同相電磁界を拒否するための広帯域、差動信号バラン
【課題】平衡及び不平衡回路間で広帯域差動信号を効率的に結合するアセンブリ及びプロセスを提供する。
【解決手段】アセンブリは、不平衡伝送線路部、平衡伝送線路部、及び不平衡及び平衡伝送線路部間に設けられた遷移領域を有する広帯域バランを含む。不平衡伝送線路部は、少なくとも1つのグランド及びグランドから各々絶縁された一組の導電性の信号線路を含む。平衡部は、アナロググランドを含まない。遷移領域が、アナロググランドを効果的に終端させ、平衡及び不平衡部間の横電界分布を徐々に遷移させ、若しくは形成する。有益なことに、バランが、動作帯域幅を制限する共振特性とは無関係であり、10:1以上の広い帯域幅上で稼働可能である。アセンブリは、バランが連続したRFチョーク、及び平衡フィルターといった他の素子を含むことができ、集積回路として構成することもできる。
【解決手段】アセンブリは、不平衡伝送線路部、平衡伝送線路部、及び不平衡及び平衡伝送線路部間に設けられた遷移領域を有する広帯域バランを含む。不平衡伝送線路部は、少なくとも1つのグランド及びグランドから各々絶縁された一組の導電性の信号線路を含む。平衡部は、アナロググランドを含まない。遷移領域が、アナロググランドを効果的に終端させ、平衡及び不平衡部間の横電界分布を徐々に遷移させ、若しくは形成する。有益なことに、バランが、動作帯域幅を制限する共振特性とは無関係であり、10:1以上の広い帯域幅上で稼働可能である。アセンブリは、バランが連続したRFチョーク、及び平衡フィルターといった他の素子を含むことができ、集積回路として構成することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マイクロ波及びRF回路及び同種の分野、より端的にはそのような回路で使用されるバランに概して関連する様々な実施形態を本明細書に開示する。
【背景技術】
【0002】
差動伝送線路上の信号伝送により外部漂遊電界に起因するノイズ影響又は干渉が低減される。外部信号源はいずれも伝送線路上に同相モード信号のみ誘起する傾向にあり、グランドに平衡化されたインピーダンスにより漂遊電界に起因する差動ピックアップが最小化される。差動伝送線路により差動レシーバが同相モード干渉を阻止して接続上のノイズを低減する。伝送線路は、グランドに対して同一のインピーダンスを有し、干渉場又は電流により両方の配線に同一の電圧が誘起される。しかしながら、そのような差動信号用平衡回路は、一般的に低周波数で適用されてきた。
【0003】
バランと呼ばれる回路素子は、不平衡伝送線路の入力を1以上の平衡伝送線路の出力へ変換し、又はこの逆のために汎用されている。低周波数帯で動作するバランは、一般的に、トランスといった集中定数素子から成る。そのような低周波数バランは、高いパフォーマンス及び非常に広い帯域幅を達成するためにフェライト及び空気コイル変換器技術を活用することが多い。
【0004】
しかしながら、電子技術の傾向としては、一般的に、更なる動作周波数及び帯域幅の増大に向かっている。従って、バランは、高周波及び/又は広帯域動作の要望が多い高難易度の多様な用途において採用されている。例えば、バランは、デルタ‐シグマ変調ダイレクトデジタル合成器、デジタル‐アナログ変換器(DAC)、アナログ‐デジタル変換器(ADC)、差動デジタルシグナリング、RFミキサー、SAWフィルター、及びアンテナフィードの出力段に組み込まれる。このような用途では、差動入力から同相エネルギーを拒否可能又は同相エネルギーが欠いた差動出力を供給可能であり、集積回路に適合可能である小型な広い帯域幅(広帯域)のバランが要望される。
【0005】
ラジオ波周波数(例えば、マイクロ波)及びこれよりも高周波においては、フェライト及び空気コイル変換器を備える広帯域バランを作製することが増々困難であり、他の技術が必要とされている。そのような高周波帯で動作するバランは、一般的に分布定数素子から成る。各々が分布定数素子から成るこれらのバランの多くは1/4波長整合素子を含む、又は使用可能波長に応じて決定されたサイズのトランスであるため、それらの周波数帯が根本的に狭いという欠点がある。更に、そのような高周波信号(例えば、RF、マイクロ波、ミリ波)は、一般的に、平衡差動信号というよりはシングルエンド及び不平衡逆相信号に依拠する。より明確に述べれば、信号がグランド基準により駆動される。そのようなシングルエンド信号は、(外側導線がグランドされている同軸ケーブルといった高周波数伝送線路を考慮すれば)電磁干渉の制御においては有効であるかもしれない。不幸にも、そのような構造は、グランドから必然的に隔離される平衡差動信号の伝送には上手く適合しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
超広帯域動作をサポートするバラン構造を使用して、不平衡伝送線路及び平衡伝送線路間で差動信号を結合するためのシステム及び技術の実施形態を本明細書に開示する。少なくとも実施形態によっては、その結合が、マイクロ波及びミリ波動作帯の少なくとも1つのために達成される。
【0007】
第1の観点においては、本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態が、不平衡伝送線路部、平衡伝送線路部、及び不平衡伝送線路部と平衡伝送線路部の間に設けられた遷移領域を含む広帯域バランを開示する。不平衡伝送線路部は、縦軸に沿って延在する第1同相線路、第1線路に平行に延在する第1逆相線路、及び第1同相及び逆相線路夫々に対して平行で、電磁的に結合し、そして物理的に離間した少なくとも1つの接地板を含む。平衡伝送線路部は、第2同相線路及び第2逆相線路を含む。第2同相線路は、第1同相線路に電気的に接続し、第2逆相線路は、第1逆相線路に電気的に接続する。更に、第2同相及び逆相線路夫々が、対応の個別の第1同相及び逆相線路に対して縦に平行(平面:Broadside)であり、また、少なくとも1つの接地板に対して実質的に結合していない。
【0008】
実施形態によっては、少なくとも1つの接地板が、第1同相線路及び第1逆相線路の間に設けられる。結果として、同相及び逆相線路夫々が、少なくとも1つの接地板の隣接する側面と共に個別のマイクロストリップ導波路を構成する。より一般的には、不平衡伝送線路部が、マイクロストリップ導波路;コプラナーストリップ線路;平行板ストリップ線路;有限グランドコプラナー導波路(FGCPW);コプラナー導波路;コプラナーストリップ線路;非対称ストリップ線路;及びスロット線路の内の一つであっても良い。少なくとも実施形態によっては、不平衡及び平衡伝送線路は、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送の少なくとも1つを実行可能である。
【0009】
実施形態によっては、マイクロストリップ伝送線路夫々が、個別の第1特性インピーダンスを有し、これらの特性インピーダンスが実質的に等しい。加えて、平衡伝送線路部が、第1特性インピーダンスのいずれかの約2倍の第2特性インピーダンスを有する。
【0010】
遷移領域は、不平衡及び平衡伝送線路部間で少なくとも1つの個々の接地板の境界を規定する個別の末端エッジを含む。接地板エッジ変動も設定されており、個別の末端エッジから寸法される所定長だけ縦軸に沿って延在する。加えて、不平衡、平衡及び遷移領域の夫々の個別断面が、縦軸に関して実質的に対称である。実施形態によっては、接地板エッジ変動が、不平衡伝送線路部から離間するべく延在すると共に平衡伝送線路部側へ向けられた狭端を有する接地板のテーパー延長部を規定する。
【0011】
実施形態によっては、不平衡伝送線路部、平衡伝送線路部及び遷移領域の夫々が、一つの集積回路に組み込まれる。集積回路は、例えば、Si;Ge;III−V半導体;GaAs及びSiGe;及びこれらの組み合わせから成る群から選択される任意の適切な集積回路装置技術によって構成される。
【0012】
実施形態によっては、バランは、差動フィルターに結合され、若しくはこれを含むように改造可能である。例えば、そのような差動フィルターを遷移領域とは逆側の平衡伝送線路部の端部に結合しても良い。
【0013】
代替的又は追加的に、バランは、相似構成の第2広帯域バランに結合し、若しくはこれを含むように改造可能である。そのように構成されるとき、バランは、各々の平衡伝送線路部において連続態様にて一体的に結合する。
【0014】
別の観点においては、本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態は、不平衡差動伝送線路と平衡差動伝送線路との間で差動信号を効率的に結合する方法に関する。端的には、不平衡差動伝送線路は、少なくとも1つのアナロググランド基準を有する;他方、平衡差動伝送線路は、そのようなアナロググランド基準を有しない。本方法は、不平衡及び平衡差動伝送線路の一方から伝播する横電磁(TEM)波の電磁エネルギーを受信するステップを含む。TEM波が、縦方向の中心線に関して対称の第1横電界分布を有する。受信した電磁エネルギーは、不平衡及び平衡差動伝送線路の他方に対して伝送される(すなわち、不平衡から平衡、又は平衡から不平衡)。TEM波は、同様に、第2横電界分布を有し、これも縦方向の中心線に関して対称である。本方法は、更に、第1電磁界分布を第2電磁界分布へ対称に再構成することを含む。そのような対称の再構成は、不平衡及び平衡差動伝送線路間の遷移領域に沿って達成される。この再構成により、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送の少なくとも1つを含む電磁エネルギーにとって、少なくとも約10:1の帯域幅上で電磁エネルギーの反射が最小化される。
【0015】
縦方向の中心線に沿って徐々に対称に再構成しても良い。実施形態によっては、対称に再構成することが、遷移領域に沿う少なくとも1つのアナロググランドとTEM波の相互作用の態様で実行される。例えば、少なくとも1つのアナロググランド基準の縦方向のテーパーの態様にて横電界分布を形づけることにより対称に再構成することを達成可能である。
【0016】
更に別の観点においては、本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態は、不平衡伝送線路部、平衡伝送線路部、及び不平衡及び平衡伝送線路部の間に設けられた遷移領域を含む広帯域バランを提供する。広帯域バランは、不平衡差動伝送線路及び平衡差動伝送線路の一方から伝播する横電磁(TEM)又は準TEM波の電磁エネルギーを受信する手段を含む。TEM波は、第1横電界分布を有し、これは、縦方向の中心線に関して対称である。バランは、不平衡差動伝送線路及び平衡差動伝送線路の他方へ受信した電磁エネルギーを伝送する手段も含む。TEM波は、第2横電界分布を有し、これも縦方向の中心線に関して対称である。ここで更には、バランは、第2電磁界分布に適合するように第1電磁界分布を対称に再構成する手段を含む。再構成手段が、不平衡及び平衡差動伝送線路間の遷移領域に沿って配置されている。再構成手段は、少なくとも約10:1の帯域幅上で電磁エネルギーの反射を最小化する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
異図に亘り同一参照符号により同一要素が示された添付図面に開示されているように、後述の本発明の好適な実施形態のより端的な開示により、本発明の上述及び他の目的、特徴及び効果が明らかになるだろう。図面は、必ずしもスケールされたものではなく、むしろ本発明の原理を提示することに重きが置かれている。
【図1】図1は、広帯域バランの実施形態の概略図を図示する。
【図2】図2A及び図2Bは、図1に示す広帯域バランの不平衡部及び平衡部の一例の断面を個別に図示する。
【図3】図3A及び図3Bは、図1に示す広帯域バランの不平衡部及び平衡部の別例の断面を個別に図示する。
【図4】図4A及び図4Bは、図1に示す広帯域バランの不平衡部及び平衡部の別例の断面を個別に図示する。
【図5】図5は、対向配置のマイクロストリップ導波路を含む不平衡部を備える広帯域バランの例の平面図を図示する。
【図6】図6A乃至図6Fは、個別セクションでの例示の電界分布を含む図5に示された広帯域バランの各断面図を図示する。
【図7】図7A及び図7Bは、広帯域バランの実施形態の平面及び縦方向断面を個別に図示する。
【図8】図8A乃至図8Cは、図7Aに開示の広帯域バランの各断面を図示し、図7Aに特定された様々なセクションにおける例示の電界分布を含む。
【図9】図9A及び9Bは、広帯域バランの別の実施形態の平面及び縦方向断面を個別に図示する。
【図10】図10A乃至図10Cは、図9Aに開示の広帯域バランの個別断面を図示し、図9Aで特定された様々なセクションにおける例示の電界分布を含む。
【図11】図11A及び11Bは、広帯域バランの更なる別の実施形態の平面及び縦方向断面を個別に図示する。
【図12】図12A乃至図12Fは、図11Aに開示の広帯域バランの個別断面を図示し、図11Aで特定された様々なセクションにおける例示の電界分布を含む。
【図13】図13は、連続に相互接続された、若しくは広帯域バランチョーク(choke)と呼ばれる2つの広帯域バランの実施形態の平面図を図示する。
【図14】図14は、差動フィルターを含む広帯域バラン回路の実施形態の平面図を図示する。
【図15】図15は、差動ドライバ及び広帯域バランを含む集積回路の実施形態の概略図を図示する。
【図16】図16は、差動ドライバ、広帯域バランチョーク、及び作動レシーバを含む集積回路の別の実施形態の概略図を図示する。
【図17】図17は、不平衡及び平衡伝送線路間で差動信号を結合するためのプロセスのフローチャートを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本質的な広い帯域幅上で差動信号を伝送することに適合した不平衡及び平衡構造を相互接続するシステム及びプロセスの実施形態の記述を次に述べる。より端的には、任意の特定周波数において共振する要素を持たない進行波構造は、中央縦軸に沿って配置され、差動信号の伝送を共同してサポートするべく構成された同相及び逆相導電線路を有する。進行波構造は、平行板導波路、コプレナー導波路、マイクロストリップ導波路、及び平行板及びコプレナーストリップ線路導波路を含む差動ストリップ線路導波路として構成される伝送線路、若しくは導波路部を含むことができる。この構造は、バランと呼ばれ、双方向(例えば、不平衡から平衡、及び平衡から不平衡)の差動信号の効率的伝送を許容し、最小の反射又は信号完全性の他の劣化を伴う。
【0019】
バランは、グランドと以下に概して述べるアナログ又はデジタルグランドを少なくとも1つ有する不平衡部を含む。グランドは、同相又は逆相線路のどちらからも物理的に隔離されている(すなわち、直流経路がない)。非ゼロ周波数においては、しかしながら、線路及びグランドが共に差動信号線路に沿って同相モード信号をサポートする。そのような同相モード信号は、時折、偶数モード信号と呼ばれる。平衡部において、少なくとも1つのアナロググランドが実質的に除かれ、若しくは差動信号線路から隔離される。遷移領域において、グランド有りからグランド無しの遷移が生じる。結果として、各線路と少なくとも1つのアナロググランド間で測定される実効的な同相インピーダンスが開(オープン)回路(すなわち、無限インピーダンス)に近づき、同相モード信号は、平衡部に沿ってもはやサポートされない。しかしながら、それらの差動信号線路は、差動モード伝播をサポート可能なままである。そのような同相モード信号が無い差動モード信号が平衡構成を象徴する。
【0020】
広帯域の差動信号バラン100の実施形態の概略図を図1に示す。バラン100は、同相信号線路104a、逆相信号線路104b、及び少なくとも1つのアナロググランド106を有する不平衡部102を含む。同相線路104a、逆相線路104b及び少なくとも1つのグランド106は、共同で少なくとも1つの伝播導波路モードをサポートするべく構成されている。例えば、第1導波路は、同相線路104a及びアナロググランド106を含んでも良く、第1特性インピーダンスZOU1を有する。同様に、第2導波路が、逆相線路104b及びアナロググランド106を含んでいても良く、第2特性インピーダンスZOU2を有する。少なくとも実施形態によっては、第1及び第2特性インピーダンスが実質的に同一である:すなわち、ZOU1=ZOU2=ZOU。
【0021】
不平衡部102は、同相又は逆相線路104a、104bのいずれかを流れる電流がアナロググランド106と相互作用する点において少なくとも不平衡と考えることができる。そのため、不平衡部102は、お互いに対して個別の奇数モードインピーダンスを有する同相及び逆相線路104a、104bを流れる差動モードと呼ばれることもある逆方向の電流(すなわち、Io+、Io-)をサポート可能である。加えて、不平衡部102は、アナロググランド106との関係において偶数モードインピーダンスを有する同相及び逆相線路104a、104bを流れる同相と呼ばれることもある同方向(co−aligned)の電流(すなわち、Ie+、Ie-)をサポート可能である。
【0022】
バラン100は、同相信号線路114a及び逆相信号線路114bを有するがアナロググランド基準を含まない平衡部 112も含む。同相線路114a及び逆相線路114bは、平衡伝播導波路モードをサポート可能な平衡導波路として配置される。平衡導波路は、各々特性インピーダンスZOBを有する線路114a、114bにより形成される。同相信号線路114aは、不平衡部102の同相線路104aと電気的に接続している。同様に、逆相信号線路114bは、不平衡部102の逆相線路104bと電気的に接続している。この構造は、同相及び逆相線路104a、104bを流れる各電流が実質的に等しくかつ反対である(すなわち、Io+、Io-)点において少なくとも平衡であると考えることができる。アナロググランド106に対して偶数モードインピーダンスを有する同相及び逆相線路104a、104bに同方向の電流(すなわち、Ie+、Ie-)が流れる。
【0023】
バラン100は、同相信号線路124a及び逆相信号線路124bを有する遷移領域120も含む。同相線路124a及び逆相線路124bは、伝播導波路モードをサポート可能な導波路として配置される。同相信号線路124aは、不平衡部102の同相線路104aと平衡部112の同相線路114aとの間で電気的に接続されている。同様に、逆相信号線路124bは、不平衡部102の同相線路104bと平衡部112の同相線路114bとの間で電気的に接続されている。遷移領域120は、不平衡部102のアナロググランド106に電気的に接続されている部分的なアナロググランド126も含む。
【0024】
次に図2Aを参照すると、広帯域バラン100の不平衡部202の一例の断面が図示されている。不平衡部202は、同相線路204a、逆相線路204b及びアナロググランド206を含む。本例では、アナロググランド206が接地板206として設けられている。上部誘電体層208aがアナログ接地板206の上面に接し、下部誘電体層208bが接地板206の底面に接する。同相線路204aは、アナログ接地板206の上面とは反対側の上部誘電体層208aの上面に沿って延在する。逆相線路204bは、アナログ接地板206の底面とは反対側の下部誘電体層208bの底面に沿って延在する。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路204a、204bは、断面において実質的に均等であり、中央縦軸に平行に延在する。
【0025】
広帯域バラン100の平衡部212の例の断面を図2Bに示す。端的には、平衡部212は、図2Aに示すように不平衡部202を有するバランに対応する。平衡部212は、同相線路214a及び逆相線路214bを含む。平面(プラナー)誘電体層208は、同相線路214aと逆相線路214bとの間を延在し、ここで、同相線路204aが誘電体層208の上面に沿って延在し、逆相線路204bが誘電体層208の底面に沿って延在し、アナログ接地板206を有しない。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路214a、214bは、バラン100の中央縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。
【0026】
不平衡部202に関しては、同相線路204a、上部誘電体層208a及び接地板206により第1マイクロストリップ導波路が構成される。差動信号(不図示)の同相成分により第1マイクロストリップ導波路を駆動可能である。同様に、逆相線路204b、下部誘電体層208b、及び接地板206により第2マイクロストリップ導波路が構成される。差動信号の逆相成分により第2マイクロストリップ導波路を駆動可能である。参照x及びy座標軸は、各々の横断断面図のために示され、バラン100の中央縦軸に一致する原点を有する。線路204a、204b夫々は、個別のx軸に沿って測定される幅(wU)、y軸に沿って測定される厚み(tU)、及び同じくy軸に沿って測定される接地板206上の高さ(hU)を有する。第1及び第2マイクロストリップ導波路は、各々、特性インピーダンスZOU1、ZOU2を有し、これら各々は、導波路設計の当業者に知られた方法により、個別の誘電体層208の寸法wU、tU、hU、及び誘電率(εr)に応じて算出できる。不平衡部202は高度の対称性を呈し、x及びy軸の各々において対称であり、ここでは中央縦軸との関係において対称であることは明白である。
【0027】
平衡部212に関しては、同相線路214aと逆相線路214bにより平行板導波路が構成される。線路214a、214bが、個別に、x軸に沿って測定される幅(wB)、y軸に沿って測定される厚み(tB)、及び同じくy軸に沿って測定される各々に対する高さ(hB)を有する。平行板導波路は、個別の特性インピーダンスZOBを有し、これも、一般的に知られた方法により、誘電体層208の個別の寸法wB、tB、hB、及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。平衡部212も高度の対称性を呈することが明らかであり、x及びy軸夫々に関して対称である(すなわち、中央縦軸に関して対称である)。
【0028】
広帯域バラン100の不平衡部222の別例の断面を図3Aに示す。不平衡部222は、バラン100の縦軸に沿って延在する同相線路224a及び逆相線路224bを上部アナログ接地板226a及び下部アナログ接地板226bの間に含む。誘電体層228は、上部及び下部アナログ接地板層226a、226bの間を延在し、誘電体層228内に埋め込まれた同相及び逆相線路224a、224bを有する。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路224a、224b(一般化して224)は、縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。誘電体層が複層、例えば、一つが線路224の上、一つがその下にある2層を含むことが考えられる。
【0029】
広帯域バラン100の平衡部232の別例の断面を図3Bに示す。端的には、平衡部232が、図3Aに示す不平衡部222を有するバランに対応する。平衡部232は、平面誘電体層228に埋め込まれた同相線路234a及び逆相線路234bを含み、上部及び下部アナログ接地板226a、226bのいずれも有しない。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路234a、234bが、バラン100の縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。
【0030】
不平衡部222に関しては、同相線路224a、逆相線路224b及び上部及び下部接地板226a、226bによりコプレナー、ストリップ線路導波路が構成される。差動信号(不図示)により同相線路224a、逆相線路224bを駆動可能である。参照x及びy座標軸は、横断断面図のために図示されており、バラン100の中央縦軸に一致する原点を有する。各線224a、224bは、各々、x軸に沿って測定される幅(wU)及び間隔(sU)、y軸に沿って測定される厚み(tU)、及びy軸に沿って測定される接地板226a、226bのいずれかに対する均等な高さ(hU)を有する。コプレナー、ストリップ線路導波路は、特性インピーダンスZOUを有し、これは、誘電体層228の個々の寸法wU、sU、tU、hU、及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。平衡部222が高度の対称性を呈することが明らかであり、各x及びy軸に関して対称である。
【0031】
平衡部232に関しては、同相線路234aと逆相線路234bによりコプレナー導波路が構成される。線路234a、234bが、個別に、x軸に沿って測定される幅(wB)及び間隔(sU)、及びy軸に沿って測定される厚み(tB)を有する。コプレナー導波路は、個別の特性インピーダンスZOBを有し、これも誘電体層228の個別の寸法wB、tB、及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。平衡部232も高度の対称性を呈することが明らかであり、各x及びy軸に関して対称である。
【0032】
広帯域バラン100の不平衡部242の更なる別例の断面を図4Aに示す。不平衡部242は、バラン100の縦軸に沿って延在する同相線路244a及び逆相線路244bを上部及び下部アナログ接地板246a、246b間に含む。誘電体層248は、上部及び下部アナログ接地板246a、246b間を延在し、誘電体層248内に埋め込まれた同相及び逆相線路244a、244bを有する。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路244a、244b(一般化して244)は、縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。誘電体層が複層、例えば、一つがその上、一つがその下、おそらく一つが線244の間にある2層を含むことが考えられる。少なくとも実施形態によっては、同質の誘電体が、246aの上及び246bの下(不図示)を延在する。
【0033】
広帯域バラン100の平衡部252の別例の断面を図4Bに示す。端的には、平衡部252が、図4Aに示すように不平衡部242を有するバランに対応する。平衡部252は、平面誘電体層248に埋め込まれた同相線路254a及び逆相線路254bを含み、上部又は下部アナログ接地板246a、246bのいずれも有しない。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路254a、254bが、縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。
【0034】
不平衡部242に関しては、同相線路244a、逆相線路244b及び上部及び下部接地板246a、246bにより平行板、ストリップ線路導波路が構成される。差動信号源(不図示)により同相線路244a、逆相線路244bを駆動可能である。参照x及びy座標軸は、横断断面図のために示され、バラン100の中央縦軸に一致する原点を有する。線路244a、244b夫々は、個別のx軸に沿って測定される幅(wU)、y軸に沿って測定される厚み(tU)及び間隔(sU)、及びy軸に沿って測定される各々に対する均一の高さ(hU)を有する。平行板、ストリップ線路導波路は、個別に特性インピーダンスZOUを有し、これは、誘電体層248の個別の寸法wU、(sU)、tU、hU、及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。不平衡部242が高度の対称性を呈することが明らかであり、各x及びy軸に関して対称である。少なくとも実施形態によっては、線路244a及び244bが、x方向(正及び負)において互いにオフセットしており、間隔sU又は高さhU(不図示)を調整する必要なく特性インピーダンスZOUが設定される。
【0035】
平衡部252に関しては、同相線路254aと逆相線路254bにより平行板導波路が構成され、誘電体層248内に埋め込まれる。線路254a、254bが、個別に、x軸に沿って測定される幅(wB)及び間隔(sB)、y軸に沿って測定される厚み(tB)及び離間距離(hB)を有する。平行板導波路は、個別の特性インピーダンスZOBを有し、これは、誘電体層248の個別の寸法wB、tB、hB及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。平衡部252も高度の対称性を呈することが明らかであり、x及びy軸夫々に関して対称である。
【0036】
図5は、例えば図2Aに図示されたものと同様の、対向するマイクロストリップ導波路を含む不平衡部302を備える広帯域バラン300の例の平面図を図示する。上部誘電体層308a上の同相線路が視認できる。また、陰影の領域が、中心接地板306の上面であり、都合によりに透明に表された誘電体層を介して視認できる。平衡部312は、同相及び逆相線路間の接地板306の一部の除去により形成される。接地板の開口314の外周が、図示のように誘電体層308内に位置することを示す破線にて図示されており、平衡部312内において接地板306の全体を除去する必要はない。むしろ、接地板308が平行線路間から除かれ、この除去が、それらの線路から離れるある距離に亘り、そのような接地板に対する電磁結合(例えば、容量と称される)は、少なくとも10sBの距離において実質的に無視できる。少なくとも実施形態によっては、接地板及び線路間の最小の離間距離が、少なくとも例えば10sBである。「スイッチングパルスの立ち上がり時間が数十ピコ秒まで短くなると多芯のマイクロストリップ線路の全波分析が必要になる」。
【0037】
遷移層320は、不平衡部302と平衡部312の間に設けられている。バラン300に結合する差動回路の「配置領域(footprint)」325も示されている。差動信号インターフェイス330が、差動回路配置領域325の周囲に設けられており、その配置領域325により示された差動回路の接点に結合するべく適合される。差動回路が信号源であっても良く、例えば、差動ドライバ、又はシグナルシンクを含み、例えば、差動レシーバを含む。従って、広帯域バラン300に沿って不平衡部から平衡部へ、またその逆へ双方向に信号が流れるだろう。実施形態によっては、別の差動回路(不図示)を遷移領域320とは反対の平衡部312の端部に結合可能である。
【0038】
図6A乃至図6Fが、図5に開示の広帯域バラン300の各断面を図示し、図5において特定された様々なセクションでの例示の電界分布を含む。図6Aに図示されたA−A’に沿う第1セクションについて参照すると、同相端子334aが上部誘電体層308aの上面に位置している。同相端子334aは、第1導電(例えば、貫通メッキ)ビア335aを介して、不平衡部302の同相線路304aと電気的に接続している。同様に、逆相端子334aが、第2導電性ビア335bを介して逆相線路304bと電気的に接続している。接地板306が、2つの線路304a、304bの間に設けられている。開口が、接地板306内に設けられており、第2ビア335bが、接地板306から絶縁された状態を保ちつつ、接地板306の反対側へ貫通する。線路304a、304b上の差動信号の存在に起因する差動電界分布の表示も図示されている。線路304a、304bは、対応する各ビア335a、335bとの交差を確保するべく垂直方向にずれて設けられている。
【0039】
図6Bに図示されたB−B’に沿う第2セクションを参照すると、同相線路304a及び逆相線路304bが近づいているが、垂直方向に配列していない。繰り返すが、概略的な態様において線路304a、304b夫々と接地板306との間の各電界分布が開示されている。図6Cに図示されたC−C’に沿う第3セクションが、垂直配列された同相及び逆相線路304a、304bを示す。線路304a、304b及び接地板306の構造対称性と配置に依存して、同相線路304aと接地板306の上面の間の上方の電界分布が、逆相線路304bと接地板306の底面の間の下方の電界分布に実質的に配列される。
【0040】
図6DのD−D’に沿う第4セクションにおいて遷移領域320の部分を図示する。端的には、接地板の延長部を除いて、接地板306が実質的に除かれている。接地板延長部は、同相及び逆相線路304a、304b間で、垂直配列し、かつ実質的に等間隔である。少なくとも幾つかの電界線が、接地板306において終端し、外側領域の他の電界線が、線路304a、304b間で実質的に遮断されることなく延在し、接地板延長部の外側水平範囲の周囲で延在する。図6EのE−E’に沿う第5セクションにおいて遷移領域320の別の部分を図示する。端的には、非常に狭い接地板306の部分のみが線路304a、304b間で垂直配列のまま残る。大半の電界線が、線路304a、304b間で遮断されることなく延在する。最後に、図6FのF−F’に沿う第6セクションにおいて平衡部312の断面を図示する。より端的には、線路314a、314bの近傍内で、接地板306の部分、延長又はそれ以外が存在しない。
【0041】
不平衡部302での線路304a、304b及び接地板306の配置の対称性、平衡部312での線路304a、304bの配置、及び差動信号の励振の性質の結果として、接地板306を有する不平衡部の電界分布が、接地板306を有しない平衡部の電界分布と実質的に同じになる。
【0042】
接地板の除去によって、バラン300が、線路304a、304b及び接地板306間の同相電流を除去することに実効的になる。接地板の除去によって、偶数モード電流が効果的に消え(すなわち、偶数モードインピーダンスが無限に近づく)、他方、奇数モード電流が優勢になる。如何なる共振素子を伴うことなく進行波構造(例えば、導波路)に依存することにより、バラン300が広い帯域幅で良好に動作する。電界分布の円滑な遷移を提供することにより、バラン300が不要反射を避けることができ、広帯域動作をサポートする。不平衡及び平衡部との間でインピーダンス整合を確保することにより、バラン300が、不要反射を避けて広帯域動作を更にサポートする。
【0043】
図7A及び7Bは、各々、広帯域バラン400’の実施形態のD−D’に沿う平面及び縦方向断面を示す。バラン400’は、図5の回路300のバランの詳細を開示し、TEMに代えて準TEMとして開示される。なぜなら、図6B乃至6Fに開示の304aの上と304bの下を実質的に延びる同質の誘電体に代えて誘電体408がグランド404aと404bにより境界付けられているためである。バラン400’は、不平衡部402、遷移領域420及び平衡部412を含む。不平衡領域402は、垂直に配列した、対向マイクロストリップ導波路の組を含み、中心接地板406の両側に沿って形成されている(繰り返すが、接地板が陰影で示され、誘電体層を介して視認可能である)。第1マイクロストリップ導波路が、同相導電線404aを含み、第2マイクロストリップ導波路が、平行逆相導電線404bを含む。各線路404a、404bは、導電接地板406の各面から誘電体層408a、408b(一般化して408)だけ離間している。平衡領域412は、単一の平行板導波路を含む。平行板導波路は、同相導電線414a及び平行逆相導電線414bを含み、誘電体408により離間し、導電性の接地板406が無い。遷移領域420は、接地板406の境界エッジ413を含む。説明上の例示において、そのエッジが、導電線路404a-404b、414a-414bの組に平行にその間の中心に配列されたバラン400’の縦軸に対して実質的に垂直である。
【0044】
少なくとも実施形態によっては、遷移領域420が境界エッジ413から離れる方向へ突出する延長部416も含む。説明上の例示において、延長部416が、平衡部412に向けて突出する。延長部416は、一般的に、線路404a-404b、414a-414bを二分する平面に関して対称である。延長部416はテーパーを含むことができ、例えば、境界エッジ413の近くの端部の幅が実質的に広く、末端点418に向かって突出するに応じて狭くなる。少なくとも実施形態によっては、テーパーは直線的であり、図示の三角形のテーパーといったものである。代替的に又は追加的に、延長部416は、曲げられたテーパー又は直線及び曲げられたテーパーの組み合わせを含むことができる。好ましくは、任意のテーパーを含む延長部416は、不平衡部402及び平衡部412の各横電界分布の間の遷移領域420の縦方向長に沿う横電界分布の遷移、若しくは形成を補助するだろう。線路404aの幅は、415でより幅広の線路414aへ推移する。同様に、404bは、415で幅414bへ推移する。そのような電界の推移により、不要反射の確率又はバラン400’に沿って伝播する電磁波の不整合を好適に減じることができる。
【0045】
実施形態によっては、不平衡部402の線路404a、404bの幅が、平衡部412の線路414a、414bの幅とは異なる。例えば、平衡部412の線路が、不平衡部の線路よりも幅広である。代替的に又は追加的に、線路間の離間距離も、不平衡及び平衡領域402、412間で異なる。幅、高さ、又は分離間隔、厚み及び誘電率といった物理パラメーターの選択は、特性インピーダンスといった各導波路の物性を制御するために調整可能である。例えば、不平衡部402のマイクロストリップ導波路の物理パラメーターは、約50オームの特性インピーダンスに選択可能である。同様に、平衡部420の平行板導波路の物理パラメーターは、約100オームの特性インピーダンスに選択可能である。好ましくは、不平衡部402及び平衡部412の特性インピーダンスは、任意の不要反射の確率、又はバラン400’に沿って伝播する電磁波の不整合を最小にするものである。
【0046】
不要反射は、反射率(例えば、入射波電圧に対する反射波電圧の比)又は一般的に電圧定常波比(VSWR)として知られる別のパラメーターといったパラメーターに応じて特徴づけ可能である。リターンロスとして知られる別の値は、例えば不要反射に起因するバランに沿うエネルギー伝送の非効率の指標として算出可能である。広帯域機器としては、バラン400’が、比較的広い範囲の動作周波数上において良好な特性(例えば、反射率、VSWR、リターンロス)を提示する。そのような良好な特性値が、約2:1よりも小さなVSWR、又は約−9.54dBよりも大きなリターンロスを含むかもしれない。実施形態によっては、広帯域が、その低周波数の少なくとも10倍の動作周波数範囲を含んでいても良い(すなわち、10:1)。少なくとも実施形態によっては、バラン400’は、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送として一般的に知られる動作の周波数帯の少なくとも1つ上において動作可能である。
【0047】
図8A乃至図8Cは、図7Aに開示の広帯域バラン400’の各断面を図示し、図7Aにおいて特定された様々なセクションでの例示の横電界を含む。図8Aに図示された不平衡部402のA−A’に沿う第1セクションは、同相線路404aから接地板406へ向かう電界を有する横電界分布を図示する。電界分布は、その構造の電磁界の境界条件を必要的に満足し、反対のポテンシャルを持つ鏡像の線が接地板の反対側に沿って位置するかのように有効に振る舞う。同様に、逆相線路404bから接地板406へ向かう電界を持つ横電界分布が、その構造の電磁界の境界条件を満足し、反対のポテンシャルを持つ鏡像の線が接地板の反対側に沿って位置するかのように有効に振る舞う。境界条件の充足を通じて獲得される対称性が同相及び逆相線路404a、404bの実際の構成に対応し、不平衡部の横電界分布が、等電位の面に沿って延びる接地板406に対して実質的に配列される。少なくとも実施形態によっては、不平衡及び平衡部402、412夫々においてサポートされた導波路モードは、準横電磁モード(準TEM)である。従って、縦方向の電界成分が、より支配的な横電磁モードよりも少ない程度だけ存在する。
【0048】
図8Bに開示されている遷移領域420のB−B’に沿う第2セクションが、線路404a、404b間に配された接地板延長部418を示す。y軸から最も隔てられた外側電界が、同相線路404aから実質的に連続に延在し、逆相線路404bにて終端する。各線路404a、404bからのy軸に近い内側電界が、接地板延長部418に交差し、それ故、それに沿って終端する。図8Cに図示された平衡領域412のC−C’に沿う第3セクションが、同相線路414a及び逆相線路414bにより形成された平行板導波路を開示する。電界が、実質的に連続に同相線路414aから延在し、逆相線路414b上で終端する。不平衡及び平衡部の電界分布は、接地板406の存在を除いて実質的に同一である。
【0049】
図9A及び9Bは、各々、広帯域バラン400”の別の実施形態のD−D’に沿う平面及び縦方向断面を図示する。バラン400”は、不平衡部422、遷移領域440及び平衡部432を含む。不平衡領域422は、上部及び下部平行接地板426a、426b間に形成されたコプラナーストリップ線路導波路を含む。本導波路は、同相導電線424a及びコプレナー、平行逆相導電線424bを含む。各線路424a、424bは、挿入された誘電体層428a、428b(一般化して428)により、上部及び下部隣接接地板426a、426bから離間されている。平衡領域432は、誘電体層428内に埋め込まれたコプレナー導波路を含む。コプレナー導波路は、同相導電線434a及び平行逆相導電線434bを含む。遷移領域440は、上部接地板426aの上部境界エッジ433a及び下部接地板426bの下部境界エッジ433bを含む。説明の例示においては、エッジ433a、433bは、導電線の組424a、424b、434a、434bに対して平行のそれらの間の中心に配列されたバラン400”の縦軸に対して実質的に垂直である。説明の例示においては、エッジ433a、433bは、実質的に配列されており、若しくは共通の横断面において重複している。
【0050】
少なくとも実施形態によっては、遷移領域440は、上部境界エッジ433aから離間して突出する上部延長部436a、及び下部境界エッジ433bから離間して突出する下部延長部436bも含む。説明上の例示では、延長部436a、436bが、平衡部432に向かって突出する。延長部436a、436bは、線路424a、424b、434a、434bを二分し、かつ縦軸を含む平面に対して概して対称である。繰り返すが、延長部436a、436bは、テーパーを含むことができ、例えば、境界エッジ433a、433bに近い端部において実質的により広く、終端点438a、438b側へ突出するに応じて狭くなる。少なくとも実施形態によっては、テーパーは直線的であり、図示の三角形のテーパーといったものである。代替的に又は追加的に、延長部436a、436bは、曲げられたテーパー又は直線及び曲げられたテーパーの組み合わせを含むことができる。好ましくは、任意のテーパーを含む延長部436a、436bは、不平衡部422及び平衡部432の各横電界分布の間の遷移領域440に沿う電界の遷移、若しくは形成を補助する。
【0051】
実施形態によっては、不平衡部422の線路424a、424bの幅が、平衡部432の線路434a、434bの幅とは異なる。例えば、平衡部432の線路が、不平衡部422の線路よりも幅広であり得る。異なる幅間の遷移は、ステップの不連続、図示された面取り435、又は任意の他の適当な輪郭を含むことができる。実施形態によっては、遷移は、多段の段差により達成可能である。
【0052】
代替的に又は追加的に、線路間の離間距離が、不平衡及び平衡領域422、432の間で相違し得る。幅、高さ、又は分離間隔、厚み及び誘電率といった物理パラメーターの選択は、特性インピーダンスといった各導波路の物理特性を制御するために調整可能である。例えば、不平衡部422のマイクロストリップ導波路の物理パラメーターは、約50オームの特性インピーダンスに選択可能である。同様に、平衡部432のコプレナー導波路の物理パラメーターは、典型的には約50オーム〜200オームの特性インピーダンスに選択可能である。好ましくは、不平衡部422及び平衡部432の特性インピーダンスは、不要反射の確率、又はバラン400”に沿って伝播する電磁波の不整合を最小にするべく選択される。
【0053】
図10A乃至図10Cは、図9Aに開示の広帯域バランの個別断面を図示し、図9Aで特定された様々なセクションにおける例示の横電界分布を含む。図10Aに図示された不平衡部422のA−A’に沿う第1セクションは、同相及び逆相線路424a、424b夫々から対向線路及び接地板426a、426bへ向かう電界を有する横電界分布を図示する。電界分布は、(図10Bに開示のように)準TEMの誘電体428(不図示)の上方及び下方を部分的に延在しても良く、反対のポテンシャルを持つ第1対称像コプラナー導波路が上部接地板426aの反対側に沿って位置し、反対のポテンシャルを持つ第2対称像コプラナー導波路が下部接地板426bの反対側に沿って位置するかのように有効に振る舞う。
【0054】
図10Bに開示の遷移領域440のB−B’に沿う第2セクションが、線路424a、424bの上及び下の各々に配置された上部及び下部接地板延長部436a、436bを示す。延長部436a、436bに沿って接地板が細くなることにより、減じられた程度のグランドの電磁界の境界条件に応じて電界が変化する。説明の例示における正味の影響は、各線路424a、424bの外側の電界を反対線に向けて(すなわち、y軸に向けて)効果的に曲げることである。図10Cに開示されている遷移領域432のC−C’に沿う第3セクションが、同相線路434a及び逆相線路434bにより形成されたコプレナー導波路を示す。電界が、同相線路434aから実質的に連続して延在し、逆相線路434b上で終端する。一連の断面により、テーパー付けされた延長部が、如何様に縦軸に沿う距離上を不平衡部422から平衡部432へ横電界を円滑に遷移させるのかを図示する。
【0055】
図11A及び11Bは、各々、広帯域バラン400'''の別の実施形態のD−D’に沿う平面及び縦方向断面を図示する。バラン400'''は、不平衡部442、遷移領域460及び平衡部452を含む。不平衡領域422は、上部及び下部平行接地板446a、446b間に形成された平行板ストリップ線路導波路を含む。本導波路は、同相導電線444a及び垂直に配置された平行逆相導電線444bを含む。各線路444a、444bは誘電体層448により、隣接接地板446a、446bから及びお互いに分離されている。平衡領域452は、誘電体層448内に埋め込まれた平行板導波路を含む。平行板導波路は、同相導電線454a及び平行逆相導電線454bを含む。遷移領域460は、上部接地板446aの上部境界エッジ453aと、下部接地板446bの下部境界エッジ453bを含む。説明上の例示において、そのエッジ453a、453bが、線路444a、444b、454a、454bの縦軸に対して実質的に垂直である。説明上の例示において、そのエッジ453a、453bが、共通の横断面において実質的に配列し、さもなければ重ね合わされている。
【0056】
少なくとも実施形態によっては、遷移領域460は、上部境界エッジ453aから離間して突出する上部延長部456a、及び下部境界エッジ453bから離間して突出する下部延長部456bも含む。説明上の例示では、延長部456a、456bが、不平衡部442に向かって突出する。延長部436a、436bは、線路444a、444b、454a、454bを二分し、縦軸を含む平面に対して概して対称である。繰り返すが、延長部456a、456bは、テーパーを含むことができ、例えば、境界エッジ453a、453bに近い端部において実質的により広く、終端点458a、458bへ突出するに応じて狭くなる。説明上の例示では、延長部は、接地板466a、466bの切欠き(notch)として設けられている。少なくとも実施形態によっては、テーパーが直線的であり、図示の三角形のテーパーといったものである。代替的に又は追加的に、延長部456a、456bは、曲げられたテーパー又は直線及び曲げられたテーパーの組み合わせを含むことができる。好ましくは、任意のテーパーを含む延長部456a、456bは、不平衡部442及び平衡部452の各横電界分布の間の遷移領域460に沿う電界分布の遷移、若しくは形成を補助する。
【0057】
広帯域バラン400'''は、更に、左側部分466a及び右側部分466bを含む分割中間アナログ接地板を含む。例示の実施形態においては、中間アナログ接地板の左及び右側部分466a、466bは、上部及び下部接地板446a、446b間でそれらから実質的に同一距離の同一面内に存在し、線路444a、444b、464a、464bを二分し、縦軸を含む平面の両側に沿って存在する。左側中間接地板466aは、個別の境界エッジ463aを含む。同様に、右側中間接地板466bは、個別の境界エッジ463bを含む。説明上の例示において、エッジ463a、463bは、実質的に共通の縦方向位置に配列されており、線路444a、444b、454a、454bの縦軸に対して実質的に垂直である。説明の例示においては、エッジ463a、463bが、上部及び下部接地板446a、446bの境界エッジ453a、453bを超えて平衡部452近くへ延在する。実施形態によっては、エッジ463a、463b、453a、453bは、共通縦方向位置で重複の態様で配列することができ、上部及び下部エッジ453a、453bは、中間エッジ463a、463bよりも平衡部452側へ更に延在することが考えられる。実施形態によっては、ビア469a及び469bが、中間エッジ463a、463bよりも平衡部452側へ更に延在することも考えられる。
【0058】
少なくとも実施形態によっては、中間接地板の左及び右側部分466a、466bが、不平衡部442の同相及び逆相線路444a、444bから十分に離間しており、不平衡領域442内において中間接地板に対する横電界の結合が実質的に無視できる。遷移領域においては、中間接地板の左及び右側部分466a、466bが、中間領域460の同相及び逆相線路464a、464bに対して相対的に近くなるように離間しており、中間接地板への横電界の少なくとも一部の結合がもたらされる。
【0059】
バラン400'''は、更に左及右側垂直アナロググランドスクリーン469a、469bを更に含む。そのような垂直グランドスクリーン469a、469bは、例えば、垂直に配列された導電性部材により提供することができる。説明的な実施形態においては、垂直導電性部材は、上部及び下部接地板446a、446b間で延在して電気的に相互接続する導電性(すなわち、貫通メッキ)ビアにより設けられる。少なくとも実施形態によっては、導電性ビアらは、中心軸に対向する左及び右側部分466a、466bのエッジ近傍に配置されている。「杭の囲い(picket fence)」といった配置の隣接ビア間の空間を制御可能であり、例えば、最小動作波長の1/4よりも小さなビア間の最大離間距離を有する。好ましくは、隣接するビア間の離間距離は、最小動作波長の約1/10を超えない。
【0060】
実施形態によっては、不平衡部442の線路444a、444bの幅は、平衡部452の線路454a、454bの幅と同一である。他の実施形態においては、図示のように、幅が異なる。例えば、平衡部452の線路は、不平衡部442の線路よりも狭く又は(図示のように)広くすることができる。代替的に又は追加的に、線路444a‐444b、454a‐454b間の離間距離は、不平衡及び平衡領域442、452間で異なる又は(図示のように)同一とすることができる。幅、高さ、又は分離間隔、厚み及び誘電率といった物理パラメーターの選択は、特性インピーダンスといった各導波路の物理特性を制御するために選択可能である。例えば、不平衡部442の平行板ストリップ線路導波路の物理パラメーターは、典型的には約50オーム〜100オームの特性インピーダンスに選択可能である。同様に、平衡部452の埋め込み平行板導波路の物理パラメーターは、例えば、約50オーム〜100オームの好適な特性インピーダンスに選択可能である。好ましくは、不平衡部442及び平衡部452の特性インピーダンスは、不要反射の確率、又はバラン400'''に沿って伝播する電磁波の不整合を最小にするべく選択される。
【0061】
本明細書に開示の実施形態によっては、幅が異なる線路間の遷移は、段差又は傾斜の態様で達成し得る(例えば、ある幅から次への矩形の遷移)。代替的に又は追加的に、異なる幅間の遷移は、急峻な態様を少なくして達成することができ、例えば、本明細書に開示の例のようにテーパー又は面取りを有する。テーパーは直線、曲げ、又は直線及び曲げの適当な組み合わせであり得る。加えて、幅が相対的に相当に異なる実施形態においては、遷移は、一連の段階に亘って生じる多段の遷移により実行可能である。例えば、例示の実施形態においては、遷移領域460に中間線路464a、464bが設けられ、不平衡部線路444a、444b及び平衡部線路454a、454bの幅の間の幅を有する。
【0062】
図12A乃至図12Fは、図11Aに開示の広帯域バランの個別断面を図示し、図11Aで特定された様々なセクションにおける例示の横電界を含む。図12Aに開示の不平衡部422のA−A’に沿う第1セクションは、同相及び逆相線路444a、444bから対向線路及び上部及び下部接地板466a、466bに向かって指向された電界を含む横電界分布を図示する。電界分布は、構造の境界条件を満足し、反対のポテンシャルを持つ第1対称画像平行板導波路が上部接地板466aの反対側に沿って位置するかのように、及び反対のポテンシャルを持つ第2対称画像平行板導波路が下部接地板466bの反対側に沿って位置するか(すなわち、鏡像)のように有効に振る舞う。
【0063】
図12Bに開示の遷移領域460のB−B’に沿う第2セクションが、線路444a、444bの上及び下に夫々配置された上部及び下部接地板延長部446a、446bを示す。延長部456a、456bに沿う接地板446a、446bの各々の中心開口が、変更されたグランドの電磁境界条件に従って電界を変更する。説明の例示における正味の結果は、各線路444a、444bのy軸に近い上部及び下部電界を外側(即ち、y軸から離れる方向)へ効果的に曲げることである。この配置により、垂直(すなわち、y軸方向)から水平(すなわち、x軸方向)へ隣接する接地板延長部446a、446b間及び線路間の電界の再形成が開始する。
【0064】
図12Cに開示の平衡領域452のC−C’に沿う第3セクションは、接地板446a、446b夫々の増大する中心開口が、延長部456a、456bに沿って更に変化し、さもなければ変更されたグランド446a、446bの電磁境界条件に従って横電界を形成することを示す。説明の例示における正味の影響は、上部及び下部電界をy軸から更に離間させるべく効果的に曲げることである。加えて、中間接地板の左及び右側部分466a、466b及び対応する垂直グランドスクリーン469が、遷移領域460の同相及び逆相線路464a、464bに相対的に近くに配置される。近傍は、横電界分布の少なくとも一部が構造の境界条件を満足するものであり、反対のポテンシャルを持つ第1対称画像平行板導波路が左及び右垂直グランドスクリーン469a、469bの反対側に沿って位置するかのように効果的に振る舞う。結果としては、これらの電界が、垂直(すなわち、y軸方向)から水平(すなわち、x軸方向)へ、線路を二分すると共に縦軸を含む平面から更に離間するべく整形(形づけ)される。
【0065】
図12Dに開示の平衡領域452のD−D’に沿う第4セクションは、接地板446a、446b夫々の更に増大する中心開口が、幅広になる延長部に沿って更に変化し、さもなければ変更されたグランド446a、446bの電磁境界条件に従って横電界を形成することを示す。中間接地板の左及び右側部分466a、466bが、遷移領域460の同相及び逆相線路464a、464bに相対的に近くに居続け、ここで、対応する垂直グランドスクリーン469a、469bが線路464a、464bからより離れるように移動する。その近接は、横電界分布の少なくとも一部が、構造の境界条件を満足するようなものであり、反対のポテンシャルを持つ第1対称画像平行板導波路が左及び右垂直グランドスクリーン469a、469bの反対側に沿って位置するかのように効果的に振る舞う。結果としては、これらの電界が、垂直(すなわち、y軸方向)から水平(すなわち、x軸方向)へ、線路を二分すると共に縦軸を含む平面から更に離間するべく更に整形(形づけ)される。
【0066】
図12Eに開示の平衡領域452のE−E’に沿う第5セクションは、上部及び下部接地板446a、446bが除かれた(例えば、境界エッジ453及び平衡部452の間で縦方向に配置された)埋め込み平行板導波路を開示する。再び繰り返すが、等電位の平面に沿って設けられた中間接地板の左及び右側部分466a、466bを有する変更されたグランドの電磁境界条件に従って横電界が適合する。横電界は、上部及び下部接地板446a、446b、中間接地板の左及び右側部分466a、466b、及び左及び右側垂直グランドスクリーン469a、469bの1以上の境界条件を課すことにより、平行板ストリップ線路導波路の不平衡領域分布から埋め込み平行板導波路の平衡領域分布へと強いられ、若しくは調整される。
【0067】
図12Fに開示の平衡領域452のF−F’に沿う第6セクションは、同相線路454a及び逆相線路454bにより形成された埋め込み平行板導波路を開示する。電界は、同相線路454aから実質的に連続して延在し、逆相線路454b上で終端する。一連の断面により、テーパー付られた延長部が如何様に不平衡部442から平衡部452へ円滑に横電界を遷移させるのかを示す。
【0068】
図13は、連続構成で相互接続され、若しくは広帯域バランチョーク500と呼ばれる2つの広帯域バラン510a、510bを含むバラン回路の実施形態の平面図を図示する。より詳細には、第1バラン510aは、バラン510aの不平衡端部に設けられた差動信号ポート530aを含む。同様に、第2バラン510bは、バラン510bの不平衡端部に設けられた差動信号ポート530bを含む。アナロググランド506は、隣接するバラン510a、510bの平衡部の近傍の開口514を含む。各バラン510a、510bは、共通の縦軸に沿って配置されており、各々の平衡端部が対向して配置される。平衡端部が結合し、さもなければ隣接し、一方の差動信号ポート530a、530bから他方530b、530aへの信号伝播が許容される。バラン510a、510bは、本明細書に開示のものの如く任意の好適な広帯域バランである。少なくとも実施形態によっては、バラン510a、510bは、共通の構成を持つ。
【0069】
図14は、差動フィルター585に結合した広帯域バラン560を含む別のバラン回路550の実施形態の平面図を図示する。端的には、広帯域バラン560は、バラン560の不平衡部562の一端に配置した差動信号ポート580を含む。差動信号ポート580への相互接続のための差動回路素子の配置領域575も示されている。差動回路は、差動信号源(例えば、ドライバ)又はシンク(例えば、受信器)である。バラン560は、本明細書に開示の技術に従って、平衡部572及び遷移領域を含む。アナロググランド556は、平衡部572の周囲に設けられた開口564、及び少なくともフィルター585の平衡端部を含む。差動信号は、バラン560の一端に接続し、例えば、不平衡部562に接続し、他端(例えば、平衡部572)に向かって伝播する。
【0070】
差動フィルター585は、任意の適当なフィルターで良く、例えば1以上の誘導、容量及び抵抗素子を含む。少なくとも実施形態によっては、フィルターは、平衡部572の同相及び逆相線路に対して高度の対称性を包含する。そのような構成は、例えば、平衡部572の2つの線路間で対称に相互接続された共有の容量素子を含むかもしれない。フィルターは、周知のフィルター設計及び/又は合成方法に応じて設計可能であり、ローパス、ハイパス及びバンドパスといった任意の所望の減衰プロファイルを有することができる。少なくとも実施形態によっては、フィルターは、2つの直列容量素子を含み、各々が、平衡部572の各線路に対して電気的に接続し、直流(DC)信号に対して障壁を提供する。少なくとも実施形態によっては、フィルターは、平衡部572の平衡特性を更に維持するようにシールド(遮蔽/保護)されていない。
【0071】
実施形態によっては、フィルター出力が、依然として平衡であり、差動信号ではなくシングルエンド信号の搬送のために構成された別の不平衡部595との間で遷移可能である。バラン590は、本明細書に開示の任意のバラン技術、又はより一般的には任意の適当な従来のバランにより提供可能である。平衡信号の帯域幅を制限するフィルター用途においては、バランは、相対的に狭バンドのバランであっても良い。
【0072】
図15は、差動ドライバ回路602及び広帯域バラン604を含む集積回路600の実施形態の概略図を示す。差動ドライバ回路は、バラン604に差動信号の入力を提供する。差動信号は、同相信号入力及び逆相信号入力を含み、各々の信号入力は、アナロググランドに対する他方の鏡像を表現する。従って、正弦波信号としては、同相信号入力上の正の信号の増加が、逆相信号入力上の不の信号の減少に対応するだろう。差動信号入力の一方の強度及び方向を持つ電流が、他方の差動信号入力の等しい強度及び反対の方向を持つ電流に対応する。
【0073】
バラン604は、本明細書に開示の技術により構成された超広帯域バランであっても良い。実施形態によっては、バラン604の平衡出力が、例えば、差動フィルター606によりフィルターされる。代替的に又は追加的に、集積回路は、減衰器608又は他の適当な装置を含み、ドライバ回路602及びバラン604間の任意の不整合の有害な影響を減じる。例示の実施形態にて差動ドライバ回路602を有する集積回路を記述したが、差動レシーバ回路を持つ同様の回路を構成可能であることが予見される。差動レシーバ回路においては、バラン604から差動受信器に向かって信号が伝播する。
【0074】
図16は、集積回路650の別の実施形態の概略図を図示し、差動ドライバ652、広帯域バランチョーク654、及び差動レシーバ656を含む。差動ドライバ回路652は、広帯域チョーク654へ差動信号入力を提供する。差動信号は、差動信号に寄与しない望まない偶数モード電流と共に所望の奇数モード電流(すなわち、同相及び逆相電流)を含む。チョーク654は、一般的にコモンモード干渉と呼ばれる不要偶数モード信号を抑制、若しくは除去するべく構成される。
【0075】
少なくとも実施形態によっては、チョーク654は、連続構成で配置され、図13に開示の配置のように各々の平衡部で一つに結合した2つのバランを含む。バランの各々は、本明細書に開示の技術に従って構成された超広帯域バランであるかもしれない。少なくとも実施形態によっては、集積回路650も、チョーク654により除去された不要なコモンモード干渉無く差動信号を受信する差動レシーバ回路656も含む。代替的に又は追加的に、集積回路は、減衰器658(鎖線)又は他の適当な装置を含み、ドライバ回路652及びバラン654間の任意の不整合の有害な影響を減じる。
【0076】
図17は、不平衡及び平衡伝送線路間で差動信号を結合するプロセスの実施形態のフローチャート700を図示する。端的には、本工程により、少なくとも1つのアナロググランド基準を持つ不平衡差動伝送線路とそのようなアナロググランド基準を有しない平衡差動伝送線路の間の電磁エネルギーの搬送を効率的に結合できる。ステップ710において、電磁的エネルギーが不平衡及び平衡差動伝送線路の一方からまず受信する。横断電磁(TEM)又は準TEM波の態様にて電磁エネルギーを受信する。受信したTEM波が、縦方向の中心線に関して対称な第1横電界分布を有する。ステップ720において、受信した電磁エネルギーが不平衡及び平衡差動伝送線路の他方へ伝播される。伝播したTEM波は、縦方向中心線に関して対称の第2横電界分布を有する。
【0077】
ステップ730において、電界分布は、不平衡及び平衡差動伝送線路間の遷移領域に沿って対称に再構成される。第1及び第2電磁界分布が、各々の不平衡及び平衡伝送線路の構成の配置及び電磁境界条件としてのそれらの横電界上の影響により生じる。この再構成において、第1電磁界分布が、好ましくは、緩慢な態様に縦方向中心線に沿って調整されて第2電磁界分布へ適合する。好ましくは、再構成により、相対的に広い動作帯域幅上で電磁エネルギーの反射が減じられる。例えば、動作帯域幅は、少なくとも10:1である。少なくとも実施形態によっては、動作帯域幅が、センチメーター未満の波長を含む。代替的に又は追加的に、動作帯域幅が、ミリメーター未満の波長を含む。
【0078】
SiGe実施例:第1実施例においては、バランの実施の集積回路は、差動マイクロストリップ不平衡部及び平行‐導体平衡部を含む。IBM SiGe−7hpプロセスを考慮すれば、5つの金属層が入手可能であり、各々が、近傍の層から誘電率(εr)が約3.1、及び約1.2μmの距離(HU)の材料、及びバランの遷移領域のグランドされた基板の実質的な終端のためのディープトレンチ絶縁により分離されている。マイクロストリップ導波路の特性インピーダンスZOは、H.A.Wheelerにより発展され、“マイクロ波技術者のハンドブック、第1巻”、T.Saad著、1971年編、p.137の開示といった周知技術により計算することができる。Saadの参考文献は、マイクロストリップの特性インピーダンス対その幅−高さ比に応じたパラメーター曲線の一連を含む。端的には、これらの曲線は、ワイドストリップ近似と呼ばれる0.1(w/h>0.1)よりも大きな比率で提供される。Saadによれば、約2.4の幅−高さ比が、約3μmの幅(WU)を要求する50オームのZ0に要求される。従って、IBM SiGe−7hpプロセスに従った半導体を構成し、(例えば、図2Aに開示されたものと類似する)不平衡部において「上方‐下方(オーバー‐アンダー)」配置を有する広帯域バランの実施形態においては、各々の同相及び逆相線路の幅(WU)が、約3μmであり、各々の同相及び逆相マイクロストリップ導波路にとって、設計特性インピーダンスZOU=50オームである。
【0079】
接地板層の除去により平衡部を形成することができ、(例えば、図2Bに開示のものに類似する)平行板導波路構成が生じる。接地板の除去により平衡部の同相及び逆相線路(HB)の離間距離が約3.25μmになる。これは、層間の離間距離の2倍(すなわち、2×1.2μm)に対して除去された金属層の厚み(すなわち、約0.85μm)を加えたものに相当する。
【0080】
平行板導波路の線幅(w)、分離距離(h)及び特性インピーダンス(Z0)間の近似の関係が、Z0=377/(εr)*(h/w)により算出され、これは、“マイクロ波エンジニアリング及び用途、”O.P.Gandhi著、1981年、p.53にて議論されている。この関係は、周辺の容量を無視した特性インピーダンス(例えば、100オーム)の設計のための線路の幅(WB)の近似の推測に用いることができる。従って、100オームの特性インピーダンスのために、かつ、3.25μmの分離間隔(HB)とすると、平衡上方‐下方構成の同相及び逆相線路の幅(WB)が約7μmである。
【0081】
3μmの線路幅(WU)の不平衡部から7μmの線幅(WB)の平衡部への遷移は、不連続な段差として構成可能である。これに代えて、そのような遷移は、周知の技術を活用して達成することができ、そのようなサイズ差に伴う余剰なリアクタンスを補償することができる。少なくとも1つの方法によれば、不連続の箇所にて線状の面取り(テーパー)を設ける。例えば、45度のリニアテーパーを遷移領域に設けることができる。テーパー長は、段差比、誘電率値、及び基板厚みに依存する。K.C.Gupta等に開示のように、3つのそのような幅変化は、リニアテーパー、曲げられたテーパー、及び部分的なリニアテーパーを含む。状況によっては、テーパーは不要であるかもしれない。
【0082】
本明細書に開示の同相及び逆相線路及び接地板のどれも電気的に導電性の材料から作製することができる。導電性材料は、銀、銅、金、アルミニウム、及びスズといった金属;黄銅、青銅といった金属合金;グラファイトといったセミメタル導体;及びそのような材料の組み合わせを含む。
【0083】
本明細書に開示の誘電体層のどれもが、空気、磁気(セラミックス)、マイカ、ガラス、プラスチック、及び様々な金属の酸化物といった、静電界の効率的な保持体でもある絶縁性材料から作製することができる。
【0084】
本明細書に開示のバラン及びバラン回路のどれも、1以上の誘電又は絶縁層により保持された1以上の導電層を有するプリント回路基板(PCB)アセンブリとして作製可能である。PCBの導電層は、典型的には、薄く導電性の箔、例えば、銅から成る。誘電又は絶縁層は、エポキシ樹脂と一緒にラミネート可能である。誘電体は、回路の要求に依存して、異なる絶縁値を提供するべく選択される。これらの誘電体の幾つかは、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、テフロン(登録商標))、FR−4、FR−1、CEM−1又はCEM−3である。PCB分野において用いられる他の材料は、FR−2(フェノールコットンペーパー)、FR−3(コットンペーパー及びエポキシ)、FR−4(ガラス織布及びエポキシ)、FR−5(ガラス織布及びエポキシ)、FR−6(艶消しガラス(Matte glass)及びポリエステル)、G−10(ガラス織布及びエポキシ)、CEM−1(コットンペーパー及びエポキシ)、CEM−2(コットンペーパー及びエポキシ)、CEM−3(ガラス織布及びエポキシ)、CEM−4(ガラス織布及びエポキシ)、CEM−5(ガラス織布及びポリエステル)である。
【0085】
本明細書に開示のバラン及びバラン回路のいずれも、お互いに1以上の絶縁層により分離された1以上の導電層(例えば、線路及び接地板)を有する集積回路として作製可能である。そのようなバラン回路は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム‐ヒ素(GaAs)といったIII−V材料、そのような半導体の組み合わせの半導体基板上に形成可能である。実施形態によっては、バラン回路は、モノリシックな集積回路として構成可能である。代替的に、バラン回路は、マルチチップアセンブリとして構成可能である。
【0086】
備える、含む、及び/又は個々の複数形は、非限定的なものであり、列挙された要素を含み、また、不列挙の追加要素を含むことができる。及び/又も非限定なものであり、列挙された要素の1以上、また列挙された要素の組み合わせを含む。
【0087】
当業者は、本願発明を理解し、その精神又はその本質的特徴を逸脱することなく、他の特定の形態にて具現化されるかもしれない。上述の実施形態は、従って、本明細書に開示の本発明を限定するというよりは全ての点において例示であると考えるべきである。本発明の技術的範囲は、従って、上述の記述よりは添付請求項により示唆され、請求項と同等の意味及び範囲内における全ての変更は、よって、ここに包含される。
【技術分野】
【0001】
マイクロ波及びRF回路及び同種の分野、より端的にはそのような回路で使用されるバランに概して関連する様々な実施形態を本明細書に開示する。
【背景技術】
【0002】
差動伝送線路上の信号伝送により外部漂遊電界に起因するノイズ影響又は干渉が低減される。外部信号源はいずれも伝送線路上に同相モード信号のみ誘起する傾向にあり、グランドに平衡化されたインピーダンスにより漂遊電界に起因する差動ピックアップが最小化される。差動伝送線路により差動レシーバが同相モード干渉を阻止して接続上のノイズを低減する。伝送線路は、グランドに対して同一のインピーダンスを有し、干渉場又は電流により両方の配線に同一の電圧が誘起される。しかしながら、そのような差動信号用平衡回路は、一般的に低周波数で適用されてきた。
【0003】
バランと呼ばれる回路素子は、不平衡伝送線路の入力を1以上の平衡伝送線路の出力へ変換し、又はこの逆のために汎用されている。低周波数帯で動作するバランは、一般的に、トランスといった集中定数素子から成る。そのような低周波数バランは、高いパフォーマンス及び非常に広い帯域幅を達成するためにフェライト及び空気コイル変換器技術を活用することが多い。
【0004】
しかしながら、電子技術の傾向としては、一般的に、更なる動作周波数及び帯域幅の増大に向かっている。従って、バランは、高周波及び/又は広帯域動作の要望が多い高難易度の多様な用途において採用されている。例えば、バランは、デルタ‐シグマ変調ダイレクトデジタル合成器、デジタル‐アナログ変換器(DAC)、アナログ‐デジタル変換器(ADC)、差動デジタルシグナリング、RFミキサー、SAWフィルター、及びアンテナフィードの出力段に組み込まれる。このような用途では、差動入力から同相エネルギーを拒否可能又は同相エネルギーが欠いた差動出力を供給可能であり、集積回路に適合可能である小型な広い帯域幅(広帯域)のバランが要望される。
【0005】
ラジオ波周波数(例えば、マイクロ波)及びこれよりも高周波においては、フェライト及び空気コイル変換器を備える広帯域バランを作製することが増々困難であり、他の技術が必要とされている。そのような高周波帯で動作するバランは、一般的に分布定数素子から成る。各々が分布定数素子から成るこれらのバランの多くは1/4波長整合素子を含む、又は使用可能波長に応じて決定されたサイズのトランスであるため、それらの周波数帯が根本的に狭いという欠点がある。更に、そのような高周波信号(例えば、RF、マイクロ波、ミリ波)は、一般的に、平衡差動信号というよりはシングルエンド及び不平衡逆相信号に依拠する。より明確に述べれば、信号がグランド基準により駆動される。そのようなシングルエンド信号は、(外側導線がグランドされている同軸ケーブルといった高周波数伝送線路を考慮すれば)電磁干渉の制御においては有効であるかもしれない。不幸にも、そのような構造は、グランドから必然的に隔離される平衡差動信号の伝送には上手く適合しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
超広帯域動作をサポートするバラン構造を使用して、不平衡伝送線路及び平衡伝送線路間で差動信号を結合するためのシステム及び技術の実施形態を本明細書に開示する。少なくとも実施形態によっては、その結合が、マイクロ波及びミリ波動作帯の少なくとも1つのために達成される。
【0007】
第1の観点においては、本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態が、不平衡伝送線路部、平衡伝送線路部、及び不平衡伝送線路部と平衡伝送線路部の間に設けられた遷移領域を含む広帯域バランを開示する。不平衡伝送線路部は、縦軸に沿って延在する第1同相線路、第1線路に平行に延在する第1逆相線路、及び第1同相及び逆相線路夫々に対して平行で、電磁的に結合し、そして物理的に離間した少なくとも1つの接地板を含む。平衡伝送線路部は、第2同相線路及び第2逆相線路を含む。第2同相線路は、第1同相線路に電気的に接続し、第2逆相線路は、第1逆相線路に電気的に接続する。更に、第2同相及び逆相線路夫々が、対応の個別の第1同相及び逆相線路に対して縦に平行(平面:Broadside)であり、また、少なくとも1つの接地板に対して実質的に結合していない。
【0008】
実施形態によっては、少なくとも1つの接地板が、第1同相線路及び第1逆相線路の間に設けられる。結果として、同相及び逆相線路夫々が、少なくとも1つの接地板の隣接する側面と共に個別のマイクロストリップ導波路を構成する。より一般的には、不平衡伝送線路部が、マイクロストリップ導波路;コプラナーストリップ線路;平行板ストリップ線路;有限グランドコプラナー導波路(FGCPW);コプラナー導波路;コプラナーストリップ線路;非対称ストリップ線路;及びスロット線路の内の一つであっても良い。少なくとも実施形態によっては、不平衡及び平衡伝送線路は、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送の少なくとも1つを実行可能である。
【0009】
実施形態によっては、マイクロストリップ伝送線路夫々が、個別の第1特性インピーダンスを有し、これらの特性インピーダンスが実質的に等しい。加えて、平衡伝送線路部が、第1特性インピーダンスのいずれかの約2倍の第2特性インピーダンスを有する。
【0010】
遷移領域は、不平衡及び平衡伝送線路部間で少なくとも1つの個々の接地板の境界を規定する個別の末端エッジを含む。接地板エッジ変動も設定されており、個別の末端エッジから寸法される所定長だけ縦軸に沿って延在する。加えて、不平衡、平衡及び遷移領域の夫々の個別断面が、縦軸に関して実質的に対称である。実施形態によっては、接地板エッジ変動が、不平衡伝送線路部から離間するべく延在すると共に平衡伝送線路部側へ向けられた狭端を有する接地板のテーパー延長部を規定する。
【0011】
実施形態によっては、不平衡伝送線路部、平衡伝送線路部及び遷移領域の夫々が、一つの集積回路に組み込まれる。集積回路は、例えば、Si;Ge;III−V半導体;GaAs及びSiGe;及びこれらの組み合わせから成る群から選択される任意の適切な集積回路装置技術によって構成される。
【0012】
実施形態によっては、バランは、差動フィルターに結合され、若しくはこれを含むように改造可能である。例えば、そのような差動フィルターを遷移領域とは逆側の平衡伝送線路部の端部に結合しても良い。
【0013】
代替的又は追加的に、バランは、相似構成の第2広帯域バランに結合し、若しくはこれを含むように改造可能である。そのように構成されるとき、バランは、各々の平衡伝送線路部において連続態様にて一体的に結合する。
【0014】
別の観点においては、本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態は、不平衡差動伝送線路と平衡差動伝送線路との間で差動信号を効率的に結合する方法に関する。端的には、不平衡差動伝送線路は、少なくとも1つのアナロググランド基準を有する;他方、平衡差動伝送線路は、そのようなアナロググランド基準を有しない。本方法は、不平衡及び平衡差動伝送線路の一方から伝播する横電磁(TEM)波の電磁エネルギーを受信するステップを含む。TEM波が、縦方向の中心線に関して対称の第1横電界分布を有する。受信した電磁エネルギーは、不平衡及び平衡差動伝送線路の他方に対して伝送される(すなわち、不平衡から平衡、又は平衡から不平衡)。TEM波は、同様に、第2横電界分布を有し、これも縦方向の中心線に関して対称である。本方法は、更に、第1電磁界分布を第2電磁界分布へ対称に再構成することを含む。そのような対称の再構成は、不平衡及び平衡差動伝送線路間の遷移領域に沿って達成される。この再構成により、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送の少なくとも1つを含む電磁エネルギーにとって、少なくとも約10:1の帯域幅上で電磁エネルギーの反射が最小化される。
【0015】
縦方向の中心線に沿って徐々に対称に再構成しても良い。実施形態によっては、対称に再構成することが、遷移領域に沿う少なくとも1つのアナロググランドとTEM波の相互作用の態様で実行される。例えば、少なくとも1つのアナロググランド基準の縦方向のテーパーの態様にて横電界分布を形づけることにより対称に再構成することを達成可能である。
【0016】
更に別の観点においては、本明細書に開示の少なくとも1つの実施形態は、不平衡伝送線路部、平衡伝送線路部、及び不平衡及び平衡伝送線路部の間に設けられた遷移領域を含む広帯域バランを提供する。広帯域バランは、不平衡差動伝送線路及び平衡差動伝送線路の一方から伝播する横電磁(TEM)又は準TEM波の電磁エネルギーを受信する手段を含む。TEM波は、第1横電界分布を有し、これは、縦方向の中心線に関して対称である。バランは、不平衡差動伝送線路及び平衡差動伝送線路の他方へ受信した電磁エネルギーを伝送する手段も含む。TEM波は、第2横電界分布を有し、これも縦方向の中心線に関して対称である。ここで更には、バランは、第2電磁界分布に適合するように第1電磁界分布を対称に再構成する手段を含む。再構成手段が、不平衡及び平衡差動伝送線路間の遷移領域に沿って配置されている。再構成手段は、少なくとも約10:1の帯域幅上で電磁エネルギーの反射を最小化する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
異図に亘り同一参照符号により同一要素が示された添付図面に開示されているように、後述の本発明の好適な実施形態のより端的な開示により、本発明の上述及び他の目的、特徴及び効果が明らかになるだろう。図面は、必ずしもスケールされたものではなく、むしろ本発明の原理を提示することに重きが置かれている。
【図1】図1は、広帯域バランの実施形態の概略図を図示する。
【図2】図2A及び図2Bは、図1に示す広帯域バランの不平衡部及び平衡部の一例の断面を個別に図示する。
【図3】図3A及び図3Bは、図1に示す広帯域バランの不平衡部及び平衡部の別例の断面を個別に図示する。
【図4】図4A及び図4Bは、図1に示す広帯域バランの不平衡部及び平衡部の別例の断面を個別に図示する。
【図5】図5は、対向配置のマイクロストリップ導波路を含む不平衡部を備える広帯域バランの例の平面図を図示する。
【図6】図6A乃至図6Fは、個別セクションでの例示の電界分布を含む図5に示された広帯域バランの各断面図を図示する。
【図7】図7A及び図7Bは、広帯域バランの実施形態の平面及び縦方向断面を個別に図示する。
【図8】図8A乃至図8Cは、図7Aに開示の広帯域バランの各断面を図示し、図7Aに特定された様々なセクションにおける例示の電界分布を含む。
【図9】図9A及び9Bは、広帯域バランの別の実施形態の平面及び縦方向断面を個別に図示する。
【図10】図10A乃至図10Cは、図9Aに開示の広帯域バランの個別断面を図示し、図9Aで特定された様々なセクションにおける例示の電界分布を含む。
【図11】図11A及び11Bは、広帯域バランの更なる別の実施形態の平面及び縦方向断面を個別に図示する。
【図12】図12A乃至図12Fは、図11Aに開示の広帯域バランの個別断面を図示し、図11Aで特定された様々なセクションにおける例示の電界分布を含む。
【図13】図13は、連続に相互接続された、若しくは広帯域バランチョーク(choke)と呼ばれる2つの広帯域バランの実施形態の平面図を図示する。
【図14】図14は、差動フィルターを含む広帯域バラン回路の実施形態の平面図を図示する。
【図15】図15は、差動ドライバ及び広帯域バランを含む集積回路の実施形態の概略図を図示する。
【図16】図16は、差動ドライバ、広帯域バランチョーク、及び作動レシーバを含む集積回路の別の実施形態の概略図を図示する。
【図17】図17は、不平衡及び平衡伝送線路間で差動信号を結合するためのプロセスのフローチャートを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本質的な広い帯域幅上で差動信号を伝送することに適合した不平衡及び平衡構造を相互接続するシステム及びプロセスの実施形態の記述を次に述べる。より端的には、任意の特定周波数において共振する要素を持たない進行波構造は、中央縦軸に沿って配置され、差動信号の伝送を共同してサポートするべく構成された同相及び逆相導電線路を有する。進行波構造は、平行板導波路、コプレナー導波路、マイクロストリップ導波路、及び平行板及びコプレナーストリップ線路導波路を含む差動ストリップ線路導波路として構成される伝送線路、若しくは導波路部を含むことができる。この構造は、バランと呼ばれ、双方向(例えば、不平衡から平衡、及び平衡から不平衡)の差動信号の効率的伝送を許容し、最小の反射又は信号完全性の他の劣化を伴う。
【0019】
バランは、グランドと以下に概して述べるアナログ又はデジタルグランドを少なくとも1つ有する不平衡部を含む。グランドは、同相又は逆相線路のどちらからも物理的に隔離されている(すなわち、直流経路がない)。非ゼロ周波数においては、しかしながら、線路及びグランドが共に差動信号線路に沿って同相モード信号をサポートする。そのような同相モード信号は、時折、偶数モード信号と呼ばれる。平衡部において、少なくとも1つのアナロググランドが実質的に除かれ、若しくは差動信号線路から隔離される。遷移領域において、グランド有りからグランド無しの遷移が生じる。結果として、各線路と少なくとも1つのアナロググランド間で測定される実効的な同相インピーダンスが開(オープン)回路(すなわち、無限インピーダンス)に近づき、同相モード信号は、平衡部に沿ってもはやサポートされない。しかしながら、それらの差動信号線路は、差動モード伝播をサポート可能なままである。そのような同相モード信号が無い差動モード信号が平衡構成を象徴する。
【0020】
広帯域の差動信号バラン100の実施形態の概略図を図1に示す。バラン100は、同相信号線路104a、逆相信号線路104b、及び少なくとも1つのアナロググランド106を有する不平衡部102を含む。同相線路104a、逆相線路104b及び少なくとも1つのグランド106は、共同で少なくとも1つの伝播導波路モードをサポートするべく構成されている。例えば、第1導波路は、同相線路104a及びアナロググランド106を含んでも良く、第1特性インピーダンスZOU1を有する。同様に、第2導波路が、逆相線路104b及びアナロググランド106を含んでいても良く、第2特性インピーダンスZOU2を有する。少なくとも実施形態によっては、第1及び第2特性インピーダンスが実質的に同一である:すなわち、ZOU1=ZOU2=ZOU。
【0021】
不平衡部102は、同相又は逆相線路104a、104bのいずれかを流れる電流がアナロググランド106と相互作用する点において少なくとも不平衡と考えることができる。そのため、不平衡部102は、お互いに対して個別の奇数モードインピーダンスを有する同相及び逆相線路104a、104bを流れる差動モードと呼ばれることもある逆方向の電流(すなわち、Io+、Io-)をサポート可能である。加えて、不平衡部102は、アナロググランド106との関係において偶数モードインピーダンスを有する同相及び逆相線路104a、104bを流れる同相と呼ばれることもある同方向(co−aligned)の電流(すなわち、Ie+、Ie-)をサポート可能である。
【0022】
バラン100は、同相信号線路114a及び逆相信号線路114bを有するがアナロググランド基準を含まない平衡部 112も含む。同相線路114a及び逆相線路114bは、平衡伝播導波路モードをサポート可能な平衡導波路として配置される。平衡導波路は、各々特性インピーダンスZOBを有する線路114a、114bにより形成される。同相信号線路114aは、不平衡部102の同相線路104aと電気的に接続している。同様に、逆相信号線路114bは、不平衡部102の逆相線路104bと電気的に接続している。この構造は、同相及び逆相線路104a、104bを流れる各電流が実質的に等しくかつ反対である(すなわち、Io+、Io-)点において少なくとも平衡であると考えることができる。アナロググランド106に対して偶数モードインピーダンスを有する同相及び逆相線路104a、104bに同方向の電流(すなわち、Ie+、Ie-)が流れる。
【0023】
バラン100は、同相信号線路124a及び逆相信号線路124bを有する遷移領域120も含む。同相線路124a及び逆相線路124bは、伝播導波路モードをサポート可能な導波路として配置される。同相信号線路124aは、不平衡部102の同相線路104aと平衡部112の同相線路114aとの間で電気的に接続されている。同様に、逆相信号線路124bは、不平衡部102の同相線路104bと平衡部112の同相線路114bとの間で電気的に接続されている。遷移領域120は、不平衡部102のアナロググランド106に電気的に接続されている部分的なアナロググランド126も含む。
【0024】
次に図2Aを参照すると、広帯域バラン100の不平衡部202の一例の断面が図示されている。不平衡部202は、同相線路204a、逆相線路204b及びアナロググランド206を含む。本例では、アナロググランド206が接地板206として設けられている。上部誘電体層208aがアナログ接地板206の上面に接し、下部誘電体層208bが接地板206の底面に接する。同相線路204aは、アナログ接地板206の上面とは反対側の上部誘電体層208aの上面に沿って延在する。逆相線路204bは、アナログ接地板206の底面とは反対側の下部誘電体層208bの底面に沿って延在する。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路204a、204bは、断面において実質的に均等であり、中央縦軸に平行に延在する。
【0025】
広帯域バラン100の平衡部212の例の断面を図2Bに示す。端的には、平衡部212は、図2Aに示すように不平衡部202を有するバランに対応する。平衡部212は、同相線路214a及び逆相線路214bを含む。平面(プラナー)誘電体層208は、同相線路214aと逆相線路214bとの間を延在し、ここで、同相線路204aが誘電体層208の上面に沿って延在し、逆相線路204bが誘電体層208の底面に沿って延在し、アナログ接地板206を有しない。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路214a、214bは、バラン100の中央縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。
【0026】
不平衡部202に関しては、同相線路204a、上部誘電体層208a及び接地板206により第1マイクロストリップ導波路が構成される。差動信号(不図示)の同相成分により第1マイクロストリップ導波路を駆動可能である。同様に、逆相線路204b、下部誘電体層208b、及び接地板206により第2マイクロストリップ導波路が構成される。差動信号の逆相成分により第2マイクロストリップ導波路を駆動可能である。参照x及びy座標軸は、各々の横断断面図のために示され、バラン100の中央縦軸に一致する原点を有する。線路204a、204b夫々は、個別のx軸に沿って測定される幅(wU)、y軸に沿って測定される厚み(tU)、及び同じくy軸に沿って測定される接地板206上の高さ(hU)を有する。第1及び第2マイクロストリップ導波路は、各々、特性インピーダンスZOU1、ZOU2を有し、これら各々は、導波路設計の当業者に知られた方法により、個別の誘電体層208の寸法wU、tU、hU、及び誘電率(εr)に応じて算出できる。不平衡部202は高度の対称性を呈し、x及びy軸の各々において対称であり、ここでは中央縦軸との関係において対称であることは明白である。
【0027】
平衡部212に関しては、同相線路214aと逆相線路214bにより平行板導波路が構成される。線路214a、214bが、個別に、x軸に沿って測定される幅(wB)、y軸に沿って測定される厚み(tB)、及び同じくy軸に沿って測定される各々に対する高さ(hB)を有する。平行板導波路は、個別の特性インピーダンスZOBを有し、これも、一般的に知られた方法により、誘電体層208の個別の寸法wB、tB、hB、及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。平衡部212も高度の対称性を呈することが明らかであり、x及びy軸夫々に関して対称である(すなわち、中央縦軸に関して対称である)。
【0028】
広帯域バラン100の不平衡部222の別例の断面を図3Aに示す。不平衡部222は、バラン100の縦軸に沿って延在する同相線路224a及び逆相線路224bを上部アナログ接地板226a及び下部アナログ接地板226bの間に含む。誘電体層228は、上部及び下部アナログ接地板層226a、226bの間を延在し、誘電体層228内に埋め込まれた同相及び逆相線路224a、224bを有する。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路224a、224b(一般化して224)は、縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。誘電体層が複層、例えば、一つが線路224の上、一つがその下にある2層を含むことが考えられる。
【0029】
広帯域バラン100の平衡部232の別例の断面を図3Bに示す。端的には、平衡部232が、図3Aに示す不平衡部222を有するバランに対応する。平衡部232は、平面誘電体層228に埋め込まれた同相線路234a及び逆相線路234bを含み、上部及び下部アナログ接地板226a、226bのいずれも有しない。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路234a、234bが、バラン100の縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。
【0030】
不平衡部222に関しては、同相線路224a、逆相線路224b及び上部及び下部接地板226a、226bによりコプレナー、ストリップ線路導波路が構成される。差動信号(不図示)により同相線路224a、逆相線路224bを駆動可能である。参照x及びy座標軸は、横断断面図のために図示されており、バラン100の中央縦軸に一致する原点を有する。各線224a、224bは、各々、x軸に沿って測定される幅(wU)及び間隔(sU)、y軸に沿って測定される厚み(tU)、及びy軸に沿って測定される接地板226a、226bのいずれかに対する均等な高さ(hU)を有する。コプレナー、ストリップ線路導波路は、特性インピーダンスZOUを有し、これは、誘電体層228の個々の寸法wU、sU、tU、hU、及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。平衡部222が高度の対称性を呈することが明らかであり、各x及びy軸に関して対称である。
【0031】
平衡部232に関しては、同相線路234aと逆相線路234bによりコプレナー導波路が構成される。線路234a、234bが、個別に、x軸に沿って測定される幅(wB)及び間隔(sU)、及びy軸に沿って測定される厚み(tB)を有する。コプレナー導波路は、個別の特性インピーダンスZOBを有し、これも誘電体層228の個別の寸法wB、tB、及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。平衡部232も高度の対称性を呈することが明らかであり、各x及びy軸に関して対称である。
【0032】
広帯域バラン100の不平衡部242の更なる別例の断面を図4Aに示す。不平衡部242は、バラン100の縦軸に沿って延在する同相線路244a及び逆相線路244bを上部及び下部アナログ接地板246a、246b間に含む。誘電体層248は、上部及び下部アナログ接地板246a、246b間を延在し、誘電体層248内に埋め込まれた同相及び逆相線路244a、244bを有する。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路244a、244b(一般化して244)は、縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。誘電体層が複層、例えば、一つがその上、一つがその下、おそらく一つが線244の間にある2層を含むことが考えられる。少なくとも実施形態によっては、同質の誘電体が、246aの上及び246bの下(不図示)を延在する。
【0033】
広帯域バラン100の平衡部252の別例の断面を図4Bに示す。端的には、平衡部252が、図4Aに示すように不平衡部242を有するバランに対応する。平衡部252は、平面誘電体層248に埋め込まれた同相線路254a及び逆相線路254bを含み、上部又は下部アナログ接地板246a、246bのいずれも有しない。少なくとも実施形態によっては、同相及び逆相線路254a、254bが、縦軸に平行に延在する断面において実質的に均等である。
【0034】
不平衡部242に関しては、同相線路244a、逆相線路244b及び上部及び下部接地板246a、246bにより平行板、ストリップ線路導波路が構成される。差動信号源(不図示)により同相線路244a、逆相線路244bを駆動可能である。参照x及びy座標軸は、横断断面図のために示され、バラン100の中央縦軸に一致する原点を有する。線路244a、244b夫々は、個別のx軸に沿って測定される幅(wU)、y軸に沿って測定される厚み(tU)及び間隔(sU)、及びy軸に沿って測定される各々に対する均一の高さ(hU)を有する。平行板、ストリップ線路導波路は、個別に特性インピーダンスZOUを有し、これは、誘電体層248の個別の寸法wU、(sU)、tU、hU、及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。不平衡部242が高度の対称性を呈することが明らかであり、各x及びy軸に関して対称である。少なくとも実施形態によっては、線路244a及び244bが、x方向(正及び負)において互いにオフセットしており、間隔sU又は高さhU(不図示)を調整する必要なく特性インピーダンスZOUが設定される。
【0035】
平衡部252に関しては、同相線路254aと逆相線路254bにより平行板導波路が構成され、誘電体層248内に埋め込まれる。線路254a、254bが、個別に、x軸に沿って測定される幅(wB)及び間隔(sB)、y軸に沿って測定される厚み(tB)及び離間距離(hB)を有する。平行板導波路は、個別の特性インピーダンスZOBを有し、これは、誘電体層248の個別の寸法wB、tB、hB及び誘電率(εr)に応じて算出することができる。平衡部252も高度の対称性を呈することが明らかであり、x及びy軸夫々に関して対称である。
【0036】
図5は、例えば図2Aに図示されたものと同様の、対向するマイクロストリップ導波路を含む不平衡部302を備える広帯域バラン300の例の平面図を図示する。上部誘電体層308a上の同相線路が視認できる。また、陰影の領域が、中心接地板306の上面であり、都合によりに透明に表された誘電体層を介して視認できる。平衡部312は、同相及び逆相線路間の接地板306の一部の除去により形成される。接地板の開口314の外周が、図示のように誘電体層308内に位置することを示す破線にて図示されており、平衡部312内において接地板306の全体を除去する必要はない。むしろ、接地板308が平行線路間から除かれ、この除去が、それらの線路から離れるある距離に亘り、そのような接地板に対する電磁結合(例えば、容量と称される)は、少なくとも10sBの距離において実質的に無視できる。少なくとも実施形態によっては、接地板及び線路間の最小の離間距離が、少なくとも例えば10sBである。「スイッチングパルスの立ち上がり時間が数十ピコ秒まで短くなると多芯のマイクロストリップ線路の全波分析が必要になる」。
【0037】
遷移層320は、不平衡部302と平衡部312の間に設けられている。バラン300に結合する差動回路の「配置領域(footprint)」325も示されている。差動信号インターフェイス330が、差動回路配置領域325の周囲に設けられており、その配置領域325により示された差動回路の接点に結合するべく適合される。差動回路が信号源であっても良く、例えば、差動ドライバ、又はシグナルシンクを含み、例えば、差動レシーバを含む。従って、広帯域バラン300に沿って不平衡部から平衡部へ、またその逆へ双方向に信号が流れるだろう。実施形態によっては、別の差動回路(不図示)を遷移領域320とは反対の平衡部312の端部に結合可能である。
【0038】
図6A乃至図6Fが、図5に開示の広帯域バラン300の各断面を図示し、図5において特定された様々なセクションでの例示の電界分布を含む。図6Aに図示されたA−A’に沿う第1セクションについて参照すると、同相端子334aが上部誘電体層308aの上面に位置している。同相端子334aは、第1導電(例えば、貫通メッキ)ビア335aを介して、不平衡部302の同相線路304aと電気的に接続している。同様に、逆相端子334aが、第2導電性ビア335bを介して逆相線路304bと電気的に接続している。接地板306が、2つの線路304a、304bの間に設けられている。開口が、接地板306内に設けられており、第2ビア335bが、接地板306から絶縁された状態を保ちつつ、接地板306の反対側へ貫通する。線路304a、304b上の差動信号の存在に起因する差動電界分布の表示も図示されている。線路304a、304bは、対応する各ビア335a、335bとの交差を確保するべく垂直方向にずれて設けられている。
【0039】
図6Bに図示されたB−B’に沿う第2セクションを参照すると、同相線路304a及び逆相線路304bが近づいているが、垂直方向に配列していない。繰り返すが、概略的な態様において線路304a、304b夫々と接地板306との間の各電界分布が開示されている。図6Cに図示されたC−C’に沿う第3セクションが、垂直配列された同相及び逆相線路304a、304bを示す。線路304a、304b及び接地板306の構造対称性と配置に依存して、同相線路304aと接地板306の上面の間の上方の電界分布が、逆相線路304bと接地板306の底面の間の下方の電界分布に実質的に配列される。
【0040】
図6DのD−D’に沿う第4セクションにおいて遷移領域320の部分を図示する。端的には、接地板の延長部を除いて、接地板306が実質的に除かれている。接地板延長部は、同相及び逆相線路304a、304b間で、垂直配列し、かつ実質的に等間隔である。少なくとも幾つかの電界線が、接地板306において終端し、外側領域の他の電界線が、線路304a、304b間で実質的に遮断されることなく延在し、接地板延長部の外側水平範囲の周囲で延在する。図6EのE−E’に沿う第5セクションにおいて遷移領域320の別の部分を図示する。端的には、非常に狭い接地板306の部分のみが線路304a、304b間で垂直配列のまま残る。大半の電界線が、線路304a、304b間で遮断されることなく延在する。最後に、図6FのF−F’に沿う第6セクションにおいて平衡部312の断面を図示する。より端的には、線路314a、314bの近傍内で、接地板306の部分、延長又はそれ以外が存在しない。
【0041】
不平衡部302での線路304a、304b及び接地板306の配置の対称性、平衡部312での線路304a、304bの配置、及び差動信号の励振の性質の結果として、接地板306を有する不平衡部の電界分布が、接地板306を有しない平衡部の電界分布と実質的に同じになる。
【0042】
接地板の除去によって、バラン300が、線路304a、304b及び接地板306間の同相電流を除去することに実効的になる。接地板の除去によって、偶数モード電流が効果的に消え(すなわち、偶数モードインピーダンスが無限に近づく)、他方、奇数モード電流が優勢になる。如何なる共振素子を伴うことなく進行波構造(例えば、導波路)に依存することにより、バラン300が広い帯域幅で良好に動作する。電界分布の円滑な遷移を提供することにより、バラン300が不要反射を避けることができ、広帯域動作をサポートする。不平衡及び平衡部との間でインピーダンス整合を確保することにより、バラン300が、不要反射を避けて広帯域動作を更にサポートする。
【0043】
図7A及び7Bは、各々、広帯域バラン400’の実施形態のD−D’に沿う平面及び縦方向断面を示す。バラン400’は、図5の回路300のバランの詳細を開示し、TEMに代えて準TEMとして開示される。なぜなら、図6B乃至6Fに開示の304aの上と304bの下を実質的に延びる同質の誘電体に代えて誘電体408がグランド404aと404bにより境界付けられているためである。バラン400’は、不平衡部402、遷移領域420及び平衡部412を含む。不平衡領域402は、垂直に配列した、対向マイクロストリップ導波路の組を含み、中心接地板406の両側に沿って形成されている(繰り返すが、接地板が陰影で示され、誘電体層を介して視認可能である)。第1マイクロストリップ導波路が、同相導電線404aを含み、第2マイクロストリップ導波路が、平行逆相導電線404bを含む。各線路404a、404bは、導電接地板406の各面から誘電体層408a、408b(一般化して408)だけ離間している。平衡領域412は、単一の平行板導波路を含む。平行板導波路は、同相導電線414a及び平行逆相導電線414bを含み、誘電体408により離間し、導電性の接地板406が無い。遷移領域420は、接地板406の境界エッジ413を含む。説明上の例示において、そのエッジが、導電線路404a-404b、414a-414bの組に平行にその間の中心に配列されたバラン400’の縦軸に対して実質的に垂直である。
【0044】
少なくとも実施形態によっては、遷移領域420が境界エッジ413から離れる方向へ突出する延長部416も含む。説明上の例示において、延長部416が、平衡部412に向けて突出する。延長部416は、一般的に、線路404a-404b、414a-414bを二分する平面に関して対称である。延長部416はテーパーを含むことができ、例えば、境界エッジ413の近くの端部の幅が実質的に広く、末端点418に向かって突出するに応じて狭くなる。少なくとも実施形態によっては、テーパーは直線的であり、図示の三角形のテーパーといったものである。代替的に又は追加的に、延長部416は、曲げられたテーパー又は直線及び曲げられたテーパーの組み合わせを含むことができる。好ましくは、任意のテーパーを含む延長部416は、不平衡部402及び平衡部412の各横電界分布の間の遷移領域420の縦方向長に沿う横電界分布の遷移、若しくは形成を補助するだろう。線路404aの幅は、415でより幅広の線路414aへ推移する。同様に、404bは、415で幅414bへ推移する。そのような電界の推移により、不要反射の確率又はバラン400’に沿って伝播する電磁波の不整合を好適に減じることができる。
【0045】
実施形態によっては、不平衡部402の線路404a、404bの幅が、平衡部412の線路414a、414bの幅とは異なる。例えば、平衡部412の線路が、不平衡部の線路よりも幅広である。代替的に又は追加的に、線路間の離間距離も、不平衡及び平衡領域402、412間で異なる。幅、高さ、又は分離間隔、厚み及び誘電率といった物理パラメーターの選択は、特性インピーダンスといった各導波路の物性を制御するために調整可能である。例えば、不平衡部402のマイクロストリップ導波路の物理パラメーターは、約50オームの特性インピーダンスに選択可能である。同様に、平衡部420の平行板導波路の物理パラメーターは、約100オームの特性インピーダンスに選択可能である。好ましくは、不平衡部402及び平衡部412の特性インピーダンスは、任意の不要反射の確率、又はバラン400’に沿って伝播する電磁波の不整合を最小にするものである。
【0046】
不要反射は、反射率(例えば、入射波電圧に対する反射波電圧の比)又は一般的に電圧定常波比(VSWR)として知られる別のパラメーターといったパラメーターに応じて特徴づけ可能である。リターンロスとして知られる別の値は、例えば不要反射に起因するバランに沿うエネルギー伝送の非効率の指標として算出可能である。広帯域機器としては、バラン400’が、比較的広い範囲の動作周波数上において良好な特性(例えば、反射率、VSWR、リターンロス)を提示する。そのような良好な特性値が、約2:1よりも小さなVSWR、又は約−9.54dBよりも大きなリターンロスを含むかもしれない。実施形態によっては、広帯域が、その低周波数の少なくとも10倍の動作周波数範囲を含んでいても良い(すなわち、10:1)。少なくとも実施形態によっては、バラン400’は、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送として一般的に知られる動作の周波数帯の少なくとも1つ上において動作可能である。
【0047】
図8A乃至図8Cは、図7Aに開示の広帯域バラン400’の各断面を図示し、図7Aにおいて特定された様々なセクションでの例示の横電界を含む。図8Aに図示された不平衡部402のA−A’に沿う第1セクションは、同相線路404aから接地板406へ向かう電界を有する横電界分布を図示する。電界分布は、その構造の電磁界の境界条件を必要的に満足し、反対のポテンシャルを持つ鏡像の線が接地板の反対側に沿って位置するかのように有効に振る舞う。同様に、逆相線路404bから接地板406へ向かう電界を持つ横電界分布が、その構造の電磁界の境界条件を満足し、反対のポテンシャルを持つ鏡像の線が接地板の反対側に沿って位置するかのように有効に振る舞う。境界条件の充足を通じて獲得される対称性が同相及び逆相線路404a、404bの実際の構成に対応し、不平衡部の横電界分布が、等電位の面に沿って延びる接地板406に対して実質的に配列される。少なくとも実施形態によっては、不平衡及び平衡部402、412夫々においてサポートされた導波路モードは、準横電磁モード(準TEM)である。従って、縦方向の電界成分が、より支配的な横電磁モードよりも少ない程度だけ存在する。
【0048】
図8Bに開示されている遷移領域420のB−B’に沿う第2セクションが、線路404a、404b間に配された接地板延長部418を示す。y軸から最も隔てられた外側電界が、同相線路404aから実質的に連続に延在し、逆相線路404bにて終端する。各線路404a、404bからのy軸に近い内側電界が、接地板延長部418に交差し、それ故、それに沿って終端する。図8Cに図示された平衡領域412のC−C’に沿う第3セクションが、同相線路414a及び逆相線路414bにより形成された平行板導波路を開示する。電界が、実質的に連続に同相線路414aから延在し、逆相線路414b上で終端する。不平衡及び平衡部の電界分布は、接地板406の存在を除いて実質的に同一である。
【0049】
図9A及び9Bは、各々、広帯域バラン400”の別の実施形態のD−D’に沿う平面及び縦方向断面を図示する。バラン400”は、不平衡部422、遷移領域440及び平衡部432を含む。不平衡領域422は、上部及び下部平行接地板426a、426b間に形成されたコプラナーストリップ線路導波路を含む。本導波路は、同相導電線424a及びコプレナー、平行逆相導電線424bを含む。各線路424a、424bは、挿入された誘電体層428a、428b(一般化して428)により、上部及び下部隣接接地板426a、426bから離間されている。平衡領域432は、誘電体層428内に埋め込まれたコプレナー導波路を含む。コプレナー導波路は、同相導電線434a及び平行逆相導電線434bを含む。遷移領域440は、上部接地板426aの上部境界エッジ433a及び下部接地板426bの下部境界エッジ433bを含む。説明の例示においては、エッジ433a、433bは、導電線の組424a、424b、434a、434bに対して平行のそれらの間の中心に配列されたバラン400”の縦軸に対して実質的に垂直である。説明の例示においては、エッジ433a、433bは、実質的に配列されており、若しくは共通の横断面において重複している。
【0050】
少なくとも実施形態によっては、遷移領域440は、上部境界エッジ433aから離間して突出する上部延長部436a、及び下部境界エッジ433bから離間して突出する下部延長部436bも含む。説明上の例示では、延長部436a、436bが、平衡部432に向かって突出する。延長部436a、436bは、線路424a、424b、434a、434bを二分し、かつ縦軸を含む平面に対して概して対称である。繰り返すが、延長部436a、436bは、テーパーを含むことができ、例えば、境界エッジ433a、433bに近い端部において実質的により広く、終端点438a、438b側へ突出するに応じて狭くなる。少なくとも実施形態によっては、テーパーは直線的であり、図示の三角形のテーパーといったものである。代替的に又は追加的に、延長部436a、436bは、曲げられたテーパー又は直線及び曲げられたテーパーの組み合わせを含むことができる。好ましくは、任意のテーパーを含む延長部436a、436bは、不平衡部422及び平衡部432の各横電界分布の間の遷移領域440に沿う電界の遷移、若しくは形成を補助する。
【0051】
実施形態によっては、不平衡部422の線路424a、424bの幅が、平衡部432の線路434a、434bの幅とは異なる。例えば、平衡部432の線路が、不平衡部422の線路よりも幅広であり得る。異なる幅間の遷移は、ステップの不連続、図示された面取り435、又は任意の他の適当な輪郭を含むことができる。実施形態によっては、遷移は、多段の段差により達成可能である。
【0052】
代替的に又は追加的に、線路間の離間距離が、不平衡及び平衡領域422、432の間で相違し得る。幅、高さ、又は分離間隔、厚み及び誘電率といった物理パラメーターの選択は、特性インピーダンスといった各導波路の物理特性を制御するために調整可能である。例えば、不平衡部422のマイクロストリップ導波路の物理パラメーターは、約50オームの特性インピーダンスに選択可能である。同様に、平衡部432のコプレナー導波路の物理パラメーターは、典型的には約50オーム〜200オームの特性インピーダンスに選択可能である。好ましくは、不平衡部422及び平衡部432の特性インピーダンスは、不要反射の確率、又はバラン400”に沿って伝播する電磁波の不整合を最小にするべく選択される。
【0053】
図10A乃至図10Cは、図9Aに開示の広帯域バランの個別断面を図示し、図9Aで特定された様々なセクションにおける例示の横電界分布を含む。図10Aに図示された不平衡部422のA−A’に沿う第1セクションは、同相及び逆相線路424a、424b夫々から対向線路及び接地板426a、426bへ向かう電界を有する横電界分布を図示する。電界分布は、(図10Bに開示のように)準TEMの誘電体428(不図示)の上方及び下方を部分的に延在しても良く、反対のポテンシャルを持つ第1対称像コプラナー導波路が上部接地板426aの反対側に沿って位置し、反対のポテンシャルを持つ第2対称像コプラナー導波路が下部接地板426bの反対側に沿って位置するかのように有効に振る舞う。
【0054】
図10Bに開示の遷移領域440のB−B’に沿う第2セクションが、線路424a、424bの上及び下の各々に配置された上部及び下部接地板延長部436a、436bを示す。延長部436a、436bに沿って接地板が細くなることにより、減じられた程度のグランドの電磁界の境界条件に応じて電界が変化する。説明の例示における正味の影響は、各線路424a、424bの外側の電界を反対線に向けて(すなわち、y軸に向けて)効果的に曲げることである。図10Cに開示されている遷移領域432のC−C’に沿う第3セクションが、同相線路434a及び逆相線路434bにより形成されたコプレナー導波路を示す。電界が、同相線路434aから実質的に連続して延在し、逆相線路434b上で終端する。一連の断面により、テーパー付けされた延長部が、如何様に縦軸に沿う距離上を不平衡部422から平衡部432へ横電界を円滑に遷移させるのかを図示する。
【0055】
図11A及び11Bは、各々、広帯域バラン400'''の別の実施形態のD−D’に沿う平面及び縦方向断面を図示する。バラン400'''は、不平衡部442、遷移領域460及び平衡部452を含む。不平衡領域422は、上部及び下部平行接地板446a、446b間に形成された平行板ストリップ線路導波路を含む。本導波路は、同相導電線444a及び垂直に配置された平行逆相導電線444bを含む。各線路444a、444bは誘電体層448により、隣接接地板446a、446bから及びお互いに分離されている。平衡領域452は、誘電体層448内に埋め込まれた平行板導波路を含む。平行板導波路は、同相導電線454a及び平行逆相導電線454bを含む。遷移領域460は、上部接地板446aの上部境界エッジ453aと、下部接地板446bの下部境界エッジ453bを含む。説明上の例示において、そのエッジ453a、453bが、線路444a、444b、454a、454bの縦軸に対して実質的に垂直である。説明上の例示において、そのエッジ453a、453bが、共通の横断面において実質的に配列し、さもなければ重ね合わされている。
【0056】
少なくとも実施形態によっては、遷移領域460は、上部境界エッジ453aから離間して突出する上部延長部456a、及び下部境界エッジ453bから離間して突出する下部延長部456bも含む。説明上の例示では、延長部456a、456bが、不平衡部442に向かって突出する。延長部436a、436bは、線路444a、444b、454a、454bを二分し、縦軸を含む平面に対して概して対称である。繰り返すが、延長部456a、456bは、テーパーを含むことができ、例えば、境界エッジ453a、453bに近い端部において実質的により広く、終端点458a、458bへ突出するに応じて狭くなる。説明上の例示では、延長部は、接地板466a、466bの切欠き(notch)として設けられている。少なくとも実施形態によっては、テーパーが直線的であり、図示の三角形のテーパーといったものである。代替的に又は追加的に、延長部456a、456bは、曲げられたテーパー又は直線及び曲げられたテーパーの組み合わせを含むことができる。好ましくは、任意のテーパーを含む延長部456a、456bは、不平衡部442及び平衡部452の各横電界分布の間の遷移領域460に沿う電界分布の遷移、若しくは形成を補助する。
【0057】
広帯域バラン400'''は、更に、左側部分466a及び右側部分466bを含む分割中間アナログ接地板を含む。例示の実施形態においては、中間アナログ接地板の左及び右側部分466a、466bは、上部及び下部接地板446a、446b間でそれらから実質的に同一距離の同一面内に存在し、線路444a、444b、464a、464bを二分し、縦軸を含む平面の両側に沿って存在する。左側中間接地板466aは、個別の境界エッジ463aを含む。同様に、右側中間接地板466bは、個別の境界エッジ463bを含む。説明上の例示において、エッジ463a、463bは、実質的に共通の縦方向位置に配列されており、線路444a、444b、454a、454bの縦軸に対して実質的に垂直である。説明の例示においては、エッジ463a、463bが、上部及び下部接地板446a、446bの境界エッジ453a、453bを超えて平衡部452近くへ延在する。実施形態によっては、エッジ463a、463b、453a、453bは、共通縦方向位置で重複の態様で配列することができ、上部及び下部エッジ453a、453bは、中間エッジ463a、463bよりも平衡部452側へ更に延在することが考えられる。実施形態によっては、ビア469a及び469bが、中間エッジ463a、463bよりも平衡部452側へ更に延在することも考えられる。
【0058】
少なくとも実施形態によっては、中間接地板の左及び右側部分466a、466bが、不平衡部442の同相及び逆相線路444a、444bから十分に離間しており、不平衡領域442内において中間接地板に対する横電界の結合が実質的に無視できる。遷移領域においては、中間接地板の左及び右側部分466a、466bが、中間領域460の同相及び逆相線路464a、464bに対して相対的に近くなるように離間しており、中間接地板への横電界の少なくとも一部の結合がもたらされる。
【0059】
バラン400'''は、更に左及右側垂直アナロググランドスクリーン469a、469bを更に含む。そのような垂直グランドスクリーン469a、469bは、例えば、垂直に配列された導電性部材により提供することができる。説明的な実施形態においては、垂直導電性部材は、上部及び下部接地板446a、446b間で延在して電気的に相互接続する導電性(すなわち、貫通メッキ)ビアにより設けられる。少なくとも実施形態によっては、導電性ビアらは、中心軸に対向する左及び右側部分466a、466bのエッジ近傍に配置されている。「杭の囲い(picket fence)」といった配置の隣接ビア間の空間を制御可能であり、例えば、最小動作波長の1/4よりも小さなビア間の最大離間距離を有する。好ましくは、隣接するビア間の離間距離は、最小動作波長の約1/10を超えない。
【0060】
実施形態によっては、不平衡部442の線路444a、444bの幅は、平衡部452の線路454a、454bの幅と同一である。他の実施形態においては、図示のように、幅が異なる。例えば、平衡部452の線路は、不平衡部442の線路よりも狭く又は(図示のように)広くすることができる。代替的に又は追加的に、線路444a‐444b、454a‐454b間の離間距離は、不平衡及び平衡領域442、452間で異なる又は(図示のように)同一とすることができる。幅、高さ、又は分離間隔、厚み及び誘電率といった物理パラメーターの選択は、特性インピーダンスといった各導波路の物理特性を制御するために選択可能である。例えば、不平衡部442の平行板ストリップ線路導波路の物理パラメーターは、典型的には約50オーム〜100オームの特性インピーダンスに選択可能である。同様に、平衡部452の埋め込み平行板導波路の物理パラメーターは、例えば、約50オーム〜100オームの好適な特性インピーダンスに選択可能である。好ましくは、不平衡部442及び平衡部452の特性インピーダンスは、不要反射の確率、又はバラン400'''に沿って伝播する電磁波の不整合を最小にするべく選択される。
【0061】
本明細書に開示の実施形態によっては、幅が異なる線路間の遷移は、段差又は傾斜の態様で達成し得る(例えば、ある幅から次への矩形の遷移)。代替的に又は追加的に、異なる幅間の遷移は、急峻な態様を少なくして達成することができ、例えば、本明細書に開示の例のようにテーパー又は面取りを有する。テーパーは直線、曲げ、又は直線及び曲げの適当な組み合わせであり得る。加えて、幅が相対的に相当に異なる実施形態においては、遷移は、一連の段階に亘って生じる多段の遷移により実行可能である。例えば、例示の実施形態においては、遷移領域460に中間線路464a、464bが設けられ、不平衡部線路444a、444b及び平衡部線路454a、454bの幅の間の幅を有する。
【0062】
図12A乃至図12Fは、図11Aに開示の広帯域バランの個別断面を図示し、図11Aで特定された様々なセクションにおける例示の横電界を含む。図12Aに開示の不平衡部422のA−A’に沿う第1セクションは、同相及び逆相線路444a、444bから対向線路及び上部及び下部接地板466a、466bに向かって指向された電界を含む横電界分布を図示する。電界分布は、構造の境界条件を満足し、反対のポテンシャルを持つ第1対称画像平行板導波路が上部接地板466aの反対側に沿って位置するかのように、及び反対のポテンシャルを持つ第2対称画像平行板導波路が下部接地板466bの反対側に沿って位置するか(すなわち、鏡像)のように有効に振る舞う。
【0063】
図12Bに開示の遷移領域460のB−B’に沿う第2セクションが、線路444a、444bの上及び下に夫々配置された上部及び下部接地板延長部446a、446bを示す。延長部456a、456bに沿う接地板446a、446bの各々の中心開口が、変更されたグランドの電磁境界条件に従って電界を変更する。説明の例示における正味の結果は、各線路444a、444bのy軸に近い上部及び下部電界を外側(即ち、y軸から離れる方向)へ効果的に曲げることである。この配置により、垂直(すなわち、y軸方向)から水平(すなわち、x軸方向)へ隣接する接地板延長部446a、446b間及び線路間の電界の再形成が開始する。
【0064】
図12Cに開示の平衡領域452のC−C’に沿う第3セクションは、接地板446a、446b夫々の増大する中心開口が、延長部456a、456bに沿って更に変化し、さもなければ変更されたグランド446a、446bの電磁境界条件に従って横電界を形成することを示す。説明の例示における正味の影響は、上部及び下部電界をy軸から更に離間させるべく効果的に曲げることである。加えて、中間接地板の左及び右側部分466a、466b及び対応する垂直グランドスクリーン469が、遷移領域460の同相及び逆相線路464a、464bに相対的に近くに配置される。近傍は、横電界分布の少なくとも一部が構造の境界条件を満足するものであり、反対のポテンシャルを持つ第1対称画像平行板導波路が左及び右垂直グランドスクリーン469a、469bの反対側に沿って位置するかのように効果的に振る舞う。結果としては、これらの電界が、垂直(すなわち、y軸方向)から水平(すなわち、x軸方向)へ、線路を二分すると共に縦軸を含む平面から更に離間するべく整形(形づけ)される。
【0065】
図12Dに開示の平衡領域452のD−D’に沿う第4セクションは、接地板446a、446b夫々の更に増大する中心開口が、幅広になる延長部に沿って更に変化し、さもなければ変更されたグランド446a、446bの電磁境界条件に従って横電界を形成することを示す。中間接地板の左及び右側部分466a、466bが、遷移領域460の同相及び逆相線路464a、464bに相対的に近くに居続け、ここで、対応する垂直グランドスクリーン469a、469bが線路464a、464bからより離れるように移動する。その近接は、横電界分布の少なくとも一部が、構造の境界条件を満足するようなものであり、反対のポテンシャルを持つ第1対称画像平行板導波路が左及び右垂直グランドスクリーン469a、469bの反対側に沿って位置するかのように効果的に振る舞う。結果としては、これらの電界が、垂直(すなわち、y軸方向)から水平(すなわち、x軸方向)へ、線路を二分すると共に縦軸を含む平面から更に離間するべく更に整形(形づけ)される。
【0066】
図12Eに開示の平衡領域452のE−E’に沿う第5セクションは、上部及び下部接地板446a、446bが除かれた(例えば、境界エッジ453及び平衡部452の間で縦方向に配置された)埋め込み平行板導波路を開示する。再び繰り返すが、等電位の平面に沿って設けられた中間接地板の左及び右側部分466a、466bを有する変更されたグランドの電磁境界条件に従って横電界が適合する。横電界は、上部及び下部接地板446a、446b、中間接地板の左及び右側部分466a、466b、及び左及び右側垂直グランドスクリーン469a、469bの1以上の境界条件を課すことにより、平行板ストリップ線路導波路の不平衡領域分布から埋め込み平行板導波路の平衡領域分布へと強いられ、若しくは調整される。
【0067】
図12Fに開示の平衡領域452のF−F’に沿う第6セクションは、同相線路454a及び逆相線路454bにより形成された埋め込み平行板導波路を開示する。電界は、同相線路454aから実質的に連続して延在し、逆相線路454b上で終端する。一連の断面により、テーパー付られた延長部が如何様に不平衡部442から平衡部452へ円滑に横電界を遷移させるのかを示す。
【0068】
図13は、連続構成で相互接続され、若しくは広帯域バランチョーク500と呼ばれる2つの広帯域バラン510a、510bを含むバラン回路の実施形態の平面図を図示する。より詳細には、第1バラン510aは、バラン510aの不平衡端部に設けられた差動信号ポート530aを含む。同様に、第2バラン510bは、バラン510bの不平衡端部に設けられた差動信号ポート530bを含む。アナロググランド506は、隣接するバラン510a、510bの平衡部の近傍の開口514を含む。各バラン510a、510bは、共通の縦軸に沿って配置されており、各々の平衡端部が対向して配置される。平衡端部が結合し、さもなければ隣接し、一方の差動信号ポート530a、530bから他方530b、530aへの信号伝播が許容される。バラン510a、510bは、本明細書に開示のものの如く任意の好適な広帯域バランである。少なくとも実施形態によっては、バラン510a、510bは、共通の構成を持つ。
【0069】
図14は、差動フィルター585に結合した広帯域バラン560を含む別のバラン回路550の実施形態の平面図を図示する。端的には、広帯域バラン560は、バラン560の不平衡部562の一端に配置した差動信号ポート580を含む。差動信号ポート580への相互接続のための差動回路素子の配置領域575も示されている。差動回路は、差動信号源(例えば、ドライバ)又はシンク(例えば、受信器)である。バラン560は、本明細書に開示の技術に従って、平衡部572及び遷移領域を含む。アナロググランド556は、平衡部572の周囲に設けられた開口564、及び少なくともフィルター585の平衡端部を含む。差動信号は、バラン560の一端に接続し、例えば、不平衡部562に接続し、他端(例えば、平衡部572)に向かって伝播する。
【0070】
差動フィルター585は、任意の適当なフィルターで良く、例えば1以上の誘導、容量及び抵抗素子を含む。少なくとも実施形態によっては、フィルターは、平衡部572の同相及び逆相線路に対して高度の対称性を包含する。そのような構成は、例えば、平衡部572の2つの線路間で対称に相互接続された共有の容量素子を含むかもしれない。フィルターは、周知のフィルター設計及び/又は合成方法に応じて設計可能であり、ローパス、ハイパス及びバンドパスといった任意の所望の減衰プロファイルを有することができる。少なくとも実施形態によっては、フィルターは、2つの直列容量素子を含み、各々が、平衡部572の各線路に対して電気的に接続し、直流(DC)信号に対して障壁を提供する。少なくとも実施形態によっては、フィルターは、平衡部572の平衡特性を更に維持するようにシールド(遮蔽/保護)されていない。
【0071】
実施形態によっては、フィルター出力が、依然として平衡であり、差動信号ではなくシングルエンド信号の搬送のために構成された別の不平衡部595との間で遷移可能である。バラン590は、本明細書に開示の任意のバラン技術、又はより一般的には任意の適当な従来のバランにより提供可能である。平衡信号の帯域幅を制限するフィルター用途においては、バランは、相対的に狭バンドのバランであっても良い。
【0072】
図15は、差動ドライバ回路602及び広帯域バラン604を含む集積回路600の実施形態の概略図を示す。差動ドライバ回路は、バラン604に差動信号の入力を提供する。差動信号は、同相信号入力及び逆相信号入力を含み、各々の信号入力は、アナロググランドに対する他方の鏡像を表現する。従って、正弦波信号としては、同相信号入力上の正の信号の増加が、逆相信号入力上の不の信号の減少に対応するだろう。差動信号入力の一方の強度及び方向を持つ電流が、他方の差動信号入力の等しい強度及び反対の方向を持つ電流に対応する。
【0073】
バラン604は、本明細書に開示の技術により構成された超広帯域バランであっても良い。実施形態によっては、バラン604の平衡出力が、例えば、差動フィルター606によりフィルターされる。代替的に又は追加的に、集積回路は、減衰器608又は他の適当な装置を含み、ドライバ回路602及びバラン604間の任意の不整合の有害な影響を減じる。例示の実施形態にて差動ドライバ回路602を有する集積回路を記述したが、差動レシーバ回路を持つ同様の回路を構成可能であることが予見される。差動レシーバ回路においては、バラン604から差動受信器に向かって信号が伝播する。
【0074】
図16は、集積回路650の別の実施形態の概略図を図示し、差動ドライバ652、広帯域バランチョーク654、及び差動レシーバ656を含む。差動ドライバ回路652は、広帯域チョーク654へ差動信号入力を提供する。差動信号は、差動信号に寄与しない望まない偶数モード電流と共に所望の奇数モード電流(すなわち、同相及び逆相電流)を含む。チョーク654は、一般的にコモンモード干渉と呼ばれる不要偶数モード信号を抑制、若しくは除去するべく構成される。
【0075】
少なくとも実施形態によっては、チョーク654は、連続構成で配置され、図13に開示の配置のように各々の平衡部で一つに結合した2つのバランを含む。バランの各々は、本明細書に開示の技術に従って構成された超広帯域バランであるかもしれない。少なくとも実施形態によっては、集積回路650も、チョーク654により除去された不要なコモンモード干渉無く差動信号を受信する差動レシーバ回路656も含む。代替的に又は追加的に、集積回路は、減衰器658(鎖線)又は他の適当な装置を含み、ドライバ回路652及びバラン654間の任意の不整合の有害な影響を減じる。
【0076】
図17は、不平衡及び平衡伝送線路間で差動信号を結合するプロセスの実施形態のフローチャート700を図示する。端的には、本工程により、少なくとも1つのアナロググランド基準を持つ不平衡差動伝送線路とそのようなアナロググランド基準を有しない平衡差動伝送線路の間の電磁エネルギーの搬送を効率的に結合できる。ステップ710において、電磁的エネルギーが不平衡及び平衡差動伝送線路の一方からまず受信する。横断電磁(TEM)又は準TEM波の態様にて電磁エネルギーを受信する。受信したTEM波が、縦方向の中心線に関して対称な第1横電界分布を有する。ステップ720において、受信した電磁エネルギーが不平衡及び平衡差動伝送線路の他方へ伝播される。伝播したTEM波は、縦方向中心線に関して対称の第2横電界分布を有する。
【0077】
ステップ730において、電界分布は、不平衡及び平衡差動伝送線路間の遷移領域に沿って対称に再構成される。第1及び第2電磁界分布が、各々の不平衡及び平衡伝送線路の構成の配置及び電磁境界条件としてのそれらの横電界上の影響により生じる。この再構成において、第1電磁界分布が、好ましくは、緩慢な態様に縦方向中心線に沿って調整されて第2電磁界分布へ適合する。好ましくは、再構成により、相対的に広い動作帯域幅上で電磁エネルギーの反射が減じられる。例えば、動作帯域幅は、少なくとも10:1である。少なくとも実施形態によっては、動作帯域幅が、センチメーター未満の波長を含む。代替的に又は追加的に、動作帯域幅が、ミリメーター未満の波長を含む。
【0078】
SiGe実施例:第1実施例においては、バランの実施の集積回路は、差動マイクロストリップ不平衡部及び平行‐導体平衡部を含む。IBM SiGe−7hpプロセスを考慮すれば、5つの金属層が入手可能であり、各々が、近傍の層から誘電率(εr)が約3.1、及び約1.2μmの距離(HU)の材料、及びバランの遷移領域のグランドされた基板の実質的な終端のためのディープトレンチ絶縁により分離されている。マイクロストリップ導波路の特性インピーダンスZOは、H.A.Wheelerにより発展され、“マイクロ波技術者のハンドブック、第1巻”、T.Saad著、1971年編、p.137の開示といった周知技術により計算することができる。Saadの参考文献は、マイクロストリップの特性インピーダンス対その幅−高さ比に応じたパラメーター曲線の一連を含む。端的には、これらの曲線は、ワイドストリップ近似と呼ばれる0.1(w/h>0.1)よりも大きな比率で提供される。Saadによれば、約2.4の幅−高さ比が、約3μmの幅(WU)を要求する50オームのZ0に要求される。従って、IBM SiGe−7hpプロセスに従った半導体を構成し、(例えば、図2Aに開示されたものと類似する)不平衡部において「上方‐下方(オーバー‐アンダー)」配置を有する広帯域バランの実施形態においては、各々の同相及び逆相線路の幅(WU)が、約3μmであり、各々の同相及び逆相マイクロストリップ導波路にとって、設計特性インピーダンスZOU=50オームである。
【0079】
接地板層の除去により平衡部を形成することができ、(例えば、図2Bに開示のものに類似する)平行板導波路構成が生じる。接地板の除去により平衡部の同相及び逆相線路(HB)の離間距離が約3.25μmになる。これは、層間の離間距離の2倍(すなわち、2×1.2μm)に対して除去された金属層の厚み(すなわち、約0.85μm)を加えたものに相当する。
【0080】
平行板導波路の線幅(w)、分離距離(h)及び特性インピーダンス(Z0)間の近似の関係が、Z0=377/(εr)*(h/w)により算出され、これは、“マイクロ波エンジニアリング及び用途、”O.P.Gandhi著、1981年、p.53にて議論されている。この関係は、周辺の容量を無視した特性インピーダンス(例えば、100オーム)の設計のための線路の幅(WB)の近似の推測に用いることができる。従って、100オームの特性インピーダンスのために、かつ、3.25μmの分離間隔(HB)とすると、平衡上方‐下方構成の同相及び逆相線路の幅(WB)が約7μmである。
【0081】
3μmの線路幅(WU)の不平衡部から7μmの線幅(WB)の平衡部への遷移は、不連続な段差として構成可能である。これに代えて、そのような遷移は、周知の技術を活用して達成することができ、そのようなサイズ差に伴う余剰なリアクタンスを補償することができる。少なくとも1つの方法によれば、不連続の箇所にて線状の面取り(テーパー)を設ける。例えば、45度のリニアテーパーを遷移領域に設けることができる。テーパー長は、段差比、誘電率値、及び基板厚みに依存する。K.C.Gupta等に開示のように、3つのそのような幅変化は、リニアテーパー、曲げられたテーパー、及び部分的なリニアテーパーを含む。状況によっては、テーパーは不要であるかもしれない。
【0082】
本明細書に開示の同相及び逆相線路及び接地板のどれも電気的に導電性の材料から作製することができる。導電性材料は、銀、銅、金、アルミニウム、及びスズといった金属;黄銅、青銅といった金属合金;グラファイトといったセミメタル導体;及びそのような材料の組み合わせを含む。
【0083】
本明細書に開示の誘電体層のどれもが、空気、磁気(セラミックス)、マイカ、ガラス、プラスチック、及び様々な金属の酸化物といった、静電界の効率的な保持体でもある絶縁性材料から作製することができる。
【0084】
本明細書に開示のバラン及びバラン回路のどれも、1以上の誘電又は絶縁層により保持された1以上の導電層を有するプリント回路基板(PCB)アセンブリとして作製可能である。PCBの導電層は、典型的には、薄く導電性の箔、例えば、銅から成る。誘電又は絶縁層は、エポキシ樹脂と一緒にラミネート可能である。誘電体は、回路の要求に依存して、異なる絶縁値を提供するべく選択される。これらの誘電体の幾つかは、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、テフロン(登録商標))、FR−4、FR−1、CEM−1又はCEM−3である。PCB分野において用いられる他の材料は、FR−2(フェノールコットンペーパー)、FR−3(コットンペーパー及びエポキシ)、FR−4(ガラス織布及びエポキシ)、FR−5(ガラス織布及びエポキシ)、FR−6(艶消しガラス(Matte glass)及びポリエステル)、G−10(ガラス織布及びエポキシ)、CEM−1(コットンペーパー及びエポキシ)、CEM−2(コットンペーパー及びエポキシ)、CEM−3(ガラス織布及びエポキシ)、CEM−4(ガラス織布及びエポキシ)、CEM−5(ガラス織布及びポリエステル)である。
【0085】
本明細書に開示のバラン及びバラン回路のいずれも、お互いに1以上の絶縁層により分離された1以上の導電層(例えば、線路及び接地板)を有する集積回路として作製可能である。そのようなバラン回路は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム‐ヒ素(GaAs)といったIII−V材料、そのような半導体の組み合わせの半導体基板上に形成可能である。実施形態によっては、バラン回路は、モノリシックな集積回路として構成可能である。代替的に、バラン回路は、マルチチップアセンブリとして構成可能である。
【0086】
備える、含む、及び/又は個々の複数形は、非限定的なものであり、列挙された要素を含み、また、不列挙の追加要素を含むことができる。及び/又も非限定なものであり、列挙された要素の1以上、また列挙された要素の組み合わせを含む。
【0087】
当業者は、本願発明を理解し、その精神又はその本質的特徴を逸脱することなく、他の特定の形態にて具現化されるかもしれない。上述の実施形態は、従って、本明細書に開示の本発明を限定するというよりは全ての点において例示であると考えるべきである。本発明の技術的範囲は、従って、上述の記述よりは添付請求項により示唆され、請求項と同等の意味及び範囲内における全ての変更は、よって、ここに包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸に沿って延在する第1同相線路、当該第1同相線路に平行に延在する第1逆相線路、及び前記第1同相及び逆相線路各々に対して平行で、電磁的に結合し、そして物理的に離間した少なくとも1つの接地板を含む、不平衡伝送線路部と、
前記第1同相線路と電気的に接続した第2同相線路、及び前記第1逆相線路と電気的に接続した第2逆相線路を含み、当該第2同相及び逆相線路夫々が、前記各第1同相及び逆相線路に対して縦に平行な平板であり(又は同一平面にあり)、前記少なくとも1つの接地板に対して実質的に結合していない、平衡伝送線路部と、
前記不平衡伝送線路部及び前記平衡伝送線路部の間に設けられた遷移領域であって、前記不平衡及び平衡伝送線路部間の前記少なくとも1つの個別の接地板の境界を規定する個別の末端エッジと、個別の当該末端エッジから寸法される所定長だけ前記縦軸に沿って延在する接地板エッジ変動を備える、遷移領域と、を備え、
前記不平衡伝送線路部、前記平衡伝送線路部及び前記遷移領域の各断面が、前記縦軸に関して実質的に対称である、広帯域バラン。
【請求項2】
前記少なくとも1つの接地板が、前記第1同相線路及び前記第1逆相線路の間に設けられ、前記同相及び逆相線路夫々が、前記少なくとも1つの接地板の隣接する側面と共に個別のマイクロストリップ伝送線路を構成する、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項3】
個別の前記マイクロストリップ伝送線路夫々が、個別の実質的に同等の第1特性インピーダンスを有し、前記平衡伝送線路部が、前記第1特性インピーダンスの約2倍の第2特性インピーダンスを有する、請求項2に記載の広帯域バラン。
【請求項4】
前記接地板エッジ変動が、前記不平衡伝送線路部から離間するべく延在すると共に前記平衡伝送線路部側へ向けられた狭端を有する前記接地板のテーパー延長部を規定する、請求項2に記載の広帯域バラン。
【請求項5】
前記少なくとも1つの接地板の一つが、前記第1同相及び逆相線路の両方の上に配置され、前記少なくとも1つの接地板の別のものが、前記第1同相及び逆相線路の両方の下に配置される、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項6】
前記不平衡伝送線路部、前記平衡伝送線路部、及び前記遷移領域の夫々が、一つの集積回路に組み込まれる、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項7】
前記集積回路が、Si;Ge;III−V族半導体;GaAs及びSiGe;及びこれらの組み合わせから成る群から選択される集積回路装置技術によって構成される、請求項6に記載の広帯域バラン。
【請求項8】
前記不平衡伝送線路部が、マイクロストリップ導波路;コプラナーストリップ線路;平行板ストリップ線路;有限グランドコプラナー導波路(FGCPW);コプラナー導波路;コプラナーストリップ線路;非対称ストリップ線路;及びスロット線路の内の一つである、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項9】
前記不平衡及び平衡伝送線路は、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送の少なくとも1つを実行可能である、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項10】
前記遷移領域とは逆側の前記平衡伝送線路部の端部に結合した差動フィルターを更に備える、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項11】
相似構成の第2広帯域バランであって、前記広帯域バランの前記平衡伝送線路部に連続態様で結合した平衡伝送線路部を有する、第2広帯域バランを更に備える、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項12】
少なくとも1つのアナロググランド基準を有する不平衡差動伝送線路とアナロググランド基準を有しない平衡差動伝送線路との間で差動信号を効率的に結合する方法であって、
前記不平衡及び前記平衡差動伝送線路の一方から伝播する横電磁(TEM)波の電磁エネルギーを受信するステップであって、前記TEM波が、縦方向の中心線に関して対称の第1横電界分布を有する、ステップと、
前記不平衡及び前記平衡差動伝送線路の他方に対して前記受信した電磁エネルギーを伝送するステップであって、前記TEM波が、縦方向の中心線に関して対称の第2横電界分布を有する、ステップと、
前記不平衡及び前記平衡差動伝送線路の間の遷移領域に沿って、前記第1電磁界分布が前記第2電磁界分布に適合するべく対称に再構成するステップと、を含み、
当該再構成により、少なくとも約10:1の帯域幅上で電磁エネルギーの反射が最小化される、方法。
【請求項13】
対称に再構成することが、前記TEM波と前記遷移領域に沿う少なくとも1つのアナロググランドとの相互作用の態様にて実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
対称に再構成することが、前記縦方向の中心線に沿って徐々に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対称に再構成することが、前記少なくとも1つのアナロググランド基準における縦方向のテーパーの態様にて前記横電界分布を形成することにより更に実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記受信した電磁エネルギーが、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送の少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記平衡差動伝送線路で電磁エネルギーをフィルタリングするステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
不平衡伝送線路部、 平衡伝送線路部、及び前記不平衡及び前記平衡伝送線路部の間に設けられた遷移領域を含む広帯域バランであって、
前記不平衡差動伝送線路及び前記平衡差動伝送線路の一方から伝播する横電磁(TEM)又は準TEM波の電磁エネルギーを受信する手段であって、前記TEM波が、縦方向の中心線に関して対称の第1横電界分布を有する、手段と、
前記受信した電磁エネルギーを前記不平衡差動伝送線路及び平衡差動伝送線路の他方へ伝送する手段であって、前記TEM波が、前記縦方向の中心線に関して対称の第2横電界分布を有する、手段と、
前記不平衡及び平衡差動伝送線路間の遷移領域に沿って、前記第2電磁界分布に適合するように前記第1電磁界分布を対称に再構成する手段を備え、
前記対称に再構成する手段が、少なくとも約10:1の帯域幅上で前記電磁エネルギーの反射を最小化する、広帯域バラン。
【請求項1】
縦軸に沿って延在する第1同相線路、当該第1同相線路に平行に延在する第1逆相線路、及び前記第1同相及び逆相線路各々に対して平行で、電磁的に結合し、そして物理的に離間した少なくとも1つの接地板を含む、不平衡伝送線路部と、
前記第1同相線路と電気的に接続した第2同相線路、及び前記第1逆相線路と電気的に接続した第2逆相線路を含み、当該第2同相及び逆相線路夫々が、前記各第1同相及び逆相線路に対して縦に平行な平板であり(又は同一平面にあり)、前記少なくとも1つの接地板に対して実質的に結合していない、平衡伝送線路部と、
前記不平衡伝送線路部及び前記平衡伝送線路部の間に設けられた遷移領域であって、前記不平衡及び平衡伝送線路部間の前記少なくとも1つの個別の接地板の境界を規定する個別の末端エッジと、個別の当該末端エッジから寸法される所定長だけ前記縦軸に沿って延在する接地板エッジ変動を備える、遷移領域と、を備え、
前記不平衡伝送線路部、前記平衡伝送線路部及び前記遷移領域の各断面が、前記縦軸に関して実質的に対称である、広帯域バラン。
【請求項2】
前記少なくとも1つの接地板が、前記第1同相線路及び前記第1逆相線路の間に設けられ、前記同相及び逆相線路夫々が、前記少なくとも1つの接地板の隣接する側面と共に個別のマイクロストリップ伝送線路を構成する、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項3】
個別の前記マイクロストリップ伝送線路夫々が、個別の実質的に同等の第1特性インピーダンスを有し、前記平衡伝送線路部が、前記第1特性インピーダンスの約2倍の第2特性インピーダンスを有する、請求項2に記載の広帯域バラン。
【請求項4】
前記接地板エッジ変動が、前記不平衡伝送線路部から離間するべく延在すると共に前記平衡伝送線路部側へ向けられた狭端を有する前記接地板のテーパー延長部を規定する、請求項2に記載の広帯域バラン。
【請求項5】
前記少なくとも1つの接地板の一つが、前記第1同相及び逆相線路の両方の上に配置され、前記少なくとも1つの接地板の別のものが、前記第1同相及び逆相線路の両方の下に配置される、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項6】
前記不平衡伝送線路部、前記平衡伝送線路部、及び前記遷移領域の夫々が、一つの集積回路に組み込まれる、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項7】
前記集積回路が、Si;Ge;III−V族半導体;GaAs及びSiGe;及びこれらの組み合わせから成る群から選択される集積回路装置技術によって構成される、請求項6に記載の広帯域バラン。
【請求項8】
前記不平衡伝送線路部が、マイクロストリップ導波路;コプラナーストリップ線路;平行板ストリップ線路;有限グランドコプラナー導波路(FGCPW);コプラナー導波路;コプラナーストリップ線路;非対称ストリップ線路;及びスロット線路の内の一つである、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項9】
前記不平衡及び平衡伝送線路は、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送の少なくとも1つを実行可能である、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項10】
前記遷移領域とは逆側の前記平衡伝送線路部の端部に結合した差動フィルターを更に備える、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項11】
相似構成の第2広帯域バランであって、前記広帯域バランの前記平衡伝送線路部に連続態様で結合した平衡伝送線路部を有する、第2広帯域バランを更に備える、請求項1に記載の広帯域バラン。
【請求項12】
少なくとも1つのアナロググランド基準を有する不平衡差動伝送線路とアナロググランド基準を有しない平衡差動伝送線路との間で差動信号を効率的に結合する方法であって、
前記不平衡及び前記平衡差動伝送線路の一方から伝播する横電磁(TEM)波の電磁エネルギーを受信するステップであって、前記TEM波が、縦方向の中心線に関して対称の第1横電界分布を有する、ステップと、
前記不平衡及び前記平衡差動伝送線路の他方に対して前記受信した電磁エネルギーを伝送するステップであって、前記TEM波が、縦方向の中心線に関して対称の第2横電界分布を有する、ステップと、
前記不平衡及び前記平衡差動伝送線路の間の遷移領域に沿って、前記第1電磁界分布が前記第2電磁界分布に適合するべく対称に再構成するステップと、を含み、
当該再構成により、少なくとも約10:1の帯域幅上で電磁エネルギーの反射が最小化される、方法。
【請求項13】
対称に再構成することが、前記TEM波と前記遷移領域に沿う少なくとも1つのアナロググランドとの相互作用の態様にて実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
対称に再構成することが、前記縦方向の中心線に沿って徐々に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対称に再構成することが、前記少なくとも1つのアナロググランド基準における縦方向のテーパーの態様にて前記横電界分布を形成することにより更に実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記受信した電磁エネルギーが、ミリ波伝送及びマイクロ波伝送の少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記平衡差動伝送線路で電磁エネルギーをフィルタリングするステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
不平衡伝送線路部、 平衡伝送線路部、及び前記不平衡及び前記平衡伝送線路部の間に設けられた遷移領域を含む広帯域バランであって、
前記不平衡差動伝送線路及び前記平衡差動伝送線路の一方から伝播する横電磁(TEM)又は準TEM波の電磁エネルギーを受信する手段であって、前記TEM波が、縦方向の中心線に関して対称の第1横電界分布を有する、手段と、
前記受信した電磁エネルギーを前記不平衡差動伝送線路及び平衡差動伝送線路の他方へ伝送する手段であって、前記TEM波が、前記縦方向の中心線に関して対称の第2横電界分布を有する、手段と、
前記不平衡及び平衡差動伝送線路間の遷移領域に沿って、前記第2電磁界分布に適合するように前記第1電磁界分布を対称に再構成する手段を備え、
前記対称に再構成する手段が、少なくとも約10:1の帯域幅上で前記電磁エネルギーの反射を最小化する、広帯域バラン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−5433(P2013−5433A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−88442(P2012−88442)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88442(P2012−88442)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
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