説明

合成蛍石回収方法及び回収装置

【課題】珪弗化水素酸を含む弗素含有排水を処理して、弗素を、純度97%以上かつ平均粒径5〜100μmの合成蛍石として回収する。
【解決手段】珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から弗素を合成蛍石として回収する合成蛍石回収方法であって、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水とナトリウム化合物を混合して珪弗化水素酸を分解させ、不溶性シリカと弗化ナトリウム水溶液との混合物が主体のシリカスラリーを生成する中和分解工程と、中和分解工程で生成したシリカスラリーから不溶性シリカを分離してシリカ分離水を得る分離工程と、シリカ分離水に対してカルシウム化合物を供給して、純度が97%以上、かつ平均粒径5〜100μmの弗化カルシウムを生成する晶析工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水、例えば、(1)液晶パネル、プラズマパネルなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)製造、太陽電池製造等の電子部品製造に係わる装置からの排水または該排水を前処理した排水、(2)FPD製造、太陽電池製造等の電子部品製造に用いられたPFCガス等を除害装置で分解して生成したガスを、水で洗浄することにより発生する排水または該排水を前処理した排水、(3)弗化水素製造施設で蛍石を分解して弗化水素を製造する際に副生する排水または該排水を前処理した排水、(4)燐酸製造施設で弗素燐灰石を分解して燐酸を製造する際に副生する排水または該排水を前処理した排水、などを処理して、弗化水素の原料として再利用に好適な純度97%以上、平均粒径が5〜100μm、好ましくは10〜50μmの合成蛍石として弗素を回収する合成蛍石回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工程から副生成物または廃棄物として排出される排水中に含まれる中性塩、廃酸、廃アルカリによる環境負荷を小さくし、かつ副生成物または廃棄物中の有用成分を回収して再利用できる技術を開発することは種々のプラントにおける大きな課題である。特に、廃棄物の発生量が大きく、かつ廃棄物中の有用成分が枯渇資源である場合は、緊急かつ重要な課題となる。
【0003】
例えば、半導体製造装置から発生する弗素含有排水中には、弗素が弗化物イオンの形態で存在しており、なおかつ珪素など不純物の含有量が極めて少量である。このため弗素のリサイクルが可能であり、既に実施されている。例えば特許文献1には、pH2以下の塩酸酸性条件下で晶析操作を行うことにより、弗素の濃度が高い弗素含有排水から弗化水素製造に適した純度及び粒径の合成蛍石を回収する方法が開示されている。特許文献2には、特許文献1に記載の方法で回収した合成蛍石から、省エネルギーで効率的に弗化水素酸を製造する方法が開示されている。
【0004】
また、半導体製造装置から発生する弗素の濃度が希薄なリンス水及び除害装置から発生する希薄な洗浄水は、弗素濃度が稀薄なため、特許文献1に記載の方法では単位弗素量あたりの装置が大きくなり非効率となるが、特許文献3に記載の電気透析装置及び方法を用いて弗素を分離濃縮して弗素の濃度を高めた弗素含有排水を得ることにより、特許文献1の方法を用いて弗化水素製造に適した粒径及び純度の合成蛍石が回収できる。
【0005】
即ち、半導体製造装置から発生する珪素の含有量が少ない弗素含有排水については、高濃度および低濃度排水共に既に弗素のリサイクルが可能となっている。
【0006】
近年では、珪素を多量に含む弗素含有排水や、珪弗化水素酸(HSiF)を主体とする排水の発生量が増加している。例えば、FPDや太陽電池などの製造工程では、珪弗化水素酸を濃厚に含む弗素含有排水が大量に発生してくる。弗素の形態は、珪弗化物イオンであり、弗素に対して珪素の含有量が多い。特にFPD製造装置からは、近年大型画面化と大量生産のため、珪弗化水素酸の形態で珪素を含む弗素含有排水の発生量が急増している。また太陽電池製造装置からも、生産量の拡大に伴い珪弗化水素酸を含む弗素含有排水が増加している。
【0007】
また、弗化水素及び燐酸の製造工程からは副生品として珪弗化水素酸が発生する。蛍石または弗素燐灰石には珪素(Si)が不純物として含まれており、製造工程の中で硫酸処理をした際に、珪素(Si)が弗化水素(HF)と反応し四弗化珪素(SiF)が生成され、水と反応して珪弗化水素酸が副生する。
【0008】
この珪弗化水素酸は、石英ガラスの表面処理剤やめっき浴の添加剤などに使われているが、その用途と量は限定的で、珪素が含まれているため、有用物質である弗素のリサイクルが困難であり、これまで商業的に実施された例は少ない。これは、珪弗化水素酸を分解し、生成した弗素を弗化カルシウム(CaF)のように有用な弗素化合物の形で回収しようとすると、以下のような問題があるからである。
【0009】
(1)カルシウム化合物による珪弗化水素酸の分解とCaF晶析は、溶解・析出現象が複雑で、シリカとCaFを安定して分離する操作と制御が困難である。
(2)分解して生成した珪素は、凝集してゲル状のシリカ(SiO)になりやすく、回収しようとする弗化カルシウムとゲル状のシリカとの分離が困難である。
(3)回収した弗化カルシウムの粒径が小さく、粉末状なので弗化水素の製造に使用すると弗化水素製造装置の内部で粉塵が発生し、弗化水素の製造に支障が生じる。
(4)回収した弗化カルシウム中に不純物として珪素が混入し、回収物の純度を低下させ弗化水素製造の際に収率を下げると同時に珪弗化水素酸が大量に副生し、その処理がまた必要となるという支障が生じる。
(5)弗化カルシウムではなく、弗化マグネシウム(MgF)の形態で回収しようとすると、弗化マグネシウムを原料として弗化水素を製造する製造装置がなく、弗化マグネシウムの用途が無いといった問題があり実用化されていない。
【0010】
このため、珪弗化水素酸は、殆ど水酸化カルシウム(Ca(OH))を用いる凝集沈殿法により処理され、この処理によって、再利用が不可能で、取扱い性の悪いシリカとCaFが混合した状態の汚泥が大量に発生するという問題があった。この弗素に由来する汚泥の一部は、セメント原料や路盤材等として再利用されているが、再利用品の強度的な問題や、成分の溶出の問題などがあり、再利用量の拡大は難しい。このため、汚泥の殆どは埋立て処分されてきたが、日本では埋立て処分地が限定されていて、しかも新規の処分地の立地が困難なことから、継続的な処分場所の確保が難しく珪弗化水素酸を含む弗素含有排水を発生するプラントでは汚泥の処分先の確保が深刻な問題となりつつある。
【0011】
一方で、蛍石は、埋蔵が偏在した枯渇資源でもあり、リサイクルが強く望まれている資源でもある。蛍石の生産量の半分以上は中国産である。蛍石は、(1)弗化水素、フロンガス、弗素樹脂などの弗素化学品の原料、(2)鉄鋼精錬時の融剤、(3)ガラス、ホウロー上薬における乳濁剤や融剤、などで使われている。特に日本で使用する蛍石は、フッ酸を出発物質とする弗素化学品の原料として用いられるものが多く、純度が97%以上と高いアシッドグレード蛍石が求められる。このため、不純物の少ない中国産蛍石への依存度が高い。フッ酸製造に適した蛍石の粒径は、一般に5〜100μmの範囲である。
【0012】
ところが、最近、蛍石や弗化水素の価格が急騰し、需要が増加している弗化水素の量の確保が困難化するという問題が生じている。原因は、中国国内での弗化水素の需要の急増及び資源保護政策による蛍石の輸出枠の設定である。
【0013】
このように処分問題と資源確保の観点から、従来汚泥として処分していた珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から弗素を合成蛍石(弗化カルシウム結晶)のような有用な形で回収、リサイクルして資源を確保するとともに、結果として、汚泥を減少させることが益々重要になってきている。また、天然の蛍石に比べて、純度が低い、粒径が小さいまたは大きすぎるというような合成蛍石でも、従来は天然の蛍石に一部混合させることでリサイクルしていたが、今後は中国からの天然蛍石輸入量が減少していること、及び回収処理の対象となる珪弗化水素酸溶液が大量となることから、純度が低い、粒径が小さいまたは大きすぎるといった合成蛍石では天然蛍石に混合して使用することが困難になると考えられる。
【0014】
したがって、今後は、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から、弗素を、天然蛍石と同等以上の高純度で、かつ弗化水素製造に適正な粒径を有する合成蛍石として回収し、回収した合成蛍石だけで弗化水素を製造可能とすることが、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水を継続してリサイクルするためには必要である。また、合成蛍石で弗化水素を製造する工程が従来の天然蛍石から弗化水素を製造する工程に比較して省エネルギーで効率的であれば更に好ましい。
【0015】
このように珪弗化水素酸をカルシウム化合物と反応させ、合成蛍石(CaF)を生産して弗化水素酸の原料とするリサイクル方法が望まれており、これまで世界各国で多くのプロセス開発が行なわれてきた。
【0016】
珪弗化水素酸を多く含む弗素含有排水から弗化カルシウムを回収して、弗素化学の最も重要なスタート物質である弗化水素の生成を可能にする種々の方法が知られている。しかしながら、広く商業的に行なわれている方法がないのが現状である。珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から弗素等の有用物質を回収する従来技術としては、以下に示すようなものがある。
【0017】
特許文献4には、2.5〜6%の濃度の珪弗化水素酸溶液を35〜130°Fの範囲でpH3.5〜6.7に調整して炭酸カルシウム(CaCO)と反応させてコロイド状シリカを含む水溶液から沈殿したCaFを分離回収する方法が開示されている。しかし、この方法では4〜7%のSiOをCaF中に含んでしまうという欠点がある。
【0018】
特許文献5には、4%以下の珪弗化水素酸溶液にまず当量の85%以下の炭酸カルシウムを加えて、コロイダルシリカを含む水溶液から生成した高純度なCaFを分離回収した後、更に炭酸カルシウムを加えてpHを7〜7.3にすることにより、生成したCaFを含む固形分を分離することにより弗素を含まないシリカも得る方法が開示されている。この方法では、SiO含有率が1.5%以下のCaFが得られるが、反応速度が遅いため、得られるCaFの粒径が小さいという欠点がある。また、反応時間を長く取りすぎると水和したシリカがCaFと共沈してCaFの純度を下げてしまうという制約もある。
【0019】
特許文献6には、炭酸カルシウムに3倍量以上の水を加えた炭酸カルシウム懸濁液を0〜40℃に保ち、第1段階では当量以上の珪弗化水素酸溶液をpHが2〜3の範囲で加えて反応させ、引続き第2段階では、炭酸カルシウムを加えてpHを4〜6に調整することにより、反応で生成したゾル状の水溶性SiOをシリカの含有量が少ない合成蛍石から分離する方法が開示されている。しかし、この方法で得られる合成蛍石は、85%程度の純度しか得られず、11%程度の炭酸カルシウム及び3%程度のシリカを不純物として含み、弗化水素酸の原料には不適切であると考えられる。
【0020】
特許文献7には、予め調整した生石灰(CaO)と水酸化ナトリウムの混合水溶液中に、pH11以上を保持しながら、珪弗化水素酸溶液を加えていき、沈殿したCaFをろ過して回収する方法が開示されている。しかし、この方法で得られる合成蛍石は、85%程度の純度しか得られず、10%近くのシリカを不純物として含み、弗化水素酸の原料には不適切であると考えられる。
【0021】
特許文献8には、珪酸イオンを含む弗素含有排水のpHを3〜7に保ちながら、硫酸マグネシウムを添加して生成した弗化マグネシウム(MgF)を、凝集分離または遠心分離して、弗化マグネシウムの含有率が高い弗化マグネシウムスラッジを回収する方法が開示されている。しかし、この方法では、弗化マグネシウムの生成速度が遅いので、回収装置が大きくなるという問題がある。また、この方法で得られる弗化マグネシウムを原料にして弗化水素を製造しようとすると、弗化水素製造装置の中での流動性が蛍石を原料とした場合とでは大きく異なるので、既存の弗化水素製造装置は使用できない。現状では弗化マグネシウムを原料として使用する弗化水素製造方法及び装置はないので、弗化マグネシウムとして回収してもリサイクルできないという問題がある。
【0022】
特許文献9には、濃厚な珪弗酸溶液を中和処理することにより生成した100μm以上の大なる単結晶の弗化ナトリウムと5μm以下のシリカ粒子の混合スラリーを得る方法が開示されている。この方法では、弗素は弗化ナトリウム結晶として回収されるので、従来方式の弗化水素製造装置を用いて弗化水素を製造する時の原料としてリサイクルすることはできない。
【0023】
特許文献10には、珪弗化水素酸排水にナトリウム化合物を加えてpHを7〜9に制御し、弗化ナトリウムが飽和している状態で、沸点で反応させて、アモルファスシリカを生成させた後に、希釈水を加えて弗化ナトリウムの結晶を溶解させて、アモルファスシリカとフッ化ナトリウム溶液を分離し、分離した弗化ナトリウム水溶液を蒸発濃縮して得られた弗化ナトリウム結晶に硫酸を加えて弗化水素を回収する方法が開示されている。この方法では、溶液を沸点まで加熱する操作が必要な上、弗素は弗化ナトリウム結晶として回収されるので、従来方式の弗化水素製造装置を用いて弗化水素を製造する時の原料としてリサイクルすることはできない。
【0024】
以上のように、従来技術では、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水にカルシウム化合物を加えて回収した合成蛍石は、珪素を不純物として含むなど純度が低く、かつ粒径が小さいため、弗化水素製造の原料として使用するには、天然の蛍石に少量混合して使用せざるを得ないという制約があった。
【0025】
また、弗化水素の原料として好適な中国産蛍石は、中国の輸出許可枠の制限があり日本への輸入量が著しく減少していること、及び各産業から排出される珪弗化水素酸を含む弗素含有排水の急増が見込まれていることから、従来技術を用いて回収する合成蛍石を天然蛍石に混合して使用することはできなくなると考えられる。
【0026】
以上のような問題があるため、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から、弗素を、高純度で適正な粒径を有し、回収した合成蛍石だけで弗化水素を製造することが可能な高グレードの合成蛍石として回収する技術の開発が望まれていた。
【0027】
【特許文献1】特開2005−206405号公報
【特許文献2】特開2007−112683号公報
【特許文献3】特開2007−14827号公報
【特許文献4】米国特許第2780521号明細書
【特許文献5】米国特許第2780523号明細書
【特許文献6】米国特許第3907978号明細書
【特許文献7】米国特許第5910297号明細書
【特許文献8】特開2006−61754号公報
【特許文献9】特公昭50−18477号公報
【特許文献10】米国特許第4308244号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水を処理して、回収した合成蛍石だけで従来方式の弗化水素製造装置を用いた弗化水素の製造が可能となる、高純度で粉塵とならない適正な粒径を有する合成蛍石、すなわち純度97%以上かつ平均粒径5〜100μmの合成蛍石を回収できるようにした合成蛍石回収方法及び回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するため、本発明の合成蛍石回収方法は、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から弗素を合成蛍石として回収する合成蛍石回収方法であって、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水とナトリウム化合物を混合して珪弗化水素酸を分解させ、不溶性シリカと弗化ナトリウム水溶液との混合物が主体のシリカスラリーを生成する中和分解工程と、前記中和分解工程で生成したシリカスラリーから不溶性シリカを分離してシリカ分離水を得る分離工程と、前記シリカ分離水に対してカルシウム化合物を供給して、純度が97%以上、かつ平均粒径5〜100μmの弗化カルシウムを生成する晶析工程を有する。
【0030】
珪弗化水素酸溶液に水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のナトリウム化合物を加えて、pHを7〜10に制御すると、珪弗化水素酸は、中和分解して、不溶性シリカと弗化ナトリウム水溶液との混合物が主体のシリカスラリーが生成される。例えば、濃度1.5%−Fの珪弗化水素酸(0.37%−Si)を対象とした場合を例とすると、中和分解後のシリカスラリーから不溶性シリカを分離して得られるシリカ分離水中のシリカ濃度は、SS性および溶解性を合わせて100〜1000mg−Si/L程度である。一般的な半導体工場で発生する弗素排水中に含まれるシリカ濃度より高いが、大半のSiが除去できる。そして、上澄水として得られるシリカ分離水(pHは中性から弱アルカリ性)に対して、例えば水温30〜80℃および/またはpH2以下の条件でカルシウム化合物を添加した晶析操作を行うことで、平均粒径5〜100μmかつ純度97%以上の合成蛍石を回収することができる。また、回収された合成蛍石は、アシッドグレードの天然蛍石同様のSi含率1%−SiO以下レベルが得られる。
【0031】
前記中和分解工程において、前記シリカスラリー中に含まれる弗化ナトリウム結晶の析出を防止するか、または弗化ナトリウム結晶を溶解させる希釈水を加えることが好ましい。
弗化ナトリウムの濃度が高く、溶解度を越えて析出物が生じる場合は、弗化ナトリウム結晶の析出を防止するか、または弗化ナトリウム結晶を溶解させる希釈水を加えることで弗化ナトリウム水溶液を得ることが出来る。弗化ナトリウムの濃度が低く、溶解度以下である場合は希釈水を必要としない。加える希釈水は最低水量とすることが排水の量を増やさない点で好ましい。
【0032】
前記中和分解工程におけるpH制御範囲が7〜10で、前記ナトリウム化合物は、炭酸ナトリウムおよび/または水酸化ナトリウムであることが好ましい。前記晶析工程における水温を30〜80℃および/またはpHを2以下とすることが好ましい。
【0033】
前記分離工程と前記晶析工程前との間に、前記シリカ分離水のpHを調整するpH調整工程を行うことが好ましい。前記晶析工程で得られた弗化カルシウムを脱水し合成蛍石として回収する蛍石回収工程を更に有することが好ましい。
【0034】
前記中和分解工程に先立って、前記珪弗化水素酸を含む弗素含有排水に安定剤を添加する添加工程を行うことが好ましい。前記安定剤は、例えば過酸化水素水やオゾンなどから選ばれた少なくとも一種の酸化剤である。
【0035】
これまで、珪弗化水素酸の中和分解時に生成する不溶性シリカは不安定であり、時間が経過するとシリカ粒子が凝集してゲル化が進行し、沈降分離法などによる固液分離操作または脱水操作が困難になる場合があった。また、上澄水中には沈降しがたい不溶性シリカが残り、後工程の晶析工程への悪影響が生じる場合や、回収された合成蛍石のSi含率が天然蛍石に比べて高い場合があった。分離工程で高分子凝集剤等の凝集剤を添加することにより、脱水操作及び上澄水の改善が得られるが、凝集剤の効果では、原水の濃度が高い場合において、残存Siが晶析工程に影響を与える場合があった。これに対して、珪弗化水素酸溶液に、予め、安定剤として過酸化水素等の酸化剤を加えておくことで、中和分解工程で容易かつ確実に安定な不溶性シリカと、清澄な上澄水が得られる。
【0036】
前記分離工程の脱水操作で得られた脱離水を中和分解工程に返送するか、または晶析工程、またはpH調整工程に導入するようにしてもよい。
【0037】
本発明の合成蛍石回収装置は、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から弗素を合成蛍石として回収する合成蛍石回収装置であって、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水とナトリウム化合物を混合して珪弗化水素酸を分解させ、不溶性シリカと弗化ナトリウム水溶液との混合物が主体のシリカスラリーを生成する中和分解装置と、前記中和分解装置で生成したシリカスラリーから不溶性シリカを分離してシリカ分離水を得る分離装置と、前記シリカ分離水に対してカルシウム化合物を供給して、純度が97%以上、かつ平均粒径5〜100μmの弗化カルシウムを生成する晶析装置を有する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の合成蛍石回収方法及び回収装置によれば、珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から、弗素を、弗化水素の原料となる高純度で適正粒径の合成蛍石として回収できる。しかも、この回収された合成蛍石は、弗化水素を省エネルギーで製造するのに使用されることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態の具体例を図面を参照して説明する。なお、以下の例において、同一または相当する部材には同一符号を付して、重複した説明を省略する。
【0040】
図1は、本発明の実施形態の合成蛍石回収方法を示すフローチャートで、図2は、図1に示すフローチャートにおける、添加工程、中和分解工程及び分離工程を行って、シリカ分離水(上澄水)を得るまで処理を行う合成蛍石回収装置の概要を示す概要図である。図2に示すように、シリカ分離水(上澄水)を得るまで処理を行う合成蛍石回収装置は、図1に示す添加工程を行う安定剤添加装置10と、図1に示す中和分解工程を行う中和分解装置20と、図1に示す分離工程を行う分離装置30と、図1に示すpH調整工程を行うpH調整装置60を有している。
【0041】
安定剤添加装置10は、混合槽11と、原水としての珪弗化水素酸を含む弗素含有排水を混合槽11内に導入する原水導入管12と、混合槽11内の原水に安定剤を添加する安定剤供給部13と、混合槽11内の原水を攪拌する攪拌羽根14を回転させるモータ15を備えている。そして、混合槽11には、混合槽11内の安定剤を添加して攪拌羽根14で攪拌した原水を混合槽11から引抜く原水引抜き管16の一端が接続され、この原水引抜き管16の内部には、ポンプ17が介装されている。
【0042】
この安定剤添加装置10は、下記の中和分解工程で生成させる不溶性シリカの固液分離性をより改善させるため、原水(珪弗化水素酸を含む弗素含有排水)に安定剤を添加する、図1に示す添加工程を行うためのものである。下記の中和分解工程で生成させる不溶性シリカの固液分離状態が良好であるか、または不溶解シリカの十分な沈降時間が確保できる場合は、安定剤添加装置を設けることなく、添加工程を省略することができる。つまり、図3乃至図5に示すように、原水導入管12を中和分解装置20の中和分解槽21に接続して、原水を中和分解槽21内に直接導入するようにしてもよい。
【0043】
安定剤としては、酸化剤が効果がある。酸化剤の種類に特に制約なく、過酸化水素、オゾン及び次亜塩素酸など、既知の酸化剤が使用できる。特に、過酸化水素は、液体で取扱いが容易であり、反応後は排水性状も変化しないことから好適である。
【0044】
原水に安定剤を添加しない場合、下記の中和分解工程で発生する自然酸化で生成される不溶性シリカ(シリカフロック)がゲル状態となる場合がある。このときは、(1)不溶性シリカの沈降速度が小さい、(2)沈降後に得られる濃縮シリカスラリーの不溶性シリカ濃度が低く圧密性が悪い、(3)濃縮シリカスラリーの脱水が困難になる、(4)シリカ分離水(上澄水)中にゲル状の不溶性シリカが残存してSS濃度が増加する、(5)不溶性シリカが壁面に付着して水路を閉塞する、という悪影響がある。
【0045】
これに対して、原水に安定剤を添加し、シリカが不溶化する際のゲル化を防止して粒子状シリカとすることで、(1)不溶性シリカの沈降速度が高まる、(2)沈降後の不溶性シリカ濃度を高め圧密性を改善する、(3)濃縮シリカスラリーの脱水を容易とする、(4)シリカ分離水(上澄水)中の残存SS濃度を低減する、(5)不溶性シリカの壁面への付着が減少することによる水路閉塞を防止する、という効果が得られる。
【0046】
原水に安定剤を添加しておくことにより、安定な不溶性シリカと、清澄な上澄水が得られる理由は明らかではないが、中和分解工程で発生する珪素(Si)の表面を速やかに化学酸化させて緻密な化学酸化膜を有するシリカ(SiO)粒子を形成することにより、シリカ粒子同士の凝集やゲル化が抑制され、結果として沈降性の良いシリカ粒子が形成され固液分離が容易になると考える。
【0047】
安定剤としての過酸化水素の添加量は、必ずしも下記の化学式1に示される、珪弗化水素酸の分解に起因する珪素負荷の当量分だけ添加する必要は無い。安定剤としての過酸化水素の添加量は、珪弗化水素酸濃度、中和分解pH、含有不純物濃度等の中和分解条件の影響を受けるが、一般的に珪素当量に対して、0.05〜1で効果が得られるので好ましい。
Si+2H→SiO+2HO (化学式1)
【0048】
中和分解装置20は、図2に示すように、前記原水引抜き管16の他端を上部に連結した中和分解槽21と、この中和分解槽21内に導入された原水にアルカリ剤を供給するアルカリ剤供給部22と、中和分解槽21内に希釈水を供給する希釈水供給部23と、中和分解槽21内の液体を攪拌する攪拌羽根24を回転させるモータ25と、中和分解槽21内の液体(シリカスラリー)のpHを測定するpH測定器26を備えている。そして、中和分解増21には、中和分解増21内の液体(シリカスラリー)を引抜くシリカスラリー引抜き管27の一端が接続されている。pH測定器26とアルカリ剤供給部22で、中和分解槽21内の液体(シリカスラリー)のpHを、例えば7〜10に調整するpH濃度調整部が構成される。
【0049】
この中和分解装置20は、珪弗化水素酸を分解させて不溶性シリカと弗化ナトリウム水溶液との混合物が主体のシリカスラリーを生成する、図1に示す中和分解工程を行うためのものである。この中和分解工程では、下記の化学式2,3に示されるように、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム等のナトリウム化合物の添加によって珪弗化水素酸が分解され、珪素は不溶性シリカとなり沈降し、弗素は弗化ナトリウム水溶液となる。この中和分解反応が起こるpH範囲は7〜10である。
SiF+3NaCO→6NaF+SiO↓+3CO↑+HO (化学式2)
SiF+6NaOH→6NaF+SiO↓+4HO (化学式3)
【0050】
図7に、珪弗化水素酸水溶液(濃度4.3%−F)を水酸化ナトリウム溶液で中和滴定した時のpHとろ液Si濃度との関係を測定した結果を示す。図7においては、水酸化ナトリウム溶液の添加による希釈の影響は補正してある。図7から、pHが1〜7の範囲では、pH増加と共にろ液のSi濃度が急激に低下し、珪弗化水素酸が分解されて不溶性の珪素化合物(pH6以下ではNaSiF、pH6以上ではシリカ)が生成され、孔径1μmのろ紙でろ過したろ液のシリカ濃度が低くなることが分かる。また、ろ液シリカ濃度は、pH9を越えた時点で上昇に転じ、pH10以上では急激に増加することが確認される。この場合では、pH7〜10の範囲において、ろ液シリカ濃度1000mg−Si/L以下、特にpH7.5〜9.5の範囲においては、ろ液シリカ濃度500mg−Si/L以下の弗化ナトリウム水溶液が得られた。
【0051】
上記の弗化ナトリウム水溶液が沈降分離操作の上澄水として得られる場合において、溶解性とみなされるシリカの濃度は、100〜500mg−Si/L程度である。SS状態で浮遊して存在するシリカ濃度は、100〜500mg−SiO/L(47〜230mg-Si/L)程度であり、原水に安定剤を添加しない場合のSS状態で浮遊して存在するシリカ濃度は、100〜1000mg−SiO/L程度である。
【0052】
弗化ナトリウム(NaF)の溶解度は、常温で約40g−NaF/L(18g−F/L)であり、これより濃厚な珪弗化水素酸を中和分解した場合には弗化ナトリウムの結晶がシリカスラリー中に析出する。この場合は、希釈水を加えることにより、弗化ナトリウム結晶の析出を防止するか、または弗化ナトリウム結晶を溶解させることができる。この例では、希釈水を希釈水供給管23から中和分解槽21内に供給するようにしているが、ナトリウム化合物の水溶液として加えるようにしても良いし、予め弗素含有排水に加えておいても良く、任意の方法がとれる。また、濃縮シリカスラリーを脱水・洗浄する際の洗浄水によりNaF析出物を溶解させるようにしても良い。
【0053】
なお、図3に示すように、分離装置30の下流側に弗素濃度計28を設け、この弗素濃度計28で測定した弗化物イオンの濃度を基に、希釈水供給管23に設けたバルブを自動的に開閉制御して、希釈水の供給量を制御するようにしてもよい。図3はモーター29を利用して制御する事例である。この弗素濃度計28は、下記の晶析工程において、カルシウム化合物の注入量を制御するために設けたものと兼用であっても良い。
【0054】
珪弗化水素酸を分解させる反応は、ナトリウム化合物がやや過剰で、かつシリカの溶解度が小さいpH7〜10、好ましくはpH7.5〜9.5の範囲で行うのが好ましい。つまり、pH7以下ではナトリウム化合物が不足しており珪弗化水素酸が完全に分解しない。また、分解して生成したシリカの溶解度もpH7以上の場合に比べてやや大きいので、弗化ナトリウム水溶液中のシリカ濃度を高めてしまうので好ましくない。また、生成した不溶性シリカが微細な粒子となるか、またはゲル状となる傾向があるため沈降速度が小さくなり、沈降分離装置が大きくなるまたは固液分離が困難になるという問題もある。pH6〜7の状態が一時的に保持される構成の中和分解工程、例えば、配管または槽内で珪弗化水素酸含有排水と少量のアルカリが混合されてpH6〜7となる状態となるのは、上記の問題がある為、好ましくない。これは、弗素濃度をNaF溶解度以下とするために加える希釈水を混合する場合においても同様である。珪弗化水素酸を含む排水を、直接的にpH7〜10、好ましくはpH7.5〜9.5の範囲に保持された中和分解槽に供給する構成が好ましい。pH10以上では、シリカの溶解度が極めて大きくなるので、弗化ナトリウム水溶液中のシリカ濃度を高めてしまうので好ましくない。
【0055】
不溶性シリカの性状は、中和分解時のpH条件で左右されるため、安定した性状の粒子状の不溶性シリカを得るためには、pHが上記範囲となるように保持し、なおかつ局所的にpHが上記範囲を越えることをなくす為に、弗素含有排水とナトリウム化合物を均一混合するように撹拌しながら供給することが好ましい。また、中和分離槽21のpHをより厳密に制御する際は、図8に示すように、濃厚なナトリウム化合物水溶液を加えてpHを6以下に調整した後に、直ちに希薄なナトリウム化合物水溶液を加えることにより所望のpHに微調整することが好ましい。
【0056】
中和分解反応系の温度は特に制限が無く、常温から沸点までの範囲で運転可能であるが、20〜40℃が効率的で好ましい。20℃以下では珪弗化水素酸の分解速度が遅く、反応系が大型化する。40℃以上では、溶液の加熱装置や排ガスの冷却・洗浄装置が必要となる。中和分解反応の早さは水温など中和分解条件により異なるが、分解反応を伴うため通常のpH調整に用いられる時間より長い。反応時間としては15〜120分、好ましくは60〜90分である。
【0057】
加えるナトリウム化合物としては、一般的に用いられる水酸化ナトリウムなど特に制約は無いが、炭酸ナトリウムがより好ましい。炭酸ナトリウムは、他のナトリウム化合物に比べて溶液のpH調整の制御が容易で好都合であることと、生成した不溶性シリカが粒子性となる確度が高まる傾向があり、固液分離がより容易となるからである。
【0058】
分離装置30は、図2に示すように、前記シリカスラリーを引抜くシリカスラリー引抜き管27の他端に接続された沈殿槽31と、この沈殿槽31から上澄水としてのシリカ分離水を引抜くシリカ分離水引抜き管32と、沈殿槽31の底部に溜まった汚泥(濃縮シリカスラリー)を引抜く汚泥引抜き管33を備えている。そして、汚泥引抜き管33は脱水機34に接続され、汚泥引抜き管33を通して引抜かれた汚泥は、脱水機34で脱水されシリカケーキとして排出される。また、脱水機34には、脱離水を分離装置30の下流側に供給する脱離水供給管35と、中和分解装置20の上流側に供給する脱離水供給管36が接続されている。図2では、脱離水供給管35および脱離水供給管36が共に図示されているが、いずれか一方が設けてあればよい。
【0059】
分離装置30は、中和分解工程で生成したシリカスラリーから不溶解シリカを分離する、図1に示す分離工程を行うためのものである。分離工程では、沈殿槽31を利用した固液分離操作により、シリカスラリーから不溶性シリカを濃縮シリカスラリーとして分離する。また、脱水機34による脱水操作により濃縮シリカスラリーの脱水を行い、濃縮シリカスラリーを、含水率を低めたシリカケーキとして排出する。固液分離操作及び脱水操作に用いる方法は、既知の操作が制約無く使える。例えば、沈降分離操作とフィルタープレスまたは遠心脱水機などを用いた脱水操作を組合せて清澄な上澄み水とシリカケーキを得る方法が好適に用いられる。固液分離操作と脱水操作を一つの装置で行うこと、例えば、シリカスラリーを直接的に脱水装置にかける方法も可能である。
【0060】
分離装置による固液分離操作では、効率を高めるために、無機凝集剤または高分子凝集剤等の凝集剤を用いても良い。使用できる凝集剤は特に制約無く既存の凝集剤が使用可能である。
【0061】
例えば、図4に示すように、図2に示す分離装置30の他に第2の分離装置30aを備え、この分離装置30,30a間に混合槽41及び凝集槽42を配置するようにしても良い。なお、第2の分離装置30aにおいて、分離装置30と同一部材には、同一数字の後に“a”を付した符号を使用している。混合槽41には、混合槽41内に凝集剤を供給する凝集剤供給部43、混合槽41内にpH調整剤を供給するpH調整剤供給部44、混合槽41内の液体を混合する回転羽根45を回転させるモータ46及び混合槽41内の液体のpHを測定するpH測定器48が備えられている。凝集槽42には、凝集槽42内の液体を混合する回転羽根49を回転させるモータ50が備えられている。
【0062】
図4に示す例の場合、固液分離操作を2段階に分け、分離装置30による沈降分離操作により不溶性シリカの大部分を除去し、その上澄水中の難固液分離性の不溶性シリカのみに対して凝集剤を添加・混合し、第2の分離装置30aによる沈降分離操作により不溶性シリカを更に除去するようにしている。この例は、分離対象となるSi負荷を小さくできるので望ましく、凝集剤の使用量を低減させることが出来る。凝集槽42は、凝集フロックを粗大化させるためのものであり、例えば凝集フロックの沈降性が極めて高い場合には凝集槽を省略してもよい。
【0063】
また、図5に示すように、シリカ分離水引抜き管32にろ過器51を設置し、ろ剤または膜を利用したろ過操作により、固液分離後の不溶性シリカ濃度を低減させるようにしてもよい。このろ過操作は、pH調整工程の前に設けても良いし、pH調整工程の後に設けても良い。pH調整工程の後に設ける場合はpHの変化により生成した物質をろ過できる点では好ましい。
【0064】
この例では、脱水機34に脱離水を分離装置30の下流側に供給する脱離水供給管35を接続して、脱水操作で得られた脱離水を上澄水(シリカ分離水)と混合して晶析工程の原水として供給するようにしている。また、脱離水中に残存する不溶性シリカに由来するSi濃度が高く、晶析工程で得られる合成蛍石のSi含率、または晶析挙動に悪影響を及ぼす場合には、図2に示すように、脱水機34に脱離水を中和分解装置20の上流側に供給する脱離水供給管36を接続して、脱離水を中和分解工程に戻すことが望ましい。脱水する際に脱水助剤を併用して、脱離水中のSS濃度を低減することも勿論可能である。
【0065】
脱水操作で得られたシリカケーキには母液由来の弗化ナトリウムが付着している。シリカケーキの廃棄またはリサイクルに弗化ナトリウムの付着が支障となる場合は、洗浄と脱水を繰り返すことで弗化ナトリウムを除去することができる。
【0066】
図2に示すように、pH調整装置60は、pH調整槽61と、pH調整槽61にpH調整剤を供給するpH調整剤供給部62を備えている。このpH調整装置60は、晶析工程における晶析槽pHをより酸性側に調整する、図1に示すpH調整工程を行うためのもので、晶析工程における晶析槽pHをより酸性側に調整する必要がない場合は省略される。このpH調整装置60によるpH調整工程では、固液分離工程で得られた弗化ナトリウム水溶液に対して塩酸または硝酸等の酸(pH調整剤)を加える。この操作により、下記の晶析槽74におけるpHがより低下して、CaFの溶解度が高まり、晶析における微細な結晶核の発生が抑制されて、平均粒径が大きくなる効果が得られる。また、排水中不純物のカルシウム化合物、例えばリン酸カルシウムの溶解度も高まり、弗化カルシウムと共に析出する現象を低減させることが出来る。これによって、リン含率が低いCaF結晶とすることができる。
【0067】
また、中性からアルカリ条件下では水酸化物を形成して析出する重金属イオンが排水中に不純物として含まれている場合でも、pHが酸性化することにより水酸化物を形成せず、イオンとして溶解しているので、同様に重金属イオン濃度がより低い弗化カルシウム粒子とすることができる。好ましくは、pHを2以下とすることで、これらの効果をより高く発現させることが出来る。
NaF+HCl→HF+NaCl (化学式4)
【0068】
使用する酸としては高い効果が望める強酸がより好ましく、中でも塩酸水溶液が好ましい。硝酸を用いた場合は、後工程の排水処理で窒素処理を行う必要が生じる。硫酸を用いると、後工程の晶析工程の際に硫酸カルシウム水和物が生成して、回収蛍石の不純物として含まれる。この硫酸カルシウムの水和物は、弗酸製造の際に弗化水素製造装置内で水分を放出して、腐食環境を悪化させるので好ましくない。
【0069】
図6は、図1に示すフローチャートにおける、シリカ分離水に対する晶析工程及び蛍石回収工程を行って、合成蛍石を回収する処理を行うまでの合成蛍石回収装置の概要を示す概要図である。図6に示すように、シリカ分離水に対する晶析工程及び蛍石回収工程を行って合成蛍石を回収する処理を行う合成蛍石回収装置は、図1に示す晶析工程を行う晶析装置70と、図1に示す蛍石回収工程を行う回収装置100を有している。
【0070】
晶析装置70は、原水としてのシリカ分離水を内部に貯める原水タンク71と、塩化カルシウムを内部に貯める塩化カルシウムタンク72と、上澄水と弗化カルシウム粒子の密度差を利用した分離ゾーンを区画する隔壁73を内部に有する晶析槽74と、原水タンク71内の原水(シリカ分離水)を晶析槽74に供給する、ポンプ75を有する原水供給管76と、塩化カルシウムタンク72内の塩化カルシウムを晶析槽74に供給する、ポンプ77を有する塩化カルシウム供給管78を備えている。原水供給管76には、流量計79と弗素濃度計80が設置されており、この流量計79と弗素濃度計80の出力が演算器81に入力され、この演算器81からの出力で塩化カルシウム供給管78内に設置したポンプ77を制御するように構成されている。
【0071】
晶析槽74には、この内部の液体を、例えば30〜80℃に加熱する温度調整部としてのヒータ82と、液体を攪拌する攪拌羽根83を回転させるモータ84が備えられている。ヒータ82の設置場所は、晶析槽の内部に限定されず、循環配管86中または原水供給配管より前段であってもよい。ヒータの昇温方法は、電気式、熱交換式など既知の方法が採用できる。晶析槽74の底部には、晶析槽74内の弗化カルシウムスラリーを引抜く弗化カルシウム引抜き管85が接続され、この弗化カルシウム引抜き管85には、該弗化カルシウム引抜き管85から分岐して晶析槽74に戻る循環配管86が接続されている。この循環配管86の内部には、ポンプ87が設置されている。
【0072】
循環配管86と弗化カルシウム引抜き管85は別々に設けて、各々の配管が晶析槽に直接的に接続されるものであっても良い。また、晶析槽に直接的に接続された循環配管86から分岐して弗化カルシウム引抜き管85が設けられてもよい。晶析槽に直接的に循環配管が接続される場合は、晶析槽の側部など底部以外の部分から循環スラリーを流入させてもよい。また、晶析槽の任意の部分に循環スラリーを戻しても良い。
晶析槽に直接的に弗化カルシウム引抜き管85が接続される場合は、晶析槽の側部など底部以外の部分からスラリーを流入させてもよい。
【0073】
更に、晶析槽74内の上部には、晶析槽74内の上澄水を処理水として引抜く処理水引抜き管88の一旦が接続され、この処理水引抜き管88の他端は処理水タンク89に接続されている。この処理水タンク89内に貯められた処理水は、ポンプ90を有する処理水排水管91を通して、後段の廃水処理に送られる。
【0074】
この晶析装置70は、例えばpH2以下の塩酸酸性条件下または水温30〜80℃の条件で、シリカ分離水(原水)と塩化カルシウム水溶液とを均一混合するように撹拌しながら晶析槽74内に同時に導入することで弗化カルシウム(CaF)を生成する、図1に示す晶析工程を行うものである。この時の反応を反応式5に示す。
2HF+CaCl→CaF↓+2HCl (化学式5)
【0075】
ここに、水温を30〜80℃に高めることにより、CaFの溶解度が高まり、微細結晶の溶解と、結晶の粗大化が促進される。水温30℃以下では微細な結晶核の発生が著しく、結晶が粗大化しない。水温80℃以上ではCaFの溶解度が大きすぎてCaFの回収率が小さい。
【0076】
塩化カルシウムの添加率は、好ましくは等量に対して1.0〜1.3である。この例では、弗素濃度計80を設けて、弗化ナトリウム水溶液の弗素濃度を、例えば既知のイオン電極法によりモニタリングすることにより、塩化カルシウムの添加量を調節して水質変動に追従させて処理を安定化させるようにしている。つまり、この例では、原水(シリカ分離水)の弗素濃度および流量の値から塩化カルシウムの添加量を演算して、塩化カルシウム供給管78に設けたポンプ77の流量を制御するようにしている。
【0077】
塩化カルシウム水溶液の代わりに、炭酸カルシウム等の他のカルシウム化合物を用いてもよい。塩化カルシウム水溶液の代わりに炭酸カルシウムを使用したときは、反応系のpHを酸性とすることでCaCOの溶解と脱炭酸が促進される。
【0078】
このような操作により、弗素を、純度97%以上、平均粒径5〜100μmの弗化カルシウムとして回収できる。これは天然の蛍石と同等に扱える純度および平均粒径であり、天然蛍石の代替として用いることができる。
【0079】
晶析槽74に、上澄水と弗化カルシウム粒子の密度差を利用した分離ゾーンを隔壁73で区画して設けることにより、弗化カルシウム粒子の上澄水側への流出を抑制して、弗化カルシウムの回収率を高めることができる。晶析槽74内の弗化カルシウムスラリーの抜出し方法としては、弗化カルシウムスラリーの一部を連続的または断続的に抜き出しても良いし、また弗化カルシウムスラリー全量を回分的に全量抜き出しても良い。なお、この例では、上澄水(処理水)と弗化カルシウムスラリーに分けて取出すようにしているが、上澄水として取出さずに全て弗化カルシウムスラリーとして取出して、晶析槽内のスラリー全量を脱水機で固液分離するようにしても良い。
【0080】
また、結晶成長時間を適切に選択することによって、弗化水素製造により適した粒径である平均粒径として10〜50μmで、粒径分布が比較的狭い弗化カルシウムとすることも可能である。
【0081】
弗化水素は、蛍石を乾燥させた後に、加熱炉中で無水硫酸と混合・加熱して製造される。蛍石の粒径が5μm以下であると、乾燥時及び混合時に粉塵となり取扱いが困難となるため、平均粒径としては10μm以上がより好ましい。また蛍石の粒径が50μmを超えると、加熱炉での反応に要する滞留時間を長くするか、加熱温度を高くする必要が生じ、エネルギーの消費量が多くなる。このため、弗化水素製造に適した蛍石の平均粒径は、10〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。
【0082】
天然の蛍石は、岩石を粉砕して生産しているので粒径分布が広いのが特徴である。粉砕時及び弗化水素製造時の粉塵防止のため、一般的に蛍石の平均粒径を50μm以上にしているので、これまで天然蛍石を原料として弗化水素を製造する際には、加熱温度を高くし、かつ滞留時間を長くする必要があり、エネルギーを多く消費していた。回収蛍石の平均粒径を天然蛍石より小さくすることにより、省エネルギーに弗化水素を製造することができる。
【0083】
図6に示すように、回収装置100は、前記弗化カルシウム引抜き管85に接続された脱水機101と、洗浄水を脱水機101に供給する洗浄水供給管102を有しており、脱水機101の排水管103は、処理水タンク89に接続されている。
【0084】
この回収装置100は、晶析工程で得られた弗化カルシウム(合成蛍石)スラリーから、塩酸や残存する弗化水素を水で洗浄除去し、脱水することにより含水率を低めた合成蛍石を得る、図1に示す晶析回収工程を行うためのものである。洗浄水としては、工業用水や市水等が好適に使用できる。脱水機101としては、遠心脱水機やフィルタープレスなどの既存の脱水機が使用できるが、遠心脱水機が操作が簡便で好ましい。また、脱水・洗浄後に回収される蛍石(CaF結晶)の含水率としては、3〜15%程度が望ましい。3%以下の含水率では合成蛍石の運搬や貯蔵時に粉塵が起きることがあり、好ましくない。15%以上の含水率では輸送時に重量がかさむことと、弗化水素製造前の蛍石乾燥工程での負荷が大きくなるため好ましくない。
【0085】
以下の実施例により、本発明をより具体的に説明する。以下の実施例の記載は、本発明の具体例を説明するもので、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0086】
(実施例1)
図2に示す装置(ただし、pH調整装置を除く)を用いてシリカ分離処理を行った。予め珪弗化水素酸(1.7%−F,0.42%−Si)に過酸化水素を化学式1の等量となるように添加して、40%−NaOHを用いて中和分解した際の上澄水のSS分とろ液シリカ濃度を測定した結果を表1の実験1−1に示す。脱水機の脱離水は、中和分解槽に戻した。また、図3に示す装置により、過酸化水素を添加することなく、珪弗化水素酸を水酸化ナトリウムで中和分解して沈降分離処理した際の上澄み水のSS分とろ液シリカ濃度を測定した結果を表1の実験1−2に示す(共に希釈の影響は補正)。ろ液シリカ濃度は溶解性のシリカ濃度の代替として測定している。
【0087】
【表1】

【0088】
表1より、過酸化水素を添加した場合(実験1−1)には、ろ液中のSS分が減少しており、透明度がより高くシリカ残存濃度がより低い上澄水(弗化ナトリウム水溶液)が得られた。上澄水には9%のSiしか残存していなかった。Si除去率は91%が得られた。また、過酸化水素を添加しない場合(実験1−2)においても、Si除去率81%が得られた。いずれの場合においても、ゲル状シリカの出現を伴うことなく、シリカを固液分離することが出来た。
【0089】
次いで、前記の試験1−1により得られた上澄水(シリカ分離液)をpH3に調整し、図6に示す装置を用いて晶析操作を行った。また下記に装置の仕様、供給水の性状、運転条件および結果を示す。これより、結晶純度>97%、平均粒径5〜100μm、Si含率<1%−SiOの結晶が回収できることが確認された。
【0090】
<装置の仕様>
・有効容積 :14L
・材質 :容器:耐熱塩ビ
:攪拌翼:接液部はテフロン(登録商標)
・循環ポンプ :ダイヤフラムポンプ
・ヒータ :電気ヒータ
【0091】
<供給水の性状>
・使用上澄水 :試験1−1で作成
・pH調整条件 :3
【0092】
<運転条件>
・種結晶 :平均粒径:22μm
:添加量:1400g
・水温 :設定水温50℃(運転中の槽内水温50〜55℃)
・滞留時間 :4h
・Ca添加量 :等量比
【0093】
<結果>
晶析槽pH :1〜2
弗素回収率 :77%
CaF純度 :98%
CaFのSi含率 :0.2%(0.4%−SiO
CaFの平均粒径 :26μm
【0094】
(実施例2)
実施例1の試験1−1により得られた上澄水(シリカ分離水)をpH5に調整し、実施例1と同様の装置・運転条件で晶析操作を行った。この場合でも、結晶純度>97%、平均粒径5〜100μm、Si含率<1%−SiOの結晶が得られた。弗素回収率は高まる傾向が得られた。これより、晶析槽のpHが2を上回る場合においてもHF製造に適したCaF結晶が回収できることを確認した。
【0095】
<装置の仕様>
実施例1と同様
<供給水>
・使用上澄水 :試験1−1で作成
・pH調整条件 :5
<運転条件>
実施例1と同様
【0096】
<結果>
晶析槽pH :2〜3
弗素回収率 :83%
CaF純度 :97%
CaFのSi含率 :0.3%(0.6%−SiO
CaFの平均粒径 :24μm
【0097】
(実施例3)
実施例1の試験1−2により得られた、ややシリカ濃度が高い上澄水(シリカ分離水)を対象とし、pH5に調整して、実施例1と同様の装置・運転条件で晶析操作を行った。これより、平均粒径がやや減少してSi含率も高まったものの、結晶純度>97%、平均粒径5〜100μm、Si含率<1%−SiOの結晶が得られた。中和分解工程の前段に添加工程を設けない場合においても、HF製造に適するCaF結晶が回収できた。
【0098】
<装置の仕様>
実施例1と同様
<供給水>
・使用上澄水 :試験1-2で作成
・pH調整条件 :5
<運転条件>
実施例1と同様
【0099】
<結果>
晶析槽pH :2〜3
弗素回収率 :73%
CaF純度 :97%
CaFのSi含率 :0.4%(0.8%−SiO
CaFの平均粒径 :22μm
【0100】
(比較例)
珪弗化水素酸水溶液(濃度1.7%−F)そのものに対して晶析操作を行った。装置および運転条件は実施例1と同じとした。この結果、運転後に得られた結晶は、投入した1400gから殆ど増加せず、CaFとしての回収はできなかった。
【0101】
(実施例4)
リンを0.05%含有する珪弗化水素酸排水(1.5%−F)を対象として、試験1−2に示す運転条件でシリカ分離処理を行った。沈降分離後の沈降スラリーを孔径5μmのろ紙を用いて吸引ろ過して得られた脱水ろ液(脱離水)を上澄水と混合して、pH調整したものを晶析操作に供給する供給液とした。この液の溶解性およびSS性を含めたSi濃度は400mg−Si/Lであった。これより、リンを含む場合においてもリン含率<0.1%のCaFが得られることを確認した。
【0102】
<装置の仕様>
実施例1と同様
<供給水>
・使用上澄水 :本実施例にて作成
・pH調整条件 :3
<運転条件>
実施例1と同様
【0103】
<結果>
晶析槽pH :1〜2
CaF純度 :97%
CaFのSi含率 :0.3%(0.6%−SiO
CaFのP含率 :<0.1%(as P
CaFの平均粒径 :26μm
【0104】
(比較例2)
実施例4において、供給水のpHを7とした条件では晶析槽pHは7〜8となり、CaFのリン含率は1%(as P)に増加した。これより、中性領域で晶析させる場合は、リン含率が高まることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施形態の合成蛍石回収方法を示すフローチャートでである。
【図2】図1に示すフローチャートにおける、添加工程、中和分解工程及び分離工程を行って、シリカ分離水(上澄水)を得るまで処理を行う合成蛍石回収装置の概要を示す概要図である。
【図3】図2の変形例を示す図である。
【図4】図2の他の変形例を示す図である。
【図5】図2の更に他の変形例を示す図である。
【図6】図1に示すフローチャートにおける、シリカ分離水に対する晶析工程及び蛍石回収工程を行って、合成蛍石を回収する処理を行うまでの合成蛍石回収装置の概要を示す概要図である。
【図7】珪弗化水素酸水溶液を水酸化ナトリウム溶液で中和滴定した時のpHとろ液Si濃度との関係を測定した結果を示すグラフである。
【図8】図7に示すグラフを中和処理を2段で実施する場合の概要とともに示す図である。
【符号の説明】
【0106】
10 安定剤添加装置
11 混合槽
12 原水導入管
20 中和分解装置
21 中和分解槽
22 アルカリ剤供給部
23 希釈水供給部
26 pH測定器
28 弗素濃度計
30 分離装置
31 沈殿槽
34 脱水機
41 混合槽
42 凝集槽
43 凝集剤供給部
44 pH調整剤供給部
47 pH測定器
51 ろ過器
60 pH調整装置
61 pH調整槽
62 pH調整剤供給部
70 晶析装置
71 原水タンク
72 塩化カルシウムタンク
74 晶析槽
79 流量計
80 弗素濃度計
81 演算器
86 循環配管
100 回収装置
101 脱水機
102 洗浄水供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から弗素を合成蛍石として回収する合成蛍石回収方法であって、
珪弗化水素酸を含む弗素含有排水とナトリウム化合物を混合して珪弗化水素酸を分解させ、不溶性シリカと弗化ナトリウム水溶液との混合物が主体のシリカスラリーを生成する中和分解工程と、
前記中和分解工程で生成したシリカスラリーから不溶性シリカを分離してシリカ分離水を得る分離工程と、
前記シリカ分離水に対してカルシウム化合物を供給して、純度が97%以上、かつ平均粒径5〜100μmの弗化カルシウムを生成する晶析工程を有することを特徴とする合成蛍石回収方法。
【請求項2】
前記中和分解工程において、希釈水を加えることを特徴とする請求項1に記載の合成蛍石回収方法。
【請求項3】
前記中和分解工程におけるpH制御範囲が7〜10で、前記ナトリウム化合物は、炭酸ナトリウムおよび/または水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の合成蛍石回収方法。
【請求項4】
前記晶析工程を水温30〜80℃および/またはpH2以下で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の合成蛍石回収方法。
【請求項5】
前記分離工程と前記晶析工程前との間に、前記シリカ分離水のpHを調整するpH調整工程を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の合成蛍石回収方法。
【請求項6】
前記晶析工程で得られた弗化カルシウムスラリーを脱水し合成蛍石として回収する蛍石回収工程を更に行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の合成蛍石回収方法。
【請求項7】
前記中和分解工程に先立って、前記珪弗化水素酸を含む弗素含有排水に安定剤を添加する添加工程を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の合成蛍石回収方法。
【請求項8】
前記安定剤は酸化剤であることを特徴とする請求項7に記載の合成蛍石回収方法。
【請求項9】
前記分離工程はシリカスラリーの脱水操作を含み、脱水操作で得られた脱離水を中和分解工程に返送するか、または晶析工程、またはpH調整工程に導入することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の合成蛍石回収方法。
【請求項10】
珪弗化水素酸を含む弗素含有排水から弗素を合成蛍石として回収する合成蛍石回収装置であって、
珪弗化水素酸を含む弗素含有排水とナトリウム化合物を混合して珪弗化水素酸を分解させ、不溶性シリカと弗化ナトリウム水溶液との混合物が主体のシリカスラリーを生成する中和分解装置と、
前記中和分解装置で生成したシリカスラリーから不溶性シリカを分離してシリカ分離水を得る分離装置と、
前記シリカ分離水に対してカルシウム化合物を供給して、純度が97%以上、かつ平均粒径5〜100μmの弗化カルシウムを生成する晶析装置を有することを特徴とする合成蛍石回収装置。
【請求項11】
前記中和分解装置は、前記シリカスラリー中に含まれる弗化ナトリウム結晶を溶解させる希釈水を供給する希釈水供給部を有することを特徴とする請求項10に記載の合成蛍石回収装置。
【請求項12】
前記中和分解装置は、pHを7〜10の範囲に調整するpH調整部を有することを特徴とする請求項10または11記載の合成蛍石回収装置。
【請求項13】
前記晶析装置は、水温を30〜80℃に調整する水温調整部、pHを2以下に調整するpH調整部の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の合成蛍石回収装置。
【請求項14】
前記シリカ分離水のpHを調整するpH調整装置を更に有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の合成蛍石回収装置。
【請求項15】
前記晶析装置で得られた弗化カルシウムスラリーを脱水し合成蛍石として回収する回収装置を更に有することを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の合成蛍石回収装置。
【請求項16】
前記珪弗化水素酸を含む弗素含有排水に安定剤を添加する安定剤添加装置を更に有することを特徴とする請求項10乃至15のいずれかに記載の合成蛍石回収装置。
【請求項17】
前記安定剤は酸化剤であることを特徴とする請求項16に記載の合成蛍石回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−196858(P2009−196858A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41627(P2008−41627)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】