説明

合成樹脂製容器

【課題】 本発明は、折目線付き容器において、押潰し変形に適した折目線の断面形状を創出することを技術的課題とするものである。
【解決手段】 筒状の胴部の上端から肩部を介して口筒部を起立設し、周壁に扁平状の押潰し変形のための折目線となる溝リブを配設した合成樹脂製容器において、押潰し変形の際に谷折り変形の起点としての機能を発揮する折目線は、断面形状がU字状の谷折溝リブにより形成し、山折り変形の起点としての機能を発揮する折目線は、断面形状がU字状の底部を逆U字状の凸状部とした山折溝リブにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄する際に扁平状に押し潰し易いように胴部に折目線となる溝リブを形成した合成樹脂製容器に関する。

【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1には廃棄する際に扁平状に押し潰し易いように胴部に折目線を形成した容器が記載されている。図5はこの特許文献1に記載のある容器であり、上端部に肩部を介して口筒部を起立する胴部を矩形筒状として、その胴部の左右側壁に、その縦中心線に沿う縦溝101と、この縦溝101の上端付近から前後上方へ、下端から前後下方へ延設される斜行溝102とを折目線として凹設することで構成したものである。これら縦溝101と斜行溝102の断面形状は図6に示されるようにU字状である。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−276718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に記載される折目線付き容器では、たとえば相対向する胴壁に形成される一対の縦溝101を山折りして容器を扁平に変形しようとすると、U字状である断面形状により、この縦溝101自体が抵抗となってしまい十分に山折りして押潰し変形することができないと云う問題がある。
【0005】
そこで本発明は、上記した折目線付き容器における従来技術における問題を解消すべく、押潰し変形に適した折目線の断面形状を創出することを技術的課題とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決する手段の内、本発明の主たる構成は、
筒状の胴部の上端から肩部を介して口筒部を起立設し、周壁に扁平状の押潰し変形のための折目線となる溝リブを配設した合成樹脂製容器において、
押潰し変形の際に、谷折り変形の起点としての機能を発揮する折目線は、断面形状がU字状の谷折溝リブにより形成し、
山折り変形の起点としての機能を発揮する折目線は、断面形状がU字状の底部を逆U字状の凸状部とした山折溝リブにより形成する。
【0007】
上記構成の特徴は、谷折り変形の起点としての機能を発揮する折目線は、断面形状がU字状の谷折溝リブにより形成し、山折り変形の起点としての機能を発揮する折目線は、断面形状がU字状の底部を逆U字状の凸状部とした山折溝リブにより形成する、と云うように折目線の機能に応じて溝リブの断面形状を選択する点にある。
【0008】
ここで、この種の容器は多くの場合、胴部の周壁面に部分的にラベルを貼付したり、シュリンクラベルを回巻して使用するため折目線は基本的に溝リブで形成するが、前述したようにU字状の断面形状を有する溝リブを山折りしようとすると、この溝リブ自体が抵抗となってしまい十分な山折り変形が不能となる。
そこで、上記構成により、全体としてはU字状の断面形状を有する溝リブとしての形状を保持して上記したラベルの貼付性やシュリンクラベルの回巻性を維持しながら、U字状の底部を逆U字状の凸状部とした山折溝リブとすることにより、謂わば、既に山折り状態の形状である凸状部を起点として、山折り変形をスムーズに、そして十分に進行させることが可能となる。
【0009】
本発明の他の構成は、上記主たる構成に加えて、山折溝リブの凸状部の頂部の突出位置を周壁面より内側とする、と云うものである。
【0010】
凸状部の頂部が周壁面より突出してしまうと前述したラベルの貼付性やシュリンクラベルの回巻性を損なうので、山折溝リブの凸状部の頂部の突出位置を周壁面より内側とするのが良い。
また、容器としての外観、成形性の点からも突出位置を周壁面より内側とすることが好ましい。
【0011】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成に加えて、
胴部を矩形筒状とし、相対向する一対の胴壁の左右中央位置に縦折目線の機能を発揮する縦山折溝リブを配設すると共に、この縦山折溝リブの上下両端近傍から胴壁の四方角部方向に傾斜折目線の機能を発揮する傾斜山折溝リブを配設し、
さらに縦山折溝リブの上下両端近傍の高さ位置に、水平折目線の機能を発揮する水平谷折溝リブを配設する。
【0012】
上記構成は、胴部を矩形筒状とした角形容器における折目線の具体的な配設態様に係るものであり、
まず、一対の縦山折溝リブを山折して胴部を扁平状に押し潰すと、この押潰し状の変形に伴なって縦山折溝リブの上下に位置する傾斜山折溝リブが山折り状態、そして水平谷折溝リブが谷折状態となり、一対の縦山折溝リブを稜線とした三角形状の壁部が外方への出張った状態となる。
そして、この状態で口筒部から肩部にかけての部分と底部を胴部方向に折り込むことにより、容器をコンパクトに押潰し状に折り畳むことができる。

【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成を有するものにあっては、特に、山折り変形の起点としての機能を発揮する折目線は、断面形状がU字状の底部を逆U字状の凸状部とした山折溝リブにより形成することにより、U字状の断面形状による山折変形に対する抵抗を小さく抑制すると共に、既に山折り状態の形状である凸状部を起点として、山折り変形をスムーズに、そして十分に進行させることができる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の合成樹脂製容器の一実施例を示す側面図である。
【図2】図1の容器の平面図である。
【図3】(a)は図1中のB−B線に沿って示す谷折溝リブの断面図、(b)はA−A線、C−C線に沿って示す山折溝リブの断面図である。
【図4】図1の容器の押潰し変形の態様を示す概略説明図である。
【図5】従来例の容器を示す斜視図である。
【図6】図5の容器の縦溝と斜行溝の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例に沿って、図面を参照しながら説明する。
図1〜3は本発明の合成樹脂製容器の一実施例を示すものであり、図1は側面図、図2は平面図、図3のうち(a)は図1中のB−B線に沿って示す谷折溝リブ11vの断面図、(b)はA−A及びC−C線に沿って示す山折溝リブ11mの断面図である。
この容器1はポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)樹脂製の2軸延伸ブロー成形壜体で、口筒部2、肩部3、正方形筒状の胴部4、底部5を有し、高さ224mm、横幅66mmで、容量が720mlの角形壜体である。
【0016】
胴部4の平断面形状は図2の平面図に示されるように、正方形の角部を角取りした形状であり、その周壁は4ケのパネル状の胴壁4wと角部を形成する4ケの角壁4cから形成されている。
【0017】
そして、胴壁4Wのうち相対向する一対の側壁4wsのそれぞれに、扁平状の押潰し変形の際に折目線の機能を発揮する多数の溝リブ11を配設している。
これら溝リブ11の断面形状は、図3(a)、(b)に示される2種類の断面形状のどちらかの形状であり、図3(a)は谷折りする部分に配設する谷折溝リブ11vで、従来から折目線に使用されている、断面形状がU字状の溝リブである。また、図3(b)は山折りする部分に配設する山折溝リブ11mで、全体としては図3(a)の谷折溝リブ11vと同様にU字状の断面形状を有するが、U字状の底部を逆U字状に凸状部13としている点が特徴である。
【0018】
本実施例の容器1の側壁4wsに配設され溝リブ11は、側壁4wsの左右中央部に縦方向に配設され縦折目線の機能を発揮する縦山折溝リブ11maと、この縦山折溝リブ11maの上下両端近傍から側壁4wsの四方角部方向に配設され傾斜折目線の機能を発揮する4ケの傾斜山折溝リブ11mbと、縦山折溝リブ11maの上下両端近傍の高さ位置に水平方向に配設され水平折目線の機能を発揮する4ケの水平谷折溝リブ11vaの計9ケである。
なお本実施例では、溝リブ11の溝幅Wは4mm、溝深さDは1mmであり、山折溝リブ11mの凸状部13の突出高さは、溝深さDの1/2の0.5mmとしている。
【0019】
ここで、図3(a)中の矢印の方向が谷折りの方向であり、図3(b)中の矢印の方向が山折りの方向であるが、図3(a)に示される谷折溝リブ11v近傍では、この谷折溝リブ11vを起点として容易に谷折りすることができるが、逆に山折り方向には、U字状の断面形状による山折変形に対する抵抗が大きくなり、十分な変形を達成することができない。
【0020】
一方、図3(b)に示される山折溝リブ11m近傍では、底部に突出状に形成される凸状部13を起点として容易に山折りすることができる。
なお、凸状部13の頂部が周壁面8より突出してしまうとラベルの貼付性やシュリンクラベルの回巻性を損なうので、山折溝リブ11mの凸状部13の頂部の突出位置を周壁面8より内側とするのが良い。
【0021】
次に、図4は9ケの溝リブ11を利用して容器1を扁平状に押潰し変形した状態を示す概略説明図である。まず、一対の縦山折溝リブ11maを山折して胴部4を扁平状に押し潰すと、この押潰し状の変形に伴なって縦山折溝リブ11maの上下に位置する4ケの傾斜山折溝リブ11mbが山折り状態になり、さらに水平谷折溝リブ11vaが谷折状態となり、一対の傾斜山折溝リブ11mbを稜線として、縦山折溝リブ11maの上下の計4箇所で、三角形状壁部9が外方への出張った状態となる。
【0022】
そして、この状態で、口筒部2から肩部3にかけての部分と底部5を前方(図中、白抜き矢印で示される方向)に折り込むことにより、容器1をコンパクトに押潰し状に折り畳むことができる。
特に実施例の容器1はPET樹脂製で、薄肉であっても比較的剛性が高いものであるが、本実施例のように山折溝リブ11mと谷折溝リブ11vを適宜配設することにより、押潰し変形を十分に達成することができる。
【0023】
以上、実施例に沿って本願発明の実施形態とその作用効果について説明したが、本願発明はこの実施例に限定されるものではない。
たとえば、実施例では角形壜体の例を説明したが、丸形壜体についても本発明の作用効果は十分に発揮される。また、容器はPET樹脂製のものに限定されることなく、使用目的に応じて適宜の合成樹脂を選択することができる。
また、溝リブの配設態様は上記実施例に限定されるものではなく、容器の形状により押潰し変形の態様を想定しながら、山折りする部分には山折溝リブを、谷折りする部分には谷折溝リブを適宜配設する中で、外観も考慮しながら最適な配設態様とすることができる。

【産業上の利用可能性】
【0024】
以上説明したように、本発明の合成樹脂製容器は折溝リブと谷折溝リブを適宜配設することにより、比較的高い剛性を有する容器であっても押潰し変形が十分に達成することができるようにしたものであり、使用後の廃棄処理を考慮した容器として幅広い利用展開が期待される。

【符号の説明】
【0025】
1 ;容器
2 ;口筒部
3 ;肩部
4 ;胴部
4w;胴壁
4ws;側壁
4c;角壁
5 ;底部
8 ;周壁面
9 ;三角形状壁部
11;溝リブ
11m;山折溝リブ
11ma;縦山折溝リブ
11mb;傾斜山折溝リブ
11v;谷折溝リブ
11va;水平谷折溝リブ
13;凸状部
101;縦溝
102;斜行溝
W ;溝幅
D ;溝深さ
H ;高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部(4)の上端から肩部(3)を介して口筒部(2)を起立設し、周壁に扁平状の押潰し変形のための折目線となる溝リブ(11)を配設した容器であって、前記押潰し変形の際に、谷折り変形の起点としての機能を発揮する折目線は、断面形状がU字状の谷折溝リブ(11v)により形成し、山折り変形の起点としての機能を発揮する折目線は、断面形状がU字状の底部を逆U字状の凸状部(13)とした山折溝リブ(11m)により形成したことを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
山折溝リブ(11m)の凸状部(13)の頂部の突出位置を周壁面(8)より内側とした請求項1記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
胴部(4)を矩形筒状とし、相対向する一対の胴壁(4w)の左右中央位置に縦折目線の機能を発揮する縦山折溝リブ(11ma)を配設すると共に、該縦山折溝リブ(11ma)の上下両端近傍から前記胴壁(4w)の四方角部方向に傾斜折目線の機能を発揮する傾斜山折溝リブ(11mb)を配設し、さらに前記縦山折溝リブ(11ma)の上下両端近傍の高さ位置に、水平折目線の機能を発揮する水平谷折溝リブ(11va)を配設した請求項1または2記載の合成樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−173681(P2010−173681A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17603(P2009−17603)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】