説明

名刺用情報表示パネル

【課題】資源の消費を有効に抑制できる名刺用情報表示パネルを提供する。
【解決手段】相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の基板間の密閉空間内に、色および帯電特性の異なる二種類の情報表示媒体を封入するとともに、それらの情報表示媒体を、電界の形成下で移動させて、透明基板側に所要の情報を表示させる可逆式の情報表示パネルよりなり、少なくとも氏名を表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の基板間の密閉空間内に、色および帯電特性の異なる二種類の粉流体、粒体等からなる情報表示媒体を、気体を分散媒として封入するとともに、それらの情報表示媒体を電界中で移動させて、透明基板側に所要の、文字、図形、記号、画像等を含む各種の情報を表示させる、可逆式にして乾式の情報表示パネルよりなる、書き換え可能な名刺用情報表示パネルを提案するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な名刺は、紙等に、氏名その他の所定の情報を印刷することにより作製されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、第三者から受け取った名刺は通常、それの使用目的を達成した後には廃棄を余儀なくされるものであるから、従来の名刺によれば、印刷インキおよび紙についての資源の消費が不可避であった。
【0004】
この発明は、従来の一般的な紙製の名刺が抱えるこのような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、それの目的とするところは、使用目的を達成した名刺の廃棄に起因する資源の消費を有効に抑制できる名刺用情報表示パネルを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の名刺用情報表示パネルは、相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の平行な基板間の密閉したガス封止空間、たとえば空気封止空間内に、色および帯電特性の異なる二種類の、粉流体、粒体等からなる情報表示媒体を封入するとともに、それらの情報表示媒体を電界の形成下で移動させて、透明基板側に所要の情報を表示させる、可逆式にして乾式の情報表示パネルにおいて、少なくとも氏名を表示することを特徴とするものである。
ここで好ましくは、それぞれの基板をプラスチック材料製とする。
【発明の効果】
【0006】
少なくとも一方が透明の二枚の基板間の空間内に、色および帯電特性の異なる二種類の情報表示媒体を、気体を分散媒として封入し、それらの情報表示媒体を電界中で移動させて透明基板側に所要の情報を表示させる、この種の可逆式の情報表示パネルそれ自体は、特開2003−241235号公報、特開2003−248245号公報、特開2003−248249号公報等に開示されており、これらの情報表示パネルは、電極対間での電界の形成に基いて、たとえば、情報表示媒体としてのそれぞれの粒子同士のクーロン力、電極との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力等によって、透明基板側に所要の、図形、記号、画像その他を繰返し表示し、変更しそして消去することができるとともに、応答性が高く、単純な構造で安価であることに加えて大型化が容易で、しかも、表示の安定性および鮮明度にすぐれるとともに視野角が広いという特性を有する。
【0007】
その上、この情報表示パネルの情報表示媒体は、電極への駆動電圧の印加を停止してなお、電気影像力等によって、表示情報を長期間にわたって維持できるという、すぐれた表示保存性を発揮できる利点も有する。
【0008】
この発明に係る名刺用情報表示パネルは、可逆式の乾式情報表示パネルのこのような特性を利用したものであり、これによれば、その情報表示パネルを、氏名等の名刺に必要な情報の、書き込みおよび書き換え表示手段として用い、第三者から受け取った名刺がその役割を終えた後には、他人の名刺情報を一旦消去するとともに、名刺を受け取った当人が、同一の情報表示パネルに、自分用の名刺情報を新たに書き込むことにより、その情報表示パネルを、情報表示媒体のすぐれた表示保存性の下で、自己の名刺として再使用することができる。
従って、この名刺用情報表示パネルを名刺情報表示手段として用いた名刺では、名刺情報を繰り返し書き換えて使用することにより、従来の紙製名刺等の如くの資源の消費を有効に防止することができる。
【0009】
なおここで、情報表示パネルのそれぞれの基板を、プラスチック材料製としたときは、表示パネルを十分軽量化することができ、その厚みを100μm程度にまで薄肉化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、この発明に係る名刺用情報表示パネルに、相互に書き換え可能な名刺情報を表示して名刺とした場合を例示する平面図であり、図中1は名刺用情報表示パネルの全体を示し、図の(a),(b),(c)間の白抜き矢印は、相互の書き換え例を示す。
【0011】
この名刺用情報表示パネル1は、後述する可逆式の情報表示パネルよりなる情報表示手段であり、ここでは、その全体を、情報の書き込みおよび書き換え可能域としているが、たとえば、図1(a)に仮想線で囲んで示すように、とくに使用頻度の高い領域だけを、書き込みおよび書き換え可能域とすることもできる。
【0012】
なおここでは、表面側を透明基板とした名刺用パネル1に封入した情報表示媒体の二色の色彩の任意の組合わせを、目視時のコントラストを大きくして視認性を高めるべく濃暗色と淡明色との組合わせとすることが好ましく、また、表示可能な情報中に、文字のみならず、図形、画像等をも含めることが好ましい。
【0013】
そしてまた、一の名刺用情報表示パネル1を、複数のパネル部分の組合わせ構造体として構成するときは、二色の色彩の任意の組合わせを、各パネル部分毎に、所要に応じて適宜に選択することもできる。
【0014】
このような名刺用情報表示パネル1として用いることができる、可逆式にして乾式の情報表示パネルは、図2もしくは3に要部を略線断面図で示すような基本構造を有するものとすることができる。
ここで図2(a)に示すパネルは、相互に対向して平行をなす基板11,12間の、たとえば空気を封じ込めた密閉空間内に、互いに帯電特性の異なる、図では白黒二色の、粒子群、粉流体等からなる二種類の情報表示媒体13を封入することにより構成してなる。
また図2(b)の示すパネルは、上述したところに加えて、基板11,12間に、隔壁14を、たとえば格子状に設けることによって表示セルを画成したものである。
【0015】
このような情報表示パネルでは、帯電特性が異なる情報表示媒体13に電界を付与することにより、低電位に帯電した情報表示媒体13が、クーロン力等によって高電位の電界方向に向かって引き寄せられる一方、高電位に帯電した情報表示媒体13が低電位の電界方向に向かって引き寄せられることになるので、それらの情報表示媒体13は、電界方向の変化に伴って往復運動して、透明の基板12側に所要の情報を表示することができる。
【0016】
従って、図2に示すところでは、白色粒子13Wと黒色粒子13Bとの二色の情報表示媒体13を、基板11,12の外部から形成される電界に応じて、それらの両基板間で垂直に移動させて、画素を単位として、白色粒子13Wもしくは黒色粒子13Bを観察者に視認させることで、透明基板12にその表示を行うことができる。
【0017】
図3(a)に示す情報表示パネルは、図2(a)について述べたところに加えて、それぞれの基板11,12の内面側にそれぞれの電極15,16を配設するとともに、少なくとも透明基板12側の電極16を透明電極としたものである。
そして図3(b)に示すパネルは、図3(a)に示すパネルの基板11,12間に、隔壁14を格子状その他に形成して表示セルを画成したものである。
なお、図2,3に示すこのようなパネルにおいて、白色粒子13Wを白色粉流体に、そして黒色粒子13Bを黒色粉流体に置き換えることもできる。
【0018】
ここで、図3に示す情報表示パネルを、図2について上述したように作動させるための駆動装置は、たとえば、図4に、隔壁14を有する場合について模式的に例示するように構成することができる。
なお、図4に示すところでは説明の都合上、3×3のマトリックスを示しているも、そのマトリックス数は、各電極の数を増減することで任意に選択できることはもちろんである。
【0019】
図4(a),(b)に示すところにおいて、ほぼ平行に配置した表示電極16−1〜16−3と、同じくほぼ平行に配置した対向電極15−1〜15−3とは、互いにほぼ直交した状態で、透明基板12及び対向基板11の内面側に設けられており、表示電極16−1〜16−3には、それぞれ連続して2個設けられたSW16−1−1とSW16−1−2;SW16−2−1とSW16−2−2;SW16−3−1とSW16−3−2;が各別に接続されている。
同様に、対向電極15−1〜15−3には、それぞれ連続して二個設けられたSW15−1−1とSW15−1−2;SW15−2−1とSW15−2−2;W15−3−1とSW15−3−2;が各別に接続されている。
【0020】
SW16−n−1(n=1〜3)とSW15−n−1(n=1〜3)とは、グラウンドへの接続と次段のSWへの接続とを切り換える役目を果たし、SW16−n−2(n=1〜3)とSW15−n−2(n=1〜3)とは、高電圧発生回路17への接続と低電圧発生回路18への接続とを切り換える役目を果たす。これらSWの全体がマトリックスドライブ回路19を構成する。
また、本例では、隔壁14により互いを隔離して3×3個の情報表示素子を構成しているが、この隔壁14は必須ではなく、省くこともできる。
【0021】
上述した表示電極16−1〜16−3と対向電極15−1〜15−3とからなるマトリックス電極の動作は、表示したい情報に応じて、図示しないシーケンサの制御により各SWの開閉を制御して、3×3個の情報表示素子を順に表示させることで行われる。この動作は従来から知られているものと同じである。
【0022】
このような構成の駆動装置において、マトリックスドライブ回路19は、表示情報データにより、マトリックス電極の各電極に、高電位V、低電位V及び中間電位Vを随時付与する。ここで、高電位Vと低電位Vとの差は200V以下の電圧でよい。
中間電位Vはそれらの中間に設定され、通常はグラウンド電位であることが好ましいが、その近辺の一定電位でも、VとVとの平均電位(V+V)/2、あるいは高電位V、低電位Vと同調して変化する電位であってもよい。高電位及び低電位の印加は、直流あるいはそれに交流を重畳しても良い。
【0023】
なお、図4においては、非駆動時の各電極を、メカニカルリレーからなるSWで切り換えてグラウンド電位に接続している場合を例示しているが、半導体素子を用いたSWによる切り換えでもよいし、あるいは、固定抵抗体を介してグラウンド電位に接続してもよい。
【0024】
かかる駆動装置では、情報表示媒体に対して、一方の電極に高電位を付与し、他方の電極に低電位を付与する場合と、その逆に、一方の電極に低電位を付与し、他方の電極に高電位を付与する場合の選択で、図2に関連して述べたように白色および黒色のそれぞれの粒子13W、13Bを所要に応じて移動させて、所定の情報表示を行う。
【0025】
以上のような情報表示パネルは、少なくとも一方が透明の対向する二枚の基板11,12間に、情報表示媒体13を封入し、その情報表示媒体13に電界を与えて、それを移動させて情報を表示する可逆性の表示パネルであり、ここでは、粒子または粉流体を情報表示媒体として使用し、その情報表示媒体13を透明基板12を介して視認させることで、白黒の大きなコントラストの下で、広い視野角を確保することができる。
また、情報表示媒体13を移動させる時だけ電界を働かせ、移動後は、電界の作用なしにも、情報表示媒体13は、一旦移動した位置に留まるので表示情報を長期間にわたって保持させることができる。
この一方で、情報を書き換えたい時には、再び電界を働かせることで、情報表示媒体が再度移動して別の情報を表示することになるので、情報の書換えを可逆的に行うことができる。
【0026】
なおここでは、情報表示媒体13が情報を直接的に表示するので、情報表示媒体を構成する粒子サイズが情報の鮮明さを決めることになる。そこでここでは、好ましくは、粒子径1〜20μmの粒子群等を画像表示媒体として用いることで、鮮明な情報の表示を担保して、繊細で緻密な情報の表示を可能とする。
【0027】
かかる情報表示パネルを名刺用情報表示パネル1として用いる場合には、情報表示媒体13を、電界中で所要に応じて移動させて、予め定めた名刺情報をそれの透明基板側に表示させることでその表示パネル1を名刺とする。
このようにして構成された名刺は、情報表示媒体13のすぐれた表示保存性の下で、それを、前記駆動装置のマトリックスドライブ回路19、電源等から分離させてなお、その名刺情報を長期間にわたって維持することができるので、それを、従来の印刷物になる名刺と全く同様に機能させることができる。
【0028】
この一方で、上記の名刺が、それの受取人においてその機能を発揮し終えた後は、その受取人が、その名刺の、前記駆動装置への再度の接続下で、名刺表示情報の全てを消去してそれを元の名刺用情報表示パネル1とし、次いで、そこに自分の名刺用の所定の名刺情報を書き込むことで、それを自己の名刺とすることができる。
図1中の白抜き矢印は、名刺情報のこのような書き換え変更例を示すものである。
【0029】
ところで、一旦書き込まれた名刺情報は一般に、表示パネル1に比較的長期間にわたって表示されることになり、これにより、通常は黒色の情報表示媒体によって表示される文字部分および、白色の情報表示媒体によって表示される非文字部分の双方で、情報表示媒体の、基板等への付着固化が生じ易く、それの、電界に対する応答性が低下するうれいがあるので、名刺情報の、上述したような書き換えに当っては、たとえば白黒の色彩関係を一回以上にわたって反転させて後、白色もしくは黒色をもって、既存の名刺情報の完全なる消去を行うことが、情報表示媒体の基板への付着残留を防止するとともに、その情報表示媒体の電界応答性を高める上で好ましく、このようにすることで、書き換え後の名刺情報の表示の鮮明度を高めることができる。
【0030】
ところで、情報表示パネルの基板11,12については、それらの少なくとも一方の基板12はパネルの外側から情報表示媒体の色が確認できる透明基板であり、この基板12は、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料で構成することが好適である。なお、基板11は透明でも不透明でもかまわない。
基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリル樹脂などのポリマーシートや、金属シートのように可撓性のあるもの、および、ガラス、石英などの可撓性のない無機シートが挙げられる。
【0031】
基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適である。薄すぎると、強度、基板間の間隔の均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型の情報表示パネルとする場合に不都合がある。
【0032】
また、必要に応じて設けられる電極15,16の構成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。
【0033】
電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。
この場合、視認側基板12に設ける表示電極16は透明である必要があるが、背面側基板に設ける対向電極15は透明である必要がない。
いずれの場合もパターン形成可能であり、導電性である上記材料を好適に用いることができる。
【0034】
なお、電極の厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。
背面側基板11にもうける対向電極15の材質や厚みになどは上述した視認側基板に設ける表示電極16と同様であるが、透明である必要はない。
なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0035】
そして、これもまた必要に応じて設けられる隔壁14については、その形状は表示にかかわる情報表示媒体の種類により適宜最適に設定されるので、一概には特定することができないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板11,12の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0036】
これらのリブからなる隔壁14により画成される表示セルは、図5に略線平面図で示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。
表示側から見える隔壁部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。
【0037】
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明に係る情報表示パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0038】
次に、情報表示用パネルに用いる情報表示媒体13としての粉流体について説明する。
なお、この発明に用いる情報表示媒体としての粉流体の名称については、出願人が「電子粉流体(登録商標)」の権利を得ている。
【0039】
ここでの「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。
例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである。(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。
ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。
そこでここでは、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0040】
すなわち、ここにおける粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、この発明に係る情報表示パネルは固体状物質を分散質とするものである。
【0041】
この発明に係る情報表示パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、情報表示媒体として、例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
この粉流体は、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。その粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、この発明に係る情報表示パネルでは、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0042】
次に、情報表示用パネルで用いる画像表示媒体13としての粒子について説明する。
粒子は、その主成分となる樹脂に、必要に応じて荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことがきる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0043】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテル、ポリアミド等が挙げられ、二種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0044】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。
正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0045】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0046】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
【0047】
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0048】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
【0049】
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0050】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0051】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0052】
また、情報表示媒体13としての粒子は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜50μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために粒子の移動に支障をきたすようになる。
【0053】
更にここでは、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
【0054】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。
【0055】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0056】
情報表示媒体を構成する粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、情報表示パネルにおける情報表示媒体を構成する粒子の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に情報表示媒体を構成する粒子の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0057】
さらに、乾式の情報表示媒体を用いる、ここにおける情報表示パネルでは、基板間の情報表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示の安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。
【0058】
この空隙部分とは、図2(a)、(b)〜図3(a)、(b)において、対向する基板11、12に挟まれる部分から、電極15、16、情報表示媒体13(粒子群あるいは粉流体)の占有部分、隔壁14の占有部分(隔壁を設けた場合)、情報表示パネルのシール部分を除いた、いわゆる情報表示媒体13が接する気体部分を指すものとする。
【0059】
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。
この気体は、その湿度が保持されるように情報表示パネルに封入することが必要であり、例えば、情報表示媒体の充填、情報表示パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0060】
ここでの情報表示用パネルにおける基板11と基板12との間隔は、情報表示媒体13が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における情報表示媒体13の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。
70%を超える場合には情報表示媒体13の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
情報表示パネルの、二色の情報表示媒体の色彩の組み合わせは、先に述べたような、白色と黒色等のみならず、実現可能な各種の色彩の任意の組み合わせとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】名刺用情報表示パネルに名刺情報を表示した名刺を、名刺情報の書き換え例として示す平面図である。
【図2】名刺用情報表示パネルとして用いることができる情報表示パネルの基本構造を概念的に例示する断面図である。
【図3】情報表示パネルの他の基本構造を概念的に例示する断面図である。
【図4】情報表示パネルの駆動装置を例示する図である。
【図5】隔壁により区画される表示セルの配置例を示す略線平面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 名刺用情報表示パネル
11,12 基板
13 情報表示媒体(粒子群または粉流体)
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13W 白色粒子
13B 黒色粒子
14 隔壁
15,16 電極
17 高電圧発生回路
18 低電圧発生回路
19 マトリックスドライブ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の基板間の密閉空間内に、色および帯電特性の異なる二種類の情報表示媒体を封入するとともに、それらの情報表示媒体を電界の形成下で移動させて、透明基板側に所要の情報を表示させる可逆式の情報表示パネルであって、
少なくとも氏名を表示することを特徴とする名刺用情報表示パネル。
【請求項2】
それぞれの基板をプラスチック材料製としてなる請求項1に記載の名刺用情報表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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