説明

吸収体および吸収性物品

【課題】吸収効率の高い吸収体および吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明は、非木材パルプを含む吸収体4であって、非木材パルプの水における沈降速度は、2秒以上5秒以下である。また、非木材パルプの平均繊維径は8〜25μmであり、見かけ嵩密度は、0.04〜0.07g/cm3であり、非木材パルプの0.9%生理食塩水の吸収量は、該パルプの質量に対して20倍以上である。本発明の吸収性物品1は、上記吸収体4を含む。また、吸収性物品1の吸収体4は、0.9%生理食塩水を吸収する前の厚みに対する0.9%生理食塩水を吸収した後の厚みの厚み変化率が600%以上である。さらに、80mLの0.9%生理食塩水を吸収性物品1に10秒かけて注入し、吸収性物品1の該0.9%生理食塩水の注入から吸収完了までの時間である吸収速度の評価を10分ごとに3回行った場合、該3回とも該吸収速度が20秒以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非木材由来のパルプを使用した吸収体およびその吸収体を含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からおしめや生理用品に使用される使い捨て可能な吸収材の原料として、木材以外を原料としたパルプ(非木材由来のパルプ)が使用されている。とくにサトウキビの茎の汁を搾った後の殻であるバカスが吸収材の原料として注目されている(たとえば、特許文献1)。嵩密度の異なるビスを含むバカスパルプと木材パルプとを所定の割合でブレンドし、嵩密度を調整することで、加圧時または圧縮時における吸収材の保水性能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−133249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バガスを使用した吸収材を使用した特許文献1に記載の吸収体よりも、非木材由来のパルプを使用したさらに吸収効率の高い吸収体が望まれている。本発明は、非木材由来のパルプを使用した吸収効率の高い吸収体およびその吸収体を含む吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明は、非木材パルプを含む吸収体であって、非木材パルプの水における沈降速度は、2秒以上5秒以下である。
また、本発明は、非木材パルプを含む吸収体であって、非木材パルプの平均繊維径は8〜25μmであり、非木材パルプの見かけ嵩密度は、0.04〜0.07g/cm3であり、非木材パルプの0.9%生理食塩水の吸収量は、該パルプの質量に対して20倍以上である。
本発明の吸収性物品は、上記吸収体を含む。
また、本発明は、非木材パルプおよびSAPを含む吸収体を備えた吸収性物品であって、吸収体は、0.9%生理食塩水を吸収する前の厚みに対する0.9%生理食塩水を吸収した後の厚みの厚み変化率が600%以上である。
さらに、本発明は、非木材パルプおよびSAPを含む吸収体を備えた吸収性物品であって、80mLの0.9%生理食塩水を吸収性物品に10秒かけて注入し、吸収性物品の該0.9%生理食塩水の注入から吸収完了までの時間である吸収速度の評価を10分ごとに3回行った場合、該3回とも該吸収速度が20秒以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吸収効率の高い吸収体および吸収性物品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における吸収性物品の平面図である。
【図2】図2は、図1の吸収性物品のA−A断面図である。
【図3】図3は、吸収量の測定に使用するナイロンメッシュ袋を説明するための図である。
【図4】図4は、吸収性物品試料の構成を説明するための図である。
【図5】図5は、粉砕パルプの繊維の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、マニラ麻の断面構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る吸収性物品の一実施態様の吸収性物品として、生理用ナプキンを例に挙げて説明する。図1は、本発明の一実施形態における吸収性物品1の平面図であり、図2は、図1の吸収性物品1のA−A断面図である。図1および図2に示すように、吸収性物品1は、液透過性の表面シート2と、液不透過性の防漏シート3と、表面シート2と防漏シート3との間に配置された吸収体4と、吸収体4を被覆するティッシュ5とを有する。なお、表面シート2と吸収体4との間にセカンドシートを配置してもよい。この場合、表面シート2から体液を吸収しやすいように、表面シート2よりも密度を高めた不織布をセカンドシートに用いることが好ましい。
【0009】
表面シート2は、体液を透過する液透過性のシートであり、使用者が吸収性物品1を装着したときに感じる肌触りをよくするために使用者の肌と接触する表面に設けられる。したがって、表面シート2は肌触りを良好にする機能を有していることが好ましい。たとえば、表面シート2は、細い繊維で作製され、表面が平滑で、変形に対して自由度が大きいことが必要である。
【0010】
表面シート2には、一般に不織布が用いられる。周知のカードウェブを用いたエアースルー法にて形成することができる。表面シート2に用いる不織布の製造方法は、上記のエアースルー法に限定されず、たとえば、繊維ウェブを絡合することで安定なシートにするニードルパンチ、スパンレース方式、繊維を接着剤あるいは繊維自身の溶融によりウェブを固定するバインダー接着、熱接着方式、フィラメント繊維によりシール化するスパンボンド方式、抄紙によりシート化する湿式法などを不織布の製造に用いてもよい。
【0011】
表面シート2の不織布に用いられる繊維としてたとえば、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリブチレン及びこれらを主体とした共重合体エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリ乳酸等のポリエステル系、ナイロン等のポリアミド系から構成される。
【0012】
防漏シート3は、体液を透過しない液不透過性シートであり、排出された体液が外に漏れないようにするために設けられている。防漏シート3の材料は、排出された体液を透過しない材料であれば、とくに限定されない。たとえば、防水処理を施した不織布、ポリエチレンなどから構成されるプラスチックフィルム、不織布とプラスチックフィルムとの複合材料などを防漏シート3に用いることができる。
【0013】
吸収体4は排出された体液を吸収し保持する機能を有する。吸収体4に使用される吸収材料は、木材以外を原料としたパルプ(以下、非木材パルプと呼ぶ)と高吸収性ポリマー(SAP)との混合物が好ましい。なお、非木材パルプを含んでいれば、吸収体4に使用される吸収材料は、SAP以外の吸収材料と非木材パルプとの混合物でもよいし、非木材パルプ単独でもよい。
【0014】
非木材パルプは、植物を原料とする、木材パルプ以外のパルプであり、非木材パルプには、たとえば、リンターパルプ、マニラ麻、ケナフ、エスパルト草、ワラ、竹およびバナナの茎などがある。吸収体4に使用する非木材パルプは、好ましくはマニラ麻とくにマニラ麻の芯近くの部分、またはマニラ麻の芯と外皮との中間の部分を原料とするアバカパルプおよびバナナの茎を原料とするバナナパルプである。
【0015】
図6を参照して、マニラ麻の芯近くの部分、およびマニラ麻の芯と外皮との中間の部分について説明する。図6に示すように、マニラ麻40の断面構造は、マニラ麻40の芯41、芯に近い部分42、真ん中の部分43、外側の次の部分44および外側45に分類される。本明細書における「マニラ麻の芯近くの部分」は、マニラ麻40の芯に近い部分42および真ん中の部分43に該当し、「マニラ麻の芯と外皮との中間の部分」は、マニラ麻40の外側の次の部分44に該当する。
【0016】
また、マニラ麻から作製されるアバカ繊維は、マニラ麻の原料となる部分によって分類される。具体的には、アバカ繊維は、原料となる部分がマニラ麻40の芯41であるもの、芯に近い部分42であるもの、真ん中の部分43であるもの、外側の次の部分44であるものおよび外側45であるものに分類される。たとえば、アバカ繊維は、マニラ麻の原料となる部分によって、AD、EF、S2およびS3の特級に分類される。ADは、マニラ麻40の芯に近い部分42を原料としたアバカ繊維を表す。ADのアバカ繊維は、光沢のある純白の繊維である。EFは、マニラ麻40の真ん中の部分43を原料としたアバカ繊維を表す。EFのアバカ繊維は、柔軟純粋繊維真中部分の繊維であり、淡い象牙色である。S2は、マニラ麻40の外側の次の部分44を原料としたアバカ繊維を表す。S2のアバカ繊維は、淡黄土色または淡紫色である。S3は、マニラ麻40の外側45を原料としたアバカ繊維を表す。S3のアバカ繊維は、暗赤色または紫色であり、主にロープに使用される。
【0017】
また、マニラ麻の原料となる部分によって、I、GおよびHの特級にアバカ繊維を分類することができる。Iは、マニラ麻40の真ん中の部分43を原料としたアバカ繊維を表す。Iのアバカ繊維は淡黄色である。Gは、マニラ麻40の真ん中の部分43を原料としたアバカ繊維を表す。Gは、マニラ麻40の外側の次の部分44を原料としたアバカ繊維を表す。Gのアバカ繊維は、鈍暗白色であり、結束が発生しやすい。Hは、マニラ麻40の外側45を原料としたアバカ繊維を表す。Hのアバカ繊維は、黒色に近い茶褐色であり、主にロープに使用される。
【0018】
さらに、マニラ麻の原料となる部分によって、JKおよびM1の特級にアバカ繊維を分類することができる。JKは、マニラ麻40の外側の次の部分44を原料としたアバカ繊維を表す。JKのアバカ繊維は、淡褐色または淡緑色であり、主にパルプとして使用される。M1は、マニラ麻40の外側45を原料としたアバカ繊維を表す。M1のアバカ繊維は、暗褐色から黒色の繊維であり、主にロープに使用される。
【0019】
「マニラ麻の芯近くの部分」のアバカ繊維は、AD、EFまたはIのアバカ繊維に該当し、「マニラ麻の芯と外皮との中間の部分」のアバカ繊維は、S2、GまたはJKのアバカ繊維に該当する。また、外皮のアバカ繊維はS3、HまたはM1のアバカ繊維に該当する。
【0020】
吸収体4に使用する非木材パルプの平均繊維径は、好ましくは8μm以上、25μm以下であり、より好ましくは、10μm以上、20μm以下である。これにより、吸収体4中の単位体積当たりの繊維の本数が増えるため、吸収体4を容易に厚くすることができ、見かけ上の嵩密度を低くすることができる。したがって、吸収した使用者の体液を蓄えるための容積を吸収体4中に確保しやすくなる。また、非木材パルプの比表面積と繊維間空隙容積が大きくなるので、吸収体4の吸収量を増やすことができる。さらに、非木材パルプの繊維間距離が小さくなるため、非木材パルプの毛細管現象による体液を吸い上げようとする力が大きくなる。また、非木材パルプの繊維同士が、および非木材パルプの繊維とSAPとが絡みやすくなり、吸収体を軽量化、薄型化しても、吸収体は崩れず、吸収体の形状を維持することができる。非木材パルプの平均繊維径が、8μmよりも小さいと中空構造が維持出来難くなり、嵩維持性が悪くなるという問題が生じるおそれがある。非木材パルプの平均繊維径が、25μmよりも大きいと、上述の効果が小さくなる場合がある。さらに、非木材パルプをSAPと混合した場合、非木材パルプの繊維がSAP粒子間に入り込みやすくなるため、ゲルブロッキングが生じるのを抑制することができる。
【0021】
吸収体4に使用する非木材パルプに含まれるリグニンの含有量は、好ましくは0.5重量%以下であり、より好ましくは、0.3重量%以下である。吸収体4に使用する非木材パルプに含まれるリグニンの含有量が0.5重量%よりも大きいと、吸収体4に使用する非木材パルプの平均繊維径が大きくなり、吸収体4の見かけの嵩密度が高くなり、かつ非木材パルプの親水性が低下するので、吸収体4の吸水性能が低下する場合がある。
【0022】
吸収体4に使用する非木材パルプの水における沈降速度は、好ましくは2秒以上、5秒以下であり、より好ましくは、2.5秒以上、4秒以下である。この場合、非木材パルプの繊維の構造は中空構造であり、かつ非木材パルプの繊維は親水性であると予測されるので、吸収体4のおける使用者の体液の吸収量が大きくなる。ここで、沈降速度とは、以下のようにして測定した、非木材パルプが入っているカゴが水面に接してから水面下に沈降するまでの時間である。
【0023】
円筒型のカゴの中に、5.0gの非木材パルプを均一に詰める。このカゴは銅線で形成され、この銅線の直径は0.4mmである。またカゴの重さは3gであり、直径は50mmであり、高さは80mmである。カゴの網目の銅線同士の間隔は20mmである。2リットルビーカーに水深が200mmになるまでイオン交換水を入れる。そして、非木材パルプが入っているカゴを、水面から10mmの高さから落とし、カゴが水面に接してから水面下に進行するまでの時間を測定する。この測定した時間が、非木材パルプの沈降速度となる。
【0024】
非木材パルプの繊維の構造が中空構造であると、中空構造の中に空気が含まれるため、非木材パルプの沈降は遅くなる。非木材パルプの沈降速度が2秒よりも小さいと、非木材パルプの繊維は気孔率が小さく、あまり中空ではないので、吸収体4の体液の吸収量が小さくなる場合がある。非木材パルプの沈降速度が5秒以上であると、非木材パルプの繊維の親水性が低い可能性があり、吸収体4の体液の吸収量が小さくなる場合がある。
【0025】
吸収体4に使用する非木材パルプの見かけ嵩密度は、好ましくは0.04g/cm3以上、0.07g/cm3以下である。これにより、吸収した使用者の体液を蓄えるための吸収体4中の容積が大きくなり、吸収体4の吸収量が大きくなる。非木材パルプの見かけ嵩密度が0.04g/cm3よりも小さいと、吸収体強度が低下し、保形性が悪くなるという問題が生じる場合がある。非木材パルプの見かけ嵩密度が0.07g/cm3よりも大きいと、吸収した使用者の体液を蓄えるための容積が小さくなり、吸収体4の吸収量が小さくなる場合がある。
【0026】
吸収体4に使用する非木材パルプの0.9%生理食塩水の吸収量は、好ましくは、非木材パルプの質量に対して20倍以上である。これにより、木材パルプに比べて少量の非木材パルプを使用することによって、木材パルプと同等の吸収量の吸収体を得ることができ、吸収体を軽量化、薄型化することができる。非木材パルプの0.9%生理食塩水の吸収量が20倍よりも小さいと、非木材パルプを使用した吸収体の吸収量は、木材パルプを使用した吸収体の吸収量とほとんど変わらないので、吸収体4の吸収量に関して、木材パルプの代わりに非木材パルプを使用する効果が小さくなる場合がある。
【0027】
ティッシュ5は、吸収体4を被覆することによって、吸収体4が崩れてばらばらになるのを防止する。なお、吸収体4が、ティッシュ5がなくても崩れない場合は、吸収性物品1は、ティッシュ5を有さなくてもよい。
【0028】
本発明の吸収性物品は、人間が使用する吸収性物品のほかにペットなどの人間以外の動物が使用する吸収性物品も含む。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0030】
なお、実施例および比較例において、平均繊維径、リグニン含有量、沈降速度、繊維比重、吸収量、加圧保水量、保水量、吸収体厚み、吸収速度、拡散長さ、およびリウエット量は、以下のようにして測定した。
【0031】
(平均繊維径)
Metso automation製 カヤーニ繊維長測定器 Fiber Lab3.8を使用して、約20000本測定し、平均繊維径とした。
【0032】
(リグニン含有量)
パルプ中のリグニン含有量は、P.J.Van Soest らの方法(Proc. Nutr.Soc.,32123(1973))に準じて測定した。
【0033】
(沈降速度)
(1)円筒型のカゴの中に、5.0gの非木材パルプを均一に詰めた。このカゴは銅線で形成され、この銅線の直径は0.4mmであった。またカゴの重さは3gであり、直径は50mmであり、高さは80mmである。カゴの網目の銅線同士の間隔は20mmであった。
(2)2リットルビーカーに水深が200mmになるまでイオン交換水を入れた。
(3)非木材パルプが入っているカゴを、2リットルビーカー中の水の水面から10mmの高さから落とし、カゴが水面に接してから水面下に進行するまでの時間を測定した。この測定した時間が、非木材パルプの沈降速度となった。
【0034】
(繊維比重)
パルプ中の繊維比重は、Heガス比較式比重計(東京サイエンス社製)を使用して、JIS M 8717に準拠して測定した。
【0035】
(見かけ嵩密度)
粉砕パルプ10gを100mm×100mmに積層した。100mm×100mmの板を、積層した粉砕パルプの上に重ね、100g荷重の重りをその上に載せた。重りを載せてから10秒後の積層粉砕パルプの厚みを見かけ嵩とし、見かけ嵩密度を算出した。
【0036】
(吸収量、加圧保水量、保水量)
(1)2Lビーカーに0.9%生理食塩水を1000mL入れ、液温を測定する。0.9%生理食塩水は、27.0gの塩化ナトリウム(試薬1級)を3Lビーカーに入れた後、イオン交換水と塩化ナトリウムとの合計量が3000.0gになるまで、3Lビーカーにイオン交換水を加えることによって作製した。
(2)250メッシュのナイロンメッシュ(NBC工業製、N-NO.250HD)を200mm×200mmの大きさに切り出して質量(x(g))を測定した後、図3(a)に示すようにB−B一点鎖線の部分を折って、ナイロンメッシュ21を半分に折った。図3(b)に示すように、折られた部分が右側になるように配置した後、下端から5mm上の位置、右端から5mm左の位置および左端から5mm右の位置にヒートシール22形成して、上端23が開放しているナイロンメッシュ袋24を作製した。質量を予め測定した粉砕したパルプ(y(g))をナイロンメッシュ袋24に入れ、不図示のヒートシールを形成して、ナイロンメッシュ袋24の開放している上端23を閉じた。
(3)粉砕パルプ入りの袋を生理食塩水の入ったビーカーの底に触れるように浸漬させ、3分間放置した。
(4)放置後、粉砕パルプが入った袋を引き上げ、3分間、自然放置にて水切りを行った。
(5)粉砕パルプが入った袋の重量(z1(g))を測定した。
(6)次式から吸収倍率を計算した。
吸収量(g/g)=((z1−x)−y)/y
(7)(6)で測定した、粉砕パルプが入った袋の上にアクリル板を載せ、重さ3.5kg、大きさ100mm×100mmのおもりをアクリル板の上にさらに載せ、3分間放置した。
(8)おもり、アクリル板を除き、粉砕パルプが入った袋の重量(z2(g))を測定した。
(9)次式から加圧保水量を計算した。
加圧保水量(g/g)=((z2−x)−y)/y
(10)(8)で測定した、粉砕パルプが入った袋を遠心分離器で脱水する。使用する遠心分離器は国産遠心(株)社製分離機 型H130である。遠心分離機の回転数は、850rpm(150G)であった。
(11)脱水後の吸収材料の入った袋の重量(z3)を測定した。
(12)次式から保水量を計算した。
保水量(g/g)=((z3−x)−y)/y
【0037】
(吸収体厚み)
製品厚み計(PEACOCK製、50mmφ、3g/cm2、バネなし)を使用して、吸収性物品試料に用いる吸収体の厚みを測定した。吸収体の3箇所を測定して、3つの測定値の平均値を吸収体厚みとした。
【0038】
(吸収速度、拡散長さ、リウエット量)
(1)内径60φ、高さ50mmの円筒を、吸収性物品試料の表面シート上の吸収体中央部分に相当する部分に設置した。
(2)その円筒内に80mLの0.9%生理食塩水を10秒かけて注入した。0.9%生理食塩水は、上述の0.9%生理食塩水と同じである。
(3)0.9%生理食塩水の注入を開始してから、0.9%生理食塩水が吸収性物品試料に吸収されて円筒内から消えるまでの時間を計測した。この計測した時間が吸収速度(秒)となる。
(4)0.9%生理食塩水の注入を開始してから3分後に0.9%生理食塩水が拡散した範囲の輪郭を、油性インクペンを使用してなぞった。吸収性物品試料の長手方向で一番長い拡散距離を拡散長さ(mm)とした。
(5)0.9%生理食塩水の注入を開始してから5分後に吸収性物品試料から円筒を取り除き、予め質量を測定した約50gのろ紙(100mm×100mm)を吸収性物品試料上に置き、そのろ紙の上に3.5kgのおもり(100mm×100mm)を置いた。
(6)おもりを置いてから3分後にろ紙を取り除き、そのろ紙の質量を測定した。そして、吸収性物品試料に置いた後のろ紙の質量から置く前のろ紙の質量を引き算して、吸収性物品試料のリウエット量を算出した。
(7)0.9%生理食塩水の注入から吸収性物品試料のリウエット量を算出するまでのプロセスを10分ごとに3回実施し、吸収速度、拡散長さおよびリウエット量のデータを3回とった。
【0039】
(実施例1)
マニラ麻の芯近くの部分を原料とするアバカパルプであるアバカBKP(小倉貿易(株)製、AK104)を繊維状に粉砕して粉砕パルプである実施例1を作製した。
【0040】
(実施例2)
マニラ麻の芯と外皮との中間の部分を原料とするアバカパルプであるアバカBKP(小倉貿易(株)製、AK102)を繊維状に粉砕して粉砕パルプである実施例2を作製した。
【0041】
(実施例3)
バナナの茎を原料とするバナナパルプであるバナナBKP(小倉貿易(株)製)を繊維状に粉砕して粉砕パルプである実施例3を作製した。
【0042】
(実施例4)
目付250g/m2の実施例1の粉砕パルプと、目付250g/m2のSAP(住友精化製、アクアキープSA60S)とを均一に混合した吸収体を作製し、表面シート32、セカンドシート36、ティッシュ35、吸収体34および防漏シート33を備えた図4に示す構造の吸収性物品試料31である実施例4を作製した。表面シート32は目付25g/m2のエアースルー不織布であり、セカンドシート36は目付20g/m2のエアースルー不織布であり、ティッシュ35の目付は17g/m2であり、防漏シート33の目付は17g/m2であった。それぞれの部材を、スパイラルホットメルト接着剤を使用して貼り合わせた。スパイラルホットメルト接着剤の塗布坪量は5g/m2であった。
【0043】
(実施例5)
目付200g/m2の実施例1の粉砕パルプと、目付250g/m2のSAP(住友精化製、アクアキープSA60S)とを均一に混合した吸収体を作製し、図4に示す構造の吸収性物品試料31である実施例5を作製した。
(実施例6)
目付200g/m2の実施例1の粉砕パルプと、目付200g/m2のSAP(住友精化製、アクアキープSA60S)とを均一に混合した吸収体を作製し、図4に示す構造の吸収性物品試料31である実施例6を作製した。
(実施例7)
目付250g/m2の実施例2の粉砕パルプと、目付250g/m2のSAP(住友精化製、アクアキープSA60S)とを均一に混合した吸収体を作製し、図4に示す構造の吸収性物品試料31である実施例7を作製した。
(実施例8)
目付250g/m2の実施例4の粉砕パルプと、目付250g/m2のSAP(住友精化製、アクアキープSA60S)とを均一に混合した吸収体を作製し、図4に示す構造の吸収性物品試料31である実施例8を作製した。
【0044】
(比較例1)
木材パルプ(針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP))を繊維状に粉砕して粉砕パルプである比較例1を作製した。
【0045】
(比較例2)
バカスBKP(小倉貿易(株)製)を繊維状に粉砕して粉砕パルプである比較例2を作製した。
【0046】
(比較例3)
ケナフBKP(小倉貿易(株)製)を繊維状に粉砕して粉砕パルプである比較例3を作製した。
【0047】
(比較例4)
目付250g/m2の比較例1の粉砕パルプと、目付250g/m2のSAP(住友精化製、アクアキープSA60S)とを均一に混合した吸収体を作製し、図4に示す構造の吸収性物品試料31である比較例4を作製した。
【0048】
(比較例5)
目付250g/m2の比較例2の粉砕パルプと、目付250g/m2のSAP(住友精化製、アクアキープSA60S)とを均一に混合した吸収体を作製し、図4に示す構造の吸収性物品試料31である比較例5を作製した。
【0049】
(比較例6)
目付250g/m2の比較例3の粉砕パルプと、目付250g/m2のSAP(住友精化製、アクアキープSA60S)とを均一に混合した吸収体を作製し、図4に示す構造の吸収性物品試料31である比較例6を作製した。
【0050】
実施例1〜3および比較例1〜3の粉砕パルプの平均繊維径、リグニン含有量、沈降速度、繊維比重、見かけ嵩密度、吸収量、加水保水量および保水量の結果を以下の表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例4〜8および比較例4〜6の吸収性物品試料の特性ならびに吸収体厚み、吸収速度、拡散長さおよびリウエット量の結果を以下の表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例1〜3は、すべて、0.9%生理食塩水の吸収量はパルプの質量に対して20倍以上であった。また、実施例1〜3は、すべて、沈降速度は2秒以上、5秒以下であった。さらに、実施例1〜3は、すべて、平均繊維径は8μm以上、25μm以下であり、かつ見かけ嵩密度は、0.04g/cm3以上、0.07g/cm3以下であった。
【0055】
比較例1は、平均繊維径が34.5μmと大きく、水における沈降速度が1.04秒と速く、見かけ比重が0.083g/cm3と大きく、0.9%生理食塩水の吸収量がパルプの質量に対して16.2倍と小さかった。比較例2は、沈降速度が1.26秒と速く、0.9%生理食塩水の吸収量がパルプの質量に対して18.8倍と小さかった。比較例3は、沈降速度が1.82秒と速く、0.9%生理食塩水の吸収量がパルプの質量に対して19.2倍と小さかった。
【0056】
アバカパルプの実施例1および2は、木材パルプの比較例1に比べて吸収量が50%以上高いため、木材パルプに比べて少量でも木材パルプと同等以上の量の体液を吸収することができる。また、実施例1および2の保水量も比較例1の木材パルプに比べて同等以下であるので、吸収体の材料がパルプ繊維とSAPの混合物である場合、パルプ繊維からSAPへの水分の移行性が良好になり、繰り返し吸収性能も良好になる。この吸収量が大きいのにもかかわらず保水量が少ない実施例1および2の特性は、バナナパルプの実施例3も有している。この吸収量が大きいのにもかかわらず保水量が少ない実施例1〜3の特性は、実施例1〜3の繊維の構造が中空構造になっているためであると考えられる。アバカパルプ、バナナパルプおよび木材パルプのそれぞれの繊維の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図5に示す。図5(a)がアバカパルプの繊維の断面のSEM写真であり、図5(b)がバナナパルプの繊維の断面のSEM写真であり、図5(c)が木材パルプの繊維の断面のSEM写真である。これを見ると、アバカパルプおよびバナナパルプの繊維の構造が中空構造になっていることがわかる。一方、吸収量が少ない木材パルプの繊維の構造は中空構造とではないことがわかる。アバカパルプは、中空構造の繊維の空隙によって、繊維の内部に水分を取り込み、このため、加圧保水性が優れているものと推測される。バナナパルプは、繊維の細かさと繊維の空隙によって繊維の内部および繊維間に水分を取り込み、このため、拡散性、加圧保水性および保水性が優れているものと推測される。実施例1および2の加圧保水量は比較例1の木材パルプに比べて50%以上高いので、吸収体の材料がパルプ繊維とSAPの混合物である場合、パルプ繊維からSAPへ水分が移行する前に、体圧が吸収体にかかっても、パルプ繊維から水分が放出されず、吸収体のリウエット量が小さくなる。
【0057】
実施例4〜8は、吸収速度、拡散長さおよびリウエット量の評価をする前と評価をした後との間の吸収体の厚み変化率が600%以上と大きく、0.9%生理食塩水の吸収が速く、拡散は小さく、リウエット量は少なかった。また、3回行った吸収速度の評価では、3回とも20秒以内であった。これより、実施例1〜3の粉砕パルプを使用して作製した吸収性物品試料の吸収特性は優れていることがわかる。すなわち、0.9%生理食塩水の吸収量がパルプの質量に対して20倍以上である粉砕パルプを使用した吸収性物品試料の吸収特性が優れていることがわかった。また、沈降速度は2秒以上、5秒以下である粉砕パルプを使用した吸収性物品試料の吸収特性が優れていることがわかった。さらに、平均繊維径は8μm以上、25μm以下であり、かつ見かけ嵩密度は、0.04g/cm3以上、0.07g/cm3以下である粉砕パルプを使用した吸収性物品試料の吸収特性が優れていることがわかった。
【0058】
パルプ繊維からSAPへの水分の移行が速いため、SAPが膨潤しやすくなり、実施例4〜8において、吸収速度、拡散長さおよびリウエット量の評価をする前と評価をした後との間の吸収体の厚み変化率が大きくなったものと推測できる。比較例4,5および6は、吸収速度、拡散長さおよびリウエット量の評価をする前と評価を下後との間の吸収体の厚み変化率が約500%と小さかった。これより、比較例4,5および6では、パルプ繊維からSAPへの水分の移行がスムーズに行われていないと推測される。また、比較例4,5および6の0.9%生理食塩水の吸収は、1回目、2回目は速かったものの3回目になると遅くなった。すなわち、比較例4の繰り返し吸収性が悪かった。実施例6および7は、1回目のリウエット量は少なかったものの、2回目以降のリウエット量は大きくなった。
【0059】
実施例8と比較例5および比較例6とを比較すると、比較例2および3に比べて吸収特性の優れている粉砕パルプ(実施例3)を使用することによって、比較例5および6よりも吸収特性が優れている吸収性物品試料(実施例8)を得られることがわかった。
【符号の説明】
【0060】
1,31 吸収性物品
2,32 表面材
3,33 防漏シート
4,34 吸収体
5,35 ティッシュ
21 ナイロンメッシュ
22 ヒートシール
24 ナイロンメッシュ袋
36 セカンドシート
40 マニラ麻
41 芯
42 芯に近い部分
43 真ん中の部分
44 外側の次の部分
45 外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非木材パルプを含む吸収体であって、
前記非木材パルプの水における沈降速度は、2秒以上5秒以下である吸収体。
【請求項2】
非木材パルプを含む吸収体であって、
前記非木材パルプの平均繊維径は8〜25μmであり、
前記非木材パルプの見かけ嵩密度は、0.04〜0.07g/cm3であり、
前記非木材パルプの0.9%生理食塩水の吸収量は、該パルプの質量に対して20倍以上である吸収体。
【請求項3】
前記非木材パルプは、マニラ麻の芯近くの部分、もしくはマニラ麻の芯と外皮との中間の部分を原料とするアバカパルプまたはバナナの茎を原料とするバナナパルプである請求項1または2に記載の吸収体。
【請求項4】
SAPをさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収体を含む吸収性物品。
【請求項6】
非木材パルプおよびSAPを含む吸収体を備えた吸収性物品であって、
前記吸収体は、0.9%生理食塩水を吸収する前の厚みに対する0.9%生理食塩水を吸収した後の厚みの厚み変化率が600%以上である吸収性物品。
【請求項7】
非木材パルプおよびSAPを含む吸収体を備えた吸収性物品であって、
80mLの0.9%生理食塩水を前記吸収性物品に10秒かけて注入し、前記吸収性物品の該0.9%生理食塩水の注入から吸収完了までの時間である吸収速度の評価を10分ごとに3回行った場合、該3回とも該吸収速度が20秒以下である吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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