説明

含水鉱物の高温処理

鉱物炭酸化による二酸化炭素の固定に関する、含水マグネシウムシリケートの活性度を増大させることは、含水マグネシウムシリケートを急速に加熱することを含む。含水マグネシウムシリケートを急速に加熱することは、所定量の含水マグネシウムシリケートの粒子を火炎状態で加熱して、該粒子を実質的に脱ヒドロキシル化することを含む。脱ヒドロキシル化の粒子は、固定処理で二酸化炭素と接触して炭酸マグネシウムを生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素ガスを固定するための方法に関し、特には、二酸化炭素を固体炭酸塩に化学的に変換することに関し、それによって、大気中の二酸化炭素の蓄積を軽減する。特には、本発明は、鉱物の炭酸化によって二酸化炭素を固定することについて活性化された原料の生産に関する。また、本発明は鉱物の炭酸化のための方法に関し、そして、活性化原料を用いる二酸化炭素の固定にも関する。
【背景技術】
【0002】
大気中から単離される二酸化炭素ガスを固定して貯蔵することは開発途上の技術であり、その技術は、大気への二酸化炭素の放出を軽減する試みとして地球規模で行われているものとして認識されている。大気内の二酸化炭素濃度が急速に増加することは、温室効果ガスの特性を引き出すことと、地球温暖化現象へ寄与することとの原因になると考えられている。様々な技術が燃焼用燃料ガス中の二酸化炭素の捕獲及び濃度に関して存在するが、現在のほとんどの設備は、地中隔離として知られている地下固定を利用している。このことは、劣化オイル若しくはガス貯留層、又、他には、大気から適切に単離される地下の多孔質構造物で起こる。これらの貯留層又は構造物は、土壌中又は海中に置かれる。二酸化炭素ガスのための可能性がある別の地下貯蔵は、いわゆる塩水帯層である。深海に二酸化炭素を直接的に保存することも研究されている。
【0003】
研究のもう1つの分野として鉱物の炭酸化が知られている。二酸化炭素は、アルカリ若しくはアルカリ土類の金属酸化物、又はシリケート(ケイ酸塩)鉱物と化学的に反応して、安定の固体炭酸塩を生成する。抽出されて処理された鉱物を用いて、鉱物炭酸化のプロセスプラントでこのルートを使用することは、現場の炭酸化とは対照的に現場外の炭酸化として知られている。一方では、二酸化炭素は地下の鉱物構造物中に堆積されて、長時間にわたって、地下に存在する構造物の鉱物と反応する。鉱物の炭酸化によって現場外で固定することは本明細書で述べられる。
【0004】
鉱物の炭酸化は、二酸化炭素の他の固定方法を通じて様々な潜在的な有利な点を有し、比較的永久的であること、安定性があること、二酸化炭素ガスの漏れの危険を軽減することを備え、それによって、高価であって、かつ、長期間のモニタリングを除外することができる。さらに、地中隔離に適した地下サイトは必ずしも全てのところに存在するとは限らない。また、鉱物の炭酸化の化学反応は熱力学的に有利であり、発熱エネルギーの放出は炭酸塩の生成による。鉱物の炭酸化のために利用される鉱物の多くは豊富であり、地球全体に広く分布する。これらの鉱物は採掘されて、粉砕と他の技術的な実行を受ける。それらは、一般的には無害であり、環境的及安全的なリスクは容易に管理可能である。特に、蛇紋石(サーペンティン)(マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の水酸化物)として広く知られている鉱物は、化石燃料の埋蔵量による二酸化炭素の地球規模の全ての放出を取り押さえるのに必要な充分な量で利用することができると見積もられている。
【0005】
二酸化炭素による鉱物の炭酸化に関する様々な技術は公知である。すなわち、「Activation of magnesium rich minerals as carbonation feedstock materials for C02 sequestration」のタイトルで公開されている、Maroto-ValerらのFuel Processing Technology 86 (2005) 1627-1645には、C02との反応に対する蛇紋石(サーペンティン)の物理的及び化学的な活性化について述べられている。物理的な活性化は、650℃以下の温度でスチーム及び空気に鉱物を曝露することを含む。化学的な活性化は一組の酸及び塩基に鉱物サンプルをさらすことを含む。
【0006】
米国2007/0261947号は、鉱物の炭酸化によって二酸化炭素を固定するための方法を述べ、その方法では、マグネシウム又はカルシウムシートのシリケート(ケイ酸塩)水酸化物が、合成ホットガスを用いて、少なくとも600℃で加熱することによって、対応するるオルソ-又は鎖状-シリケート(ケイ酸塩)に変換される。その後、オルソ-又は鎖状-シリケート(ケイ酸塩)はC02と接触して、マグネシウム又はカルシウムの炭酸塩とシリカとを生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鉱物の炭酸化による二酸化炭素の固定のためのこれらの技術及びその他技術があるにもかかわらず、代替的であって、かつ、好ましく性能向上した技術を提供することが望まれている。このように、鉱物の反応物質が二酸化炭素に対して更に高い反応性となるような手法を提供することが望まれている。これは鉱物の炭酸化処理の効率性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で述べるように、二酸化炭素による鉱物炭酸化に関する、特定の種類の原料の活性度を増大させることは、特定の熱処理形態にしたがって鉱物を加熱処理することによって可能であることが見出された。
【0009】
したがって、二酸化炭素による鉱物炭酸化に関するマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物の活性度を増大させる方法が述べられる。そして、その方法は、非常に急速な加熱によって、鉱物に熱のショックを与える工程を含む。
【0010】
本明細書で述べるように、マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物の急速加熱(熱ショック)はその鉱物の改良という結果となり、二酸化炭素による鉱物炭酸化に関する活性度を増大させることとなる。これに関係して、活性度の増大はそのような熱処理を受けていない鉱物に関連する。また、活性度の増大はゆっくりと加熱されたその対応する鉱物にも関連、例えば、そのことについては、Maroto-Valer and US 2007/0261947が述べている。
【0011】
1分未満のタイムスケールで、マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物を急速加熱することは、本明細書で述べるように、構造的及び組成的な変化を引き起こすと考えられ、その変化は、二酸化炭素に対する鉱物の反応性を増大させることとなる。このことは、30分超の継続時間を必要とする既存の鉱物の熱活性化処理とは区別される。理論によって縛れることを望んでいないが、これらの変化は下記に詳細に述べられる。
【0012】
C02による鉱物の炭酸化で用いるための活性化原料もまた、本明細書で述べられる。
【0013】
また、二酸化炭素による鉱物の炭酸化のための方法が本明細書で述べられるが、その方法は、マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物の熱ショックによって活性化原料を形成する工程と、その活性化原料を二酸化炭素に接触させる工程とを含む。
【0014】
さらに、二酸化炭素による鉱物の炭酸化のための方法が本明細書で述べられるが、その方法は、マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物の熱ショックによって活性化原料を形成する工程と、活性化原料を含む懸濁液又は溶液を形成する工程と、懸濁液又は溶液を二酸化炭素に接触させる工程とを含む。
【0015】
一般的には、この明細書で述べられる様々な革新的態様の主題が、鉱物の炭酸化による二酸化炭素の固定に関するマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物の活性度を増大させることを、下記に述べる1つ以上の革新的な態様を組み合わせて鉱物を急速加熱することによって特徴付けている。
【0016】
別の態様として、含水マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)を処理することは、所定量の含水マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の粒子を火炎状態で加熱して、粒子を実質的に脱ヒドロキシル化することを含む。加熱することは、10秒未満(以下)で少なくとも400℃の周囲温度の上昇の影響を粒子が受けるために火炎状態の外側から火炎状態の中まで粒子を移動させることと、10分未満(以下)の間、平均ピークの粒子温度まで火炎状態の中で粒子を加熱して組成物を得ることと、火炎状態から組成物を取り除くこととを含む。
【0017】
ある実施として、所定量の粒子が、フォルステライト(苦土かんらん石)を含むか、又は実質的にフォルステライト(苦土かんらん石)から成る組成物に変換されてよい。ある実施として、加熱することが、1秒未満(以下)で少なくとも400℃の周囲温度の上昇の影響を粒子が受けるために火炎状態の外側から火炎状態の中まで粒子を移動させることを含む。ある実施として、粒子が、2分未満(以下)の間、平均ピークの粒子温度まで火炎状態の中で加熱されて組成物を得ることができる。ある例として、加熱することによって、含水マグネシウムシリケートに関する平均ピーク温度が少なくとも600℃の目標を達成する。ある例として、加熱することが、炭化水素質燃料を燃焼する加熱炉、か焼炉若しくは流動化床のか焼炉、又はプラズマ若しくは電気アークで起こる。
【0018】
ある実施として、二酸化炭素の固定は、様々な態様及び/又は実施を含む方法に従って、マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物を急速に加熱することによって、活性化原料を生成すること、活性化原料を二酸化炭素に接触させて炭酸マグネシウムを生成することを含む。ある実施は、酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)以外の金属酸化物を活性化原料から分離して、酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)を含む残りの活性化原料を作り出すことと、残りの活性化原料を二酸化炭素に接触させて、炭酸マグネシウムを生成することとを含む。
【0019】
活性化原料又は残りの活性化原料は、二酸化炭素に接触させる前の所定の時間にわたって、冷却されてよい。ある例として、活性化原料又は残りの活性化原料が冷却されている少なくとも一部の時間の間、活性化原料又は残りの活性化原料は、湿潤のガス状の二酸化炭素に曝露される。ある実施は、溶媒と活性化原料又は残りの活性化原料とを組み合わせて、懸濁液、スラリー又は溶液を形成することを含む、1つの例としては、溶媒が水であり、そして、懸濁液、スラリー又は溶液が水性である。
【0020】
1つ以上の実施形態が、添付の図面及び下記の記述で述べられる。他の特徴点、目的及び有利な点は、下記の記述及び図面、並びに特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
限定的に解釈されない添付図面を参照しながら、実施態様を説明する。
【図1】図1は、様々な加熱形態に対して、温度に関する蛇紋石(サーペンティン)(サーペンティン)鉱物の質量変化を示す(McKelvyらのEnv鉄. Sci. Tech. 38, 6897 (2004)を参照)。
【図2】図2は、リザーダイト原料及び様々なリザーダイトの脱ヒドロキシル生成物のX線回折スペクトルを示す(McKelvyらのEnv鉄. Sci. Tech. 38, 6897 (2004)を参照)。
【図3】図3は、リザーダイトとリザーダイトの脱ヒドロキシル生成物との混合物とのX線回折スペクトルの詳細図を示す(McKelvyらのEnv鉄. Sci. Tech. 38, 6897 (2004)を参照)。
【図4】図4は、脱ヒドロキシルの関数として、リザーダイト及びリザーダイトの脱ヒドロキシル生成物の相比率を示す(McKelvyらのEnv鉄. Sci. Tech. 38, 6897 (2004)を参照)。
【図5】図5は、脱ヒドロキシル方法のための実験装置の略図を示す。
【図6】図6は、様々な照射時間に対する1000℃で加熱されたリザーダイトサンプルのX線回折スペクトルを示す。
【図7】図7は、リザーダイトの脱ヒドロキシル生成物の提案される構造物を示す。
【図8】図8は、1000℃で、160秒間で加熱されたリザーダイトの脱ヒドロキシル生成物のX線回折スペクトルと、図7に示された構造物の計算されたスペクトルとを示す。
【図9】図9はリザーダイトの脱ヒドロキシル生成物のSEM像を示す。
【図10】図10はリザーダイトの脱ヒドロキシル生成物のSEM像を示す。
【図11】図11はリザーダイトの脱ヒドロキシル生成物のSEM像を示す。
【図12】図12はリザーダイトの脱ヒドロキシル生成物のSEM像を示す。
【図13】図13は、未反応のフラッシュ処理されたリザーダイト、及び反応したフラッシュ処理されたリザーダイトのX線及びシンクロトロンのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ある例として、マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物(以下、「出発鉱物」という。)は、加熱されて、C02との反応が高活性となる。このように、出発鉱物は急速加熱を受けて(本明細書では、別名として「熱ショック」と呼ぶ。)、活性化した原料を作り出す。これに関連して、活性を上昇させることは、急速加熱前の出発鉱物の活性を上昇させることに関連し、そして、また、比較的ゆっくりとした従来の加熱を受けた場合の鉱物に関連する。出発鉱物の急速加熱は、構造的及び組成的な変化を引き起こすと考えられ、二酸化炭素を固定することに関して活性を上昇させることとなる。
【0023】
本明細書で述べられているように、「含水鉱物」は、一般的には、水(H20)、ヒドロキシル基(-OH)又それらの任意の組み合わせを含む、様々な結晶形態及び凝集体の鉱物を表す。含水鉱物は、少なくとも約5質量%の含有量で、水、ヒドロキシル又は水とヒドロキシルとの組み合わせを有することができる(このことは、少なくとも約5質量%の含有量の水/ヒドロキシルとして表現される。)。例えば、含水鉱物は、約5質量%〜約20質量%又は約5質量%〜約13質量%の含有量の水/ヒドロキシルを有することができる。ある例として、含水鉱物は、少なくとも約20質量%の含有量の水/ヒドロキシルを有する。
【0024】
出発鉱物を急速加熱することは構造的な変化をもたらすと考えられ、その構造的な変化は、C02との反応による鉱物の炭酸化に関する熱的な活性状態である生成物の状態とする。理論によって縛れることを望んでいないが、出発鉱物の熱ショックは、少なくとも1つ以上の次の効果を生み出すと考えられる。
【0025】
格子構造中に内在的に組み込まれた水分子及び/又はヒドロキシル基は、熱ショックの間に放出される。そして、このことは、出発鉱物の結晶構造の変化とマグネシウムの水への溶解の改良へと誘導する。言い換えれば、その結果は、二酸化炭素との(溶液中での)反応の効能を向上させる。この方法で、含水鉱物の水/ヒドロキシル含有量を減らして、無水鉱物を形成することは、含水鉱物を脱水することとして表すことができる。幾つかの実施形態においては、脱水することは、含水鉱物から、水を除去すること、ヒドロキシル基を除去すること(脱ヒドロキシル化)又はそれらの組み合わせを含む。
【0026】
一つの例において、ヒドロキシルマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)鉱物のリザーダイト(Mg3Si205(OH)4)の急速な熱処理はフォルステライト(苦土かんらん石)(Mg2Si04)を生成する。フォルステライト(苦土かんらん石)は容易に二酸化炭素と反応して炭酸マグネシウムを形成する。
【0027】
【化1】

【0028】
また、出発鉱物の熱ショックは表面積を増大させることにつながり、それによって、結晶格子に存在するマグネシウムをCO2との反応に対する効能をより高める状態を可能とする。
【0029】
加熱を受けた鉱物はヒドロキシルマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)(ケイ酸塩)の鉱物である。多形体を含む、様々な含水及びヒドロキシルマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)(ケイ酸塩)の鉱物のCO2-反応性は、急速加熱によって増大する可能性がある。出発鉱物は、豊富な量のマグネシウムを含んでよく、マグネシウムのケイ素に対するモル比は少なくとも3:2でよい。出発鉱物は、蛇紋石(サーペンティン)、タルク、かんらん石又はそれらの混合物でよい。
【0030】
蛇紋石(サーペンティン)鉱物は、含水/ヒドロキシルのマグネシウム・鉄の造岩フィロシリケート(ケイ酸塩)を含み、そのシリケート(ケイ酸塩)鉱物は、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。蛇紋石(サーペンティン)鉱物は、一般式(Mg,Fe)3Si205(OH)4を有する。様々な鉱物は、様々な割合で混合された状態で発見される可能性がある。ある例としては、2つのケイ素原子のうちの1つはアルミニウム原子又は鉄原子によって置換されてよい。蛇紋石(サーペンティン)の多形体は、アンチゴライト、クリソタイル及びリザーダイトを含む。リザーダイト又はオルソアンチゴライトは、微粒子であって、うろこ状である鉱物であり、式:Mg3Si205(OH)4を有する。
【0031】
蛇紋石(サーペンティン)の急速加熱は、メタ-蛇紋石(サーペンティン)鉱物を形成することとなり、次の式にしたがって反応してヒドロキシル含有量が減少することとなる。
【0032】
【化2】

該式中、xは、脱ヒドロキシル化の程度を表し、0≦x<1である。
【0033】
更なる例を参照する。含水鉱物リザーダイト(蛇紋石(サーペンティン)から導き出されるメタ-蛇紋石(サーペンティン)の鉱物)は加熱されて、次の反応式にしたがって、無水鉱物のフォルステライト(苦土かんらん石)(Mg2Si04)及びエンスタタイト(頑火輝石)(MgSi03)を生成する。
【0034】
【化3】

【0035】
急速加熱処理は、含水性の出発鉱物の大部分(少なくとも50wt%又は少なくとも75wt%)を無水形態に変質させるために、平均初期温度から平均最終温度まで出発鉱物を加熱することを含む。平均初期温度は、室温若しくは周囲温度、又はそれより高い温度でよい。平均最終温度は、例えば、少なくとも約600℃、少なくとも約700℃、少なくとも約800℃、少なくとも約900℃又は少なくとも約1000℃でよい。ある例としては、最大平均最終温度は約1100℃でよい。
【0036】
ある実施形態では、平均初期温度から平均最終温度までの温度変化は急速に起きる。本願明細書において、温度変化が達成すべき速度(変化量)は、「平均加熱瞬間速度」と呼ばれ、その「平均加熱瞬間速度」は、平均最終温度から平均初期温度までの温度変化を、その起こった温度変化に対する時間で割った値で示される。ある例において、平均加熱瞬間速度は少なくとも約1000℃/秒、少なくとも約5000℃/秒又は少なくとも約10,000℃/秒である。加熱速度は、例えば、蛇紋石(サーペンティン)鉱物がもたらす形態、加熱方法、用いられる装置又はそれらの任意の組み合わせで決まる。
【0037】
急速加熱処理は様々な方法で達成されてよい。出発鉱物は、火炎を用いて直接的に加熱されてよい。この場合において、必要な加熱瞬間速度は、出発鉱物を火炎内又は火炎領域内に提供することによって達成されてよい。また、実際的に火炎内ではないが、火炎に近接的に出発鉱物を用意することによって、適切な加熱瞬間速度を達成することも可能である。そのような条件は「火炎状態」と呼ばれる。火炎状態は、火炎を生み出すために用いられる燃料、燃焼条件及び火炎の空間領域によって変化をする。この目的のために適切な可能性がある一般的な燃料の火炎状態は、例えば、燃料、燃焼環境、バーナーデザイン及び火炎の空間領域を含む要因に基づいて、600℃〜2000℃の範囲に及ぶことができる。この目的のために適切な可能性がある燃料は、例えば、天然ガス、メタン、エタン、プロパン及びブタンのような一般的な燃料ガス、例えば粉炭のような固体燃料、又は例えばファーネス油ような液体炭化水素燃料を含む。
【0038】
また、プラズマ又は電気アークを用いて適切に高い加熱速度を達成することも可能である。これらの加熱方法は、加熱速度の改良された制御を提供することができる。大規模な実施に対して、加熱方法は、大処理量、フラッシュヒーティング、粉々にした粒子の焼結、又はそれらの任意の組み合わせを可能とするように選択されてよい。その方法は、下記に示すようなパワープラントからの放出による炭酸化のための典型的なプロセス条件に合わせてよい。
【0039】
【表1】

【0040】
加熱炉又はか焼炉は、本明細書で述べられているように、好ましい平均加熱瞬間速度と、平均加熱速度と、好ましい平均最終温度とを達成するために設計されてよい。例えば、ガス燃焼流動化床のか焼炉のようなか焼炉は適切である。一旦、平均最終温度が達成されると、その平均最終温度は長期間維持されてよく、好ましい組成上の変換及び構造上の変換が達成されることを保証する。用いられる全体的な加熱処理はこのことを考慮することによって特長付けられる。このように、「平均加熱速度」の用語は、平均最終温度から平均初期温度までの温度変化を、全体的な加熱継続時間で割った値を示すために用いられる。1つの例において、含水鉱物の所定量が急速に25℃〜1000℃まで加熱されて、その後、全加熱継続時間である10秒間(出発鉱物の大部分が無水鉱物に変換される時間)、1000℃で維持されるならば、平均加熱速度は97.5℃/秒である。
【0041】
ある例として、平均加熱瞬間速度及び平均加熱速度は同一か、又は実質的に同一でよい。また、ある例として、平均加熱瞬間速度は平均加熱速度よりも大きくてよい。1つの例において、含水出発鉱物の所定量が25℃の平均初期温度から1000℃の平均最終温度まで0.1秒で加熱されて、その後、全加熱継続時間である10秒間、1000℃で維持されるならば、加熱瞬間速度は約9750℃/秒であるが、一方で平均加熱速度は約97.5℃/秒である。もう1つの例においては、含水鉱物の所定量が25℃から1000℃まで0.05秒で加熱されて、その後、全加熱継続時間である10秒間、1000℃で維持されるならば、加熱瞬間速度は約19500℃/秒であるが、一方で平均加熱速度は約97.5℃/秒である。ある例として、好ましい鉱物変換を達成するために、比較的低い平均加熱瞬間速度と比較的高い最終温度とを組み合わせてもよく、又はその逆でも同様によい。
【0042】
含水出発鉱物の大部分を無水形態に変換する時間の全体の長さは、例えば、粒子サイズ、初期温度、最終温度、平均加熱速度、平均加熱瞬間速度、含水鉱物の水/ヒドロキシル含有量等で従って変化する可能性がある。少なくとも約5000℃/秒の平均加熱瞬間速度に対して、含水出発鉱物の大部分を無水形態に変換する時間の長さは、約10分未満、約5分未満、約4分未満、約3分未満、約2分未満、又は約1分未満でよい。ある例としては、含水出発鉱物の大部分を無水形態に変換するために必要とされる時間の長さは更に少ない時間でもよい。例えば、平均加熱瞬間速度が高速である状態(例えば、5000℃/秒超の状態)の場合、時間は、約30秒未満、約20秒未満又は約10秒未満でよい。平均加熱瞬間速度が大きい場合、例えば10,000℃/秒超である場合、時間は、約0.5秒未満、約0.25秒未満又は約0.1秒未満でよい。
【0043】
加熱されるべき出発鉱物は微粒子形態でもよい。破砕すること又は粉砕することを用いて、使用に適した出発鉱物原料を得ることができる。平均粒子サイズ分布は、約38μm、約75μm、約150μm、又は約200μmを中心にしてよい。ある例として、平均粒子サイズは約500μm未満、約200μm未満又は約100μm未満である。また、ある例としては、平均粒子サイズは、約10μm〜約100μm、約100μm〜約200μm、又は約200μm〜約500μmでよい。
【0044】
本明細書で述べるように、マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物を、熱ショックをすることによって形成された活性化原料は二酸化炭素と接触させてよい。二酸化炭素を固定するための方法は、マグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の含水鉱物を、急速加熱をすることによって活性化原料を形成すること、活性化原料を含む懸濁液又は溶液を形成すること、及び懸濁液又は溶液を二酸化炭素に接触させることを含む。熱的にショックを受けた(フラッシュ処理された)鉱物サンプルは、炭酸化の標準的な水性条件(T=185℃、Pco2=2300psi)(O'Connorらの鉱物の直接炭酸化による二酸化炭素固定:材料及び生産物のプロセス鉱物学、Minerals&メタllurgical processing 19:95-101(2002)を参照)を下回る条件である、T= 130℃及びPco2 =2300psiで二酸化炭素と反応させる。このように、フラッシュ処理(例えば、少なくとも約100℃/秒の平均加熱瞬間速度で加熱すること)は、C02の鉱物固定のための鉱物のプレ処理のオプションを表す。いくつかの実施形態において、出発鉱物の熱ショックは、二酸化炭素雰囲気下(例えば、湿潤C02+H20のガス環境)で実行されて、次なる二酸化炭素の炭酸化反応で炭酸塩の核生成を促進する。
【0045】
活性化原料の反応性は、減衰全反射(ATR)の赤外分光法に基づいて評価されてよい。この方法は、複数のサンプルに対して、時間がかかるバッチオートクレーブ又は高価な現場シンクロトロン研究の必要性を取り除く。
【0046】
図1(McKelvyらのEnviron. Sci. Tech. 38, 6897 (2004)による、データ)は、ゆっくりとした焙焼処理(脱ヒドロキシル化)における蛇紋石(サーペンティン)の鉱物の質量及び温度の変化を示す。プロット100は、約2℃/minの速度でサンプルを加熱することを示す。プロット102は、加熱の初期段階のサンプルの小さな質量損失を示し、そして開始近くの小さな段は水の脱離による。13質量%の質量損失は、(水の発生を経由して)蛇紋石(サーペンティン)の鉱物の完全な脱ヒドロキシル化を表し、結果的に無水鉱物を形成する。中間的な質量損失(すなわち、0質量%〜13質量%)は、メタ-蛇紋石(サーペンティン)鉱物の存在を示す。脱ヒドロキシル化は350℃で始まり、第1の質量損失段階の開始が証拠となり、それに関連する吸熱106はプロット104で見られる。更に高温の状態で、脱ヒドロキシル化がほとんど完了するとき、速度は遅くなり、残りのヒドロキシル基の損失が継続し、その後、782℃で強い発熱108となる。そのことは、等量のフォルステライト(苦土かんらん石)(Mg2Si04)とエンスタタイト(MgSi03)とから成るアマルガムの縮合を示す。
【0047】
図2(McKelvyらのEnviron. Sci. Tech. 38, 6897 (2004)によるデータ)は、リザーダイト原料(Mg3Si205(OH)4)の加熱中に取り除かれるヒドロキシルの質量パーセントの関数として、X線回折スペクトルを示す。メタ-リザーダイトサンプルは、20℃〜1100℃の範囲で、2℃/分で加熱をすることによって生産され、その後、急速に冷却して、T活性化によって示される各々の温度で好ましい材料を単離した。TGA/DTA分析は、SetaramTG92の熱分析システム(Setaram Instrumentation, Caluire, France)を用いて、ヘリウム下で実行された。生産されたメタ-蛇紋石(サーペンティン)材料の残りの水酸化物組成物は、質量損失によって決定された。粉末X線回折パターンは、CuKR放射線を備えるRigaku D/MAX-IIBのX線回折計(Rigaku Americas Corporation, The Woodlands, TX)を用いて、各々の結果物の材料に対して得られた。このように、20℃のT活性化に関しては、ヒドロキシル基がリザーダイト原料から取り除かれるない(100質量%のヒドロキシル 基が残存している。)。そして、X線回折スペクトルはリザーダイトの特性を示す。1100℃のT活性化に関しては、100質量%のリザーダイトのヒドロキシル基が取り除かれて無水鉱物を形成する。550℃〜795℃のT活性化に関しては、それぞれ対応する74質量%〜1質量%のヒドロキシル基が残存し、X線回折パターンは、リザーダイトによる特徴部200が徐々に減少していることを示す。そして、15の2θ〜40の2θの「非晶性」相によるブロードな特徴部202は徐々に増加していることが図2に見られる。蛇紋石(サーペンティン)のα相として示される、追加的な特徴部204は、20℃のT活性化から600℃超のT活性化まで増大し、そして、減少し始める。結晶性の特徴部206は、1100℃のT活性化を有するサンプルに対して観察される。610℃〜750℃のT活性化に対して、C02の強い反応性が様々なメタ-リザーダイトサンプルによって示されて、そのことは、100℃〜125℃の温度範囲であって、かつ、Pco2〜2300psiである、標準的な水溶液(1MNaCl+0.64MNaHC03)のメタ-リザーダイトサンプルの反応によって推定される。図2で見られるように、これらのサンプルは、4-17%の残存の水酸化物を含有する。適度に反応性があるサンプルは、580℃のT活性化で(反応温度120℃)形成されて、さらに、反応性がないサンプルは、20℃のT活性化で(反応温度120℃)形成される。
【0048】
図3(McKelvyらのEnviron. Sci. Tech. 38, 6897 (2004)によるデータ)は、非晶性相の特徴部202の上部に結晶性の特徴部206が重なり合っていることを示し、そして、更に詳細にα-相204の存在も示す。また、空気散乱も図3で観察される。図4(McKelvyらのEnviron. Sci. Tech. 38, 6897 (2004)によるデータ)は、残存のヒドロキシル含有量(例えば、%OH)の関数として、図2で示された、リザーダイト、様々なメタ-蛇紋石(サーペンティン)及び無水鉱物の相比率を示す。プロット400は、脱ヒドロキシル化が進行するほど非晶性相が増加することを示す。プロット402は、脱ヒドロキシル化が進行するほど結晶性リザーダイトの含有量が減少することを示す。プロット404は、脱ヒドロキシル化が進行するほど、α-相の増加、その後の減少を示す。纏めると、図2及び図4のデータは、「焙焼された」リザーダイトの反応性の程度は、脱ヒドロキシル化中に放出されるα-相の量と相関性があることを示す。
【0049】
ある実施形態において、酸化マグネシウム及びマグネシウム シリケート(ケイ酸塩)以外の金属酸化物 (本明細書においては、金属酸化物と見なす。)は、二酸化炭素との反応前に活性化原料から分離される。酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)以外の金属酸化物の分離は活性化後に実行されて、酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)中により豊富である残存の活性化原料ストリームを生産し、二酸化炭素との反応前に他の金属酸化物の量を減少させる。そのような他の金属酸化物の除去は、実質的に下流プロセスの必要性を軽減する。この方法で除去され得る金属酸化物は、鉄、ケイ素、アルミニウム、マンガン、クロム、ニッケル、チタン、銅、カリウム、リン、カルシウム及びナトリウムの1種以上の酸化物を含む。例えば、ケイ素及びアルミニウムの酸化物のような商業的な価値が低い酸化物、又は例えば、カリウム、リン及びナトリウムの酸化物のような商業的価値があるほどに不充分な量でしか存在しない酸化物は廃棄物処理のプロセスから取り出してよい。また、原料に含まれる充分な商業的価値がある金属酸化物は、急速な熱活性化の後に分離したストリームから回収してよい。そのような鉱物は、鉄、クロム、ニッケル及びマンガンの酸化物を含んでよい。.
【0050】
このように、熱活性化の後のシリカ及び他の金属酸化物を分離することは、下流プロセスの必要性とコストとを軽減し、一方で有益な金属酸化物の回収は収益源を提供する。したがって、その全体的な方法は、他の二酸化炭素の固定法と更に経済的に競合する。
【0051】
急速な熱活性化の後に、少なくとも実質的に酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)を除去する金属酸化物の分離は、様々な分離手段によって達成されてよい。その分離手段は、例えば、密度又は重力分離、遠心分離、浮遊選鉱、ろ過、磁気分離、静電分離、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。別の密度分離技術としては、スパイラル、干渉沈降容器、サイクロン、液体遠心分離機及びそれらの任意の組み合わせを用いた方法が含まれる。密度分離及び磁気分離を組み合わせたものが有益であり、例えば、特には鉄鉱石を回収して濃縮することに対して有益である。
【0052】
当該技術分野の当業者であれば、そのような分離方法はそれに伴う分離効率性を有することを理解することができるが、常に不完全な分離という結果となり、そして、一方に分離されたストリームに分離すべき成分のある部分が繰り越しになるという結果となる。例えば、残りの活性化原料ストリームから分離すべきある割合の金属酸化物が、常に残りの活性化原料ストリームに繰り越されるという場合があり、そして逆も起こり得る場合がある。それ故に、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)のある割合は、分離された金属酸化物ストリームには存在しない。ところが、目的は、酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の大部分を残りの活性化原料ストリームに実質的に保持することである。ここで、少なくとも実質的に酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)を取り除いた金属酸化物は、急速な熱活性化の後に残りの活性化原料から分離される。本明細書で述べられているように、「少なくとも実質的に酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)を除いた」は、急速な熱活性化の後に、活性化原料に最初に存在していた酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の全部のうち、少なくとも50%を取り除くことを表す。このように、少なくとも50%の酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)が、残りの活性化原料ストリームに保持される。ある場合においては、酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の更に高い割合が、残りの活性原料ストリームに保持される(例えば、少なくとも75質量%)。
【0053】
密度分離法の使用によって、経済的価値が低い金属酸化物を低密度スリームに分離させてもよく、一方では、経済的価値が高い金属酸化物を高密度ストリームに分離させてもよい。最初に存在している酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート(ケイ酸塩)の大部分を含有する残りの活性化原料ストリームは、炭酸マグネシウムに変換するその後のプロセスに対して、中間的な密度のストリームを形成する。
【0054】
その後、残りの活性化原料は二酸化炭素と接触して炭酸マグネシウムを形成する。ある場合において、残りの活性化原料は、超臨界であるか、液状であるか、又は高圧ガス状である二酸化炭素と接触して、全ての二酸化炭素を過剰の原料と実質的に反応させることによって炭酸マグネシウムを形成する。本明細書で用いられている、用語「高圧」は、5bar超の圧力を表す(例えば、50bar超)。
【実施例】
【0055】
次の限定的でない実施例は、本発明を説明するために提供される。
【0056】
実施例1
図5は実験装置500の略図を示し、その実験装置は、リザーダイトサンプルが急速な熱処理を受けるために用いられる。38μmの平均粒子サイズを有する、20のリザーダイトサンプルは、制御されたシングルゾーンの高温チューブの加熱炉502(Lindberg Model HTF55122A; Lindberg/MPH, Riverside, MI)で、高温で急速な熱処理を受けて、「フラッシュ」処理されたメタ−リザーダイト得た。サンプルを白金サンプルボート506でチューブ504に通して加熱炉に導入した。磁気ヨーク508はホットゾーンからサンプル材料を挿入して抽出するために用いられ、そのホットゾーンは1000℃〜1100℃に保たれた。ガスフロー制御装置とバブラー510とをチューブ加熱炉502と連結させた。サンプルを素早く挿入して(例えば、0.3秒〜0.5秒)、2000℃/秒〜3,300℃/秒の平均加熱瞬間速度(dT/dt)を用意し、その後、1〜160秒の範囲の様々な時間の間、内部のチューブ加熱炉温度に保った。
【0057】
サンプルの照射時間は以下である。
シリーズA:1秒、2秒、3秒、5秒、10秒、20秒、30秒
シリーズB:40秒、80秒、160秒
シリーズC:10秒、12秒、14秒、16秒、18秒、20秒
シリーズD:10秒、11秒、12秒、13秒
【0058】
熱処理後、SIEMENS XRD(SIEMENS USA)分光計にサンプルをセットして、粉末X線回折実験を実行し、約2時間、サンプル毎にスキャンをした。
【0059】
図6は、照射時間が、それぞれ10秒、12秒、14秒、16秒、18秒、20秒、30秒及び40秒であるサンプルのX線回折スペクトル600、602、604、606、608、610、612及び614を示す。プロット600は、照射時間が10秒であるサンプルのデータを示し、リザーダイトの特性を示す。プロット614は、照射時間が40秒であるサンプルのデータを示し、フォルステライト(苦土かんらん石)の特性を示す。このように、無水鉱物を形成するためのリザーダイトの脱ヒドロキシル化は、少なくとも1000℃の最終温度又はピーク温度で、1分未満で起こることが示される。
【0060】
少なくとも40秒の照射時間のサンプルの急速な熱処理は、エンスタタイトの生成を示さなかった。図7に示されるように、非フォルステライト(苦土かんらん石)生成物は非晶性相であるか、又は、Mg3Si207の化学式を有する「準安定性の」ランキナイト(Ca3Si207)の類似物質であると考えられる。図8のプロット800は、160秒間で1000℃まで照射されたサンプルのX線回折スペクトルを示す。プロット802は、密度汎関数理論(DFT)シミュレーションから得られる平行構造に基づいて提案されたランキナイト類似物質の相の計算スペクトルであり、考えられる非フォルステライト特徴の元々の特性を示す。
【0061】
フラッシュ処理されたメタ−リザーダイトサンプルのSEM特性評価を、FEISL30の高解像度環境制御型走査電子顕微鏡(FEI Company, Hillsboro OR)を利用して実行され、その顕微鏡は非導電材料に対してサブミクロンスケールまでルーチン的にスキャニングすることができる。SEM像は、高温(1000℃)で、長期間の照射(例えば、40秒)を受けた粒子の凝集体を示す。SEM像の例示は図9〜12に示される。図9は12秒の照射時間のサンプルの100X、500X及び1.200XのSEM像を示す。図10は12秒の照射時間のサンプルの3,500X、10,000X及び35,000X のSEM像を示す。図11は40秒の照射時間のサンプルの100X、500X及び2,000XのSEM像を示す。図12は40秒の照射時間のサンプルの6,500X、12,000X及び35,000XのSEM像を示す。また、図12は、サブミクロンスケールで形態学的特徴が存在していることをしめし、そして、その特徴はおそらく、脱ヒドロキシル化の間の水の発生と流れとに関連している。
【0062】
実施例2
リザーダイト鉱物を、平均粒子サイズが38μmになるまで粉砕し、生成物は強力粉のちょう度を有する灰色がかっている緑色の生成物を得た。リザーダイト粒子を、放射状の加熱炉で、約5000℃/秒の平均加熱瞬間速度で、12秒間1000℃までフラッシュ処理をして、そして、熱重量分析によって裏づけされるように、茶系の無水粉末を得た。処理されたサンプルのX線分析は、急速な脱ヒドロキシル化は鉱物の格子をリザーダイト(Mg3Si205(OH)4)の格子からかんらん石 (Mg2Si04)の格子に変換させることを示した。
【0063】
図13は、実施例2で述べたように調製された、未反応であるか、又は反応したフラッシュ処理されたリザーダイトによる、低解像度のX線データ及び高解像度のシンクロトロンデータを示す。プロット1300は、未反応であるフラッシュ処理されたリザーダイトによる低解像度のX線データを示す。プロット1302(実線)は、未反応であるフラッシュ処理されたリザーダイトによる高解像度のX線データを示す。プロット1304(ドット線)は、超臨界C02(Pco2=2300 psi)であって、かつ、高温(T=100℃)である未反応である「標準」水溶液のフラッシュ処理されたリザーダイトによる高解像度のX線データを示し、そのデータは、反応条件を確立した直後にシンクロトロンによって導き出された。ピーク1306はMgC03の存在を示し、MgC03は、フラッシュ処理されたリザーダイト(例えば、かんらん石)によるC02の固定から生じる。そして、ピーク1306は、炭酸化(すなわち、C02の固体の鉱物炭酸塩への変換)が起こったことを示す。
【0064】
様々な実施形態が述べられた。それにもかかわらず、様々な変更形態、改良形態及び他の実施形態が、この開示で述べられたもの及び例示されたものに基づいて生産されることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物炭酸化による二酸化炭素の固定に関する、含水マグネシウムシリケートの活性度を増大させる方法であって、該方法が該含水マグネシウムシリケートを急速に加熱する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記含水マグネシウムシリケートを急速に加熱する工程が、所定量の含水マグネシウムシリケートの粒子を火炎状態で加熱して、該粒子を実質的に脱ヒドロキシル化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定量の前記含水マグネシウムシリケートの前記粒子を前記加熱することが、
10秒未満で少なくとも400℃の周囲温度の上昇の影響を粒子が受けるために前記火炎状態の外側から前記火炎状態の中まで粒子を移動させることと、
10分未満の間、平均ピークの粒子温度まで前記火炎状態の中で前記粒子を加熱して組成物を得ることと、
前記火炎状態から該組成物を取り除くことと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子が、1秒未満で少なくとも400℃の周囲温度の上昇の影響を受けて、前記粒子が、2分未満の間、平均ピークの粒子温度まで前記火炎状態の中で加熱されて、前記組成物を得る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱することによって、前記含水マグネシウムシリケートに関する前記平均ピークの前記粒子の温度が少なくとも600℃の目標を達成する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱することが、炭化水素質燃料の燃焼の加熱炉、か焼炉若しくは流動化床のか焼炉、又はプラズマ若しくは電気アークで起こる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物がフォルステライトを含む、請求項3から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
二酸化炭素を固定するための方法であって、該方法が、
含水マグネシウムシリケートを急速に加熱することによって活性化原料を生成する工程と、
該活性化原料を二酸化炭素に接触させて炭酸マグネシウムを生成する工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
前記含水マグネシウムシリケートを急速に加熱する工程が、所定量の前記含水マグネシウムシリケートの粒子を火炎状態で加熱して、該粒子を実質的に脱ヒドロキシル化することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定量の前記含水マグネシウムシリケートの前記粒子を前記加熱することが、
10秒未満で少なくとも400℃の周囲温度の上昇の影響を粒子が受けるために前記火炎状態の外側から前記火炎状態の中まで粒子を移動させることと、
10分未満の間、平均ピークの粒子温度まで前記火炎状態の中で前記粒子を加熱して前記活性化原料を得ることと、
前記火炎状態から前記活性化原料を取り除くことと、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子が、1秒未満で少なくとも400℃の周囲温度の上昇の影響を受けて、前記粒子が、2分未満の間、平均ピークの粒子温度まで前記火炎状態の中で加熱されて、前記活性化原料を得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱することによって、前記含水マグネシウムシリケートに関する前記平均ピークの温度が少なくとも600℃の目標を達成する、請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱することが、炭化水素質燃料の燃焼の加熱炉、か焼炉若しくは流動化床のか焼炉、又はプラズマ若しくは電気アークで起こる、請求項8から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記活性化原料がフォルステライトを含む、請求項8から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記活性化原料を前記二酸化炭素に接触させる前記工程前の所定の時間にわたって、前記活性化原料を冷却させることを更に含む、請求項8から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化原料が冷却されている少なくとも一部の時間の間、湿潤のガス状の二酸化炭素に前記活性化原料を曝露させることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
溶媒と活性化原料とを組み合わせて、懸濁液、スラリー又は溶液を形成することを更に含む、請求項8から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒が水であり、かつ、前記懸濁液、前記スラリー又は前記溶液が水性である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケート以外の金属酸化物を分離して、前記活性化原料よりも酸化マグネシウム及びマグネシウムシリケートが豊富である残りの活性化原料を生成することと、
所定の時間にわたって、該残りの活性化原料を冷却することと、
該残りの活性化原料を二酸化炭素に接触させて炭酸マグネシウムを生成することと、
を更に含む、請求項8から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記残りの活性化原料が冷却されている少なくとも一部の時間の間、湿潤のガス状の二酸化炭素に前記残りの活性化原料を曝露させることを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
溶媒と前記活性化原料又は前記残りの活性化原料とを組み合わせて、懸濁液、スラリー又は溶液を形成することを更に含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒が水であり、かつ、前記懸濁液、前記スラリー又は前記溶液が水性である、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−505124(P2013−505124A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529904(P2012−529904)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/049152
【国際公開番号】WO2011/035047
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507243142)アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・フォー・アンド・オン・ビハーフ・オブ・アリゾナ・ステイト・ユニバーシティー (5)
【出願人】(511052004)オリカ エクスプロージブズ テクノロジー プロプライアタリー リミティド (2)
【Fターム(参考)】