説明

向上されたエレクトロクロミック(EC)ポリマーフィルムの電解重合

ECモノマーの電解重合を使用して、基板上に堆積させたECポリマーフィルムを得る。フィルムを製造する方法の第1の実施形態は、サイクリックボルタンメトリを単独で使用するが、第2の実施形態(212)は、クロノアンペロメトリを使用して非常に薄くて均一な層を堆積させ(216)、次いでサイクリックボルタンメトリを使用してフィルムの密度を増加させる(218)。本発明の他の態様は、透明基板上に堆積させた格子形導電性材料の特定の蜘蛛の巣状の構造を対象とする。蜘蛛の巣状の構造は、同心円かまたは同心楕円いずれかに沿っている。本発明のさらに他の態様は、プリズムとパターン形成分析層との間に配置されたデジタルウィンドウを含むイメージングシステムを対象とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、印加した電圧と相関関係のある異なる色を呈するエレクトロクロミック(EC)材料に関し、より詳細には、特定の有機ポリマーをベースにしたEC材料を利用する装置、およびこの特定の有機ポリマーをベースにしたEC材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミック(EC)材料は、フォトクロミック材料およびサーモクロミック材料を含めたクロモジェニック材料群の一部である。これらは、光(フォトクロミック)、熱(サーモクロミック)、または電気(エレクトロクロミック)に暴露されると、その着色レベルまたは不透明性が変化する材料である。クロモジェニック材料は、光の透過に関する応用分野で広い関心を集めている。
【0003】
クロモジェニック材料の初期の応用例は、太陽に暴露されると暗くなるサングラス、または処方眼鏡であった。こうしたフォトクロミック材料は、1960年代後半に最初に、Corning Incorporatedの研究者によって開発された。このとき以来、クロモジェニック材料を使用して、透過する光の量を変えることのできるウィンドウガラスを製造できる可能性のあることが分かっている。しかし、こうした材料の使用法はそのような期待される応用例に限定されるものではないことは明白である。実際、EC技術は、すでに、デジタル時計のディスプレイに使用されている。
【0004】
いくつかの異なるタイプのEC材料が知られている。主な3つのタイプは、無機薄膜、有機ポリマーフィルム、および有機溶液である。多くの応用例に対して、液体材料の使用は不便であり、その結果、無機薄膜、および有機ポリマーフィルムが、より産業的に利用可能であると思われる。
【0005】
無機薄膜に基づくECデバイスでは、EC層は通常酸化タングステン(WO)である。特許文献1、2、および3に、酸化タングステンEC層に基づく無機薄膜ECデバイスが記載されている。酸化モリブデンなど、その他の無機EC材料も公知である。多くの無機材料がEC材料として使用されているが、多くの無機EC材料に伴う加工の難しさおよび応答時間の遅さのために、様々なタイプのEC材料の必要性が生じている。
【0006】
共役レドックス活性ポリマーは、EC材料の1種である。こうしたポリマー(陰極性または陽極性ポリマー)は、本質的にエレクトロクロミックであり、異なる色状態の間を電気化学的または化学的に切り替えることができる。レドックス活性コポリマー群は、特許文献4に記載されている。他の、窒素ベースの複素環有機EC材料群は、特許文献5に記載されている。ECウィンドウに有用なEC材料の特定または開発を求めて、さらに他のタイプの有機フィルムEC材料の研究が続けられている。新規なタイプのEC有機ポリマーフィルムの改善と開発の余地、ならびにEC有機ポリマーフィルムを作製する方法の改善と開発の余地は依然として存在している。例えば、特定の色、長期間の安定性、酸化還元の速やかなスイッチング、状態変化に伴う不透明性の大きな変化など特定の望ましい諸特性を提供する、EC有機ポリマーフィルムおよびそれを作製する方法が開発できれば、望ましいはずである。
【0007】
電圧に応答して異なる不透明性を示すECデバイスを作製するには、多層の組立品が必要である。一般に、この組立品の2つの外層は、透明な導電体である。この外層内には、対向電極層およびEC層があり、この間にイオン導電体層が配置されている。外部導電体間に低い電圧を印加すると、イオンが対向電極からEC層へ移動して、この組立品の色を変化させる。電圧を逆にするとイオンはEC層から対向電極層へ反対に移動し、このデバイスを元の状態に戻す。もちろん、すべての層が可視光に対して透明であることが好ましい。対向電極の構造はいくつか公知であるが、新規の改善されたECデバイスの開発を促進するために追加の対向電極の構造を提供することが望ましいだろう。
【0008】
ECウィンドウはスマートウィンドウと呼ばれることもあり、これはEC技術の大きな産業的応用分野であることが期待されるが、ECのもう1つの可能な使用法は、スマートディスプレイ、またはデジタルウィンドウ(DW)と呼ばれることもある、ディスプレイの製造である。DWシステムの1つの期待される応用例は、デオキシリボ核酸(DNA)チップの読み取りに関するものである。従来技術のDNAチップ読み取り技術は、特注のフォトマスクの使用に依存している。DWに基づく代替品を提供することは望ましいだろう。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,598,293号明細書
【特許文献2】米国特許第6,005,705号明細書
【特許文献3】米国特許第6,136,161号明細書
【特許文献4】米国特許第5,883,220号明細書
【特許文献5】米国特許第6,197,923号明細書
【特許文献6】米国特許出願第10/180,222号明細書
【非特許文献1】C. Cheng, J. Gulia, S.Rokita, C. Burrows, J. of Mole. Cat. A: Chemical, 113, pp. 379-391, 1996
【非特許文献2】A. Mertz, R.Schropp, E. Dotterl, Synthesis, 7, pp. 795-800, 1995
【非特許文献3】K. Zong, J. R. Reynolds, J. Org. Chem. 66, pp. 6873-6882, 2001
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、透明基板上に堆積させる格子状導電性材料の具体的な構造を対象とする。得られる格子および基板は、ECポリマーベース・デバイスの対向電極として有用である。好ましい基板は、実質的に光学的に透明である。ガラスおよび光学的に透明なプラスチックが、好ましい基板の例である。
【0011】
ECデバイスに有用な対向電極の第1の実施形態は、光学的に透明な基板上に、同心円に沿った蜘蛛の巣形の格子パターン状に導電性材料の薄い層を設けることによって製造することができる。格子パターンを使用するのは、導電性材料は一般に透明でないからである。仮に導電性材料のフィルムを基板の表面全体に設けると、得られる対向電極は、光の透過率が比較的低くなる可能性が高く、実質的に不透明にさえなる可能性がある。少なくとも1つの状態では光の透過率を所望する多数のECデバイスで使用するには、不透明な対向電極は望ましくない。基板上に堆積させた格子パターン状の導電性材料を使用することによって、光の透過率がより良好な対向電極を得ることができる。というのも、導電性材料が、基板の表面全体を覆わないからである。一般に、格子の密度が高くなるとともに、対向電極の光の透過率はより低くなる。有用な導電体には、金および炭素が含まれる。
【0012】
ECデバイスに有用な対向電極の第2の実施形態は、光学的に透明な基板上に、同心楕円に沿って蜘蛛の巣形の格子パターン状に導電性材料の薄い層を置くことによって製造することができる。この場合も、有用な導電体には、金および炭素が含まれる。好ましい基板には、光学的に透明なガラスおよびプラスチックが含まれる。
【0013】
各実施形態では、基板の厚みは、好ましくは0.7mm程度であり、導電層はそれよりも厚くなく、好ましくは、それよりも実質的に薄い。チタン−タングステン(TiW)の層を最初にガラス基板に付加して、基板への金の結合力を高めることができる。一方、炭素を導電体として使用する場合は、こうした層を必要としない。導電層で覆われているのが、基板の表面の25%未満であることが好ましい。
【0014】
本発明の第2の態様は、高い横解像度を有するSPR画像法に基づくDNAチップおよび未知分子の読み取り技術用のDWを含むイメージングシステムを対象とする。現在、DNAチップの読み取り/書き込み技術には、DNAアレイ製造でオリゴヌクレチオドを光合成するのに使用される高価な特注のフォトマスクが必要である。本発明の本態様では、従来のフォトマスクの代わりに、格子形に配列された個別にアドレス指定可能な複数個の画素を含むDWが使用される。それぞれの画素に個別に電圧を印加することができるので、選択的なマスキングを実現することが可能になる。本発明の本態様の少なくとも1つの実施形態は、フローセル、パターン形成分析層、第1の光路に沿って分析層へ向けて光を送る光源、および第1の光路内の、その光を偏光させる第1の光学素子を含む。本実施形態は、第1の光路に沿って伝わる光がプリズムの中を通過するように、第1の光学素子と分析層の間で第1の光路内に配置されたプリズムを含む。プリズムと分析層の間にデジタルウィンドウを配置し、その結果、第1の光路に沿って伝わる光源からの光を分析層の第1の光路に到達させるかどうかを、光源からの光がプリズムの中を透過することに影響を及ぼさずに、デジタルウィンドウにより選択的に制御することができる。デジタルウィンドウは、格子形に配列された個別にアドレス指定可能な複数個の画素を含み、各画素は電圧を印加することによって透明状態と不透明状態との間で切換可能である。各画素は、好ましくは、陰極性エレクトロクロミックポリマー層を有する積層エレクトロクロミック構造を含む。各画素に個別に選択的に電圧を印加することができるように、複数の導電体を各画素に接続する。電源を導電体および光源に電気的に接続する。第2の光学素子を第2の光路に沿って配置する。第2の光学素子は、分析表面から伝わる光の焦点を合わせ、プリズムを通って焦点を合わせた光を通過させる。検出器は、第2の光路に配置され、第2の光学素子が焦点を合せた光を受け取る。
【0015】
本発明の第3の態様は、ECポリマーデバイス中に有利に組み込むことができるECポリマーフィルムを製造する方法を対象とする。第1の実施形態では、ECモノマーを調製し、次いでサイクリックボルタンメトリを使用して、ECモノマーを重合し、得られたポリマーを基板上にフィルムとして堆積させる。こうした第1の実施形態では、モノマーの電気化学的な酸化重合は、多重走査サイクリックボルタンメトリを使用して実施するのが好ましい。特に好ましいパラメータには、電圧+0.8〜−1.0V、走査速度20mV/秒、および10サイクルが含まれる。モノマーは、好ましくは、過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.1Mのプロピレンカーボネート溶液に溶解する。モノマーは、好ましくは濃度0.01Mで存在する。対向電極として、白金ワイヤを使用することができる。
【0016】
本発明の第3の態様の第2の実施形態は、サイクリックボルタンメトリとクロノアンペロメトリの両方を使用する電解重合技法である。ECモノマーを調製するかまたは入手する。選択したモノマーを、最初にクロノアンペロメトリ、次にサイクリックボルタンメトリを使用して重合する。クロノアンペロメトリの好ましいパラメータには、この場合も白金対向電極および過塩素酸テトラブチルアンモニウムを含むプロピレンカーボネート溶液(モノマー0.01M、および過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.1M)を使用して電圧0.88Vを100秒間印加することが含まれる。クロノアンペロメトリを使用して、基板上に非常に薄くて、非常に均一なECポリマーの層を堆積させる。次いで、クロノアンペロメトリを使用して堆積させた均一な層の上に、多重走査サイクリックボルタンメトリを使用して、高密度のポリマーフィルムが得られるまで追加のポリマーを堆積させる。サイクリックボルタンメトリの好ましいパラメータには、電圧範囲+0.8〜−1.0V、走査速度約20mV/秒、および10サイクルが含まれる。
【0017】
本発明の上記の態様、および付随する利点の多くが、以下の詳細な説明を添付の図面と組み合わせて参照することによってよりよく理解されるにつれて、それらはより容易に評価されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の概要
本発明は、ECポリマーデバイスで有利に使用することができる特性を有するECポリマーフィルムを合成する方法、ECポリマーベース・デバイスの特定的な構造、およびこうしたECポリマーデバイスで有利に使用することができる対向電極を対象とする。より詳細には、本発明は、(1)透明基板上に堆積させた格子状導電性材料の特定的な構造であって、得られた格子および基板がECポリマーベース・デバイスの対向電極として有用である構造、(2)デジタルウィンドウ(DW)を含むイメージングシステム、および(3)ECポリマーデバイス中に有利に組み込むことができるECポリマーフィルムを製造する方法を対象とする。
【0019】
発明の名称が「ELECTROCHROMIC ORGANIC POLYMER SYNTHESIS AND DEVICES UTILIZING ELECTROCHROMIC ORGANIC POLYMERS」である、2002年6月25日出願の、本願の権利者が所有する同時係属の特許文献6は、ECデバイスとして有用な対向電極、DWを含むイメージングシステム、およびECポリマーの作製法を記載する。本発明は、同時係属の特許文献6に記載の概念に関連するものであり、本特許仮出願が通常の特許出願に転換される場合は、出願人らは、この同時係属の出願の優先権を主張する意図を有するものである。以下の説明は、特許文献6の文章、ならびに本発明を対象とした新規な文章をともに含む。
【0020】
本発明の第1の態様、および透明基板上に堆積させた格子状導電性材料の具体的な構造に関する新規の文章は、以下の図7Aおよび7Bの記載との関連において見られる。
【0021】
デジタルウィンドウを含むイメージングシステムに関する新規な文章は、以下の図16Bの記載との関連において見られる。
【0022】
最後に、ECポリマーデバイス中に有利に組み込むことができる、赤色のECポリマーフィルムを製造する方法に関する新規なテキストは、以下の図19A〜30の記載との関連において見られる。
【0023】
青色ECポリマーの合成
ECデバイスにおいて有用であることが期待されている第1の有機ポリマーは、ジメチル置換ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、またはPProDOT−Meとも呼ばれている、ポリ[3,3−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン]である。図1Aは、ProDOT−Meを調製するための好ましいエーテル交換反応10を示す。所望量の3,4−ジメトキシチオフェンおよび2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールをトルエンに溶解し、p−トルエンスルホン酸一水和物の存在下で、(3,4−ジメトキシチオフェン濃度1.5モル%で)温度110℃で10〜20時間加熱する。温度110℃でトルエンが沸騰する限り、このプロセスは化学技術で還流と呼ばれる。還流プロセスでは、溶液の一留分(3,4−ジメトキシチオフェン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、およびp−トルエンスルホン酸一水和物の留分はそれぞれ沸点がより高いので、この場合はトルエン留分)が蒸気として溶液から追い出されるまで溶液を沸騰させ、次いで、この蒸気を凝縮させて元の溶液に戻す。
【0024】
本発明で還流を使用する目的は、3,4−ジメトキシチオフェンと2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールとが結合して所望の生成物を形成するとき、望ましくない副生物としてメタノールが生成されるからである。一部の3,4−ジメトキシチオフェンと2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールが結合して所望の生成物を形成すると、副生物のメタノールの存在によって、その後の3,4−ジメトキシチオフェンと2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールとの反応が事実上抑制される。したがって、生成することのできる所望の生成物の量を増加させるには、メタノール副生物が生成したら、これを除去することが好ましい。還流によって、メタノール副生物を連続的に除去することが可能になる。メタノールおよびトルエンの沸点はともに他の留分、すなわち3,4−ジメトキシチオフェン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、p−トルエンスルホン酸一水和物、および所望の生成物の沸点よりも低い。トルエンが沸騰するまで加熱することによって、メタノールおよびトルエンをともに溶液から除去する。除去したトルエンおよびメタノールを凝縮させ、分離容器に集める。この分離容器に塩化カルシウムを加えると、塩化カルシウムがメタノールと反応して、メタノールをトルエンから除去することが可能になる。次いで、凝縮したトルエンを元の溶液(沸騰している3,4−ジメトキシチオフェン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、p−トルエンスルホン酸一水和物、トルエン、および所望の生成物)に戻す。したがって、この合成における好ましいステップは、塩化カルシウムを使用してメタノールを除去することである。当分野の技術者であれば理解できるように、望ましくない反応物を除去するために、有機合成でこうした「塩析」プロセスを使用することがある。一実施形態では、凝縮したメタノールおよび凝縮したトルエンを、固形の塩化カルシウムを通してろ過する。得られたモノマー、ProDOT−Meは、容易に重合してPProDOT−Meになる。脱色状態(電圧を印加しないか、正電圧を印加する場合)では、PProDOT−Meは淡青色調であり、不透明状態(負電圧を印加する場合)では、PProDOT−Meは、暗青色調である。
【0025】
図1Bは、上記の合成を行うために使用する装置11を示す概略図である。反応物(3,4−ジメトキシチオフェン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、およびp−トルエンスルホン酸一水和物)を容器13内でトルエンに溶解する。容器内の溶液が穏やかに沸騰するのに十分な熱を容器13に加える(上で述べたように、トルエンの沸点は110℃であり、トルエンに添加する試薬がある程度溶液の沸点に影響を及ぼすが、溶液の沸点は実質的に110℃のままである)。トルエン蒸気(およびいかなる量でもよいメタノール副生物)は、容器13から枝管(boiling tube)15へ追い出される。蒸気は凝縮器17内へ上昇し、ここで蒸気は冷却されて、充填された塩化カルシウム19内へ落下する。蒸気の動きを破線で示し、凝縮した蒸気の動きを実線で示す。メタノールは塩化カルシウムによって吸収され、凝縮したトルエンは、凝縮したトルエンが枝管15を通って容器13に戻る高さ21まで上昇する。使用するトルエンの量、および装置11の内容積は、トルエンの一部が常時容器13内に残留し(すなわち、溶液が沸騰して完全になくなることはない)、そして、凝縮したトルエンの一部が容器13へ戻るように、凝縮したトルエンが充填された塩化カルシウムを通って高さ21まで上昇できるようなものであることが好ましい。雰囲気酸素が非所望の副生物または非所望のクロス反応(cross reaction)を引き起こすことがないように、窒素ブランケットを装置11内に導入することが好ましい。
【0026】
ECデバイスで有用であることが期待される第2の有機ポリマーは、PBEDOT−NMeCzとも呼ばれる、ポリ[3,6−ビス(2−(3,4−エチレンジオキシチオフェン))−N−メチルカルバゾール]である。好ましい合成スキーム30を図2に示す。最初に、(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(EDOT)を、テトラヒドロフラン(THF)溶液中で、−78℃で1時間、n−ブチルリチウムで処理する。当分野の技術者なら、このステップはグリニャール試薬の調製に使用されるものであることが分かるであろう。次いで、得られたグリニャール試薬を臭化マグネシウムジエチルエーテラートで処理する。生成物(すなわち、試薬B)は、THF溶媒中に残留する。
【0027】
次いで、ジブロモカルバゾール誘導体をジメチルホルムアミド(DMF)中で水素化リチウムと混合し、10℃未満で1時間保持する。メチル基を1:1の比でゆっくり添加し、温度を2時間かけて50℃まで上昇させると、メチル化ジブロモカルバゾール誘導体生成物(すなわち、試薬C)が生成され、これを、水およびエーテルで洗浄することによって精製し、硫酸ナトリウムで乾燥する。好ましくは、ヨウ化メチル(MeI)をメチル化剤として使用する。試薬BとCを混合すると、EDOT環がジブロモカルバゾール誘導体に付加する。BEDOT−NMeCzを生成するには、BとCの間の反応を、ニッケル触媒で促進させ、これらの試薬を共に12時間にわたって50℃に保持することが必要である。次いで、このBEDOT−NMeCzモノマーを重合して、EDデバイスの陽極性層として使用されるPBEDOT−NMeCzポリマーを得ることができる。
【0028】
電解重合を使用しての赤色ECポリマーフィルムの合成
上記のように、PProDOT−Meは、ECデバイスで使用されて、淡青から暗青への色変化を可能にする。色変化が青ではなく赤であるECデバイスを実現するためには、他のECポリマーを使用することができる。脱色から不透明への色変化が、青ではなく赤である、ある種のECポリマーは、3,4−アルキレンジオキシピロール(XOP)およびその誘導体をベースにしている。具体的には、プロピレンジオキシピロール(ProDOP)およびその誘導体(例えば、ジメチル−プロピレンジオキシピロール、すなわち、ProDOP−Me)が有用である。残念ながら、このようなECポリマーは、耐久性があり、かつ脱色状態と非脱色状態の間のコントラストが望ましい高品質のフィルムとして製造するのが容易ではない。図19Aは、ProDOPのプロトンNMRスペクトルであり、図19Bは、ProDOP−MeのプロトンNMRスペクトルである。
【0029】
本発明の一態様は、電解重合を使用してECポリマーフィルムを製造するための方法を対象とする。こうした方法は、ProDOPおよびProDOP−Meベースの高品質のECポリマーフィルムを生成するのに特に有用である。得られたECポリマーフィルムは、透過率のコントラスト比が高く(>Δ70%)、非常に安定である(10,000サイクルを超える再現性を示す)ことが分かっている。本明細書で説明する電解重合技法を使用して、ProDOPおよびProDOP−Meベースの高品質のECポリマーフィルムがうまく製造されているが、こうした電解重合技法を有利に使用して他のECモノマーも重合することができるので、本発明の電解重合技法は、ProDOP・ECモノマーおよびProDOP−Me・ECモノマーでの使用に限定されないことが理解されるべきであろう。
【0030】
高品質のECポリマーフィルムを得る目的で、2種の関連した電解重合技法を使用して、ProDOPおよびProDOP−Meモノマーを重合した。目的は、高品質で高密度のECポリマーフィルムを製造することである。密度は、脱色状態と非脱色状態の間の高いコントラストを得るのに必要である。高品質は、多数のサイクルでの再現性に必要である。高いコントラスト、および多数のサイクルでの再現性を示さないECポリマーフィルムは、ウィンドウやディスプレイなどECポリマーベース・デバイスの構成要素としてそれほど有用ではない。
【0031】
2種の電解重合技法のそれぞれを使用して、ProDOPおよびProDOP−Meベース・ECポリマーフィルムを製造し、得られたECポリマーフィルムのコントラストおよび安定性について検討した。
【0032】
第1の電解重合技法を、図20のフローチャート200に要約する。ECモノマーをブロック202で調製し、次いでブロック204に示すように、サイクリックボルタンメトリを使用して、ECモノマーを重合し、得られたポリマーを基板、好ましくはインジウムスズ酸化物(ITO)塗布の透明基板上にフィルムとして堆積させた。
【0033】
本明細書記載の電解重合技法の例示的な実施では、ProDOPおよびProDOP−Meモノマーを調製するための従来の方法を使用した。このモノマーを調製するための有用な技法は、以下の刊行物、すなわち(1)非特許文献1、(2)非特許文献2、および(3)非特許文献3に記載されている。これらの刊行物または他の関連の刊行物に記載されている任意の技法を使用して、図19のブロック202に示すのと同様にして、モノマーを調製することができる。
【0034】
次に、図20のブロック204を参照し、以下の条件下でサイクリックボルタンメトリを使用して、ECモノマー(一実施形態ではProDOP、他の実施形態ではProDOP−Me)を重合した。モノマーの電気化学的な酸化重合は、対向電極として白金(Pt)ワイヤを使用し、モノマー0.01Mおよび過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)0.1Mのプロピレンカーボネート(PC)溶液中で多重走査サイクリックボルタンメトリ(電圧の範囲+0.8〜−1.0V、走査速度20mV/秒、ProDOP−(CHでは10サイクル;ProDOPでは追加のサイクルを必要とした)を使用して実施した。塩として過塩素酸リチウム(LiClO)を使用して電解重合を完結しようと試みても、機能性ECフィルムであるポリマーフィルムが生じた。しかし、TBAPを使用して得られたECポリマーフィルムの性質の方が、著しくより良好であった。これは、過塩素酸リチウム塩はより容易に水分を吸収し、そして重合中のその水分の存在により、得られたフィルムの性質が著しく劣化されるためと思われる。
【0035】
図21は、ProDOP−(CHを電解重合した場合のサイクリックボルタンメトリ重合曲線206の一例を示すグラフである。ProDOPのサイクリックボルタンメトリ曲線(別途示さず)は、図21に示す重合曲線と非常に類似しており、類似の酸化ピーク208および還元ピーク210を示す。高品質で高密度の赤色フィルムは、サイクリックボルタンメトリを使用してProDOP−(CHを電解重合させることにより比較的速やかに得られた。サイクリックボルタンメトリを使用してProDOPを電解重合させて類似の品質のフィルムを得るには、著しくより長い時間(35分)を必要とした。
【0036】
本発明による第2の電解重合技法を図22のフローチャート212に要約する。ECモノマーは、ブロック214において調製する(上記と同様)。第2の電解重合技法を使用し、出発モノマーとしてProDOPを使用して第1のECポリマーフィルムを、出発モノマーとしてProDOP−(CHを使用して第2のECポリマーフィルムを製造した。出発モノマーを入手するかまたは調製したら、ブロック216に示すように最初にクロノアンペロメトリを使用し、次にブロック218に示すようにサイクリックボルタンメトリを使用して、モノマーを重合する。以下により詳細に説明するように、クロノアンペロメトリとサイクリックボルタンメトリとの両方を組み合わせる第2の電解重合技法により、より高品質で、より耐久性のあるECポリマーフィルムが得られるように思われる。
【0037】
次に、図22のブロック216を参照して、ECモノマー(一実施形態ではProDOP、他の実施形態ではProDOP−Me)の2つの部分からなる電解重合の第1のステップは、以下の条件下でクロノアンペロメトリを使用して実行された。モノマーの電気化学的な酸化重合は、クロノアンペロメトリ(ProDOP−(CHに対し0.88V、100秒間)を使用して開始され、対向電極として白金ワイヤを使用してITO塗布のガラス基板上に非常に薄くて非常に均一なECポリマー層を堆積させた。この場合も、選択したモノマーを、過塩素酸テトラブチルアンモニウム塩を含むプロピレンカーボネート溶液(モノマー0.01Mおよび過塩素酸テトラブチルアンモニウム0.1M)に入れた。
【0038】
ブロック218では、クロノアンペロメトリを使用して堆積させた均一な層の上に、多重走査サイクリックボルタンメトリを使用して追加のポリマーを堆積させる。上記で述べたように、+0.8〜−1.0V、走査速度20mV/秒、および10サイクルというパラメータを使用して、重合したProDOP−(CHを堆積させることができる。ただし、受容可能な高密度のProDOP重合層を堆積させるには追加のサイクルが必要である。
【0039】
図23は、ProDOP−(CHを電解重合する場合のクロノアンペロメトリ重合曲線グラフ220の一例を示すグラフである。ProDOPのクロノアンペロメトリ曲線(別途示さず)は、図23に示す重合曲線と非常に類似している。
【0040】
上記の各電解重合技法(サイクリックボルタンメトリ単独、およびサイクリックボルタンメトリと組み合わせたクロノアンペロメトリ)を使用して、各モノマー(ProDOP−(CHおよびProDOP)ベースのECポリマーフィルムを調製し、得られたECポリマーフィルムについて光学的スイッチングの検討を行った。図24は、ProDOP−(CHに基づき、サイクリックボルタンメトリ単独を使用して調製したECポリマーフィルムのそうした検討の結果を示すグラフであり、図25は、ProDOP−(CHに基づき、サイクリックボルタンメトリと組み合わせたクロノアンペロメトリを使用して調製したECポリマーフィルムのそうした調査の結果を示すグラフである。各グラフは、透過率対光波領域についてのものである。データは、分光電気化学法および紫外−可視分光光度計を使用して収集された。各ECポリマーフィルムについて、紫外−可視領域スペクトルは、十分に透明な状態および十分に着色した状態のECポリマーを用いて収集された。サイクリックボルタンメトリ単独を使用して実現されたECポリマーフィルムのΔTは、図24に示すように約60%であり、サイクリックボルタンメトリを組み合わせたクロノアンペロメトリを使用して実現されたECポリマーフィルムのΔTは、図25に示すように約70%である。サイクリックボルタンメトリを組み合わせたクロノアンペロメトリを使用して調製したECポリマーフィルムの可視領域のコントラスト比の方が、より高いことが分かった。こうした結果は、組み合わせた方法を使用して得られたECフィルムが高品質を有するからである。クロノアンペロメトリを使用する第1のステップは、ITOガラス上にECポリマーフィルムの薄い層を均一に堆積させる。所望の色密度および(サイクル数で測定される)寿命の増加には高密度の層が必要とされるので、薄い層自体は、ECポリマーデバイスにとって非常に有用というわけではない。サイクリックボルタンメトリを使用することによって、高密度のECポリマーフィルムを形成することが可能になる。どちらの方法を使用しても、調製したECポリマーフィルムの変化速度は類似しており、1秒未満である。しかし、以下で詳細に論ずるように、組み合わせた方法を使用して得られたECポリマーフィルムの再現性は、著しくより良好である。この結果は、組み合わせた方法によって、より均一なECフィルムが得られるという事実のためであると考えられる。
【0041】
図26Aは、ProDOP−(CHをベースに、サイクリックボルタンメトリと組み合わせたクロノアンペロメトリを使用して調製した、着色状態にあるECポリマーフィルムの写真である。図26Bは、脱色状態にある同じECポリマーの写真である。これらの写真は、新たに調製したECポリマーフィルム(すなわち、多数の変化サイクルをまだ経ていないECポリマーフィルム)を使用して得た。
【0042】
図27Aおよび27Bは、(ProDOP−(CHをベースに、サイクリックボルタンメトリと組み合わせたクロノアンペロメトリを使用して調製した)同じECポリマーフィルムの10,000サイクル後の写真である。図27Aは、着色状態にあるECポリマーを示し、図27Bは、脱色状態にある同じECポリマーの写真である。図26Bと比較して図27Bの示す脱色状態には多少目に見えてわかる劣化があるが、10,000サイクル後の着色状態と脱色状態の間のコントラストの差異は、ECポリマーデバイスで使用するには十分すぎるものである。脱色状態の劣化は、ECポリマーデバイスの機能を妨げる可能性があるほどの著しいものではないことも留意されるべきであろう。この写真(図26Aと26B、27Aと27B)の示す、着色状態と脱色状態の間のコントラスト変化は、印加電位の極性を約1秒間で0.8から−1.4Vに変えることによって得た。
【0043】
上記の各電解重合技法(サイクリックボルタンメトリ単独、およびサイクリックボルタンメトリと組み合わせたクロノアンペロメトリ)を使用して調製したECポリマーフィルムの、サイクリング後の劣化を、サイクリックボルタンメトリを使用して分析し、定量的分析結果を得た。この場合も、ProDOP−(CHベースの、両方の技法を使用して調製したECポリマーフィルムの10,000サイクルを基準に検討を行った。各フィルムを、電気化学反応セル中で10,000回サイクルさせた。(ITOガラススライド上に堆積させた)各ポリマーフィルムを、不活性な対向電極としてPtワイヤと共に、(不活性ガス下の)ポリカーボネートおよび過塩素酸テトラブチルアンモニウム電解質に浸漬した。色変化の再現性は、非常に安定であることが分かった。図28Aは、サイクリックボルタンメトリ単独を使用して調製した、ProDOP−(CHベースのポリマーフィルムの再現性を示すグラフであり、図28Bは、クロノアンペロメトリおよびサイクリックボルタンメトリを使用して調製した、ProDOP−(CHベースのポリマーフィルムの再現性を示すグラフである。
【0044】
図28Aでは、新たに調製したフィルムの電流対電位曲線230は、10,000サイクル後の対応する電流対電位曲線232とわずかに相違している。以下でより詳細に説明されるように、曲線230と曲線232は同一ではないが、10,000サイクル後の変化量は、ECポリマーデバイスでのこうしたECポリマーフィルムの有利な使用を可能にするのに十分な小ささである可能性がある。
【0045】
次に図28Bを見ると、新たに調製したフィルムの電流対電位曲線234は、10,000サイクル後の電流対電位曲線236と非常に類似していることに留意されたい。曲線234と曲線236の間の類似性は、劣化が非常にわずかしか起こっていないことを示している。サイクリックボルタンメトリを単独で使用して調製したECポリマーフィルム(図28A)も機能性のフィルムを提供するが、クロノアンペロメトリとサイクリックボルタンメトリの両方を使用して調製したECポリマーフィルムは、より高品質で、10,000サイクルでの劣化がより少ないように思われる。
【0046】
10,000サイクルの後、ProDOP−(CHベースの、組み合わせた技法を使用して調製したECポリマーフィルムの十分に酸化した状態および十分に還元した状態での透過率を測定した。図29で10,000サイクル後の透過率曲線のグラフが示すように、最大67%のΔTが依然として残存している。同じECポリマーの固定波長(540nm)での透過率変化も試験し、その結果を図30のグラフに示す。図29および図30によって、ProDOP−(CHベースの、組み合わせた技法を使用して調製したECポリマーフィルムは、高い再現性を示すという結論が支持される。
【0047】
ECデバイスの構造
本発明の他の態様は、ECポリマーを利用するECデバイスの特定的な構造を対象とする。本明細書で開示する各構造は、少なくとも1種のECポリマー、固体または液体電解質、ならびに透明電極の上層および下層を含む積層系に基づくものである。
【0048】
ECデバイスの第1の構造は、図3Aに透明状態40a、図3Bに着色状態40bの両方の概略図を示す。ECデバイスは透明状態でも着色状態でも、構造には差異がないことに留意されたい。ECデバイスに電圧を印加すると、陰極(カソード)層および陽極(アノード)層のECポリマーは色が変化する。したがって、第1の構造は、図3Aおよび3Bに一括して示したように、陰極性(PProDOT−Me)ECポリマー層および陽極性(PBEDOT−NMeCz)ECポリマー層を含む。印加する電圧の極性が重要であることは留意されるべきであろう。正の電圧を印加した場合は、本発明のECポリマーは、(正の電圧を印加する直前に負の電圧が印加されていないと仮定すれば)脱色状態にあるか、または(正の電圧を印加する直前に負の電圧を印加したと仮定すれば)不透明状態から脱色状態への遷移中である。負の電圧を印加した場合は、本発明のECポリマーは、(追加の負の電圧を印加する直前にすでに負の電圧が印加されていたと仮定すれば)不透明状態にあるか、または(負の電圧を印加する直前に正の電圧を印加したか、または負の電圧を印加する直前に電圧が印加されていないと仮定すれば)脱色状態から不透明状態への遷移中である。
【0049】
最上層は透明電極42であり、好ましくはITOを塗布した透明基板から形成される。透明基板上のITOフィルムは好ましい透明電極であるが、透明基板の上の酸化タングステンフィルムやドーピングした酸化亜鉛フィルムなどの他の材料も、透明電極として有利に使用することができることも理解されるべきであろう。ガラスは、確かに好ましい透明基板であるが、プラスチックやポリマーなど他の透明材料も透明基板として有利に使用することができることも理解されるべきであろう。したがって、ガラス基板という用語の使用は、本発明の範囲を限定するものではなく、一例示としてみなすべきである。次の層は、陰極性(PProDOT−Me)ECポリマー層であり、これは、図3Aでは透明層44aとして、図3Bでは着色層44bとして示されている。電圧を印加しない(または正の電圧を印加する)場合、PProDOT−MeECポリマー層は完全には無色ではないことが理解されるべきであろう。その代わり、淡青色調を見分けることができる(したがって、図3Aの透明層44aに影をつけている)。負の電圧を印加してゆくと、PProDOT−Me・ECポリマー層は徐々に不透明になり飽和に達する(図3Bの着色層44bの影で示したように、暗青色調である)。
【0050】
陰極ECポリマー層の次は、固体/ゲル電解質層46である。この固体/ゲル電解質層の次に、陽極性(PBEDOT−NMeCz)ECポリマー層48があり、やはり図3Aでは透明層48aとして、図3Bでは着色層48bとして示されている。電圧を印加しない(または正の電圧を印加した)場合でも、PBEDOT−NMeCzは無色ではなく、明確な黄色調がはっきり見える(したがって、図3Aの透明層48aに影をつけている)。この場合も、負の電圧を印加すると、PBEDOT−NMeCz・ECポリマー層は徐々に不透明になり飽和に達する(図3Bの着色層44bの影で図示したように、中程度の青色調である)。PBEDOT−NMeCz・ECポリマー層の次に最下層があり、これはもう1つの透明電極42であり、やはり好ましくはインジウムスズ酸化物(ITO)塗布ガラスから形成される。
【0051】
第1の構造(図3Aおよび3B)は、デュアルECポリマーデバイスを提供し、2種のECポリマーを使用することによって着色状態の濃さ(または不透明性)が上昇する。しかし、脱色状態の透過率は減少するが、それは主として、陽極性ポリマーが透明(または脱色)状態で目に見えてわかる色調を有するからである。陽極性ECポリマー(例えば、PBEDOT−NMeCz)を生成するのに使用されるモノマー(例えば、BEDOT−NMeCz)は、合成するのが幾分困難であるが、本発明はその合成方法を包括する。
【0052】
ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)誘導体(PProDOT−Me)ベースの陰極性層は、脱色状態と非脱色状態との間で78%という卓越した光透過率の変化を示す。PProDOT−Meは、急速なスイッチング、低い酸化電位、ならびに周囲温度および高温での卓越した安定性を示す。
【0053】
ECデバイスでは、電解質層は、イオン導電性だが、電気絶縁性でなければならない。過塩素酸リチウム(LiClO)を含む、ポリ(塩化ビニル)(PVC)ベースおよびポリメチルメタクリラート(PMMA)ベースのゲル電解質は、ともに固体電解質層46として使用することができる。好ましくは、固体電解質層48は、PVC(またはPMMA)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、およびLiClOから作製される。このPVC(またはPMMA)電解質混合物はテトラヒドロフラン(THF)に溶解される。PVCまたはPMMAベースのゲル電解質のいずれも、室温で高い導電率(2mS/cm)をもたらす。
【0054】
こうしたゲル電解質では、PVCおよびPMMAの固体ポリマーマトリックスが電解質に寸法安定性を提供し、一方溶媒ECおよびPCの高誘電率によって、リチウム塩が広範囲に解離することが可能になる。ECおよびPCの低い粘度が、高いイオン移動度を助長するイオン環境を提供する。
【0055】
他の有用なゲル電解質は、LiClO3%、PMMA7%、PC20%、およびアセトニトリル(ACN)70%(重量%)から調製することができる。こうしたゲルの簡単な合成は、最初にPMMAおよびLiClOをACNに溶解することによって実行される。PCは、4オングストロームのモレキュラーシーブで乾燥し、次いで他の成分と混合した。この全成分の混合物を室温で10〜14時間撹拌した。高い導電率(2mS/cm)で高い粘度、かつ透明なゲル電解質が形成された。上記のように、PMMAの固体ポリマーマトリックスが電解質に寸法安定性を提供し、一方溶媒PCおよびACNの高い誘電率によって、リチウム塩が広範囲に解離することが可能になる。PCの低粘度が、高いイオン移動度を助長するイオン環境を提供する。
【0056】
固体状態のデバイスの製造を容易にする(溶媒液はポリマーマトリックス内に閉じ込められる)ので、ゲル電解質が好ましいが、液体電解質もECデバイスで使用することができる。過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)0.1MのACN溶液を使用して、1つのこうした液体電解質を得ることができる。PVCおよびPMMA以外の材料を使用してゲル電解質用のポリマーマトリックスを提供し、TBAPおよびLiClO以外の材料をイオン供給源として使用することができると考えられる。
【0057】
ECデバイスの第2の好ましい構造は、同様に、図4Aに透明状態50a、図4Bに着色状態50bの両方の概略図を示す。この場合も、構造的な見地からは、透明状態でも着色状態でもECデバイスに差異はない。第2の構造は、図4Aおよび4Bに一括して示したように、陰極性PProDOT−Me・ECポリマー層および対向電極層を含むが、陽極性PBEDOT−NMeCz・ECポリマー層を含まない。前記と同様に、こうしたデバイスがいかに応答するかを決定するには、印加電圧の極性が重要である。
【0058】
この場合も、最上層は透明電極42であり、この場合も好ましくはITOである。次の層は陰極性PProDOT−Me・ECポリマー層であり、図4Aに透明層44aとして示され、図4Bに着色層44bとして示される。カソードのECポリマー層の次には固体/ゲル電解質層46になる。この固体電解質層の次は対向電極層52である。透明電極層の最下層は必要ない。
【0059】
対向電極層52は、金ベース、白金ベース、または高導電性炭素ベースであることが好ましく、この層により上記の第1の構造で利用された陽極性ECポリマーおよび最下部ITO電極が置き換えられる。好ましい高導電性炭素は黒鉛である。黒鉛は確かに好ましい高導電性炭素であるが、透明基板上に塗布して対向電極を製造するために、他の高導電性炭素材料も導電フィルムとして有利に使用できることも理解されるべきであろう。多くのタイプの導電性炭素が、東海カーボン(株)(東京、日本)及びLORESCO INTERNATIONAL(Hattiesburg、米国ミシシッピ州)など様々な製造業者から入手可能である。したがって、本明細書における黒鉛という用語の使用は、一例であるとみなすべきであり、本発明の範囲を限定するものではない。さらに、ニッケルを透明基板上の導電フィルムとして有利に使用して対向電極を製造することができることも考えられる。対向電極の使用は、状態間の色変化の速度を改善することができると同時に、2つの状態間のコントラスト比を高くすることができる。対向電極材料は、化学的に安定であるべきであり、高い導電性を提供し、パターン形成基板を容易に作ることができるべきである。金、高導電性炭素、および白金は、対向電極の作製用に有利に使用することができる導電性材料であることが認められている。低コストであるため黒鉛が非常に有用であることが考えられる。また、金ははるかに高価であるが、非常に薄い層で使用することによって金ベース対向電極のコストを最小にできることが考えられる。白金は、導電性であるが、非常に高価なのでその使用は除外される可能性がある。さらに、他の導電性材料を使用して、対向電極を製造することも考えられる。
【0060】
金ベースの対向電極を下記のように製造した。これを図5A〜5Cに示す。厚み0.7mmの研磨したフロートガラス(Delta Technologies、Limitedから入手可能)を基板として使用した。このガラスを直径4インチのガラスウェハ56に切り出した。リソグラフィおよびスパッタリング技法を使用してガラスウェハ上に金パターン58を形成した。任意選択で、金のコーティングを施す前に、まずチタン−タングステン(TiW)の層60をガラス基板上にスパッタリングした。TiW層は、半導電体製造でバリア層およびキャッピング層として頻繁に使用されている。このTiW層は、金層をガラス基板に強固に結合させるのに役立つ。パターンのデザイン、またはパターン形状はECデバイスに根本的に影響を与える。対向電極上の導電性材料の線幅が広ければ広いほど、かつパターンの開口面積が大きければ大きいほど、ますます高い導電性が得られることが期待される。すなわちECポリマーの色変化の速度は向上するが、電圧を印加しない(または正の電圧を印加した)場合の対向電極の透過率は減少するという欠点がある。応用例によっては、特にウィンドウでは、ECデバイスの透過率は非常に重要であることに留意されたい。ECデバイスを通る(または、対向電極などのデバイスの任意の部分を通る)最高透過率が許容できないレベルまで減少した場合は、このデバイスはウィンドウなどの応用例に使用するには不適切であるかもしれない。図5Aおよび5Bに示す碁盤目のパターンは、十分に小さい場合、実質的に透明なパターンを提供する。金層の正方形の孔の代替として、それぞれ図6Aおよび6Bに示される、円形の孔またはダイアモンド形の孔も同様に有用であろうと考えられる。高透過率を維持するためには、金で覆われているのが、ガラス基板の25%未満であることが好ましい。金(または黒鉛)の層の総面積が最小である場合に透過率が最大になり、一方金(または黒鉛)の層の面積が最大になる場合に導電率が最大になることは留意されるべきであろう。もしECデバイスが卓越した透過率を有しなければならず、そしてある程度遅い応答時間が許容される場合は、金または黒鉛層にあてられる対向電極表面積の比率を低下させることができる。それに対して、応答時間が透過率よりも重要である場合は、金または黒鉛層にあてられる対向電極面積の比率を増加させることができる。ガラス基板の25%未満を導電性材料で覆うことは、速い応答時間と許容可能な透明性の両方を示すECデバイスを得るための優れた妥協点であるということが経験的に求められている。
【0061】
上記で述べたように、高導電性炭素(黒鉛など)ベースの対向電極も使用することができる。高導電性炭素ベースの第1の実施形態を、図6Cおよび6Dに示す。この場合も、好ましい基板は、厚みが約0.7mmの研磨したフロートガラスキュベット板である。ITOコーティング64を、研磨したフロートガラスキュベット板の片側に施し、次いでこのITOコーティングの上に炭素コーティング62を施す。好ましくは、高導電性炭素材料は黒鉛(HISTASOL GA.66M)である。この高導電性炭素材料の電気伝導度は10−2S/cm以上であることが知られている。高い透過率を保持するには、炭素で覆われているのが、ガラス基板の25%未満であることが好ましい。上記のように、ガラス基板上への金パターン形成にはリソグラフィおよびスパッタリングを使用したが、高導電性炭素ベースの対向電極については、ガラス基板上に黒鉛パターンを形成するためにスクリーン印刷を使用した。スクリーン印刷技術は、リソグラフィやスパッタリング技法よりも安価な装置しか必要としないので、高導電性炭素ベースの対向電極の大量生産は、金ベースの対向電極の大量生産より安価にできることが予想される。
【0062】
この黒鉛ベースの対向電極の実施形態では、ガラス基板は、片側にインジウムスズ酸化物を塗布して対向電極用の透明絶縁基板を形成していることに留意されたい。金の電気伝導度は、黒鉛よりもはるかに高いので、金は、ITOガラスなしにガラス基板上に直接堆積させることができるが、黒鉛のパターンは、ITO層の上に堆積させることが好ましい。あまり好ましくはないが、図7Bに示したITO層なしに、許容できる黒鉛ベースの対向電極を作製することができることは留意されるべきであろう。
【0063】
好ましくは、この積層デバイス内の各ポリマー層は、厚みが150nm程度であり、各固体電解質層は、厚みが約30ミクロンであり、対向電極上の金パターン形成層は、厚みが50〜100nm程度である。対向電極の黒鉛層の厚みの好ましい範囲も50〜100nmであり、より好ましくは100nmである。ITOフィルムの好ましい厚みは、約10〜約200nmであり、厚みを大きくすることによって、より高い電気伝導度が得られる。したがって、ECデバイス内の電気伝導度は、ITO層、特に対向電極に使用されるITO層の厚みを調節することによって操作することができる。透明電極(または対向電極)で利用される透明基板(ガラスやプラスチックなど)の好ましい厚みは、約0.5〜1.0mmであり、最も好ましくは0.7mmである。
【0064】
図7Aは、本発明に従って対向電極を製造するのに使用することができる他の格子パターンを示す。同心円に沿った蜘蛛の巣型格子71は、上記のような基板(すなわち、ガラスまたはプラスチックであるが、好ましくは研磨したフロートガラスキュベット板)などの光学的に透明な基板上に堆積される。
【0065】
図7Bは、本発明に従って対向電極を製造するのに使用することができるさらに他の格子パターンを示す。蜘蛛の巣型格子73は、同心楕円に沿っている。上記で詳細に述べたように、有用な導電体には、金および炭素が含まれる。金を使用する場合、TiW層を使用して金の基板に対する結合を向上させることができる。格子71および73よりも密な格子を使用することができるが、そうした導電性の格子で覆われるのが、基板表面の25%未満であることが好ましい。
【0066】
白金のワイヤが、一般に図4Aおよび4Bに示した第2の構造に相当するECデバイスで対向電極としてうまく使用されている。ある構造(すなわち、陰極性ECポリマー、固体電解質層、および非ECポリマー対向電極)を有するECデバイスは、陰極性層としてPProDOT−Meを使用するのが好ましいが、他のEC陰極性ポリマーも有利に使用することができることは理解されるべきであろう。対向電極と陰極性ECポリマーではなく、対向電極と陽極性ECポリマーを使用してシングルポリマーECデバイスを作製することができることは理解されるべきであろう。対向電極および陽極性ECポリマーを使用して作製されたシングルポリマーECデバイスは、電圧を印加しない(または正の電圧を印加する)と透明性が低い(すなわち、陽極性ポリマー層はより暗い状態にある)が、こうしたECデバイスに負の電圧を印加すると、陽極性ポリマー層はより透明な状態に遷移する。このことは、電圧を印加しない(または正の電圧を印加する)とより透明であり、負の電圧を印加するとより不透明になる対向電極と陰極性ECポリマーを使用して作製したシングルポリマーECデバイスとは反対である。
【0067】
上記のシングルポリマー/対向電極ECデバイスに基づくデバイスのサンプルを、ほぼ7mm×50mmの矩形の層を使用して作製した。透明電極のためにITOを塗布した7mm×50mmのガラススライドを調製し、このITO塗布面にPProDOT−Meの層を堆積した。金の格子パターンを堆積させたガラスウェハを7mm×50mmのプレートに切り出した。格子パターンに黒鉛を堆積させた7mm×50mmの同様のプレートも調製した。PMMA/LiClOゲル電解質を、ITOスライド上に堆積させた陰極性ECポリマーと対向電極との間に均一に配置して層状のデバイスを形成した。1つは金の対向電極、1つは黒鉛の対向電極層を有する2つのデバイスを調製した。黒鉛ベースの対向電極は、黒鉛を堆積させる前にまずITOの層をガラス基板上に設けた点で、金ベースの対向電極とは異なる。一方、金ベースの対向電極ではこうした層は使用しなかった。ゴムのシーラントを使用し、組み立てたデバイスを約20時間硬化させた。追加の硬化時間が有利であるかもしれないし、20〜30時間が硬化時間の好ましい範囲であると予想される。使用したシーラントは、パラフィルム(parafilm)、すなわち容易に入手可能で、半透明であり、柔軟な熱可塑性シーラントであった。この作業モデルの略図を図8Aおよび8Bに示す。この作業モデルが、図4Aおよび4Bに関して上記で論じた第2の実施形態に対応することは留意されるべきであろう。上記のように、略図のモデルは、酸化状態(電圧の印加がないか、正の電圧を印加)と還元状態(負の電圧を印加)の両方を示す。
【0068】
図8Aは、酸化状態(電圧の印加がないか、正の電圧を印加)の作業モデルの横断面図と上面図を概略的に示している。横断面図は、最上層が、ガラススライドにITOを塗布することによって調製した透明電極42であることをはっきり示している。透明電極42にすぐ隣接しているのは、透明層44aであり、すなわち透明電極42上に塗布された陰極性PProDOT−Me・ECポリマーの薄膜である。次の層は、電解質の漏れを防止するようにシーラント53で囲まれている一般に円形の固体/ゲル電解質層46を含む。上記で論じたように、固体電解質層(およびシーラント)の次に対向電極層52がある。固体電解質層の形が、色が変化するECポリマー層の区域を定めることに留意されたい。電解質層と接触していないECポリマー層の部分は色が変化されない。本実施例では、ECポリマー層は、一般に正方形の透明基板全体に塗布され、シーラントは、一般に円形のマスクとして施され(すなわち、シーラントを塗布しない一般に円形の部分を除いて、ECポリマー層の表面全体にわたって施される)、固体電解質層は、シーラントマスクで定められた一般に円形の部分内に堆積された。固体電解質層にすぐ隣接しているECポリマーの部分(こうした部分は、負の電圧の印加で薄い状態から濃い状態に遷移する)とシーラントにすぐ隣接しているECポリマー層(すなわち、固体電解質層にすぐ隣接していない部分。こうした部分は、負の電圧の印加で薄い状態から濃い状態に遷移しない)との間に極めて鮮明な境界が得られた。シーラントと固体電解質層の間の界面で起こる滲みだしが非常に少ないので、鮮明に定められたウィンドウ(すなわち、負の電圧の印加で薄い状態から濃い状態に遷移したECポリマー層の部分)を得ることができた。もちろん、シーラントマスクおよび電解質の区域は、ここで使用した一般に円形以外の形で結合させることもできる。シーラントがとれる形ならどんな形を使用しても、この反対の形(すなわち、隙間)に電解質を充填することによって、この形の反対の形に相当するウィンドウを定めことができる。最下部の透明電極層を必要としないことに留意されたい。図8Bは、負の電圧が印加された後の作業モデルを示し、電解質と接触しているECポリマー層の部分は色が変化しているが、それ以外のECポリマー層(すなわち、シーラントと接触している部分)は色が変化していない。図8Aおよび8Bに関しては、上記に述べたように、印加される電圧の極性が、こうしたデバイスがいかに応答するかを決定する。
【0069】
実験結果
図4Aおよび4Bに示す第2の構造に相当する作業サンプルについて電気化学的実験検討を実施した。陰極性ECポリマーとしてPProDOT−Meを使用し、対向電極として白金ワイヤを使用した。この検討は、参照電極として銀(Ag/Ag)、作用電極としてITOが塗布された単一ガラススライド、および対向電極として白金(Pt)ワイヤを用い、CH Instrumentのポテンシオスタット/ガルバノスタット電気化学分析装置CH1605Aを使用して行った。使用した電解質(この場合は、液体電解質)は0.1N TBAP/ACNであった。Varian Corp.のUV−Vis−NIR分光光度計で分光電気化学分析を実施した。図8および9は、上記のECデバイスそれぞれの速く再現性のある動作を示すグラフである。具体的には、図9Aは、PProDOT−Me陰極性層、電解質層、および対向電極層を有するECデバイスのスイッチングデータを提供し、一方、図9Bは、PProDOT−Me陰極性層、電解質層、およびPBEDOT−NMeCz陽極性層を有するECデバイスのスイッチングデータを提供する。
【0070】
光学的スイッチングの検討のために、PProDOT−Me陰極性層、電解質層、および金対向電極層に基づくデバイス、ならびに、PProDOT−Me陰極性層、電解質層、および黒鉛対向電極層に基づくデバイスを使用した。ここでも、UV−Vis分光光度計で分光電気化学を実施した。図10Aにグラフを示したように、金ベース対向電極のデバイスについて可視領域に高いコントラスト比が観察された。この高いコントラスト比は、Auベース対向電極と陰極性ECポリマーの、酸化状態における高い透過率によるものである。
【0071】
図10Bに示す黒鉛ベース対向電極のデバイスの着色状態は、金の対向電極デバイスよりもやや濃かったが、黒鉛ベース対向電極層の透過率がより低いために黒鉛ベース対向電極のデバイスの脱色状態も金ベースよりも濃かった。
【0072】
光学的スイッチングはECデバイスの重要な特徴であり、金および黒鉛対向電極に基づくそれぞれのデバイスのスイッチングを試験した。図11Aは、金ベース対向電極デバイスについての結果を示すグラフであり、一方、図11Bは、黒鉛ベース対向電極デバイスについての結果を示すグラフである。これらは、波長580nmおよび印加電圧2.0Vでの吸光度に基づくものである。それぞれのデバイスは良好な再現性および吸光度の速い変化を示した。黒鉛ベース対向電極デバイスの脱色状態における透過率は金ベース対向電極デバイスと比べて低かったが、電位に対する吸光度の応答は黒鉛ベース対向電極デバイスの方が速い。この結果は、電気伝導度が金よりも低い黒鉛が、総括導電率を高めるためにITO上にパターン形成されていたためであろう。
【0073】
金ベース対向電極デバイスに関して図12にグラフを示したように、異なる印加電位でも、それぞれのデバイスについてほぼ同じ時間(1秒未満)内に色は平衡状態に達した。色の飽和度(すなわち、不透明度)は、金ベース対向電極デバイスに関して図13にグラフを示したように、印加する電位の大きさに依存することに留意されたい。図12および図13は、金ベース対向電極デバイスのみについて言及しているが、黒鉛ベース対向電極デバイスも同様に動作した。
【0074】
酸化還元反応は、ECポリマーフィルムの表面上のみに生じており、ドーピング反応には非常に少量のイオンしか必要ないと考えられる。ECデバイスのこの特性を、CH Instrumentのポテンシオスタット/ガルバノスタット電気化学分析装置CH1605Aを使用して検討した。対向電極として金(または黒鉛)パターン形成ガラススライドを有する上記の分析装置に対向電極と参照電極を接続することによって、作用電極としてのECポリマー堆積ITOガラススライドの電気化学的データを測定した。図14Aは、一定電位(すなわち、2.0ボルト)の極性を変えた際の、金ベース対向電極デバイスの酸化還元反応中の性能の再現性を示すグラフである。一方、図14Bは、黒鉛ベース対向電極デバイスについての同じ結果を示す。それぞれのデバイスは、1秒以内の速い応答時間の非常に安定した再現性を示した。同じ電位下で、黒鉛ベース対向電極デバイスの電流の大きさは金ベース対向電極の2倍であった。この結果は、黒鉛ベース対向電極の高い電気伝導度によるものであり、金ベース対向電極よりも色変化応答時間が短くなることとなった。この事実は、図11Bで明らかであり、この図で黒鉛ベース対向電極デバイスの吸光度対時間曲線は非常に急勾配である。
【0075】
EC材料の色変化性能の温度依存性も、ECデバイスを設計する際の重要な要素である。一定の電圧が印加されている時のECデバイスの電流の大きさは、このデバイスの色変化特性を表す。デバイス(金および黒鉛ベースの対向電極)をTemperature & Humidity Chamber(PDL−3K、ESPEC)内で分析した。ポテンシオスタット/ガルバノスタット電気化学分析装置により、様々なチャンバ温度において一定の電圧2.0Vで電流時間曲線を測定した。図15は、温度の関数として各ECデバイスの最高電流のプロットを示すグラフである。金ベース対向電極のデバイスの電流は、−40〜10℃の温度範囲内でごくわずかに上昇したが、10〜80℃の高温範囲では安定した。一方、黒鉛ベース対向電極のデバイスは全体の範囲にわたって、より安定であった。どちらのデバイスの最高電流変化も、−40〜100℃で2×10−3mA未満であった。
【0076】
金ベース対向電極のデバイスおよび黒鉛ベース対向電極のデバイスの両方の、透明状態と着色状態との間のスイッチング速度は速く、約0.3〜1.0秒の範囲である。対向電極にITOを使用した黒鉛ベース対向電極のデバイスは、2Vの印加電位で0.3〜0.8秒の応答時間を得ることができ、再現性がある(10,000回)。この性能は、(対向電極にITOを使用していない)金ベース対向電極のデバイスで得られるものよりも速い。金ベース対向電極のデバイスは、透明状態と不透明状態の間の透過率においてより大きな変化が得られた。これらのデバイスの消費電力は少なめであり、2〜2.5V×10〜20mAである。スイッチングが安定な温度範囲は比較的広く、−40〜100℃である。さらに、これらのデバイスの重量は極めて小さい。金ベース対向電極のデバイスおよび黒鉛ベース対向電極のデバイスは、認識されるコントラストが優れており、必要なスイッチング電圧が低く、したがって、色可変ウィンドウ(dialed−tint windows)、大面積ディスプレイ、自動車の防眩バックミラー、および制御可能な色のスイッチングが有用な他の応用分野での使用に特に関心が持たれている。
【0077】
特定的な応用分野
本発明のさらに他の態様は、ECデバイスの特定的な応用分野に関するものである。第1の実施形態では、PBEDOT−NMeCz陽極性層を含むECデバイスがディスプレイとして使用される。PBEDOT−NMeCzは酸化状態で黄色調を示し、還元状態で青色調であるから、多色ディスプレイを実現することができる。こうしたECデバイスは複数の画素を含むことが好ましく、それぞれの画素は、PBEDOT−NMeCz陽極性層を含むデュアルポリマーECデバイスの個別アドレス指定可能な格子によって定められている。それぞれの画素に個別に電圧を印加することができるので、それぞれの画素の色を別々に制御するフラットパネルディスプレイを実現することが可能である。
【0078】
さらに他の応用例の特定的な実施形態は、高い横解像度を有するSPRイメージングに基づくDNAチップ読み取り技術用のDWを対象とする。SPRイメージングは認められた技術であり、現在ここには高価な特注のフォトマスクが利用されている。本実施形態では、従来のフォトマスクの代わりに、格子形に配列された個別アドレス指定可能な複数個の画素を含むDWを使用する。このDWは、複数個の個別の画素を含み、それら各々は、上記のデュアルポリマーデバイスやシングルポリマーデバイスなどの積層ECである。それぞれの画素に個別に電圧を印加することができるので、画素ごとに選択的にマスキングすることが可能になる。したがって、DWは、電位の極性を変えることによって透明から不透明(暗青色)へ切替え可能なウィンドウを提供する。上記の積層ECデバイスはデジタル(画素)アレイに組み立てられ、その大きさは一般に両端間0.5〜50ミクロンである。
【0079】
上記のDW技術の影響は、多方面にわたることが期待されるが、DNAアレイチップ技術、特にSPRを使用して(in vitroまたはin vivoの)未知のDNAおよび未知の分子を読む技術に直ちに移転可能であると期待される。本発明によるDWの好ましい実施形態を使用する第1の例を図16Aに示す。図16Aでは、DW/SPRイメージングシステム100は、DW102が挿入された従来のSPRイメージングシステムを含む。DW/SPRイメージングシステム100の従来の要素は、フローセル104、パターン形成分析層106、金または銀層108、第1の光路112に沿って分析層へ向けて光を送るレーザ光源110、第1の光路112に配置される第1の光学素子114(光源110からの光を偏光させるため)、第1の光路112に沿って伝わる光がプリズムの中を通過するように、第1の光路112に分析層に隣接して配置されるプリズム116を含む。第2の光学素子118は第2の光路120に沿って配置され、そして電荷結合素子(CCD)検出器122は第2の光学素子118が焦点を合わせた光を受け取るように第2の光路120に沿って配置されている。それぞれの画素に電圧を個別に印加できるようにDWのそれぞれの画素に接続されている複数の導電体、ならびにこの導電体およびレーザ光源に電気的に接続されている電源は別個に示していない。
【0080】
SPRイメージングシステムでDWを使用する第2の例を図16Bに示す。DW/SPRイメージングシステム100aは、DW102aが挿入された従来のSPRイメージングシステムを含む。図16Bのシステム100aは、図16Aのシステム100に非常に類似していることに留意されたい。2つのシステム間の差異はDWの位置である。システム100(図16A)では、DW102は、第1の光学素子114とプリズム116の中間に配置されている。システム100a(図16B)では、DW102aは、プリズム116とパターン形成分析層106の中間に配置されている。
【0081】
DWを、DNAおよびRNAを含めた未知分子のリアルタイム分析装置として使用されてきた従来のSPRイメージングシステムと組み合わせることによって、高い空間解像度を有する新規なSPRシステムが実現される。この高解像度DW/SPRシステムは、デジタルウィンドウ内の対応するいくつかの画素を開くことにより、1つの分子群から次の群へと走査することで、従来のSPRイメージングシステムにより実現できるよりもさらに高速で、リアルタイムベースに未知の分子およびDNAを分析することが期待される。DWは、その位置を変えることなく、異なる画素を励起させることによって再構成することができる。これに対して、フォトマスクは、異なるマスキングパターンを実現するには、これを取り除いて異なるマスクと取り替えなければならない。
【0082】
本発明のさらに他の態様は、自動車、航空機、および建築物などの構造および建築への応用例で使用することができるスマートウィンドウである。こうしたスマートウィンドウは、電圧を印加していない(または正の電圧を印加した)第1の状態での実質的に透明な状態から、負の電圧を印加した第2の状態での実質的に不透明な状態へと状態を変化させることが可能である。図17は、通常の二重ガラス窓130に組み込まれた、上述したようなシングルまたはデュアルポリマーECデバイスを示す図である。図17は、正面図、側面図、および拡大部分図を含むものであり、それぞれ適切に標識化されていることに留意されたい。スマートウィンドウは、通常の外部ガラス窓134と内部ガラス窓136との間に層をなすECデバイスがスマートウィンドウから延在するワイヤ(別個に図示せず)を制御可能な電圧源に接続して、スマートウィンドウを一般に透明な状態から著しく不透明な状態へと遷移させることができる点が、通常のウィンドウと異なる。空隙または隙間140により通常の窓ガラスが隔てられている場合には、ECデバイスを、内部ガラス窓136ではなく外部ガラス窓134に接続することが好ましい。スマートウィンドウの第1の実施形態は、上記のように、ProDOT−Me陰極性ポリマー層、固体電解質層、およびPBEDOT−NMeCz陽極性ポリマー層を使用したデュアルポリマーECデバイスに基づいている。スマートウィンドウの第2の実施形態は、実質的に上記のように、PProDOT−Me陰極性ポリマー層、固体電解質層、および対向電極層を使用したシングルポリマーECデバイスに基づいている。
【0083】
上記のデュアルポリマーECデバイスおよびシングルポリマーECデバイスは、認識されるコントラストが優れており、必要なスイッチング電圧が低いので、大面積ディスプレイ、自動ミラー、および印加電圧に応答した色変化が望ましい応用例などの他の応用分野でも、特に関心を集めることが予想される。
【0084】
一対のPProDOT−Meおよび対向電極の機能性の概略
PProDOT−Meは、陰極性着色ポリマーとして使用されることができる。PProDOT−Meは、完全に還元された形では暗青色であり、完全に酸化された形では非常に透過性の淡青色である。この陰極性着色ポリマーは、p−ドーピング形の電荷の中和(すなわち、還元)につれて淡色から濃色状態へ変化する。このπ−π遷移は、可視領域外の遷移の損失で消耗される。したがって、この色の主波長は、ドーピングプロセスを通して同じである。PProDOT−Me陰極性層、過塩素酸リチウム(LiClO)を含有するゲル電解質、および金ベースの対向電極を利用したECデバイスのECプロセスを図17に示す。この図では、金の層が、以下に説明する一対の層のプロセスに必要な第2の層の役割を果たしている。
【0085】
ECプロセスは、一対の層を必要とする。PProDOT−Me層は、この一対の層の第1層の役割を果たし、金ベースの対向電極は一対の層の第2層としての役割を果たしている。図18の左側では、負の電圧が印加され、PProDOT−Meポリマーは還元されて濃い青色の状態にある。金ベースの対向電極層は、負に荷電した過塩素酸(ClO)イオンを引き付けている。図18の右側では、電圧が印加されていない(または正の電圧が印加されている)。そして、PProDOT−Meポリマーは酸化されたp−ドーピング形の淡色状態にある。金ベースの対向電極層は、正に荷電したリチウム(Li)イオンを引き付けている。
【0086】
PProDOT−Meポリマー層と金ベースの対向電極層を隔てているゲル電解質は、イオン伝導性であるが、電気絶縁性であり、したがって、リチウムイオンおよび過塩素酸イオンは移動可能であり、これらは印加電位の極性の変化でPProDOT−Meポリマー側と金ベースの対向電極側との間を自由に移動する。
【0087】
黒鉛ベースの対向電極は同じメカニズムで作用する。この電気二重層は化学反応を伴わず、対向電極層(金または黒鉛)に構造変化を引き起こすことがない。電気二重層は負の電荷と正の電荷の両方を蓄えることができる。
【0088】
本発明とその変更を実施する望ましい形態と関連させて本発明を説明したが、当分野の技術者であれば、以下の特許請求の範囲に記載の範囲内で本発明に多数の変更を加えることができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、上記の説明によって何ら限定されるものではなく、続く特許請求の範囲によってすべて決定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1A】重合させると、陰極性ECポリマーとして有利に使用することができる、モノマーProDOT−Meの合成を示す概略図である。
【図1B】図1Aの合成に使用される装置を示す概略図である。
【図2】重合させると、陽極性ECポリマーとして有利に使用することができる、モノマーBEDOT−NMeCzの合成を示す概略図である。
【図3A】陰極性(PProDOT−Me)ECポリマーフィルム、陽極性(PBEDOT−NMeCz)ECポリマーフィルム、および固体電解質層を含むECデバイスの側面を示す概略図である。
【図3B】陰極性(PProDOT−Me)ECポリマーフィルム、陽極性(PBEDOT−NMeCz)ECポリマーフィルム、および固体電解質層を含むECデバイスの側面を示す概略図である。
【図4A】陰極性ECポリマーフィルム、固体電解質層、および対向電極を含むECデバイスの側面を示す概略図である。
【図4B】陰極性ECポリマーフィルム、固体電解質層、および対向電極を含むECデバイスの側面を示す概略図である。
【図5A】ガラスウェハから作製される金ベースの対向電極を示す平面図である。
【図5B】金ベースの対向電極を示す平面図である。
【図5C】金ベースの対向電極を示す側面図である。
【図6A】対向電極上に導電層を形成するのに使用することができる代替パターンを示す図である。
【図6B】対向電極上に導電層を形成するのに使用することができる代替パターンを示す図である。
【図6C】黒鉛ベースの対向電極を示す平面図である。
【図6D】黒鉛ベースの対向電極を示す側面図である。
【図7A】光学的に透明な基板上に導電性材料を堆積させて対向電極を製造するのに使用される、同心円に沿った蜘蛛の巣状の格子パターンを示す平面図である。
【図7B】光学的に透明な基板上に導電性材料を堆積させて対向電極を製造するのに使用される、同心楕円に沿った蜘蛛の巣状の格子パターンを示す平面図である。
【図8A】電圧が印加されていないか又は正の電圧を印加して、スマートウィンドウが酸化又は透明状態にある、PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムの層および対向電極層を含むスマートウィンドウの作業モデルを示す概略図である。
【図8B】負の電圧を印加して、スマートウィンドウが還元又は不透明状態にある、図8Aの作業モデルを示す概略図である。
【図9A】印加電圧の変化に応答して、PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと対向電極とを含むECデバイスの色変化の再現性を示すグラフである。
【図9B】印加電圧の変化に応答して、PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムとPBEDOT−NMeCz・ECポリマーフィルムとを含むECデバイスの色変化の再現性を示すグラフである。
【図10A】PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと金ベースの対向電極とを含むECデバイスの、UV−可視スペクトルにおける透過率を示すグラフである。
【図10B】PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと黒鉛ベースの対向電極とを含むECデバイスの、UV−可視スペクトルにおける透過率を示すグラフである。
【図11A】吸光度対時間に基づいて、PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと金ベースの対向電極とを含むECデバイスの、光学的スイッチング能力を示すグラフである。
【図11B】吸光度対時間に基づいて、PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと黒鉛ベースの対向電極とを含むECデバイスの、光学的スイッチング能力を示すグラフである。
【図12】PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと金ベースの対向電極とを含むECデバイスの時間応答が、異なる電位でも実質的に同じであることを示すグラフである。
【図13】PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと金ベースの対向電極とを含むECデバイスの不透明性が、印加電位と相関関係があることを示す図である。
【図14A】PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと金ベースの対向電極とを含むECデバイスについて、電流対時間の関係の安定した再現性を示すグラフである。
【図14B】PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと黒鉛ベースの対向電極とを含むECデバイスについて、電流対時間の関係の安定した再現性を示すグラフである。
【図15】PProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと金ベースの対向電極とを含むECデバイス、およびPProDOT−Me陰極性ポリマーフィルムと黒鉛ベースの対向電極とを含むECデバイスの温度依存性を示すグラフである。温度の変化は、こうしたデバイス内の電流に著しい影響を与えないことを示している。
【図16A】DNAチップ読み取りのために、SPRイメージングシステム中にDWが含まれている、第1の実施形態を示す図である。
【図16B】DNAチップ読み取りのために、SPRイメージングシステム中にDWが含まれている、一実施形態を示す図である
【図17】通常の建物用二重ガラス窓に組み込まれた、本発明のECデバイスを示す概略図である。
【図18】対向電極層と対をなす陰極性ECポリマー層の作用を示す概略図である。
【図19A】赤色ECポリマーフィルムを調製するのに適した第1のモノマー(プロピレンジオキシピロール)のプロトンNMRスペクトルを示すグラフである。
【図19B】赤色ECポリマーフィルムを調製するのに適した第2のモノマー(プロピレンジオキシピロールのジメチル誘導体)のプロトンNMRスペクトルを示すグラフである。
【図20】本発明に従ってモノマーからECポリマーフィルムを製造するための第1の電解重合技法を実行する論理ステップの順序を示すフローチャートである。
【図21】図19Bに示したスペクトルを有するモノマーが電解重合する際のサイクリックボルタンメトリ重合曲線を示すグラフである。
【図22】本発明に従ってモノマーからECポリマーフィルムを製造するための第2の電解重合技法を実行する論理ステップの順序を示すフローチャートである。
【図23】図19Bに示したスペクトルを有するモノマーが電解重合する際のクロノアンペロメトリ重合曲線の一例を示すグラフである。
【図24】図20の第1の電解重合技法を使用して調製したECポリマーフィルムの透過率曲線を示すグラフである。
【図25】図22の第2の電解重合技法を使用して調製したECポリマーフィルムの透過率曲線を示すグラフである。
【図26A】図22の第2の電解重合技法を使用して調製した、着色状態にあるECポリマーフィルムを示す写真である。
【図26B】脱色状態にある、図26AのECポリマーフィルムを示す写真である。
【図27A】10,000サイクル後に着色状態にある、図26AのECポリマーフィルムを示す写真である。
【図27B】10,000サイクル後に脱色状態にある、図26AのECポリマーフィルムを示す写真である。
【図28A】図20の第1の電解重合技法を使用して調製した新鮮なECポリマーフィルムの電流対電位曲線と、10,000サイクル後の同じフィルムの電流対電位曲線との比較を示すグラフである。
【図28B】図22の第2の電解重合技法を使用して調製した新鮮なECポリマーフィルムの電流対電位曲線と、10,000サイクル後の同じフィルムの電流対電位曲線との比較を示すグラフである。
【図29】図22の第2の電解重合技法を使用して調製したECポリマーフィルムの、10,000サイクル後の透過率を示すグラフである。
【図30】図22の第2の電解重合技法を使用して調製したECポリマーフィルムの、10,000サイクル後の固定波長での透過率変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0090】
10 エーテル交換反応
11 合成装置
13 容器
15 枝管
17 凝縮器
19 充填された塩化カルシウム
21 高さ
30 BEDOT−NMeCzの合成スキーム
40a 透明状態の概略図
40b 着色状態の概略図
42 透明電極
44a 陰極性ECポリマー層(透明)
44b 陰極性ECポリマー層(着色)
46 固体/ゲル電解質
48 陽極性ECポリマー層
50a 第2の好ましい構造の透明状態の概略図
50b 第2の好ましい構造の着色状態の概略図
52 対向電極層
53 シーラント
56 ガラスウェハ
58 金パターン
60 チタン−タングステン層
62 炭素コーティング
64 ITOコーティング
71 蜘蛛の巣型格子
73 蜘蛛の巣型格子
100 DW/SPRイメージングシステム
100a DW/SPRイメージングシステム
102 DW
102a DW
104 フローセル
106 パターン形成分析層
108 金又は銀層
110 レーザ光源
112 第1の光路
114 第1の光学素子
116 プリズム
118 第2の光学素子
120 第2の光路
122 電荷結合素子(CCD)検出器
130 二重ガラス窓
132 シングル又はデュアルポリマーECデバイス
134 外部ガラス窓
136 内部ガラス窓
140 空隙又は隙間
200 フローチャート
202 ブロック
204 ブロック
206 サイクリックボルタンメトリ重合曲線
208 酸化ピーク
210 還元ピーク
212 フローチャート
214 ブロック
216 ブロック
218 ブロック
220 クロノアンペロメトリ重合曲線
230 新たに調製したフィルムの電流対電位曲線
232 10,000サイクル後の電流対電位曲線
234 新たに調製したフィルムの電流対電位曲線
236 10,000サイクル後の電流対電位曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高品質のエレクトロクロミックポリマーフィルムを製造するための方法であって、
(a)重合するとエレクトロクロミックポリマーが生成されるエレクトロクロミックモノマーを提供するステップと、
(b)サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップが、基板上にフィルムとしてポリマーを堆積させるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基板上にフィルムとしてポリマーを堆積させるステップが、透明電極上にフィルムを堆積させるステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
基板上にフィルムとしてポリマーを堆積させるステップが、インジウムスズ酸化物を塗布した透明基板上にフィルムを堆積させるステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
エレクトロクロミックモノマーを提供するステップが、[3,6−ビス(2−(3,4−エチルジオキシチオフェン))−N−メチルカルバゾール]を提供するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エレクトロクロミックモノマーを提供するステップが、ジメチルプロピレンジオキシチオフェンを提供するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エレクトロクロミックモノマーを提供するステップが、[3,3−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン]を提供するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エレクトロクロミックモノマーを提供するステップが、モノマーが濃度約0.01Mで存在する溶液としてモノマーを提供するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
エレクトロクロミックモノマーを提供するステップが、モノマーを溶媒に溶解してモノマー溶液を得るステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
モノマーを溶媒に溶解してモノマー溶液を得るステップが、プロピレンカーボネートにモノマーを溶解するステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
プロピレンカーボネートにモノマーを溶解するステップが、過塩素酸テトラブチルアンモニウムが添加されているプロピレンカーボネートを使用するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プロピレンカーボネートにモノマーを溶解するステップが、過塩素酸テトラブチルアンモニウム約0.1Mのプロピレンカーボネート溶液を使用するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップが、多重走査サイクリックボルタンメトリを使用するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
多重走査サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップが、約+0.8〜約−1.0Vの範囲の電圧を使用するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
多重走査サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップが、走査速度約20mV/秒を使用するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
多重走査サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップが、約10サイクルを使用するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
多重走査サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップが、
(a)約+0.8〜約−1.0Vの範囲の電圧と、
(b)走査速度約20mV/秒と、
(c)約10サイクルと、
を使用するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップが、対向電極として白金ワイヤを使用するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップが、水分の存在しない状態でサイクリックボルタンメトリを使用するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
サイクリックボルタンメトリを使用してエレクトロクロミックモノマーを重合するステップが、水の存在しない状態のサイクリックボルタンメトリを使用するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
クロノアンペロメトリを使用して最初の量のモノマーを重合するステップを、サイクリックボルタンメトリを使用して追加量のモノマーを重合する前に、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
クロノアンペロメトリを使用して最初の量のモノマーを重合するステップが、クロノアンペロメトリを使用して基板上にポリマーの薄膜を堆積させるステップを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
サイクリックボルタンメトリを使用して追加量のモノマーを重合するステップが、クロノアンペロメトリを使用して堆積させたポリマーの薄膜上に、サイクリックボルタンメトリを使用して追加のポリマーを堆積させるステップを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
クロノアンペロメトリを使用して最初の量のモノマーを重合するステップが、約0.88Vで約100秒間クロノアンペロメトリを使用するステップを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
サイクリックボルタンメトリを使用して生成したエレクトロクロミックポリマーを含むことを特徴とするエレクトロクロミックデバイス。
【請求項26】
クロノアンペロメトリとサイクリックボルタンメトリとの組合せを使用して、エレクトロクロミックポリマーが生成されることを特徴とする請求項25に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項27】
エレクトロクロミックポリマーが、クロノアンペロメトリを使用して生成した基部層と、サイクリックボルタンメトリを使用して生成した追加の層とを含むことを特徴とする請求項25に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項28】
エレクトロクロミックポリマーを、透明な導電性基板上に堆積させることを特徴とする請求項25に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項29】
エレクトロクロミックポリマーが、ポリ[3,3−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキセピン]を含むことを特徴とする請求項25に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項30】
エレクトロクロミックポリマーが、ポリ[3,6−ビス(2−(3,4−エチレンジオキシチオフェン))−N−メチルカルバゾール]を含むことを特徴とする請求項25に記載のエレクトロクロミックデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2007−511804(P2007−511804A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541425(P2006−541425)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038888
【国際公開番号】WO2005/050294
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【住所又は居所原語表記】4311 11th Avenue N.E.,Suite 500,Seattle,WA98105,U.S.A
【Fターム(参考)】