説明

吐出ポンプ

【課題】ステムとピストンとの摺接箇所のシール性を確保し、内容物が漏れ出すことを防止することができる吐出ポンプを提供することを目的としている。
【解決手段】内容物を収容した容器2内に配置されたシリンダ4と、シリンダ4の上端から上方付勢状態で押込み可能に起立されたステム5と、シリンダ4の内側に配置されてシリンダ4の内周面及びステム5の内周面に対してそれぞれ液密に摺接する筒状のピストン6と、を備え、ステム5をシリンダ4内に押し込むことで、ピストン6がステム5により押圧されてシリンダ4内で下方へ摺動し、容器2内からシリンダ4内に供給された内容物がステム5内を通って吐出される吐出ポンプ1において、ステム5とピストン6との摺動抵抗力は、シリンダ4とピストン6との摺動抵抗力よりも小さく設定され、ステム5は、内容物に対する非膨潤性を有する材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収容された内容物を吐出するための吐出ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出ポンプとして、例えば下記特許文献1に示されているような、シリンダと、このシリンダの上端から上方付勢状態で押し下げ可能に起立されたステムと、シリンダの内側に配置されたピストンと、を備えた構成が知られている。この吐出ポンプには、容器の口部に螺着される取付キャップが備えられており、この取付キャップによって容器の口部に装着される。また、上記したシリンダは、取付キャップの天板部の下面から垂設されており、容器内に配置されている。また、上記したステムは、取付キャップの天板部から上方に突出された上ステムと、上ステムに連結されてシリンダ内に配置された下ステムと、の2つの部材から構成されている。上ステムの上端には、ノズルを有する押下ヘッドが取り付けられている。また、上記したピストンは、二重筒構造の部材であり、上端部が上ステムの内周面に対して液密に摺接した内筒部と、上下端部がシリンダ内周面に対してそれぞれ液密に摺接した外筒部と、から構成されている。
【0003】
上記した構成からなる吐出ポンプでは、押下ヘッドを押し下げることで、ステムがシリンダ内に押し込まれる。このとき、上ステム内周面に対するピストン内筒部の摺動抵抗力(一般的には摩擦抵抗力と同義)は、シリンダ内周面に対するピストン外筒部の摺動抵抗力よりも小さいため、ピストンはシリンダに対して移動せず、ピストンの内筒部の上端部に対して上ステムが摺動しながらステムが下方へ移動する。このようにステムが押し込まれていくと、上ステムの下端面がピストンに当接してピストンを押圧する。これにより、ピストンの外筒部の上下端部がシリンダ内周面上を摺動しながらピストンが下方に移動する。このようにピストンが下方に移動することで、シリンダ内の内容物がステム内を通って押下ヘッド内へ供給され、ノズルから吐出される。その後、押下ヘッドの押し下げを解除すると、下ステムの下方に配置されたコイルスプリングによる付勢によりステム及びピストンが上方に移動して元の位置に戻る。このとき、シリンダ内が減圧され、シリンダの下端からシリンダ内に容器内の内容物が供給される。
【特許文献1】特開2004−230316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の吐出ポンプでは、ステムやシリンダに内容物が接触した際、内容物の種類によってはステムやシリンダが膨潤する場合があり、この場合、ステムとピストンとの摺接箇所のシール性や、シリンダとピストンとの摺接箇所のシール性が低下し、内容物が漏れ出すという問題が生じる。詳しく説明すると、従来の吐出ポンプでは、ピストンが、化粧料に含まれるオイル成分などの影響によって膨潤しにくい合成ゴム等(例えばNBR)によって形成されているのに対し、ノズルやシリンダが、前記内容物に対して膨潤する場合があるポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等で形成されている。このため、内容物の種類によっては、ノズルやシリンダが膨潤して拡径され、ピストンの内筒部の上端部と上ステム内周面との間や、ピストンの外筒部の上下端部とシリンダ内周面との間のシール性が低下し、内溶液が漏れ出す場合がある。特に、上ステム内周面に対する内筒部のシール強度(摺動抵抗力)は、シリンダ内周面に対する外筒部のシール強度(摺動抵抗力)よりも小さいため、ステムとピストンとの摺接箇所のシール性が低下しやすい。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、ステムとピストンとの摺接箇所のシール性を確保し、内容物が漏れ出すことを防止することができる吐出ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る吐出ポンプは、内容物を収容した容器内に配置されたシリンダと、該シリンダの上端から上方付勢状態で押込み可能に起立されたステムと、前記シリンダの内側に配置されて該シリンダの内周面及び前記ステムの内周面に対してそれぞれ液密に摺接する筒状のピストンと、を備え、前記ステムを前記シリンダ内に押し込むことで、前記ピストンが前記ステムにより押圧されて前記シリンダ内で下方へ摺動し、前記容器内から前記シリンダ内に供給された内容物が前記ステム内を通って吐出される吐出ポンプにおいて、前記ステムと前記ピストンとの摺動抵抗力は、前記シリンダと前記ピストンとの摺動抵抗力よりも小さく設定され、前記ステムは、前記内容物に対する非膨潤性を有する材料で形成されていることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、内容物がステム内を通って吐出される際、ステム内周面に内容物が接触するが、ステムが内容物によって膨潤せず、ステムは拡径することはない。
なお、上記した「内容物に対する非膨潤性」とは、「内容物に接触しても実質的に膨潤しない性質」をいう。
また、上記した「摺動抵抗力」とは、一般的に「摩擦抵抗力」と同義と考えられ、例えば締め代などで調整することが可能である。
【0008】
また、本発明に係る吐出ポンプは、前記シリンダが、前記内容物に対する非膨潤性を有する材料で形成されていることが好ましい。
これにより、シリンダ内に内容物が供給され、シリンダの内周面に内容物が接触した場合にも、シリンダが内容物によって膨潤せず、シリンダは拡径することはない。
【0009】
また、本発明に係る吐出ポンプは、前記非膨潤性を有する材料として、ポリオキシメチレン又はポリブチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
上記した材料は内容物に接触しても膨潤しないため、ステムやシリンダの拡径が防止される。
【0010】
また、本発明に係る吐出ポンプは、前記ピストンの外周面に、該ピストンの径方向外側へ突出して前記ステムの内周面及び/又は前記シリンダの内周面に摺接する凸状シール部が設けられ、該凸状シール部が、前記ピストンの端面から該ピストン軸方向に離間させた位置に配設されていることが好ましい。
これにより、ピストンの金型の脱型時や成形後のピストンのフィーダ時に、ピストンの端面にキズ等が付いても、凸状シール部がステム内周面やシリンダ内周面に液密に密接された状態が確保される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吐出ポンプによれば、内容物によってステムが膨潤しないため、ステムとピストンとの摺接箇所のシール性(液密性)を確保することができ、内容物が漏れ出すことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る吐出ポンプの実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
まず、本発明に係る吐出ポンプの第1の実施の形態について説明する。
図1は吐出ポンプ1の部分縦断面図であり、図2は図1の部分拡大である。
なお、本実施の形態では、容器2からみて押下ヘッド7側(図1における上側)を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とする。また、上下方向に延在する図1に示す符号Lは、吐出ポンプ1の中心軸線Lを示している。
【0014】
吐出ポンプ1は、容器2内に収容された内容物を吐出するためのポンプであり、容器2の口部20に取り付けられている。吐出ポンプ1の概略構成としては、取付キャップ3と、シリンダ4と、ステム5と、ピストン6と、押下ヘッド7と、コイルスプリング8と、弁部材9と、を備えている。
【0015】
取付キャップ3は、外周面に雄ネジが形成された容器本体2の口部20に螺着されるキャップ体である。取付キャップ3は、中心軸線Lに対して垂直に配設され、中央部に円形の開口30aが形成された天壁部30と、天壁部30の外縁部から中心軸線Lに沿って垂下され、内周面に雌ネジが形成された下筒部31と、天壁部30の中央部から中心軸線Lに沿って上向きに立設され、天壁部30の開口30aに連通された上筒部32と、を備えている。
【0016】
シリンダ4は、中心軸線Lに沿って延設された略円筒形状の部材であり、取付キャップ3の天壁部30の下面から垂下され、容器2内に配置されている。詳しく説明すると、シリンダ4は、上方から順に、取付キャップ3内から取付キャップ3の下方に突出した大径部40と、大径部40よりも小径な小径部41と、下方に向ってテーパー状に縮径されたテーパー部42と、容器2内の液体を吸引するためのチューブ45が接続されるチューブ接続部43と、が連設された構成からなる。シリンダ4(大径部40)の上端には、その径方向外側へ突出したフランジ部44が全周に亘って形成されており、このフランジ部44が取付キャップ3の天壁部30の下面に固定されている。また、シリンダ4の下部(小径部41及びテーパー部42)の内周面には、上下方向に延びた縦リブ46が形成されているとともに、コイルスプリング8の下端を支持する台座部47が形成されている。
【0017】
また、上記したシリンダ4は、合成樹脂製の部材であり、一般的には、例えばポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等で形成することができる。ただし、シリンダ4を、後述するステム5と同様に、内容物に対する非膨潤性を有する材料で形成することが好ましい。具体的には、シリンダ4を、ポリオキシメチレン(POM)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成することが好ましい。
【0018】
ステム5は、内容物に対する非膨潤性を有する材料で形成されている。具体的には、ステムは、ポリオキシメチレン(POM)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる。また、ステム5は、取付キャップの天壁部30から上方に突出された上ステム5Aと、この上ステム5Aに直列に連結され、シリンダ4内に配置された下ステム5Bと、の2つの部材から構成されている。
【0019】
上ステム5Aは、中心軸線Lに沿って延設された略円筒形状の部材である。この上ステム5Aは、取付キャップ3の上筒部32内に挿通されており、その上部は上筒部32の上端よりも上方に延在されており、その下部は取付キャップ3の開口30aよりも下方へ延在されている。また、上ステム5Aの下部は、シリンダ4の上端部の内側に嵌合されたステム挿入用筒体10内に挿入されている。また、上ステム5Aの下部は拡径されており、その外周面には段差部5aが形成されている。一方、ステム挿入用筒体10の上部は縮径され、その内周面には段差部10aが形成されており、この段差部10aに上記した上ステム5Aの段差部5aが掛止されることで、ステム5の上方への移動が規制される。
【0020】
下ステム5Bは、上部が上ステム5Aの内側に嵌合され、中心軸線Lに沿って延設された略円筒形状の部材である。下ステム5Bの下部には、内容物を流通させるための開口5bが形成されている。また、下ステム5Bの下端部には、その径方向外側に突出した外フランジ部50が全周に亘って形成されており、この外フランジ部50の上面には、後述するピストン6の内筒部61の下端が当接されている。また、外フランジ部50の外縁部から中心軸線Lに沿って筒部51が垂下されており、筒部51の外周面には、中心軸線L方向に延びた縦リブ52が周方向に間隔をあけて複数形成されている。また、下ステム5Bの下端部には、その径方向内側に突出した内フランジ部53が全周に亘って形成されている。この内フランジ部53は、上方に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状になっており、その内周端は弁部材9の外周面に摺接されている。
【0021】
ピストン6は、中心軸線Lに沿って延設された筒部材であり、シリンダ4の内側に配置されている。ピストン6は、軟材質の材料で形成されており、具体的には二トリルゴム(NBR、アクリロニトリル-ブタジエンゴム)で形成されている。なお、ピストン6は、ブチルゴム(IIR)やシリコンゴム(SI)で形成することもできる。また、ピストン6は、外筒部60と内筒部61とからなる二重筒構造になっており、外筒部60の内側に内筒部61が配設され、これらの外筒部60と内筒部61とが連結部65を介して一体化されている。
【0022】
外筒部60は、シリンダ4(大径部40)の内周面に液密に摺接されている。詳しく説明すると、外筒部60の上部は、上方に向かうに従い漸次拡径されたテーパー形状になっており、外筒部60の上端部の外周面には、その径方向外側に突出した第一凸状シール部62が全周に亘って形成されている。この第一凸状シール部62は、外筒部60の上端面に合わせて形成されており、第一凸状シール部62の上端面と外筒部60の上端面とは面一になっている。また、外筒部60の下部は、下方に向かうに従い漸次拡径されたテーパー形状になっており、外筒部60の下端部の外周面には、その径方向外側に突出した第二凸状シール部63が全周に亘って形成されている。この第二凸状シール部63は、外筒部60の下端面に合わせて形成されており、第二凸状シール部63の下端面と外筒部60の下端面とは面一になっている。
【0023】
内筒部61は、ステム5(上ステム5A)の内周面に液密に摺接されている。詳しく説明すると、内筒部61の上部は、上方に向かうに従い漸次拡径されたテーパー形状になっており、内筒部61の上端部の外周面には、その径方向外側に突出した第三凸状シール部64が全周に亘って形成されている。この第三凸状シール部64は、内筒部61の上端面に合わせて形成されており、第三凸状シール部64の上端面と内筒部61の上端面とは面一になっている。
【0024】
なお、ピストン6(内筒部61)の内側に、上記した下ステム5Bが挿入されており、ピストン6は、下ステム5Bの外フランジ部50や筒部51の上方に配置されている。
また、上記した第一,第二,第三凸状シール部62,63,64は、弾性変形してシリンダ4の内周面や上ステム5Aの内周面に摺動可能に密接されている。このとき、上ステム5A(ステム5)と第三凸状シール部64(ピストン6)との摺動抵抗力は、シリンダ4と第一、第二凸状シール部62,63(ピストン6)との摺動抵抗力よりも小さく設定されている。具体的に説明すると、上ステム5Aの内周面に対する内筒部61の上端部(第三凸状シール部64)の締め代は、シリンダ4の内周面に対する外筒部60の上下端部(第一,第二凸状シール部62,63)の締め代よりも小さくなっている。
【0025】
押下ヘッド7は、ステム5の上端部に取り付けられる部材であり、中心軸線Lに対して垂直に配設され、上面に押圧面70aが形成された天壁部70と、天壁部70の外縁部から中心軸線Lに沿って垂下された外筒部71と、天壁部30の中央部下面から中心軸線Lに沿って垂下された内筒部72と、外筒部71の上端部外周面から突出され、内筒部72の内部に連通されたノズル73と、を備えている。内筒部72の下部の内側には、上ステム5Aの上端部が嵌合されている。また、外筒部71と内筒部72との間には隙間があけられており、押下ヘッド7が押し下げられたときに、上記隙間に取付キャップ3の上筒部32が差し込まれる。
【0026】
コイルスプリング8は、ピストン6を上方に付勢する付勢部材である。コイルスプリング8は、シリンダ4内に配置され、中心軸線Lに沿って延設されており、下ステム5Bの外フランジ部50とシリンダ4の台座部47との間に介装されている。
【0027】
弁部材9は、シリンダ4の下端部を閉塞するための棒状部材であり、シリンダ4の内側に配置されている。弁部材9の中間部は、コイルスプリング8内に挿通されている。弁部材9の上端部は、ステム5(下ステム5B)の下端部に挿入されている。また、弁部材9の下端部には、拡径された下部弁体90が形成されている。この下部弁体90は、シリンダ4のテーパー部42の内周面の下端部に対して着座および離反可能なものである。
【0028】
また、上記した押下ヘッド7の外筒部71と取付キャップ3の天壁部30との間には、取付キャップ3の上筒部32の外周に周設された平面視C形状のカバー11が着脱自在に介装されており、このカバー11によって押下ヘッド7の押し下げが規制されている。
【0029】
次に、上記した構成からなる吐出ポンプ1の作用について説明する。
【0030】
まず、カバー11を横方向に引っ張り、押下ヘッド7の外筒部71と取付キャップ3の天壁部30との間からカバー11を取り外す。これにより、押下ヘッド7が押し下げ可能になる。
【0031】
次に、押下ヘッド7の押圧面70aを押圧して押下ヘッド7を押し下げる。これにより、ステム5が押下ヘッド7とともに下方に移動してシリンダ4内に押し込まれる。このとき、上ステム5Aの内周面に対するピストン6の内筒部61の上端部(第三凸状シール部64)の締め代は、シリンダ4の内周面に対するピストン6の外筒部60の上下端部(第一、第二凸状シール部62,63)の締め代よりも小さいため、ピストン6は移動せず、ピストン6の第三凸状シール部64に対して上ステム5Aが摺動しながらステム5が下方へ移動する。これにより、下ステム5Bの外フランジ部50がピストン6の内筒部61の下端から離間し、外フランジ部50の上面と内筒部61の下端面との間に隙間が形成される。
【0032】
上述したようにステム5をシリンダ4内に押し込んでいくと、上ステム5Aの下端がピストン6の連結部65の上端面に当接する。ここで、押下ヘッド7を更に押し下げると、ステム5(上ステム5A)によってピストン6が押圧される。これにより、ピストン6の第一、第二凸状シール部62,63がシリンダ4の内周面上を摺動しながら、ピストン6がステム5や押下ヘッド7とともに下方に移動する。このとき、弁部材9の下部弁体90がシリンダ4のテーパー部42の下端部内周面に着座されており、テーパー部42の下端が閉塞されているので、上述したようにピストン6が下方に移動することで、シリンダ4内が加圧される。これにより、シリンダ4内の内容物が、下ステム5Bの縦リブ52間の隙間から下ステム5Bの外フランジ部50の上方へ流通し、さらに、外フランジ部50の上面と内筒部61の下端面との間、及び下ステム5Bの開口5bを通って下ステム5B内に流入する。そして、下ステム5B内の内容物は、下ステム5B内及び上ステム5A内を流通して押下ヘッド7の内筒部72内に至り、内筒部72内からノズル73内に流入してノズル73の先端から吐出される。なお、上記のように内容物が吐出ポンプ1内を流通する際、ステム5に内容物が接触するが、内容物に対する非膨潤性を有する材料でステム5が形成されているので、内容物によって上ステム5Aが膨潤することはなく、上ステム5Aが拡径されることはない。
【0033】
次に、押下ヘッド7の押し下げを解除すると、コイルスプリング8による付勢によりステム5が上方に移動する。このとき、ステム5とともに弁部材9が上方に移動する。これにより、弁部材9の下部弁体90がシリンダ4のテーパー部42の下端部内周面より離間され、テーパー部42の下端が開放される。また、上述したようにステム5が上方に移動すると、下ステム5Bの外フランジ部50の上面がピストン6の内筒部61の下端面に当接したところで、外フランジ部50によりピストン6が上方に押圧される。これにより、ステム5とともにピストン6が上方に移動してステム5及びピストン6が元の位置に戻される。このようにステム5及びピストン6がそれぞれ上方に移動することで、シリンダ4内が減圧される。これにより、容器2内の内容物がシリンダ4内に吸い上げられ、シリンダ4内に内容物が供給される。つまり、容器2内の内容物は、チューブ45内を流入し、開放されたシリンダ4のテーパー部42の下端からシリンダ4の下部の縦リブ46間を通ってシリンダ4内に流入する。
【0034】
上記した構成からなる吐出ポンプ1によれば、内容物に対して非膨潤性を有する材料(POM又はPBT)でステム5が形成されており、内容物によってステム5が膨潤しないため、上ステム5Aとピストン6との摺接箇所(第三凸状シール部64)のシール性を確保することができ、内容物が漏れ出すことを防止することができる。
【0035】
また、シリンダ4を、内容物に対して非膨潤性を有する材料(POM又はPBT)で形成した場合には、内容物によってシリンダ4が膨潤しないため、シリンダ4とピストン6との摺接箇所(第一、第二凸状シール部62,63)のシール性(液密性)を確保することができ、内容物が漏れ出すことをより確実に防止することができる。
【0036】
[第2の実施の形態]
さらに、本発明に係る吐出ポンプの第2の実施の形態について説明する。
図3は吐出ポンプ1を部分的に拡大して表した縦断面図である。
なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成については、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
上述した第1の実施の形態では、図2に示すように、第三凸状シール部64が、内筒部61の上端面に合わせて形成されており、第三凸状シール部64の上端面と内筒部61の上端面とが面一になっているが、第2の実施の形態では、図3に示すように、第三凸状シール部164が、内筒部61の上端面から中心軸線L方向(ピストン6の軸方向)に離間させた位置に配設されている。すなわち、第三凸状シール部164は、内筒部61の上端面よりも下げた位置に配設されており、第三凸状シール部164の上端面は内筒部61の上端面よりも下げた位置に形成されており、内筒部61の上端部の外周面は段差状に形成されている。
【0038】
これにより、ピストン6の金型の脱型時や成形後のピストン6のフィーダ時に、内筒部61の上端面にキズ等が付いても、内筒部61と上ステム5Aとの摺接箇所(第三凸状シール部164)のシール性が確保される。これにより、内容物が漏れ出すことをより一層確実に防止することができる。
【0039】
以上、本発明に係る吐出ポンプの実施の形態について説明したが、本発明は上記した第1、第2の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した第1、第2の実施の形態では、第三凸状シール部64が、上面が水平で下面が傾斜した形状になっているが、本発明は、図4に示すように、断面視半円形状の凸状シール部264がピストン6の内筒部61の上端部の外周面に形成されていてもよい。また、ピストン6の外筒部60の上下端部の外周面に断面視半円形状の凸状シール部が形成されていてもよい。
【0040】
また、上記した第2の実施の形態では、上ステム5Aの内周面に摺接する第三凸状シール部164が、内筒部61の上端面からピストン6の軸方向に離間させた位置に配設されているが、本発明は、シリンダ4の内周面に摺接する第一凸状シール部62が、外筒部60の上端面からピストン6の軸方向に離間させた位置、つまり外筒部60の上端面よりも下げた位置に配設されていてもよく、また、シリンダ4の内周面に摺接する第二凸状シール部63が、外筒部60の下端面からピストン6の軸方向に離間させた位置、つまり外筒部60の下端面よりも上げた位置に配設されていてもよい。
さらに、前記非膨潤性の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
【0041】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態を説明するための吐出ポンプの部分縦断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を説明するための吐出ポンプの部分拡大図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を説明するための吐出ポンプの部分拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
1 吐出ポンプ
2 容器
4 シリンダ
5 ステム
6 ピストン
62 第一凸状シール部(凸状シール部)
63 第二凸状シール部(凸状シール部)
64 第三凸状シール部(凸状シール部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容した容器内に配置されたシリンダと、該シリンダの上端から上方付勢状態で押込み可能に起立されたステムと、前記シリンダの内側に配置されて該シリンダの内周面及び前記ステムの内周面に対してそれぞれ液密に摺接する筒状のピストンと、を備え、
前記ステムを前記シリンダ内に押し込むことで、前記ピストンが前記ステムにより押圧されて前記シリンダ内で下方へ摺動し、前記容器内から前記シリンダ内に供給された内容物が前記ステム内を通って吐出される吐出ポンプにおいて、
前記ステムと前記ピストンとの摺動抵抗力は、前記シリンダと前記ピストンとの摺動抵抗力よりも小さく設定され、
前記ステムは、前記内容物に対する非膨潤性を有する材料で形成されていることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の吐出ポンプにおいて、
前記シリンダは、前記内容物に対する非膨潤性を有する材料で形成されていることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2記載の吐出ポンプにおいて、
前記非膨潤性を有する材料として、ポリオキシメチレン又はポリブチレンテレフタレートを用いることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載の吐出ポンプにおいて、
前記ピストンの外周面には、該ピストンの径方向外側へ突出して前記ステムの内周面及び/又は前記シリンダの内周面に摺接する凸状シール部が設けられ、
該凸状シール部は、前記ピストンの端面から該ピストン軸方向に離間させた位置に配設されていることを特徴とする吐出ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−78255(P2009−78255A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251392(P2007−251392)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】