説明

吊下げ装置

【課題】簡単な構造で、柱梁部材等の被吊上げ部材に取り付けられている吊りピースに対して遠隔操作により高い精度で位置決めし、係止させることができ、玉掛け作業の手間を低減することができるとともに、無人化を図ることができる。
【解決手段】柱材3を上方から抱え込むようにして保持する枠状のガイド部10と、柱材3に固着させた吊りピース31に係止させるための把持装置20とを備え、その把持装置20は、吊りピース31に嵌合可能な把持装置20のクランプ23と、クランプ23に嵌合した吊りピース31のピン穴に向けて突出する係止ピンとを備え、クランプ23に吊りピース31が嵌合した状態において、係止ピンのピン軸と、吊りピース31のピン穴の中心軸線とが一致したときにのみ、係止ピンがピン穴に向けて突出する構成の吊下げ装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁部材等の被吊上げ部材に取り付けた吊りピースの貫通穴に係止させ、被吊上げ部材を吊り下げるための吊下げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物(被吊上げ部材)をクレーンを用いて吊り上げる場合には、ワイヤを被吊上げ部材に玉掛けしているのが一般的である。このような玉掛け作業の手間を少なくする手段として、消波ブロック等の大重量のブロックに対して無人で玉掛けを行うことができる吊り上げ装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、少なくとも2本のブロック吊りワイヤをU状に垂下した少なくとも3本の吊り上げアームを、吊り上げ用ワイヤにより吊り下げられた吊りホルダに開閉自在に放射状に垂設し、吊りホルダに垂設された吊り上げアームを開いた状態で、吊りホルダの中央部に垂設されたガイドロッドの下端がブロックに当接するまで吊り下ろしたときに、吊り上げアームを閉じることによりブロック吊りワイヤをブロックに掛けて吊り上げる構成の吊り上げ装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−308289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吊り上げ装置では以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1に記載の吊り上げ装置では、消波ブロックのようにU字状に垂下させたワイヤを掛けることが可能な凸部を有する被吊上げ部材を対象としており、例えば建物の構築時における柱梁部材等に吊りピースを固定させた被吊上げ部材には適用することはできない。つまり、柱梁部材等にあっては、吊りピースを取り付けて、その貫通穴にシャックル等の吊り治具を係止させてワイヤで吊っているのが一般的であり、このような部材に対して特許文献1の吊り上げ装置を適用することは困難であった。
【0006】
また、作業環境が悪く、作業者の立ち入りが困難な条件下では、無線による遠隔操作で玉掛け作業を行う必要があるが、吊りピースの貫通穴に対して吊り治具を係止させるためには、高い位置決め精度が要求されるなど、遠隔操作が困難であるという問題があった。そのため、上述したような柱梁部材等被吊上げ部材に対して作業員による玉掛け作業の手間を少なくすることができる好適な手段が求められており、その点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、柱梁部材等の被吊上げ部材に取り付けられている吊りピースに対して遠隔操作により高い精度で位置決めし、係止させることができ、玉掛け作業の手間を低減することができるとともに、無人化を図ることができる吊下げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る吊下げ装置では、柱梁部材等の被吊上げ部材に取り付けた吊りピースの貫通穴に係止させ、被吊上げ部材を吊り下げる吊下げ装置であって、吊りピースに嵌合可能な嵌合凹部と、嵌合凹部に嵌合した吊りピースの貫通穴に向けて突出する係止ピンとを備え、嵌合凹部に吊りピースが嵌合した状態において、係止ピンのピン軸と、吊りピースの貫通穴の中心軸線とが一致したときにのみ、係止ピンが貫通穴に向けて突出することを特徴としている。
【0009】
本発明では、吊下げ装置を移動させて、嵌合凹部に被吊上げ部材の吊りピースを嵌合させることで、係止ピンのピン軸と吊りピースの貫通穴の中心軸線とが一致するため、この状態で係止ピンを突出させることで、貫通穴に挿入されるので、吊下げ装置で被吊上げ部材を把持することができる。この場合、係止ピンは、ピン軸と吊りピースの貫通穴の中心軸線とが一致したときにのみ突出するため、係止ピンの突出を確認することで、確実に把持されたことを確認することができる。つまり、嵌合凹部に対して吊りピースが所定位置及び姿勢で嵌合していない場合には係止ピンが突出しないことから、不安定な把持状態のまま被吊上げ部材を吊り上げてしまうといった不具合を防止することができる。
【0010】
また、吊りピースに対して嵌合凹部を嵌合させるという簡単な作業となるので、玉掛け作業の無人化が可能となり、作業手間を低減することができる。そのうえ、遠隔操作も可能となることから、作業環境が悪く、作業者の立ち入りが困難な条件下であっても、確実な玉掛け作業を行うことができる。しかも、簡単な作業となるので、クレーンオペレータの技量にかかわらず、玉掛けを行うことができる。
さらに、吊りピースの形状と、その貫通穴の位置が同一であれば、種々の形状の被吊上げ部材に対応することができる。
【0011】
また、本発明に係る吊下げ装置では、被吊上げ部材の所定位置に対して位置決め可能なガイド部が設けられ、ガイド部によって嵌合凹部が吊りピースに嵌合するように案内されることが好ましい。
【0012】
本発明では、ガイド部によって嵌合凹部を被吊上げ部材に設けた吊りピース側に向けて案内させることができるので、この案内により吊りピースに対する嵌合凹部の位置決めが容易に、且つ精度良く行なうことができる。
【0013】
また、本発明に係る吊下げ装置では、ガイド部は、被吊上げ部材に沿って上下方向に移動可能なガイドレールをなし、ガイドレールの所定位置に、ガイドレールの上下の移動とともに被吊上げ部材の一部に当接可能に突出され、ガイドレールに回動可能に支持された高さ検出片が設けられていてもよい。
【0014】
この場合、ガイドレールを被吊上げ部材に対して側方より当て止めして水平方向に位置決めした後、ガイドレールを被吊上げ部材に沿わせて下降させたときに、高さ検出片の突出部が被吊上げ部材によって押し上げられ、所定の位置まで回動したことを検出し、その検出時の位置で吊下げ装置を上下方向に位置決めすることができる。
【0015】
また、本発明に係る吊下げ装置では、高さ検出片には、目視或いはカメラにより確認可能な表示部が設けられており、表示部は、高さ検出片の回動に伴って目視或いはカメラによって確認可能状態又は非確認状態となる位置に移動することが好ましい。
【0016】
この場合、高さ検出片の動作をその表示部により確認することができる。例えば、通常時には表示部が目視或いはカメラにより確認できる状態にしておき、吊下げ装置の下降に伴って高さ検出片が回動して表示部が非確認状態となったときの位置で上下方向に位置決めすることができる。
【0017】
また、本発明に係る吊下げ装置では、嵌合凹部と係止ピンを所定の高さに位置決めする高さ検出機構が設けられ、高さ検出器機構は、下端に当接部を有する当接部材を上下方向に摺動可能に支持する支持筒と、当接部材の摺動に伴って回動可能に支持筒に支持された回動片と、回動片の回動に伴って目視或いはカメラによって確認可能状態又は非確認状態となる位置に移動する表示部と、を備えていてもよい。
【0018】
本発明では、嵌合凹部と係止ピンを被吊上げ部材に向けて下ろすときに、高さ検出機構の当接部が被吊上げ部材の所定部分に当接し、当接部材に沿って支持筒が下方に向けて摺動し、この当接部材の上端によって回動片を回動させ、これによって表示部の位置を変化させることができる。そして、その表示部の位置を検出し、その検出時の位置で高さ調整機構の位置、すなわち吊下げ装置の位置を確認することができる。例えば、通常時には表示部が目視或いはカメラにより確認できる状態にしておき、回動片が回動して表示部が非確認状態となったときに、吊下げ装置の位置を認識することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吊下げ装置によれば、簡単な構造で、柱梁部材等の被吊上げ部材に取り付けられている吊りピースに対して遠隔操作により高い精度で位置決めし、係止させることができ、玉掛け作業の手間を低減することができるとともに、無人化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態による吊下げ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す吊下げ装置の立面図である。
【図3】図2に示すA−A線矢視図であって、吊下げ装置を下方から見た図である。
【図4】高さ検出片の動作を示す斜視図であって、(a)は突出位置の状態を示す図、(b)は収納位置の状態を示す図である。
【図5】把持装置の構成を示す斜視図である。
【図6】図5に示すB−B線から見た正面図であって、(a)は把持前の状態の図、(b)は把持後の状態の図である。
【図7】図5に示すC−C線から見た側面図であって、(a)は把持前の状態の図、(b)は把持後の状態の図である。
【図8】(a)〜(c)は吊下げ装置の位置決め手順を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態による吊下げ装置の構成を示す斜視図である。
【図10】図9に示す吊下げ装置の側面図である。
【図11】図9に示す吊下げ装置の上面図である。
【図12】図11に示すD−D線矢視図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態による高さ調整機構の構成を示す斜視図である。
【図14】高さ調整機構の動作を示す斜視図であって、(a)は確認可能状態を示す図、(b)は非確認状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態による吊下げ装置について、図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1および図2に示すように、本第1の実施の形態による吊下げ装置1は、柱梁部材(ここでは、柱材3)を例えばタワークレーン等の揚重機械(図示省略)によって吊り上げるためのものである。吊下げ装置1は、柱材3を上方から抱え込むようにして保持する枠状のガイド部10と、柱材3に固着させた吊りピース31に係止させるための把持装置20と、を備えている。
【0023】
ここで、被吊上げ部材をなす柱材3は、4側面を有する正方形断面をなし、柱材3の上面に吊下げ用の吊りピース31が設けられている。吊りピース31は、穴の中心線方向を柱材3の材軸方向(長手方向)に直交する方向に向けた図5に示すピン穴31a(貫通穴)を有する半円板状の部材であり、柱材3の辺毎に側面3a寄りの位置に1個ずつ設けられている。
【0024】
図1乃至図3に示すように、ガイド部10は、天板部11と、天板部11の外周部から下方に延びる複数本(4本)のガイドレール12(12A、12B、12C、12D)と、ガイドレール12のうち少なくとも1本(本実施の形態では、中尺ガイド12C)に設けられた高さ検出片13と、を備えて概略構成されている。
【0025】
天板部11は、四角形状の板状部材であり、上面中央部には、図示しないタワークレーンより吊下げられるワイヤ4を係止するための複数(ここでは4つ)の上部係止ピース14、14、…が設けられ、下面には把持装置20を吊り下ろすための複数(ここでは4つ)の下部係止ピース15、15、…(図2参照)が設けられている。
そして、天板部11の上面には、後述するが、把持装置20からの出力信号を入力して玉掛け状態を表示する表示灯5が設けられている。この表示灯5は、本吊下げ装置1に装備される把持装置20、20、…の台数分(ここでは4個)だけ設けられ、それぞれオン表示5A及びオフ表示5Bをするランプを有している。
【0026】
4本のガイドレール12は、それぞれ長さ方向に延びる側面が柱材3の各側面3aに沿うように配置されており、隣り合う2本の長尺ガイド12A、12Bと、長尺ガイドよりも長さの短い中尺ガイド12Cと、中尺ガイド12Cよりも長さの短い短尺ガイド12Dとからなる。これらガイドレール12の下端は、下方に向かうに従って漸次、内側から外側に向かう傾斜面12aを形成させている。
【0027】
高さ検出片13は、中尺ガイド12Cの下側に設けられ、図2に示すように略S字形の部材からなり、中尺ガイド12Cに回転可能に支持されるS字の中央部分に位置する回転支持部13Aと、その回転支持部13Aを挟んでガイド部10の内側に配置される突出部13Bと、同じく回転支持部13Aを挟んでガイド部10の外側に配置される表示部13Cとを備えている。
【0028】
図4(a)及び(b)に示すように、高さ検出片13の中尺ガイド12Cに対する回転軸13aは、回転支持部13Aの表示部13C寄りの位置に設けられ、中尺ガイド12Cの長手方向に直交するとともに、保持する柱材3の側面3a(図1参照)に平行する方向に向けて配置され、中尺ガイド12Cに対して回転可能に支持されている。また、中尺ガイド12Cには、突出部13Bがガイド部10の内側(ガイド部10で保持した柱材3側)に向けて略水平方向に突出する位置(突出位置M1)から中尺ガイド12C内に収納される位置(収納位置M2)までの範囲で高さ検出片13が回転するように規制する係止ピン13bが設けられている。
【0029】
高さ検出片13の中尺ガイド12Cに対する収納状態は、図4(b)に示す収容位置M2において、突出部13Bの裏面13cが中尺ガイド12Cの内側面12bとほぼ一致する位置、或いは内側面12bから張り出さない位置に設定されている。
【0030】
表示部13Cは、高さ検出片13の突出部13Bが突出状態にある場合において、上面に例えば赤色等の表示板16が取り付けられた構成となっており、この状態でタワークレーンのブーム先端に取り付けられているカメラ6によって撮像し、監視可能な構成となっている。この表示板16は、高さ検出片13が突出位置M1から収納位置M2に回動したとき、表示部13Cとともに表示面16aが側方に向いた状態となり、このときの表示面16aはカメラ6によって確認できない範囲となる。
【0031】
次に、把持装置20の具体的な構成について図面に基づいて説明する。
図5に示すように、把持装置20は、吊り具21を備えた装置本体22と、装置本体22の下方で柱材3の吊りピース31を嵌合させるクランプ23(嵌合凹部)と、クランプ23に嵌合させた吊りピース31のピン穴31aに対して挿入出可能な係止ピン24(図6、図7)と、係止ピン24の突出口の開口26a(後述する)を開閉する回動プレート25とを備えて概略構成されている。把持装置20は、ガイド部10の4つの下部係止ピース15(図2参照)のそれぞれに吊り下げられている。
【0032】
図6(a)、(b)に示すように、クランプ23は、略V字状、或いは略U字状に下方に開いた形状をなし、その内周側の案内面23aの奥側で吊りピース31を嵌合させるようになっている。
【0033】
図7(a)、(b)に示すように、装置本体22には、係止ピン24を軸方向に進退移動させるようにして収容するピン収容ボックス26が設けられている。このピン収容ボックス26には、係止ピン24の突出口に開口26aが形成されている。そして、係止ピン24のピン軸Pは、クランプ23に嵌合された吊りピース31のピン穴31aの中心軸線Oに同軸となっている。なお、係止ピン24は、ピン収容ボックス26に収められた電動モータ、又は電動シリンダ等(図示省略)によって突出し、後退するようになっている。
【0034】
図6及び図7に示すように、回動プレート25は、帯状の平板をなし、その回転軸25aが係止ピン24のピン軸Pに平行となる方向に配置され、基端25bがクランプ23の一方の下端に回動可能に支持されている。この回動プレート25は、吊りピース31が嵌合されていない状態において、先端部25cが係止ピン24が挿入出される開口26aを塞ぐ位置(閉塞位置)に配置されており、この閉塞位置を基点にして回動可能な構成となっている。
【0035】
また、クランプ23を挟んでピン収容ボックス26と反対側には、係止ピン24の進退制御及びその信号を送信する制御ボックス27が設けられている。
この制御ボックス27には、係止ピン24のピン軸P上にピン挿入検出センサ28が設けられている。制御ボックス27では、ピン挿入検出センサ28でピン挿入を検出したときに、表示灯5へ向けて出力信号を発信するように制御されている。
【0036】
次に、上述した把持装置20の作用と、吊下げ装置1を柱材3に対して位置決めして玉掛けをする方法について、図面に基づいて説明する。
先ず、図1に示すように、吊下げ装置1のガイド部10を使用して柱材3を位置決めする。図8(a)及び(b)に示すように、タワークレーン等の揚重機によって吊り下げられた空荷の吊下げ装置1を横移動させ、2本の長尺ガイド12A、12Bのそれぞれを柱材3の側面3aに当接させる。これにより吊下げ装置1の水平方向(X方向、Y方向)が位置決めされることになる。なお、長尺ガイド12A、12Bの柱材3に当接させる部分は、中尺ガイド12Cの下端よりも下方に長い部分となる。
【0037】
その後、図8(b)及び(c)に示すように、長尺ガイド12A、12Bによって柱材3に沿わせながら吊下げ装置1を案内させることで、中尺ガイド12Cが柱材3の側面3aに当接し始める。このとき、図4(a)、(b)に示すように、中尺ガイド12Aに設けられる高さ検出片13の突出部13Bが柱材3によって上方に向けて押されるので、高さ検出片13が回転軸13aを中心に回動し、突出部13Bが内側に向けて略水平方向に突出する位置(突出位置M1)から中尺ガイド12C内に収納される位置(収納位置M2)となる。
【0038】
これにより、高さ検出片13の表示部13Cも回動により向きが変わり、表示部13Cに取り付けられている表示板16の表示面16aが鉛直方向、すなわち横向きの状態となる。そのため、この表示板16はタワークレーンのブームに備えられているカメラ6によって撮像されなくなり、この表示板16が確認できなくなった時点で吊下げ装置1の下降を停止する。この表示板16が確認できなくなったとき、すなわち高さ検出片13が収納位置M2に回転した状態において、短尺ガイド12Dも柱材3の側面3aにガイドされた状態となり、柱材3が四方の側面3aのそれぞれに配置されるガイドレール12によって保持された状態となる。この状態において、柱材3に設けた4つの吊りピース31のそれぞれの真上に把持装置20のクランプ23が位置している。
【0039】
このように、長尺ガイド12A、12Bを柱材3の側面3aに対して側方より当て止めして水平方向に位置決めした後、その長尺ガイド12A、12Bを柱材3に沿わせて下降させたときに、高さ検出片13の突出部13Bが柱材3によって押し上げられ、所定の収納位置M2まで回動したことを検出し、その検出時の位置で吊下げ装置1を上下方向に位置決めすることができる。そして、高さ検出片13が回動して表示板16がカメラ6で非確認状態となったときの位置を上下方向の位置決め位置とすることができる。
【0040】
その後、さらに吊下げ装置1を降下させることで、図6及び図7に示すように、4つの把持装置20、20、…のそれぞれのクランプ23を柱材3の吊りピース31に嵌合させる。クランプ23は下側の開口部が吊りピース31の幅寸法よりも側方に大きく開いた形状になっているので、このクランプ23への挿入時に、吊りピース31をクランプ23の案内面23aに沿ってクランプ奥側へ案内され、所定の嵌合位置(つまり、係止ピン24による挿入が可能な位置)に嵌合されることになる。これによりクランプ23内に嵌合された吊りピース31のピン穴31aの中心軸線と係止ピン24のピン軸Pとが一致した状態となる。
【0041】
そして、吊りピース31がクランプ23内に確実に嵌入されたときには、クランプ23の内側への係止ピン24の突出を規制している回動プレート25が吊りピース31によって押し上げられ、回動プレート25の先端部25cを係止ピン24が突出する開口a26を塞ぐ位置からクランプ23の案内面23aよりも外側の位置に移動させることができる。つまり、係止ピン24のピン軸上に係止ピン24の突出を規制する部位(回動プレート25の先端部25c)が取り除かれ、係止ピン24の突出が可能となる。
なお、吊りピース31がクランプ23に対して正規の位置に嵌合していない場合には、回動プレート25が十分に押し上げられず、ピン軸P上に回動プレート25が位置するため、係止ピン24を突出させることができない。
【0042】
次いで、係止ピン24を突出させてピン穴31aに貫通させた状態で挿入させ、これにより吊りピース31に係止ピン24が係止され、吊下げ装置1で柱材3が把持されたことになる。なお、係止ピン24がピン穴31aに確実に挿入されたことが制御ボックス27内に設けられているピン挿入検出センサ28によって検出され、その検出信号をガイド部10の天板部11上に設けた図1に示す表示灯5へ出力して、表示灯5のオン表示5Aを点灯又は点滅させる。
【0043】
クレーンのオペレータによって4つの把持装置20に対応する全ての表示灯5においてオン表示5Aが確認されたときに、吊下げ装置1とともに柱材3を吊り上げて所定位置へ移動させることができる。そのため、4つの表示灯5のうち1つでもオン表示5Aが点灯又は点滅せず、オフ表示5Bが点灯又は点滅している場合には、把持状態が完了していないこととなり、オペレータは吊上げ操作を行うことができないので、不安定な把持状態での吊上げを防ぐことができる。
【0044】
このように、吊下げ装置1を移動させて、クランプ23に吊りピース31を嵌合させることで、係止ピン24のピン軸Pと、吊りピース31のピン穴31aの中心軸線Oとが一致するため、この状態で係止ピン24を突出させることで、ピン穴31aに挿入されるので、吊下げ装置1で柱材3を把持することができる。
この場合、係止ピン24は、ピン軸Pと吊りピース31のピン穴31aの中心軸線Oとが一致したときにのみ突出するため、係止ピン24の突出を確認することで、確実に把持されたことを確認することができる。つまり、クランプ23に対して吊りピース31が所定位置及び姿勢で嵌合していない場合には係止ピン24が突出しないことから、不安定な把持状態のまま柱材3を吊り上げてしまうといった不具合を防止することができる。
【0045】
また、吊りピース31に対してクランプ23を嵌合させるという簡単な作業となるので、玉掛け作業の無人化が可能となり、作業手間を低減することができる。そのうえ、遠隔操作も可能となることから、作業環境が悪く、作業者の立ち入りが困難な条件下であっても、確実な玉掛け作業を行うことができる。しかも、簡単な作業となるので、クレーンオペレータの技量にかかわらず、玉掛けを行うことができる。
さらに、吊りピース31の形状と、そのピン穴31aの位置が同一であれば、柱材3に限らず種々の形状の被吊上げ部材に対応することができる。
【0046】
また、ガイド部10によって把持装置20のクランプ23を柱材3に設けた吊りピース31側に向けて案内させることができるので、この案内により吊りピース31に対するクランプ23の位置決めが容易に、且つ精度良く行なうことができる。
【0047】
上述のように本第1の実施の形態による吊下げ装置では、簡単な構造で、柱材3に取り付けられている吊りピース31に対して遠隔操作により高い精度で位置決めし、係止させることができ、玉掛け作業の手間を低減することができるとともに、無人化を図ることができる効果を奏する。
【0048】
次に、本発明の吊下げ装置による他の実施の形態及び変形例について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0049】
(第2の実施の形態)
図9に示すように、第2の実施の形態による吊下げ装置1Aは、被吊上げ部材として梁材7を対象としたものである。
ここで、本第2の実施の形態による梁材7は、I形鋼からなる一対の主桁71、72が図示しない連結材によって一定の間隔をもって平行に接合された構成をなしている。梁材7に固定されている吊りピース73は、第1主桁71及び第2主桁72の長さ方向で一定の距離をあけてそれら主桁71、72の上フランジ71a、72aに配置されている。一方の第2主桁72には、長さ方向の両端に設けられる吊りピース73、73同士の中間部に上フランジ72aから上方に向けて突設片74が固定されている。
【0050】
吊り下げ装置1Aは、梁材7に対して水平方向(X方向、Y方向)、及び上下方向(Z方向)に位置決めするガイド部40と、ガイド部40に支持された複数(ここでは4つ)の把持装置20、20、…と、を備えている。
【0051】
図9乃至図12に示すように、ガイド部40は、一方向に延在する主材41と、主材41の長手方向の両端部に設けられる端部架台42A、42Bと、端部架台42A、42Bのそれぞれから梁材7の一方の第2主桁72に沿う位置に垂下された長尺ガイド43と、主材41に支持され梁材7の一端側に沿う位置に延在する中尺ガイド44と、主材41に支持され梁材7の他端側の第2主桁72の上フランジ72a上に係止可能な位置決めガイド45と、中尺ガイド44に設けられた高さ検出片46と、を備えて概略構成されている。
【0052】
長尺ガイド43は第2主桁72の上フランジ72a、及び中尺ガイド44は第1主桁71の上フランジ71aの端部に当接する位置に配置され、それぞれの下端には傾斜面43a、44aが形成されている。中尺ガイド44及び位置決めガイド45は、それぞれ主材41の長手方向の略中央部分から外側に向けて張り出した連結部材47の先端から垂下されている。
【0053】
位置決めガイド45は、梁材7の突設片74に対して梁材7の長手方向(X方向)に当接させてその長手方向(X方向)に位置決めするとともに、第2主桁72の上フランジ72aに上方から当て止めして上下方向(Z方向)に位置決めするものである。具体的に位置決めガイド45は、連結部材47の先端から下方に向けて延びる支持材45Aと、支持材45Aに沿って上下方向に摺動可能に設けられた高さ調整棒45Bと、その高さ調整棒45Bの下端に設けられた押さえ板45Cとを備えて構成されている。
【0054】
把持装置20は、端部架台42A、42Bの下側にそれぞれ2つずつ設けられている。
なお、把持装置20の構成、及び高さ検出片46の構成については、上述した第1の実施の形態と同様の構成のため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0055】
このように構成される吊下げ装置1Aでは、梁材7に対して位置決めする際に、一対の長尺ガイド43、43を第2主桁72の側方に当て止めることで梁材7幅方向(Y方向)を位置決めしつつ、位置決めガイド45において押さえ板45Cを第2主桁72の上フランジ72a上に当接させる。そして、梁材7の長手方向(X方向)に水平に移動させることで、その押さえ板45Cを突設片74に当て止めてX方向を位置決めする。このとき、図10に示すように、複数の吊りピース73、73、…のそれぞれの真上に把持装置20のクランプ23が位置決めされた状態となる。
【0056】
その後、位置決めガイド45の高さ調整棒45Bに沿って支持材45Aを下方に移動させることで、吊下げ装置1A全体を降下させ、これにより把持装置20のクランプ23内に吊りピース73を嵌合させることができる。その嵌合後には、吊りピース73のピン穴に図7に示す係止ピン24を挿入させて把持されることになる。この降下時には、中尺ガイド44に設けられる高さ検出片46が作動し、所定の高さの位置で吊下げ装置1Aを停止させることができる。
なお、把持装置20による手順及び作用については、上述した第1の実施の形態と同様であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0057】
(第3の実施の形態)
次に、図13に示すように、第3の実施の形態は、上述した高さ調整片13、46の他に高さ調整機構50を設けたものである。
高さ調整機構50は、例えば上述した図11に示す吊下げ装置1Aの平面視で中心部に設けられ、例えば被吊下げ部材である屋根トラス8の頂部8a(ここでは、屋根トラス8上に設けられた束材9の頂部9a)に当接させることでにより吊下げ装置の高さ位置を検出するものである。高さ調整機構50は、下端に当接部51aを有する当接部材51を上下方向に摺動可能に支持する支持筒52(図13では見易くするため二点鎖線で示している)と、当接部材51の摺動に伴って回動可能に支持筒52に支持された棒状の回動片53と、回動片53の回動に伴って目視或いはカメラによって確認可能状態M3又は非確認状態M4となる位置に移動する表示板54(表示部)と、を備えている。
【0058】
図14(a)及び(b)に示すように、回動片53は、支持筒52に対して回転軸53aで回転自在に支持され、支持筒52内に突出部53bを有し、支持筒52より外側に表示部受け部53cを有し、その表示部受け部53c上には前記表示板54が固定されている。表示板54は、回動片53の長さ方向が略水平位置にある場合において、例えば赤色等を記した表示面54aを上方に向けた状態で配置される構成となっている。支持筒52に対する回転軸53aは、長さ方向で表示板54寄りの位置に設けられている(この位置を確認可能状態M3とする)。この確認可能状態M3のとき当接部材51は、その上端部51bが回動片53の突出部53bに接触しない状態となっている。このとき、表示板54の表示面54aは、タワークレーンのブーム先端に取り付けられているカメラ6によって撮像し、監視可能な構成となっている。
そして、図14(b)に示すように、当接部材51が屋根トラス8の頂部8aに当接し、支持筒52が当接部材51に沿って下方に摺動すると、回動片53の突出部53bが当接部材51の上端部51bに押圧されて、回転軸53aまわりに回転し、表示板54の表示面54aが側方に向いた状態となり、このときの表示面54aはカメラ6によって確認できない範囲となる(この位置を非確認状態M4とする)。
【0059】
本第3の実施の形態では、吊下げ装置を屋根トラス8に向けて下ろすときに、高さ調整機構50の当接部51aが屋根トラス8の頂部8aに当接し、当接部材51に沿って支持筒52が下方に向けて摺動し、この当接部材51の上端部51bによって回動片53を回動させ、これによって表示板54の位置を変化させることができる。そして、その表示板54の位置を検出し、その検出時の位置で高さ調整機構50の位置、すなわち吊下げ装置の位置を確認することができる。例えば、図14(a)に示すように通常時には表示板54がカメラ6により確認できる状態(確認可能状態M3)にしておき、図14(b)に示すように回動片53が回動して表示板54が非確認状態M4となったときに、吊下げ装置の位置を認識することができる。
【0060】
以上、本発明による吊下げ装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では柱材3や梁材7を被吊上げ部材としているが、これらに限定されることはなく、他の部材であってもかまわない。
また、ガイド部10、40の構成は、被吊上げ部材の形状等に応じて適宜な形態に設定すればよく、本実施の形態に限定されることはない。例えば、第1の実施の形態では、長尺ガイド12A、12B、中尺ガイド12C、短尺ガイド12Dを配置しているが、すべて同一の長さのガイドレール12であってもよく、本数も4本であることに制限されるものではない。
【0061】
さらに、本実施の形態では、高さ検出片13、46を中尺ガイドに設けているが、長尺ガイド、或いは短尺ガイドに設けるようにしてもかまわない。また、この高さ検出片13、46は省略することも可能である。
【0062】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施の形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1、1A 吊下げ装置
3 柱材(被吊上げ部材)
5 表示灯
6 カメラ
7 梁材(被吊上げ部材)
10 ガイド部
12 ガイドレール
12A、12B 長尺ガイド
12C 中尺ガイド
12D 短尺ガイド
13 高さ検出片
13A 回転支持部
13B 突出部
13C 表示部
16 表示板
20 把持装置
23 クランプ(嵌合凹部)
24 係止ピン
25 回動プレート
26 ピン収容ボックス
27 制御ボックス
31、73 吊りピース
31a ピン穴(貫通穴)
40 ガイド部
43 長尺ガイド
44 中尺ガイド
45 位置決めガイド
46 高さ検出片
50 高さ調整機構
51 当接部材
51a 当接部
52 支持筒
53 回動片
54 表示板(表示部)
74 突設片
P ピン軸
O ピン穴の中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱梁部材等の被吊上げ部材に取り付けた吊りピースの貫通穴に係止させ、前記被吊上げ部材を吊り下げる吊下げ装置であって、
前記吊りピースに嵌合可能な嵌合凹部と、
該嵌合凹部に嵌合した前記吊りピースの貫通穴に向けて突出する係止ピンと、
を備え、
前記嵌合凹部に前記吊りピースが嵌合した状態において、前記係止ピンのピン軸と、前記吊りピースの貫通穴の中心軸線とが一致したときにのみ、前記係止ピンが前記貫通穴に向けて突出することを特徴とする吊下げ装置。
【請求項2】
前記被吊上げ部材の所定位置に対して位置決め可能なガイド部が設けられ、該ガイド部によって前記嵌合凹部が前記吊りピースに嵌合するように案内されることを特徴とする請求項1に記載の吊下げ装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、被吊上げ部材に沿って上下方向に移動可能なガイドレールをなし、
該ガイドレールの所定位置に、前記ガイドレールの上下の移動とともに前記被吊上げ部材の一部に当接可能に突出され、前記ガイドレールに回動可能に支持された高さ検出片が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の吊下げ装置。
【請求項4】
前記高さ検出片には、目視或いはカメラにより確認可能な表示部が設けられており、
該表示部は、前記高さ検出片の回動に伴って目視或いはカメラによって確認可能状態又は非確認状態となる位置に移動することを特徴とする請求項3に記載の吊下げ装置。
【請求項5】
前記嵌合凹部と係止ピンを所定の高さに位置決めする高さ検出機構が設けられ、
該高さ検出器機構は、
下端に当接部を有する当接部材を上下方向に摺動可能に支持する支持筒と、
前記当接部材の摺動に伴って回動可能に該支持筒に支持された回動片と、
該回動片の回動に伴って目視或いはカメラによって確認可能状態又は非確認状態となる位置に移動する表示部と、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の吊下げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−32218(P2013−32218A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77985(P2012−77985)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】