説明

同軸ケーブルの端末構造

【課題】同軸ケーブルの端末構造の軸線方向長さを短縮すると共に同軸ケーブルの端末処理を容易に行うことを目的とする。
【解決手段】内部導体2、内部絶縁層3、外部導体4及び外部絶縁層5からなる同軸ケーブル1の端末構造において、同軸ケーブル1に、周方向に延設されていると共に少なくとも外部絶縁層5を切断して外部絶縁層5を軸線方向に分断させる第一切断部6と、第一切断部6よりも軸線方向の末端側に配設され、周方向の全周に亘って延設されているとともに外部絶縁層5及び外部導体4を切断して外部絶縁層5及び外部導体4をそれぞれ軸線方向に分断させる第二切断部7と、がそれぞれ形成されており、同軸ケーブル1の末端面には、内部導体2及び外部導体4にそれぞれ電気的に導通される導電体からなる接続端子9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルの端末構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のデータを高速で処理する情報通信機器やデジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、医療機器等では、同軸ケーブルを配線材として使用するケースが増加している。
一般の通信信号の伝送に使用する同軸ケーブルの概略構成としては、通信信号を伝送する内部導体がケーブル中心部分に配設され、この内部導体の外周面に誘電体からなる内部絶縁層が被覆され、この内部絶縁層の外周面に電磁ノイズ障害の発生を防止するための外部導体が被覆され、この外部導体の外周面に誘電体からなる外部絶縁層が被覆された構成になっている。このような同軸ケーブルにおいては、電気回路基板等に電気的に接続する際、接続相手の接合部に接続できるように同軸ケーブルを端末処理する必要がある。
【0003】
従来、同軸ケーブルの端末処理方法としては、工具等を用いて、内部導体の端部を覆っている内部絶縁層、外部導体及び外部絶縁層を電気接続する長さ分だけ取り除いて内部導体を露出させるとともに、外部絶縁層を取り除いて外部導体の端部を露出させる方法がある。このように端末処理された同軸ケーブルは、露出した内部導体の端部をはんだ等の導電体で接続相手の接合部に溶接したり導電性接着剤で接点端子に接着したりすることで、接続相手に電気的に接続される。さらに、同軸ケーブルでは、外部導体を接地電位にして電磁ノイズ障害の発生を防止するため、露出した外部導体の端部を、アース等に接続された接地導電体にはんだ等で溶接したり導電性接着剤で接着したりする。
【0004】
また、同軸ケーブルの端末処理方法として、従来、例えば下記特許文献1に示されているような、複数本の同軸ケーブルを一列に揃えてフラットケーブルとし、複数の同軸ケーブルの外部導体をまとめて接地させる方法が知られている。この方法は、複数本の同軸ケーブルの端部を並列に並べて配置する。また、各同軸ケーブルの端部において、内部導体を電気接続する長さ分だけ露出させるとともに、露出した内部導体と外部導体とが導通しない程度の長さ分だけ内部絶縁層の端部を露出させ、さらに、外部導体の端部も十分な長さをとって露出させる。そして、露出した各外部導体の端部同士を導電体からなるグランドバーを介して電気的に接続させてこのグランドバーを介して接地させたり、各外部導体を撚って一本の撚り線としてこの撚り線を介して接地させたりする。
【0005】
また、同軸ケーブルの端末処理方法としては、例えば下記特許文献2に示されているような方法が提案されている。この方法は、まず、外部絶縁層の端部を取り除いて外部導体の端部を露出させる。次に、外部絶縁層を所定位置で切断して外部絶縁層の端部の一部を分離させる。次に、この外部絶縁層の分離体を外部導体の外周面に沿って同軸ケーブルの末端側に若干移動させ、分離体を外部絶縁層の本体から離間させる。その後、この分離体と外部導体とをはんだ等で接合させる。次に、上記した分離体を末端反対側(外部絶縁層本体側)に移動させる。これにより、分離体とともに外部導体の端部も移動し、分離体と外部絶縁層本体との間において、外部導体の一部が径方向外側に向けて鍔状に弛む。次に、鍔状に弛んだ外部導体を全周に亘って切断する。その後、分離体を末端側に移動させ、分離体とともに外部導体の端部を内部絶縁層から抜き取る。これにより、内部絶縁層の端部が露出される。その後、露出した内部絶縁層を所定の位置で切断して内部絶縁層の端部を内部導体から抜き取り、内部導体を電気接続する長さ分だけ露出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−196418号公報
【特許文献2】特開2005−312093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術では、端末処理後の同軸ケーブルの端末構造が、露出した筒状の外部導体の先端から、露出した内部導体が突出された構成になっており、接続相手の接合部に固定される接続部分(露出された内部導体の端部)とアース等に接続される接地部分(露出された外部導体の端部)とが同軸ケーブルの軸線方向に直列に連設された構成になっている。したがって、同軸ケーブルの端末構造の軸線方向長さが長くなり、通信機器や電気機器等の小型化や薄型化の妨げとなるという問題がある。
また、極細の同軸ケーブルにおいては、内部導体が非常に細くて柔軟であるため、露出した内部導体を接続相手の接合部に固定させる際の内部導体の取り扱いが難しく、また、露出した内部導体は細くて破断し易い。したがって、極細の同軸ケーブルを端末処理して接続する作業は難しく、高度な技量若しくは専用の機械が必要であるという問題がある。
さらに、極細の同軸ケーブルを端末処理する場合、外部絶縁層、外部導体、及び内部絶縁層の端末部分を取り除くための特殊な専用工具が必要であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、同軸ケーブルの端末構造の軸線方向長さを短縮することができるとともに、特殊な専用工具等を用いることなく、同軸ケーブルの端末処理を容易に行うことができる同軸ケーブルの端末構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る同軸ケーブルの端末構造は、内部導体の外周面が内部絶縁層で被覆され、該内部絶縁層の外周面が外部導体で被覆され、該外部導体の外周面が外部絶縁層で被覆された同軸ケーブルの端末構造において、前記同軸ケーブルには、該同軸ケーブルの周方向に延設されているとともに少なくとも前記外部絶縁層を切断して該外部絶縁層を前記同軸ケーブルの軸線方向に分断させる第一切断部と、該第一切断部よりも前記同軸ケーブルの軸線方向の末端側に配設され、前記同軸ケーブルの周方向の全周に亘って延設されているとともに前記外部絶縁層及び前記外部導体を切断して該外部絶縁層及び外部導体をそれぞれ前記同軸ケーブルの軸線方向に分断させる第二切断部と、がそれぞれ形成されており、前記同軸ケーブルの末端面には、前記内部導体及び前記外部導体にそれぞれ電気的に導通される導電体からなる接続端子が設けられていることを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、同軸ケーブルの外周面を刃等で切開して第一、第二切断部を形成するとともに、同軸ケーブルの末端面にはんだ等で接続端子を形成することで、上記した同軸ケーブルの端末構造が形成される。したがって、外部絶縁層や外部導体及び内部絶縁層の端部を取り除く必要が無く、内部導体の端部は内部絶縁層や外部導体、外部絶縁層で被覆された状態となる。
また、上記した同軸ケーブルを接続相手に接続する際には、同軸ケーブルの末端面に設けられた接続端子を接続相手の接合部に当接させる。このとき、前記した接続端子は、内部導体及び外部導体にそれぞれ電気的に導通されているので、少なくとも内部導体よりも断面積が大きい端子となる。また、外部導体が第二切断部によって分断されているので、第二切断部を挟んで軸線方向両側の外部導体同士は互いに電気的に絶縁された状態となる。したがって、接続端子を介して外部導体の末端部が接続相手の接合部に対して電気的に導通されても、第二切断部よりも軸線方向中央側(末端側の反対側)の外部導体の中間部は、前記接続端子からの電気的な影響を受けにくい。
さらに、第二切断部よりも軸線方向中央側に形成された第一切断部から外部導体の中間部にアース(接地)やバイアス等を接続させることが可能である。
【0011】
また、本発明に係る同軸ケーブルの端末構造は、前記第一切断部に、前記外部導体に電気的に導通される導電体からなる接続部が設けられていることが好ましい。
これにより、接続部にアース線やバイアスへの接続線を接続させることで、外部導体の中間部とアースやバイアス等とが電気的に接続される。
【0012】
また、本発明に係る同軸ケーブルの端末構造は、前記第二切断部よりも末端側の同軸ケーブル末端部がフォーミングされていることが好ましい。
これにより、接続相手に合わせて同軸ケーブルの端末部分の形状がフォーミングされ、このフォーミングされた同軸ケーブルの末端部が接続相手に嵌合される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る同軸ケーブルの端末構造によれば、外部絶縁層や外部導体及び内部絶縁層の端部を取り除く必要が無いので、特殊な専用工具等を用いることなく、同軸ケーブルの端末処理を容易に行うことができる。また、内部導体の端部が内部絶縁層や外部導体、外部絶縁層で被覆されたままの状態で同軸ケーブルは接続相手に接続されるので、接続時の取り扱いは容易であり、また、内部導体は破断されにくい。これにより、同軸ケーブルの端末処理を容易に行うことができるとともに、品質の安定化を図ることができる。
さらに、本発明に係る同軸ケーブルの端末構造によれば、同軸ケーブルの端末構造の軸線方向長さを短縮することができ、通信機器や電気機器等の小型化や薄型化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための同軸ケーブルの破断斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を説明するための同軸ケーブルの断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を説明するための同軸ケーブルの断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を説明するための同軸ケーブルの断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を説明するための同軸ケーブルの断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を説明するための同軸ケーブルの断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態を説明するための同軸ケーブルの断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態を説明するための同軸ケーブルの破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る同軸ケーブルの端末構造の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0016】
まず始めに、本実施の形態における同軸ケーブル1の構成について図1に基いて説明する。図1は同軸ケーブル1の破断斜視図である。
【0017】
図1に示すように、同軸ケーブル1は、内部導体2の外周面が内部絶縁層3で被覆され、内部絶縁層3の外周面が外部導体4で被覆され、外部導体4の外周面が外部絶縁層5で被覆された構成からなるケーブルである。内部導体2は、電気信号を伝送させるための導電体からなる芯線である。内部絶縁層3は、内部導体2の外周面を全周に亘って被覆する筒体である。外部導体4は、電磁ノイズ障害の発生を防止するためのバリア層であり、例えば銅線を編み込んだ編組線からなる導電体である。外部絶縁層5は、外部導体4の外周面を全周に亘って被覆するシース管(保護被膜)である。上記した内部絶縁層3及び外部絶縁層5は、柔軟性及び展伸性を有する例えばフッ素樹脂等の誘電体からなる。上記した内部導体2、内部絶縁層3、外部導体4及び外部絶縁層5は軸線O方向に相対的に移動可能になっている。すなわち、内部絶縁層3は内部導体2の外周面及び外部導体4の内周面に沿って軸線O方向に摺動可能であり、外部絶縁層5は外部導体4の外周面に沿って軸線O方向に摺動可能である。
【0018】
次に、上記した構成からなる同軸ケーブル1の端末構造について説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
まず、同軸ケーブル1の端末構造の第1の実施の形態について、図2から図5に基いて説明する。図2から図5は同軸ケーブル1の端部を同軸ケーブル1の軸線O方向に切断した断面図である。
なお、図2における左側が同軸ケーブル1の軸線O方向の末端側であり、以下、単に「末端側」と記す。また、図2における右側、つまり、上記した末端側の反対側は同軸ケーブル1の軸線O方向の中央側であり、以下、単に「中央側」と記す。また、以下の実施の形態の説明では、軸線O方向を「軸方向」と記し、同軸ケーブル1の径方向、つまり、軸線Oに直交する方向を「径方向」と記し、同軸ケーブル1の周方向、つまり、軸線O回りの方向を「周方向」と記す。
【0020】
まず、同軸ケーブル1の端末構造の構成について説明する。
図2に示すように、同軸ケーブル1の端部には、周方向に延設された第一、第二切断部6,7が軸方向に間隔をあけて形成されている。これら第一、第二切断部6,7は、外部導体4及び外部絶縁層5をそれぞれ切断して外部絶縁層5を軸方向に分断させる切れ目である。言い換えると、第一、第二切断部6,7は、その深さ(径方向長さ)が外部絶縁層5の外周面から外部導体4の内周面(内部絶縁層3の外周面)までそれぞれ達している切れ目である。また、第一、第二切断部6,7は、それぞれ同軸ケーブル1の全周に亘って延設されており、軸線Oを中心にした円環状を成している。また、第二切断部7は、第一切断部6の軸方向末端側に配設されている。
【0021】
上記した第一切断部6および第二切断部7により、外部導体4の端部が複数に分割されている。
詳しく説明すると、外部導体4には、末端分割導体40(本発明の外部導体の端部に相当する。)と、中間分割導体41と、外部導体本体42と、が備えられており、これらの部材は、末端側から末端分割導体40、中間分割導体41、外部導体本体42の順で軸方向に間隔をおいて並べて配設されている。そして、末端分割導体40の中央側の端面40aと中間分割導体41の末端側の端面41aとの間には隙間があけられており、末端分割導体40と中間分割導体41とは電気的に絶縁されている。また、中間分割導体41の中央側の端面41bと外部導体本体42の末端側の端面42aとの間には導電体(後述するアース接続部8)が介在されており、中間分割導体41と外部導体本体42とは電気的に導通されている。
【0022】
また、外部導体4と同様に、外部絶縁層5の端部が上記した第一切断部6および第二切断部7により複数に分割されている。すなわち、外部絶縁層5には、末端分割絶縁体50と、中間分割絶縁体51と、外部絶縁層本体52と、が備えられており、これらの部材は、末端側から末端分割絶縁体50、中間分割絶縁体51、外部絶縁層本体52の順で軸方向に間隔をあけて並べて配設されている。
【0023】
一方、内部絶縁層3のうち、上記第二切断部7の内側に位置する部分には、径方向外側に膨出する弛み部30が全周に亘って形成されている。この弛み部30は、内部絶縁層3の一部を拡径変形させた部位であり、第二切断部7の内側に形成されており、上記した末端分割導体40と中間分割導体41との間に介在されている。
【0024】
また、上記した第一切断部6には、上記した中間分割導体41及び外部導体本体42に電気的に導通された導電体からなるアース接続部8(本発明における接続部に相当する。)が設けられている。アース接続部8は、第一切断部6内に充填された導電性接着剤からなり、外部絶縁層5の外周面の径方向外側に突出されている。このアース接続部8はアース等に接地させるための端子であり、このアース接続部8には図示せぬアース線等が接続される。
【0025】
同軸ケーブル1の末端面(先端面)には、内部導体2及び外部導体4にそれぞれ電気的に導通された接続端子9が設けられており、この接続端子9を介して末端分割導体40と内部導体2とが電気的に導通されている。詳しく説明すると、内部導体2の先端部及び外部導体4の先端部は、内部絶縁層3や外部絶縁層5の末端面からそれぞれ突出されており、これら内部導体2の先端部及び外部導体4の先端部には、はんだ等の導電体からなる接続端子9が接合されている。接続端子9は、内部導体2の先端部外周面と外部導体4の先端部内周面との間に充填されているとともに内部導体2及び外部導体4の各先端面を覆っている。この接続端子9は、図示せぬ接続相手の接合面の形状に合わせた形状に形成される。例えば、接続相手の接合面が平面である場合、この接続端子9の先端面(接合面9a)は軸線Oに対して垂直に形成される。なお、図2に示す接続端子9は、その接合面9aの外形が外部導体4の断面視における外形と略同一に形成されており、接続端子9の外周面が外部導体4の外周面と略面一に形成されている。
【0026】
次に、上記した同軸ケーブル1の端末構造の形成方法、つまり、同軸ケーブル1の端末処理方法について説明する。
【0027】
まず、図3に示すように、同軸ケーブル1の外部絶縁層5を、外部導体4に対して相対的に、軸方向に沿って中央側に移動させる。これにより、外部絶縁層5の末端面から外部導体4、内部導体2及び内部絶縁層3が突出され、外部導体4の末端部が露出される。
【0028】
次に、図4に示すように、同軸ケーブル1の端部において、軸方向に間隔をおいて2箇所に切り込みを入れ、上記した第一切断部6及び第二切断部7をそれぞれ形成する。これにより、外部導体4の端部は、末端分割導体40と中間分割導体41と外部導体本体42とに分割され、末端分割導体40と中間分割導体41とが電気的に絶縁された状態となる。また、外部絶縁層5の端部は、末端分割絶縁体50と中間分割絶縁体51と外部絶縁層本体52とに分割される。
【0029】
次に、図5に示すように、内部絶縁層3の端部を中央側に移動させ、内部絶縁層3のうち、第二切断部7の内側に位置する部分に弛み部30を形成する。これにより、内部絶縁層3の末端面が中央側に寄せられ、内部絶縁層3の末端面から内部導体2及び外部導体4が突出され、内部導体2の末端部が露出される。また、上記した弛み部30が末端分割導体40と中間分割導体41との間に介在されるので、末端分割導体40と中間分割導体41との絶縁が確実となる。
【0030】
次に、図2に示すように、内部絶縁層3及び外部絶縁層5の各末端面から突出した内部導体2及び外部導体4の各末端部に、はんだ等の導電体を接合させて接続端子9を形成する。また、第一切断部6に導電性接着剤を充填してアース接続部8を形成する。
以上により、同軸ケーブル1の端末処理が完了し、同軸ケーブル1の端末構造が形成される。
そして、端末処理が完了した同軸ケーブル1は、接続端子9の接合面9aを図示せぬ接続相手の接合部に当接させることにより、同軸ケーブル1と図示せぬ接続相手とを電気的に接続する。また、アース接続部8に図示せぬアース線などを接合させることにより、同軸ケーブル1の外部導体4を接地させる。
【0031】
上記した構成からなる同軸ケーブルの端末構造によれば、内部絶縁層3、外部導体4及び外部絶縁層5の端部を取り除く必要が無いので、特殊な専用工具等を用いることなく、同軸ケーブル1の端末処理を容易に行うことができる。
【0032】
また、内部導体2の端部を電気接続する長さ分だけ露出させる必要が無く、内部導体2の端部が内部絶縁層3、外部導体4及び外部絶縁層5で被覆されたままの状態で図示せぬ接続相手に接続されるので、接続時の取り扱いは容易であり、また、内部導体2は破断されにくい。これにより、同軸ケーブル1の端末処理を容易に行うことができるとともに、品質の安定化を図ることができる。
【0033】
さらに、上記した同軸ケーブル1の端末構造によれば、同軸ケーブル1の端末構造の軸方向長さを短縮することができ、通信機器や電気機器等の小型化や薄型化に対応することができる。
【0034】
また、上記した同軸ケーブル1の端末構造によれば、第一切断部6にアース接続部8が設けられており、このアース接続部8を介して外部導体4が接地されるので、外部導体4の接地を容易に行うことができ、電磁ノイズ障害の発生の防止を容易に実現することができる。
【0035】
また、上記した同軸ケーブル1の端末構造によれば、末端分割導体40が内部導体2に電気的に導通されているので、末端分割導体40が図示せぬ接続相手の接合部に電気的に接続されることで、図示せぬ接続相手の接合部と内部導体2とが電気的に接続される。すなわち、内部導体2の端部だけでなく、外部導体4の端部(末端分割導体40)が同軸ケーブル1側の接合部となるので、同軸ケーブル1側の接合面積が大きくなる。これにより、同軸ケーブル1を接続相手に接続させ易くなり、接続不良や信号強度低下などの不具合を抑制することができる。
【0036】
さらに、上記した同軸ケーブル1の端末構造では、末端分割導体40と内部導体2とが接続端子9を介して電気的に導通されているので、同軸ケーブル1側の接合面積が大きくなるとともに、図示せぬ接続相手の接合面の形状に合わせて形成可能である。これにより、様々な形式の接続相手に柔軟に対応可能であり、汎用性の高い同軸ケーブル1の端末構造となる。
【0037】
[第2の実施の形態]
次に、同軸ケーブル1の端末構造の第2の実施の形態について、図6、図7に基いて説明する。図6、図7は同軸ケーブル1の端部を軸方向に切断した断面図である。
なお、上述した第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0038】
本実施の形態では、同軸ケーブル1の外部絶縁層5を中央側に移動させる工程(図3に示す工程)を行わずに、同軸ケーブル1の端部に第一切断部6及び第二切断部7をそれぞれ形成する工程(図4に示す工程)を行い、その後、内部絶縁層3の端部を中央側に移動させて弛み部30を形成する工程(図5に示す工程)を行う。
【0039】
次に、図6に示すように、末端分割絶縁体50を軸方向に沿って中央側に移動させる。これにより、末端分割絶縁体50の末端側の端面から外部導体4の末端部(末端分割導体40の末端側の端部)が突出して露出される。また、末端分割絶縁体50の中央側の端面と中間分割絶縁体51の末端側の端面とが近接し、末端分割導体40と中間分割導体41との絶縁部分(弛み部30)が閉塞される。
【0040】
次に、図7に示すように、内部絶縁層3及び外部絶縁層5の各末端面から突出した内部導体2及び外部導体4の各末端部に、はんだ等の導電体を接合させて接続端子109を形成する。なお、図7に示す接続端子109は、内部導体2の末端部の外周面と外部導体4の末端部の内周面との間にはんだ等を充填するとともに、外部導体4の末端部の外周にはんだ等を周設させることで形成されている。そして、接続端子109の接合面109aの外形は外部絶縁層5の断面視における外形と略同一に形成されており、接続端子109の外周面が外部絶縁層5の外周面と略面一に形成されている。
【0041】
[第3の実施の形態]
次に、同軸ケーブル1の端末構造の第3の実施の形態について、図8に基いて説明する。図8は同軸ケーブル1の末端部を表した斜視図である。
なお、上述した第1、第2の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0042】
本実施の形態では、図8に示すように、第二切断部7よりも末端側の同軸ケーブル末端部1aが、接続相手の形状に合わせて所定の形状にフォーミングされている。具体的に説明すると、同軸ケーブル末端部1aは、断面視楕円形(長方円形)状に径方向に圧縮変形された形状になっている。この同軸ケーブル末端部1aのフォーミングは、少なくとも同軸ケーブル1の端部に第二切断部7を形成した後に行うことが好ましい。
【0043】
上記した構成の、同軸ケーブル1の端末構造によれば、同軸ケーブル末端部1aが接続相手に合わせた形状に形成されるので、このフォーミングされた同軸ケーブル末端部1aを接続相手に嵌合させることができる。したがって、コネクタ等の部品を装着させることなく、接続端子9を接続相手の接合面に確実に当接させることができる。
【0044】
以上、本発明に係る同軸ケーブルの端末構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、第一切断部6に、アース線に接続させるためのアース接続部8を形成しているが、本発明は、第一切断部6に、バイアス回路に接続させるためのバイアス接続部を形成してもよく、或いは、その他の外部構造に接続させる接続部を形成してもよい。さらに、本発明は、上記したアース接続部8やバイアス接続部等の接続部を省略することも可能である。例えば、図示せぬアース線の端子を第一切断部6に挿入して外部導体4に直接接合させてもよい。
【0045】
また、上記した実施の形態では、第一切断部6がケーブル全周に亘って切開されているが、本発明は、第一切断部が全周に亘って切開されていなくてもよく、例えば、半周程度に亘って切開された第一切断部であってもよい。
また、上記した実施の形態では、第一切断部6が外部絶縁層5及び外部導体4をそれぞれ切断しているが、本発明における第一切断部は、少なくとも外部絶縁層を切断していればよく、外部導体を切断していなくてもよい。例えば、第一切断部の深さが外部導体の外周面までであってもよく、或いは、外部導体の厚さ方向の中間部分までであってもよい。
また、上記した実施の形態では、第一切断部6が1つだけ形成されているが、本発明は、第一切断部6が軸線O方向に間隔をあけて複数形成されていてもよい。
【0046】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 同軸ケーブル
1a 同軸ケーブル末端部
2 内部導体
3 内部絶縁層
4 外部導体
5 外部絶縁層
6 第一切断部
7 第二切断部
8 アース接続部(接続部)
9、109 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体の外周面が内部絶縁層で被覆され、該内部絶縁層の外周面が外部導体で被覆され、該外部導体の外周面が外部絶縁層で被覆された同軸ケーブルの端末構造において、
前記同軸ケーブルには、
該同軸ケーブルの周方向に延設されているとともに少なくとも前記外部絶縁層を切断して該外部絶縁層を前記同軸ケーブルの軸線方向に分断させる第一切断部と、
該第一切断部よりも前記同軸ケーブルの軸線方向の末端側に配設され、前記同軸ケーブルの周方向の全周に亘って延設されているとともに前記外部絶縁層及び前記外部導体を切断して該外部絶縁層及び外部導体をそれぞれ前記同軸ケーブルの軸線方向に分断させる第二切断部と、
がそれぞれ形成されており、
前記同軸ケーブルの末端面には、前記内部導体及び前記外部導体にそれぞれ電気的に導通される導電体からなる接続端子が設けられていることを特徴とする同軸ケーブルの端末構造。
【請求項2】
請求項1記載の同軸ケーブルの端末構造において、
前記第一切断部には、前記外部導体に電気的に導通される導電体からなる接続部が設けられていることを特徴とする同軸ケーブルの端末構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の同軸ケーブルの端末構造において、
前記第二切断部よりも末端側の同軸ケーブル末端部がフォーミングされていることを特徴とする同軸ケーブルの端末構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−226791(P2010−226791A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68359(P2009−68359)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】