説明

吊り下げ式照明装置およびランタン

【課題】吊り下げてもプロジェクタ機能を使用することができる吊り下げ式照明装置およびランタンを提供する。
【解決手段】LED光源33および照明用ランプ41と、LED光源33からの光を利用して投射像を投射するプロジェクタモジュール14と、照明用ランプ41の光を照明用として外部へ放射する証明部40と、吊り下げ式照明装置の揺れを検出する揺れ検出センサ38と、揺れに起因する、投射像のブレを、揺れ検出センサ38によって検出した揺れに基づいて補償する揺れ演算補正回路21とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ機能を備えた吊り下げ式照明装置およびランタンに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に記録された画像をスクリーン上に投影する機能に加え、懐中電灯として使用できるプロジェクタ装置が従来技術として知られている(たとえば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−59239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されているような従来のプロジェクタ装置では、小型化して使用する場合、不安定な状態で投影すると、像ブレが生じてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)請求項1の発明の照明装置は、投射用および/または照明用の光源と、光源からの光を利用して投射像を投射する投射手段と、光源の光を照明用として外部へ放射する放射手段と、投射手段の揺れを検出する揺れ検出手段と、揺れに起因する投射像のブレを、揺れ検出手段によって検出した揺れに基づいて補償する像ブレ補償手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の照明装置において、像ブレ補償手段は、像シフト手段と、像回転手段とを含むことを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2に記載の照明装置において、像シフト手段は、投射レンズの位置を移動する像シフト補償光学系、または投射像を生成する画像を画像処理することによって投射像をシフトする画像処理手段であることを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項2に記載の照明装置において、像回転手段は、投射像をその光軸回りに回転させることを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項4に記載の照明装置において、像回転手段は、投射手段を回転させることによって、または投射像を生成する画像を画像処理することによって投射像を回転させることを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の照明装置において、照明装置を吊り下げる吊り下げ部を有し、投射像のブレは吊り下げ部で照明装置を吊り下げたことによる揺れに起因することを特徴とする。
(7)請求項7の発明のランタンは、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の照明装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、照明装置の揺れによる投射像のブレを補償することができるプロジェクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態によるプロジェクタ付きランタン1の外観図である。プロジェクタ付きランタン1は、内蔵されているバッテリによって蛍光管11を発光する。図1に示すように、プロジェクタ付きランタン1は通常の乾電池式ランタンと同様に蛍光管11、ホヤ12および吊るし具13を含む。吊るし具13を用いてプロジェクタ付きランタン1を吊り下げることができる。さらにプロジェクタ機能を有するため、プロジェクタモジュール14、機能切替スイッチ15、メモリカードスロット口16、TVチャンネル切替ボタン17および外部入力端子18を含む。プロジェクタモジュール14の詳細については後述する。
【0007】
機能切替スイッチ15は回転式のスイッチであり、プロジェクタ付きランタン1の照明機能とプロジェクタ機能とを切り替える。機能切替スイッチ15には、「OFF」、「LIGHT」および「PJ」の切替位置が表示される。機能切替スイッチ15の切替位置を「OFF」にすると、プロジェクタ付きランタン1の機能は停止する。切替位置を「LIGHT」にすると、プロジェクタ付きランタン1の照明機能は動作し、プロジェクタ機能は停止する。切替位置を「PJ」にすると、照明機能は停止し、または蛍光管11の光量は低減し、プロジェクタ機能は動作する。
【0008】
メモリカードスロット口16は画像や映像が記憶されたメモリカードを挿入する挿入口である。チャンネル切替ボタン17は、内蔵されたTVチューナが受信するチャンネルを切り替えるためのボタンである。外部入力端子18はビデオカメラなどの外部機器に接続されたケーブルをつなぐ端子である。
【0009】
図2は、図1のプロジェクタ付きランタン1の構成を説明するためのブロック図である。図2に示すように、プロジェクタ付きランタン1は、制御回路20、プロジェクタモジュール14、モジュール駆動部30、照明部40、電源部50および入力部60を含む。
【0010】
制御回路20は、制御プログラムに基づいて、プロジェクタ付きランタン1を構成する各部から入力される信号を用いて所定の演算を行うなどして、プロジェクタ付きランタン1の各部に対する制御信号を送出することにより、照明機能、プロジェクタ機能をそれぞれ制御する。また、電源部50より供給される電力も制御する。なお、制御プログラムは制御回路20内の不図示の不揮発性メモリに格納されている。
【0011】
制御回路20は、揺れ演算補正回路21を有する。揺れ演算補正回路22は、プロジェクタモジュール14で投射する場合に生ずる投射像の左右のブレを画像処理により補正する。
【0012】
プロジェクタモジュール14はプロジェクタ機能を有し、投射レンズ31と、液晶パネル32と、LED光源33と、レンズ駆動部34と、液晶駆動部35と、LED駆動部36とを含む。LED駆動部36は、制御回路11から出力されるLED駆動信号に応じてLED光源33にバッテリ51からの電流を供給する。LED光源33は、供給電流に応じた明るさで液晶パネル32を照明する。
【0013】
液晶駆動部35は、画像データに応じて液晶素子駆動信号を生成し、生成した駆動信号で液晶パネル32を駆動する。具体的には、液晶層に対して画像信号に応じた電圧を画素ごとに印加する。電圧が印加された液晶層は液晶分子の配列が変わり、当該液晶層の光の透過率が変化する。このように、画像信号に応じてLED光源33からの光を変調することにより液晶パネル32が光像を生成する。
【0014】
レンズ駆動部34は、制御回路20から出力される制御信号に基づいて、投射レンズ31を投射レンズ31の光軸方向へ進退駆動する。また、レンズ駆動部34は、投射レンズ31のフォーカスレンズを駆動して所定の投影距離範囲に載置された投影面上の画像のフォーカスを調整することができる。投射レンズ31は、液晶パネル32から射出される光像をスクリーンなどの投影面へ向けて投射する。
【0015】
モジュール駆動部30は、モータ37と、揺れ検出センサ38とを含む。モータ37は、投射レンズ31の光軸と略平行な回転軸を中心にプロジェクタモジュール14を回転させる。揺れ検出センサ38はジャイロ、角速度センサ、加速度センサなどから構成され、プロジェクタ付きランタン1の揺れなどを検出し、検出信号を制御回路20に出力する。すなわち、プロジェクタ付きランタン1を吊り下げたとき、投射スクリーンと平行して揺動するプロジェクタ付きランタン1の揺動を検出する。なお揺れ検出センサ38は、投射するスクリーンに平行した方向以外の揺動も検出することができる。
【0016】
照明部40は照明機能を有し、照明用ランプ41と照明用ランプ駆動部42とを含む。照明用ランプ駆動部41は、制御回路11から出力される照明用ランプ駆動信号に応じて照明用ランプ41にバッテリ51からの電流を供給する。照明用ランプ41には蛍光管11のほかにハロゲンランプ、クリプトンランプなどが使用される。
【0017】
電源部50はプロジェクタ付きランタン1内の各部に必要な電力を供給し、バッテリ51と電源回路52とを含む。電源回路52は、バッテリ51から供給される電圧を所定電圧に変換する。バッテリ51は充電式電池、着脱可能な電池パックや乾電池などによって構成される。
【0018】
入力部60は外部からの映像信号などをプロジェクタ付きランタン1に入力する機能を有し、TVチューナ61、スピーカ62、外部入出力端子63、メモリカードスロット64および操作装置66を含む。TVチューナ61は、制御回路20の指令によりテレビ放送を受信する。スピーカ62はTVチューナ61が受信した音声情報を出力する。外部入出力端子63は、制御回路20の指令により不図示のケーブルを介して外部機器からデータを受信する。メモリカードスロット64は装填されたメモリカード65に記憶された画像データなどを読み込む。読み込んだ画像データは制御回路20で読み込まれ、不図示のメモリに保存される。操作装置66は、機能切替スイッチ15やTVチャンネル切替ボタン17などのボタンやスイッチで構成される。操作装置66を操作することによって、機能を切り替えたり、投影面に順次投射される画像の送り、戻し、一時停止などを行うことができる。
【0019】
次にプロジェクタモジュール14の構造について図3を参照して説明する。図3はプロジェクタモジュール14の拡大図である。図3において、円筒部材39の中にLED光源33、液晶パネル32、投影レンズ31を構成する2枚のレンズ31a、31bが全て収容されている。投影レンズ31が投影レンズ31の光軸と垂直方向にシフトしない状態では、投影レンズ31の光軸は照明光軸Axと合致する。
【0020】
2枚のレンズ31a、31bを進退駆動するレンズ駆動部34、液晶駆動部35およびLED駆動部36については図示を省略している。プロジェクタモジュール14を回転させると、例えば、LED光源33による照明光軸Axを中心に液晶パネル32が回転する。このように、プロジェクタモジュール14の回転によって液晶パネル32および投影レンズ31が回転するので、投射像をその光軸回りに回転させることができる。なお、投影レンズ31、液晶パネル32およびLED光源33の相対的な位置関係は、プロジェクタモジュール14が回転しても一定に保たれている。
【0021】
次に、上述した揺れ演算補正回路22が行う揺れ補正処理の詳細について説明する。図4のように、プロジェクタ付きランタン1を吊り下げた状態で投射像71を投影面72に投射すると、プロジェクタ付きランタン1は揺れてしまう。このため、図5に示すように、投射像71は矢印73の方向に揺れてしまう。
【0022】
このとき、揺れ検出センサ38は、プロジェクタ付きランタン1の傾きθと水平方向(X方向)の移動距離と、垂直方向(Y方向)の移動距離とを検出し、制御回路20に検出信号を出力する。制御回路20には、予めプロジェクタ付きランタン1のX方向およびY方向の移動距離と、投射像のブレを解消する投射像のシフト量との関係を示すテーブルが記憶されている。揺れ演算補正回路22は、そのテーブルを参照して、投射像のシフト量を算出する。そして、プロジェクタ付きランタン1の揺れた方向と逆方向に、投射像をシフトする画像処理を行い、プロジェクタモジュール14に出力する。プロジェクタモジュール14では、投射像をシフトした光像が液晶パネル32に生成され、投射レンズ31より投射される。
【0023】
図5に示すように投射像71は、X方向およびY方向に移動しているのみならず、傾いているので、さらに投射像71を回転させる処理が必要になる。投射像の回転処理について図5を参照して説明する。制御回路20は、揺れ検出センサ38が検出したプロジェタ付きランタン1の傾きθに基づき、モータ37を駆動させ、プロジェクタモジュール14を所定角度回転して投射像が正立像として投射されるようにする。正立像は、開口中心O(正確には、投影レンズ31の光軸と略平行な回転軸)の周りに投射像が回転したものである。
【0024】
以上説明した揺れ補正処理並びに回転処理により、図4に示すようにプロジェクト付きランタン1を吊り下げて使用した場合に、プロジェクト付きランタン1が揺れても投射像71は揺れずに投影面72に投射されるようになる。
【0025】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)プロジェクタ付きランタン1を吊り下げたときでも、その揺れによる投射像のブレを確実に補正することができる。その結果、揺れ防止機構を設ける必要はない。
【0026】
(2)揺れの回転成分をプロジェクタモジュール14の回転で補正し、X方向およびY方向のブレを画像処理で解消するので、投射像のブレを解消するための機械的な機構をプロジェクタモジュール14内に設ける必要がなく、プロジェクタモジュール14を小型化することができる。
【0027】
(3)プロジェクタ付きランタン1の傾きによる投射像の傾きを補正することができるので、吊り下げてもプロジェクタ付きランタン1のプロジェクタ機能を使用することができる。
【0028】
(4)プロジェクタモジュール14を回転させることによって投射像を正立像として投射することができる。画像処理による回転処理を行わないので、クリアな投射像を投射することができる。
【0029】
以上説明した実施形態を次のように変形することができる。
(1)照明装置であれば、ランタンに限定されない。たとえば、懐中電灯や災害用ライトなど、ランタン以外の持ち運び可能な吊り下げ式照明装置にも本発明を適用できる。
【0030】
(2)プロジェクタモジュール14を回転させることなく、画像処理によって投射像を回転させてもよい。すなわち、上述した実施形態では、プロジェクタ付きランタン1の姿勢を揺れ検出センサ38で検出し、その検出結果に基づいてモータ37でプロジェクタモジュール14を回転させるようにした。この代わりに、揺れ検出センサ38の検出結果に基づいて液晶パネル32に形成される投射像を回転させる画像処理によって、投射像を回転させてもよい。プロジェクタモジュール14を回転させる機構が必要ないので、プロジェクタモジュール14を小型化することができる。
【0031】
(3)以上の説明では、プロジェクト付きランタン1が揺れたことで生じる投影面上の投射像の揺動を抑えるために、液晶パネル32上の投射像をシフトさせる画像処理を行った。この代わりに、揺れをうち消すように液晶パネル32と投射レンズ31との相対的な位置関係を投影レンズ31の光軸に垂直な面内で機械的に移動させる構成にしてもよい。また、可変頂角プリズムを用いて光学的な補正を行って投射する画像の揺れを補正する構成にしてもよい。画像処理によって行わないので、クリアな投射像を投射することができる。
【0032】
(4)投射用の光源と照明用の光源を共用してもよい。たとえば、LED光源33を照明用として外部へ放射するようにしてもよい。この場合、LED光源33の光を外部へ放射する導光手段を設けるのが好ましい。このようにすることによって、プロジェクタ付きランタン1を小型化することができる。
【0033】
(5)図6に示すように、プロジェクタ付きランタン1に伸縮可能な足19を設けて、投射像を水平に投射できるようにしてもよい。屋外の傾斜面に設置する場合に対応できる。
【0034】
(6)プロジェクタ付きランタン1にカメラを設け、投影面に投射された投射像を撮影することで投射像の揺れを検出し、投射像の揺れを打ち消すように画像処理を行ってもよい。
【0035】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態によるプロジェクタ付きランタンの外観図である。
【図2】本発明の一実施の形態によるプロジェクタ付きランタンの構成を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるプロジェクタモジュールの構造を説明するための図である。
【図4】吊り下げて使用した本発明の一実施の形態によるプロジェクタ付きランタンを説明するための図である。
【図5】プロジェクタ付きランタンを吊り下げて使用したときの投射像のブレを説明するための図である。
【図6】本発明の他の実施の形態によるプロジェクタ付きランタンの外観図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プロジェクタ付きランタン
14 プロジェクタモジュール
15 機能切替スイッチ
20 制御回路
21 揺れ演算補正回路
31 投射レンズ
32 液晶パネル
33 LED光源
37 モータ
38 揺れ検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射用および/または照明用の光源と、
前記光源からの光を利用して投射像を投射する投射手段と、
前記光源の光を照明用として外部へ放射する放射手段と、
前記投射手段の揺れを検出する揺れ検出手段と、
揺れに起因する前記投射像のブレを、前記揺れ検出手段によって検出した揺れに基づいて補償する像ブレ補償手段とを備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記像ブレ補償手段は、像シフト手段と、像回転手段とを含むことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の照明装置において、
前記像シフト手段は、前記投射レンズの位置を移動する像シフト補償光学系、または前記投射像を生成する画像を画像処理することによって投射像をシフトする画像処理手段であることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項2に記載の照明装置において、
前記像回転手段は、前記投射像をその光軸回りに回転させることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項4に記載の照明装置において、
前記像回転手段は、前記投射手段を回転させることによって、または前記投射像を生成する画像を画像処理することによって投射像を回転させることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の照明装置において、
前記照明装置を吊り下げる吊り下げ部を有し、
前記投射像のブレは前記吊り下げ部で前記照明装置を吊り下げたことによる揺れに起因することを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の照明装置を備えたランタン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−47406(P2008−47406A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221390(P2006−221390)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】