説明

合成樹脂製気泡ボード

【課題】機能性無機フィラーを用いた合成樹脂製気泡ボードにおいて、美観が損なわれることを防止する。
【解決手段】多数の突起部が形成された凹凸シート101における前記突起部の突起部先端側および開口側の両面に平坦シート102、103が融着されている合成樹脂製気泡ボードにおいて、平坦シート102、103の少なくとも一方に、主成分である合成樹脂に、機能性無機フィラーと吸湿剤とを混入する。吸湿剤の添加により水分を吸収させることができるので、合成樹脂製気泡ボードの成形時に平坦シート中に存在する水分が蒸発してシート表面に凹凸が形成されることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の突起部が形成された凹凸シートの両面に平坦シートを接合した合成樹脂製気泡ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、合成樹脂製気泡ボードに所望の機能を付与するために、平坦シートに機能性無機フィラーを含有させることを提案している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−297656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、無機フィラーは吸湿性を有するため、成形時の熱により無機フィラーが吸収していた水分が蒸発し、シート表面に凹凸ができることがある。このようなシート表面の凹凸は、合成樹脂製気泡ボードの美観を損ねるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は上記点に鑑み、機能性無機フィラーを用いた合成樹脂製気泡ボードにおいて、美観が損なわれることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の発明は、多数の突起部が形成された凹凸シート(101)における前記突起部の突起部先端側および開口側の両面に平坦シート(102、103)が融着されている合成樹脂製気泡ボードであって、前記平坦シート(102、103)の少なくとも一方は、主成分である合成樹脂に、機能性無機フィラーと吸湿剤が混入されていることを特徴としている。
【0006】
このように、合成樹脂に機能性無機フィラーを添加する際に吸湿剤を添加することで水分を吸収することができるので、合成樹脂製気泡ボード成形の際に水分が蒸発することがない。このため、合成樹脂製シートに機能性無機フィラーを添加した場合にもシート表面に凹凸が形成されることがなく、美観を損ねることを防止できる。吸湿剤としては、水和物を形成し、かつ、合成樹脂製気泡ボードの成形時の温度においても水和物の状態で安定している物質を用いることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では、前記平坦シート(102、103)の少なくとも一方は、複数層からなる多層シートとして構成されており、最外層に前記機能性無機フィラーと前記吸湿剤が混入されていることを特徴としている。このようにシート最外層に機能性無機フィラーに加えて吸湿剤を混入することで、シート表面における凹凸の発生を防止できる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明のように、前記機能性無機フィラーとしてタルク粉末を用いることができ、請求項4に記載の発明のように、前記吸湿剤として酸化カルシウムを用いることができる。
【0009】
また、請求項5に記載の発明のように、前記タルクと前記酸化カルシウムの含有量を、前記タルク1%に対して、前記酸化カルシウムを0.005〜0.1%とすることで、酸化カルシウムによる吸湿効果を充分に得ることができる。
【0010】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図1、図2に基づいて説明する。
【0012】
図1(a)は合成樹脂製気泡ボード100の斜視図であり、図1(b)は合成樹脂製気泡ボード100を分解した状態を示す斜視図である。
【0013】
図1(a)、図1(b)に示すように、気泡ボード100は合成樹脂製中空板から構成されている。このような気泡ボード100として、プラパール(登録商標)の商品名で知られているものを用いることができる。気泡ボード100は、凹凸シート101と、凹凸シート101の両面に接合された2枚の平坦シート102、103とからなる3層構造となっている。凹凸シート101には複数の中空状(例えば円柱状)の突起部がエンボス加工されており、凹凸シート101の突起部先端側(図1の上側)に第1平坦シート102が接合されている。また、凹凸シート101の突起部開口側(図1の下側)には第2平坦シート103が接合され、これにより空気が封入された密閉空間104が形成される。
【0014】
このような構成により、気泡ボード100は、軽量であり、また耐圧縮性、耐衝撃性に優れるという特性を有している。合成樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系重合体や再生PETのような分解性プラスチックを用いることができる。本実施形態では合成樹脂としてポリプロピレンを用いている。
【0015】
このような構成の気泡ボード100としては、単位面積当り重量(目付重量)が200グラム/m2〜3000グラム/m2程度のものがよく知られている。気泡ボード10は軟質の肉厚シートから構成され曲げ剛性を有しており、薄肉シートから構成され柔軟性を有する気泡シートと区別される。なお、本明細書中において合成樹脂製中空板とは、目付重量が200グラム/m2以上の気泡ボードを意味するものとする
図2は、合成樹脂製気泡ボード100の断面図である。図2に示すように、本実施例では第2平坦シート103が二層構造になっており、凹凸シート101と接合する第1層103aと、最外層となる第2層103bから構成されている。第1層103aと第2層103bの一体化は、共押出し、接着、融着など任意の手段で行うことができる。第1層103aは、合成樹脂のみから構成されており、第2層103bは、主成分である合成樹脂に機能性無機フィラーと吸湿剤が混入されている。
【0016】
機能性無機フィラーは、所望の機能にしたがって選択することができる。本実施形態では、気泡ボード100の剛性を増大させるために、機能性無機フィラーとしてタルク粉末を用いている。吸湿剤としては、水和物を形成し、かつ、合成樹脂製気泡ボード100の成形時の温度においても水和物の状態で安定している物質を用いる。具体的には、100℃を超えてもH2Oを放出しないことが必要であり、本実施形態では少なくとも230℃以下で水和物として安定している物質を用いている。本実施形態では、吸湿剤として酸化カルシウム(CaO)を用いている。本実施形態の第2層103bは、重量割合でタルクを15%、酸化カルシウム(CaO)を0.5%添加している。なお、酸化カルシウム(CaO)の含有量は、重量割合でタルク1%に対し、0.005〜0.1%とすることで充分な吸湿効果を得ることができる。
【0017】
以上の構成により、機能性無機フィラーとしてのタルク粉末の添加により合成樹脂製気泡ボード100の剛性の向上という機能を付与できる。さらに、吸湿剤の添加により合成樹脂製気泡ボード100中の水分を水和物の状態で固定できるので、合成樹脂製気泡ボード100の成形の際に水分が蒸発することがない。このため、合成樹脂製シートに機能性無機フィラーを添加した場合にもシート表面に凹凸が形成されることがなく、美観を損ねることを防止できる。
【0018】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、機能性無機フィラーとしてタルク粉末を用いたが、これに限らず、異なる種類の無機フィラーを用いてもよい。例えば、合成樹脂製気泡ボード100に導電性を付与することを目的とする機能性無機フィラーとして炭素粉末や金属粉末を用いることができる。導電性付与のために合成樹脂に炭素粉末を含有させる場合には、重量割合で40%程度添加する必要がある。さらに、合成樹脂製気泡ボード100の焼却時のダイオキシン発生防止を目的とする機能性無機フィラーとして、ドロマイトを用いることもできる。
【0019】
また、上記実施形態では、吸湿剤として酸化カルシウム(CaO)を用いたが、これに限らず、例えばシリカゲル(SiO2)や炭酸ナトリウム(Na2CO3)などを用いることができる。
【0020】
また、上記実施形態では、第2平坦シート103に機能性無機フィラーと吸湿剤を含有させるように構成したが、これに限らず、第1平坦シート102と第2平坦シート103の少なくとも一方に機能性無機フィラーと吸湿剤を含有させるようにすればよい。
【0021】
また、上記実施形態では、第2平坦シート103を二層構造にして最外層の第2層103bに機能性無機フィラーと吸湿剤を含有させるように構成したが、これに限らず、第2平坦シート103を機能性無機フィラーと吸湿剤を含有した一層のシートから構成されるようにしてもよい。
【0022】
さらに、第2平坦シート103を三層以上の多層構造としてもよい。この場合には、合成樹脂のみからなる第1層103aと合成樹脂に機能性無機フィラーと吸湿剤が添加された第2層103bとの間に、これらを接着する中間層を設けることで第1層103aと第2層103bの接着を強固にでき、積層材のシートとしての安定性を高めることができる。中間層は、基礎となる第1層103aと同種の合成樹脂であって、それよりもMFRが大きい値を示す合成樹脂、つまり溶融しやすく溶融粘度の低いものを使用するとよい。これにより、第1層103aへの機能性無機フィラー含有層103bの積層が容易になり、かつ、積層材の積層が強固になる。
【0023】
また、中間層に他の無機フィラーを添加することで強度を故意に低くし、中間層を破壊しやすいものとすることもできる。このような無機フィラーを中間層に添加することによって、使用済みの気泡ボードをリサイクルのために分別回収する場合、機能性無機フィラーを含有する第2層103bを第1層103aから容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は合成樹脂製気泡ボードの斜視図であり、(b)は合成樹脂製気泡ボードを分解した状態を示す斜視図である。
【図2】合成樹脂製気泡ボードの断面図である。
【符号の説明】
【0025】
100…合成樹脂製気泡ボード、101…凹凸シート、102…第1平坦シート、103…第2平坦シート、104…密閉空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の突起部が形成された凹凸シート(101)における前記突起部の突起部先端側および開口側の両面に平坦シート(102、103)が融着されている合成樹脂製気泡ボードであって、
前記平坦シート(102、103)の少なくとも一方は、主成分である合成樹脂に、機能性無機フィラーと吸湿剤が混入されていることを特徴とする合成樹脂製気泡ボード。
【請求項2】
前記平坦シート(102、103)の少なくとも一方は、複数層からなる多層シートとして構成されており、最外層に前記機能性無機フィラーと前記吸湿剤が混入されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製気泡ボード。
【請求項3】
前記機能性無機フィラーはタルク粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の合成樹脂製気泡ボード。
【請求項4】
前記吸湿剤は酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の合成樹脂製気泡ボード。
【請求項5】
前記機能性無機フィラーはタルク粉末であるとともに、前記吸湿剤は酸化カルシウムであり、
前記タルクと前記酸化カルシウムの含有量は、前記タルク1%に対して、前記酸化カルシウムが0.005〜0.1%であることを特徴とする請求項1または2に記載の合成樹脂製気泡ボード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−214440(P2009−214440A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61024(P2008−61024)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】