説明

同期状態を制御可能な電子会議システム

【課題】 電子会議システムにおいて、会議端末装置の同期・非同期状態を、主催者もしくは発表者となる会議端末装置から自由に制御することを可能とする。
【解決手段】 主催者端末装置と複数の会議端末装置から構成された電子会議システムにおいて、会議端末装置上に強制同期用の手段を設け、非同期になっている他の会議端末装置に対し強制同期メッセージを送信し、その会議端末装置を強制的に同期状態に遷移させることができるようにする。また、主催者端末装置が会議の設定として、会議に参加する会議端末装置の初期状態を同期もしくは非同期で開始させるように選択できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークで相互接続された複数の会議端末装置から構成された電子会議システムに係り、特に各会議端末装置の同期状態を制御可能にした電子会議システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、企業の本支店等に設置された端末間をネットワークで相互接続し、資料やメモ書きを電子的に共有する電子会議システムが利用されている。一方、役員会議等の1つの会議室内だけに閉じた会議においても、ペーパーレス化のために同様の電子会議システムが利用されてきている。
図9は、従来における電子会議システムの概要を示す構成図であり、端末装置901、902、903、904がネットワーク905で接続されており、ネットワーク905を介して資料やその表示ページ位置およびメモ書きといったデータを共有することによって電子的な会議を実現している。
このように従来の電子会議システムは、発表者となる端末装置の表示ページおよびメモ書きを他の端末装置上でも同期して表示させることを主目的としていたため、発表者以外の端末装置上で個人的に資料のページを先読みしたり、その端末装置の画面上だけに表示される個人的なメモを記入することができないという問題があった。
そこで、例えば下記特許文献1に開示されているように、発表者となる端末装置上で記入したメモ書きはサーバ上に保存し、その他の端末装置上で記入したメモ書きはローカルに保存することによって発表者以外の端末装置上で記入されたメモ書きはその端末装置の画面上にのみ表示できるようにしたものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平2001−256165
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、従来の電子会議システムは、会議に参加している会議端末装置は、発表者となる会議端末装置の状態と常に同期している状態であった。すなわち、発表者の会議端末装置上で資料を開くと、その他の会議端末装置上にその資料が送信されて共有される。発表者の会議端末装置上でその資料の表示ページ位置変更やメモ書きを行うと、その他の会議端末装置上に共有されている資料の表示ページ位置もそれに同期し、発表者の会議端末装置上で記入されたメモ書きも同期して表示される。
ここで、発表者の会議端末装置上での表示ページ位置変更操作やメモ書き操作とは切り離された非同期状態に会議端末装置がなることができるようにし、その状態での表示ページ位置変更操作やメモ記入操作はその会議端末装置上でのみ表示されるようにすることで、個人的な資料の先読みとメモ書きが実現できる。
【0005】
しかしながら、会議端末装置上で自由に非同期状態になれるようにした場合、その会議端末装置上の表示は発表者の端末装置上の表示と同期していないため、発表を見ていない状態になってしまうという問題がある。そのため、非同期になっている会議端末装置に対して発表に注目して欲しい場合に、発表者の会議端末装置から非同期状態になっている会議端末装置の状態を強制的に同期状態に戻す仕組みが必要である。
また、ネットワークで接続された電子会議では、企業の本支店間会議のように遠隔地間の会議端末装置を接続して行う会議と、役員会議のように1つの会議室内に設置された複数の会議端末装置を接続して行う会議形態が存在する。遠隔地間の会議において、物理的に離れた場所から参加している参加者は発表者の状況を把握することができない。そのため、会議に接続する会議端末装置の状態は同期状態で開始し、発表者の会議端末装置上で資料のどのページを開いて発表を行っているのかを、その他の会議端末装置上で分かるようにすることが望ましい。
【0006】
一方、1つの会議室内の会議においては、発表者の会議端末装置上の画面がプロジェクタ等で大画面に表示されている場合が多く、他の参加者は自分の会議端末装置上を見なくても発表者の状況が把握できる。この場合、発表者以外の会議端末装置の状態は同期状態になっている必要が無く、非同期状態にしておくことで、発表者以外の参加者は大画面で発表者の画面を閲覧しながら、自分の会議端末装置上では自由に資料を先読みしたり、個人的なメモ書きをできる。すなわち、会議の形態に応じて、電子会議に接続した時の会議端末装置の同期状態を設定できれば、1つの電子会議システムで上記2つの会議形態に対応することができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決するため、同期・非同期状態を持つ電子会議システムにおいて、会議端末装置の同期・非同期状態を、主催者もしくは発表者となる会議端末装置上から制御することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電子会議システムは、資料共有とメモ書きと同期・非同期切り替えと強制同期と会議開始時の同期・非同期状態に関する設定手段を備える複数の会議端末装置からなる電子会議システムであって、
前記複数の会議端末装置のそれぞれは、
発表者権限を持つ会議端末装置の入力部の入力により選択された資料を自身の端末装置の表示部へ表示すると共に、通信部を通して接続されている全ての会議端末装置へ選択された資料を送信し、資料を受信した会議端末装置はその資料を表示部へ表示する資料共有手段と、
入力部から入力される自由曲線データと、直線や円や矩形などの図形データと、テキストデータと、クリップアートやスタンプなどの静止画像データを自身の会議端末装置へ表示すると共に、同期状態においては通信部を通して接続されている全ての会議端末装置へ入力されたメモ書きを送信し、メモ書きを受信した会議端末装置はそのメモ書きを表示部へ表示するメモ書き手段と、
入力部からの入力により、その会議端末装置の状態を同期もしくは非同期に遷移させる同期・非同期切り替え手段と、
入力部からの入力により、他の会議端末装置の状態を同期状態に強制的に遷移させる強制同期手段と、
会議の主催者となる会議端末装置の入力部からの入力により、他の会議端末装置が会議に接続した時の同期・非同期の初期状態を設定させる会議開始時の同期・非同期状態設定手段と、
を備えることを特徴とする電子会議システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のような効果がある。
(1)非同期状態になっている会議端末装置がある場合において、発表に集中してほしい場面などでは、発表者の会議端末装置上から非同期状態になっている会議端末装置の状態を強制的に同期状態に変更することにより、発表者の発表に集中させることができる。
(2)会議の主催者となる会議端末装置上から、会議に接続する会議端末装置の同期・非同期の初期状態を設定できるようにすることで、遠隔地間で会議を行う場合は会議端末装置を同期状態で開始させ、1つの会議室内で会議を行う場合は会議端末装置を非同期状態で開始させるというように、会議形態に合った電子会議を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した電子会議システムの一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の一例を示すシステム構成図である。
本電子会議システムは、会議の主催者端末装置101および複数の会議端末装置102a、102b、102cから構成される。各端末装置は、表示装置111、121、マウス、電子ペンといった入力装置112、122を備えている。
主催者端末装置101は、会議を開始する会議端末装置であり、他の会議端末装置102a、102b、102cは、参加者として主催者端末装置101にLANやインターネットといったネットワーク103を介して接続を行う。
【0011】
図2は、会議端末装置101、102a〜102cで管理されるデータを示している。なお、図2では他の会議端末装置102b、102cについては図示を省略している。
共有資料211、221は会議で使用される資料データであり、例えば会議端末装置101で開かれた資料はネットワーク103を介して会議端末装置102aに送信され、会議端末装置102aに共有される。
また、会議端末装置101,102aは、入力装置(キーボード、マウスなど)を介して、画面上に表示された資料の表示ページ位置を変更したり、資料上にメモ書きを行うことができる。この時、会議端末装置の状態として同期状態と非同期状態を用意している。上記の表示ページ位置変更やメモ書き操作を行った会議端末装置が同期状態の場合は、そのデータがネットワーク103を介して他の会議端末装置に送信され、それぞれの会議端末装置内に同期データとして表示ページ位置212、222やメモ書き213、223が保存される。
【0012】
一方、操作を行った会議端末装置が非同期状態の場合には、操作を行った会議端末装置上のみに非同期データとして保存される。例えば、会議端末装置102a操作を行った場合は、会議端末装置102aのローカルのみに非同期データとして、表示ページ位置224やメモ書き225が保存され、会議端末装置101が操作を行った場合は、会議端末装置101のローカルのみに非同期データとして、表示ページ位置214やメモ書き215が保存される。
【0013】
会議端末装置の同期・非同期状態は、図3に示されるように、同期状態301の会議端末装置上の非同期ボタン314を押すことによって非同期状態302へ、もしくは非同期状態302の会議端末装置上の同期ボタン313を押すことによって同期状態301へ自由に状態を変更可能である。
同期状態301になった会議端末装置では、その会議端末装置のローカルに同期データとして保存されている、表示ページ位置315、メモ書き316を読み出し、画面上にその表示ページ311とメモ書き312を表示する。同様に非同期状態302になった会議端末装置では、その会議端末装置のローカルに非同期データとして保存されている表示ページ位置317、メモ書きデータ318を読み出し、画面上にその表示ページ319とメモ書き320を表示する。
【0014】
図4は、ある会議端末装置(1)上で表示ページ位置の変更操作を行った場合のフローチャートである。
まず、操作が行われた会議端末装置(1)の同期状態をチェックし(ステップ401)、同期状態だった場合は変更された表示ページ位置をメッセージとして他の会議端末装置に送信する(ステップ402)。
次にローカルに同期データとして表示ページ位置を保存し(ステップ403)、資料中のその表示ページ位置を画面に表示させる(ステップ404)。
ステップ401において、非同期状態であった場合は、ローカルに非同期データとして表示ページ位置を保存し(ステップ405)、その表示ページ位置を画面上に表示させる(ステップ406)。
【0015】
一方、ステップ402の表示ページ位置変更メッセージを受信した会議端末装置(2)は、ローカルに同期データとして表示ページ位置を保存し(ステップ407)、その会議端末装置の同期状態をチェックし(ステップ408)、同期状態だった場合は受信した表示ページ位置に画面上の表示を変更する(ステップ409)。ステップ408において非同期状態だった場合は、表示ページ位置の変更は行わない。
【0016】
同様に、図5はある会議端末装置(1)上でメモ書き操作を行った場合のフローチャートである。
まず、操作が行われた会議端末装置(1)の同期状態をチェックし(ステップ501)、同期状態だった場合はメモ書きをメッセージとして他の会議端末装置に送信する(ステップ502)。
次にローカルに同期データとしてメモ書きを保存し(ステップ503)、そのメモ書きを画面に表示させる(ステップ504)。ステップ501において、非同期状態であった場合は、ローカルに非同期データとしてメモ書きを保存し(ステップ505)、そのメモ書きを画面上に表示させる(ステップ506)。
一方、ステップ502のメモ書きメッセージを受信した会議端末装置(2)は、ローカルに同期データとしてメモ書きを保存し(ステップ507)、その会議端末装置の同期状態をチェックし(ステップ508)、同期状態だった場合は受信したメモ書きを画面上に表示する(ステップ509)。
ステップ508において非同期状態だった場合は、受信したメモ書きの表示は行わない。
【0017】
また、図6に示すように、各会議端末装置上では、会議に接続されている各会議端末装置に関連付けられている会議端末名601と、その端末の現在の同期状態602を会議端末リストとして画面上に表示することができ、会議端末リスト上には強制同期ボタン603がある。この強制同期ボタン603が押下されると、現在非同期状態になっている会議端末装置612、613、615が強制的に同期状態に遷移させられる。一方、元々同期状態だった会議端末装置611、614の状態は変化しない。
【0018】
図7は、上記強制同期操作を行った場合のフローチャートである。
まず、操作が行われた会議端末装置(1)上で、非同期状態の会議端末装置が存在するかをチェックし(ステップ701)、非同期状態の会議端末装置があった場合はその会議端末装置に対して強制同期メッセージを送信する(ステップ702)。
ステップ701において、非同期状態の会議端末装置が存在しなかった場合は何も行わない。
一方、ステップ702の強制同期メッセージを受信した会議端末装置2は、自分が非同期状態かをチェックし(ステップ703)、非同期状態だった場合は同期状態に遷移し(ステップ704)、同期データの表示ページ位置に画面表示を変更し(ステップ705)、同期データのメモ書きを画面に表示する(ステップ706)。ステップ703において同期状態だった場合は、何も行わない。
また、主催者端末装置101が会議を開始する時に、その会議の設定として、その他の会議端末装置が接続してきた時の初期状態を同期もしくは非同期状態で開始させるか選択できるようにしている。
【0019】
図8は、各会議端末装置の接続処理のフローチャートである。
まず、主催者端末装置101に接続要求を送信する(ステップ801)。次に、主催者端末装置101から会議の設定情報を受信し(ステップ802)、その内容が同期状態で開始する設定かチェックする(ステップ803)。ここで同期状態だった場合は同期状態で処理を開始し(ステップ804)、非同期状態で開始する設定だった場合は非同期状態で処理を開始する(ステップ805)。
【0020】
以上のように、本実施の形態の電子会議システムによれば次の効果がある。
(1)発表者が会議端末装置上の入力により、非同期になっている他の会議端末装置を強制的に同期状態に遷移させ、発表者と同期した画面を表示させることができるため、発表者が主導権をもって会議を進行できる。
(2)主催者端末装置が会議の設定として、会議に参加する会議端末装置の初期状態を同期もしくは非同期で開始させるように選択できるようにすることで、発表者の状況が分からない遠隔地間の会議では同期状態で開始、発表者の状況が分かる会議室内の会議では非同期で開始するといった利用方法をユーザが選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態例を示すシステム構成図である。
【図2】会議端末装置に格納されているデータの構成図である。
【図3】同期状態、非同期状態の切り替え処理の説明図である。
【図4】表示ページ位置変更処理を示すフローチャートである。
【図5】メモ書き処理を示すフローチャートである。
【図6】会議端末リストの説明図である。
【図7】強制同期処理を示すフローチャートである。
【図8】会議端末装置の接続処理を示すフローチャートである。
【図9】従来の電子会議システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0022】
101 主催者端末装置
102a 会議端末装置
102b 会議端末装置
102c 会議端末装置
103 ネットワーク
112 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
資料共有とメモ書きと同期・非同期切り替えと強制同期と会議開始時の同期・非同期状態に関する設定手段を備える複数の会議端末装置からなる電子会議システムであって、
前記複数の会議端末装置のそれぞれは、
発表者権限を持つ会議端末装置の入力部の入力により選択された資料を自身の端末装置の表示部へ表示すると共に、通信部を通して接続されている全ての会議端末装置へ選択された資料を送信し、資料を受信した会議端末装置はその資料を表示部へ表示する資料共有手段と、
入力部から入力される自由曲線データと、直線や円や矩形などの図形データと、テキストデータと、クリップアートやスタンプなどの静止画像データを自身の会議端末装置へ表示すると共に、同期状態においては通信部を通して接続されている全ての会議端末装置へ入力されたメモ書きを送信し、メモ書きを受信した会議端末装置はそのメモ書きを表示部へ表示するメモ書き手段と、
入力部からの入力により、その会議端末装置の状態を同期もしくは非同期に遷移させる同期・非同期切り替え手段と、
入力部からの入力により、他の会議端末装置の状態を同期状態に強制的に遷移させる強制同期手段と、
会議の主催者となる会議端末装置の入力部からの入力により、他の会議端末装置が会議に接続した時の同期・非同期の初期状態を設定させる会議開始時の同期・非同期状態設定手段と、
を備えることを特徴とする電子会議システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−33229(P2010−33229A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193261(P2008−193261)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】