説明

吊ボルト連結具

【課題】本発明は、極めて商品価値の高い画期的な吊ボルト連結具を提供することを目的とするものである。
【解決手段】取付箇所1に被取付体2を吊り下げる吊ボルト3を当該取付箇所1に吊り下げ連結するための吊ボルト連結具であって、取付箇所1に設ける固定板材4と、この固定板材4の表面に重合状態となり重合面方向にスライド移動自在に設けるスライド板材5とを有し、取付箇所1に設けられた貫通孔1aと連通する孔部4aを固定板材4に設け、吊ボルト3が貫通状態で螺着する螺子孔部5aをスライド板材5に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビルや地下街などの建物内に横設されるダクトに、排煙口を吊り下げる吊ボルトを当該該ダクトに吊り下げ連結するための吊ボルト連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばビルや地下街などの建物には、万一の火災時に発生する有毒な煙を外部に排出するための排煙設備が設けられており、この排煙設備は、図15に示すように建物内に横設されるダクト51の適宜箇所に設けた開口部51Aに排煙口52が垂設された構造であり、一般に、この排煙口52は、角筒状本体52aの下端部に開閉蓋(図示省略)を設けたものである。
【0003】
尚、ダクト51若しくは排煙口52には、ファンが設けられ、ダクト51には建物内の空気を外部へ排出する気流が生じている。
【0004】
従って、この排煙設備は、万一の火災の際、自動或いは手動により排煙口52の開閉扉が開放することで、煙は排煙口52からダクト51内に流れ、このダクト51から建物の外部に煙は排出されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、強い揺れの地震が頻発する中、ダクト51から排煙口52が落下する現象が起きている。
【0006】
具体的には、ダクト51(取付箇所)に対する排煙口52(被取付体)の取付構造は、図14に図示したように角筒状のダクト51の底面に設けた開口部51Aの周縁に、角筒状の短管53の上端フランジ部53aをアングル材54を介して四箇所でボルト55止めし、この短管53の内周面に設けたアングル材56に排煙口52の上端フランジ部52a’をボルト材57を介して吊り下げ連結するものであるが、前述したように排煙口52及び短管53の重量をボルト55止め部分で支えるだけの構造の為、例えば強い揺れの地震の際に当該部分が破損(ボルト55が抜け落ちるなど)してダクト51から排煙口52が落下してしまう場合がある。
【0007】
このように排煙口52が落下すると下に人がいた場合に危険なのは勿論、例えば多くの排煙口52が落ちて一度にダクト51の複数箇所が開放状態となると(煙の発生した箇所以外の箇所でもダクト51が開放状態となると)、ダクト51内に多量の空気が流れ込むことで流れが悪くなってしまい、よって、煙の排出が良好に行われなくなってしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、前述した問題点に着目し、種々の実験を繰り返し行い、その結果、従来にない作用効果を発揮する画期的な吊ボルト連結具を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
取付箇所1に被取付体2を吊り下げる吊ボルト3を当該取付箇所1に吊り下げ連結するための吊ボルト連結具であって、前記取付箇所1に設ける固定板材4と、この固定板材4の表面に重合状態となり重合面方向にスライド移動自在に設けるスライド板材5とを有し、前記取付箇所1に設けられ前記吊ボルト3よりも径大の貫通孔1aと連通する孔部4aを前記固定板材4に設け、この孔部4aを前記吊ボルト3よりも径大に設定し、前記貫通孔1a及び前記孔部4aに対して遊動自在に貫通状態となる前記吊ボルト3が貫通状態で螺着する螺子孔部5aを前記スライド板材5に設け、前記螺子孔部5aに前記吊ボルト3を貫通させた際、この吊ボルト3の前記螺子孔部5aの外方に突出する部位にナット部材7を螺着し得る構成としたことを特徴とする吊ボルト連結具に係るものである。
【0011】
また、建物に横設されるダクト1の開口部1Aに、排煙口2を吊り下げる吊ボルト3を当該ダクト1に吊り下げ連結するための吊ボルト連結具であって、前記ダクト1に設ける固定板材4と、この固定板材4の表面に重合状態となり重合面方向にスライド移動自在に設けるスライド板材5とを有し、前記ダクト1に設けられ前記吊ボルト3よりも径大の貫通孔1aと連通する孔部4aを前記固定板材4に設け、この孔部4aを前記吊ボルト3よりも径大に設定し、前記貫通孔1a及び前記孔部4aに対して遊動自在に貫通状態となる前記吊ボルト3が貫通状態で螺着する螺子孔部5aを前記スライド板材5に設け、前記螺子孔部5aに前記吊ボルト3を貫通させた際、この吊ボルト3の前記螺子孔部5aの外方に突出する部位にナット部材7を螺着し得る構成としたことを特徴とする吊ボルト連結具に係るものである。
【0012】
また、前記固定板材4に対して前記スライド板材5が前記吊ボルト3を回動支点とした重合面方向へ回動した際、前記スライド板材5に係止してこのスライド板材5の回動を阻止し得る回り止め係止突部6を前記固定板材4に設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の吊ボルト連結具に係るものである。
【0013】
また、前記固定板材4に対して前記スライド板材5が重合面方向へスライド移動した際、前記スライド板材5に係止してこのスライド板材5のスライド移動を阻止するように前記回り止め係止突部6を構成したことを特徴とする請求項3記載の吊ボルト連結具に係るものである。
【0014】
また、前記回り止め係止突部6は、前記固定板材4の周縁部を立ち上がり折曲形成して構成したことを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載の吊ボルト連結具に係るものである。
【0015】
また、前記固定板材4の裏面にして前記孔部4aの周縁部に、前記貫通孔1aに位置決め挿入し得る位置決め突部4bを設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の吊ボルト連結具に係るものである。
【0016】
また、前記スライド板材5の貫通孔部5aは、前記スライド板材5をバーリング加工により表面に突出させた筒状部5a’の内面に螺子溝5a”を形成したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の吊ボルト連結具に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように構成したから、取付箇所に被取付体を吊ボルトを介して吊り下げ連結することで、それだけ取付箇所に対する被取付体の連結が堅固となるから、例えば地震などで強い揺れを受けても被取付体の落下を可及的に防止することができ、しかも、吊ボルトに対して複数の螺子部材を螺着する所謂ダブルナット状態での良好な螺着連結構造が得られるから、この点においても例えば揺れに強い取付構造が得られることになり、そして更に、この取付箇所に被取付体を吊ボルトを介して吊り下げ連結しようとする際に生じる問題を確実に解消できて、取付箇所に被取付体を吊ボルトを介して吊り下げる作業が簡易且つ迅速に行えるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な吊ボルト連結具となる。
【0018】
また、請求項2記載の発明においては、前述した従来例と異なり、ダクトに排煙口を吊ボルトを介して吊り下げ連結することで、それだけダクトに対する排煙口の連結が堅固となるから、例えば地震などで強い揺れを受けても排煙口の落下を可及的に防止することができ、しかも、吊ボルトに対して複数の螺子部材を螺着する所謂ダブルナット状態での良好な螺着連結構造が得られるから、この点においても例えば揺れに強い取付構造が得られることになり、そして更に、このダクトに排煙口を吊ボルトを介して吊り下げ連結しようとする際に生じる問題を確実に解消できて、ダクトに排煙口を吊ボルトを介して吊り下げる作業が簡易且つ迅速に行えるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な吊ボルト連結具となる。
【0019】
また、請求項3記載の発明においては、例えば吊ボルトの螺子孔部の外方に突出する部位に螺着したナット部材を締め付け、このナット部材が螺子孔部に圧接することで、固定板材に対してスライド板材が吊ボルトを回動支点とした重合面方向へ回動した際、固定板材に設けた回り止め係止突部がスライド板材に係止してこのスライド板材の回動を阻止し得ることになるから、例えば一方の手で螺子孔部を回り止めしながら他方の手でナット部材を螺動させる必要はなく、片手操作でナット部材を螺動させることができ、よって、例えば手の届きにくい狭い箇所での作業が極めて良好に行えることになるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な吊ボルト連結具となる。
【0020】
また、請求項4記載の発明においては、固定板材に対するスライド板材の重合面方向への回動を阻止する回り止め係止突部が、固定板材に対するスライド板材のスライド移動も阻止する構成であるから、必要以上にスライド板材がスライド移動することが阻止されて作業性が良いのは勿論、スライド板材の回動とスライドを阻止する構造を別途設ける必要なく極めて効率の良い構造であり、前述した秀れた作用効果を発揮する構造が簡易且つコスト安に得られることになるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な吊ボルト連結具となる。
【0021】
また、請求項5記載の発明においては、回り止め係止突部は、固定板材の周縁部を立ち上がり折曲形成して構成したから、簡易構造故にコスト安にして量産性に秀れることになり、しかも、例えばこの回り止め係止突部を固定板材の孔部の内縁部を立ち上がり折曲形成した場合、それだけ孔部が大きくなる為、スライド板材を重合状態に設けた際の気密性が低減する可能性があるが、この点、固定板材の孔部と関係のない位置に回り止め係止突部を設けることで孔部を必要以上に大きくする必要が無いから、スライド板材を重合状態に設けた際の気密性を確保することができるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な吊ボルト連結具となる。
【0022】
また、請求項6記載の発明においては、より一層作業性が良くなるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な吊ボルト連結具となる。
【0023】
また、請求項7記載の発明においては、前述した秀れた作用効果を発揮する構造が簡易且つコスト安に得られることになるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的な吊ボルト連結具となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る要部の説明断面図である。
【図3】実施例1を示す斜視図である。
【図4】実施例1を示す斜視図である。
【図5】実施例1に係る要部の概略動作説明図である。
【図6】実施例1の使用状態説明図である。
【図7】実施例1の使用状態説明図である。
【図8】実施例1の使用状態説明図である。
【図9】実施例1の使用状態説明図である。
【図10】実施例2を示す斜視図である。
【図11】実施例2に係る要部の説明断面図である。
【図12】実施例2を示す斜視図である。
【図13】実施例2に係る吊ボルト連結具の製造方法を示す説明断面図である。
【図14】実施例2に係る吊ボルト連結具の製造方法を示す説明断面図である。
【図15】従来の排煙口の取付状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0026】
本発明に係る吊ボルト連結具の使用方法として、ダクト1(取付箇所1)に排煙口2(被取付体2)を吊ボルト3を介して吊り下げる作業を例に説明する。
【0027】
例えば、ダクト1(取付箇所1)に固定板材4を設ける。このダクト1(取付箇所1)には予め吊ボルト3よりも径大の貫通孔1aを形成しておき、このダクト1(取付箇所1)に固定板材4を設けた際、固定板材4の孔部4aは貫通孔1aと連通状態となるとともに、固定板材4に重合状態に設けるスライド板材5の螺子孔部5aも、孔部4a及び貫通孔1aと連通状態となる。
【0028】
この状態で、ダクト1(取付箇所1)の貫通孔1a,固定板材4の孔部4aに吊ボルト3の上端部を貫通させるとともに、この吊ボルト3の上端部をスライド板材5の螺子孔部5aに螺着して貫通させ、この吊ボルト3の螺子孔部5aの外方に突出する部位にナット部材7を螺着して吊ボルト3を吊り下げ状態とする。尚、このナット部材7は後に螺子孔部5aとで所謂ダブルナットとして機能させることになるが、作業の最終段階においてナット部材7を吊ボルト3に螺着させるようにしても良い。
【0029】
そして、吊ボルト3の下端部に排煙口2(被取付体2)を連結し、この状態でナット部材7を締付けると、螺子孔部5aに対してナット部材7は圧接して所謂ダブルナット状態となり、作業は完了する。
【0030】
従って、例えば前述した従来から提案されている連結構造に比し、ダクト1(取付箇所1)に排煙口2(被取付体2)を吊ボルト3を介して吊り下げ連結することで、それだけダクト1(取付箇所1)に対する排煙口2(被取付体2)の連結が堅固となる。
【0031】
ところで、本発明は、このダクト1(取付箇所1)から吊り下げ状態となる吊ボルト3の下端部に排煙口2(被取付体2)を連結する際、吊ボルト3が螺着するスライド板材5は固定板材4に対して重合面方向にスライド自在であり、且つ、この吊ボルト3は貫通孔1a及び孔部4aに対して遊動自在であるため、例えば吊ボルト3を該吊ボルト3の長さ方向と直交する方向に移動させながら該吊ボルト3の下端部に排煙口2(被取付体2)を連結することができる。
【0032】
これは、ダクト1(取付箇所1)に吊ボルト3を吊り下げ連結する際、単にダクト1(取付箇所1)に設けた貫通孔1aに吊ボルト3を貫通させてこの吊ボルト3の上端部をダクト1(取付箇所1)に遊動不能に固定する構造の場合、このダクト1(取付箇所1)に吊り下げ状態とした吊ボルト3の下端部に排煙口2(被取付体2)を連結する際、このダクト1(取付箇所1)からの吊ボルト3の吊下げ位置が合っていないと吊下ボルト3の下端部を排煙口2(被取付体2)に予め設けられた連結部に連結することができず、よって、ダクト1(取付箇所1)に形成する貫通孔1aを予め正確な位置に精度良く形成しておかなければならず非常に厄介である。
【0033】
この点、本発明は、前述したように吊ボルト3が螺着するスライド板材5は固定板材4に対して重合面方向にスライド自在であり、且つ、この吊ボルト3は貫通孔1a及び孔部4aに対して遊動自在であるため、ダクト1(取付箇所1)に吊り下げ状態とした吊ボルト3を該吊ボルト3の長さ方向と直交する方向に移動することができる。
【0034】
従って、吊ボルト3に排煙口2(被取付体2)を連結する際、例えば吊ボルト3の下端部を排煙口2(被取付体2)の連結部に連結させることに追従して、ダクト1(取付箇所1)に対して連結する吊ボルト3の上端部はスライドすることになり、よって、吊ボルト3に排煙口2(被取付体2)を連結する作業が難なく簡易に行え、しかも、このことからダクト1(取付箇所1)に設ける貫通孔1aの形成位置もそれ程精度が要求されなくなるから、当該貫通孔1aの形成作業も簡易となり、ダクト1(取付箇所1)に排煙口2(被取付体2)を吊ボルト3を介して吊り下げる作業が簡易且つ迅速に行えることになる。
【実施例1】
【0035】
本発明の具体的な実施例1について図1〜9に基づいて説明する。
【0036】
本実施例は、取付箇所1に被取付体2を吊り下げる吊ボルト3を当該取付箇所1に吊り下げ連結するためのものである。
【0037】
尚、本実施例では、取付箇所1としての建物内に横設されるダクト1(排気ダクト・排煙ダクト)に、被取付体2としての排煙口2を吊ボルト3を介して吊り下げる場合であるが、これに限らず、例えば建物の天井(取付箇所1)に空調設備の室内機(被取付体2)を吊り下げ状態に取り付ける場合など、本実施例の特性を発揮する構成であれば適宜作用し得るものである。
【0038】
また、本実施例では、吊ボルト3として長尺棒体の全周面に螺子溝が形成された所謂寸切りボルトを採用しているが、長尺棒体の上端部及び下端部のみに螺子溝が形成されたタイプのものでも良い。
【0039】
具体的には、ダクト1の開口部上方位置に設ける固定板材4と、この固定板材4の表面に重合状態となり重合面方向にスライド移動自在に設けるスライド板材5とを有している。
【0040】
固定板材4は、図1〜4に図示したように適宜な金属製の方形板状体であり、中央に平面視円形の孔部4aが設けられている。
【0041】
この孔部4aは、固定板材4をダクト1の開口部上方位置に重合状態に連結した際、ダクト1の被連結部1’に設けられる貫通孔1aと連通状態となるもので、吊ボルト3の径よりも径大に設けられ該吊ボルト3を遊動自在に貫通するように構成されている。
【0042】
また、この孔部4aは、固定板材4の表面にスライド板材5を重合状態に設けた際、スライド板材5により閉塞される径に設定されており、具体的には、スライド板材5が回り止め係止突部6に係止してその回動及びスライド移動が可能となる可動範囲において常にスライド板材5により孔部4aが閉塞されるように、孔部4aの径,スライド板材5の大きさ及び回り止め係止突部6の位置が適宜設定されている。
【0043】
また、本実施例では、孔部4aの孔内縁部に吊ボルト3が衝突することでスライド板材5のスライド移動を規制するように構成されている。
【0044】
また、固定板材4の四隅には小孔4cが設けられ、この小孔はダクト1の被連結部1’に固定板材4をビス止めするためのものである。
【0045】
また、固定板材4は、固定板材4に対してスライド板材5が吊ボルト3を回動支点とした重合面方向へ回動した際、スライド板材5に係止してこのスライド板材5の回動を阻止し得る回り止め係止突部6が複数設けられている。
【0046】
この各回り止め係止突部6は、固定板材4の周縁部を立ち上がり折曲形成して構成されている。
【0047】
具体的には、回り止め係止突部6は、方形状の固定板材4の4つの各辺の中央位置に切欠き片6aを打ち抜き加工により設け、この各切欠き片6aを内側に垂直状に起こして固定板材4の表面(上面)に突出形成して構成されている。
【0048】
従って、固定板材4に対してスライド板材5が前記吊ボルト3を回動支点とした重合面方向へ回動した際、回り止め係止突部6の全て若しくは一部がスライド板材5の周縁部に係止してこのスライド板材5の回動を阻止し得ることになる。
【0049】
本実施例では、前述したように回り止め係止突部6を固定板材4の周縁部を立ち上がり折曲形成して構成されており、よって、後述する実施例2のように固定板材4の孔部4aの内周縁部に設ける場合に比して、固定板材4の孔部4aを必要以上に大きくする必要はなく、スライド板材5で完全に閉塞することが可能となる為、よって、気密性が高い構造が得られる(排煙設備に用いる連結具として特に有用となる。)。
【0050】
また、この回り止め係止突部6は、切欠き片6aの一部を内方に折り曲げ形成しており、固定板材4の表面に重合状態としたスライド板材5を抜け止め係止するように構成されている。
【0051】
また、固定板材4は、図2,3に図示したように下面にして孔部4aの周縁部に、ダクト1のダクト貫通孔1aに位置決め挿入し得る位置決め突部4bを設けている。
【0052】
具体的には、この位置決め突部4bはバーリング加工により形成されており、固定板材4の下面に筒状に突出状に設けられている。
【0053】
従って、ダクト1に固定板材4を重合状態に連結する際、固定板材4をダクト1の表面を摺動させて貫通孔1aに位置決め突部4bが挿入することで、固定板材4はダクト1の被連結部1’に位置決めされることになる。この点において、ダクト1に設ける貫通孔1aは位置決め突部4bが挿入し得る径(少なくとも孔部4aよりも大きな径)にすることになる。
【0054】
スライド板材5は、図1〜4に図示したように適宜な金属製の方形板状体であり、中央に平面視円形の螺子孔部5aが設けられている。
【0055】
この螺子孔部5aは、スライド板材5をバーリング加工により表面に突出させた筒状部5a’の内面に螺子溝5a”を形成したものであり、吊ボルト3に螺着するように構成されている。
【0056】
また、本実施例では、この螺子孔部5aに吊ボルト3を貫通させた際、この吊ボルト3の螺子孔部5aの外方に突出する部位にナット部材7を螺着し得る構成としており、このスライド板材5の螺子孔部5aとナット部材7とで所謂ダブルナットとしての機能が発揮される。
【0057】
また、スライド板材5は、固定板材4の表面に重合面方向にスライド移動自在にして回動自在に設けられ、固定板材4の孔部4aを閉塞するように構成されている。
【0058】
従って、このスライド板材5を固定板材4に重合状態に連結した際、固定板材4の貫通孔は閉塞されるため気密性が高い。
【0059】
以上の構成から成る本実施例に係る吊ボルト連結具を用いた、ダクト1に吊ボルト3を介して排煙口2を吊り下げ状態に連結する作業について説明する。尚、角筒状のダクト1の底面に設けた開口部1Aの周縁に、角筒状の短管13の上端フランジ部13aをアングル材14を介して四箇所でボルト15止めしている(図9参照)。符号16は短管13の内周面と排煙口2の外周面との間に配されるパッキンである。また、本実施例では、ダクト1に複数(4本)の吊ボルト3を介して排煙口2を吊り下げ状態に連結しており、各吊ボルト3では以下の連結作業が行われる。
【0060】
図5に図示したようにダクト1に固定板材4をビス8止めする。このダクト1には予め吊ボルト3よりも径大な貫通孔1a及びビス止め孔1bを形成しておき、このダクト1の被連結部1’に固定板材4を重合状態にビス8止め連結固定した際、固定板材4の孔部4a及び固定板材4に重合状態に設けるスライド板材5の螺子孔部5aは貫通孔1aと連通状態となる。
【0061】
この状態で、ダクト1の貫通孔1a,固定板材4の孔部4aに吊ボルト3の上端部を貫通させるとともに、この吊ボルト3の上端部をスライド板材5の螺子孔部5aに螺着して貫通させ(図6参照)、この吊ボルト3の螺子孔部5aの外方に突出する部位にナット部材7を螺着して吊ボルト3を吊り下げ状態とする。この吊ボルト3の上端部をスライド板材5の螺子孔部5aに螺着させる際、固定板材4に対してスライド板材5が吊ボルト3を回動支点とした重合面方向へ回動する場合があるが、この際、スライド板材5は回り止め係止突部6に係止してこのスライド板材5の回動が阻止される。従って、この吊ボルト3の上端部をスライド板材5の螺子孔部5aに螺着する作業は、スライド板材5を押えながら作業をする必要が無い。尚、このナット部材7は後に螺子孔部5aとで所謂ダブルナットとして機能させることになるが、吊ボルト3は螺子孔部5aに螺着して吊り下げ状態となっている為、作業の最終段階においてナット部材7を吊ボルト3に螺着させるようにしても良い。
【0062】
続いて、吊ボルト3の下端部を、排煙口2の上端フランジ部2aの四隅に設けた各連結孔2a’に貫通させるとともにナット17止めして連結する。
【0063】
このダクト1から吊り下げ状態となる吊ボルト3の下端部に排煙口2を連結する際、吊ボルト3が螺着するスライド板材5は固定板材4に対して重合面方向にスライド自在であり、且つ、この吊ボルト3は貫通孔1a及び孔部4aに対して遊動自在であるため、例えば吊ボルト3を該吊ボルト3の長さ方向と直交する方向に移動させながら該吊ボルト3の下端部に排煙口2を連結することができる(図7参照)。
【0064】
続いて、この状態でナット部材7を螺動させて締付けると、螺子孔部5aに対してナット部材7は圧接して所謂ダブルナット状態となり、このナット部材7を螺動させて螺子孔部5aに対してナット部材7を圧接させる際、固定板材4に対してスライド板材5が吊ボルト3を回動支点とした重合面方向へ回動する場合があるが、この際、スライド板材5は回り止め係止突部6に係止してこのスライド板材5の回動が阻止される。従って、この吊ボルト3の上端部にナット部材7を螺着する作業は、スライド板材5を押えながら作業をする必要が無い(図8参照)。
【0065】
このナット部材7の螺着作業が終わった時点で作業は完了する(図9参照)。
【0066】
尚、必要に応じて本実施例に係る吊ボルト連結具(固定板材4とスライド板材5との隙間)にコーキング剤を充填して気密性を向上する。
【0067】
よって、本実施例によれば、例えば前述した従来から提案されている連結構造に比し、ダクト1に排煙口2を吊ボルト3を介して吊り下げ連結することで、短管13の重量を吊ボルト3で支える必要はないから、それだけダクト1に対する排煙口2の連結が堅固となる。
【0068】
また、本実施例は、前述したように吊ボルト3が螺着するスライド板材5は固定板材4に対して重合面方向にスライド自在であり、且つ、この吊ボルト3は貫通孔1a及び孔部4aに対して遊動自在であるため、ダクト1に吊り下げ状態とした吊ボルト3を該吊ボルト3の長さ方向と直交する方向に移動することができ、よって、吊ボルト3に排煙口2を連結する際、例えば吊ボルト3の下端部を排煙口2の連結部に連結させることに追従して、ダクト1に対して連結する吊ボルト3の上端部はスライドすることになり、よって、吊ボルト3に排煙口2を連結する作業が難なく簡易に行え、しかも、このことからダクト1に設ける貫通孔1aの形成位置もそれ程精度が要求されなくなるから、当該貫通孔1aの形成作業も簡易となり、ダクト1に排煙口2を吊ボルト3を介して吊り下げる作業が簡易且つ迅速に行えることになる。
【0069】
また、本実施例は、固定板材4に対してスライド板材5が吊ボルト3を回動支点とした重合面方向へ回動した際、スライド板材5に係止してこのスライド板材5の回動を阻止し得る回り止め係止突部6を固定板材4に設けたから、例えば吊ボルト3の螺子孔部5aの外方に突出する部位に螺着したナット部材7を締め付け、このナット部材7が螺子孔部5aに圧接することで、固定板材4に対してスライド板材5が吊ボルト3を回動支点とした重合面方向へ回動した際、固定板材4に設けた回り止め係止突部6がスライド板材5に係止してこのスライド板材5の回動を阻止し得ることになるから、例えば一方の手で螺子孔部5aを回り止めしながら他方の手でナット部材7を螺動させる必要はなく、片手操作でナット部材7を螺動させることができ、よって、例えば手の届きにくい狭い箇所での作業が極めて良好に行えることになる。
【0070】
また、その他にも、例えば吊ボルト3の上端部をダクト1に設けた固定板材4に重合状態とするスライド板材5の螺子孔部5aに螺着することで、固定板材4に対してスライド板材5が吊ボルト3を回動支点とした重合面方向へ回動した際、固定板材4に設けた回り止め係止突部6がスライド板材5に係止してこのスライド板材5の回動を阻止し得ることになるから、例えば一方の手で螺子孔部5a(スライド板材5)を回り止めしながら他方の手で吊ボルト3を螺動させる必要はなく、片手操作で吊ボルト3を螺動させることができ、よって、例えば手の届きにくい狭い箇所での作業が極めて良好に行えることになる。
【0071】
また、本実施例は、固定板材4に対してスライド板材5が重合面方向へスライド移動した際、スライド板材5に係止してこのスライド板材5のスライド移動を阻止するように回り止め係止突部6を構成したから、固定板材4に対するスライド板材5の重合面方向への回動を阻止する回り止め係止突部6が、固定板材4に対するスライド板材5のスライド移動も阻止する構成であるから、必要以上にスライド板材5がスライド移動することが阻止されて作業性が良いのは勿論、スライド板材5の回動とスライド移動を阻止する構造を別途設ける必要なく極めて効率の良い構造であり、前述した秀れた作用効果を発揮する構造が簡易且つコスト安に得られることになる。
【0072】
また、本実施例は、回り止め係止突部6は、固定板材4の周縁部を立ち上がり折曲形成して構成したから、簡易構造故にコスト安にして量産性に秀れることになり、しかも、例えばこの回り止め係止突部6を固定板材4の孔部4aの内周縁部を立ち上がり折曲形成した場合、それだけ孔部4aが大きくなる為、スライド板材5を重合状態に設けた際の気密性が低減する可能性があるが、この点、固定板材4の孔部4aと関係のない位置に回り止め係止突部6を設けることで孔部4aを必要以上に大きくする必要が無いから、スライド板材5を重合状態に設けた際の気密性を確保することができる。
【実施例2】
【0073】
本発明の具体的な実施例2について図10〜14に基づいて説明する。
【0074】
本実施例は、図10〜12に図示したように回り止め係止突部6を固定板材4の孔部4aの内周縁部に複数(4つ)の切欠き片6aを設け、この切欠き片6aを垂直状に起こして形成したタイプである。
【0075】
この回り止め係止突部6のうち、一つの回り止め係止突部6は、短尺に設けられており、必要に応じて、この短尺の回り止め係止突部6を変形させることで固定板材4に重合状態のスライド板材5を取り外すことができ(図13,14参照)、この取り外したスライド板材5は別の用途(座金など)で使用することができる。このスライド板材5を取り外せる点については実施例1も同様である。
【0076】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0077】
1 取付箇所・ダクト
1A 開口部
1a 貫通孔
2 排煙口・被取付体
3 吊ボルト
4 固定板材
4a 孔部
4b 位置決め突部
5 スライド板材
5a 螺子孔部
5a’ 筒状部
5a” 螺子溝
6 回り止め係止突部
7 ナット部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付箇所に被取付体を吊り下げる吊ボルトを当該取付箇所に吊り下げ連結するための吊ボルト連結具であって、前記取付箇所に設ける固定板材と、この固定板材の表面に重合状態となり重合面方向にスライド移動自在に設けるスライド板材とを有し、前記取付箇所に設けられ前記吊ボルトよりも径大の貫通孔と連通する孔部を前記固定板材に設け、この孔部を前記吊ボルトよりも径大に設定し、前記貫通孔及び前記孔部に対して遊動自在に貫通状態となる前記吊ボルトが貫通状態で螺着する螺子孔部を前記スライド板材に設け、前記螺子孔部に前記吊ボルトを貫通させた際、この吊ボルトの前記螺子孔部の外方に突出する部位にナット部材を螺着し得る構成としたことを特徴とする吊ボルト連結具。
【請求項2】
建物に横設されるダクトの開口部に、排煙口を吊り下げる吊ボルトを当該ダクトに吊り下げ連結するための吊ボルト連結具であって、前記ダクトに設ける固定板材と、この固定板材の表面に重合状態となり重合面方向にスライド移動自在に設けるスライド板材とを有し、前記ダクトに設けられ前記吊ボルトよりも径大の貫通孔と連通する孔部を前記固定板材に設け、この孔部を前記吊ボルトよりも径大に設定し、前記貫通孔及び前記孔部に対して遊動自在に貫通状態となる前記吊ボルトが貫通状態で螺着する螺子孔部を前記スライド板材に設け、前記螺子孔部に前記吊ボルトを貫通させた際、この吊ボルトの前記螺子孔部の外方に突出する部位にナット部材を螺着し得る構成としたことを特徴とする吊ボルト連結具。
【請求項3】
前記固定板材に対して前記スライド板材が前記吊ボルトを回動支点とした重合面方向へ回動した際、前記スライド板材に係止してこのスライド板材の回動を阻止し得る回り止め係止突部を前記固定板材に設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の吊ボルト連結具。
【請求項4】
前記固定板材に対して前記スライド板材が重合面方向へスライド移動した際、前記スライド板材に係止してこのスライド板材のスライド移動を阻止するように前記回り止め係止突部を構成したことを特徴とする請求項3記載の吊ボルト連結具。
【請求項5】
前記回り止め係止突部は、前記固定板材の周縁部を立ち上がり折曲形成して構成したことを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載の吊ボルト連結具。
【請求項6】
前記固定板材の裏面にして前記孔部の周縁部に、前記貫通孔に位置決め挿入し得る位置決め突部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の吊ボルト連結具。
【請求項7】
前記スライド板材の貫通孔部は、前記スライド板材をバーリング加工により表面に突出させた筒状部の内面に螺子溝を形成したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の吊ボルト連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−24405(P2013−24405A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163105(P2011−163105)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(591109061)株式会社野島角清製作所 (25)
【Fターム(参考)】