説明

同軸ケーブル用プラグ

【課題】モールドケースのカバーを閉じた際に中心導体保持部におけるシールドを確実に行なわせることができ同軸ケーブル用プラグを提供する。
【解決手段】モールドケース11とモールドケースカバー12は、横開き形式で開閉する。モールドケース11に設ける端子ユニット20は、シールドケース21及びケーブル保持金具22を一体に形成し、シールドケース21内に中心導体保持ケース24を設ける。シールドケース21は前面の両側にシールドカバーガイド42a、42bを設ける。一方、モールドケースカバー12には、シールドケース21に対応させてシールドカバー43を設ける。シールドカバー43は、シールド面46に接点48a、48b、49a〜49cを形成し、モールドケースカバー12を閉じた際に接点49a〜49cがシールドケース21の内側に当接し、接点48a、48bがシールドカバーガイド42a、42bに当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を伝送する同軸ケーブル用プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ受像機は、アンテナで受信された信号を入力するための高周波入力端子を備えており、この高周波入力端子として一般に接栓が使用されている。アンテナで受信された信号は、同軸ケーブルを使用してテレビ受像機まで導かれ、接栓によりテレビ受像機に接続される。しかし、接栓は、高価であり、且つ接続操作が面倒なことから、簡易に構成された同軸ケーブル用プラグを使用してテレビ受像機側の接栓に接続することが一般的に行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
同軸ケーブル用プラグは、最近は、その収容体として製造上の容易さから一辺を屈曲自在に開閉可能な樹脂によるモールド成型のケース、モールドケースが用いられ、このモールドケース内にシールドケースを設けると共に蓋側にシールドカバーを設け、上記シールドケース内で同軸ケーブルの中心導体をプラグの接続端子に接続し、その後、モールドケースのカバーを閉じる際に上記シールドカバーを上記シールドケースに被せ、同軸ケーブルの接続部から外来波が混入しないようにしている。
【特許文献1】実開昭55−61378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来の同軸ケーブル用プラグは、モールドケースのカバーを閉じる際にシールドカバーをシールドケースに被せてシールドするようにしているが、シールドケースとシールドカバーとの電気的接続が十分でなく、特に同軸ケーブル差し込み口側においては確実にシールドすることが困難であり、高周波信号に妨害を与える外来波が混入する恐れがあった。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、プラグケースのカバーを閉じた際にシールドカバーとシールドケースとの電気的接続を確実に行なわせることができ、高周波信号に妨害を与える外来波の混入を防止することができる同軸ケーブル用プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る同軸ケーブル用プラグは、プラグケースと、前記プラグケースの一辺に連結し開閉自在に設けられるケースカバーと、前記プラグケースに装着されるケーブル保持金具と、前記ケーブル保持金具に連設され、両側及び背面側にシールド面が形成されると共に前記ケーブル保持金具側の両側にシールドカバーガイドが形成されてなる上面開口のシールドケースと、前記シールドケースの底面に装着され、前記プラグケースより外部に突出して設けられる略円筒状の外導体用端子と、前記シールドケース内に絶縁した状態で設けられ、前記ケーブル保持金具により保持される同軸ケーブルの中心導体を保持する中心導体保持部と、前記中心導体保持部に連設され、前記外導体用端子の中心軸に配置される中心導体用端子と、前記シールドケースの上面開口部に対応して前記ケースカバー側に設けられるシールドカバーと、前記シールドカバー周囲のシールド面の上側縁に形成され、前記ケースカバーを閉じた際に前記シールドケースの両側及び背面のシールド面及び前記シールドカバーガイドに当接する接点とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中心導体保持部をシールドするシールドケースにシールドカバーガイドを設けると共に、シールドカバー側に前記シールドケース及びシールドカバーガイドに当接する接点を設けることにより、プラグケースのカバーを閉じた際にシールドカバーとシールドケースとの電気的接続を確実に行なわせることができ、高周波信号に妨害を与える外来波の混入を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る同軸ケーブル用プラグ10の分解斜視図、図2はモールドケースカバーを開いた状態を示す斜視図である。図3はシールドケース及びケーブル保持金具部分の詳細を示したもので、(a)は平面図、(b)はケーブル保持金具側から見た図、(c)は側面図である。図4はシールドケースとシールドカバーとの関係を示す図である。
【0009】
図1ないし図4において、11はプラグケース例えば合成樹脂を用いてモールド成型したモールドケース、12はモールドケースカバーである。このモールドケースカバー12は、モールドケース11の一辺に連結して開閉自在に設けられる。例えばモールドケース11とモールドケースカバー12は、一方の側部中央において肉薄のヒンジ部13により一体に形成されており、横開き形式で開閉できるようになっている。上記モールドケースカバー12にはヒンジ部13と反対側の側部に係止片14が形成され、また、モールドケース11には上記係止片14に対応する部分に凹部15が形成されている。上記係止片14は、先端にテーパ状の突部16を備え、モールドケース11に対してモールドケースカバー12を閉じたときに係止片14の突部16がモールドケース11の凹部15部分において係止されるようになっている。上記モールドケースカバー12を閉じた状態で、係止片14の先端に外側方向の力を加えることによって係止状態が解除され、モールドケースカバー12を開くことができる。
【0010】
上記モールドケース11及びモールドケースカバー12には、一方の端部にそれぞれ略半円状のケーブル挿通穴17a、17bが形成される。また、モールドケース11の面には、図1に示すようにケーブル挿通穴17aから離れた位置に、後述する外導体用端子23aを挿入するための穴18が形成される。そして、モールドケース11内には、上記穴18の部分に端子ユニット20が装着される。
【0011】
上記端子ユニット20は、上面開口のシールドケース21と、ケーブル保持金具22と、外部の接栓に接続するための端子部23と、上記シールドケース21内に設けられる合成樹脂製の中心導体保持ケース24からなっている。上記ケーブル保持金具22は、外部から挿入される同軸ケーブル61を保持するためのもので、シールドケース21と一体に設けられ、モールドケース11内において、ケーブル挿通穴17aの近傍に配置される。また、ケーブル保持金具22は、略U字状で開放端側が広くなっており、上端部等に同軸ケーブル61を保持するための突状の爪25が形成されている。上記同軸ケーブル61は、中心導体62の外側に絶縁体63を介して編組線からなる外導体64が設けられ、更に、この外導体64の外側に外部被覆65が設けられている。
【0012】
また、上記端子部23は、円筒状の外導体用端子23aとその中心軸に設けられるピン状の中心導体用端子23bからなっている。外導体用端子23aは、モールドケース11の穴18内から外部に突出して設けられる。上記外導体用端子23aは、円筒状に形成された部分の直径が接続する接栓のネジ部の直径に合わせて形成されると共に、側部に沿ってスリット26が形成される。すなわち、外導体用端子23aは、スリット26を形成することによって弾力性を持たせ、接栓のネジ部に確実に装着できるようにしている。
【0013】
上記シールドケース21とケーブル保持金具22は、図3に示すように一体に設けられる。上記シールドケース21には、中央部にほぼ円状の穴31が設けられると共に、穴31の両側に外導体用端子23aを保持するための保持穴32a、32bが設けられる。外導体用端子23aの上端に形成された2つの突部(図示せず)がシールドケース21の下側から上記保持穴32a、32bに挿入されて固定される。
【0014】
上記シールドケース21に設けた穴31内には中心導体保持ケース24の一部が挿入されるが、その挿入位置が所定の位置に定まるように穴31の一部例えばケーブル保持金具22側に膨らみを持たせている。
【0015】
また、シールドケース21には、両側及び背面にシールド面41が形成され、ケーブル保持金具22側には、両側にシールドカバーガイド42a、42bが設けられる。このシールドカバーガイド42a、42b間は、同軸ケーブルを引き込むために開口している。
【0016】
そして、シールドケース21の両側に位置するシールド面41には、中央部に横方向の切込みを入れると共にその両端部に縦方向の切込みを短く入れ、その切込みの上側端を外方に突出させて突部33a、33bを形成している、この突部33a、33bを形成することによってシールドケース21内に凹部が形成される。この凹部を利用してシールドケース21内に中心導体保持ケース24が装着される。この中心導体保持ケース24は、下部外周に沿って支持枠が形成されており、この支持枠に形成された突部(図示せず)が上記突部33a、33bの内側に形成される凹部に係合してシールドケース21内に嵌合される。
【0017】
上記中心導体保持ケース24内には、同軸ケーブル61の中心導体62を保持する中心導体保持部28が配設される。この中心導体保持部28は、上記シールドケース21に対し、中心導体保持ケース24により絶縁された状態で設けられる。上記中心導体保持ケース24には、ケーブル保持金具22側に溝29が形成され、この溝29部分から同軸ケーブル61の中心導体62が中心導体保持部28に挿入される。この中心導体保持部28は、ケーブル接続用の固定基板(図示せず)にワッシャ付ネジ34が螺着されており、このワッシャ付ネジ34を締め付けることによって上記同軸ケーブル61の中心導体62を上記固定基板との間で固定するようになっている。上記中心導体保持部28の固定基板には、上記端子部23におけるピン状の中心導体用端子23bが一体に連設されており、端子ユニット20をモールドケース11に装着した際に中心導体用端子23bが外導体用端子23aの中心軸に沿って位置するようになっている。
【0018】
上記端子ユニット20をモールドケース11に装着する際、シールドケース21がモールドケース11の内壁面に沿って嵌合される。この場合、シールドケース21のシールド面41に形成された突部33a、33bがモールドケース11内の側部に形成されている凹部19(図1参照)に嵌合される。
【0019】
一方、モールドケースカバー12には、上記シールドケース21に対応するようにシールドカバー43が嵌合される。モールドケースカバー12には、円柱状の嵌合用突部44が複数、例えば2つ形成されており、シールドカバー43に設けられた透孔が嵌合される。
【0020】
そして、上記シールドカバー43は、前後及び左右の各シールド面46の各角部にスリット47を設け、各シールド面46を独立させて弾性力を持たせている。また、上記各シールド面46は、上側縁を折曲げ、その折曲げ部が外側方向に突出して位置するように、かつ、上端が内側方向に向かってテーパ状となるようにして接点48a、48b、49a〜49cを形成している。この場合、48a、48bは前面側のシールド面46に設けられる接点であり、49a〜49cは両側及び背面のシールド面46に設けられる接点である。
【0021】
上記前面側のシールド面46には、上部中央に同軸ケーブル引き込み用の楕円半円状の開放面50が形成され、その両端部上方に上記接点48a、48bが設けられる。また、他の両側及び背面のシールド面46に形成される接点49a〜49cは、中央部に設けられた切り込み51によってそれぞれ2つに分割される。
【0022】
上記シールドカバー43は、モールドケースカバー12を閉じたときに接点48a、48b、49a〜49cがシールドケース21に設けられたシールドカバーガイド42a、42b及びシールド面41の内側に当接するように大きさが設定される。
【0023】
上記のようにシールドカバー43は、前後及び両側の全てのシールド面46に対して接点48a、48b、49a〜49cを設けている。この場合、前面側のシールド面46に設けた接点48a、48bは、図4に示すようにシールドケース21に設けたシールドカバーガイド42a、42bに対応している。すなわち、モールドケース11に対してモールドケースカバー12を閉じた際に、シールドケース21の上部開口面にシールドカバー43が位置し、シールドカバー43の各シールド面46に形成された接点48a、48b、49a〜49cがシールドケース21のシールドカバーガイド42a、42b及び各シールド面41の内側に圧接するようになっている。
【0024】
そして、上記のように構成された同軸ケーブル用プラグ10は、図2に示すようにモールドケース11に対し、モールドケースカバー12を開いて同軸ケーブル61を取付ける。
【0025】
上記同軸ケーブル61を同軸ケーブル用プラグ10に取付ける際は、中心導体62及び外導体64を所定長さ露出させる。この場合、外導体64は必要に応じて折返し処理を施す。そして、上記同軸ケーブル61は、外導体64の露出部分をモールドケース11内のケーブル保持金具22上に位置させると共に、中心導体62の先端をモールドケース11の中心導体保持ケース24に設けられた溝29から中心導体保持部28に挿入し、ワッシャ付ネジ34を締め付けて固定する。また、ケーブル保持金具22の上部開放端側を例えばペンチ等で挟んで締め付け、同軸ケーブル61の外導体64部分を固定し、同時に外導体64をケーブル保持金具22に電気的に接続する。これにより同軸ケーブル61の外導体64は、ケーブル保持金具22を介してアースされる。
【0026】
その後、モールドケース11に対してモールドケースカバー12を閉じる。このときシールドケース21の上部開口面にシールドカバー43が位置し、シールドカバー43の各シールド面46に形成された接点48a、48b、49a〜49cがシールドケース21のシールドカバーガイド42a、42b及びシールド面41の内側に圧接する。この結果、シールドケース21とシールドカバー43が電気的に接続され、中心導体保持ケース24と共に中心導体保持部28が確実にシールドされる。
【0027】
また、上記モールドケース11に対してモールドケースカバー12を閉じた際、モールドケースカバー12に形成されている係止片14がモールドケース11の凹部15に挿入されて係止される。
【0028】
図5は、上記のように構成された同軸ケーブル用プラグ10のシールド特性を示したもので、横軸に周波数(MHz)を取り、縦軸にシールド特性(dB)を取って示した。なお、図5における同軸ケーブル用プラグ10のシールド特性aは、従来の同軸ケーブル用プラグ、即ち、シールドケース21にシールドカバーガイド42a、42bが設けられておらず、且つシールドカバー43に接点48a、48bが設けられていない同軸ケーブル用プラグのシールド特性bを0dBとした時の比較データを示したものである。上記図5は、縦軸数値が高くなるほどシールド特性が優れていることを示している。
【0029】
上記実施形態による同軸ケーブル用プラグ10では、図5のシールド特性からも明らかなように携帯電話やPHS等で使用されている1.5GHz帯、2GHz帯、2.5GHz帯の周波数帯において特に高いシールド効果を得ることができた。
【0030】
上記実施形態によれば、中心導体保持部28をシールドするシールドケース21にシールドカバーガイド42a、42bを設けると共に、シールドカバー43のシールド面46に前記シールドケース21のシールド面41及びシールドカバーガイド42a、42bに当接する接点48a、48b、49a〜49cを設けることにより、モールドケースカバー12を閉じた際にシールドカバー43とシールドケース21との電気的接続を確実に行なわせることができ、高周波信号に妨害を与える外来波の混入を防止することができる。
【0031】
上記同軸ケーブル用プラグ10は、例えばテレビ受像機のアンテナ接続端子(接栓)に同軸ケーブルを接続する場合や、テレビ受信機能を備えたパーソナルコンピュータのテレビ信号入力端子に同軸ケーブルを接続する場合等に利用することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、モールドケース11とモールドケースカバー12を横開き形式で開閉できるように構成した場合について説明したが、その他、例えば縦開き形式で開閉できるようにしても良い。
【0033】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る同軸ケーブル用プラグの分解斜視図である。
【図2】同実施形態におけるモールドケースカバーを開いた状態を示す図である。
【図3】同実施形態におけるシールドケース及びケーブル保持金具部分の詳細を示し、(a)は平面図、(b)はケーブル保持金具側から見た図、(c)は側面図である。
【図4】同実施形態におけるシールドケースとシールドカバーとの関係を示す図である。
【図5】同実施形態におけるシールド特性を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10…同軸ケーブル用プラグ、11…モールドケース、12…モールドケースカバー、13…ヒンジ部、14…係止片、15…凹部、16…突部、17a、17b…ケーブル挿通穴、18…穴、19…凹部、20…端子ユニット、21…シールドケース、22…ケーブル保持金具、23…端子部、23a…外導体用端子、23b…中心導体用端子、24…中心導体保持ケース、25…爪、26…スリット、28…中心導体保持部、29…溝、31…穴、32a、32b…外導体用端子の保持穴、33a、33b…突部、34…ワッシャ付ネジ、41…シールド面、42a、42b…シールドカバーガイド、43…シールドカバー、44…嵌合用突部、46…シールド面、47…スリット、48a、48b、49a〜49c…接点、50…開放面、51…切込み、61…同軸ケーブル、62…中心導体、63…絶縁体、64…外導体、65…外部被覆。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグケースと、前記プラグケースの一辺に連結し開閉自在に設けられるケースカバーと、前記プラグケースに装着されるケーブル保持金具と、前記ケーブル保持金具に連設され、両側及び背面側にシールド面が形成されると共に前記ケーブル保持金具側の両側にシールドカバーガイドが形成されてなる上面開口のシールドケースと、前記シールドケースの底面に装着され、前記プラグケースより外部に突出して設けられる略円筒状の外導体用端子と、前記シールドケース内に絶縁した状態で設けられ、前記ケーブル保持金具により保持される同軸ケーブルの中心導体を保持する中心導体保持部と、前記中心導体保持部に連設され、前記外導体用端子の中心軸に配置される中心導体用端子と、前記シールドケースの上面開口部に対応して前記ケースカバー側に設けられるシールドカバーと、前記シールドカバー周囲のシールド面の上側縁に形成され、前記ケースカバーを閉じた際に前記シールドケースの両側及び背面のシールド面及び前記シールドカバーガイドに当接する接点とを具備することを特徴とする同軸ケーブル用プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−59137(P2007−59137A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241316(P2005−241316)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)