説明

吊り枕

【課題】 頸部及び肩への圧迫を低減しながら就寝中の使用者のいかなる動きにも対応して頭部を常に安定した状態で保持し、就寝中に肩凝りを解消すると共に頭部を冷却してリラックスした睡眠を促す健康枕を提供することを目的とする。
【解決手段】帯状の枕を揺動且つ回動可能に支持する揺動杆と、これを吊り下げる支持杆及び支持杆を支える支柱とから構成し、寝具に当接せず、空中で浮遊した状態にある帯状の枕で頭部を保持するのである。この枕によると、頸部、肩部を圧迫しないため、肩凝りが解消し、頭部の自由な動きが促進されて適度な運動と血行促進効果が期待できるのである。
また、帯状枕に開口部を設けて、マット等を出し入れする収納部を形成するのである。季節や使用者の好みに合わせてマットの厚さを変えたり、ハーブ、香料等の小袋を収納してリラックスした睡眠を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肩凝りを解消し、安眠を得ることができる枕、より詳しくは、頭部保持部を揺動且つ、回動可能に吊るして頸部及び肩への圧迫を低減すると共に頭部を冷却してリラックスした睡眠を促す健康枕に関する。
【背景技術】
【0002】
首筋の緊張状態を緩和させて肩凝り、手足のしびれ、頭痛等を解消し、リラックスして就寝することができる吊りベルト式枕の発明がある。
【特許文献1】特開2005−323633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
人間は就寝時間中に日中の疲労を回復し、明日への英気を養う。睡眠は健康を維持する上で非常に重要であり、充分な睡眠には寝具、特に頭部を保持する枕が大きく影響している。
【0004】
従来の枕は頭部の重みによって沈み込み、頸部や肩を圧迫して血流を滞らせて肩凝りや、手足の痺れを生じさせることがあった。また、いったん沈み込んだ頭部を寝返りによって移動させるときに肩や首に負担がかかっていた。
【0005】
一方、頭部を冷やして、いわゆる頭寒足熱状態を達成して頭部の安静を図ると安眠を得ることができることは良く知られている。
【0006】
このように、体の不快な諸症状の緩和及び就寝時の快適な睡眠確保のために、様々な形状、材質の枕や、枕の充填物の発明がなされている。
【0007】
特許文献1記載の発明は、首筋をほとんど無負荷状態で安定させるために基台の両側に立設した側枠にU字状のベルトを吊り下げ、ベルト上面に頭部を乗せる頭部載置部を形成した枕であり、ベルトが揺動可能である点に特徴を有するが、その揺動範囲は限られたものとなっている。
【0008】
就寝中は長時間同じ姿勢をとることはなく寝返りなどをうって体を頻繁に動かしている。その際に頭部を単に左右に動かすだけではなく、首を反らせたり、反対にうつむくように首を胸の方へ曲げるような姿勢をとることがある。
【0009】
このとき、通常の枕では枕から頭がずり落ち、頭部が最適な高さに保持されない。また、特許文献1に示された吊りベルト式枕も身体の軸方向と直行する方向、即ち左右方向への揺動は自由に行え、ベルトが常に頭部を包み込むように当接するため安定感に優れている。
【0010】
しかしながら、体の軸方向への揺動は構造上限られたものとなっており、前かがみになったり、首をそらせたときにはベルトから頭部が外れる恐れがある。特に頭部を載置するベルトは側枠にハンモック上に吊るされ寝具に接していないため、頭部がベルトから外れて落下する恐れがある。
【0011】
これでは、リラックスして就寝できるどころか、かえって首筋を痛める結果となり安眠を得ることができない。
【0012】
そこで、本発明では、就寝中の使用者のいかなる動きにも対応して頭部を常に安定した状態で保持でき、首筋の緊張状態をほぐすと共に頭部を冷却してリラックスさせ、健康で快適な睡眠を確保することができる吊り枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願発明の吊り枕は、帯状の枕を揺動且つ回動可能に支持する揺動杆とこれを吊り下げる支持杆及び支持杆を支える支柱とから構成し、寝具に当接せず、空中で浮遊した状態にある帯状の枕で頭部を保持するのである。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の帯状枕に開口部を設けて、マット等を出し入れする収納部を形成するのである。
【発明の効果】
【0015】
頭部が寝具に当接せず空中で浮遊した状態にあって、通常の枕のように沈み込んで頸部や肩部を圧迫することがなく、首、肩への負担を低減するため就寝中に首筋付近の筋肉の緊張状態がほぐれる。これにより肩凝り、手足のしびれ等の不快な症状を改善することができる。
【0016】
また、帯状の枕が頭部を包み込むとともに、頭部の動きに合わせて自由に揺動、かつ回動して頭部が最適な状態に常に保持されるため、寝心地がよく充分な睡眠が期待できる。
【0017】
帯状の枕が常に頭部に当接すると共に、いかなる体の動きにも追随して枕が回動するため、頭部を安定して保持するだけでなく、頭部を動かす回数が増え、頸部の良い運動となり、肩、首及び頭への血行を促進するため睡眠中に首、肩の凝りが解消し、疲労回復を図れる。
【0018】
頭部が空中に浮いた状態で寝具に接していないため、頭部の冷却効果が高い。すなわち、安眠の重要条件である頭寒足熱状態を容易に達成できる。特に夏場には清涼な睡眠が確保できる。また、枕をメッシュ状に縫製し、あるいは枕に保冷材を充填すると通気性、放熱性をさらに高めることができ、健康なときはもとより、熱で寝込んだときの水まくらがわりに利用できる。
【0019】
帯状枕を吊り下げた支持杆の高さを自由に変えることができるため、使用者の体型や好みに合わせて吊り枕の高さを調整することができる。一般には、鼻と顎を結ぶ線がほぼ水平で、肩と胴体が同一直線状に並んだ状態が、胸椎、脊椎が正しい位置にあり、神経を圧迫せず肩関節痛の緩和、解消に最適であるといわれている。
【0020】
また、帯状枕に収納ポケットを設けたため、マットや充填物の交換が自在である。
【0021】
たとえば、冬場はマットを二重にして保温性を高め、夏は保冷材を充填して冷却効果を高め、また、安眠効果のあるハーブ等の香料を含浸させたコットン、小袋を収納したりと、使用者の健康状態や好み、季節などに合わせて枕の中身を容易に変更することができるのである。
【0022】
枕が帯状に形成されており嵩が薄く折りたたみことができ、また、支柱や枕支持杆となっているパイプは、ブラケットから挿脱自在で組み立てや分解が容易であるため、持ち運びや保管に便利である。分解して旅行先へも持参することができ、枕が変わったために旅先でよく眠られなかったなどということがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、図面を参照しながら本発明の最適な実施形態について説明する。
【0024】
図1が本願発明にかかる吊り枕1の斜視図である。
【0025】
図1に示されるように、この吊り枕1は支柱2の上方に上下動可能に取り付けたブラケット3に略水平方向に嵌挿した支持杆5の先端部5aから帯状の枕22を吊り下げる構成となっている。
【0026】
支柱や支持杆、脚パイプなどの素材は木材、金属、プラスチック等の材料であって、頭部を支える充分な強度があればどの素材でもよく、限定されることはない。
【0027】
図2が帯状枕22の平面図である。
【0028】
帯状枕22は就寝中に頭を載置する頭部載置部6と吊り下げたときに立ち上がり部となる側部7−7と吊り下げ環9を挿通する袋状に縫製された吊り下げ部8−8を有する。
【0029】
一対の吊り下げ環9−9を介して帯状枕22は揺動杆11の両端に取り付けた取り付け具10から吊り下げられる。
【0030】
揺動杆11の中央付近に取り付けた取り付け金具12と支持杆5の端部5aはボール状チェーン13によって連結されている。
【0031】
支持杆5の他端5bはブラケット3に嵌挿されており、ブラケット3は支柱2に上下動可能に嵌挿されている。使用者の体型や、好みに合わせてブラケット3を上下させることで、帯状枕22の高さを自在に調整することができる。また、就寝中にブラケット3が突然下がることがないようにブラケット3の下にはロック環33が嵌め込まれている。
【0032】
支持杆2の下端に、嵌挿したブラケット4は側面視においてL字型に形成された脚パイプ嵌挿部4b、4cを有しており、該嵌挿部は約90度に拡開している。ここに嵌め込まれた脚パイプ14、15によって支柱2が支えられている。脚パイプ14、15にはゴム等の素材からなる滑り止め16、17が取り付けられており、吊り枕1を安定して立設できるようになっている。
【0033】
このようにして吊り枕1は形成され、帯状枕22は寝具上で揺動かつ、回動可能に吊り下げられるのである。
【0034】
帯状枕22の素材は絹、綿、麻などの天然素材やポリエステル、ナイロン等の合成繊維で製造することができ、抗菌効果を持たせた繊維等で形成しても良い。
【0035】
この枕の長さは頭部載置部が250mm、側部が120mm、吊り下げ部が80mmで全長が650mm程度に製造されている。また、頭部載置部の幅は200mmから250mmが適当と考えられる。
【0036】
就寝中に頭部を確実に保持するためには幅に余裕があるほうが良いようにも考えられる。しかし、本願の吊り枕は、睡眠中に体がどのように動いても頭部の動きに合わせて帯状枕が常に頭部を包み込むように保持したまま揺動、かつ回動するため、頭部載置部から頭がずれたり落ちたりする恐れがない。したがって、落下防止のために予め枕の幅を大きく製造する必要はないと考えられる。
【0037】
枕幅を大きくするとコスト高となるだけでなく、かえって頸部を圧迫することになり頭部の自由な動きを妨げることとなり、好ましくない。
【0038】
但し、帯状枕22の素材や長さ、幅などは発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、枕に色、柄等自由に付すことができるのは勿論である。
【0039】
帯状枕22は素材となる布を二重に縫製してなる。また、図2に示すように表側あるいは裏側、またはその両方をメッシュ状の生地7で縫製すると枕の通気性を高めることができる。また、予め、頭部載置部6にマット18を挿入して逢着しても良いし、請求項2に記載したようにマット挿入口6aを開口してポケット部を形成し、マット18を出し入れ可能に収納することも可能である。マット18の裏面四隅には面状ファスナー19が取り付けられており、頭部載置部6内部にも取り付けた面状ファスナー20に接着させてマット18のずれやよれを防止する。
【0040】
マット18には弾性性があって適度の硬さを有する材料を使用することが好ましい。各種ゴム材料や、ポリウレタン、ポリエチレン、発泡樹脂、硬綿などの繊維、クッション材が適しており、これをシート状に成形して用いる。
【0041】
図2に記載したマット18は10mm程度の厚さである。好みや季節に応じて、これを二枚重ねて収納することで高さを調整し、クッション性や保温性を高めることも自在である。また、マットとあわせて薄い樹脂板(図示せず)を収納すると頭部の安定をより図ることができる。
【0042】
また、上述のようなマットだけでなく、従来の枕のように種々の充填物を収納することもできる。即ち、檜、ヒバ等の木材チップ、そば殻、ビーズの小球状体、木炭、などを充填した小袋をマットの代わりにあるいはマットと共に頭部載置部6のポケットに収納するのである。また、マットの頭部が接する側に複数個の磁性体34を取り付け、磁力及び突起によって睡眠中に頭部をマッサージし、血行を促進する効果を持たせることも可能である。
【0043】
また、ポケットは頭部載置部6だけでなく、側部7にも形成することができる。頭部載置部6と側部7−7との間の表生地と裏生地を縫製せずに開口部7aを設けるのである。ここへはマットの収納のほかに、香料を含浸させた布や安眠を促すハーブ類を充填した小袋21を収納するとリラックスした快適な睡眠を得ることができるのである。
【0044】
次に、本願発明の他の実施形態について説明する。
【0045】
図3が吊り枕32をベッド枠23に取り付けた状態を説明する斜視図である。
吊り枕32は帯状枕24と、帯状枕24を端部に吊り下げ支持する、略水平状に寝具上に伸びる支持杆27と、当該支持杆27をブラケット28を介して支える支柱29から構成される。
【0046】
帯状枕24の両端部24a−24aは、支持杆27の端部に取り付けた鎖26で中央付近を支持された揺動杆25の両端部に取り付け金具によって取り付けられている。
【0047】
支柱29の下端には逆U字形に開口したブラケット30を嵌挿し、当該開口部でベッド枠23を挟み込んだあとネジ31で締結し、ベッド枠23に固定するのである。
【0048】
ブラケット28を上下動することで、使用者の体型や姿勢、好み等に応じて帯状枕24の高さは調整自在である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明にかかる吊り枕は、通常の枕として使用して就寝中に首、肩の凝りを改善し安眠を得るだけでなく、病床時に使用し頭部を冷却、安静させる枕としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】吊り枕の一の実施形態を示す斜視図。
【図2】帯状枕の平面図。
【図3】吊り枕の他の実施形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0051】
1、32、吊り枕 2、29、支柱 3、4、28、30、ブラケット
5、27、支持杆 6、頭部載置部 7、側部
8、吊り下げ部 9、吊り下げ環 10、12、吊り下げ具
11、25、揺動杆 13、26、鎖 14、15、脚パイプ
16、17、滑り止め具 18、マット 19、20、面状ファスナー
21、小袋 22、24、帯状枕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の枕と、これを揺動且つ回動可能に支持する揺動杆と、揺動杆の中央付近に取り付けた吊り下げ部材を介して、これを吊り下げる支持杆及び、支持杆を上下動可能に支える支柱とから構成されたことを特徴とする吊り枕。
【請求項2】
帯状枕に開口部を設けて、収納部を形成したことを特徴とする請求項1記載の吊り枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−119005(P2009−119005A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295609(P2007−295609)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(593099768)株式会社ハヤシ・ニット (5)
【Fターム(参考)】