら内部の減圧化に伴う周壁の減容変形をスムーズに進行させることができるものであり、詰替え容器等の用途で幅広い利用展開が期待される。

【符号の説明】
【0046】
1 ;壜体
2 ;口筒部
2a;周条
3 ;肩部
4 ;胴部
5 ;底部
5a;陥没部
5s;(底部の)側周壁
5p;周縁部
11(11ab、11bc、11ca);パネル壁
12(12a、12b、12c);稜線
13(13ab、13bc、13ca);折り目線
A ;詰替え容器
20;結合蓋
21;組付き筒
22;嵌合筒
23;係合周条
24;中栓
B ;継続使用容器
30;容器本体
31;口筒
40;本体キャップ
41;嵌入筒
42;底板
43;注出開口
44;注出筒片
47;係合リブ
48;押上げ体
49;押上げ片
50;梁片
51;組付きリング
K ;開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口筒部(2)とテーパー筒状の肩部(3)と筒状の胴部(4)と底部(5)を有するブロー成形による合成樹脂製壜体において、胴部(4)の周壁は壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成され、また、前記周壁には山折状に縦方向に略等間隔に形成される3本の稜線(12)を有し、隣接する該稜線(12)を3ケのパネル壁(11)で連結した構成であり、前記の各パネル壁(11)には一方の稜線(12)の上端部と他方の稜線(12)の下端部を対角線状に連結する谷折状の折り目線(13)を形成し、該3本の折れ目線(13)が周方向に並列状に傾斜するように構成したことを特徴とする合成樹脂製壜体。
【請求項2】
胴部(4)の周壁の肉厚の平均値を0.2mm以下とする請求項1記載の合成樹脂製壜体。
【請求項3】
隣接する稜線(11)間の距離(L)と稜線(11)の高さ(H)の比である、距離(L)/高さ(H)の値を0.6〜1.7の範囲とした請求項1または2記載の合成樹脂製壜体。
【請求項4】
肩部(4)を半球殻状、底部(5)を有底短円筒状とした請求項1、2または3記載の合成樹脂製壜体。
【請求項5】
3本の稜線(12)を底部(5)の側周壁(5s)にまで延設し、底部(5)を前記3本の稜線(12)により有底短3角筒状とした請求項1、2または3記載の合成樹脂製壜体。
【請求項6】
底部(5)の底面の中央部に、底面壁を壜体の内部方向に陥没させて形成した陥没部(5a)を形成した請求項1、2、3、4または5記載の合成樹脂製壜体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−148551(P2011−148551A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266161(P2010−266161)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】