説明

含水固化物の処理剤及びその処理方法

【課題】 一時廃液などの含水廃液を凝固処理したときに、ペースト状又はゼリー状に固まった場合、この状態の塊をぱらぱらの粒子群(粒子集合体)に確実かつ容易に変化させることのできる、含水固化物の処理剤、及びこの処理剤を用いる処理方法を提供すること。
【解決手段】 コーンフラワーなどの食用炭水化物の粉末を含有する粉状体からなり、一時廃液などの液状含水物を凝固処理したときに生じたペースト状又はゼリー状の含水固化物にまぶされることによって、この含水固化物を互いに分離されたぱらぱらの多数の粒子集合体に変化させる機能を有する、含水固化物の処理剤と、その処理剤を用いる処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状含水物を凝固処理して生じたペースト状又はゼリー状の含水固化物の処理剤、及びこの処理剤を用いる処理方法に関するものである。より詳しくは、工場の操業時に持続して排出される廃水のように常時持続的に大量に排出される廃液ではなく、一時的に制限された量で排出される含水廃液(以下、一時廃液と称する。)を一旦凝固処理した後、生じたペースト状又はゼリー状の含水固化物を短時間の内に直径数ミリ前後の大きさのスポンジ様の粒状体の集合体に変化させる機能を有する、廃液系全体を固形粒子化するための処理剤及びその処理方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルディング、工場や、食堂、自動車修理工場、ガソリンスタンド、食堂の調理場、美容院、醸造酒の製造所、病院、特養老人施設などから家庭に至るまで、我々は多くの廃液を垂れ流しにしている。これらは知らず知らずの間に莫大な環境汚染をもたらすことになる。これらの汚染に対しては何ら有効な手段がなく、従ってその対策も殆ど採られていない。
【0003】
本発明者は、例えば建物の床面ワックスを剥離処理したときに生じた剥離汚水液に作用して、この剥離汚水液全体をそのまま粒状に固形化する優れた方法を見出して発明を完成し、これを特許出願している(後記の特許文献1:国際公開番号WO2010/001710A1)。
【0004】
この特許出願に係る発明(以下、先願発明と称する。)は、例えば床面の樹脂ワックスの剥離汚水液の処理を目的にしたものであって、上記した剥離汚水液などの含水廃液を固形化する処理剤として、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体などの高分子吸水剤と、この高分子吸水剤の粒子を分散させる木粉などの分散剤とを必須成分とし、この分散剤は木粉及び米ぬかの中から選ばれた少なくとも1種を含み、その木粉は、微細に粉砕されることにより、微視的構造において、フィブリル(微小繊維群)の集合体をなし、またその米ぬかは、微視的構造において、多様で不均一な起伏に富んだ表面を呈する粒子の集合体をなしていることを特徴とする、含水廃液の処理剤、及びこの処理剤による含水廃液の処理方法に係るものである。この先願発明による処理剤は、富士メンテニール株式会社製の商品名:FMミラクルパウダー102又は101として実用化されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は更に、先願発明のアイデアを多くの含水廃液に適用する方法について鋭意検討を進めた結果、先願発明の改良方法を案出し、本発明に到達したものである。
【0006】
上記先願発明は、数分間という短時間の内に、廃液全体を直径数ミリ前後の大きさの粉砕スポンジ様の粒子群に固形化できる画期的な方法である。この方法によれば、廃液の全体が多数の粒子集合体に固形化し、もはや液体は1滴も存在しなくなるので、従来の方法のように、廃液の沈澱処理工程、沈澱物の濾過などの分離工程が不要である。従って、液体の排出が皆無になるので、従来問題であった廃水による環境汚染は全く生じないことになる。
【0007】
ところが、この先願発明による廃液の粒子化は、普遍性に富み、適用範囲の広いものであるが、処理対象の廃液の種類によって、粒子化の最適条件はそれぞれ異なることが判明した。問題は、この最適条件が廃液の種類、廃液中の溶質の種類、濃度などによって様々であることである。
【0008】
この最適条件から外れると、廃液は、往々にして目的とするぱらぱらの粒子群にならず、ペースト状になってしまう。ここで、「ペースト状」とは、分かり易く言えば、食料品の味噌のような状態であって、それ自体の流動性はなく、外圧によって変形可能ではあるが、粒子群がぱらぱらに分離しないで形状を保持している状態を意味する(以下、同様)。このようなペースト状に固まっている状態は、吸水した個々の高分子吸水剤の粒子や用いた分散剤が、それぞれの内部に水分を吸収若しくは保水するとともに、その表面も多少の粘性を持った水分で覆われているため、これらの水分を介して粒子間が相互に粘着して、全体がペースト状の塊を形成しているものと考えられる。
【0009】
一時廃液の固化については、これまで様々な提案がなされているが、公知の凝固剤によって固化された固化物の性状は、すべてべっとりしたペースト状(若しくはゼリー状)である。また、固化に至るまでに通常20分以上かかっており、場合によっては数時間から数十時間もかかる上に、その間、撹拌を続けることも必須である。ここで、「ゼリー状」とは、水分を多く含んで一様な分散状態をとるゲル状態であって、「ペースト状」と同様に、それ自体の流動性はないが粒子群がぱらぱらに分離はしないで形状を保持しており、「ペースト状」よりも外圧により変形し難い状態を意味する(以下、同様)。
【0010】
このようなペースト状(若しくはゼリー状)のものを焼却しようとすれば、まず表面から水分が蒸発するために、表面に緻密な皮状の層が生じる。この層は時間とともに成長して厚くなり、当然の結果として、内部に存在する水分の蒸発を妨げることになる。それに加えて、燃焼に必要な酸素の供給や熱の伝達も、表面に生成した緻密な皮状の層の存在によって阻害されて、燃焼の妨げになることは明白である。
【0011】
本発明は、上記した如き問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、一時廃液などの含水廃液(又は液状含水物)の全体を高分子吸水剤及び分散剤からなる処理剤などの添加によって粒子化しようとしたときに、意に反して目的とする粒子状の固化物が得られず、ペースト状又はゼリー状に固まった場合、この状態の塊をぱらぱらの粒子群(粒子集合体)に確実かつ容易に変化させることのできる、含水固化物の処理剤、及びこの処理剤を用いる処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、食用炭水化物の粉末を含有する粉状体からなり、一時廃液などの液状含水物を凝固処理したときに生じたペースト状又はゼリー状の含水固化物にまぶされることによって、この含水固化物を多数の粒子集合体に変化させる機能を有する、含水固化物の処理剤に係るものである。
【0013】
本発明はまた、液状含水物を凝固処理して生じたペースト状又はゼリー状の含水固化物に、食用炭水化物の粉末を含有する粉状の処理剤をまぶし、これによって、前記含水固化物を多数の粒子集合体に変化させる、含水固化物の処理方法も提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、一時廃液などの液状含水物の凝固処理時に生じたペースト状又はゼリー状に固まった状態の含水固化物に、一般に製菓用や食料用として用いられている粉末製品、例えばコーンフラワーなどの食用炭水化物の粉末を含有する粉状の処理剤をまぶす(具体的には、振りかけてから混合してまぶす)ことによって、ペースト状又はゼリー状にべっとり固まっていた含水固化物は、互いに分離若しくは独立した多数の粒子集合体に変化して、簡単にぱらぱらのドライ感触の粒子群となる、という本発明者による驚くべき発見に基づくものである。ここで、上記のようにペースト状又はゼリー状に固まった状態の含水固化物にまぶすように加える上記の粉状処理剤を以下「まぶし粉末」と称するが、「まぶす」とは、含水固形物の構成粒子の各表面に粉状の処理剤がまんべんなく行き渡るように、その構成粒子を処理剤と混合して、各粒子表面に処理剤を十分に付けることを意味する。また、特に断わらない限り、ペースト状の含水固化物を代表例として説明するが、ゼリー状の含水固化物についても同様の説明が成り立つものである。
【0015】
本発明を適用する以前のペースト状の固化状態は、上述した先願発明で生じ得ることであるが、吸水した個々の高分子吸水剤の粒子や用いた分散剤が、それぞれの内部に水分を吸収若しくは保水するとともに、その表面も多少の粘性を持った水分で覆われているため、これらの水分を介して粒子間が相互に粘着して、全体がペースト状の塊を形成しているものと考えられる。
【0016】
ところが、ペースト状に固まった状態の含水固化物に、本発明のまぶし粉末を振りかけてまぶすと、驚くべきことに、ペースト状の塊が、ほぼ瞬時にさらさらしたぱらぱらのスポンジ性の粒子群に変化する。このまぶし粉末は、ペースト状の含水固化物にまぶすと、すばやく高分子吸水剤の粒子表面の水分を吸収し、この結果、高分子吸水剤の粒子表面は粘着性を消失して個々の粒子群がばらばらになるものと考えられる。
【0017】
本発明において、用いる粉状の処理剤の使用量は、処理対象のペースト状又はゼリー状固化物の種類や性状によるが、それほど多く用いる必要はない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、上記したまぶし粉末が、ペースト状に固化した塊を、ぱらぱらの独立した粒子群に変化させるには、多くの重要な有効因子が要求される。まず、ペーストの表面に敏速に展開できる拡散性能、ペーストの表面にすばやく接触作用する親和性、接触と同時に水分をすばやく吸収する吸水性、粘着した高分子吸水体間に入り込む浸入性能(割り込み性能)などが挙げられる。これらの少なくとも4つの性能を併せ持つことによって、まぶし粉末は、その効果を十二分に発揮することを、本発明者は見出した。
【0019】
これらの少なくとも4つの性能(4因子)を持つまぶし粉末は、含水廃液の水分を吸収して膨潤した多数の高分子吸水体同士の粘着によって形成されているペースト状の塊に、総合的、多角的に作用して、高分子吸水体の表面の水分を吸収するため、高分子吸水体の相互の粘着性を消失させ、個々に分離分散させて、さらさらのドライ感触の分散した粒子群の生成に寄与することになる。よって、上記した性能の諸因子をバランスよく持つことが、本発明のまぶし粉末の本質的な特長であることに注目しなければならない。
【0020】
本発明者は、これらの要求性能を満たすまぶし粉末として、一般に販売されている、製菓用や食料用の粉体が、特に優れていることを見出した。本発明に用いられる食料用の粉体は、常温において水をすばやく吸収することが重要であり、例示すると、とうもろこしから得られるいわゆるコーンフラワー、小麦から得られる小麦粉、小麦を粉にするときに生じる皮を砕いた“ふすま”、片栗粉、ライ麦細挽粉、菓子用全粒粉、馬鈴薯から得られる澱粉などを挙げることができ、これら以外にも、大麦由来の粉末、きび由来の粉末を挙げることができる。本発明に使用可能なまぶし粉末は、これらの各種の粉の1種、又は2種以上の混合物からなっていてよい。
【0021】
本発明においては、コーンフラワーが、その微小粉粒子に多くの間隙が存在し、この間隙に処理対象の含水一時廃液を毛細管現象で吸い込む効果と、その場に保水する効果とが、大いに貢献していると考えられる。
【0022】
ここに説明した事象は、小麦に由来する粉末などをまぶし粉末として用いる場合にも見出されている。この小麦由来の粉末は、コーンフラワーと同等の粒子集合体からなっていて、同様の吸水効果を発揮するものと考えられる。
【0023】
本発明を実施するに際して、使用するまぶし粉末の量は少量であってよく、特に規制する必要はない。具体的に述べると、まぶし粉末をペースト状の固化物の上に振りかけてから、保護手袋をはめてかき混ぜると、まぶし粉末と接触した上部からペーストがぱらぱらの粒子に変化する。一旦ぱらぱらの粒子の集まりになると、生成粒子群は、動き易くなるために難なく移動してその効果が下部のペーストへと及んでゆく。様子をみながら、適度にまぶし粉末を追加しつつ、下部へ下部へと粒子化を進めると、全体の粒子化をそれほどの手間もかからずに完遂することができる。この操作は、それほど力を必要とせず、ペースト状の重い塊の全体を見事にさらさらの取り扱い易い粒子群に変化させる。
【0024】
ここで注目すべきことは、本発明のまぶし粉末の使用量と同じ量のまぶし粉末を、本発明の実施以前に行う廃液固化の処理剤に加えても、全く効果がないことである。まぶし粉末は、ペースト状にまで固まったものに、まぶして使用することによって、はじめて効果を発揮することを強調しなければならない。なお、本発明は、既述した先願発明によって一時廃液を固化処理して生じるものに限ることなく、その他の種々のペースト状(又はゼリー状)の含水固化物に広く適用可能である。
【0025】
本発明の実施によって、従来の技術では、ペースト状に固まって持ち運びなどで難渋する固化物を、簡単かつ確実にぱらぱらの粒子群に変換でき、これを焼却するときに抜群の効果を発揮する。
【0026】
既に述べたように、ペースト状の塊を焼却しようとすれば、その塊の表面がまず乾燥して緻密な層を生じるので、燃焼しようとしても、この緻密層が水分の蒸発を阻止し、熱の伝達も阻害し、何よりも燃焼に必要な酸素を通さず、供給することができない。
【0027】
しかしながら、本発明によって得られる粒子群は、個々の粒子がばらばらの独立した粒子集合体を形成し、気孔の連通した多孔性のやわらかいスポンジ様の形態をなして表面積に富む(比表面積が大きい)ために、(1)水分が蒸発し易いこと、(2)熱も内部に伝わり易いこと、(3)酸素の供給も極めて容易であって、木炭に対する消し炭に例えることができ、良好な可燃性を発現すること、という3大条件を備えている。
【0028】
本発明は、特定の粉末を投入するだけで、取り扱いに難渋するペースト状の塊をぱらぱらでドライ感触の小粒子群に簡単な操作で変化させることができ、実用的には筆舌に尽くし難い産業上の利用価値又は効果を発揮するものである。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を各種の例で更に詳細に説明するが、これらは説明のためのものであって本発明の技術的思想を限定するものではない。
【0030】
[実施例1]
樹脂ワックスを塗布した床面が塗布後1年以上を経過してすっかり汚れたために、剥離再生を依頼された業者が手持ちの剥離剤で床面樹脂ワックスを剥離処理し、これによって生じた汚れた廃液(含水剥離廃液)の凝固処理を行った。この樹脂ワックスの種類、用いた剥離剤の種類も不明であったが、pHを測ると14を示し、かなりのアルカリ性であった。
【0031】
富士メンテニール株式会社製のフロアワックス粒子化剤(商品名:FMミラクルパウダー102)を用いて、上記の床面樹脂ワックス剥離廃液(ペール缶に約12リットル)の粒子化を試みた。この場合、富士メンテニール株式会社の使用マニュアルに準じ、この剥離廃液に対して、5質量%のFMミラクルパウダー102を用いて、この廃液の粒子化を試みた。
【0032】
この粒子化剤の使用量を6質量%とした。しかし、この使用量は少し足らない状態であり、従って、凝固(粒子化)処理の最適条件からは少しずれていたことになる。FMミラクルパウダー102を投入してから3分後には、剥離廃液全体が固まったが、少し水っぽいペースト状(又はゼリー状:以下、同様)であった。この状態で更に10分間、様子を見たが、ペースト状態は変わらず、更に10分間観察したが、固化状態はペースト状で変わらなかった。
【0033】
そこで、本発明に基づくコーンフラワー(とうもろこし由来の粉末)をまぶし粉末として使用した。
【0034】
このまぶし粉末の量の僅かを、上記のペースト状固化物に振りかけた。ゴム製の手袋をはめた手で軽く混合してまぶすと、ペースト状の表面から瞬時に、スポンジ性状でサイズ1mm〜3mmのぱらぱらの粒子群が生成した。この粒子群は軽くて、力を入れなくても手の動きで動き回る軽い性状であった。適度にまぶし粉末を振りかけながら下へ下へと混合を進めると、上から下へとペースト状の固化物の粒子化が十分に進行した。
【0035】
このようにして、数分で、ペースト状の水っぽい固化物の全部が、ぱらぱらでドライ感触のサイズ1mm〜4mmのスポンジ性の粒子群に底まで変化した。ここに至るまでに使用したまぶし粉末の総量は、僅か86gであった。
【0036】
[実施例2]
酒造メーカーで日本酒を製造する際に発生した絞り汚液の凝固処理を試みた。この汚液を収容した容器の蓋を開けると、すさまじい臭気が部屋中に広がる状態であった。
【0037】
この腐敗臭ともいえる臭気を発する廃汚液に、富士メンテニール株式会社製の廃液処理剤(商品名:FMミラクルパウダー101)を加えた。詳細に説明すると、廃液の総量は1300mlであり、これにFMミラクルパウダー101を80g加えた。FMミラクルパウダー101の投入後、5分経っても粒子状に固まらず、水っぽいペースト状であった。更に、FMミラクルパウダー101を10g追加してみたが、固化物の性状はそれほど変わらなかった。
【0038】
この状態で、本発明に基づくライ麦の細挽粉(主成分は小麦粉の類)の6gを上記の固化物に少しずつ投入してまぶしてみたところ、水っぽいペースト状の固化物は、ぱらぱらでドライ感触のサイズ1mm〜3mmのスポンジ性の粒子群に見事に変化した。そのまま性状を1週間観察したが、生成粒子群の様子は変わらなかった。
【0039】
[実施例3]
塗装業者からの塗装残りの水性塗料(残液)の凝固処理を約1リットルの残液について試みた。
【0040】
この残液はかなりの粘性があったので、約200mlの水を加えて粘度を落とし、これに富士メンテニール株式会社製の廃液処理剤(商品名:FMミラクルパウダー101)の60gを投入して、廃液の全体の粒子化を試みた。10分を経過しても全系の完全粒子化に至らず、性状は、やわらかいペースト状であった。
【0041】
この状態で、本発明に基づいて、ふすま(小麦を粉にしたときに出る皮のくずを粉末化したもの)をまぶし粉末として用い、このまぶし粉末の約7gを上記のペースト状の固化物に振りかけてまぶすと、全体がぱらぱらの粒子群に見事に変化した。この状態の経時変化を観察したが、ぱらぱらのドライ感触は時間とともに向上した。
【0042】
[実施例4]
美容院で常用しているパーマ剤の使用液を棄てずに、ポリエチレン容器に全量が4リットルとなるまで集めた。この使用廃液に、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体である高分子吸水剤の約50g(容量約80ml)と、木粉(80メッシュパス50質量%以上)38gとを混合した粉体を緩やかに撹拌しながら加えたところ、粉体は均一かつ容易に直ぐに分散した。約3分後に、パーマ剤使用廃液の全体は固化したが、水っぽいペースト状にとどまり、この性状は20分を経過しても変らなかった。
【0043】
そして、この廃液固化物に、本発明に基づくデュラムセモリナ粉(カナダ国産のデュラム小麦を細粉にしたもの)からなるまぶし粉末を僅かな量で振りかけた。棒で軽く混合すると、ペースト状の表面から、瞬時にぱらぱらでスポンジ性状のサイズ1mm〜3mmの粒子群が生成した。この粒子群は軽くて、力を入れなくても棒の動きで動き回る軽い性状であった。
【0044】
適度にこのまぶし粉末を振りかけながら下へ下へと混合を進めると、ペースト状の固化物の粒子化が上から下へと十分に進行した。
【0045】
このようにして、数分で、ペースト状の水っぽい固化物の全部が、ぱらぱらでドライ感触のサイズ1mm〜4mmのスポンジ性の粒子群に底まで変化した。ここに至るまでに使用したまぶし粉末の総量は、僅か約20gであった。
【0046】
[実施例5]
樹脂ワックスを塗布した床面が塗布後1年以上になり、すっかり汚くなったので、この床面樹脂ワックスを市販の剥離剤(ジョンソンディバイシー社製)で剥離した。この剥離廃液のpHを測ると14を示し、かなりの高アルカリ性であった。
【0047】
この剥離廃液(ペール缶に約13リットル)の粒子化を富士メンテニール株式会社製のフロアワックス粒子化剤(商品名:FMミラクルパウダー102)によって行った。FMミラクルパウダー102の使用量は450gであった。この廃液は、10分後、流動性を失ってゲル状にはなったが、ぱらぱらの状態とは言えなかった。
【0048】
そこで、本発明に基づく馬鈴薯由来の澱粉粉をまぶし粉末として試用してみた。驚いたことに、上記のゲル状の塊がぱらぱらの粒子群に見事に変化した。このまぶし粉末の使用量は僅か20gにすぎなかった。
【0049】
[比較例1]
この比較例では、実施例5で用いた450gのFMミラクルパウダー102に、馬鈴薯由来の澱粉粉のまぶし粉末20gを予め混合したものを用いて、実施例5と同じ量の剥離廃液(ペール缶に約11リットル)の粒子化を試みた。
【0050】
FMミラクルパウダー102と澱粉粉の使用量は、総量では、実施例5と同じであるが、この比較例1の場合は、剥離廃液は、10分後、流動性を失ってゲル状にはなったものの、それ以上の固化が進まず、20分を経過しても粒子化は生じなかった。このことは、比較例1とは異なり、実施例5のように、剥離廃液のゲルをまぶし粉末を加えて処理することによってはじめて、効果を発揮することを明らかに示している。
【0051】
以上に述べたように、高分子吸水剤を含む処理剤で、含水汚液の全てを完全に粒子の集合体に固形化することを試みたが、粒子化の最適条件からずれたために、汚水系全体の完全粒子化に至らず、ペースト状又はゼリー状になってしまった場合、本発明によるまぶし粉末をまぶすことにより、簡単かつ確実に、ドライ感触のぱらぱらの粒子群に変化させることができる。従って、本発明は、これまで野放しになっていた一時廃液の処理を、作業性良く行えることは勿論のこと、環境保全の面からも汚水を一滴も流さないという画期的な方法の実用化に大いに寄与し、汚水の可燃化への道を開き、産業上の利用価値を大いに高めるものである。
【0052】
[比較例2]
樹脂ワックスを塗布してから半年を経ている汚れた床面を市販の剥離剤溶液で剥離し、その汚水の2リットルをテスト汚水とした。また、酸性硫酸ナトリウム10gを300mlの水に溶解して容器に注ぎ、テスト溶液とした。
【0053】
このテスト溶液の上に2リットルの上記汚水を一気に注ぎ込むと、瞬時に塊状の沈殿物が生じ、汚濁液は透明な液となった。5分後に、塊は簡単に拾い上げられ、金網に乗せられた。この塊は手で押さえつけると、若干の透明な液が絞り出された。液は酸性であった。この液に重炭酸ナトリウムの粉末を加えると、細かい泡が生じた。緩やかに撹拌しながら重炭酸ナトリウムの粉末を加え続けると、やがて泡は出なくなった。リトマス試験紙でpHを調べるとpHは7であり、中和されていることが示された。若干の重炭酸ナトリウムの粉末を更に加えてpHを調べると、pHは7で変わりはなかった。
【0054】
このようにして、処理に難渋するフロアワックスを瞬時に固形物と液体に分離する方法を確立できた。しかし、ここで、生じた透明の液体も、金網上に分離された固形物もそれぞれが公害物であることに気づかねばならない。以上の操作は、考え方によれば、樹脂ワックス剥離汚水という公害物を、透明ではあるが、液体の公害物と固体の公害物に分けただけであり、これからそれぞれの公害物の処理が更に必要になる。当然、これらの処置が多くの工程を伴って行われることになる。
【0055】
これに対して、本発明のように、汚水を数分でぱらぱらの無害で可燃の粒子群に変化させる方法では、この比較例2の方法における公害防止操作の出発点が、最終点となり、それ以上の処置を必要としない。この比較例から、本発明は、垂涎かつ究極の処理剤と処理方法を提供するものである、と明確に理解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、これまで野放しになっていた一時廃液の処理を、作業性良く行えることは勿論のこと、環境保全の面からも汚水を一滴も流さないという画期的な方法の実用化に大いに寄与し、汚水の可燃化への道を開き、産業上の利用価値を大いに高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】国際公開番号WO2010/001710A1公開公報(特許請求の範囲、明細書の第7〜40頁、図面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用炭水化物の粉末を含有する粉状体からなり、液状含水物を凝固処理したときに生じたペースト状又はゼリー状の含水固化物にまぶされることによって、この含水固化物を多数の粒子集合体に変化させる機能を有する、含水固化物の処理剤。
【請求項2】
前記食用炭水化物の粉末が、コーンフラワー、小麦由来の粉末、澱粉、大麦由来の粉末及びきび由来の粉末からなる群より選ばれた少なくとも1種からなる、請求項1に記載した含水固化物の処理剤。
【請求項3】
液状含水物を凝固処理して生じたペースト状又はゼリー状の含水固化物に、食用炭水化物の粉末を含有する粉状の処理剤をまぶし、これによって、前記含水固化物を多数の粒子集合体に変化させる、含水固化物の処理方法。
【請求項4】
前記食用炭水化物の粉末として、コーンフラワー、小麦由来の粉末、澱粉、大麦由来の粉末及びきび由来の粉末からなる群より選ばれた少なくとも1種を用いる、請求項3に記載した含水固化物の処理方法。