説明

吊具

【課題】荷物の幅が異なっても安定して荷物を把持・吊り上げることができるとともに、作業性にも優れる吊具を提供する。
【解決手段】開閉可能な左右一対のアーム2と、前記一対のアーム2に形成されてなる左右対のフック31,32とを有してなり、前記フックの数が二対以上であり、前記アーム2を任意の位置で静止させた状態における前記フックの対ごとの被把持物の幅方向に対する角度がそれぞれ異なるようにしてロール用吊具1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール等の荷物を移動する際に用いる吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物の移動に用いられる吊具1としては、図1のように、開閉可能な左右一対のアーム2と、アーム2に形成されたフック3とを有するタイプのもの(特許文献1)があげられる。また、中心が空洞である荷物(例えば、巻芯を有するロール)を移動する吊具としては、図2のように、L字状のフックからなるタイプのものなどがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−120989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図1のタイプのものは、吊り上げようとする荷物の幅の違いによって(アームの広がりの程度によって)、荷物の幅方向に対するフックの角度が変わってしまい(図6のフック32参照)、安定して荷物を吊り上げづらいという問題がある。
【0005】
一方、図2のタイプのものは、荷物(中心が空洞のもの)の幅の違いには対応できるものの、荷物の把持は片側からにとどまるため、荷物を吊り上げて移動する際に荷物が揺れやすく、作業性に劣るとともに、作業に危険が伴うという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、荷物の幅が異なっても安定して荷物を吊り上げることができるとともに、作業性にも優れる吊具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の吊具は、開閉可能な左右一対のアームと、前記一対のアームに形成されてなる左右対のフックとを有してなり、前記フックの数が二対以上であり、前記アームを任意の位置で静止させた状態における前記フックの対ごとの被把持物の幅方向に対する角度がそれぞれ異なることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の吊具は、好ましくは、開閉可能な左右一対のアームと、前記アームに接続された回転可能な一対の固定片と、前記一対の固定片に形成されてなる左右対のフックとを有してなり、前記フックの数が二対以上であり、前記アームを任意の位置で静止させた状態における前記フックの対ごとの被把持物の幅方向に対する角度がそれぞれ異なることを特徴とするものである。
【0009】
このような本発明の吊具は、複数かつ角度の異なるフックを有するため、荷物を把持・吊り上げる際に、被把持物(荷物)の幅方向と水平に近いフックを選択することができ、安定して荷物を吊り上げることができるとともに、両側から荷物を把持できるため作業性にも優れるものである。
【0010】
なお、上記課題を解決する手段として、フックを一対のみにして、該フックを段階的に角度調整可能にする手段も考えられるが、本発明に比べて構成が複雑となり、また、当該構成を採用した際のフックの耐荷重性も十分にしづらいものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吊具は、複数かつ角度の異なるフックを有するため、荷物を把持・吊り上げる際に、被把持物(荷物)の幅方向と水平に近いフックを選択することができ、安定して荷物を吊り上げることができるとともに、両側から荷物を把持できるため作業性にも優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の吊具の一例を示す正面図
【図2】従来の吊具の他の例を示す正面図
【図3】本発明の吊具の一実施例を示す正面図
【図4】本発明の吊具の他の実施例を示す正面図
【図5】本発明の吊具の部品である固定片の例を示す図
【図6】本発明の吊具の使用方法を説明する正面図
【図7】本発明の吊具の他の使用方法を示す正面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の吊具は、開閉可能な左右一対のアームと、前記一対のアームに形成されてなる左右対のフックとを有してなり、前記フックの数が二対以上であり、前記アームを任意の位置で静止させた状態における前記フックの対ごとの被把持物の幅方向に対する角度がそれぞれ異なることを特徴とするものである。また、本発明の吊具は、開閉可能な左右一対のアームと、前記アームに接続された回転可能な一対の固定片と、前記一対の固定片に形成されてなる左右対のフックとを有してなり、前記フックの数が二対以上であり、前記アームを任意の位置で静止させた状態における前記フックの対ごとの被把持物の幅方向に対する角度がそれぞれ異なることを特徴とするものである。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図3〜7を参照しつつを説明する。
【0015】
図3,4は、本発明の吊具の実施の形態を示す正面図である。
【0016】
図3では、1は吊具を、2は上部軸51により開閉自在に軸支された一対のアームを、31,32は一対のアーム2の左右それぞれに対応する箇所に形成されてなる左右対のフックを、4は一対のアーム2の上端に設けられ上部軸51によりアーム2を軸着する吊金具を、51および52はアームを開閉する上部軸および下部軸を示す。なお、図3では、アームとフックとが分断されて図示されているが、本発明ではこれに限らず、アームとフックとが一体成型され連続しているものでも構わない。
【0017】
図4では、1はロール用吊具を、2は上部軸51により開閉自在に軸支された一対のアーム2を、6はアーム2に接続された回転可能な一対の固定片を、31,32は一対の固定片6の左右それぞれに対応する箇所に形成されてなる左右対のフックを、7は固定片を回転する回転軸を、4は一対のアーム2の上端に設けられ上部軸51によりアーム2を軸着する吊金具を、51および52はアームを開閉する上部軸および下部軸を示す。なお、図4では、固定片とフックとが分断されて図示されているが、本発明ではこれに限らず、固定片とフックとが一体成型され連続しているものでも構わない。
【0018】
次に、本発明の吊具を用いて、幅の異なる荷物(被把持物)を吊り上げる動作について説明する。
【0019】
まず、図3のタイプの吊具について説明する。図3の状態では、左右対のフックのうち下方のフック32が略水平(荷物(被把持物)の幅方向とのなす角度が略0度)であるため、フック32を荷物(被把持物)の端部に固定もしくはフック32を中心が空洞である荷物(被把持物)の空洞部分に挿入して荷物(被把持物)を把持した後、吊具を上昇させることにより、荷物(被把持物)を安定して吊り上げることができる。
【0020】
図6は、図3のタイプの吊具を、図3の状態からアームの幅を広げた状態を示している。図6の状態では、下方のフック32は、荷物(被把持物)の幅方向に対する角度が傾いているため、フック32を用いては荷物(被把持物)を安定して吊り上げにくい。一方、図6の状態では、上方のフック31が略水平(荷物(被把持物)の幅方向とのなす角度が略0度)となっているため、フック31を荷物(被把持物)の端部に固定もしくはフック31を中心が空洞である荷物(被把持物)の空洞部分に挿入して荷物(被把持物)を把持した後、吊具を上昇させることにより、荷物(被把持物)を安定して吊り上げることができる。
【0021】
このように、一対のアームに形成されてなる左右対のフックを二対以上有し、当該フックは対ごとに荷物(被把持物)の幅方向に対する角度がそれぞれ異なるように構成することにより、荷物(被把持物)を把持・吊り上げる際に荷物(被把持物)の幅方向に対する角度が水平に近いフックを選択することができ、荷物(被把持物)を安定して吊り上げることができる。
【0022】
なお、図3,6では左右のフックは二対であるが、三対以上のフックを設けフックの対ごとに荷物(被把持物)の幅方向に対する角度を変えることにより、三以上の中からフックを選択することができる。
【0023】
図3,6のタイプの場合のフックの荷物(被把持物)の幅方向に対する角度は、想定する荷物(被把持物)の大きさやアームの角度等の要素に応じて好適な角度が異なるため、一義的に決めることはできない。なお、フックの角度は、荷物(被把持物)の幅方向と最下方のフックの方向とのなす角度が0度となるような位置でアームを静止させた状態において、下方から上方のフックに向かうにつれ、荷物(被把持物)の幅方向とフックの方向とのなす角度が大きくなるように構成することが好ましい。また、図3,6のタイプの場合のフックの方向は、荷物(被把持物)の幅方向と最下方のフックの方向とのなす角度が0度となるような位置でアームを静止させた状態において、下方のフックから上方のフックに向かうにつれ、徐々に上方向(被把持物の高さ方向)の向き平行に近づくように構成することが好ましい。
【0024】
次いで、図4のタイプの吊具について説明する。図4の状態では、左右対のフックのうち下方のフック32が略水平(荷物(被把持物)の幅方向とのなす角度が略0度)であるため、フック32を荷物(被把持物)の端部に固定もしくはフック32を中心が空洞である荷物(被把持物)の空洞部分に挿入して荷物(被把持物)を把持した後、吊具を上昇させることにより、荷物(被把持物)を安定して吊り上げることができる。
【0025】
図7(a)は、図4のタイプの吊具を、図4の状態からアームの幅を広げた状態を示している。図7(a)の状態では、フック31およびフック32ともに、荷物(被把持物)の幅方向に対する角度が傾いているため、いずれのフックを用いても荷物(被把持物)を安定して吊り上げにくい。
【0026】
図7(b)は、図7(a)の状態から固定片6を180度回転させた状態を示している。図7(b)から明らかなように、固定片6を180度回転させた状態では、フック32は傾いたままだが、フック31は略水平(荷物(被把持物)の幅方向とのなす角度が略0度)になっている。このように、図7(b)の状態では、フック31が略水平(荷物(被把持物)の幅方向とのなす角度が略0度)となっているため、フック31を荷物(被把持物)の端部に固定もしくはフック31を中心が空洞である荷物(被把持物)の空洞部分に挿入して荷物(被把持物)を把持した後、吊具を上昇させることにより、荷物(被把持物)を安定して吊り上げることができる。
【0027】
このように、一対の回転可能な固定片に形成されてなる左右対のフックを二対以上有し、当該フックは対ごとに荷物(被把持物)の幅方向に対する角度がそれぞれ異なるように構成することにより、荷物(被把持物)を把持・吊り上げる際に荷物(被把持物)の幅方向に対する角度が水平に近いフックを選択することができ、荷物(被把持物)を安定して吊り上げることができる。
【0028】
なお、図4,7では左右のフックは二対であるが、三対以上のフックを設けフックの対ごとに荷物(被把持物)の幅方向に対する角度を変えることにより、三以上の中からフックを選択することができる。
【0029】
固定片6は回転軸7を介してアームと接続されている。固定片の形状は特に限定されることなく、円盤状、正方板状、長方板状などがあげられる。
【0030】
図5(a)、図5(b)は、固定片6に形成するフックの位置の例を示す図である。図5(a)では円盤状の固定片の端部対角の位置にフック21,22を形成し、図5(b)では、円盤状の固定片の端部120度間隔の位置にフック21,22,23を形成している。
【0031】
固定片6は、回転軸を軸にして回転可能であり、回転機構としては従来公知の手段を採用することができる。
【0032】
図4,7のタイプの場合のフックの荷物(被把持物)の幅方向に対する角度は、想定する荷物(被把持物)の大きさやアームの角度等の要素に応じて好適な角度が異なるため、一義的に決めることはできない。なお、図4,7のタイプの場合のフックの向きは、固定片の垂線に向かうような方向(フックの向きと平行な直線が固定片の垂線に交わるような方向)、もしくは固定片の垂線と平行方向となるように構成することが好ましい。
【0033】
なお、吊具を上下動する機構や、アームを左右開閉する機構は、従来公知の機構を採用できる。例えば実開昭59−173680号や特開平8−157179号には、左右のアームの間に左右対をなす平行四辺形型のリンク機構を設け、駆動機構により昇降台を上下させることにより、平行四辺形リンク機構が変形し、左右一対のアームを開閉することができることが記載されている。
【符号の説明】
【0034】
1・・・・ロール用吊具
2・・・・アーム
31・・・フック
32・・・フック
4・・・・吊金具
51・・・上部軸
52・・・下部軸
6・・・・固定片
7・・・・回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な左右一対のアームと、前記一対のアームに形成されてなる左右対のフックとを有してなり、前記フックの数が二対以上であり、前記アームを任意の位置で静止させた状態における前記フックの対ごとの被把持物の幅方向に対する角度がそれぞれ異なることを特徴とする吊具。
【請求項2】
開閉可能な左右一対のアームと、前記アームに接続された回転可能な一対の固定片と、前記一対の固定片に形成されてなる左右対のフックとを有してなり、前記フックの数が二対以上であり、前記アームを任意の位置で静止させた状態における前記フックの対ごとの被把持物の幅方向に対する角度がそれぞれ異なることを特徴とする吊具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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