説明

吊下具

【課題】ハンガーなどの吊下具においては、横木(バー)に安定的に係止させるには、屈曲部(フック)が下方に向かって十分に深く回り込んでいることが必要であるが、横木の上方には十分な隙間がないと横木にかけにくかった。
【構成】 棒状をなした基部の一端に、横方向へ向かってゆるく円弧状に彎曲した屈曲部を一体的に形成すると共に、該屈曲部の開放端側に、前記屈曲部とほぼ同じ曲率で彎曲した可動片を回動自在に接続し、該可動片の接続側に弾性を有する軟質合成樹脂製の細長いバネ片を一体的に形成し、該バネ片を基部の側面の対応する箇所に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は吊下具、詳しくは、横方向に渡された横木(バー)に各種物品を吊下する際に用いる吊下具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横方向に渡された横木に各種物品を吊下する吊下具としては、ハンガー(洋服かけ)などが代表例であるが、この種の吊下具は、いずれも基部の上端に円弧状に彎曲した屈曲部を形成し、この屈曲部を横木に引っ掛けることにより、本体を横木から吊下する様になっている。この際、屈曲部は、下方に向かって十分に深く回り込んでいることが、安定的な吊下の為に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、吊下具においては、安定的な吊下の為には、屈曲部が下方に向かって十分に深く回り込んでいることが必要であり、屈曲部が浅い場合には、吊下具が横木から脱落しやすく、特に振動が加わる運搬時や幅の狭い横木(バー)に多数の吊下具を並列させて吊下させた場合などは、振動や隣接した吊下具同士の干渉により、横木からはずれて脱落する危険が大きかった。一方、屈曲部が下方に向かって十分に深く回り込んでいる場合は、横木(バー)の上方に十分な空間がないと、屈曲部を横木(バー)に係止させにくく、係止作業に手間が掛かったり、不完全な吊下になったりするおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
棒状をなした基部の一端に、横方向へ向かってゆるく円弧状に彎曲した屈曲部を一体的に形成すると共に、該屈曲部の開放端側に、前記屈曲部とほぼ同じ曲率で彎曲した可動片を回動自在に接続し、該可動片の接続側に弾性を有する軟質合成樹脂製の細長いバネ片を一体的に形成し、該バネ片の端部を基部の側面の対応する箇所に固定することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
可動片にはバネ片が延設されており、可動片を引き上げた状態においては、バネ片は、屈曲部の屈曲方向とは逆の方向に反り返って、この状態を安定的に保持し続ける。一方、可動片を引き下げた状態においては、バネ片は、屈曲部の内径側に添った状態を安定的に保持することになる。
つまり、可動片はバネ片の作用により、引き上げられた状態と引き下げられた状態の2つの位置を、選択的に保持し続けることとなり、図1に示す状態において、可動片3及び屈曲部2を横木6の上方を通過させ、バネ片5の側面が横木6に触れると、横木6から加わる押圧力によって、バネ片5はそれ自身が有する弾性によって、逆方向に反り返り、図2に示す様に、バネ力によって可動片3は引き下げられ、横木6に回り込む様な状態となる。
【0008】
従って、横木6の上方に引き上げられた状態の可動片3が通過出来るだけのわずかな隙間さえあれば、この吊下具を横木6に確実に係止させることが可能であり、振動や隣接した吊下具同士の干渉などによって横木6から脱落する危険性は極めて低く、確実な吊下を実現することが出来る。一方、可動片3の内側を横木6に強く押圧すると、可動片3に延設されているバネ片5は、逆方向に反り返り、可動片3は引き上げられるので、この吊下具を横木6から容易に離脱させることが出来る。この様に、この吊下具は横木6への係止及び離脱が極めて容易であると共に、横木6への係止は極めて確実かつ安定的であり、各種物品の吊下作業を容易かつ確実に実施できる効果を有する。又、極めて簡潔な構造であり、耐久性に富み、誤作動のおそれもなく、低コストで製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明に係る吊下具の実施例1の横木への係止前の状況の正面図。
【図2】同じく、係止中の状況の正面図。
【図3】この発明に係る吊下具の実施例2の横木への係止前の状況の正面図。
【図4】同じく、その係止中の状況の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
基部の一端に形成されている屈曲部の先端に可動片を回動自在に接続すると共に、該可動片の後端にバネ片を延設し、このバネ片の弾性によって可動片を引き上げた状態と引き下げた状態の2つの状態に、選択的に保持出来る様にした点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0011】
図1はこの発明に係る吊下具の実施例1の横木への係止前の状況の正面図、図2は同じく係止中の状況の正面図である。
【0012】
図中1は基部であり、棒状をなし、その一端には横方向、つまり、基部1の軸心から略直角の方向へ向かってゆるく円弧状に彎曲した屈曲部2が一体的に形成されている。そして、この基部1の下部には被服を保持する腕部7などが一体的に形成されている。一方、この屈曲部2の開放端側には、屈曲部2とほぼ同じ曲率で彎曲した可動片3の端部が枢支軸4によって回動自在に接続されている。
【0013】
更に、この可動片3の枢支軸4側には弾性を有する軟質合成樹脂製の細長いバネ片5が一体的に形成されており、該バネ片5を屈曲部2の内径側側面に添わせた際に、その端部が達する基部1の対応する箇所に、このバネ片5の端部が固定されている。
【0014】
なお、この実施例においては、吊下具として被服の整理収納に用いるハンガーを一例として説明したが、必ずしもハンガーに限る必要はないことはもちろんである。
【0015】
この発明に係る吊下具は、上記の通りの構成を有するものであり、可動片3は枢支軸4を軸として揺動するものであるが、可動片3にはバネ片5が延設されており、図1に示す様に、可動片3を引き上げた状態においては、バネ片5は図示の通り、屈曲部2の屈曲方向とは逆の方向に反り返って、この状態を安定的に保持し続ける。
【0016】
一方、図2に示す様に、可動片3を引き下げた状態においては、バネ片5は図示の通り、屈曲部2の内径側に添った状態を安定的に保持することになる。
【0017】
つまり、可動片3はバネ片5の作用により、引き上げられた状態と引き下げられた状態の2つの位置を、選択的に保持し続けることとなり、図1に示す状態において、可動片3及び屈曲部2を横木6の上方を通過させ、バネ片5の側面が横木6に触れると横木6から加わる押圧力によって、バネ片5はそれ自身が有する弾性によって、逆方向に反り返り、図2に示す様に、バネ力によって可動片3は引き下げられ、横木6に回り込む様な状態となる。
【0018】
従って、横木6の上方に引き上げられた状態の可動片3が通過出来るだけのわずかな隙間さえあれば、この吊下具を横木6に確実に係止させることが可能であり、振動や隣接した吊下具同士の干渉などによって脱落する危険性は極めて低く、確実な吊下を実現することが出来る。
【0019】
一方、可動片3の内側を横木6に強く押圧すると、可動片3に延設されているバネ片5は、逆方向に反り返り、可動片3は引き上げられるので、この吊下具を横木6から容易に離脱させることが出来る。この様に、この吊下具は横木6への係止及び離脱が極めて容易であると共に、横木6への係止は極めて確実かつ安定的であり、各種物品の吊下作業を容易かつ確実に実施できる効果を有する。
【実施例2】
【0020】
図3は、この発明に係る吊下具の実施例2の横木への係止前の状況の正面図、図3は、同じく係止中の状況の正面図であり、この実施例2においては、屈曲部2の先端と可動片3の後端とが肉厚の薄いヒンジ部8により接続された状態で、軟質合成樹脂により一体的に形成されており、このヒンジ部8の屈曲動作により、屈曲部2に対し、可動片3を回動自在に保持している。他の部分は、前記実施例1と同じであるので、同一符号を付して説明は省略する。
【0021】
この実施例2も、前記実施例1と同様に、バネ片5の作用により、可動片3を引き上げた状態と引き下げた状態とに選択的に保持するものであるが、この実施例2においては、屈曲部2と可動片3がヒンジ部8を介して一体的に形成されているので、部品点数が少なく、大量生産に向く長所を有する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
物品の吊下を行う必要がある各種産業分野はもちろん、家庭における日用品や被服などの整理収納の際に、利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 基部
2 屈曲部
3 可動片
4 枢支軸
5 バネ片
6 横木
7 腕部
8 ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状をなした基部の一端に、横方向へ向かってゆるく円弧状に彎曲した屈曲部を一体的に形成すると共に、該屈曲部の開放端側に、前記屈曲部とほぼ同じ曲率で彎曲した可動片を回動自在に接続し、該可動片の接続側に弾性を有する軟質合成樹脂製の細長いバネ片を一体的に形成し、該バネ片の端部を基部の側面の対応する箇所に固定したことを特徴とする吊下具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−227210(P2010−227210A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76537(P2009−76537)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(591097458)株式会社ハセガワ・ビコー (11)
【Fターム(参考)】