説明

吊上装置および巻上機

【課題】ロードチェーンの巻き上げに際し、ストッパ等の設置操作を必要とせず、走行ローラを不用意に移動させることなく、安全にかつ作業性を改善する吊上装置および巻上機を提供する。
【解決手段】巻上機23は、ロードチェーン51と、ロードチェーン51を巻き上げるための巻上機構を内蔵した巻上機本体52と、巻上機本体52に取り付けられかつレール21上に載置されている走行ローラ53,54とを備えている。巻上機構は、巻上軸61を有している。巻上軸61は、巻上機本体52から側方に突出させられかつ巻上ハンドル62を取り付けた側方突出端部を有している。巻上軸61の軸線CHは、走行ローラ53,54の軸線CRに対して、立体交差させられる方向にのびている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、鉄道軌道工事において、レール、レール上に載置された台車、その他の各種機材等を吊り上げるための吊上装置に関する。また、吊上装置に好適に用いられる巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吊上装置としては、巻上機が、ロードチェーンと、ロードチェーンを巻き上げるための巻上機構を内蔵した巻上機本体と、巻上機本体に取り付けられかつガイドレール上に載置されている走行ローラとを備えており、巻上機構は、巻上軸を有しており、巻上軸は、巻上機本体から側方に突出させられかつ巻上ハンドルを取り付けた側方突出端部を有しており、巻上軸の軸線は、走行ローラの軸線に対して、平行させられる方向にのびているものが知られている。
【0003】
軌道上で物を吊り上げる装置として、例えば、特開2006−104849号公報には、軌道スラブ敷設位置調整装置が開示されており、前及び後各クレーン(21)(22)の横フレーム(33)(43)にそれぞれ左右一対の巻上機(34)(44)が備えられることが開示されている(請求項5)。巻上機(34)は、手回し式のものであり、走行ローラによって前後の横フレーム部材(33a),(33b) にまたがってこれの長さ方向に移動自在にのせられている(段落[0032])。
【0004】
この吊上装置では、ロードチェーンの巻き上げに際し、回転ハンドルを手回し操作して、巻上軸が回転させられる。この場合、巻上軸の軸線周りに作用させられる回転トルクは、走行ローラを水平方向(横フレーム(33)の長さ方向)に移動させるように作用する。この走行ローラの水平移動を防止するためには、ストッパ等を設置することが必要である。しかしながら、ストッパ等の設置のために操作は手間が掛かり面倒であり、作業効率が悪かった。さらに、回転ハンドルを手回し操作するに際して、横フレーム(33)が存在しているために、作業者は、十分な力を回転ハンドルに伝えにくく、この点でも作業効率が悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−104849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、ロードチェーンの巻き上げに際し、ストッパ等の設置操作を必要とせず、走行ローラを不用意に移動させることなく、安全にかつ作業性を改善することのできる吊上装置を提供することにある。
【0007】
また、この発明の目的は、上記吊上装置に好適に用いられ、安全にかつ作業性を改善することのできる巻上機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による吊上装置は、ガイドレールと、ガイドレール上に載置されている巻上機とを備える吊上装置であって、
巻上機が、ロードチェーンと、ロードチェーンを巻き上げるための巻上機構を内蔵した巻上機本体と、巻上機本体に取り付けられかつガイドレール上に載置されている走行ローラとを備えており、巻上機構は、巻上軸を有しており、巻上軸は、巻上機本体から側方に突出させられかつ巻上ハンドルを取り付けた側方突出端部を有しており、巻上軸の軸線は、走行ローラの軸線に対して、立体交差させられる方向にのびているものである。
【0009】
この発明による吊上装置では、ロードチェーンの巻き上げに際し、巻上軸の軸線周りに作用させられる回転トルクは、走行ローラを回転させる方向ではなく、この方向と直交する走行ローラの軸方向に作用する。つまり、走行ローラを回転させて、水平方向に移動させるようには作用しない。そのため、走行ローラがガイドレール上を水平移動してしまう危険が避けられ、走行ローラの水平移動を規制するストッパ等の設置操作を必要とせず、走行ローラを不用意に移動させることなく、安全にかつ作業性を改善することができる。
【0010】
さらに、巻上ハンドルは、基端側を側方突出端部に拘束した固定端としかつ先端側を解放した自由端とするレバー部材よりなると、例えば、巻上ハンドルが回転ハンドルである場合と比較して、作業者の力をレバー部材の揺動操作によって、巻上軸に効率良く伝達することができる。
【0011】
また、ガイドレールに対し巻上機が着脱自在であると、例えば、巻上機を種々の吊上装置に設置することができ便利である。
【0012】
また、ガイドレールの両端部が、一対の脚によってそれぞれ支持されていると、巻上機を脚の長さに応じて所望の高さに保持して任意の位置に移動させることができる。
【0013】
また、各脚は、ガイドレールの底面に重なりうるように折畳可能であると、例えば、吊上装置を搬送する際に、ガイドレールおよび脚が嵩張ることが無い。
【0014】
さらに、ガイドレールに対し巻上機が着脱自在であり、各脚は、ガイドレールの底面に重なりうるように折畳可能であると、例えば、吊上装置を搬送する際に、ガイドレールから巻上機を取り外しかつ脚を折り畳んでおけば、巻上機、ガイドレールおよび脚が嵩張ることが無い。
【0015】
この発明による巻上機は、ロードチェーンと、ロードチェーンを巻き上げるための巻上機構を内蔵した巻上機本体と、巻上機本体に取り付けられている走行ローラとを備えており、巻上機構は、巻上軸を有しており、巻上軸は、巻上機本体から側方に突出させられかつ巻上ハンドルを取り付けた側方突出端部を有しており、巻上軸の軸線は、走行ローラの軸線に対して、立体交差させられる方向にのびているものである。
【0016】
この発明による巻上機は、上記吊上装置に好適に用いられるものである。この巻上機を、走行ローラを介してガイドレール上に移動自在に載置して使用すると、ロードチェーンの巻き上げに際し、巻上軸の軸線周りに作用させられる回転トルクは、走行ローラを回転させる方向ではなく、この方向と直交する走行ローラの軸方向に作用する。つまり、走行ローラを回転させて、水平方向に移動させるようには作用しない。そのため、走行ローラがガイドレール上を水平移動してしまう危険が避けられ、走行ローラの水平移動を規制するストッパ等の設置操作を必要とせず、走行ローラを不用意に移動させることなく、安全にかつ作業性を改善することができる。
【0017】
さらに、巻上ハンドルは、基端側を側方突出端部に拘束した固定端としかつ先端側を解放した自由端とするレバー部材よりなると、例えば、巻上ハンドルが回転ハンドルである場合と比較して、作業者の力をレバー部材の揺動操作によって、巻上軸に効率良く伝達することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ロードチェーンの巻上に際し、ストッパ等の設置操作を必要とせず、走行ローラを不用意に移動させることなく、安全にかつ作業性を改善することのできる吊上装置が提供される。
【0019】
また、この発明によれば、上記吊上装置に好適に用いられ、安全にかつ作業性を改善することのできる巻上機が提供される。
【0020】
この発明の吊上装置および巻上機を使用して、鉄道軌道工事において、安全にかつ作業性よく種々の物体を吊り上げ、または吊り降ろしすることができる。例えば、レール、レール上に載置された台車、その他の各種機材等を吊り上げ、または吊り降ろしすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明による吊上装置の正面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同吊上装置の巻上機の詳細斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明において、前後とは、図1および図2に矢印Aで示す方向を前、これと反対側を後といい、左右とは、前方より見て、その左右の側を左右というものとする。
【0023】
図1および図2を参照すると、前後方向にのびた軌道レールRをまたぐように立てられている前後一対の門型クレーン11を備えている。両クレーン11は、前後の向きは逆であるが、同一構造のものである。
【0024】
各クレーン11は、左右方向にのびたガイドレール21と、ガイドレール21の左右両端部を支持している左右一対の支持脚22と、ガイドレール21上にそって左右方向に移動自在である巻上機23とよりなる。
【0025】
ガイドレール21の左右両端部に、左右対応する側の支持脚22が水平ピン31によって揺動自在に連結されている。ガイドレール21の底面に支持脚22が重ね合わされるように折畳まれるようになっている。
【0026】
ガイドレール21は、図2に示すように、前後方向に間隔をおいて相対させられかつ左右方向に水平にのびた前後一対の横断面方形状レール部材41よりなる。
【0027】
巻上機23は、両レール部材41の間を通されているロードチェーン51と、ロードチェーン51を巻上げるための巻上機構(図示略)を内蔵した巻上機本体52と、巻上機本体52の左端部にそれぞれ取付られかつ両レール部材41の頂面上をそれぞれ走行させられる前後一対のフリーローラ53と、巻上機本体52の右端部にそれぞれ取付られかつ両レール部材41の頂面上をそれぞれ走行させられる前後一対の送りローラ54とを備えている。
【0028】
ロードチェーン51の下端にはフック55が取付られている。フック55に、キャッチ56を介して軌道レールRが吊り下げられている。フック55に、軌道レールR以外の吊り上げたい目的物に応じて、種々形状のキャッチを用いることができる。
【0029】
巻上機構は、巻上軸61を有している。巻上軸61は、両フリーローラ53の上方レベルにおいて巻上機本体52から左方に突出させられた左方突出端部を有している。左方突出端部に巻上ハンドル62が取付られている。巻上ハンドル62は、基端側を左方突出端部に拘束した固定端としかつ先端側を解放した自由端とするレバー部材よりなる。
【0030】
両送りローラ54にはローラ軸71が固定されている。ローラ軸71の前端部は、前送りローラ54から前方に突出させられている。ローラ軸71の前方突出端部には送りハンドル72が取付られている。
【0031】
前方より見て、送りハンドル72を時計方向に回転させると、巻上機23は右方向に移動させられ、送りハンドル72を反時計方向に回転させると、巻上機23は左方向に移動させられる。
【0032】
図3に示すように、巻上軸61の軸線CHは、左右方向(ガイドレール21と平行な方向)にのびている。フリーローラ53および送りローラ54の軸線CRは、巻上軸61の軸線CHの下方レベルを互いに平行して前後方向(ガイドレール21と垂直な方向)にのびている。換言するならば、巻上軸61の軸線CHと、フリーローラ53および送りローラ54の軸線CRとは、互いに立体交差させられる方向にそれぞれのびている。平面的に見れば、巻上軸61の軸線CHと、フリーローラ53および送りローラ54の軸線CRとは、互いに直交している。
【0033】
ロードチェーン51の巻き上げに際し、巻上ハンドル62を上下揺動させると、巻上機構のラチェット機構の切換によって、ロードチェーン51が引上げられるか、または引下ろされる。この場合、巻上軸61の軸線CH周りに作用させられる回転トルクは、軸線CHが左右方向(ガイドレール21と平行な方向)にのびているので、フリーローラ53および送りローラ54の軸方向に、すなわち前後方向に作用する。つまり、フリーローラ53および送りローラ54を回転させて、水平方向(ガイドレール21と平行な方向)に移動させるようには作用しない。したがって、巻上ハンドル62の操作によって、巻上機23が不用意に左右方向に移動させられる心配はない。
【0034】
さらに、軸線CHが左右方向(ガイドレール21と平行な方向)にのびているので、作業者がガイドレール21と相対するように立って巻上ハンドル62の揺動操作を行いやすく、巻上軸に効率良くトルクを伝達することができる。巻上ハンドル62の揺動操作は、作業現場の状況に応じて、ガイドレール21の前または後のどちらの側からも容易に行うことができる。
【0035】
ラチェット機構を用いた巻上機構は、例えば、特開平7−247096号公報、特開平10−59689号公報、特開2000−16769号公報、特開2002−193591号公報、特開2002−249298号公報等により知られている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明による吊上装置及び巻上機は、例えば、鉄道軌道工事において、レール、レール上に載置された台車、その他の各種機材等を吊り上げることを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0037】
23 巻上機
51 ロードチェーン
53,54 走行ローラ
61 巻上軸
62 巻上ハンドル
CH 巻上軸軸線
CR 走行ローラ軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールと、ガイドレール上に載置されている巻上機とを備える吊上装置であって、
巻上機が、ロードチェーンと、ロードチェーンを巻き上げるための巻上機構を内蔵した巻上機本体と、巻上機本体に取り付けられかつガイドレール上に載置されている走行ローラとを備えており、巻上機構は、巻上軸を有しており、巻上軸は、巻上機本体から側方に突出させられかつ巻上ハンドルを取り付けた側方突出端部を有しており、巻上軸の軸線は、走行ローラの軸線に対して、立体交差させられる方向にのびている吊上装置。
【請求項2】
巻上ハンドルは、基端側を側方突出端部に拘束した固定端としかつ先端側を解放した自由端とするレバー部材よりなる請求項1に記載の吊上装置。
【請求項3】
ガイドレールに対し巻上機が着脱自在である請求項1または2に記載の吊上装置。
【請求項4】
ガイドレールの両端部が、一対の脚によってそれぞれ支持されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の吊上装置。
【請求項5】
各脚は、ガイドレールの底面に重なりうるように折畳可能である請求項4に記載の吊上装置。
【請求項6】
ロードチェーンと、ロードチェーンを巻き上げるための巻上機構を内蔵した巻上機本体と、巻上機本体に取り付けられている走行ローラとを備えており、巻上機構は、巻上軸を有しており、巻上軸は、巻上機本体から側方に突出させられかつ巻上ハンドルを取り付けた側方突出端部を有しており、巻上軸の軸線は、走行ローラの軸線に対して、立体交差させられる方向にのびている巻上機。
【請求項7】
巻上ハンドルは、基端側を側方突出端部に拘束した固定端としかつ先端側を解放した自由端とするレバー部材よりなる請求項6に記載の巻上機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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