説明

含硫ポリイソシアナート化合物

【課題】
高屈折率樹脂の材料となる新規な1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート化合物を供給すること
【解決手段】
式(1)


(式中、nは0から3の整数を示す。)で示されるポリイソシアナート化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含硫ポリイソシアナート化合物と新規な含硫ポリイソシアナート化合物の重合物および重合物からなる光学製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。
プラスチックレンズ用樹脂には、さらなる高性能化が要求されてきており、例えば高屈折率化、高アッベ数化、低比重化、高耐熱性化等が求められてきた。これまでにも様々なレンズ用樹脂素材が開発され使用されている。
その中でも、ポリウレタン系樹脂に関する提案が盛んに行われている(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3)。
これらのポリチオールとポリイソ(チオ)シアナート化合物等とを反応させて得られる樹脂は、高屈折率低分散であり、衝撃性、染色性、加工性等に優れたプラスチックレンズに最適な樹脂の一つであり広く世の中に普及している。
【0003】
上記に示すようなポリチオールとポリイソ(チオ)シアナート化合物の更なる改良の方向性として、樹脂組成物中の高屈折率な原子である硫黄の含量を増加させ、さらに高屈折率の樹脂を得ようとする試みがなされている。例えば、高硫黄含量のポリイソ(チオ)シアナート化合物として、1,3−ジチオラン骨格を有するポリイソシアナート化合物とポリチオール化合物との重合により、定分散かつ高屈折率な優れた樹脂が得られることが知られている(特許文献4、特許文献5)。このような試みの中で、1,3−ジチオラン骨格と同様に硫黄含量の高い骨格である1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート化合物についてはこれまで報告例はなかった
【特許文献1】特開平2−270859号公報
【特許文献2】特開平5−208950号公報
【特許文献3】特開平7−252207号公報
【特許文献4】特開平5−105677号公報
【特許文献5】特開平9−71631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来合成されることの無かった1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート化合物の合成法を開発して、高屈折率樹脂の材料となる新規な1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート化合物を供給する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題について鋭意検討を行った結果、任意の置換基を導入した環化前駆体からトリチアン骨格構築法とそれらのポリイソシアネート化合物へ変換法を開発し、新規な1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート化合物の合成に成功した。
すなわち、本発明は、
[1]
式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、nは0から3の整数を示す。)で示されるポリイソシアナート化合物;
[2]
式(2)
【0008】
【化2】

【0009】
で示される[1] 記載のポリイソシアナート化合物;
[3]
式(3)
【0010】
【化3】

【0011】
[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基を示す。]をホスゲンと反応させることを特徴とする、式(1)のポリイソシアナート化合物の製造方法;
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、nは0から3の整数を示す。)
[4]
式(3)
【0014】
【化5】

【0015】
[式中、nは0から3の整数を示す。Rは−NHCO2(Rは炭素数1から4のアルキル基を示す)を示す。]を、塩基およびシリルハライドの存在下に分解反応させることを特徴とする式(1)のポリイソシアナート化合物の製造方法;
【0016】
【化6】

【0017】
(式中、nは0から3の整数を示す。)
[5]
式(3)
【0018】
【化7】

【0019】
[式中、nは0から3の整数を示す。Rは−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示す。]
をクルチウス転位反応、ホフマン転位反応またはロッセン転位反応させることを特徴とする、式(1)のポリイソシアナート化合物の製造方法;
【0020】
【化8】

【0021】
[6]
式(3)
【0022】
【化9】

【0023】
[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基、−NHCO2、−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示す。]で示される化合物;
[7]
式(4)
【0024】
【化10】

【0025】
で示される[6]に記載の化合物;
[8]
式(5)
【0026】
【化11】

【0027】
[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基、−NHCO2、−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示し、R’は、−OR(Rは前記と同義)を示す。]で示される化合物から製造される式(3)の化合物の製造方法;
【0028】
【化12】

【0029】
[式中、n、Rは前記と同義。]
[9]
式(5)
【0030】
【化13】

【0031】
[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基、−NHCO2、−CO、COR(R1は炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示し、R’は、−OR(Rは前記と同義)を示す。]で示される化合物;
[10]
式(6)
【0032】
【化14】

【0033】
で示される[9]に記載の化合物;
[11]
式(5)
【0034】
【化15】

【0035】
[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基、−NHCO2、−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示し、R’は、−OR(Rは前記と同義)を示す。]で示される化合物から式(3)の化合物を経て製造される式(1)のポリイソシアナート化合物の製造方法;
【0036】
【化16】

【0037】
[式中、n、Rは前記と同義。]
【0038】
【化17】

【0039】
[式中、nは前記と同義。]
[12]
[1]または[2]記載のポリイソシアナート化合物の少なくとも1つを構成モノマーとする重合性組成物;
[13]
[12]記載の重合性組成物を重合して得られる光学製品;
である。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、高屈折率樹脂の材料となる新規な1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート化合物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に本発明を説明する。本発明は新規な1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート化合物およびその中間体と重合物および重合物からなる光学製品に関する。
【0042】
本発明の新規な1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート化合物は、
式(1)
【0043】
【化18】

【0044】
(式中、nは0から3の整数を示す。)で示されるポリイソシアナート化合物、または
式(2)
【0045】
【化19】

【0046】
で示されるポリイソシアナート化合物である。
上記の1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート化合物は、式(3)
【0047】
【化20】

【0048】
[式中、nは前記と同義。Rはアミノ基、−NHCO2、−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示す。]で示される中間体から得られる。
【0049】
例えば、中間体が、カルバミン酸エステル[式(3)でR=−NHCO2]の場合は、塩基存在下にシリルハライドと反応させることによりイソシアナートに誘導することができる[例えば、Angew.Chem.Int.Ed.,7(12),941(1968),Journal of the Organic Chemistry,63(23),8515(1998)に記載の方法を参考にすることができる]。
【0050】
中間体が、カルボン酸エステル類[一般式(3)でR=−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す)]は、クルティウス転位、ホフマン転位、ロッセン転位などの転位反応によりイソシアナートに誘導することができる[例えば、日本化学会編(丸善),第4版実験化学講座20巻,473−483に記載の方法を参考にすることができる]。
【0051】
中間体が、アミン類の場合はホスゲンとの反応や遷移金属触媒存在下一酸化炭素との反応などによりイソシアナートに誘導することができる[例えば、日本化学会編(丸善),第4版実験化学講座20巻,473−483に記載の方法を参考にすることができる]。
【0052】
式(3)で示される中間体は、式(4)
【0053】
【化21】

【0054】
[式中、n、Rは前記と同義。R’は、−OR(Rは前記と同義)を示す。]で示される化合物を酸触媒存在下に硫化水素と反応させることにより得られる。酸触媒としては、通常は硫酸等の鉱酸や3弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体等のルイス酸が使用される。溶媒は特に限定はないが、通常クロロホルム等が好適に使用される。
【0055】
式(4)で示される化合物は、式(5)
【0056】
【化22】

【0057】
[式中、n、Rは前記と同義。R’は、−OR(Rは前記と同義)を示す。]で表されるモノチオアセタール化合物を、塩基存在下、ジブロモメタン等と反応させることにより得られる。この反応において塩基は特に制限はないが、通常ナトリウムメトキサイド等が用いられる。溶媒は特に限定はないが、通常メタノール等が使用される。
【0058】
前記式(5)のモノチオアセタール化合物は、式(6)
【0059】
【化23】

【0060】
[式中、n、Rは前記と同義。R’は、−OR(Rは前記と同義)を示す。]で示されるアセタール化合物を酸触媒存在下、チオ酢酸と反応させた後、さらに水酸化リチウム等のアルカリで加水分解することにより得ることができる。酸触媒は特に制限は無いが、四塩化チタンや塩化亜鉛等のルイス酸が使用される。溶媒は特に制限は無いが、クロロホルム等が用いられる。
【0061】
本発明の1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナートを構成モノマーとする重合性組成物は、
a)イソシアナート成分[式(1)の1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナートの少なくとも一つを構成モノマーとする]、
b)チオール成分およびc)添加剤成分
からなるものである。
【0062】
a)イソシアナート成分は、式(1)の1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナートの少なくとも1つに加えて、光学材料の物性を適宜改良する目的で、式(1)のポリイソシアナート以外のポリイソシアナートを含有しても良い。その場合、式(1)のポリイソシアナートの使用量は全ポリイソシアナート中、5%モル以上であり、好ましくは25%モル以上、さらに好ましくは50%モル以上である。
【0063】
式(1)の1,3,5−トリチアン骨格を有するポリイソシアナート以外のポリイソシアナートとしては、特に制限はないが、m−キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、 2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−2−メチル−1,3−ジチオラン等をあげることができる。
【0064】
b)チオール成分は、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メチルシクロヘキサン-2,3-ジチオール、1,1-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,2-ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−プロパンチオール等の脂肪族チオール化合物及び、
【0065】
2,3-ジメルカプトコハク酸(2-メルカプトエチルエステル)、チオリンゴ酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(2-メルカプトアセテート)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(3-メルカプトプロピオネート)、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールジ(2-メルカプトアセテート)、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールジ(3-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(2-メルカプトアセテート)、グリセリントリス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-シクロヘキサンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-シクロヘキサンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)等のエステル結合を含む脂肪族チオール化合物、
【0066】
1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリメルカプトベンゼン、1,2,4-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,3-ジ(p-メトキシフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、1,3-ジフェニルプロパン-2,2-ジチオール、フェニルメタン-1,1-ジチオール、2,4-ジ(p-メルカプトフェニル)ペンタン、1,4-ナフタレンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール、2,7-ナフタレンジチオール、2,4-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、4,5-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、9,10-アントラセンジメタンチオール、1,2,3,4-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,2´-ジメルカプトビフェニル、4,4´-ジメルカプトビフェニル、4,4´-ジメルカプトビベンジル、2,5-ジクロロベンゼン-1,3-ジチオール、1,3-ジ(p-クロロフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、3,4,5-トリブロム-1,2-ジメルカプトベンゼン、2,3,4,6-テトラクロル-1,5-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族チオール化合物及び、
【0067】
2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-エチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-モルホリノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-シクロヘキシルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-メトキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-フェノキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-チオベンゼンオキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-チオブチルオキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン等の複素環チオール化合物及び、それらのハロゲン置換化合物、
【0068】
1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロヘキサン、1,1,5,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3−チアペンタン、1,1,6,6−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3,4−ジチアヘキサン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、2−(4,5−ジメルカプト−2−チアペンチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,5−ビス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアブチル)−1,4−ジチアン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−プロパンジチオール、3−メルカプトメチルチオ−1,7−ジメルカプト−2,6−ジチアヘプタン、3,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3−メルカプトメチルチオ−1,6−ジメルカプト−2,5−ジチアヘキサン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、更にこれらのオリゴマー等のジチオアセタールもしくはジチオケタール骨格を有する化合物(ポリチオールに限らない。)等を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0069】
さらにこれらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体を使用しても良い。これらチオール化合物は単独でも、2種類以上を混合しても使用することができる。
【0070】
c)添加剤成分としては、重合反応促進のための重合触媒、耐光性改良のための紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、蛍光染料、光安定剤、内部離型剤等の添加剤を必要に応じて適宜加えても良い。
本発明で得られる重合組成物は、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料用途のほか、ウレタン樹脂として塗料、接着剤としても好適である。
【実施例】
【0071】

(実施例1)
[2−メトキシ−2−(1−メトキシ−2−メトキシカルボニルアミノ−エチルスルファニルメチルスルファニル)−エチル]カルバミン酸メチルの製造
1−1. 2−アセチルチオ−2−メトキシエチルカルバミン酸メチル()の製造
【0072】
【化24】

【0073】
1)カルバモイル化
アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(;市販品:50g)のメタノール(350g)溶液へ、炭酸水素ナトリウム(100g)を装入後、冷却下(5℃)クロロギ酸メチル(90g)をゆっくり滴下装入した。同じ温度で4時間、室温でさらに24時間攪拌した。無機塩をろ過で除去した後、減圧濃縮した。濃縮物に水および酢酸エチルを加え抽出を行った。得られた有機層を水洗し、次に硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濃縮して油状の2,2,−ジメトキシエチルカルバミン酸メチル(83g)を得た。これ以上の精製は行わず次工程にそのまま用いた。
H−NMR(CDCl3):3.2−3.3(2H,m),3.40(6H,s),3.68(3H,s),4.37(1H,t,J=5.4Hz),4.90(1H,br.s).
2)チオアセチル化
2,2,−ジメトキシエチルカルバミン酸メチル(10.2g)のクロロホルム(50ml)溶液にチオ酢酸(15g)を装入した。これに、冷却下(−20℃)4塩化チタン(1.8g)を滴下装入した。室温に戻した後さらに24時間攪拌した。反応液に氷片を加えてしばらく攪拌した後、クロロホルムと水を加え抽出を行った。有機層を水洗し、次に硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧濃縮して油状物を得た。これをシリカゲルカラム(酢酸エチル−ヘキサンステップワイズで溶出)で精製を行い、2−アセチルチオ−2−メトキシエチルカルバミン酸メチル(13.7g)を得た(収率52%)。
H−NMR(CDCl3):2.39(3H,s),3.37(3H,s),3.5−3.6(2H,m),3.69(3H,s),5.08(1H,br.s),5.3(1H,m).
1−2. 2−メルカプト−2−メトキシエチルカルバミン酸メチル()の製造
【0074】
【化25】

【0075】
2−アセチルチオ−2−メトキシエチルカルバミン酸メチル(62g)のメタノール(500ml)溶液に、冷却下(−20℃)水酸化リチウム1水和物(13.7g)を徐々に装入した。同温度で2時間反応後、減圧濃縮して油状物を得た。これに水、酢酸エチルを加えた後、氷冷下塩酸で中和を行った。有機層を水洗、乾燥(硫酸マグネシウム)後、減圧濃縮して油状物(57g)を得た。これ以上の精製は行わず、次の工程に用いた。
H−NMR(CDCl3):1.74(1H,d,J=8.8Hz),3.4−3.5(1H,m),3.43(3H,s),3.6−3.7(1H,m),3.69(3H,s),4.52(1H,m),5.17(1H,br.s).
1−3. [2−メトキシ−2−(1−メトキシ−2−メトキシカルボニルアミノ−エチルスルファニルメチルスルファニル)−エチル]カルバミン酸メチル(
【0076】
【化26】

【0077】
2−メルカプト−2−メトキシエチルカルバミン酸メチル(49g)、ジブロモメタン(72g)、メタノール(400ml)の混合物へ、冷却下(3℃)28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液を滴下装入した。徐々に室温まで昇温した後、24時間攪拌した。反応液を濃縮後、水、酢酸エチルを加え抽出を行った。有機層を水洗、乾燥(硫酸マグネシウム)後、減圧濃縮して油状物を得た。これをシリカゲルカラム(ヘキサン−酢酸エチルステップワイズで溶出)で精製を行い、油状の目的物(25g、収率49%)を得た。
H−NMR(CDCl3):δ3.44(6H,s),3.5−3.6(4H,m),3.69(6H,s),3.72(2H,s),4.55(2H,m),5.25(2H,br.s).
FAB−MS(positive,matrix:m−nitrobenzylalcohol):m/z343(MH).
(実施例2)
2,4−ビスメトキシカルボニルメチル−1,3,5−トリチアンの製造
【0078】
【化27】

【0079】
化合物(10g)のクロロホルム溶液(200ml)へ冷却下(−10℃)3フッ化ホウ素エチルエーテル錯体(10g)のクロロホルム溶液を滴下装入した。これに硫化水素ガス吹き込みを開始し2時間かけて室温まで昇温した。硫化水素の吹き込み終了後さらに室温で2時間攪拌した。氷片を装入後に分液を行った。有機層をさらに水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥した。これをろ過、濃縮後にメタノールを装入して晶析を行った。析出した固体をろ集して目的物2,4−ビスメトキシカルボニルメチル−1,3,5−トリチアン(2.2g,収率24%)を得た。
H−NMR(DMSO−d):δ3.2−3.3(4H,m),3.56(6H,s),4.19(1H,d,J=14Hz),4.43(1H,d,J=14Hz),4.55(2H,t,J=6.8Hz),7.51(2H,t).
FAB−MS(positive,matrix:m−nitrobenzylalcohol):m/z313(MH).
(実施例3)
2,4−ビスイソシアナトメチル−1,3,5−トリチアンの製造
【0080】
【化28】

【0081】
2,4−ビスメトキシカルボニルメチル−1,3,5−トリチアン(1g)にトルエン(40ml)、トリエチルアミン(1.3g)、クロロトリメチルシラン(1.9g)を順次装入し、窒素雰囲気下70℃にて10時間反応した。冷却後に副生したトリエチルアミン塩酸塩をろ過で除去してから、ろ液を減圧濃縮して油状物を得た。これを−20℃に冷却して析出した固体をヘキサンで洗浄して、粉末状固体の目的物2,4−ビスイソシアナトメチル−1,3,5−トリチアン(0.76g,収率96%)を得た。
H−NMR(CDCl3):δ3.72(4H,d,J=6.4Hz),4.21(1H,d,J=14Hz),4.31(1H,15Hz),4.45(2H,t,J=6.2Hz).
EI−MS(positive):m/z248(M).
IR(KBr):2283cm−1
(実施例4)
2,4−ビスイソシアナトメチル−1,3,5−トリチアンの製造
触媒としてジブチル錫ジクロライドを200ppm(wt/wt)および内部離型剤として酸性リン酸エステル(商品名ZelecUN)を1000ppm(wt/wt)溶解したm−キシリレンジイソシアナート(1g)、2,4−ビスイソシアナトメチル−1,3,5−トリチアン(0.64g)、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンおよび4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアンおよび2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタンの混合物(1.64g)を混合して均一液とした。孔径3μmのメンブランフィルターでろ過して十分脱泡を行った後、オーブン中で50℃〜80℃まで徐々に昇温して60時間重合した。重合終了後離型して樹脂を得た。得られた樹脂の屈折率(ne)は1.695であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】


(式中、nは0から3の整数を示す。)で示されるポリイソシアナート化合物。
【請求項2】
式(2)
【化2】


で示される請求項1記載のポリイソシアナート化合物。
【請求項3】
式(3)
【化3】


[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基を示す。]をホスゲンと反応させることを特徴とする、式(1)のポリイソシアナート化合物の製造方法。
【化4】


(式中、nは0から3の整数を示す。)
【請求項4】
式(3)
【化5】


[式中、nは0から3の整数を示す。Rは−NHCO2(Rは炭素数1から4のアルキル基を示す)を示す。]を、塩基およびシリルハライドの存在下に分解反応させることを特徴とする、式(1)のポリイソシアナート化合物の製造方法。
【化6】


(式中、nは0から3の整数を示す。)
【請求項5】
式(3)
【化7】


[式中、nは0から3の整数を示す。Rは−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示す。]
をクルチウス転位反応、ホフマン転位反応またはロッセン転位反応させることを特徴とする、式(1)のポリイソシアナート化合物の製造方法。
【化8】

【請求項6】
式(3)
【化9】


[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基、−NHCO2、−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示す。]で示される化合物。
【請求項7】
式(4)
【化10】


で示される請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式(5)
【化11】


[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基、−NHCO2、−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示し、R’は、−OR(Rは前記と同義)を示す。]で示される化合物から製造される式(3)の化合物の製造方法。
【化12】


[式中、n、Rは前記と同義。]
【請求項9】
式(5)
【化13】


[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基、−NHCO2、−CO、COR(R1は炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示し、R’は、−OR(Rは前記と同義)を示す。]で示される化合物。
【請求項10】
式(6)
【化14】


で示される請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
式(5)
【化15】


[式中、nは0から3の整数を示す。Rはアミノ基、−NHCO2、−CO、COR(Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは−N、−NH、−NHOHのいずれかを示す。)のいずれかを示し、R’は、−OR(Rは前記と同義)を示す。]で示される化合物から、式(3)の化合物を経て製造される式(1)のポリイソシアナート化合物の製造方法。
【化16】


[式中、n、Rは前記と同義。]
【化17】


[式中、nは前記と同義。]
【請求項12】
請求項1または2記載のポリイソシアナート化合物の少なくとも1つを構成モノマーとする重合性組成物。
【請求項13】
請求項12の重合性組成物を重合して得られる光学製品。

【公開番号】特開2008−174520(P2008−174520A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11381(P2007−11381)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】