説明

同軸ケーブル接続用コネクタ

【課題】嵌合規格の異なる2種類のコネクタの何れにも容易に対応できる同軸ケーブル接続用コネクタを提供する。
【解決手段】同軸ケーブル接続用コネクタ10は、機器筐体に装着されるコネクタ本体11と、第1の嵌合規格例えば国内嵌合規格に対応させた第1のコネクタ用リング40及び第2の嵌合規格例えば海外嵌合規格に対応させた第2のコネクタ用リング60に分割し、上記コネクタ本体11に対して第1のコネクタ用リング40と第2のコネクタ用リング60を選択的に着脱可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合規格の異なる2種類の同軸コネクタに対応可能な同軸ケーブル接続用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
CATV(ケーブルテレビジョン)システムでは、受信アンテナを設置したヘッドエンド装置から、幹線同軸ケーブルにより放送波を伝送し、分配器等を用いて加入者に供給している。上記幹線同軸ケーブルにより伝送される信号は、伝送中に減衰するので、所定の間隔で幹線増幅器を設け、伝送する放送波を増幅して所定のレベルに保っている。上記幹線増幅器では、幹線同軸ケーブルと接続する入出力端子として同軸コネクタ(レセプタクル)が使用されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
上記幹線増幅器は、長期の使用による性能の劣化、あるいは故障等によって機器交換を行う必要がある。上記幹線増幅器としては、国内メーカ製だけでなく海外メーカ製のものも多く使用されている。
しかし、国内メーカ製と海外メーカ製の幹線増幅器では、同軸コネクタの接続部構造が異なっており、海外メーカ製機器を老朽化あるいは故障等によって交換する場合には、次のような対応が必要である。
【0004】
(1)海外メーカ製機器に対応する変換コネクタを接続する。
(2)国内規格コネクタと海外規格コネクタの2種類の製品を用意する。
上記(1)に示す海外メーカ製機器に対応する変換コネクタを接続する方法では、次のような問題がある。
(a)機器筐体から変換コネクタ先端までの突出し長さが長くなる。
機器筐体からの突出し長さが長くなることによって、架空線同軸ケーブルの再加工が必要になり、交換作業が難しくなる。
(b)コネクタの接続部が増加する。
コネクタにおける中心導体の接続はスリ割り付きコンタクトのバネ性を利用した接触接続であるため、接続点の増加は信号劣化や、接触不良等の品質劣化につながる。
【0005】
また、上記(2)に示す国内規格コネクタと海外規格コネクタの2種類の製品を用意する方法では、次のような問題がある。
(a)製品在庫管理のコストアップ。
製品ラインアップが倍になり、在庫が増加する。
(b)顧客管理の保守品が増加する。
故障等に対応するため、顧客がメンテナンス機器を所持するが、製品が倍となる。
(c)製品の発注時に、どちらのコネクタ品が必要か、現地調査が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−233265号公報
【特許文献2】特開2006−147272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにCATVシステム等において使用される幹線増幅器は、国内メーカ製と海外メーカ製のものが混在しており、海外メーカ製の幹線増幅器を老朽化あるいは故障等によって交換する場合、国内メーカ製機器と海外メーカ製機器における同軸コネクタの仕様が異なるため、海外メーカ製機器に対応する変換コネクタを接続したり、国内規格コネクタと海外規格コネクタの2種類の製品を用意する必要があり、簡単に交換することができなかった。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、外観及び製品サイズを著しく変更することなく、嵌合規格の異なる2種類のコネクタの何れにも容易に対応できる同軸ケーブル接続用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、本体シェルの一方の開口部に機器取付ねじ部が設けられ、他方の開口部にリング接続用ねじ部が設けられたコネクタ本体と、前記本体シェルの中心軸に沿って設けられる中心コンタクトと、前記中心コンタクトを前記本体シェルの中心軸に位置するように保持する絶縁体と、前記コネクタ本体のリング接続用ねじ部に着脱可能に設けられ、第1の嵌合規格に適合したコネクタ嵌合ねじ部を備えた第1のコネクタ用リングと、前記コネクタ本体のリング接続用ねじ部に着脱可能に設けられ、第2の嵌合規格に適合したコネクタ嵌合ねじ部を備えた第2のコネクタ用リングとを具備し、前記コネクタ本体に対して前記第1のコネクタ用リングと前記第2のコネクタ用リングを選択的に装着し、嵌合規格の異なる2種類のコネクタに対応できるように構成したことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、前記第1の発明に係る同軸ケーブル接続用コネクタにおいて、前記コネクタ本体は、前記絶縁体を少なくとも、装着された前記第1のコネクタ用リングあるいは第2のコネクタ用リングの内周側且つ前記中心コンタクトの外周側に設けられる第1絶縁体と、前記本体シェルの内周側且つ前記中心コンタクトの外周側に設けられ前記中心コンタクトを挿通して保持する第2絶縁体と、により構成し、
前記第1絶縁体と前記中心コンタクトとの間に空気層を設け、該コネクタ本体に前記第1のコネクタ用リングあるいは前記第2のコネクタ用リングを装着した際に前記空気層の外周側領域に前記コネクタ用リングの構成部材を位置させてインピーダンス整合を行い、嵌合規格の異なるコネクタ用リングの使用によりインピーダンス整合の差を生じないように構成したことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、前記第2の発明に係る同軸ケーブル接続用コネクタにおいて、前記第1の嵌合規格と前記2の嵌合規格は夫々、ミリねじによる規格とインチねじによる規格であって、接続対象であるプラグの挿入部分のねじ込み深さが異なるものであり、
本体シェルの外周と第1及び第2のコネクタ用リングの外周は、同一の規格の6角フランジの形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば幹線増幅器を老朽化あるいは故障等によって交換する場合、嵌合規格の異なる2種類の同軸ケーブル接続用コネクタが混在している場合であっても、2種類の規格の何れにも対応することができる。
また、コネクタ本体のインピーダンスを規定値より高く設定し、前記コネクタ本体に第1のコネクタ用リングあるいは第2のコネクタ用リングを装着することでインピーダンス整合を行っているので、コネクタ本体に嵌合規格の異なるコネクタ用リングを装着しても、インピーダンス整合を確実に行うことができる。
また、コネクタ本体は、絶縁体の内側に空気層を設けて絶縁体部の混合比率を調整することにより、従来の製品サイズと同等の大きさに設定でき、外観及び製品サイズを著しく変更することなく、嵌合規格の異なる2種類のコネクタの何れにも容易に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る同軸ケーブル接続用コネクタの基本的な構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は同実施形態におけるコネクタ本体の本体シェルのみの構成を示す側断面図、(b)は本体シェルに組み込まれる部品を分解して示す側断面図である。
【図3】同実施形態における本体シェル内に部品を組み込んだ状態を示し、(a)は側断面図、(b)は正面図である。
【図4】(a)は同実施形態における第1のコネクタ用リングの構成を示す側断面図、(b)は第2のコネクタ用リングの構成を示す側断面図である。
【図5】(a)は同実施形態におけるコネクタ本体に第1のコネクタ用リングを装着した状態を示す側断面図、(b)はコネクタ本体に第2のコネクタ用リングを装着した状態を示す側断面図である。
【図6】同実施形態の式−2を説明するための同軸線路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る同軸ケーブル接続用コネクタ10の基本的な構成を示す斜視図である。同軸ケーブル接続用コネクタ10は、機器筐体に装着されるコネクタ本体11と、第1の嵌合規格例えばミリねじを用いる国内嵌合規格に対応させた第1のコネクタ用リング40及び第2の嵌合規格例えばインチねじを用いる海外嵌合規格に対応させた第2のコネクタ用リング60に分割した構成とし、上記コネクタ本体11に対して第1のコネクタ用リング40と第2のコネクタ用リング60を選択的に着脱可能に設けている。
【0015】
上記のようにコネクタ本体11に対して嵌合規格の異なる第1のコネクタ用リング40及び第2のコネクタ用リング60を着脱可能に設けることにより、嵌合規格の異なる2種類のコネクタ例えば国内規格コネクタ及び海外規格コネクタの何れにも対応させることが可能になる。
【0016】
次に、上記コネクタ本体11、第1のコネクタ用リング40及び第2のコネクタ用リング60の詳細について説明する。
図2(a)はコネクタ本体11の本体シェル12のみの構成を示す側断面図、同図(b)は本体シェル12に組み込まれる部品を分解して示す側断面図である。図3は本体シェル12内に部品を組み込んだ状態を示し、(a)は側断面図、(b)は正面図である。
【0017】
本体シェル12は、図2(a)に示すように導電体により略筒状に構成され、前端及び後端がともに開口し、前端開口部13側がリング取付部15、後端開口部14側が機器取付部16となっている。
本体シェル12の前端開口部13は、後端開口部14より大径に形成され、リング取付部15の略中央外周に沿って六角フランジ(例えば対辺の間隔が26mmである規格HEX26)17が形成されると共に、この六角フランジ17に対応する内周に沿って、第1のコネクタ用リング40及び第2のコネクタ用リング60を螺着するためのリング接続用ねじ部(例えば規格M22×1)18が設けられる。上記本体シェル12は、前端開口部13の前端内径がリング接続用ねじ部18より少し大径に形成される。
【0018】
また、本体シェル12には、機器取付部16の外周に沿って機器取付ねじ部21が設けられる。この機器取付ねじ部21は、従来の同軸ケーブル接続用コネクタと同じ規格で形成されており、機器筐体(幹線増幅器)に装着される。更に本体シェル12の機器取付部16には、後端開口部14の中央部内周に沿ってOリング装着用の溝22が設けられると共に、根元(機器筐体との装着面)に近接する外周に沿ってOリング装着用の溝23が設けられる。
【0019】
更に、本体シェル12の内側には、上記リング接続用ねじ部18から後端開口部14方向に行くに従って順次径が小さくなるように段差部24a、24b、24cが設けられる。上記段差部24a、24b、24cは、本体シェル12内に組み込まれる各部品の位置決めを行うストッパの作用を有する。上記本体シェル12は、前端開口部13の開口端から段差部24aまでの距離aが例えば約14.5mmに設定される。
【0020】
上記本体シェル12内には、図2(b)に示す中心コンタクト25が第1ないし第3の絶縁体26〜28と共に組み込まれ、前記第1の絶縁体26は固定金具29により本体シェル12内に固定される。この場合、上記中心コンタクト25は、第1ないし第3の絶縁体26〜28により同軸状に設けられる。本例では、第1ないし第3の絶縁体26〜28には同一の誘電率の材料を用いる。
【0021】
上記中心コンタクト25は、導電性部材により棒状に形成され、所定長さの端子部25aの先端にピン接触部25bが設けられている。ピン接触部25bは、端子部25aの径より少し太く形成され、端子部25aとピン接触部25bとの境界に段差部25cが設けられる。上記ピン接触部25bは、筒状に形成すると共に長軸方向に複数のスリ割りを形成して内側方向に弾性力を与え、外部から挿入されるコンタクトピンに対して確実に接続されるようにしている。
【0022】
上記中心コンタクト25は、ピン接触部25bが第1の絶縁体26によって保持される。
上記第1の絶縁体26は、外径dの円筒状に形成され、一方の端部、すなわち、中心コンタクト挿入側の端部外周に沿って外周にフランジ26aが設けられている。このフランジ26aの外径は本体シェル12の内側に形成された段差部24bの内径に合わせて設定される。更に、第1の絶縁体26には、長手方向の中心軸に沿って円状の長穴26bが形成され、この長穴26b内にフランジ26a側から中心コンタクト25の先端部が挿入される。上記長穴26bは、フランジ26aとは反対側の先端部に順次径が小さくなるように2つの段差部26c、26dが設けられ、中心コンタクト25のピン接触部25bの先端が上記段差部26cに挿入される。フランジ26a側から最初の段差部26cまで、貫通穴26bの径は、ピン接触部25bよりも大きな一定の大きさに設定される。
【0023】
上記第1の絶縁体26は、本体シェル12内に組み込む際、固定金具29によって固定される。固定金具29は、リング状に形成されて内側に穴29aが設けられている。固定金具29の内径寸法は第1の絶縁体26の外径dに合わせて設定され、外径寸法は本体シェル12の内側に形成された段差部24aに合わせて設定され、厚さ(軸方向の長さ)も段差部24aのそれと略一致するように設定される。
【0024】
また、上記中心コンタクト25の端子部25aには、第2の絶縁体27及び第3の絶縁体28が装着される。第2の絶縁体27は、円柱状に形成され、中心軸に沿って端子挿通穴27aが設けられる。第2の絶縁体27は、外径が本体シェル12に設けられている機器取付部16の内径に合わせて設定され、端子挿通穴27aの径は中心コンタクト25の端子部25aの径に合わせて設定される。また、第2の絶縁体27の長さは、上記機器取付部16に設けられているOリング装着用の溝22を含んで段差部24cの側壁までの長さに対応するように設定される。更に第2の絶縁体27には、端子挿通穴27aの一方の端部、すなわち第3の絶縁体28と対向する側の端部にOリング装着用の溝27bが設けられる。
【0025】
上記第3の絶縁体28は、円柱状に形成され、中心軸に沿って端子挿通穴28aが設けられる。第3の絶縁体28の外径は、上記機器取付部16の内径に合わせて設定され、端子挿通穴28aの径は中心コンタクト25の端子部25aの径に合わせて設定される。また、第3の絶縁体28の厚さは、機器取付部16のOリング装着用の溝22から開口端までの長さに合わせて設定される。
【0026】
上記のように構成された各部品は、図3に示すように本体シェル12内に組み込まれる。このとき本体シェル12の機器取付部16に設けたOリング装着用の溝22にOリング31を装着すると共に、Oリング装着用の溝23にOリング32を装着する。
そして、上記各部品の組み込みに際しては、先ず、本体シェル12の前端開口部13内に第1の絶縁体26をフランジ26a側から挿入し、フランジ26aを本体シェル12内側に設けた段差部24bの内側に位置させて段差部24cの側壁に当接させる。次に固定金具29を第1の絶縁体26の外周に沿って嵌入し、本体シェル12の段差部24aに内側に圧入して第1の絶縁体26を固定する。
【0027】
次いで中心コンタクト25の端子部25aに第2の絶縁体27を装着する。すなわち、
中心コンタクト25の端子部25aを第2の絶縁体27の溝27a内に圧入し、中心コンタクト25の段差部25cを第2の絶縁体27に当接させて、第2の絶縁体27の位置を固定する。この状態で中心コンタクト25のピン接触部25bを本体シェル12の後端開口部14側から上記第1の絶縁体26の長穴26b内に挿入し、先端を段差部26cの内側に位置させて段差部26dの側壁に当接させる。また、このとき第2の絶縁体27は、機器取付部16の内側に嵌入する。
【0028】
そして、第2の絶縁体27に設けたOリング装着用の溝27bにOリング33を装着し、その後、中心コンタクト25の端子部25aに第3の絶縁体28を嵌め込み、機器取付部16の内側に圧入して絶縁体28の位置を固定する。このように本体シェル12の機器取付部16にOリング31、33を介在して第2の絶縁体27及び第3の絶縁体28を装着することにより、防水機能を持たせている。
【0029】
上記のように構成されたコネクタ本体11は、第1の絶縁体26の中心軸に沿って長穴26bによって空気層35aを形成すると共に、第1の絶縁体26と本体シェル12との間の空隙によって空気層35bを形成し、更に本体シェル12の内側に設けた段差部24cによって空気層35cを形成している。コネクタ本体11は、上記空気層35a、35bによって意図的に周辺よりインピーダンスの高い不整合部分を設け、第1のコネクタ用リング40あるいは第2のコネクタ用リング60が装着された際にインピーダンス整合が行われるようにしている。このインピーダンス整合については詳細を後述する。
【0030】
次に、第1のコネクタ用リング40及び第2のコネクタ用リング60について説明する。図4(a)は第1のコネクタ用リング40の構成を示す側断面図、同図(b)は第2のコネクタ用リング60の構成を示す側断面図である。
第1のコネクタ用リング40は、図4(a)に示すように第1の嵌合規格例えば国内嵌合規格に適合する第1規格用分割シェル41を備えている。この第1規格用分割シェル41は、導電体により略筒状に構成され、前端及び後端がともに開口し、前端開口部42側が第1コネクタ接合部43、後端開口部44側がコネクタ本体接合部45となっている。
【0031】
上記第1コネクタ接合部43には、外周に六角フランジ(例えば本体シェルと同じ規格HEX26)46が設けられ、前端開口部42の内周面に第1の嵌合規格に適合するコネクタ嵌合ねじ部(例えば規格M18×1 2級)47が形成される。
また、コネクタ本体接合部45の外周には、本体シェル12のリング接続用ねじ部18に接合する接続ねじ部(例えば規格M22×1)48が設けられると共に、この接続ねじ部48の後端側にOリング装着用の溝49が設けられ、この溝49にOリング50が装着される。
【0032】
上記コネクタ本体接合部45は、後端開口部44の内径Dが本体シェル12の第1の絶縁体26の外径dに対応する値に設定され、第1の絶縁体26に沿って本体シェル12内に挿入されるようになっている。前端開口部42と後端開口部44とをつなぐ段差部は、中心軸に垂直な平面状に形成される。
上記第1のコネクタ用リング40は、六角フランジ46の厚さLが約8mm、コネクタ本体接合部45の軸方向の長さLが約14.3mm、前端開口部42の深さ(六角フランジ46の前端から前端開口部42の底部までの長さ)までの長さLが10.2mmに設定される。
【0033】
また、第2のコネクタ用リング60は、図4(b)に示すように第2の嵌合規格に適合する第2規格用分割シェル61を備えている。この第2規格用分割シェル61は、導電体により略筒状に構成され、前端及び後端がともに開口し、前端開口部62側が第2コネクタ接合部63、後端開口部64側がコネクタ本体接合部65となっている。
【0034】
上記第2コネクタ接合部63には、外周に六角フランジ(例えば規格HEX26)66が設けられ、内周面に第2の嵌合規格に適合するコネクタ嵌合ねじ部(例えば規格5/8−24 UNEF)67が形成される。
また、コネクタ本体接合部65の外周には、本体シェル12のリング接続用ねじ部18に接合する接続ねじ部68が設けられると共に、この接続ねじ部68の後端側、第2コネクタ接合部63側にOリング装着用の溝69が設けられ、この溝69にOリング70が装着される。
【0035】
上記コネクタ本体接合部65は、後端開口部64の内径Dが本体シェル12の第1の絶縁体26の外径dに対応する値に設定され、第1の絶縁体26沿って本体シェル12内に挿入されるようになっている。
上記第2のコネクタ用リング60は、六角フランジ66の厚さL’が約7.65mm、コネクタ本体接合部65の軸方向の長さL’が約14.3mm、前端開口部62の深さ(六角フランジ66の前端から前端開口部62の底部までの長さ)L’が約9.85mmに設定される。
【0036】
上記のように構成された同軸ケーブル接続用コネクタ10において、第1の嵌合規格に適合させる場合にはコネクタ本体11に第1のコネクタ用リング40を装着し、第2の嵌合規格に適合させる場合にはコネクタ本体11に第2のコネクタ用リング60を装着する。
【0037】
図5(a)はコネクタ本体11に第1のコネクタ用リング40を装着した状態を示す側断面図、図5(b)はコネクタ本体11に第2のコネクタ用リング60を装着した状態を示す側断面図である。
図5(a)に示すようにコネクタ本体11に対して第1のコネクタ用リング40を装着する場合、第1のコネクタ用リング40の第1規格用分割シェル41のコネクタ本体接合部45をコネクタ本体11の本体シェル12内に前端開口部13から挿入し、リング接続用ねじ部18に第1のコネクタ用リング40の接続ねじ部48を螺合させ、六角スパナ等を用いて第1のコネクタ用リング40を回転させて締め付ける。これにより第1のコネクタ用リング40のコネクタ本体接合部45は、本体シェル12と第1の絶縁体26との間に挿入されて固定される。このとき、第1の絶縁体26の先端部と前端開口部42の底部が略同一面となると共に、コネクタ本体接合部45の突端が前端開口部13の底部(固定金具29の露出面)に密着することが望ましい。第1のコネクタ用リング40は、六角フランジ46の内周に第1の嵌合規格のコネクタ嵌合ねじ部47を設けているので、第1の嵌合規格に適合させることができる。
【0038】
また、第2の嵌合規格に適合させる場合には、図5(b)に示すように上記第1のコネクタ用リング40に代えて第2のコネクタ用リング60をコネクタ本体11に装着する。第2のコネクタ用リング60には、六角フランジ66の内周に第2の嵌合規格のコネクタ嵌合ねじ部67を設けているので、第2の嵌合規格に適合させることができる。
【0039】
第1のコネクタ用リング40及び第2のコネクタ用リング60とコネクタ本体11のねじ込み深さは、第1の嵌合規格、第2の嵌合規格ともに同じであるが、六角フランジ46、66の軸方向長さを変えることで、プラグ挿入部分のねじ込み深さを第1の嵌合規格及び第2の嵌合規格のそれぞれに対応させている。
【0040】
上記のようにコネクタ本体11と第1のコネクタ用リング40及び第2のコネクタ用リング60とに分割して構成した場合、コネクタ本体11に対し、第1のコネクタ用リング40を装着する場合と第2のコネクタ用リング60を装着する場合とでインピーダンス整合を行う必要がある。
【0041】
上記インピーダンス整合を行うため、本実施形態では、第1の絶縁体26の外径d部分に意図的に周辺よりインピーダンスの高い不整合部分(空気層35b)を設けると共に、第1のコネクタ用リング40のコネクタ本体接合部45及び第2のコネクタ用リング60のコネクタ本体接合部65の内径D部分をコネクタ本体11への装着時に第1の絶縁体26の不整合部分に接近させてインピーダンス整合を行うように構成している。上記内径D部分を持つ機構を第1のコネクタ用リング40及び第2のコネクタ用リング60で共通とすることで、嵌合規格の異なるコネクタ使用時にインピーダンス整合の差を生じることが無いようにしている。
【0042】
上記インピーダンス整合について更に詳細に説明する。
75Ω系の国内規格コネクタ、海外規格コネクタ共にプラグ側ピン直径(中心導体外径)dは、φ1.7〜1.85mmであるため、一般的な同軸ケーブル断面の特性インピーダンスZを求める下記に示す公式(式−1)
【0043】
【数1】

から、特性インピーダンスZを75Ω、d=φ1.8mmとした場合、本体シェル12の内径(外部導体内径又は絶縁体外径)dは、高周波用途で使用される代表的な誘電体(絶縁体)の誘電率ε=2.1〜3.1程度とすると、d=φ10〜14mm程度となる。
【0044】
そして、コネクタ本体11に内蔵される中心コンタクト25の外径dは、接点構造によりプラグ側ピン直径より太くなるためにd=φ2.7〜3.0程度は必要となる。この場合についても同様に誘電率ε=2.1〜3.1の絶縁体を使用した場合、インピーダンス整合に必要なコネクタ本体接合部45の内径(又は絶縁体の外径)dは、φ17〜26mm程度となり、本体シェル12の外径に肉薄してしまう。そのため従来製品サイズでは分割構造を使用した場合の従来製品サイズへの実装及び、またコネクタ部と伝送路の変化が大きくなるためにインピーダンス整合も困難となる。
【0045】
このため第1の絶縁体26部分の実効誘電率を低減させる目的で一般的な合成誘電率の下記の計算法(式−2)に従い、
【0046】
【数2】

絶縁体部の実効誘電率をε=1.15〜1.6程度となるよう第1の絶縁体26と本体シェル12との間に設けた長穴26bの空気層35aにより、混合比率を調整することでφ9〜14mm程度の絶縁体外径dが得られ、分割構造を使用した構造でもインピーダンス整合を維持したまま従来製品サイズへの実装が可能となる。
【0047】
図6は上記式−2における同軸線路80の構成例を示したもので、中心導体81の外側に絶縁体A、Bが設けられると共に、絶縁体Bの外側に外部導体82が設けられている。また、図6及び上記式−2において、dは中心導体81の外径、dは外部導体82の内径、dはA絶縁体外径、εはA絶縁体誘電率、εはB絶縁体誘電率、εは合成誘電率を示している。
【0048】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0049】
10…同軸ケーブル接続用コネクタ、11…コネクタ本体、12…本体シェル、13…前端開口部、14…後端開口部、15…リング取付部、16…機器取付部、17…六角フランジ、18…リング接続用ねじ部、21…機器取付ねじ部、22、23…Oリング装着用の溝、24a、24b、24c…段差部、25…中心コンタクト、25a…中心コンタクトの端子部、25b…ピン接触部、25c…段差部、26…第1の絶縁体、26a…フランジ、26b…長穴、26c、26d…段差部、27…第2の絶縁体、27a…端子挿通穴、27b…Oリング装着用の溝、28…第3の絶縁体、28a…端子挿通穴、29…固定金具、29a…固定金具の穴、31、32、33…Oリング、35a、35b、35c…空気層、40…第1のコネクタ用リング、41…第1規格用分割シェル、42…前端開口部、43…第1コネクタ接合部、44…後端開口部、45…コネクタ本体接合部、46、66…六角フランジ、47…コネクタ嵌合ねじ部、48…接続ねじ部、49…Oリング装着用の溝、50…Oリング、60…第2のコネクタ用リング、61…第2規格用分割シェル、62…前端開口部、63…第2コネクタ接合部、64…後端開口部、65…コネクタ本体接合部、66…六角フランジ、67…コネクタ嵌合ねじ部、68…接続ねじ部、69…Oリング装着用の溝、70…Oリング、80…同軸線路、81…中心導体、82…外部導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体シェルの一方の開口部に機器取付ねじ部が設けられ、他方の開口部にリング接続用ねじ部が設けられたコネクタ本体と、前記本体シェルの中心軸に沿って設けられる中心コンタクトと、前記中心コンタクトを前記本体シェルの中心軸に位置するように保持する絶縁体と、前記コネクタ本体のリング接続用ねじ部に着脱可能に設けられ、第1の嵌合規格に適合したコネクタ嵌合ねじ部を備えた第1のコネクタ用リングと、前記コネクタ本体のリング接続用ねじ部に着脱可能に設けられ、第2の嵌合規格に適合したコネクタ嵌合ねじ部を備えた第2のコネクタ用リングとを具備し、
前記コネクタ本体に対して前記第1のコネクタ用リングと前記第2のコネクタ用リングを選択的に装着し、嵌合規格の異なる2種類のコネクタに対応できるように構成したことを特徴とする同軸ケーブル接続用コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の同軸ケーブル接続用コネクタにおいて、
前記コネクタ本体は、前記絶縁体を少なくとも、装着された前記第1のコネクタ用リングあるいは第2のコネクタ用リングの内周側且つ前記中心コンタクトの外周側に設けられる第1絶縁体と、前記本体シェルの内周側且つ前記中心コンタクトの外周側に設けられ前記中心コンタクトを挿通して保持する第2絶縁体と、により構成し、
前記第1絶縁体と前記中心コンタクトとの間に空気層を設け、該コネクタ本体に前記第1のコネクタ用リングあるいは前記第2のコネクタ用リングを装着した際に前記空気層の外周側領域に前記コネクタ用リングの構成部材を位置させてインピーダンス整合を行い、嵌合規格の異なるコネクタ用リングの使用によりインピーダンス整合の差を生じないように構成したことを特徴とする同軸ケーブル接続用コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の同軸ケーブル接続用コネクタにおいて、
前記第1の嵌合規格と前記2の嵌合規格は夫々、ミリねじによる規格とインチねじによる規格であって、接続対象であるプラグの挿入部分のねじ込み深さが異なるものであり、
本体シェルの外周と第1及び第2のコネクタ用リングの外周は、同一の規格の6角フランジの形状を有することを特徴とする同軸ケーブル接続用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−101768(P2013−101768A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243652(P2011−243652)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【出願人】(591113459)二幸電気工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】