説明

吸収体の厚さを薄くする装置、及び方法

【課題】吸収体の厚さを薄くする装置などにおいて、吸収体の厚み不良起因の不良品の削減を可能としながらも、プレス装置の調整負荷の軽減や同調整時の吸収性物品の廃棄数の低減を図る。
【解決手段】液体吸収性繊維を主材とする吸収体の厚さを薄くする装置である。搬送方向に搬送される前記吸収体を、前記搬送方向と直交する厚さ方向に挟圧して前記吸収体の厚さを薄くするプレス装置と、前記プレス装置よりも前記搬送方向の下流側に配置される一対のロールであって、互いの外周面同士を対向して形成される間隙に前記吸収体を通しながら回転する一対のロールと、前記プレス装置と前記一対のロールとの間の位置での前記吸収体の厚さに関する計測情報を出力するセンサーと、前記一対のロール同士の間の前記間隙の大きさを、前記計測情報に基づいて設定する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に係る吸収体の厚さを薄くする装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排泄液等の液体を吸収する吸収性物品の一例として使い捨ておむつや生理用ナプキン等が知られている。これらの吸収性物品は、通常、上記液体を吸収する吸収体を備えている。そして、この吸収体は、液体吸収性繊維としてのパルプ繊維を所定形状に積層した積層体と、この積層体の外周を被覆するティッシュペーパー等の液透過性シートと、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−205805号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような吸収体1は、例えば、次のようにして製造される(図1Aを参照)。
先ず、搬送方向に連続して搬送されるキャリアシート5a(最終的に上記液透過性シートになるシートであるが、この時点では連続シート)の幅方向の略中央に、搬送方向に沿って間欠的に略ブロック状にパルプ繊維を積層する。そして、当該略ブロック状の積層体3,3…の上面を、キャリアシート5aの幅方向の各端部で覆って包んだ状態にし、これにより、複数の吸収体1,1…が搬送方向に連続して並んでなる吸収体の連続体1aが生成される。次に、この吸収体の連続体1aを搬送方向に沿ってプレス装置(不図示)の間隙に通すことにより、同間隙において各吸収体1をその厚さ方向たる上下方向に挟圧する。そして、最後に、この吸収体の連続体1aを搬送方向の下流の切断装置(不図示)にて所定ピッチで分断し、これにより、上述の吸収性物品に使用可能な完成状態たる単品状の吸収体1が製造される。
【0005】
ここで、プレス装置の通過後において吸収体1の厚さが、目標範囲(目標値±公差)に入っていない場合には、その吸収体1を用いて製造された吸収性物品は不良品となる。そのため、製造ラインの立ち上げ時などでは、試運転として吸収性物品を仮製造し、仮製造された吸収性物品における吸収体1の厚さを計測しながら順次プレス装置の上記間隙の大きさを試行錯誤的に調節することで、吸収体1の厚さが目標範囲に入るようにプレス装置を調整している。
【0006】
しかしながら、この調整は上述の如く試行錯誤的なものであるため、調整に時間を要し、また、その調整中に生成された吸収性物品は製品に用いることができず廃棄されるため、製品歩留まりの悪化を招いていた。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸収体の厚さを薄くする装置、及び方法において、吸収体の厚み不良起因の不良品の削減を可能としながらも、プレス装置の調整負荷の軽減や同調整時の吸収性物品の廃棄数の低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、
液体吸収性繊維を主材とする吸収体の厚さを薄くする装置であって、
搬送方向に搬送される前記吸収体を、前記搬送方向と直交する厚さ方向に挟圧して前記吸収体の厚さを薄くするプレス装置と、
前記プレス装置よりも前記搬送方向の下流側に配置される一対のロールであって、互いの外周面同士を対向して形成される間隙に前記吸収体を通しながら回転する一対のロールと、
前記プレス装置と前記一対のロールとの間の位置での前記吸収体の厚さに関する計測情報を出力するセンサーと、
前記一対のロール同士の間の前記間隙の大きさを、前記計測情報に基づいて設定する制御部と、を有することを特徴とする吸収体の厚さを薄くする装置。
【0009】
また、
液体吸収性繊維を主材とする吸収体の厚さを薄くする方法であって、
搬送方向に搬送される前記吸収体を、プレス装置によって、前記搬送方向と直交する厚さ方向に挟圧して前記吸収体の厚さを薄くすることと、
前記プレス装置よりも前記搬送方向の下流側に、互いの外周面を対向して配置された一対のロール同士の間の間隙に前記吸収体を通すことと、
前記プレス装置と前記一対のロールとの間の位置での前記吸収体の厚さに関する計測情報を、センサーが出力することと、を有し、
前記一対のロール同士の間の間隙に前記吸収体を通す際に、前記間隙の大きさを前記計測情報に基づいて設定することを特徴とする吸収体の厚さを薄くする方法。
【0010】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸収体の厚さを薄くする装置、及び方法において、吸収体の厚み不良起因の不良品の削減を可能としながらも、プレス装置の調整負荷の軽減や同調整時の吸収性物品の廃棄数の低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1Aは、吸収体1の製造過程を示す平面図であり、図1B、図1C、及び図1Dは、それぞれ、図1A中のB−B断面図、同C−C断面図、及び同D−D断面図である。
【図2】本実施形態に係る吸収体1の厚さを薄くする装置20の概略側面図である。
【図3】補助プレス装置50のロール間隙G50を設定する際に用いる設定用データの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
液体吸収性繊維を主材とする吸収体の厚さを薄くする装置であって、
搬送方向に搬送される前記吸収体を、前記搬送方向と直交する厚さ方向に挟圧して前記吸収体の厚さを薄くするプレス装置と、
前記プレス装置よりも前記搬送方向の下流側に配置される一対のロールであって、互いの外周面同士を対向して形成される間隙に前記吸収体を通しながら回転する一対のロールと、
前記プレス装置と前記一対のロールとの間の位置での前記吸収体の厚さに関する計測情報を出力するセンサーと、
前記一対のロール同士の間の前記間隙の大きさを、前記計測情報に基づいて設定する制御部と、を有することを特徴とする吸収体の厚さを薄くする装置。
このような吸収体の厚さを薄くする装置によれば、プレス装置で挟圧後の吸収体の厚さに関する計測情報に基づいて、一対のロール同士の間の間隙の大きさを設定する。よって、プレス装置で挟圧後の吸収体の厚さが目標範囲よりも厚い場合に、一対のロールにより吸収体を挟圧して薄くすることができて、その結果、吸収体の厚み不良起因の不良品を削減可能となる。
また、上述のように一対のロールにて吸収体を薄くすることにより、吸収体の厚さを目標範囲に入れることが可能なので、プレス装置を精細に調整しなくて済み、また、同調整に伴って生じうる吸収性物品の廃棄数の低減を図ることもできる。
【0015】
かかる吸収体の厚さを薄くする装置であって、
前記計測情報が示す厚さが、前記吸収体の厚さの目標範囲よりも大きい場合には、前記間隙を通過する前記吸収体が、前記一対のロールによって挟圧されるように、前記制御部は前記間隙の大きさを設定するのが望ましい。
このような吸収体の厚さを薄くする装置によれば、吸収体の厚さが目標範囲よりも厚いことに起因する不良品を削減可能となる。
【0016】
かかる吸収体の厚さを薄くする装置であって、
前記計測情報が示す厚さが、前記吸収体の厚さの目標範囲以内の場合には、前記間隙を通過する前記吸収体が、前記一対のロールによって挟圧されないように、前記制御部は前記間隙の大きさを設定するのが望ましい。
このような吸収体の厚さを薄くする装置によれば、吸収体の厚さが目標範囲以内のものに対しては、一対のロールによる挟圧を行わないので、当該一対のロール起因の不良品の発生を確実に防止することができる。
【0017】
かかる吸収体の厚さを薄くする装置であって、
前記吸収体は、前記搬送方向に複数並んで搬送されており、
前記センサーは、前記吸収体毎に前記計測情報を出力し、
前記制御部は、前記吸収体毎に前記計測情報を対応付けながら、前記一対のロールの前記間隙の大きさを前記吸収体毎に設定するのが望ましい。
このような吸収体の厚さを薄くする装置によれば、吸収体毎に出力される厚さに関する計測情報に基づいて、吸収体毎に個別に一対のロールの間隙の大きさを設定する。よって、プレス装置で挟圧後の吸収体の厚さが、吸収体毎にばらつく場合であっても、各吸収体の厚さを、それぞれ最終的に目標範囲に収めることができる。
【0018】
また、
液体吸収性繊維を主材とする吸収体の厚さを薄くする方法であって、
搬送方向に搬送される前記吸収体を、プレス装置によって、前記搬送方向と直交する厚さ方向に挟圧して前記吸収体の厚さを薄くすることと、
前記プレス装置よりも前記搬送方向の下流側に、互いの外周面を対向して配置された一対のロール同士の間の間隙に前記吸収体を通すことと、
前記プレス装置と前記一対のロールとの間の位置での前記吸収体の厚さに関する計測情報を、センサーが出力することと、を有し、
前記一対のロール同士の間の間隙に前記吸収体を通す際に、前記間隙の大きさを前記計測情報に基づいて設定することを特徴とする吸収体の厚さを薄くする方法。
このような吸収体の厚さを薄くする方法によれば、プレス装置で挟圧後の吸収体の厚さに関する計測情報に基づいて、一対のロール同士の間の間隙の大きさを設定する。よって、プレス装置で挟圧後の吸収体の厚さが目標範囲よりも厚い場合に、一対のロールにより吸収体を挟圧して薄くすることができて、その結果、吸収体の厚み不良起因の不良品を削減可能となる。
【0019】
また、上述のように一対のロールにて吸収体を薄くすることにより、吸収体の厚さを目標範囲に入れることが可能なので、プレス装置を精細に調整しなくて済み、また、同調整に伴って生じうる吸収性物品の廃棄数の低減を図ることもできる。
【0020】
===本実施形態===
本実施形態の吸収体1の厚さを薄くする装置20、及び方法は、吸収性物品の一例としての使い捨ておむつや生理用ナプキンの吸収体1の製造に適用される。
【0021】
図1A乃至図1Dに、吸収体1の製造過程のイメージ図を示す。なお、図1Aは平面図であり、図1B、図1C、及び図1Dは、それぞれ、図1A中のB−B断面図、同C−C断面図、及び同D−D断面図である。
【0022】
図1Aの左端及び図1Dに示すように、吸収体1は、液体吸収性繊維の一例としてのパルプ繊維を、平面視略長方形や略砂時計形状等の外形形状に積層した略ブロック状の積層体3と、この積層体3の外周を全周に亘って被覆するティッシュペーパー等の液透過性シート5と、を有している。なお、積層体3中には高吸収性ポリマー等が混入されていても良い。
【0023】
このような吸収体1は次のようにして製造される。
先ず、積繊装置10に、キャリアシート5aとして上記液透過性シート5が、搬送方向に沿った連続シート5aの形態で供給される。そして、積繊装置10は、搬送方向に沿って連続搬送されるキャリアシート5aの上面の幅方向の略中央に、搬送方向に間欠的にパルプ繊維を略ブロック状に積層する(図1B)。そうしたら、同キャリアシート5aが適宜な折り曲げガイド部材12の位置を通過する際に、当該折り曲げガイド部材12によって、同シート5aの幅方向の各端部が幅方向の内方へ折り曲げられ、これにより、搬送方向に間欠的に並ぶ複数の略ブロック状の積層体3,3…の上面は、図1Cに示すように、同シート5aの幅方向の各端部で覆われた状態にされ、結果、複数の吸収体1,1…が搬送方向に並んでなる吸収体の連続体1aが生成される(図1A)。
【0024】
但し、この時点では、各吸収体1,1…の厚さが目標範囲(目標値±公差)よりも厚い嵩高状態になっている。そのため、後述の本実施形態に係る装置20(図1A中では不図示)によって、各吸収体1,1…を厚さ方向に挟圧して薄くし、しかる後に、吸収体の連続体1aは吸収体1毎に分断されて(図1D)、前述の単品状の吸収体1として他の部品に組み付けられる。
【0025】
ちなみに、吸収体の連続体1aが具備する吸収体1の厚みは、搬送方向に亘って一定ではなく、図1Aに示す積層体3が存在する部分1c(以下、積層体存在部分1cとも言う)が厚く、その搬送方向の前後に隣接する部分1e,1eたる積層体3が存在しない部分1e,1e(以下、積層体不在部分1e,1eと言う)は薄くなっている。よって、厳密に言えば、吸収体1のうちで厚さを薄くすべき対象部分は、積層体存在部分1cということになる。しかし、以下では、説明の便宜上、積層体存在部分1cを薄くすることを、吸収体1を薄くするとも言うし、また、この積層体存在部分1cの厚みのことを、吸収体1の厚みとも言う。
【0026】
図2は、本実施形態に係る吸収体1の厚さを薄くする装置20の概略側面図である。上述したように、この装置20では、吸収体1を厚さ方向に挟圧することにより、吸収体1を薄くして、その厚さを目標範囲に収める。
【0027】
この装置20は、吸収体の連続体1aが具備する各吸収体1,1…の厚みを薄くする本プレス装置30(プレス装置に相当)と、本プレス装置30よりも搬送方向の下流側に配置される補助プレス装置50としての上下一対のロール50a,50bと、本プレス装置30と補助プレス装置50との間の位置での吸収体1の厚さに関する計測情報を出力する厚みセンサー70(センサーに相当)と、補助プレス装置50の上下一対のロール50a,50b同士の間の間隙G50の大きさを設定する制御部90と、を有している。
【0028】
そして、制御部90は、吸収体の連続体1aが通過すべき補助プレス装置50の上記間隙G50(以下、ロール間隙G50とも言う)の大きさを、厚みセンサー70から出力される吸収体1の厚さに関する計測情報に基づいて設定する。
例えば、計測情報が示す厚さが、吸収体1の厚さの目標範囲よりも大きい場合には、当該計測情報に対応する対象の吸収体1が、上記補助プレス装置50のロール間隙G50を通過する際に、当該補助プレス装置50の一対のロール50a,50bによって吸収体1が挟圧されるように、制御部90は上記ロール間隙G50の大きさを設定する。これにより、吸収体1の厚さを目標範囲に収めることが可能となる。また、このように補助プレス装置50の使用によって吸収体1の厚さを目標範囲に入れることが可能なので、その上流側の本プレス装置30を精細に調整しなくて済み、更には、同調整に伴って生じうる吸収性物品の廃棄数の低減を図ることもできる。
【0029】
以下、各構成30,50,70,90について説明するが、以下の説明では、搬送方向と直交する2方向のうちで上下方向でない方の方向(図2中では、紙面を貫通する方向)のことを、CD方向とも言う。ちなみに、このCD方向は、吸収体の連続体1aの幅方向と平行であり(図1A)、また、上下方向は、吸収体1の厚さ方向と平行である。
【0030】
(1)本プレス装置30
本実施形態では、本プレス装置30として、種類の異なる三台のプレス装置31,35,37が、搬送方向に直列に並んで配置されている。そして、吸収体の連続体1aの各吸収体1,1…を、これら三台のプレス装置31,35,37に順次通すことにより、各吸収体1の厚みを段階的に薄くしていき、これにより、キャリアシート5aの破れを防止して、挟圧時の内部の積層体3のパルプ繊維の飛散を防ぐようにしている。
【0031】
一段目たる最上流のプレス装置31は、上下一対のロール31a,31bを有する。各ロール31a,31bは、CD方向に関して平坦な外周面を互いに対向させながら、吸収体1を搬送方向の下流へ送り出すように駆動回転している。よって、各吸収体1がロール31a,31b同士の間の間隙を通過する際には、当該吸収体1は上ロール31aの外周面と下ロール31bの外周面とによって上下方向たる厚さ方向に挟圧され、これにより、吸収体1の厚さは薄くされる。
【0032】
二段目たる真ん中のプレス装置35も、一段目のプレス装置31と同様に、上下一対のロール35a,35bを有する。但し、一対のロール35a,35bのうちの一方のロール35bの外周面は平滑面であるが、他方のロール35aの外周面には、この時点での積層体存在部分1c(図1A)の平面形状よりも若干大きいサイズの凹部(不図示)が形成されている。また、この凹部の深さは、この時点での積層体存在部分1cの厚さよりも浅くなっている。よって、吸収体1がこのプレス装置35を通過する際には、吸収体1の積層体存在部分1cが、凹部に覆われながら当該凹部の底面とロール35bの外周面とによって挟圧され、これにより吸収体1の積層体存在部分1cの厚さ、つまり吸収体1の厚さは薄くされる。なお、これ以外の構成については、一段目のプレス装置31と同様である。
【0033】
三段目たる最下流のプレス装置37は、上下一対の無端ベルト37a,37bを有する。そして、各無端ベルト37a,37は、所定の周回軌道を周回するが、この時、互いに対向するベルト面同士で各吸収体1を挟圧しながら各吸収体1を搬送方向の下流へと搬送する。よって、この搬送中に、吸収体1の厚さは薄くされる。なお、上無端ベルト37aの周回軌道は、同ベルト37aが一対のローラー38a1,38a2に掛け回されることで形成されるとともに、下無端ベルト37bの周回軌道は、同ベルト37bが一対のローラー38b1,38b2に掛け回されることで形成され、また、これらローラー38a1,38a2,38b1,38b2のうちの少なくとも一つが駆動回転することで、無端ベルト37a,37bは駆動周回する。
【0034】
なお、本実施形態では、本プレス装置30として三種類のプレス装置31,35,37が配されているが、その配置態様は、何等これに限らず、適宜変更可能である。例えば、場合によっては、上記三種類の中から一台のみを選択して配置しても良いし、二台又は四台以上選択して設置しても良いし、更には、同種のプレス装置を複数台組み合わせて配置しても良い。
【0035】
(2)補助プレス装置50
補助プレス装置50は、本プレス装置30を通過後の吸収体1の厚さが目標範囲よりも厚い場合に、この吸収体1を挟圧して薄くし、吸収体1の厚さを目標範囲に収めるためのいわば補助的なプレス装置であり、前述したように上下一対のロール50a,50bを有する。そして、各ロール50a,50bは、CD方向に関して平坦な外周面を互いに対向させながら、吸収体1を搬送方向の下流へ送り出すように駆動回転している。よって、吸収体1を薄くする場合には、吸収体1がロール50a,50b同士の間の間隙たるロール間隙G50を通過する際に、上ロール50aの外周面と下ロール50bの外周面とによって吸収体1を厚さ方向たる上下方向に挟圧する。
【0036】
この例では、適宜なハウジングの如き支持部材52により、下ロール50bの位置を固定とし、この下ロール50bに対して上ロール50aが接離方向たる上下方向に昇降可能に構成されている。よって、上ロール50aを昇降することにより、上記ロール間隙G50の大きさが変更される。上ロール50aを昇降する昇降機構は、例えば、上記支持部材52に設けられるボールねじ機構等の送りねじ機構54と、この送りねじ機構54を駆動する駆動源としての昇降用モーター56とを有する。ここで、送りねじ機構54は、入力される回転動作を上下方向の伸縮動作に変換して出力する。よって、昇降用モーター56から入力される正逆の回転動作に応じて、上ロール50aは昇降されることになる。
【0037】
なお、ロール間隙G50の大きさが目標値(設定値)となるように昇降用モーター56を制御する制御方法としては、上ロール50aの上下方向の位置等をリニアエンコーダ等の位置検出器で検出しながら、上記目標値に対応する位置に上ロール50aを移動する周知の位置制御方法(例えばサーボ制御等)を適用可能であり、これについては説明を省略する。
【0038】
また、昇降機構は、何等上述の送りねじ機構54などに限るものではなく、例えば油圧シリンダー等も適用可能である。この場合の油圧シリンダーの一例としては、例えば、位置制御に基づいてピストンを伸縮制御な位置検出器付き油圧シリンダー等が挙げられる。
【0039】
(3)厚みセンサー70
厚みセンサー70は、本プレス装置30の三段目のプレス装置37と補助プレス装置50との間に配置されている。そして、三段目のプレス装置37で挟圧後の各吸収体1の厚さに関する物理量を計測し、その計測情報を吸収体1毎に制御部90へ出力する。
【0040】
この例では、厚みセンサー70は、厚さに関する物理量として吸収体1の厚さを直接出力可能に構成されている。例えば、厚みセンサー70は、上下一対のレーザー距離計71a,71bと、アンプ73とを有する。そして、上レーザー距離計71aでは、そのセンサーヘッド投光面と吸収体1の上面との上下方向の距離を測定し、下レーザー距離計71bでは、そのセンサーヘッド投光面と吸収体1の下面との上下方向の距離を測定し、これら距離の測定値は逐次アンプ73へ送信される。アンプ73では、各測定値を、それぞれ吸収体1が無い状態の測定値から減算して各減算値を算出し、これら減算値同士を加算する。そして、この加算値を、厚さの計測情報として制御部90へ出力する。
【0041】
なお、この例では、厚みセンサー70が上記アンプ73を有し、上述の演算を当該アンプ73が行うことによって、厚みセンサー70から直接、計測情報として吸収体1の厚さの計測値を出力しているが、何等これに限らない。例えば、上述の演算を行うアンプ73の機能を、制御部90に担当させても良い。その場合には、厚みセンサー70は、吸収体1の厚さに関する物理量として、上レーザー距離計71aのセンサーヘッド投光面と吸収体1の上面との上下方向の距離と、下レーザー距離計71bのセンサーヘッド投光面と吸収体1の下面との上下方向の距離とを計測し、これらの距離の測定値を、厚さに関する計測情報として制御部90へ出力することになる。
【0042】
また、厚みセンサー70は何等上述のレーザー距離計71a,71bに限るものではなく、これに代えて、超音波距離計等の適宜な非接触変位計を適用しても良い。
【0043】
(4)制御部90
制御部90は、補助プレス装置50のロール間隙G50の大きさを吸収体1毎に設定すべく、上記昇降用モーター56の制御を介して、上ロール50aの昇降動作を制御する。制御部90は、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等の適宜なコンピュータを有し、当該コンピュータは、プロセッサ及びメモリを有している。そして、メモリに記録されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することにより、上述の昇降用モーター56の制御を介して、吸収体1毎にロール間隙G50の大きさを設定する。
【0044】
このロール間隙G50の大きさの設定は、厚みセンサー70から送信される吸収体1の厚さの計測情報(以下、実績厚さ情報とも言う)に基づいてなされる。
例えば、実績厚さ情報が示す厚さが、吸収体1の厚さの目標範囲(目標値±公差)よりも大きい場合には、この実績厚さ情報に対応する吸収体1がロール間隙G50を通過する際に当該吸収体1が挟圧されるように、制御部90はロール間隙G50の大きさを設定する。
【0045】
他方、実績厚さ情報が示す厚さが、吸収体1の厚さの目標範囲又は目標範囲よりも小さい場合には、ロール間隙G50を通過する吸収体1が挟圧されないように、制御部90はロール間隙G50の大きさを設定する
このように設定すべく、制御部90のメモリには、予め、例えば図3のグラフに示すような設定用データが格納されている。すなわち、同メモリには、三段目のプレス装置37と補助プレス装置50との間の位置での吸収体1の厚さと、設定すべきロール間隙G50の大きさたる設定値との関係を示す設定用データが格納されている。よって、制御部90のプロセッサは、厚みセンサー70から送信される吸収体1の実績厚さ情報をキーとして図3の設定用データを参照し、この実績厚さ情報の厚さに対応するロール間隙G50の設定値を取得する。そして、同プロセッサは、上下一対のロール50a,50b同士の間のロール間隙G50が設定値となるように、前述の昇降用モーター56を制御する。
【0046】
例えば、図3の設定用データにあっては、グラフの横軸の厚さのうちで、目標範囲よりも大きい数値に対しては、縦軸のロール間隙G50の設定値を、厚さの目標範囲の上限値tmax以下の値に対応付けている。よって、実績厚さ情報の厚さが目標範囲よりも大きい場合には、補助プレス装置50は当該吸収体1を確実に挟圧し、これにより、吸収体1の厚み不良を削減可能となる。
【0047】
更に、同横軸において目標範囲よりも大きい数値に対しては、横軸の厚さが大きくなるにつれてロール間隙G50の設定値が漸減するような関係に規定されている。よって、補助プレス装置50で挟圧後の吸収体1の厚さを、より確実に目標範囲に収めるが可能となり、その結果、吸収体1の厚み不良のより一層の削減を図れる。
【0048】
他方、図3のグラフの横軸の厚さのうちで、目標範囲及び目標範囲よりも小さい数値に対しては、縦軸のロール間隙G50の設定値を、目標範囲の上限値tmaxと同値に対応付けている。よって、実績厚さ情報の厚さが目標範囲以内の場合には、補助プレス装置50による挟圧は行われずに、吸収体1は補助プレス装置50のロール間隙G50を単に通過するのみとなり、結果、補助プレス装置50起因の厚み不良の発生を防止することができる。但し、望ましくは、かかる目標範囲及び目標範囲よりも小さい数値に対しては、図3の二点鎖線で示すように、ロール間隙G50の設定値を、目標範囲の上限値tmaxよりも大きい値tbに対応付けると良く、このようにすれば、吸収体1は上ロール50aに対して完全に非接触となるので、補助プレス装置50による挟圧を完全に防止することができる。
【0049】
また、吸収体1の搬送速度に応じて、図3の設定用データのグラフの関係が変化し得る場合には、製造時に想定される吸収体1の搬送速度の範囲を複数に区分して、その区分毎に上述の設定用データをメモリに格納しておいても良い。なお、その場合には、吸収体1の搬送速度(例えば、ロール間隙G50での吸収体1の搬送速度)の実績値に基づいて、対応する設定用データを選択し、その選択された設定用データに基づいて補助プレス装置50のロール間隙G50の設定値を取得することになる。ちなみに、搬送速度に応じて図3のグラフの関係が変化し得る理由は、搬送速度が相違すると補助プレス装置50の挟圧時間が相違するが、そうすると、ロール間隙G50の大きさが同じでも吸収体1を厚さ方向に潰す効果が変わる虞があるためである。
【0050】
このような設定用データは、制御部90のメモリに演算式の形態で格納されていても良いし、吸収体1の厚さとロール間隙G50の設定値とを対応付けてなる設定テーブルの形態で格納されていても良いし、これ以外の形態で格納されていても良い。
【0051】
ところで、本実施形態に係る吸収体の連続体1aは、搬送方向に複数の吸収体1,1…が並んで構成されている(図1A)。また、厚みセンサー70は、吸収体1毎に実績厚さ情報を出力し、また、補助プレス装置50は、実績厚さ情報に基づいて吸収体1毎にロール間隙G50の大きさを設定する。更に、厚みセンサー70は、補助プレス装置50よりも所定距離だけ搬送方向の上流側に離れた位置に配置されている(図2)。
そのため、上述のロール間隙G50の大きさの設定は、吸収体1毎に実績厚さ情報を対応付けながら行う必要があるが、かかる対応付けは、例えば次のようにして行われる。
【0052】
先ず、実績厚さ情報は、厚みセンサー70からの出力の度に即座に制御部90のメモリに記録される。また、記録された各実績厚さ情報には、それぞれ、初期値が所定値のカウント値が対応付けて記録される。この所定値は、例えば、補助プレス装置50の中心位置と厚みセンサー70の計測位置との間の範囲L70に存在し得る吸収体1,1…の数である。更に、補助プレス装置50の近傍には、各吸収体1の積層体存在部分1cの尾端(上流端)の通過を検知して通過の度に検知信号をリアルタイムで出力する光電管等の通過検知センサー95が配置されており、この通過検知センサー95の検知位置は、補助プレス装置50の中心位置から、搬送方向に吸収体1の全長の整数倍(2以上の整数倍)の長さだけ上流側(又は下流側)に離れた位置に設定されている。なお、全長の整数倍とすることで、補助プレス装置50のロール間隙G50の吸収体1の積層体存在部分1cの尾端(上流端)の通過を、当該通過検知センサー95によって代替検知するようにしている。
【0053】
そして、上述のカウント値は、上記検知信号が出力される度に減算され、当該カウント値が1になったら、制御部90のプロセッサは、当該カウント値が1となった実績厚さ情報をメモリから読み出して、この実績厚さ情報と上述の設定用データとに基づいてロール間隙G50の大きさを設定する。これにより、吸収体1毎に実績厚さ情報を対応付けながら、ロール間隙G50の設定が行われる。
【0054】
また、かかるロール間隙G50の大きさの設定は、例えば、吸収体1の積層体不在部分1eがロール間隙G50を通過している間に行われる。すなわち、設定対象の吸収体1の下流側に隣り合う吸収体1の積層体不在部分1eと、これに連続する設定対象の吸収体1の積層体不在部分1eとが、ロール間隙G50を通過している間に、設定対象の吸収体1用のロール間隙G50の大きさの設定が行われる。これにより、設定対象の吸収体1の積層体存在部分1cがロール間隙G50に到達するよりも前に、確実にロール間隙G50の大きさの設定を完了させることができる。
そして、この設定されたロール間隙G50の大きさは、同積層体存在部分1cがロール間隙G50を通過し終えるまで一定値に維持される。すなわち、設定値は、吸収体1毎に固定値として付与される。そのため、この設定に際しては、制御部90のプロセッサは、設定対象の吸収体1の実績厚さ情報を、積層体存在部分1cの全長に亘って平均化して実績厚さの平均値を求め、この平均値を実績厚さの代表値として上述の図3の設定用データを参照し、この代表値に対応するロール間隙G50の設定値を取得する。そして、制御部90のプロセッサは、この積層体存在部分1cの通過が終了するまで、この単一の設定値で昇降用モーター56を制御する。但し、実績厚さの代表値は、何等上述の平均値に限るものではなく、例えば、積層体存在部分1cの平面中心位置等の一点の実績厚さを用いても良い。
【0055】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形が可能である。
【0056】
上述の実施形態では、吸収体1の一例としてキャリアシート5(5a)の上面の積層体3をキャリアシート5(5a)の幅方向の各端部で覆ったものを示したが、何等これに限るものではない。例えば、キャリアシート5(5a)の各端部で積層体3を覆わずに各端部を幅方向に伸ばした状態のもの(図1Bを参照)を吸収体1としても良いし、更には、この状態のもの(図1B)の上から別途液透過性シート(不図示)で覆うことにより、積層体3を当該液透過性シートとキャリアシート5(5a)との両者で挟み込んだ三層構造のものを吸収体1としても良い。
【0057】
上述の実施形態では、ロール間隙G50の設定値を、吸収体1毎に単一の固定値として取得し、これにより、ロール間隙G50の大きさを、吸収体1の積層体存在部分1cの全長に亘って一定に維持していたが、何等これに限らない。
例えば、前述の実績厚さ情報が、吸収体1上に規定される搬送方向の各位置に対応付けてそれぞれ厚さの値を有している場合には、各位置の厚さの値に対応する設定値を図3の設定用データからそれぞれ取得して、各位置のロール間隙G50の通過に同期させて、各位置に対応する設定値でロール間隙G50の大きさを変更しても良い。なお、上述のような実績厚さ情報の生成は、例えば、吸収体1の一つ分の搬送量につき一回転するロータリーエンコーダからの出力信号によって上記各位置のデータを取得するとともに、各位置のデータの取得と同時に厚みセンサー70から出力される厚さの値とを対応付けて制御部90のメモリに記録することでなされる。また、ロール間隙G50を通過中の吸収体1の各位置の検出は、例えば、補助プレス装置50のロール50a(又は50b)と同期して回転するロータリーエンコーダからの出力信号に基づいて行われ、同プロセッサは、この出力信号の示す各位置に対応する厚さの値を、上記実績厚さ情報から逐次取得する。そして、厚さの値に対応する設定値を図3の設定用データを参照して求めて、ロール間隙G50の大きさを逐次設定する。
【0058】
上述の実施形態では、補助プレス装置50の下流側には、吸収体1の厚みを計測するセンサーを設けていなかったが、同下流側の位置に当該センサーを設けて、同センサーによって補助プレス装置50を通過後の吸収体1の厚みを計測しても良い。その場合には、当該センサ−には、例えば補助プレス装置50の上流側に設けた前述の厚みセンサー70と同構成のものを適用可能である。そして、その計測情報は例えば制御部90へ逐次送信されて、同制御部90は、厚さの目標範囲と比較し、外れている場合には警報を出力する等、厚み不良の認識に供される。
【符号の説明】
【0059】
1 吸収体、1a 吸収体の連続体、
1c 積層体存在部分、1e 積層体不在部分、
3 積層体、
5 液透過性シート、5a キャリアシート、
10 積繊装置、12 折り曲げガイド部材、
20 吸収体の厚さを薄くする装置、
30 本プレス装置(プレス装置)、
31 一段目のプレス装置、31a ロール、31b ロール、
35 二段目のプレス装置、35a ロール、35b ロール、
37 三段目のプレス装置、37a 無端ベルト、37b 無端ベルト、
38a1 ローラー、38a2 ローラー、38b1 ローラー、38b2 ローラー、
50 補助プレス装置、50a ロール、50b ロール、52 支持部材、
54 昇降機構、56 昇降用モーター、
70 厚みセンサー(センサー)、71a レーザー距離計、71b レーザー距離計、
73 アンプ、
90 制御部、95 通過検知センサー、
G50 ロール間隙(間隙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吸収性繊維を主材とする吸収体の厚さを薄くする装置であって、
搬送方向に搬送される前記吸収体を、前記搬送方向と直交する厚さ方向に挟圧して前記吸収体の厚さを薄くするプレス装置と、
前記プレス装置よりも前記搬送方向の下流側に配置される一対のロールであって、互いの外周面同士を対向して形成される間隙に前記吸収体を通しながら回転する一対のロールと、
前記プレス装置と前記一対のロールとの間の位置での前記吸収体の厚さに関する計測情報を出力するセンサーと、
前記一対のロール同士の間の前記間隙の大きさを、前記計測情報に基づいて設定する制御部と、を有することを特徴とする吸収体の厚さを薄くする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収体の厚さを薄くする装置であって、
前記計測情報が示す厚さが、前記吸収体の厚さの目標範囲よりも大きい場合には、前記間隙を通過する前記吸収体が、前記一対のロールによって挟圧されるように、前記制御部は前記間隙の大きさを設定することを特徴とする吸収体の厚さを薄くする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収体の厚さを薄くする装置であって、
前記計測情報が示す厚さが、前記吸収体の厚さの目標範囲以内の場合には、前記間隙を通過する前記吸収体が、前記一対のロールによって挟圧されないように、前記制御部は前記間隙の大きさを設定することを特徴とする吸収体の厚さを薄くする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の吸収体の厚さを薄くする装置であって、
前記吸収体は、前記搬送方向に複数並んで搬送されており、
前記センサーは、前記吸収体毎に前記計測情報を出力し、
前記制御部は、前記吸収体毎に前記計測情報を対応付けながら、前記一対のロールの前記間隙の大きさを前記吸収体毎に設定することを特徴とする吸収体の厚さを薄くする装置。
【請求項5】
液体吸収性繊維を主材とする吸収体の厚さを薄くする方法であって、
搬送方向に搬送される前記吸収体を、プレス装置によって、前記搬送方向と直交する厚さ方向に挟圧して前記吸収体の厚さを薄くすることと、
前記プレス装置よりも前記搬送方向の下流側に、互いの外周面を対向して配置された一対のロール同士の間の間隙に前記吸収体を通すことと、
前記プレス装置と前記一対のロールとの間の位置での前記吸収体の厚さに関する計測情報を、センサーが出力することと、を有し、
前記一対のロール同士の間の間隙に前記吸収体を通す際に、前記間隙の大きさを前記計測情報に基づいて設定することを特徴とする吸収体の厚さを薄くする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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