吐出容器
【課題】内容物充填後の組立工程において、内容物がバルブ孔を通過する心配なく容器の組み付けができるようにするとともに、使用着手された物であるか否かを感知できるようにする。
【解決手段】ピストン部材21の上端に抜け出し不能に押し釦30が装着され、押し釦30を押すことにより開通するバルブ機構40を備えた作動機構20と、内容物Nが充填された後、前記作動機構20が組み付けられる有底筒状の容器本体1とを有し、前記作動機構20を押し下げて内容物Nを吐出させる吐出容器において、前記容器本体1の肩カバー10と前記ピストン部材21とを予め仮の掛止状態に組み付けておき、前記押し釦30を押し下げて前記バルブ機構40を開通させた状態で前記肩カバー10を前記容器本体1の頸部2に嵌着することにより前記作動機構20を抜け出し不能に組み付け、使用の際、前記肩カバー10と前記ピストン部材21の仮掛止状態を解除して作動させる。
【解決手段】ピストン部材21の上端に抜け出し不能に押し釦30が装着され、押し釦30を押すことにより開通するバルブ機構40を備えた作動機構20と、内容物Nが充填された後、前記作動機構20が組み付けられる有底筒状の容器本体1とを有し、前記作動機構20を押し下げて内容物Nを吐出させる吐出容器において、前記容器本体1の肩カバー10と前記ピストン部材21とを予め仮の掛止状態に組み付けておき、前記押し釦30を押し下げて前記バルブ機構40を開通させた状態で前記肩カバー10を前記容器本体1の頸部2に嵌着することにより前記作動機構20を抜け出し不能に組み付け、使用の際、前記肩カバー10と前記ピストン部材21の仮掛止状態を解除して作動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームや整髪料、液体ファンデーション、軟膏のような流動性の物質を液密に収納し、押し釦を押すことにより内容物を適量取り出すようにした吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、消費者が使い易いことから、吐出口を有する押し釦を押し下げることによりピストンを作動させ、堅牢な容器に充填された流動性の内容物をピストンの圧力により吐出させるタイプの吐出容器が多数提案されている。
【0003】
このような押し釦付きの吐出容器として、例えば、実開平8−1175号公報には、流動性物質を収納した容器本体の上部に押し釦により作動するポンプ機構を備えて構成され、押し釦を押し下げると、押し釦の吐出口に連通するバルブ孔が開通すると共にピストンの圧力によりポンプ機構のシリンダ内の内容物が押し釦の吐出口から吐出され、スプリングの力により押し釦が上昇すると、バルブ孔が閉鎖すると共にピストンの上昇に伴い発生する負圧によりポンプ機構のシリンダ内に充填物が吸引され、同時に容器本体の摺動底壁も上昇するものが開示されている。
【0004】
この吐出容器は、押し釦を押すだけで内容物を取り出せるので極めて使い勝ってのよい吐出容器であるが、ポンプ機構や摺動底壁を備えているので機構が複雑で組立工数も多く高価な容器になってしまう欠点を有している。また、この吐出容器は、押し釦の1ストロークの作動で吐出される内容物の量がポンプ機構のシリンダの容量で規制されていることから、小形に設計された容器では、押し釦の1ストロークの吐出量が少ないものになり、所望の吐出量を得る為には押し釦を何度も繰り返し押さなければならない不便さがある。
【0005】
この問題を解決するものとして、特許第3612079号公報に提示された押し釦付きの吐出容器がある。この吐出容器は、内容物が収納される容器本体を有底の外筒とこれに嵌挿される内筒とで二重筒とし、押し釦にスプリングを介して組込まれたピストンを容器本体の内筒内に直接配置して構成されており、押し釦を押してバネ圧に抗して内筒内のピストンを所望量押し込むことにより、押し釦の吐出口に連通し押し釦の下端に取り付けられている流出管のバルブ孔が開通し、押し釦の吐出口からピストンの下降量だけ内容物が押し出されるようになっている。
【0006】
そして、この吐出容器を組み立てる際は、ピストンが組込まれた押し釦と内筒部材とを予め摺動可能に組み付けておき、この内筒部材を所定量の内容物が充填された有底の外筒部材内へ挿入し押圧して組み付ける。この組み付け工程において、容器内で圧縮された圧縮空気は、空気の蓄圧過程においてスプリングのバネ圧に抗して空気圧により開通するバルブ孔を通って押し釦の吐出口から外部に排出されるようになっている。
【0007】
この従来の押し釦付きの吐出容器は、容器本体の内部にポンプ機構を設けることなく、容器本体内の内容物を直接ピストンで押し出す簡単な押し出し式の構成としたので、従来のポンプ式の容器に比較して部品数が少なく安価であり、且つ押し釦の押し込み量の手加減で所望量の内容物が吐出できる簡便さを有している。したがって、既述した問題を一応解決している。
【特許文献1】実開平8−1175号公報
【特許文献2】特許第3612079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許第3612079号公報に開示されている吐出容器は、内容物充填後の組み立て工程において、容器内の空気が蓄圧された状態で開放されることから、排出空気の勢いに内容物が巻き込まれてバルブ孔を通過し、押し釦の吐出口から噴出することも予想される。また、バルブ孔を通過した内容物が押し釦内に止まっても、バルブ孔を通過した内容物は通路内において外気に触れた状態におかれることとなり、乾燥や腐敗の心配がある。
【0009】
また、この組み立て後の吐出容器は、その初動において使用着手後の容器と同様に直ちに作動する状態にあるので、不正に使用されたり過って作動させてしまった物との区別が物理的にも感覚的にも感知し難かった。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、内容物充填後の組立工程において、内容物がバルブ孔を通過する心配なく容器の組み付けができるようにするとともに、使用着手された物であるか否かを感知できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の問題を解決する為に、ピストン部材の上端に抜け出し不能に押し釦が装着され、前記押し釦を押すことにより開通するバルブ機構を備えた作動機構と、内容物が充填された後、前記作動機構が組み付けられる有底筒状の容器本体とを有し、前記作動機構を押し下げることにより内容物を吐出させる吐出容器において、前記容器本体の肩カバーと前記ピストン部材とを予め仮の掛止状態に組み付けておき、前記押し釦を押し下げて前記バルブ機構を開通させた状態で前記肩カバーを前記容器本体の頸部に嵌着することにより前記作動機構を抜け出し不能に組み付け、使用の際、前記肩カバーと前記ピストン部材の仮掛止状態を解除して作動させるようにした。
【0012】
肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部に装着しピストンリングと、肩カバーの内周面に周設した突起とによるアンダーカット係合でなされ、押し釦によってピストン部材を強制下降させることにより前記仮掛止状態が解除されることが好ましい。
【0013】
また、肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部上方に突設した突起と、肩カバーの内周面に刻設した水平溝との水平係合でなされ、ピストン部材を解錠方向に水平回転させることにより前記突起が乗り越え突起を乗り越えて前記仮掛止状態が解除されるようにしてもよい。
【0014】
また、肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部上方に突設した掛止突起を、内周面に連通するガイド溝を刻設した肩カバーのフランジ上面に掛止させることでなされ、ピストン部材を水平回転させて掛止突起とガイド溝の位置を合わせることにより仮掛止状態を解除するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吐出容器によれば、容器本体の肩カバーと作動機構のピストン部材を予め仮の掛止状態に組み付けておき、容器本体と作動機構の組み付工程において、作動機構のバルブ機構を開通させた状態で組み付け作業をするようにしたので、急激な排出空気による内容物の噴出が完全に防止されて容器の内外に内容物が付着することがなくなり、付着内容物の乾燥や腐敗に起因するトラブルの心配がない。
【0016】
また、使用する際には、肩カバーとピストン部材の仮掛止状態を解除して作動させることから、解除操作中に抵抗感が伴うと共に、解除後は仮掛止状態に戻すことが困難な構成であるので、未使用の物と、不正に使用されたり過って作動させてしまった物との判別が極めて容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の吐出容器の好適な実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1乃至図4は、本発明の吐出容器の第1の実施の形態を示しており、図1に示すように、この実施の形態の吐出容器は、肩カバー10が嵌着する頸部2を有する有底筒状の容器本体1と、前記肩カバー10により容器本体1に抜け出し不能に組み付けられる作動機構20と、この作動機構20を被覆する蓋体50とから略構成されている。
【0019】
容器本体1は、胴部3の上端に広口の頸部2を有するジャーであり、頸部2の上端外周には肩カバー10が係合するアンダーカット係合用の下向き段部2aが形成され、底壁4はその中央に窪み穴4aが形成された内向きの球状傾斜面とされている。この容器本体1は、汎用合成樹脂を用いて成型され、内容物を外側から見せる場合はSAN、PS等、透明性の合成樹脂が用いられる。
【0020】
容器本体1の肩カバー10は、その内周面11の直径が容器本体1の内壁の直径と同寸の輪状に形成されており、図2に拡大して示すように、肩カバー10の口頸部16の上端部にはピストン部材21の抜け出しを阻止するフランジ12が形成され、このフランジ12から所定距離下方の内周面11には、ピストンリング26とアンダーカット係合することにより作動機構20を仮止めする為の仮掛止用の突起13が周設されている。また、肩カバー10の裾部14内面には容器本体1の頸部2とアンダーカット係合する為の上向き段部15が形成されている。
【0021】
作動機構20は、容器本体1内に摺動下降可能に組込まれるピストン部材21と、このピストン部材21の上端に離隔方向に付勢するスプリング49を介して抜け出し不能に装着された押し釦30と、この押し釦30を押し下げることにより開通するバルブ機構40とで構成されている。
【0022】
ピストン部材21は、容器本体1における内向きの球状傾斜面と同じ球状傾斜面に形成された底板部22を有し、底板部22の外縁に起立する外筒部23と、底板部22の中央に起立する内筒部28とから成る。
【0023】
外筒部24の内周面には押し釦30の下降を規制する縦リブ24が設けられていると共に、外筒部24の上端には装着された押し釦30の抜け出しを阻止する為の下向き段部25が形成されており、外筒部24の下端部外周面には容器本体1の内周面に摺動するピストンリング26が嵌め込まれた外筒部24よりも径大な摺動部27が形成されている。
【0024】
また、内筒部28の上端は外筒部の縦リブ24の上端と同じ高さとされ、内筒部28の内面にはバルブ機構40の吐出管41が摺動可能に挿通されている。
【0025】
このピストン部材21を肩カバー10の内側から嵌挿し、図2に示すように、ピストンリング26と肩カバー10の仮掛止用の突起13とでアンダーカット係合することにより、ピストン部材21と肩カバー10は仮の掛止状態におかれている。この仮掛止状態は、ピストン部材21に掛止強度よりも強い下降方向の力が加わることにより解除される。
【0026】
押し釦30は、その外周壁31の下端外面にピストン部材21における外筒部24上端の下向き段部25に当接するフランジ32が形成されていてピストン部材21からの抜け出しが阻止されており、押し釦30の内周壁33には吐出口34の横通路35に連通する縦通路36が穿設されいる。
【0027】
また、押し釦30の縦通路36には、ピストン部材21に摺動可能に挿通したバルブ機構40を構成する吐出管41の上端部が挿嵌されており、吐出管41の通路41aは押し釦30の通路35、36と連通している。
【0028】
バルブ機構40は、押し釦30の操作により、吐出管41の下端に形成されたフランジ部42に沿って穿設されたバルブ孔43が、ピストン部材21の内筒部28から出没することにより開閉するものである。押し釦30とピストン部材21の間に配設されて離隔方向に付勢するスプリング49の力に抗して押し釦30を押圧すると、吐出管41が下降してバルブ機構40は開放状態になる。
【0029】
バルブ機構40を開放する際の押し釦30の押し代は、押し釦30が下降して当接するピストン部材21の縦リブ24の上端面と内筒部28の上端面28aとで規制されており、押し釦30が押されて押し代分だけ縮むときのピストン部材21にかかるスプリング49の圧縮力Pは、ピストン部材21と肩カバー10の仮の掛止状態における掛止強度Iよりも弱く、P<Iに設定されている。
【0030】
この吐出容器を組み立てるには、図3に示すように、予め肩カバー10とピストン部材21を仮の掛止状態に組み付けた作動機構20を、内容物Nが口元まで充填された容器本体1の頸部2に戴置し、下降する治具Gにより、押し釦30を押し下げてバルブ機構40を開通させた状態に保つと共に、肩カバー10を突いて肩カバー10の裾部14と容器本体1の頸部2をアンダーカット係合により嵌合させる。
【0031】
治具Gによるバルブ機構40を開通させた状態での容器の組み立て作業により、容器内の空気が蓄圧されることがなく、容器内の空気はバルブ孔43から吐出管41の通路41aを通って押し釦30の吐出口34からスムースに排出される。したがって、排出空気の勢いに内容物Nが巻き込まれるようなことがなく、組み立て工程で発生する様々なトラブルを防止することができる。
【0032】
また、作動機構20は、ピストン部材21にかかるスプリング47の圧縮力よりもピストン部材21と肩カバー10の仮の掛止強度が強く設定されていて、且つ治具Gにより肩カバー10を突いて組み付けられるので、作動機構20の組み付け後も、ピストン部材21と肩カバー10の仮の掛止状態は保持されている。
【0033】
したがって、この容器を使用する際は、使用者が押し釦30を押すと、バルブ機構40が開通すると共に、ピストン部材21のピストンリング26と肩カバー10の仮掛止用の突起13とのアンダーカット係合による掛止状態の抵抗を受ける。この抵抗感により未使用であることが感知できる。
【0034】
そして、押し釦30により掛止強度よりも強い下降方向の力をピストン部材21に加わえると、ピストンリング26が仮掛止用の突起13を乗り越えて仮掛止状態が解除され、吐出可能状態となる。使用によりピストン部材21が下降すると、元の仮掛止状態に戻すことが困難であり、不正使用の感知機能が極めて高い。
【0035】
充填内容物Nは作動機構20の押し下げ量だけ吐出管41を通って吐出口34から押し出され、図4に示すように、最終的には容器本体1内にピストン部材21が完全に没入することにより内容物Nはほぼ完全に吐出される。
【0036】
図5以下は、別の実施の形態を示しており、容器の基本的形態は先の実施の形態と同様であるので、共通する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
図5に示す実施の形態は、肩カバー10の口頸部16の内周面に水平溝17を刻設すると共に、ピストン部材21の摺動部27の上方に水平溝17に係脱可能に係合する突起29を突設し、突起29と水平溝17を水平係合することにより、肩カバー10とピストン部材21を仮係合状態としたものである。
【0038】
水平溝17は、図6に展開して示すように、肩カバー10のフランジ12と、フランジ12の下面に平行する水平壁18とによる凹溝であり、突起29の水平溝17への出入口18aには、水平壁18の傾斜面18bに続き乗り越え突起17aが形成され、水平溝17の奥面はストッパ壁17bとなっている。
【0039】
この実施の形態において、ピストン部材21と肩カバー10を仮掛止状態に組み付けるは、ピストン部材21を肩カバー10の内側から嵌挿してピストン部材21を時計回りに水平回転させる。この操作により、突起29は水平溝17の出入り口18aから傾斜面18bに案内されて乗り越え突起17aを乗り越え、ストッパ壁17bに当接して係合状態となる。
【0040】
この吐出容器を組み立てるには、先の実施の形態と同様に、上記の手段で予め肩カバー10とピストン部材21を仮の掛止状態に組み付けた作動機構20を容器本体1の頸部2に戴置し、下降する治具Gにより、バルブ機構40を開通させた状態に保ちながら肩カバー10の裾部14と容器本体1の頸部2をアンダーカット係合により嵌合させる。
【0041】
尚、肩カバー10と容器本体1の係合はアンダーカット係合に限るものではなく、図7に示すように、容器本体の頸部2に雄ネジ5を設けると共に肩カバー10の裾部14に雌ネジを設け、ネジ嵌合で行ってもよい。
【0042】
この実施の形態の容器を使用する際は、使用者がピストン部材21を逆時計回り水平回転させる。この操作により、突起29は乗り越え突起17aを乗り越え、水平溝17の出入り口18aに至って仮掛止状態が解除され、使用可能となる。
【0043】
突起29が乗り越え突起17aを乗り越えるとき、乗り越え突起17aの抵抗を受ける。この抵抗感により未使用であることが感知できるとともに、使用によりピストン部材21が下降すると、不正に元の仮掛止状態に戻すことは極めて困難であり、不正な着手があったことを感知することができる。
【0044】
図8乃至図9に示す実施の形態は、ピストン部材21の摺動部27の上方に肩カバー10のフランジ12上面に掛止する為の掛止突起29aを突設すると共に、肩カバー10のフランジ12に肩カバー10の内周面に連通し掛止突起29aを案内するガイド溝12aを刻設したものであり、突起29aを肩カバー10のフランジ12上面に掛止させることにより、肩カバー10とピストン部材21を仮係合状態としたものである。
【0045】
この実施の形態において、ピストン部材21と肩カバー10を仮の掛止状態に組み付けるは、掛止突起29aとガイド溝12aの位置を合わせてピストン部材21を肩カバー10の内側から嵌挿し、ピストン部材21を時計回りに水平回転させて掛止突起29aの位置を水平移動させる。この操作により、掛止突起29aがフランジ12上面に掛止する。
【0046】
この実施の形態の容器を使用する際は、使用者がピストン部材21を逆時計回り水平回転させ、掛止突起29aとガイド溝12aの位置を合わせることにより仮掛止状態が解除され、使用可能となる。そして、使用により掛止突起29aがガイド溝12aに案内されてピストン部材21が下降すると、不正に元の仮掛止状態に戻すことは極めて困難である。したがって、仮掛止状態が解除されていることで不正な着手があったことを感知することができる。
【0047】
図10乃至図11は、本発明の吐出容器における別の作動機構20aによる実施の形態を示しており、押し釦30aの内部にバルブ機構40aを設け、吐出口34aの口元でバルブ機構20aの開閉を行うようにしたものである。
【0048】
本実施の形態における押し釦30aは、バルブ機構40aを内装し、ピストン部材21の内筒部28に嵌着すると共に内筒部28内に連通する通路37aを有する基台37と、この基台37に上下方向摺動可能に被嵌し、内部に前記バルブ機構40aに作用するカム板38aを設けたカバ体ー38とで構成されている。
【0049】
また、バルブ機構は40a、吐出口34aが穿孔された先端部を押し釦30aから突出して装着されたノズル44と、ノズル44の吐出口34aを開閉するノズル44内に移動可能に配置された弁部材45と、弁部材45を吐出口34aの閉方向へ付勢すると共に弁部材45後端の傾斜面46を介してカバー体38を基台37の上方位置に保持するスプリング47とで構成されている。
【0050】
この容器は、図11に示すように、カバー体38をスプリング47の力に抗して押し下げると、カバー体38のカム板38aが弁部材45の傾斜面46に摺動して下降し、弁部材45が後退することによりノズル44の吐出口34aが開通してバルブ機構40aは開放状態となり、また、カバー体38を手放すと、スプリング47の力により弁部材45が移動して吐出口34aが閉鎖されると共にカバー体38が元の位置に上昇するようになっている。
【0051】
したがって、この実施の形態の容器にあっても、予め肩カバー10と作動機構20aを仮の掛止状態に組み付けておき、治具により押し釦30aのカバー体38を押し下げてバルブ機構40aを開通させながら組み付け作業を行い、組み付け後も仮掛止状態を維持することが可能である。
【0052】
そして、使用の際には、使用者が押し釦30aのカバー体38を押すと、バルブ機構40aがノズル44の口元で開通すると共に、更に押し釦30aを押し下げること、カバー体38の下端がピストン部材21の縦リブ24の上端面24aに当接して作動機構20a全体を下降させる。ピストン部材21で圧迫された内容物Nは、内筒部28内から押し釦30aの通路37aを通って吐出口34aから排出される。
【0053】
この容器にあっては、吐出口43aの口元でバルブ機構20aの開閉を行うようにしたので、容器内の通路において内容物が外気に触れた状態におかれることがなく、外気による乾燥や腐敗の心配がない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の吐出容器の実施の形態を示す縦断面図。
【図2】図1の容器の要部を拡大して示す縦断面図。
【図3】図1の容器の組み立て作業の状態を示す説明図。
【図4】図1の容器の使用を完了した状態を示す縦断面図。
【図5】別の実施の形態における要部を示す部分断面図。
【図6】図5の要部の一部分を拡大して示す説明図。
【図7】別の実施の形態を示す縦断面図。
【図8】別の実施の形態を示す斜視図。
【図9】図8の容器の要部を拡大して示す部分断面図。
【図10】本発明の吐出容器の別の実施の形態を示す縦断面図。
【図11】図10の容器の作動状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 容器本体,2 口頸部,10 肩カバー,11 内周面,12a ガイド溝,13 突起,17 水平溝,17a 乗り越え突起,20 作動機構,22a 作動機構,21 ピストン部材,21a 掛止突起,26 ピストンリング,27 摺動部,29 突起,30、30a 押し釦,40、40a バルブ機構,N 内容物
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームや整髪料、液体ファンデーション、軟膏のような流動性の物質を液密に収納し、押し釦を押すことにより内容物を適量取り出すようにした吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、消費者が使い易いことから、吐出口を有する押し釦を押し下げることによりピストンを作動させ、堅牢な容器に充填された流動性の内容物をピストンの圧力により吐出させるタイプの吐出容器が多数提案されている。
【0003】
このような押し釦付きの吐出容器として、例えば、実開平8−1175号公報には、流動性物質を収納した容器本体の上部に押し釦により作動するポンプ機構を備えて構成され、押し釦を押し下げると、押し釦の吐出口に連通するバルブ孔が開通すると共にピストンの圧力によりポンプ機構のシリンダ内の内容物が押し釦の吐出口から吐出され、スプリングの力により押し釦が上昇すると、バルブ孔が閉鎖すると共にピストンの上昇に伴い発生する負圧によりポンプ機構のシリンダ内に充填物が吸引され、同時に容器本体の摺動底壁も上昇するものが開示されている。
【0004】
この吐出容器は、押し釦を押すだけで内容物を取り出せるので極めて使い勝ってのよい吐出容器であるが、ポンプ機構や摺動底壁を備えているので機構が複雑で組立工数も多く高価な容器になってしまう欠点を有している。また、この吐出容器は、押し釦の1ストロークの作動で吐出される内容物の量がポンプ機構のシリンダの容量で規制されていることから、小形に設計された容器では、押し釦の1ストロークの吐出量が少ないものになり、所望の吐出量を得る為には押し釦を何度も繰り返し押さなければならない不便さがある。
【0005】
この問題を解決するものとして、特許第3612079号公報に提示された押し釦付きの吐出容器がある。この吐出容器は、内容物が収納される容器本体を有底の外筒とこれに嵌挿される内筒とで二重筒とし、押し釦にスプリングを介して組込まれたピストンを容器本体の内筒内に直接配置して構成されており、押し釦を押してバネ圧に抗して内筒内のピストンを所望量押し込むことにより、押し釦の吐出口に連通し押し釦の下端に取り付けられている流出管のバルブ孔が開通し、押し釦の吐出口からピストンの下降量だけ内容物が押し出されるようになっている。
【0006】
そして、この吐出容器を組み立てる際は、ピストンが組込まれた押し釦と内筒部材とを予め摺動可能に組み付けておき、この内筒部材を所定量の内容物が充填された有底の外筒部材内へ挿入し押圧して組み付ける。この組み付け工程において、容器内で圧縮された圧縮空気は、空気の蓄圧過程においてスプリングのバネ圧に抗して空気圧により開通するバルブ孔を通って押し釦の吐出口から外部に排出されるようになっている。
【0007】
この従来の押し釦付きの吐出容器は、容器本体の内部にポンプ機構を設けることなく、容器本体内の内容物を直接ピストンで押し出す簡単な押し出し式の構成としたので、従来のポンプ式の容器に比較して部品数が少なく安価であり、且つ押し釦の押し込み量の手加減で所望量の内容物が吐出できる簡便さを有している。したがって、既述した問題を一応解決している。
【特許文献1】実開平8−1175号公報
【特許文献2】特許第3612079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許第3612079号公報に開示されている吐出容器は、内容物充填後の組み立て工程において、容器内の空気が蓄圧された状態で開放されることから、排出空気の勢いに内容物が巻き込まれてバルブ孔を通過し、押し釦の吐出口から噴出することも予想される。また、バルブ孔を通過した内容物が押し釦内に止まっても、バルブ孔を通過した内容物は通路内において外気に触れた状態におかれることとなり、乾燥や腐敗の心配がある。
【0009】
また、この組み立て後の吐出容器は、その初動において使用着手後の容器と同様に直ちに作動する状態にあるので、不正に使用されたり過って作動させてしまった物との区別が物理的にも感覚的にも感知し難かった。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、内容物充填後の組立工程において、内容物がバルブ孔を通過する心配なく容器の組み付けができるようにするとともに、使用着手された物であるか否かを感知できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の問題を解決する為に、ピストン部材の上端に抜け出し不能に押し釦が装着され、前記押し釦を押すことにより開通するバルブ機構を備えた作動機構と、内容物が充填された後、前記作動機構が組み付けられる有底筒状の容器本体とを有し、前記作動機構を押し下げることにより内容物を吐出させる吐出容器において、前記容器本体の肩カバーと前記ピストン部材とを予め仮の掛止状態に組み付けておき、前記押し釦を押し下げて前記バルブ機構を開通させた状態で前記肩カバーを前記容器本体の頸部に嵌着することにより前記作動機構を抜け出し不能に組み付け、使用の際、前記肩カバーと前記ピストン部材の仮掛止状態を解除して作動させるようにした。
【0012】
肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部に装着しピストンリングと、肩カバーの内周面に周設した突起とによるアンダーカット係合でなされ、押し釦によってピストン部材を強制下降させることにより前記仮掛止状態が解除されることが好ましい。
【0013】
また、肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部上方に突設した突起と、肩カバーの内周面に刻設した水平溝との水平係合でなされ、ピストン部材を解錠方向に水平回転させることにより前記突起が乗り越え突起を乗り越えて前記仮掛止状態が解除されるようにしてもよい。
【0014】
また、肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部上方に突設した掛止突起を、内周面に連通するガイド溝を刻設した肩カバーのフランジ上面に掛止させることでなされ、ピストン部材を水平回転させて掛止突起とガイド溝の位置を合わせることにより仮掛止状態を解除するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吐出容器によれば、容器本体の肩カバーと作動機構のピストン部材を予め仮の掛止状態に組み付けておき、容器本体と作動機構の組み付工程において、作動機構のバルブ機構を開通させた状態で組み付け作業をするようにしたので、急激な排出空気による内容物の噴出が完全に防止されて容器の内外に内容物が付着することがなくなり、付着内容物の乾燥や腐敗に起因するトラブルの心配がない。
【0016】
また、使用する際には、肩カバーとピストン部材の仮掛止状態を解除して作動させることから、解除操作中に抵抗感が伴うと共に、解除後は仮掛止状態に戻すことが困難な構成であるので、未使用の物と、不正に使用されたり過って作動させてしまった物との判別が極めて容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の吐出容器の好適な実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1乃至図4は、本発明の吐出容器の第1の実施の形態を示しており、図1に示すように、この実施の形態の吐出容器は、肩カバー10が嵌着する頸部2を有する有底筒状の容器本体1と、前記肩カバー10により容器本体1に抜け出し不能に組み付けられる作動機構20と、この作動機構20を被覆する蓋体50とから略構成されている。
【0019】
容器本体1は、胴部3の上端に広口の頸部2を有するジャーであり、頸部2の上端外周には肩カバー10が係合するアンダーカット係合用の下向き段部2aが形成され、底壁4はその中央に窪み穴4aが形成された内向きの球状傾斜面とされている。この容器本体1は、汎用合成樹脂を用いて成型され、内容物を外側から見せる場合はSAN、PS等、透明性の合成樹脂が用いられる。
【0020】
容器本体1の肩カバー10は、その内周面11の直径が容器本体1の内壁の直径と同寸の輪状に形成されており、図2に拡大して示すように、肩カバー10の口頸部16の上端部にはピストン部材21の抜け出しを阻止するフランジ12が形成され、このフランジ12から所定距離下方の内周面11には、ピストンリング26とアンダーカット係合することにより作動機構20を仮止めする為の仮掛止用の突起13が周設されている。また、肩カバー10の裾部14内面には容器本体1の頸部2とアンダーカット係合する為の上向き段部15が形成されている。
【0021】
作動機構20は、容器本体1内に摺動下降可能に組込まれるピストン部材21と、このピストン部材21の上端に離隔方向に付勢するスプリング49を介して抜け出し不能に装着された押し釦30と、この押し釦30を押し下げることにより開通するバルブ機構40とで構成されている。
【0022】
ピストン部材21は、容器本体1における内向きの球状傾斜面と同じ球状傾斜面に形成された底板部22を有し、底板部22の外縁に起立する外筒部23と、底板部22の中央に起立する内筒部28とから成る。
【0023】
外筒部24の内周面には押し釦30の下降を規制する縦リブ24が設けられていると共に、外筒部24の上端には装着された押し釦30の抜け出しを阻止する為の下向き段部25が形成されており、外筒部24の下端部外周面には容器本体1の内周面に摺動するピストンリング26が嵌め込まれた外筒部24よりも径大な摺動部27が形成されている。
【0024】
また、内筒部28の上端は外筒部の縦リブ24の上端と同じ高さとされ、内筒部28の内面にはバルブ機構40の吐出管41が摺動可能に挿通されている。
【0025】
このピストン部材21を肩カバー10の内側から嵌挿し、図2に示すように、ピストンリング26と肩カバー10の仮掛止用の突起13とでアンダーカット係合することにより、ピストン部材21と肩カバー10は仮の掛止状態におかれている。この仮掛止状態は、ピストン部材21に掛止強度よりも強い下降方向の力が加わることにより解除される。
【0026】
押し釦30は、その外周壁31の下端外面にピストン部材21における外筒部24上端の下向き段部25に当接するフランジ32が形成されていてピストン部材21からの抜け出しが阻止されており、押し釦30の内周壁33には吐出口34の横通路35に連通する縦通路36が穿設されいる。
【0027】
また、押し釦30の縦通路36には、ピストン部材21に摺動可能に挿通したバルブ機構40を構成する吐出管41の上端部が挿嵌されており、吐出管41の通路41aは押し釦30の通路35、36と連通している。
【0028】
バルブ機構40は、押し釦30の操作により、吐出管41の下端に形成されたフランジ部42に沿って穿設されたバルブ孔43が、ピストン部材21の内筒部28から出没することにより開閉するものである。押し釦30とピストン部材21の間に配設されて離隔方向に付勢するスプリング49の力に抗して押し釦30を押圧すると、吐出管41が下降してバルブ機構40は開放状態になる。
【0029】
バルブ機構40を開放する際の押し釦30の押し代は、押し釦30が下降して当接するピストン部材21の縦リブ24の上端面と内筒部28の上端面28aとで規制されており、押し釦30が押されて押し代分だけ縮むときのピストン部材21にかかるスプリング49の圧縮力Pは、ピストン部材21と肩カバー10の仮の掛止状態における掛止強度Iよりも弱く、P<Iに設定されている。
【0030】
この吐出容器を組み立てるには、図3に示すように、予め肩カバー10とピストン部材21を仮の掛止状態に組み付けた作動機構20を、内容物Nが口元まで充填された容器本体1の頸部2に戴置し、下降する治具Gにより、押し釦30を押し下げてバルブ機構40を開通させた状態に保つと共に、肩カバー10を突いて肩カバー10の裾部14と容器本体1の頸部2をアンダーカット係合により嵌合させる。
【0031】
治具Gによるバルブ機構40を開通させた状態での容器の組み立て作業により、容器内の空気が蓄圧されることがなく、容器内の空気はバルブ孔43から吐出管41の通路41aを通って押し釦30の吐出口34からスムースに排出される。したがって、排出空気の勢いに内容物Nが巻き込まれるようなことがなく、組み立て工程で発生する様々なトラブルを防止することができる。
【0032】
また、作動機構20は、ピストン部材21にかかるスプリング47の圧縮力よりもピストン部材21と肩カバー10の仮の掛止強度が強く設定されていて、且つ治具Gにより肩カバー10を突いて組み付けられるので、作動機構20の組み付け後も、ピストン部材21と肩カバー10の仮の掛止状態は保持されている。
【0033】
したがって、この容器を使用する際は、使用者が押し釦30を押すと、バルブ機構40が開通すると共に、ピストン部材21のピストンリング26と肩カバー10の仮掛止用の突起13とのアンダーカット係合による掛止状態の抵抗を受ける。この抵抗感により未使用であることが感知できる。
【0034】
そして、押し釦30により掛止強度よりも強い下降方向の力をピストン部材21に加わえると、ピストンリング26が仮掛止用の突起13を乗り越えて仮掛止状態が解除され、吐出可能状態となる。使用によりピストン部材21が下降すると、元の仮掛止状態に戻すことが困難であり、不正使用の感知機能が極めて高い。
【0035】
充填内容物Nは作動機構20の押し下げ量だけ吐出管41を通って吐出口34から押し出され、図4に示すように、最終的には容器本体1内にピストン部材21が完全に没入することにより内容物Nはほぼ完全に吐出される。
【0036】
図5以下は、別の実施の形態を示しており、容器の基本的形態は先の実施の形態と同様であるので、共通する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
図5に示す実施の形態は、肩カバー10の口頸部16の内周面に水平溝17を刻設すると共に、ピストン部材21の摺動部27の上方に水平溝17に係脱可能に係合する突起29を突設し、突起29と水平溝17を水平係合することにより、肩カバー10とピストン部材21を仮係合状態としたものである。
【0038】
水平溝17は、図6に展開して示すように、肩カバー10のフランジ12と、フランジ12の下面に平行する水平壁18とによる凹溝であり、突起29の水平溝17への出入口18aには、水平壁18の傾斜面18bに続き乗り越え突起17aが形成され、水平溝17の奥面はストッパ壁17bとなっている。
【0039】
この実施の形態において、ピストン部材21と肩カバー10を仮掛止状態に組み付けるは、ピストン部材21を肩カバー10の内側から嵌挿してピストン部材21を時計回りに水平回転させる。この操作により、突起29は水平溝17の出入り口18aから傾斜面18bに案内されて乗り越え突起17aを乗り越え、ストッパ壁17bに当接して係合状態となる。
【0040】
この吐出容器を組み立てるには、先の実施の形態と同様に、上記の手段で予め肩カバー10とピストン部材21を仮の掛止状態に組み付けた作動機構20を容器本体1の頸部2に戴置し、下降する治具Gにより、バルブ機構40を開通させた状態に保ちながら肩カバー10の裾部14と容器本体1の頸部2をアンダーカット係合により嵌合させる。
【0041】
尚、肩カバー10と容器本体1の係合はアンダーカット係合に限るものではなく、図7に示すように、容器本体の頸部2に雄ネジ5を設けると共に肩カバー10の裾部14に雌ネジを設け、ネジ嵌合で行ってもよい。
【0042】
この実施の形態の容器を使用する際は、使用者がピストン部材21を逆時計回り水平回転させる。この操作により、突起29は乗り越え突起17aを乗り越え、水平溝17の出入り口18aに至って仮掛止状態が解除され、使用可能となる。
【0043】
突起29が乗り越え突起17aを乗り越えるとき、乗り越え突起17aの抵抗を受ける。この抵抗感により未使用であることが感知できるとともに、使用によりピストン部材21が下降すると、不正に元の仮掛止状態に戻すことは極めて困難であり、不正な着手があったことを感知することができる。
【0044】
図8乃至図9に示す実施の形態は、ピストン部材21の摺動部27の上方に肩カバー10のフランジ12上面に掛止する為の掛止突起29aを突設すると共に、肩カバー10のフランジ12に肩カバー10の内周面に連通し掛止突起29aを案内するガイド溝12aを刻設したものであり、突起29aを肩カバー10のフランジ12上面に掛止させることにより、肩カバー10とピストン部材21を仮係合状態としたものである。
【0045】
この実施の形態において、ピストン部材21と肩カバー10を仮の掛止状態に組み付けるは、掛止突起29aとガイド溝12aの位置を合わせてピストン部材21を肩カバー10の内側から嵌挿し、ピストン部材21を時計回りに水平回転させて掛止突起29aの位置を水平移動させる。この操作により、掛止突起29aがフランジ12上面に掛止する。
【0046】
この実施の形態の容器を使用する際は、使用者がピストン部材21を逆時計回り水平回転させ、掛止突起29aとガイド溝12aの位置を合わせることにより仮掛止状態が解除され、使用可能となる。そして、使用により掛止突起29aがガイド溝12aに案内されてピストン部材21が下降すると、不正に元の仮掛止状態に戻すことは極めて困難である。したがって、仮掛止状態が解除されていることで不正な着手があったことを感知することができる。
【0047】
図10乃至図11は、本発明の吐出容器における別の作動機構20aによる実施の形態を示しており、押し釦30aの内部にバルブ機構40aを設け、吐出口34aの口元でバルブ機構20aの開閉を行うようにしたものである。
【0048】
本実施の形態における押し釦30aは、バルブ機構40aを内装し、ピストン部材21の内筒部28に嵌着すると共に内筒部28内に連通する通路37aを有する基台37と、この基台37に上下方向摺動可能に被嵌し、内部に前記バルブ機構40aに作用するカム板38aを設けたカバ体ー38とで構成されている。
【0049】
また、バルブ機構は40a、吐出口34aが穿孔された先端部を押し釦30aから突出して装着されたノズル44と、ノズル44の吐出口34aを開閉するノズル44内に移動可能に配置された弁部材45と、弁部材45を吐出口34aの閉方向へ付勢すると共に弁部材45後端の傾斜面46を介してカバー体38を基台37の上方位置に保持するスプリング47とで構成されている。
【0050】
この容器は、図11に示すように、カバー体38をスプリング47の力に抗して押し下げると、カバー体38のカム板38aが弁部材45の傾斜面46に摺動して下降し、弁部材45が後退することによりノズル44の吐出口34aが開通してバルブ機構40aは開放状態となり、また、カバー体38を手放すと、スプリング47の力により弁部材45が移動して吐出口34aが閉鎖されると共にカバー体38が元の位置に上昇するようになっている。
【0051】
したがって、この実施の形態の容器にあっても、予め肩カバー10と作動機構20aを仮の掛止状態に組み付けておき、治具により押し釦30aのカバー体38を押し下げてバルブ機構40aを開通させながら組み付け作業を行い、組み付け後も仮掛止状態を維持することが可能である。
【0052】
そして、使用の際には、使用者が押し釦30aのカバー体38を押すと、バルブ機構40aがノズル44の口元で開通すると共に、更に押し釦30aを押し下げること、カバー体38の下端がピストン部材21の縦リブ24の上端面24aに当接して作動機構20a全体を下降させる。ピストン部材21で圧迫された内容物Nは、内筒部28内から押し釦30aの通路37aを通って吐出口34aから排出される。
【0053】
この容器にあっては、吐出口43aの口元でバルブ機構20aの開閉を行うようにしたので、容器内の通路において内容物が外気に触れた状態におかれることがなく、外気による乾燥や腐敗の心配がない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の吐出容器の実施の形態を示す縦断面図。
【図2】図1の容器の要部を拡大して示す縦断面図。
【図3】図1の容器の組み立て作業の状態を示す説明図。
【図4】図1の容器の使用を完了した状態を示す縦断面図。
【図5】別の実施の形態における要部を示す部分断面図。
【図6】図5の要部の一部分を拡大して示す説明図。
【図7】別の実施の形態を示す縦断面図。
【図8】別の実施の形態を示す斜視図。
【図9】図8の容器の要部を拡大して示す部分断面図。
【図10】本発明の吐出容器の別の実施の形態を示す縦断面図。
【図11】図10の容器の作動状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 容器本体,2 口頸部,10 肩カバー,11 内周面,12a ガイド溝,13 突起,17 水平溝,17a 乗り越え突起,20 作動機構,22a 作動機構,21 ピストン部材,21a 掛止突起,26 ピストンリング,27 摺動部,29 突起,30、30a 押し釦,40、40a バルブ機構,N 内容物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン部材の上端に抜け出し不能に押し釦が装着され、前記押し釦を押すことにより開通するバルブ機構を備えた作動機構と、内容物が充填された後、前記作動機構が組み付けられる有底筒状の容器本体とを有し、前記作動機構を押し下げることにより内容物を吐出させる吐出容器において、前記容器本体の肩カバーと前記ピストン部材とを予め仮の掛止状態に組み付けておき、前記押し釦を押し下げて前記バルブ機構を開通させた状態で前記肩カバーを前記容器本体の頸部に嵌着することにより前記作動機構を抜け出し不能に組み付け、使用の際、前記肩カバーと前記ピストン部材の仮掛止状態を解除して作動させることを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部に装着しピストンリングと、肩カバーの内周面に周設した突起とによるアンダーカット係合でなされ、押し釦によってピストン部材を強制下降させることにより前記仮掛止状態が解除されることを特徴とする請求項1記載の吐出容器。
【請求項3】
肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部上方に突設した突起と、肩カバーの内周面に刻設した水平溝との水平係合でなされ、ピストン部材を解錠方向に水平回転させることにより前記突起が前記水平溝の乗り越え突起を乗り越えて前記仮掛止状態が解除されることを特徴とする請求項1記載の吐出容器。
【請求項4】
肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部上方に突設した掛止突起を、内周面に連通するガイド溝を刻設した肩カバーのフランジ上面に掛止させることでなされ、ピストン部材を水平回転させて掛止突起とガイド溝の位置を合わせることにより仮掛止状態を解除するようにしたことを特徴とする請求項1記載の吐出容器。
【請求項1】
ピストン部材の上端に抜け出し不能に押し釦が装着され、前記押し釦を押すことにより開通するバルブ機構を備えた作動機構と、内容物が充填された後、前記作動機構が組み付けられる有底筒状の容器本体とを有し、前記作動機構を押し下げることにより内容物を吐出させる吐出容器において、前記容器本体の肩カバーと前記ピストン部材とを予め仮の掛止状態に組み付けておき、前記押し釦を押し下げて前記バルブ機構を開通させた状態で前記肩カバーを前記容器本体の頸部に嵌着することにより前記作動機構を抜け出し不能に組み付け、使用の際、前記肩カバーと前記ピストン部材の仮掛止状態を解除して作動させることを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部に装着しピストンリングと、肩カバーの内周面に周設した突起とによるアンダーカット係合でなされ、押し釦によってピストン部材を強制下降させることにより前記仮掛止状態が解除されることを特徴とする請求項1記載の吐出容器。
【請求項3】
肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部上方に突設した突起と、肩カバーの内周面に刻設した水平溝との水平係合でなされ、ピストン部材を解錠方向に水平回転させることにより前記突起が前記水平溝の乗り越え突起を乗り越えて前記仮掛止状態が解除されることを特徴とする請求項1記載の吐出容器。
【請求項4】
肩カバーとピストン部材の仮掛止状態が、ピストン部材の摺動部上方に突設した掛止突起を、内周面に連通するガイド溝を刻設した肩カバーのフランジ上面に掛止させることでなされ、ピストン部材を水平回転させて掛止突起とガイド溝の位置を合わせることにより仮掛止状態を解除するようにしたことを特徴とする請求項1記載の吐出容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−298409(P2006−298409A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120451(P2005−120451)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000156341)釜屋化学工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000156341)釜屋化学工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
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