説明

含セレン複素環化合物及びその用途

【課題】新規かつ有用な含セレン複素環化合物の提供。
【解決手段】次式(I):


(式中、Rは水素原子、アルキル基、芳香族基等;RはC1−8−アルキル基、芳香族基等;Rは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基、アラルキル基、アシル基、アリールスルホニル基等を表し;nは0〜4の整数を表す。)で示される含セレン複素環化合物もしくはその互変異性体、又はそれらの塩;及び前記化合物を含有する抗ウイルス剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含セレン複素環化合物及び当該化合物を含有する抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
含セレン複素環化合物としては、1,3−セレナジン誘導体(特許文献1及び2)、1,3−セレナゾリン誘導体(特許文献3)、5−アシル−2−アミノ−1,3−セレナゾール類縁体(特許文献4)、ベンゾイソセレナゾリン誘導体及びベンゾイソセレナジン誘導体(特許文献5)が知られている。
【0003】
本発明者らはこれまでにセレンやテルルなどのカルコゲン原子を含む複素環化合物の合成とそれらの反応性に関する研究を行っている。その合成戦略はセレノールやテルロール類及びそれらの関連化合物の分子内三重結合への環加付加反応を用いるものである(非特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−119263号公報
【特許文献2】特開2000−10956号公報
【特許文献3】特許第4016098号公報
【特許文献4】特開2008−100954号公報
【特許文献5】特許第4044133号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H. Sashida, Rev. on Heteroatom Chem., 22, 59-78 (2000)
【非特許文献2】指田春喜,有機合成化学協会誌,59, 355-362 (2001)
【非特許文献3】H. Sashida, Mini-Reviews in Organic Chemistry, 4, 105-114 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規かつ有用な含セレン複素環化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、セレン原子源としてイソセレノシアネート、三重結合を有する求核剤としてo−エチニルアニリン類を用いて環化付加反応を検討した結果、o−エチニルアニリン類とイソセレノシアネートを反応させることで、求核付加及び閉環反応(6−exo−dig環化)が一挙に進行し、対応する3−セレナ−1−アザナフタレン類が生成し、更に当該化合物が抗ウイルス作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)次式(I):
【0009】
【化1】


(式中、Rは水素原子、置換又は非置換のC1−8−アルキル基、置換又は非置換の芳香族基、置換又は非置換のアラルキル基、又はトリメチルシリル基を表し;Rは置換又は非置換のC1−8−アルキル基、置換又は非置換の芳香族基、又は置換又は非置換のアラルキル基を表し;Rは、同一又は異なり、置換又は非置換のC1−8−アルキル基、置換又は非置換のC1−8−アルコキシ基、置換又は非置換の芳香族基、置換又は非置換のアラルキル基、置換又は非置換のアシル基、置換又は非置換のアリールスルホニル基、置換又は非置換のC1−8−アルキルスルホニル基、置換又は非置換のC2−9−アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又は水酸基を表し;nは0〜4の整数を表す。)
で示される含セレン複素環化合物もしくはその互変異性体、又はそれらの塩。
(2)前記(1)に記載の含セレン複素環化合物もしくはその互変異性体、又はそれらの塩を含有する抗ウイルス剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抗ウイルス作用を有する新規含セレン複素環化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明において、C1−8−アルキル基、及び各置換基中の「C1−8−アルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。前記アルキル基としては、C1−6−アルキル基が好ましい。
【0013】
置換又は非置換のC1−8−アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。前記アルコキシ基としては、C1−6−アルコキシ基が好ましい。
【0014】
芳香族基としては、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の芳香族複素環基が挙げられる。
【0015】
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0016】
アシル基としては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基(ブタノイル基)、バレリル基(ペンタノイル基)、ヘキサノイル基等のC1−8−脂肪族アシル基;ベンゾイル基、トルオイル基等の芳香族アシル基(アロイル基)が挙げられる。
【0017】
アリールスルホニル基としては、例えばフェニルスルホニル基(ベンゼンスルホニル基)、p−トルエンスルホニル(トシル)基、ナフタレンスルホニル基等の芳香族炭化水素−スルホニル基;フランスルホニル基、チオフェンスルホニル基、ピロールスルホニル基、オキサゾールスルホニル基、イソオキサゾールスルホニル基、チアゾールスルホニル基、イソチアゾールスルホニル基、イミダゾールスルホニル基、ピラゾールスルホニル基、ピリジンスルホニル基、ピリミジンスルホニル基、ピリダジンスルホニル基、ピラジンスルホニル基、キノリンスルホニル基、イソキノリンスルホニル基等の芳香族複素環−スルホニル基が挙げられる。
【0018】
1−8−アルキルスルホニル基としては、例えばメタンスルホニル(メシル)基、エタンスルホニル基が挙げられる。
【0019】
2−9−アルコキシカルボニル基とは、C1−8−アルコキシ基で置換されたカルボニル基をいい、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が挙げられる。
【0020】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0021】
前記式(I)においてR、R又はRで表されるC1−8−アルキル基、Rで表されるC1−8−アルコキシ基、C1−8−アルキルスルホニル基及びC2−9−アルコキシカルボニル基は、芳香族基、アシル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、C1−8−アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)等から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0022】
前記式(I)においてR、R又はRで表される芳香族基及びアラルキル基、Rで表されるアシル基及びアリールスルホニル基は、C1−8−アルキル基、芳香族基、アシル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、C1−8−アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)等から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。
前記式(I)において、nは0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数である。
【0023】
前記式(I)で示される化合物の互変異性体は、次式(I’):
【0024】
【化2】

(式中、R、R、R及びnは前記と同義である。)
で示される。
【0025】
前記式(I)で示される化合物又はその互変異性体の塩としては、薬学的に許容される塩が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、又はクエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩が挙げられる。また、フェノール性水酸基又はカルボキシル基を有する場合には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩として用いることもできる。
【0026】
前記式(I)で示される化合物又はその互変異性体は、次式(II):
【0027】
【化3】

(式中、R、R及びnは前記と同義である。)
で示されるo−エチニルアニリン類と、次式(III):
−N=C=Se (III)
(式中、Rは前記と同義である。)
で示されるイソセレノシアネートを溶媒中又は無溶媒下で反応させることにより製造することができる。
【0028】
反応溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン、ジオキサン、DMF、DMSOなどが挙げられる。収率の点から、無溶媒下で反応させることが好ましい。反応温度は、通常80〜135℃であり、反応時間は、通常4〜72時間である。
【0029】
前記のようにして得られる生成物を精製するには、通常用いられる手法、例えばシリカゲル等を担体として用いたカラムクロマトグラフィーやヘキサン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、水、又はこれらの混合溶媒等を用いた再結晶法によればよい。カラムクロマトグラフィーの溶出溶媒としては、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトン、ヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0030】
前記式(I)で示される含セレン複素環化合物もしくはその互変異性体、又はそれらの塩(以下「含セレン複素環化合物(I)」という。)は、抗ウイルス作用を有し、各種ウイルス疾患の予防又は治療のための医薬組成物として有用である。
【0031】
以下、含セレン複素環化合物(I)の投与量及び製剤化について説明する。
【0032】
含セレン複素環化合物(I)はそのまま、あるいは慣用の製剤担体と共に動物及びヒトに投与することができる。投与形態としては、特に限定がなく、必要に応じ適宜選択して使用され、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、徐放性製剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤等の経口剤、注射剤、坐剤、塗布剤、貼付剤等の非経口剤が挙げられる。
【0033】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0034】
結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールが挙げられる。
【0035】
崩壊剤としては、例えばデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0036】
界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばタルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールが挙げられる。
流動性促進剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0037】
注射剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、オリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。更に必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、注射剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。更に、必要に応じて適宜、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤等を加えてもよい。
【0038】
その他の非経口剤としては、外用液剤、軟膏等の塗布剤、貼付剤、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、常法に従って製造される。
【0039】
本発明の製剤は、剤形、投与経路等により異なるが、1日1〜数回から1〜数回/週〜月の投与が可能である。
【0040】
経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人で含セレン複素環化合物(I)の重量として3〜200mgを、1日数回に分けての服用が適当である。
非経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常成人で含セレン複素環化合物(I)の重量として1日1〜50mgの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)3−セレナ−1−アザナフタレン類の合成
【0043】
【化4】

(式中、Rはフェニル基を表し、Rはシクロヘキシル基を表す。)
【0044】
o−(フェニルエチニル)アニリン(1.2mmol)とシクロヘキシルイソセレノシアネート(2.3mmol)の混合物を溶媒を使用せずにアルゴン雰囲気下、130℃で13時間加熱した。混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、ヘキサン−クロロホルム(1:3)流出部から目的物を得た。更にヘキサンから再結晶し、化合物1を黄色プリズム晶として得た。収率58%。
【0045】
mp:146−147℃
IR(KBr):3390 (NH), 1616 (C=N).
H−NMR(CDCl)δ:1.07-1.24, 1.30-1.45, 1.54-1.78, 1.96-2.10, 3.92-4.04 (3H, m, 2H, m, 3H, m, 2H, m, 1H, m, cyclohexyl-H), 4.29-4.60 (1H, br, NH), 7.06-7.14, 7.17, 7.22-7.43, 7.46 (1H, m, 1H, dd, J = 8.0, 1.4 Hz, 7H, m, 1H, dd, J = 7.9, 1.5 Hz, olefinic-, Ph-H).
【0046】
(実施例2及び3)3−セレナ−1−アザナフタレン類の合成
【0047】
【化5】

(式中、R及びRがフェニル基である化合物を化合物2といい、Rがブチル基であり、Rがフェニル基である化合物を化合物3という。)
【0048】
(1)シクロヘキシルイソセレノシアネートの代わりにフェニルイソセレノシアネートを用いて、130℃で2.5時間加熱した以外は実施例1と同様にして、標記化合物2をクロロホルムから再結晶し無色プリズム晶として得た。収率76%。
【0049】
mp:214−215℃
IR(KBr):3485 (NH), 1626 (C=N).
H−NMR(CDCl)δ:7.02, 7.22, 7.31, 7.61-7.63, 7.79-7.86 (1H, dd, J = 7.3, 7.3 Hz, 2H, d, J = 8.0 Hz, 2H, dd, J = 8.2, 7.6 Hz, 2H, m, 2H, m, Ph-H), 7.34-7.48 (6H, m, Ph-H, olefinic-H), 9.57 (NH).
【0050】
(2)o−(フェニルエチニル)アニリンの代わりにo−(ブチルエチニル)アニリン、シクロヘキシルイソセレノシアネートの代わりにフェニルイソセレノシアネートを用いて、130℃で3.5時間加熱した以外は実施例1と同様にして、標記化合物3を黄色プリズム晶として得た。収率31%。
【0051】
mp:102−104℃
IR(KBr):3435 (NH), 1631 (C=N).
H−NMR(CDCl)δ:0.89, 1.28-1.38, 1.38-1.47, 2.18 (3H, t, J = 7.3 Hz, 2H, m, 2H, m, 2H, dt, J = 7.2, 7.2 Hz, n-Bu), 3.31-3.98 (1H, br, NH), 6.24 (1H, t, J = 7.2 Hz, olefinic-H), 6.09, 7.02, 7.09-7.17, 7.25-7.30, 7.30-7.36 (1H, d, J = 8.0 Hz, 1H, ddd, J = 7.8, 6.4, 1.3 Hz, 2H, m, 2H, m, 3H, m, Ph-H).
【0052】
(実施例4〜9)3−セレナ−1−アザナフタレン類の合成
実施例1〜3に記載の方法に準じて、以下の化合物4〜9を合成した。
化合物4:実施例1〜3に記載の生成物を示す式において、Rがメチル基であり、Rがシクロヘキシル基である化合物;黄色油状物。
化合物5:実施例1〜3に記載の生成物を示す式において、Rがtert−ブチル基であり、Rがシクロヘキシル基である化合物;黄色油状物。
化合物6:実施例1〜3に記載の生成物を示す式において、Rがトリメチルシリル基であり、Rがシクロヘキシル基である化合物;黄色油状物。
化合物7:実施例1〜3に記載の生成物を示す式において、Rが水素原子であり、Rがシクロヘキシル基である化合物;黄色油状物。
化合物8:実施例1〜3に記載の生成物を示す式において、Rがブチル基であり、Rがシクロヘキシル基である化合物;黄色プリズム晶、mp:99−101℃。
化合物9:実施例1〜3に記載の生成物を示す式において、R及びRがブチル基である化合物;黄色油状物。
【0053】
(実施例10)抗ウイルス作用
(方法)
(1)被験化合物10mg/1ml DMSOを原液とし、DMSOで10倍希釈系列を作成した。
【0054】
(2)96ウェルマイクロプレートにヒト胎児肺繊維芽細胞(HEL)をコンフルエントまで培養した。ヒト胎児肺繊維芽細胞(HEL)にヒトサイトメガロウイルス(Human cytomegalovirus;HCMV)Towne株をMOI(Multiplicity of infection(感染多重度))=1で1時間、吸着感染させた(5%CO,37℃)。(96ウェルマイクロプレート1ウェル当りの細胞数:1.3×10cells;HCMV Towne株:1×10pfu/ウェル)
【0055】
(3)1時間後、ウイルス液を除去し、細胞をPBS緩衝液で洗浄した。
【0056】
(4)2%FCS含有DMEM培地1mlに被験化合物希釈液10μl添加(10倍希釈液を用いたものの最終濃度が、原液の1000倍希釈液となる。)したものを作成し、1ウェル当り200μl加え培養した。顕微鏡下で、ウイルス増殖に伴って出現する細胞変性効果(CPE)が抑制されるか経時的に否か観察した。
【0057】
(5)6日目の培養上清を回収し、プラーク法(Plaque assay)(3倍希釈系列を作成した)により、上清中のウイルス量を、CPEの抑制が見られた希釈倍数で比較した。
【0058】
(6)培養1、4、7日目のCPEの出現を、全面にCPEが出現したものを「4」とし、4段階で示した。
【0059】
(結果)
培養(感染後)1日目、4日目、7日目の結果を、それぞれ表1〜3に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

4:全面にCPEが出現した。
3:まだCPEの見られない細胞が残っている。
2:CPEがあるが、形がはっきりしている。
1:線維状の細胞の中に、ぽつぽつとCPEがあるのみ。
【0063】
いずれの被験化合物についても抗ウイルス作用が認められた。特に、化合物2及び化合物3において、少なくとも0.01ng/mlの濃度でCPEの抑制が観察された。プラーク法による検討でも、同様に化合物2及び化合物3の両者ともに、対照(DMSO)に比較して0.01ng/mlの濃度で約40%の抑制が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

(式中、Rは水素原子、置換又は非置換のC1−8−アルキル基、置換又は非置換の芳香族基、置換又は非置換のアラルキル基、又はトリメチルシリル基を表し;Rは置換又は非置換のC1−8−アルキル基、置換又は非置換の芳香族基、又は置換又は非置換のアラルキル基を表し;Rは、同一又は異なり、置換又は非置換のC1−8−アルキル基、置換又は非置換のC1−8−アルコキシ基、置換又は非置換の芳香族基、置換又は非置換のアラルキル基、置換又は非置換のアシル基、置換又は非置換のアリールスルホニル基、置換又は非置換のC1−8−アルキルスルホニル基、置換又は非置換のC2−9−アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又は水酸基を表し;nは0〜4の整数を表す。)
で示される含セレン複素環化合物もしくはその互変異性体、又はそれらの塩。
【請求項2】
請求項1記載の含セレン複素環化合物もしくはその互変異性体、又はそれらの塩を含有する抗ウイルス剤。

【公開番号】特開2010−254614(P2010−254614A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106140(P2009−106140)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼研究集会名 第38回複素環化学討論会 ▲2▼主催者名 (社団法人)日本薬学会 ▲3▼開催日 2008年11月21(金)〜23日(日)
【出願人】(509119441)
【出願人】(509119452)
【Fターム(参考)】