吐水装置
【課題】吐水具の装着方向に関係なく支持管に吐水具を確実に保持することができ、最適な吐水具の着脱操作力を容易に設定できるようにする。
【解決手段】 支持管に挿通したホースの先端に吐水具が接続され、前記支持管と前記吐水具の端部が着脱自在であり、前記支持管と前記吐水具のいずれか一方には、前記ホースと同軸方向に突出した筒状の突出部を、他方には、突出部外周に係合する筒状の係合部を備えた吐水装置であって、前記係合部には突起状の弾性体、前記突出部外周には溝部を、有し、前記係合部が前記突出部外周に係合する際に、前記突起状の弾性体が前記溝部に係止することを特徴とする吐水装置。
【解決手段】 支持管に挿通したホースの先端に吐水具が接続され、前記支持管と前記吐水具の端部が着脱自在であり、前記支持管と前記吐水具のいずれか一方には、前記ホースと同軸方向に突出した筒状の突出部を、他方には、突出部外周に係合する筒状の係合部を備えた吐水装置であって、前記係合部には突起状の弾性体、前記突出部外周には溝部を、有し、前記係合部が前記突出部外周に係合する際に、前記突起状の弾性体が前記溝部に係止することを特徴とする吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所および洗面台や浴室などに設置する引出し可能な吐水具の保持装置を有した吐水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の洗面台に設置される引出し可能な吐水具は、図13に示されるように被係止部1が上向きであるものが一般的であり、セレーションと称される鋸歯状の係止部2と被係止部1との係合によって行われていた。このような場合は装着したまま回転できない場合が多く、回転できる仕様にすると部品点数が増し組立て時の作業性が悪くコスト高になった。また上向きであるがゆえに使用中の水かかりやホースの伝い水が水栓本体の接続口から入ることが多い。従って何らかの水進入防止機構が必要であった。
【0003】
一方、被係止部が水平もしくは下向きのものは、水進入防止に関しては有利であるが、吐水具が重力で外れないように吐水具を支持管に保持させる機構が必要となる。そこで吐水具側接続口の内周面に溝を周設し、更にその接続口端面をスリットにしてこの吐水具側接続口の溝と支持管側接続口に周設された突起が嵌合することで下向き時の吐水具の保持に効果を発揮するものがあった。(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような場合、吐水具に誤って手が触れたりして下方向の荷重がかかると接続部のスリットが広がって嵌合が解除されて吐水具が支持管から外れたり、吐水具と支持管の間に隙間があいてしまうという問題があった。また、上記問題を解決しようと吐水具と支持管の嵌合をきつくすると吐水具の着脱操作力が大きくなるという問題もあった。このように吐水具と支持管は成形品の嵌合で固定されているが、それぞれの成形品の成形バラツキにより嵌合の緩いものや強いものが出来上がったり、樹脂の弾性力による嵌合はその調整に非常に手間がかかるという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−147821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、吐水具の装着方向に関係なく支持管に吐水具を確実に保持することができ、最適な吐水具の着脱操作力を容易に設定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、支持管に挿通したホースの先端に吐水具が接続され、前記支持管と前記吐水具の端部が着脱自在であり、前記支持管と前記吐水具のいずれか一方には、前記ホースと同軸方向に突出した筒状の突出部を、他方には、突出部外周に係合する筒状の係合部を備えた吐水装置であって、前記係合部には突起状の弾性体、前記突出部外周には溝部を、有し、前記係合部が前記突出部外周に係合する際に、前記突起状の弾性体が前記溝部に係止することである。
これにより、弾性部材が突出部外周の溝部に着脱自在に弾接する構造とすることにより、支持管に吐水具を確実に保持することができる。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記突出部の外周端面部と、前記外周端面部と接続される前記係合部の端面接続部のいずれか一方には凹部、他方には凸部を備えたことである。
これにより、使用者の望む方向に吐水具を回転保持させることができ、回転操作時、凹部、凸部の係合により回転抵抗を与え、クリック感をだすことができる。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、前記突出部の外周端面部、又は、前記外周端面部と接続される前記係合部の端面接続部に、Oリングを備え、前記外周端面部と前記端面接続部が弾接したことである。
これにより、使用者の望む方向に吐水具を回転保持させることができ、回転操作時にOリングにより回転抵抗を与えることでクリック感をだすことができる。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、前記弾性部材が板バネであることである。
これにより、係合部に突起状の弾性体を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、最適な操作力で吐水具を確実に支持管に着脱でき、吐水具が容易に外れたり隙間ができたりしないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を図示された実施例に基づいて詳述する。図2は洗面化粧台に取付けられている水栓Aの一例である。図2(a)は、吐水具を引き出した状態の概略断面図、(b)は吐水具を支持管に保持させた状態の概略断面図である。シャワーホース34が接続された吐水具31は端部を支持管32に取付けられるようになっており、シャワーホース34を介して引き出して使用することもできる。
【0014】
水栓Aの支持管32は吐水具31との接続部である突出部33を水平または下向きに構成しており、吐水具31を支持管32から引き出して使用している際のかかり水やホースの表面に付着した水の伝い水が容易に支持管32の接続口から浸入するのを防止している。更に支持管32の突出部33は図2に示すように凸形状をしており、水浸入がし難いように内通しているシャワーホース34の外径とほぼ等しい内径で形成されており、水が浸入する隙間がほとんど無いようになっている。
【0015】
図3に吐水具31の簡単な分解外観図を示す。吐水具31は散水板外筒41、散水板内筒42、吐水インナー43および吐水カバー44から構成されており、シャワーホース34は吐水インナー43と接続されてねじ45を介して吐水カバー44と一緒に固定される。散水板外筒41、散水板内筒42はねじ46で吐水インナー43と接続されており、散水板外筒41には吐水形態を変更できる切替えレバー411を備えている。
【0016】
吐水インナー43には、突起状の弾性体である板ばね48を少なくとも一つ装着できる装着基台部47が設けられており、この装着基台部47から吐水インナー43の内周半径方向に向かって板ばね48の山頂部分が突出できる程度の挿通孔49が設けられている。板ばね48は、この挿通孔49から山頂部分が突出し、板ばね48の開脚方向に突っ張った状態で装着基台部47に設置されている。板ばね48は図1に示すような板厚t、高さh、開脚角度α、幅aの形状をしており、各寸法値は吐水具31の大きさ、形状により決定される。本実施例において、夫々の寸法は、板厚t:0.25mm、高さh:9mm、開脚角度α:80度、幅a:5mmである。この板ばね48の各寸法値を変えることで板ばね48の弾性係数が変化し、吐水具31の着脱操作力を変えることができる。つまり板ばね48の弾性係数を大きくすると吐水具31の着脱力が強くなり、小さくすると着脱力が弱くなるように調整可能となる。
【0017】
次に板ばね48の装着方法について説明する。金型構成上、吐水インナー43の装着基台部47は図3のように片側開放形状となるので、その開放側から板ばね48を挿入することになる。吐水インナー43の下方から山頂部を挿通孔49に挿入して開脚方向に押し広げながら装着基台部47にスライドしながら設置する。板ばね48は装着基台部47で弾設しているので容易に脱落はしないが上記のように装着基台部47は片側が開放されているので、型構成や挿入組立て性は簡易となり有利であるが、反面、吐水具の着脱時の弾み等で板ばね48が脱落する可能性がある。従って板ばね48の脱落防止のため、吐水カバー44の方にガイドリブ40を設け、吐水カバー44と吐水インナー43を嵌合組立て時に、ちょうどガイドリブ40が装着基台部47の下面にスライドして当接するようにして、装着状態で板ばね48が脱落することがないよう防止部を構成している。もちろんこれとは逆に、板ばねの装着方向が上方からの場合は、ガイドリブを装着基台部の上面と当接するように吐水カバー44に設けても何ら差し支えはない。このような板ばね装着構造にすると、使用回数によって吐水具の着脱操作力が弱くなってきたり、板ばね48が破損した場合などの際、交換やメンテナンス作業が容易になり大変便利である。更にメンテは吐水具31全部を交換する必要はなく、板ばね48だけの交換で済むので必要最小限の部品交換となり使用者にとってコストメリットもある。
【0018】
図2の上方断面図を図4に示す。図4(a)は吐水具を引き出した場合であり、図4(b)は吐水具を装着した場合である。この実施例の場合は、2枚の板ばね48がお互い正反対の位置に装着されており、図4のように、突出部33外周に係合する係合部481(吐水インナー43内周面)から板ばね48の山頂部が中心方向に突出している。
【0019】
一方、支持管32の突出部33はシャワーホース34を挿通できる凸状筒体で、その外径は吐水インナー43の突出部33内径より僅小になっており吐水インナー43と嵌合できる。また突出部33の内径はシャワーホース外径より僅大であるため、使用中の水かかりやホースの伝い水が接続口から入り難くなっている。
【0020】
図5は支持管32の突出部33の断面図である。図5に示すようにこの支持管32の突出部33の先端外周62は全周R処理されているので、吐水具31を支持管32に装着する際は、スムーズに支持管32に挿入をガイドできるようになっている。また、図4でわかるように支持管32の突出部33の外周面には溝部61が周設されており、吐水具31と支持管32の装着完了状態で板ばね48の山頂部が溝部61に嵌入するようになっている。この溝部寸を板ばね48の山頂寸よりも僅小に設定すると、装着完了状態で板ばね48が支持管32の突出部33に弾接して、吐水具31と支持管32の接続部のがたつきや隙間が無くなり品位が向上する。更に装着時に板ばね48のクリック音とクリック感により装着完了が確認できる。
【0021】
更に相互の嵌合する形状は鋸歯状のような特異な形状ではなく筒状であるため、装着完了状態においても吐水具31は首振り回動できる。またこの首振り回動に回転規制を設けたい場合には、図6のように吐水インナー43端面に凸部36を設け、支持管32の接続部にこの凸部を十分に受容できる円弧状凹溝35を設ければよい。吐水具31の回転規制角度は、この凹溝35の円弧長さで調整できる。吐水インナー43端面にこのような凸部を設けることにより、吐水具31を支持管32に装着する時に吐水口を上方に向けたままで誤って装着しようとしても、完全に最後まで装着できなくなるので誤装着の防止効果も期待できる。
【0022】
以上のように、吐水具31と支持管32の着脱機構に樹脂の弾性力ではなく板ばね48による嵌合形態をとると、吐水具31の着脱操作力は板ばね48の弾性係数の調整により簡単に変えることができる。もちろん、調整可能であれば図7のように板ばね部を樹脂による一体成形としてもよい。吐水インナー81に板ばねの代わりに弾性部82を樹脂で一体的に成形すれば板ばね同様に支持管に着脱可能となる。
【0023】
以上の構成としたことにより、支持管32に保持された吐水具31は板ばね48の嵌合によって位置決めされた状態で支持管32に保持されており、使用者が望む方向に向けて支持管32に取付けられ、吐水具31から水が使用者の望む方向に向けて吐出されるものである。そして、使用者の使用状況に応じて吐水具31を首振り回動させることができる。
【0024】
本実施例は、突出部33を支持管32側に、係合部481を吐水具31側に設けたが、突出部33を吐水具31側に、係合部481を支持管32側に設けても構わない。
【0025】
次に第二の実施例について説明する。図8は板ばねの装着位置を変えた場合の概略断面図である。第一の実施例と同じ構成要素については同符号を付し説明は省略する。図8のように吐水具90が支持管32に取付けられた状態において、吐水インナー92に装着された板ばね91が支持管32の突出部33に周設された溝部61に嵌入しない位置に別の板ばね装着基台部93を吐水インナー92に設けると、この板ばね91が溝部61以外で常に支持管32の突出部33の外周面と弾接することになり、首振り回動後でも吐水量の増減や吐止水時の反動で吐水具が自然に回転しないように回動抵抗を大きくして吐水具31を保持することができる。
【0026】
回動抵抗を大きくする他の手段としては、図9(a)のように突出部33の外周端面部100に半球状凸部101を設け、図3にあるように吐水インナー43の端面接続部110に半球状凹部102をそれぞれ複数個設けると、吐水具90の回転時にこの凹凸半球形状の係合によって回動抵抗を得ることもできる。吐水具90は支持管32に装着した時、吐水インナー92に装着している板ばね91によって支持管32側に押し付けられるように弾接しているので、吐水具90を回転させると半球状凸部101と凹部102の係合によってクリック感も出す事ができる。もちろん逆に支持管32の突出部33に半球状凹部102を、吐水インナー92端面部に凸部101を設定しても何ら差し支えはない。この時、両者の材質としては摩耗に強いポリアセタールまたはPBT樹脂が適当である。
また、図9(b)のように支持管32の突出部33の外周端面部100に設けたOリング溝にOリング103を嵌入させて、吐水具90を支持管32に装着して回転させると、図9(a)と同様に吐水具90は支持管32側に押し付けられるように弾接しているので吐水具90の端面である端面接続部110(図3の端面接続部110に凹部102がない形態)がOリング103と接触回転することで回動抵抗を得ることができる。もちろんOリング103を端面接続部110側にのみ設けても本実施例と同じように回転抵抗を得ることができる。
【0027】
次に、第三の実施例を簡単に説明する。図10は鋼球を用いた別の実施例を示した着脱部の外観斜視図、図11は図10の断面斜視図を示すものであり、(a)は装着前の状態、(b)は装着後の状態図である。図10および図11に示すように鋼球113が吐水インナー111の内周面から僅かに内側に突出した状態で保持され、内周面側に抜け落ちないような貫通傾斜孔が吐水インナー111の外周面に複数個設けられている。その外周面上にC字型の板ばね112が係止できるように溝部115が周設されており、貫通傾斜孔に入っている鋼球113が外周側へ抜け落ちないようにC字型の板ばね112で外周方向から弾接保持している。支持管32の突出部114には上記の実施例同様に溝部115が周設されている。吐水インナー111と支持管32の突出部114が係止開始状態で鋼球113は外周方向に押され、鋼球113が溝部115に嵌まり落ちた時に係止終了状態となる。
【0028】
係止終了状態でもC字型の板ばね112は鋼球113を弾押しているのでガタツキがなく装着している。凹溝115の代わりに図12のように鋼球113が嵌まり込むような半球状の溝13を一定間隔で周設すると、装着完了状態で吐水具90を首振り回転するとクリック感及び回動抵抗を得ることができる。また、吐水具90の着脱操作性は、鋼球113の数やそれを弾接保持しているC字型の板ばね112の弾性係数を変えることで調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】板ばねの一形状を示すものであり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の第一の実施例を示すものであり、(a)は吐水具を引き出した状態の概略断面図、(b)は吐水具を支持管に保持させた状態の概略断面図である。
【図3】本発明の第一の実施例を示す分解外観斜視図である。
【図4】本発明の第一の実施例を示すものであり、(a)は吐水具を引き出した状態の概略断面図、(b)は吐水具を支持管に保持させた状態の概略断面図である。
【図5】支持管の突出部の断面図である。
【図6】吐水具の回転規制の実施例を示すものであり、(a)は吐水具の断面図及び背面図、(b)は支持管の正面図及び断面図である。
【図7】板ばねの代用として樹脂で一体成形した場合の吐水具の断面図である。
【図8】板ばねの装着位置を変えた場合の概略断面図である。
【図9】回動抵抗を設けるための機構を示す支持管の一実施例を示すものであり、(a)はクリック感を出せるようにした支持管の断面図、(b)はOリングを装着した支持管の断面図である。
【図10】鋼球を用いた別の実施例を示した着脱部の外観斜視図である。
【図11】第三実施例の断面斜視図を示すものであり、(a)は装着前の状態、(b)は装着後の状態図である。
【図12】別の支持管の接続部の外観斜視図である。
【図13】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
31…吐水具
32…支持管
33…突出部
34…シャワーホース
43…吐水インナー
44…吐水カバー
47…板ばね装着基台部
48…板ばね
49…挿通穴
61…溝部
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所および洗面台や浴室などに設置する引出し可能な吐水具の保持装置を有した吐水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の洗面台に設置される引出し可能な吐水具は、図13に示されるように被係止部1が上向きであるものが一般的であり、セレーションと称される鋸歯状の係止部2と被係止部1との係合によって行われていた。このような場合は装着したまま回転できない場合が多く、回転できる仕様にすると部品点数が増し組立て時の作業性が悪くコスト高になった。また上向きであるがゆえに使用中の水かかりやホースの伝い水が水栓本体の接続口から入ることが多い。従って何らかの水進入防止機構が必要であった。
【0003】
一方、被係止部が水平もしくは下向きのものは、水進入防止に関しては有利であるが、吐水具が重力で外れないように吐水具を支持管に保持させる機構が必要となる。そこで吐水具側接続口の内周面に溝を周設し、更にその接続口端面をスリットにしてこの吐水具側接続口の溝と支持管側接続口に周設された突起が嵌合することで下向き時の吐水具の保持に効果を発揮するものがあった。(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような場合、吐水具に誤って手が触れたりして下方向の荷重がかかると接続部のスリットが広がって嵌合が解除されて吐水具が支持管から外れたり、吐水具と支持管の間に隙間があいてしまうという問題があった。また、上記問題を解決しようと吐水具と支持管の嵌合をきつくすると吐水具の着脱操作力が大きくなるという問題もあった。このように吐水具と支持管は成形品の嵌合で固定されているが、それぞれの成形品の成形バラツキにより嵌合の緩いものや強いものが出来上がったり、樹脂の弾性力による嵌合はその調整に非常に手間がかかるという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−147821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、吐水具の装着方向に関係なく支持管に吐水具を確実に保持することができ、最適な吐水具の着脱操作力を容易に設定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、支持管に挿通したホースの先端に吐水具が接続され、前記支持管と前記吐水具の端部が着脱自在であり、前記支持管と前記吐水具のいずれか一方には、前記ホースと同軸方向に突出した筒状の突出部を、他方には、突出部外周に係合する筒状の係合部を備えた吐水装置であって、前記係合部には突起状の弾性体、前記突出部外周には溝部を、有し、前記係合部が前記突出部外周に係合する際に、前記突起状の弾性体が前記溝部に係止することである。
これにより、弾性部材が突出部外周の溝部に着脱自在に弾接する構造とすることにより、支持管に吐水具を確実に保持することができる。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記突出部の外周端面部と、前記外周端面部と接続される前記係合部の端面接続部のいずれか一方には凹部、他方には凸部を備えたことである。
これにより、使用者の望む方向に吐水具を回転保持させることができ、回転操作時、凹部、凸部の係合により回転抵抗を与え、クリック感をだすことができる。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、前記突出部の外周端面部、又は、前記外周端面部と接続される前記係合部の端面接続部に、Oリングを備え、前記外周端面部と前記端面接続部が弾接したことである。
これにより、使用者の望む方向に吐水具を回転保持させることができ、回転操作時にOリングにより回転抵抗を与えることでクリック感をだすことができる。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、前記弾性部材が板バネであることである。
これにより、係合部に突起状の弾性体を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、最適な操作力で吐水具を確実に支持管に着脱でき、吐水具が容易に外れたり隙間ができたりしないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明を図示された実施例に基づいて詳述する。図2は洗面化粧台に取付けられている水栓Aの一例である。図2(a)は、吐水具を引き出した状態の概略断面図、(b)は吐水具を支持管に保持させた状態の概略断面図である。シャワーホース34が接続された吐水具31は端部を支持管32に取付けられるようになっており、シャワーホース34を介して引き出して使用することもできる。
【0014】
水栓Aの支持管32は吐水具31との接続部である突出部33を水平または下向きに構成しており、吐水具31を支持管32から引き出して使用している際のかかり水やホースの表面に付着した水の伝い水が容易に支持管32の接続口から浸入するのを防止している。更に支持管32の突出部33は図2に示すように凸形状をしており、水浸入がし難いように内通しているシャワーホース34の外径とほぼ等しい内径で形成されており、水が浸入する隙間がほとんど無いようになっている。
【0015】
図3に吐水具31の簡単な分解外観図を示す。吐水具31は散水板外筒41、散水板内筒42、吐水インナー43および吐水カバー44から構成されており、シャワーホース34は吐水インナー43と接続されてねじ45を介して吐水カバー44と一緒に固定される。散水板外筒41、散水板内筒42はねじ46で吐水インナー43と接続されており、散水板外筒41には吐水形態を変更できる切替えレバー411を備えている。
【0016】
吐水インナー43には、突起状の弾性体である板ばね48を少なくとも一つ装着できる装着基台部47が設けられており、この装着基台部47から吐水インナー43の内周半径方向に向かって板ばね48の山頂部分が突出できる程度の挿通孔49が設けられている。板ばね48は、この挿通孔49から山頂部分が突出し、板ばね48の開脚方向に突っ張った状態で装着基台部47に設置されている。板ばね48は図1に示すような板厚t、高さh、開脚角度α、幅aの形状をしており、各寸法値は吐水具31の大きさ、形状により決定される。本実施例において、夫々の寸法は、板厚t:0.25mm、高さh:9mm、開脚角度α:80度、幅a:5mmである。この板ばね48の各寸法値を変えることで板ばね48の弾性係数が変化し、吐水具31の着脱操作力を変えることができる。つまり板ばね48の弾性係数を大きくすると吐水具31の着脱力が強くなり、小さくすると着脱力が弱くなるように調整可能となる。
【0017】
次に板ばね48の装着方法について説明する。金型構成上、吐水インナー43の装着基台部47は図3のように片側開放形状となるので、その開放側から板ばね48を挿入することになる。吐水インナー43の下方から山頂部を挿通孔49に挿入して開脚方向に押し広げながら装着基台部47にスライドしながら設置する。板ばね48は装着基台部47で弾設しているので容易に脱落はしないが上記のように装着基台部47は片側が開放されているので、型構成や挿入組立て性は簡易となり有利であるが、反面、吐水具の着脱時の弾み等で板ばね48が脱落する可能性がある。従って板ばね48の脱落防止のため、吐水カバー44の方にガイドリブ40を設け、吐水カバー44と吐水インナー43を嵌合組立て時に、ちょうどガイドリブ40が装着基台部47の下面にスライドして当接するようにして、装着状態で板ばね48が脱落することがないよう防止部を構成している。もちろんこれとは逆に、板ばねの装着方向が上方からの場合は、ガイドリブを装着基台部の上面と当接するように吐水カバー44に設けても何ら差し支えはない。このような板ばね装着構造にすると、使用回数によって吐水具の着脱操作力が弱くなってきたり、板ばね48が破損した場合などの際、交換やメンテナンス作業が容易になり大変便利である。更にメンテは吐水具31全部を交換する必要はなく、板ばね48だけの交換で済むので必要最小限の部品交換となり使用者にとってコストメリットもある。
【0018】
図2の上方断面図を図4に示す。図4(a)は吐水具を引き出した場合であり、図4(b)は吐水具を装着した場合である。この実施例の場合は、2枚の板ばね48がお互い正反対の位置に装着されており、図4のように、突出部33外周に係合する係合部481(吐水インナー43内周面)から板ばね48の山頂部が中心方向に突出している。
【0019】
一方、支持管32の突出部33はシャワーホース34を挿通できる凸状筒体で、その外径は吐水インナー43の突出部33内径より僅小になっており吐水インナー43と嵌合できる。また突出部33の内径はシャワーホース外径より僅大であるため、使用中の水かかりやホースの伝い水が接続口から入り難くなっている。
【0020】
図5は支持管32の突出部33の断面図である。図5に示すようにこの支持管32の突出部33の先端外周62は全周R処理されているので、吐水具31を支持管32に装着する際は、スムーズに支持管32に挿入をガイドできるようになっている。また、図4でわかるように支持管32の突出部33の外周面には溝部61が周設されており、吐水具31と支持管32の装着完了状態で板ばね48の山頂部が溝部61に嵌入するようになっている。この溝部寸を板ばね48の山頂寸よりも僅小に設定すると、装着完了状態で板ばね48が支持管32の突出部33に弾接して、吐水具31と支持管32の接続部のがたつきや隙間が無くなり品位が向上する。更に装着時に板ばね48のクリック音とクリック感により装着完了が確認できる。
【0021】
更に相互の嵌合する形状は鋸歯状のような特異な形状ではなく筒状であるため、装着完了状態においても吐水具31は首振り回動できる。またこの首振り回動に回転規制を設けたい場合には、図6のように吐水インナー43端面に凸部36を設け、支持管32の接続部にこの凸部を十分に受容できる円弧状凹溝35を設ければよい。吐水具31の回転規制角度は、この凹溝35の円弧長さで調整できる。吐水インナー43端面にこのような凸部を設けることにより、吐水具31を支持管32に装着する時に吐水口を上方に向けたままで誤って装着しようとしても、完全に最後まで装着できなくなるので誤装着の防止効果も期待できる。
【0022】
以上のように、吐水具31と支持管32の着脱機構に樹脂の弾性力ではなく板ばね48による嵌合形態をとると、吐水具31の着脱操作力は板ばね48の弾性係数の調整により簡単に変えることができる。もちろん、調整可能であれば図7のように板ばね部を樹脂による一体成形としてもよい。吐水インナー81に板ばねの代わりに弾性部82を樹脂で一体的に成形すれば板ばね同様に支持管に着脱可能となる。
【0023】
以上の構成としたことにより、支持管32に保持された吐水具31は板ばね48の嵌合によって位置決めされた状態で支持管32に保持されており、使用者が望む方向に向けて支持管32に取付けられ、吐水具31から水が使用者の望む方向に向けて吐出されるものである。そして、使用者の使用状況に応じて吐水具31を首振り回動させることができる。
【0024】
本実施例は、突出部33を支持管32側に、係合部481を吐水具31側に設けたが、突出部33を吐水具31側に、係合部481を支持管32側に設けても構わない。
【0025】
次に第二の実施例について説明する。図8は板ばねの装着位置を変えた場合の概略断面図である。第一の実施例と同じ構成要素については同符号を付し説明は省略する。図8のように吐水具90が支持管32に取付けられた状態において、吐水インナー92に装着された板ばね91が支持管32の突出部33に周設された溝部61に嵌入しない位置に別の板ばね装着基台部93を吐水インナー92に設けると、この板ばね91が溝部61以外で常に支持管32の突出部33の外周面と弾接することになり、首振り回動後でも吐水量の増減や吐止水時の反動で吐水具が自然に回転しないように回動抵抗を大きくして吐水具31を保持することができる。
【0026】
回動抵抗を大きくする他の手段としては、図9(a)のように突出部33の外周端面部100に半球状凸部101を設け、図3にあるように吐水インナー43の端面接続部110に半球状凹部102をそれぞれ複数個設けると、吐水具90の回転時にこの凹凸半球形状の係合によって回動抵抗を得ることもできる。吐水具90は支持管32に装着した時、吐水インナー92に装着している板ばね91によって支持管32側に押し付けられるように弾接しているので、吐水具90を回転させると半球状凸部101と凹部102の係合によってクリック感も出す事ができる。もちろん逆に支持管32の突出部33に半球状凹部102を、吐水インナー92端面部に凸部101を設定しても何ら差し支えはない。この時、両者の材質としては摩耗に強いポリアセタールまたはPBT樹脂が適当である。
また、図9(b)のように支持管32の突出部33の外周端面部100に設けたOリング溝にOリング103を嵌入させて、吐水具90を支持管32に装着して回転させると、図9(a)と同様に吐水具90は支持管32側に押し付けられるように弾接しているので吐水具90の端面である端面接続部110(図3の端面接続部110に凹部102がない形態)がOリング103と接触回転することで回動抵抗を得ることができる。もちろんOリング103を端面接続部110側にのみ設けても本実施例と同じように回転抵抗を得ることができる。
【0027】
次に、第三の実施例を簡単に説明する。図10は鋼球を用いた別の実施例を示した着脱部の外観斜視図、図11は図10の断面斜視図を示すものであり、(a)は装着前の状態、(b)は装着後の状態図である。図10および図11に示すように鋼球113が吐水インナー111の内周面から僅かに内側に突出した状態で保持され、内周面側に抜け落ちないような貫通傾斜孔が吐水インナー111の外周面に複数個設けられている。その外周面上にC字型の板ばね112が係止できるように溝部115が周設されており、貫通傾斜孔に入っている鋼球113が外周側へ抜け落ちないようにC字型の板ばね112で外周方向から弾接保持している。支持管32の突出部114には上記の実施例同様に溝部115が周設されている。吐水インナー111と支持管32の突出部114が係止開始状態で鋼球113は外周方向に押され、鋼球113が溝部115に嵌まり落ちた時に係止終了状態となる。
【0028】
係止終了状態でもC字型の板ばね112は鋼球113を弾押しているのでガタツキがなく装着している。凹溝115の代わりに図12のように鋼球113が嵌まり込むような半球状の溝13を一定間隔で周設すると、装着完了状態で吐水具90を首振り回転するとクリック感及び回動抵抗を得ることができる。また、吐水具90の着脱操作性は、鋼球113の数やそれを弾接保持しているC字型の板ばね112の弾性係数を変えることで調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】板ばねの一形状を示すものであり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の第一の実施例を示すものであり、(a)は吐水具を引き出した状態の概略断面図、(b)は吐水具を支持管に保持させた状態の概略断面図である。
【図3】本発明の第一の実施例を示す分解外観斜視図である。
【図4】本発明の第一の実施例を示すものであり、(a)は吐水具を引き出した状態の概略断面図、(b)は吐水具を支持管に保持させた状態の概略断面図である。
【図5】支持管の突出部の断面図である。
【図6】吐水具の回転規制の実施例を示すものであり、(a)は吐水具の断面図及び背面図、(b)は支持管の正面図及び断面図である。
【図7】板ばねの代用として樹脂で一体成形した場合の吐水具の断面図である。
【図8】板ばねの装着位置を変えた場合の概略断面図である。
【図9】回動抵抗を設けるための機構を示す支持管の一実施例を示すものであり、(a)はクリック感を出せるようにした支持管の断面図、(b)はOリングを装着した支持管の断面図である。
【図10】鋼球を用いた別の実施例を示した着脱部の外観斜視図である。
【図11】第三実施例の断面斜視図を示すものであり、(a)は装着前の状態、(b)は装着後の状態図である。
【図12】別の支持管の接続部の外観斜視図である。
【図13】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
31…吐水具
32…支持管
33…突出部
34…シャワーホース
43…吐水インナー
44…吐水カバー
47…板ばね装着基台部
48…板ばね
49…挿通穴
61…溝部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持管に挿通したホースの先端に吐水具が接続され、前記支持管と前記吐水具の端部が着脱自在であり、前記支持管と前記吐水具のいずれか一方には、前記ホースと同軸方向に突出した筒状の突出部を、他方には、突出部外周に係合する筒状の係合部を備えた吐水装置であって、前記係合部には突起状の弾性体、前記突出部外周には溝部を、有し、前記係合部が前記突出部外周に係合する際に、前記突起状の弾性体が前記溝部に係止することを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記突出部の外周端面部と、前記外周端面部と接続される前記係合部の端面接続部のいずれか一方には凹部、他方には凸部を備えたことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
。
【請求項3】
前記突出部の外周端面部、又は、前記外周端面部と接続される前記係合部の端面接続部に、Oリングを備え、前記外周端面部と前記端面接続部が弾接したことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項4】
前記弾性部材が板バネであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の吐水装置
【請求項1】
支持管に挿通したホースの先端に吐水具が接続され、前記支持管と前記吐水具の端部が着脱自在であり、前記支持管と前記吐水具のいずれか一方には、前記ホースと同軸方向に突出した筒状の突出部を、他方には、突出部外周に係合する筒状の係合部を備えた吐水装置であって、前記係合部には突起状の弾性体、前記突出部外周には溝部を、有し、前記係合部が前記突出部外周に係合する際に、前記突起状の弾性体が前記溝部に係止することを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記突出部の外周端面部と、前記外周端面部と接続される前記係合部の端面接続部のいずれか一方には凹部、他方には凸部を備えたことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
。
【請求項3】
前記突出部の外周端面部、又は、前記外周端面部と接続される前記係合部の端面接続部に、Oリングを備え、前記外周端面部と前記端面接続部が弾接したことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項4】
前記弾性部材が板バネであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の吐水装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−104681(P2006−104681A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289198(P2004−289198)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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