説明

吊下げ部材の破断又は弛み検出装置

【課題】信号線を埋設した特殊構造の吊下げ部材を使用する必要をなくすと共に、二次キャリア側に電源供給をする必要をなくす。
【解決手段】搬送レールRに沿って移動可能に支持された一次キャリア1の上水平フレーム11に対して、その下方に位置する二次キャリア2の下水平フレーム21を吊下げ部材3の巻上げ又は繰出しを行うことにより水平を保持して昇降させると共に、二次キャリア2の揺動を抑制する揺動抑制手段4を備えた吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアにおいて、光軸が垂下するように上水平フレーム11に取り付けられた反射型光電センサ8と、反射型光電センサ8からの光Lを上方へ反射するように下水平フレーム21に取り付けられた反射板9とを備え、吊下げ部材3(例えばベルト33)が破断して下水平フレーム21が傾いた場合に、反射型光電センサ8からの光Lが該センサ8へ戻らない状態を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊下げ部材により搬送物を吊り下げた状態で搬送レールに沿って移動するとともに、吊下げ部材の巻上げ又は繰出しを行うことにより搬送物を昇降させる、吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアに用いられる、前記吊下げ部材の破断又は弛みを検出する検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送物を吊り下げた状態で搬送レールに沿って移動するとともに、搬送物を昇降させることができる吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアとして、搬送レールに沿って移動可能に支持された一次キャリアに対して、その下方に位置する二次キャリアを、例えばベルト、チェーン又は索条(ワイヤーロープ、ワイヤーケーブル)等である可撓性吊下げ部材の巻上げ又は繰出しを行うことにより、昇降させるものがある(例えば、特許文献1〜3参照。)。
このような吊下げ部材の巻上げ又は繰出しにより二次キャリアを昇降させる吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアは、その吊下げ部材が可撓性のものであることから、特に搬送物の重量が大きい場合において、隣接する搬送物等への衝突防止及びタクトタイムの短縮等のために搬送物の揺動を抑制する必要があるため、上下方向に伸縮自在なパンタグラフ機構等からなる揺動抑制手段を備えている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
また、吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアの吊下げ部材には可撓性があり、該吊下げ部材の巻上げ又は繰出しが繰り返し行われることから、疲労により吊下げ部材が破断したり、長期間の使用により吊下げ部材に弛みが生じる場合がある。
このような吊下げ部材の破断又は弛み検出は、移載作業の円滑化や安全性の向上等のために非常に重要であるため、その検出装置についての様々な提案がされている。
例えば、吊下げ部材がベルトであり、該ベルトに信号線を埋設し、該信号線をループ状とし、前記ベルトの摩耗・疲労による前記信号線の断線を検出することにより、前記ベルトの破断を予知するもの(以下において、「ループ状信号線の断線検出に基づく破断の間接検出方式」という。例えば特許文献4の図1〜図3参照。)、前記ベルトの破断を近接センサにより検出するもの(以下において、「近接センサによる破断の直接検出方式」という。例えば、特許文献4の図5参照。)がある。
また、二次キャリア(フレーム)に受け部材を固定し、該受け部材を貫通させて吊下げ部材の下部に連結されたボルトを配置し、該ボルトをばねにより下方に押し下げるように付勢し、前記ボルトが下方に押し下げられたときに作動する検出器により吊下げ部材の弛みを検出するものがある(以下において、「下方押下げばね及び検出器による弛みの直接検出方式」という、特許文献5参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−173087号公報(図2−3)
【特許文献2】特開昭50−52755号公報(第1図、第4図)
【特許文献3】特開2004−315125号公報(図1−4)
【特許文献4】特開平8−53292号公報(図1−3、図5)
【特許文献5】特開平11−35282号公報(図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような従来の吊下げ部材の破断又は弛み検出装置において、前記ループ状信号線の断線検出に基づく破断の間接検出方式では、吊下げ部材である長尺のベルト全てに信号線を埋設するとともに、これらの信号線を一次キャリア及び二次キャリアに渡らせてループ状にする必要があることから、特殊なベルトを製作する必要があるとともに構成が複雑になる。その上、一次キャリア(昇降機構部)に受信側の光通信機を、二次キャリア(移載機構部)に前記信号線に接続された送信側の光通信機を設置して送信側の光通信機から受信側の光通信機への光信号が途絶えるのを検出する構成(特許文献4の図3参照。)では、昇降する二次キャリア側に電源供給をする必要がある。
また、前記近接センサによる破断の直接検出方式では、全ての吊下げ部材に個別に近接センサを備える必要があるとともに、近接センサの設置箇所によっては破断検出ができない場合があることから、近接センサを昇降する二次キャリア側に取り付けるのが好ましく、このような構成では、昇降する二次キャリア側に電源供給をする必要がある。
さらに、前記下方押下げばね及び検出器による弛みの直接検出方式では、全ての吊下げ部材の下端部に下方押下げばね及び検出器を備える必要があり、昇降する二次キャリア側の検出器用に電源供給をする必要があるとともに、検出器による検出信号を一次キャリア側に伝達する信号線を備える必要がある。
【0006】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、信号線を埋設した特殊構造の吊下げ部材を使用する必要がなく、昇降する二次キャリア側に電源供給をする必要がない、吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアに用いられる吊下げ部材の破断又は弛み検出装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吊下げ部材の破断又は弛み検出装置は、前記課題解決のために、搬送レールに沿って移動可能に支持された一次キャリアの上水平フレームに対して、その下方に位置する二次キャリアの下水平フレームを、昇降駆動装置により1本以上の吊下げ部材の巻上げ又は繰出しを行うことにより水平を保持して昇降させるとともに、前記一次キャリアに対する前記二次キャリアの揺動を抑制する揺動抑制手段を備えた吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアにおいて、前記吊下げ部材の破断又は弛みを検出する検出装置であって、光軸が垂下するように前記上水平フレームに取り付けられた反射型光電センサ又はレーザ距離センサと、前記センサからの光を上方へ反射するように前記センサの直下に前記下水平フレームに取り付けられた反射板とを備え、前記吊下げ部材が破断して前記下水平フレームが傾いた場合、又は、前記吊下げ部材が複数本からなり、その中の1本に他の吊下げ部材よりも所定値より大きな弛みが発生して前記下水平フレームが傾いた場合に、前記センサからの光が前記反射板に入射しないように、又は、前記センサからの光が前記反射板に入射するが前記下水平フレームの傾きにより前記反射板からの反射光が前記センサへ戻らないように、前記センサの特性及び前記反射板の大きさを選定してなり、前記センサからの光が前記センサへ戻らない状態を検出することにより、前記吊下げ部材の破断又は弛みを検出するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る吊下げ部材の破断又は弛み検出装置によれば、搬送レールに沿って移動可能に支持された一次キャリアの上水平フレームに対して、その下方に位置する二次キャリアの下水平フレームを、昇降駆動装置により1本以上の吊下げ部材の巻上げ又は繰出しを行うことにより水平を保持して昇降させるとともに、前記一次キャリアに対する前記二次キャリアの揺動を抑制する揺動抑制手段を備えた吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアにおいて、前記吊下げ部材の破断又は弛みを検出する検出装置であって、光軸が垂下するように前記上水平フレームに取り付けられた反射型光電センサ又はレーザ距離センサと、前記センサからの光を上方へ反射するように前記センサの直下に前記下水平フレームに取り付けられた反射板とを備え、前記吊下げ部材が破断して前記下水平フレームが傾いた場合、又は、前記吊下げ部材が複数本からなり、その中の1本に他の吊下げ部材よりも所定値より大きな弛みが発生して前記下水平フレームが傾いた場合に、前記センサからの光が前記反射板に入射しないように、又は、前記センサからの光が前記反射板に入射するが前記下水平フレームの傾きにより前記反射板からの反射光が前記センサへ戻らないように、前記センサの特性及び前記反射板の大きさを選定してなり、前記センサからの光が前記センサへ戻らない状態を検出することにより、前記吊下げ部材の破断又は弛みを検出するので、反射型光電センサ又はレーザ距離センサ及び反射板により検出装置を構成しているため、信号線を埋設した特殊構造の吊下げ部材を使用する必要がない。
また、昇降する二次キャリア側には反射板のみを取り付けており、二次キャリア側にセンサがないため、二次キャリア側に電源供給をする必要がない。
【0009】
さらに、全ての吊下げ部材に個別にセンサを備える必要がなく、一次キャリア側に取り付けた1個のセンサのみにより、吊下げ部材の破断又は弛みを検出することができる。
さらにまた、二次キャリア(下水平フレーム)が傾いた状態を検出する構成であるため、吊下げ部材の破断及び弛み以外にも、二次キャリアが地上側固定物に引っ掛かった場合、作業者が二次キャリアに不意に衝突した場合、昇降駆動装置の異常により吊下げ部材が同期して昇降しない場合、揺動抑制手段の一部が破損した場合及び地震が発生した場合等においても、二次キャリア(下水平フレーム)が傾いた状態となるため、このような異常状態も検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、キャリアの搬送方向(図中矢印F参照。)を前とし、左右は前方に向かっていうものとする。また、右方から見た図を正面図とする。
【0011】
図1〜図4は、本発明の実施の形態に係る吊下げ部材の破断又は弛み検出装置が取り付けられた吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアを示す概略図であり、図1は正面図、図2は二次キャリアが最上位置にある状態における上水平フレーム以下の構成を示す平面図、図3及び図4は左側面図(後方から見た図)である。また、図1〜図3は吊下げ部材に破断及び弛みが生じていない状態を、図4は吊下げ部材が破断した状態の例を示している。
【0012】
先ず、吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアの構成について説明する。
図1〜図3に示すように、吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアは、断面略I字状の搬送レールR(図3参照。)に沿って移動可能に支持され、走行駆動装置5により駆動される一次キャリア1の上水平フレーム11に対して、その下方に位置する二次キャリア2の下水平フレーム21を、昇降駆動装置6により吊下げ部材3である前後左右4本のベルト31〜34の巻上げ又は繰出しを行うことにより水平を保持して昇降させるとともに、一次キャリア1に対する二次キャリア2の揺動を抑制する揺動抑制手段4を備えている。
【0013】
一次キャリア1は、搬送レールRの上部フランジの上面に沿って転動する走行車輪14,14、及び、前記上部フランジを挟むように、その左右両側面に沿って転動する水平ガイドローラ15,…を備えた、前トロリ12及び後トロリ13並びにこれらトロリ12,13に支持された上水平フレーム11等からなり、二次キャリア2は、下水平フレーム21、及び、その下側に連結された、搬送物Wを支持するハンガ22からなる。
【0014】
一次キャリア1には、昇降駆動装置6である左右のギヤドモータ17,17が上水平フレーム11の前側に取り付けられ、これらの出力軸がそれぞれプーリ18,20に連結固定され、左右のプーリ18,18に巻回された左右のベルト33,31は、上水平フレーム11の後部左右に取り付けられたプーリ19,19に掛け渡されて垂下し、その下端部が下水平フレーム21の後端部左右に連結される。
また、左右のプーリ20,20に巻回された左右のベルト34,32は、左右のプーリ20,20から垂下してその下端部が下水平フレーム21の前端部左右に連結される。
【0015】
したがって、右側のギヤドモータ17により、右側前後のベルト32,31が巻き上げ又は繰り出され、左側のギヤドモータ17により、左側前後のベルト34,33が巻き上げ又は繰り出される。
ここで、左右のギヤドモータ17,17は、これらが同期して回転するように、上水平フレーム11の後側に取り付けられた機上制御盤30に内装したモータドライバ及び制御装置により駆動制御されるため、下水平フレーム21は、昇降駆動装置6により巻き上げ又は繰り出される前後左右のベルト31〜34により駆動され、水平を保持したまま昇降する。
【0016】
一次キャリア1の後トロリ13には、例えばハイポイドギヤやベベルギヤ等を用いた直交軸構成のギヤドモータ16により後トロリ13の後側の走行車輪14を駆動する走行駆動装置5が取り付けられており、機上制御盤30に内装したモータドライバ及び制御装置により駆動制御される。
なお、走行駆動装置5は、このような自走式駆動装置に限定されるものではなく、パワーチェーン式駆動装置又はフリクションローラ式駆動装置等であってもよい。
【0017】
一次キャリア1に対する二次キャリア2の揺動を抑制する揺動抑制手段4は、本願の出願人による特許出願(特願2008−91883号参照。)の発明と同様の構成である。
すなわち、上水平フレーム11及び下水平フレーム21間に位置する、略く字状に折曲する第1揺動防止枠41,41及び第2揺動防止枠42,42からなり、これら揺動防止枠の上半分である上枠41A,42Aが略逆三角形状で、その下半分である下枠41B,42Bが略三角形状である。
また、第1揺動防止枠41,41の略逆三角形状上枠41A,41Aの上辺と略三角形状下枠41B,41Bの下辺とは平行(前後方向)であり、一方の第1揺動防止枠41の前記上辺両端部(前後端部)及び前記下辺両端部(前後端部)は、それぞれ上水平フレーム11及び下水平フレーム21の左前側部分に前後方向軸まわりに揺動可能に取り付けられ、他方の第1揺動防止枠41の前記上辺両端部(前後端部)及び前記下辺両端部(前後端部)は、それぞれ上水平フレーム11及び下水平フレーム21の右後側部分に前後方向軸まわりに揺動可能に取り付けられる。
【0018】
さらに、第2揺動防止枠42,42の略逆三角形状上枠42A,42Aの上辺と略三角形状下枠42B,42Bの下辺とは平行(左右方向)であり、一方の第2揺動防止枠42の前記上辺両端部(左右端部)及び前記下辺両端部(左右端部)は、それぞれ上水平フレーム11及び下水平フレーム21の左前側部分に左右方向軸まわりに揺動可能に取り付けられ、他方の第2揺動防止枠42の前記上辺両端部(左右端部)及び前記下辺両端部(左右端部)は、それぞれ上水平フレーム11及び下水平フレーム21の右後側部分に左右方向軸まわりに揺動可能に取り付けられる。
さらにまた、略逆三角形状上枠41A,42Aの下頂点と略三角形状下枠41B,42Bの上頂点とがそれぞれ軸着され、これらの頂点が下水平フレーム21の昇降に対応して移動する方向が、第1揺動防止枠41,41では左右方向であり、第2揺動防止枠42,42では前後方向である。
【0019】
そして、前後方向から見て略く字状に折曲する前後の第1揺動防止枠41,41及び左右方向から見て略く字状に折曲する左右の第2揺動防止枠42,42は、下水平フレーム21の昇降に伴い、前記軸着された頂点で折れ曲がって該頂点が突出しても、これら揺動防止枠41,41,42,42が干渉しないように配置される。
このような構成の揺動抑制手段4によって、第1揺動防止枠41,41により二次キャリア2(下水平フレーム21)の前後方向の揺動が、第2揺動防止枠42,42により二次キャリア2(下水平フレーム21)の左右方向の揺動が抑制される。
【0020】
次に、本発明の実施の形態に係る吊下げ部材3の破断又は弛み検出装置7について説明する。
吊下げ部材3の破断又は弛み検出装置7を構成する反射型光電センサ8は、その光源が発光ダイオード等の拡散光であるものの他、その光源が半導体レーザ等のレーザ光であるものも含んでおり、取付板10(図2参照)の下側に固定され、取付板10が上水平フレーム11の例えば左側後部に取り付けられ、光Lの光軸が垂下するように設置される。
ここで、反射型光電センサ8は、その出力信号が機上制御盤30に内装された制御装置に伝達されるように、該制御装置の入出力ポートに接続され、反射型光電センサ8及び制御装置並びに前記走行駆動装置5及び昇降駆動装置6用モータドライバ及び制御装置等への給電は、例えば搬送レールRの側面に添設された給電用バスバーにより行われる。
また、反射型光電センサ8の直下には、下水平フレーム21に、前記検出装置7を構成する、反射型光電センサ8の光Lを反射して反射型光電センサ8に戻すための反射板9が取り付けられる。
【0021】
二次キャリア2のハンガ22により搬送物Wを支持した状態で、走行駆動装置5により一次キャリア1及び二次キャリア2を搬送レールRに沿って移動させる場合において、前記のとおり一次キャリア1に対する二次キャリア2の揺動を抑制する揺動抑制手段4があることから、二次キャリア2(下水平フレーム21)の前後及び左右方向の揺動が効果的に抑制されるため、図1〜図3に示す吊下げ部材3(ベルト31〜34)に破断及び弛みが生じていない状態では、反射板9による反射光Lが反射型光電センサ8へ確実に戻るように構成される。
【0022】
これに対して図4に示す例のように吊下げ部材3の例えばベルト33が破断した場合には、下水平フレーム21が傾くことから、該傾きにより反射型光電センサ8の光Lの光軸から反射板9が外れ、光Lが反射板9に入射しないため、反射光Lが反射型光電センサ8へ戻らない。
よって、反射型光電センサ8の光Lが遮光された状態と同じ状態となるため、この状態を検出することができる。
あるいは、吊下げ部材3の例えばベルト33が破断して下水平フレーム21が傾いた際に、反射型光電センサ8からの光Lが反射板9に入射するが反射板9の傾きにより該反射板9からの反射光Lが反射型光電センサ8へ戻らないように構成してもよく、この場合においても、反射型光電センサ8の光Lが遮光された状態と同じ状態となるため、この状態を検出することができる。
【0023】
また、吊下げ部材3が破断しなくても、その1本に他の吊下げ部材よりも大きな弛みが発生して下水平フレーム21が傾く場合があり、このような場合においても、下水平フレーム21が所定角度以上傾いたことを反射型光電センサ8及び反射板9により検出して、吊下げ部材3の1本に他の吊下げ部材よりも所定値より大きな弛みが発生したことを検出することができる。
なお、吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアにおいて、その吊下げ部材3である例えば前後左右4本のベルト31〜34の配置、搬送物W等の吊下げ重量及び重心位置、並びに、揺動抑制手段4の構成等により、吊下げ部材3の1本が破断した際又は吊下げ部材3の1本に他の吊下げ部材よりも大きな弛みが発生した際における下水平フレーム21の傾き角度が変わる。
よって、吊下げ部材3が破断した際又は吊下げ部材3の1本に他の吊下げ部材よりも大きな弛みが発生した際に、反射型光電センサ8からの光Lが反射型光電センサ8に戻らないように、反射型光電センサ8の特性及び反射板9の大きさを、例えば実験により選定する必要がある。
【0024】
さらに、吊下げ部材3の破断又は弛み検出装置7を構成する反射型光電センサ8の代わりに、レーザ距離センサを使用してもよく、レーザ距離センサを使用する際も、反射型光電センサ8を使用する際と同様に反射光が戻らないことを検出することにより、吊下げ部材3の破断又は弛みを検出することができる。
ここで、レーザ距離センサを使用する場合には、該レーザ距離センサにより反射板9までの距離、すなわち下水平フレーム21の高さ位置が計測されるため、下水平フレーム21(二次キャリア2)の高さ位置検出に一般的に使用される、例えばワイヤー引き出し式リニアエンコーダ等の検出器を無くしてもよい。
【0025】
反射型光電センサ8又はレーザ距離センサにより吊下げ部材3の破断等の異常状態を検出した際には、その信号が機上制御盤30内の制御装置に伝達されるため、該制御装置により、例えば、走行駆動装置5及び昇降駆動装置6を停止するとともに、警報装置を作動させて光や音等により警報を発する。
【0026】
以上のような構成の吊下げ部材3の破断又は弛み検出装置7によれば、反射型光電センサ8又はレーザ距離センサ及び反射板9により検出装置7を構成しているため、信号線を埋設した特殊構造の吊下げ部材を使用する必要がない。
また、昇降する二次キャリア2(下水平フレーム21)側には反射板9のみを取り付けており、二次キャリア側2にセンサがないため、二次キャリア2側に電源供給をする必要がない。
さらに、全ての吊下げ部材に個別にセンサを備える必要がなく、一次キャリア1(上水平フレーム11)側に取り付けた1個のセンサのみにより、吊下げ部材3の破断又は弛みを検出することができる。
さらにまた、二次キャリア2(下水平フレーム21)が傾いた状態を検出する構成であるため、吊下げ部材3の破断及び弛み以外にも、二次キャリア2が地上側固定物に引っ掛かった場合、作業者が二次キャリア2に不意に衝突した場合、昇降駆動装置6(ギヤドモータ17,17)の異常により吊下げ部材3が同期して昇降しない場合、揺動抑制手段4の一部が破損した場合及び地震が発生した場合等においても、二次キャリア2(下水平フレーム21)が傾いた状態となるため、このような異常状態も検出することができる。
【0027】
以上の説明においては、吊下げ部材3が前後左右の4本のベルト31〜34である場合について説明したが、吊下げ部材3の本数は、前後左右の4本に限定されるものではない。
すなわち、上水平フレーム11と下水平フレーム21とが揺動抑制手段4により連結されていることから、仮に吊下げ部材3の全部が破断したとしても二次キャリア2及び搬送物Wが落下しないため、例えば下水平フレーム21の中央部に下端部が連結された1本のベルトであってもよく、吊下げ部材3は1本以上であればよい。なお、反射型光電センサ8又はレーザ距離センサ及び反射板9により吊下げ部材3の弛み検出を行う際は、吊下げ部材3の1本に生じた弛みが他の吊下げ部材よりも大きい場合における下水平フレーム21の傾きを検出する構成であることから、吊下げ部材3は、少なくとも2本のベルトにより構成されている必要がある。
また、以上の説明においては、吊下げ部材3がベルトである場合について説明したが、吊下げ部材3はチェーン又は索条(ワイヤーロープ、ワイヤーケーブル)等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る吊下げ部材の破断又は弛み検出装置が取り付けられた吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアを示す正面図である。
【図2】同じく上水平フレーム以下の構成を示す平面図であり、二次キャリアが最上位置にある状態を示している。
【図3】同じく左側面図(後方から見た図)である。
【図4】同じく左側面図(後方から見た図)であり、吊下げ部材が破断した状態を示している。
【符号の説明】
【0029】
F 搬送方向
L 光
R 搬送レール
W 搬送物
1 一次キャリア
2 二次キャリア
3 吊下げ部材
4 揺動抑制手段
5 走行駆動装置
6 昇降駆動装置
7 吊下げ部材の破断又は弛み検出装置
8 反射型光電センサ
9 反射板
10 取付板
11 上水平フレーム
12 前トロリ
13 後トロリ
14 走行車輪
15 水平ガイドローラ
16,17 ギヤドモータ
18,19,20 プーリ
21 下水平フレーム
22 ハンガ
30 機上制御盤
31,32,33,34 ベルト
41 第1揺動防止枠
41A 上枠
41B 下枠
42 第2揺動防止枠
42A 上枠
42B 下枠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送レールに沿って移動可能に支持された一次キャリアの上水平フレームに対して、その下方に位置する二次キャリアの下水平フレームを、昇降駆動装置により1本以上の吊下げ部材の巻上げ又は繰出しを行うことにより水平を保持して昇降させるとともに、前記一次キャリアに対する前記二次キャリアの揺動を抑制する揺動抑制手段を備えた吊下げ昇降式オーバーヘッドキャリアにおいて、前記吊下げ部材の破断又は弛みを検出する検出装置であって、
光軸が垂下するように前記上水平フレームに取り付けられた反射型光電センサ又はレーザ距離センサと、
前記センサからの光を上方へ反射するように前記センサの直下に前記下水平フレームに取り付けられた反射板とを備え、
前記吊下げ部材が破断して前記下水平フレームが傾いた場合、又は、前記吊下げ部材が複数本からなり、その中の1本に他の吊下げ部材よりも所定値より大きな弛みが発生して前記下水平フレームが傾いた場合に、前記センサからの光が前記反射板に入射しないように、又は、前記センサからの光が前記反射板に入射するが前記下水平フレームの傾きにより前記反射板からの反射光が前記センサへ戻らないように、前記センサの特性及び前記反射板の大きさを選定してなり、
前記センサからの光が前記センサへ戻らない状態を検出することにより、前記吊下げ部材の破断又は弛みを検出することを特徴とする吊下げ部材の破断又は弛み検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269699(P2009−269699A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120917(P2008−120917)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】