説明

吸収体及び吸収性物品

【課題】吸液性及び保液性を向上させた、非木材パルプ及び木材パルプを含む吸収体、並びに該吸収体を備えた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】非木材パルプと木材パルプとを含む吸収体において、水中沈降時間が2〜5秒である非木材パルプを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体及び該吸収体を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用品、衛生用品等の使い捨て可能な吸収性物品における吸収体の材料として、非木材パルプ及び木材パルプが用いられてきた(例えば、特許文献1)。特許文献1では、嵩密度の異なるビスを含むバカスパルプと木材パルプとを所定の割合でブレンドし、嵩密度を調整することで、加圧時又は圧縮時における吸収体の保水性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−133249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非木材パルプ及び木材パルプを含む吸収体には、吸液性及び保液性の向上の点から改良が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、吸液性及び保液性を向上させた、非木材パルプ及び木材パルプを含む吸収体、並びに該吸収体を備えた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、非木材パルプと木材パルプとを含む吸収体であって、非木材パルプの水中沈降時間が2〜5秒である吸収体を提供する。
【0007】
また、本発明は、液透過性シート、液不透過性シート、及び液透過性シートと液不透過性シートとの間に設けられた吸収体を備えた吸収性物品であって、吸収体が本発明の吸収体である吸収性物品を提供する。
【0008】
水中沈降時間が2〜5秒である非木材パルプは多孔質構造(中空構造)を有する一方、木材パルプは多孔質構造(中空構造)を有しない。多孔質構造を有する非木材パルプは、比表面積及び空隙率が木材パルプよりも大きいので、吸液性は木材パルプよりも大きい。一方、多孔質構造の液体保持力が弱いので、多孔質構造を有する非木材パルプの通常時(非加圧時)保液性は、木材パルプと同程度又はそれよりも小さい。但し、多孔質構造を有する非木材パルプは、木材パルプよりも加圧時(圧縮時)の空隙率が大きいので、加圧時保液性は木材パルプよりも大きい。
【0009】
このように、多孔質構造を有する非木材パルプの吸液性及び加圧時保液性は、木材パルプよりも優れている一方、通常時(非加圧時)保液性は、木材パルプよりも劣っている。なお、多孔質構造を有する非木材パルプの遠心脱水時保液性は木材パルプよりも劣っている。
【0010】
したがって、本発明の吸収体は、水中沈降時間が2〜5秒である非木材パルプと、木材パルプとを含むことにより、非木材パルプの優れた吸液性及び加圧時保液性と、木材パルプの優れた通常時(非加圧時)保液性とを兼ね備えている。これにより、本発明の吸収体は、液体を速やかに吸収することができるとともに、吸収体への加圧による液体の染み出し(リウエット)を防止することができる。
【0011】
また、非木材パルプの多孔質構造の液体保持力は弱いので、液体は非木材パルプから木材パルプに速やかに移行する。したがって、本発明の吸収体に繰り返し液体を吸収させても、本発明の吸収体は優れた吸液性を発揮することができる。例えば、本発明の吸収体は、吸収体に人工尿40mLを吸収させた後、人工尿40mLを8mL/秒の滴下速度で滴下したときの吸収時間が10秒以下であるという優れた吸液性を発揮することができる。なお、人工尿としては、例えば、0.9%生理食塩水が用いられる。
【0012】
本発明の吸収体において、非木材パルプは、水中沈降時間が2〜5秒であるという特性に加え、下記特性のうち1種又は2種以上を有することが好ましい。
・非木材パルプの見かけ嵩密度が0.04〜0.07g/cm3である。
・非木材パルプの人工尿吸収量が自重の20倍以上である。
・非木材パルプの平均繊維径が8〜25μmである。
・非木材パルプのリグニン含有量が0.5質量%以下である。
【0013】
見かけ嵩密度が0.04〜0.07g/cm3である非木材パルプは、比表面積及び空隙率が木材パルプよりも大きいので、木材パルプよりも優れた吸液性及び加圧時保液性を有する。
【0014】
人工尿吸収量が自重の20倍以上である非木材パルプは、木材パルプよりも優れた吸液性を有する。
【0015】
平均繊維径が8〜25μmである非木材パルプは、単位質量あたりの繊維本数(すなわち容積)が木材パルプよりも多いので、見かけ嵩密度が木材パルプよりも小さくなり、比表面積及び空隙率が木材パルプよりも大きくなる。また、繊維間距離が木材パルプよりも小さくなり、毛細管力が木材パルプよりも大きくなる。したがって、平均繊維径が8〜25μmである非木材パルプは、木材パルプよりも優れた吸液性及び加圧時保液性を有する。また、繊維本数の増加により、繊維同士の絡み合いが増加するので、吸収体を軽量化・薄型化しても吸収体の強度が保持される。
【0016】
リグニン含有量が0.5質量%以下である非木材パルプは、リグニンに起因する繊維径の増加及び親水性の低下が防止され、木材パルプよりも優れた吸液性及び加圧時保液性を有する。
【0017】
本発明の吸収体において、非木材パルプが、マニラ麻の葉鞘を原料とするアバカパルプ又はバナナの茎を原料とするバナナパルプであることが好ましい。マニラ麻の葉鞘又はバナナの茎を原料とすることにより、上記特性を有する非木材パルプを簡便かつ効率よく取得することができる。
【0018】
本発明の吸収体において、アバカパルプが、マニラ麻の葉鞘の芯近傍部又は芯と外皮との中間部を原料とするアバカパルプであることが好ましい。マニラ麻の葉鞘の芯近傍部又は芯と外皮との中間部を原料とすることにより、上記特性を有する非木材パルプを簡便かつ効率よく取得することができる。
【0019】
本発明の吸収体において、非木材パルプと木材パルプとの質量比が3:1〜1:3であることが好ましい。非木材パルプと木材パルプとの質量比を3:1〜1:3とすることにより、非木材パルプの優れた吸液性及び加圧時保液性と、木材パルプの優れた通常時(非加圧時)保液性とが効果的に発揮される。
【0020】
本発明の吸収体において、非木材パルプ及び木材パルプの合計含有量が、吸収体の30質量%以上であることが好ましい。非木材パルプ及び木材パルプの合計含有量を吸収体の30質量%以上とすることにより、非木材パルプの優れた吸液性及び加圧時保液性と、木材パルプの優れた通常時(非加圧時)保液性とが効果的に発揮される。
【0021】
本発明の吸収体は、吸収性ポリマーをさらに含むことが好ましい。非木材パルプの多孔質構造の液体保持力は弱いので、液体は非木材パルプから吸収性ポリマーに速やかに移行する。したがって、吸収体が吸収性ポリマーをさらに含むことにより、吸収体に繰り返し液体を吸収させても、吸収体は優れた吸液性を発揮することができる。
【0022】
なお、吸収性ポリマー間には非木材パルプが入り込むため、吸収性ポリマーが液体を吸収して膨潤(ゲル形成)しても、膨潤した吸収性ポリマー同士の合着が防止される。したがって、液体を吸収して膨潤した吸収性ポリマーは、液体が吸収体に浸透する際の障壁(ゲルブロッキング)とならない。これにより、液体が吸収体に浸透せずに溢れ出す現象(オーバーフロー現象)を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、吸液性及び保液性を向上させた、非木材パルプ及び木材パルプを含む吸収体、並びに該吸収体を備えた吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る使い捨てオムツの使用前(展開状態)の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す使い捨てオムツのA−A断面図である。
【図3】図3は、図1に示す使い捨てオムツの使用時の斜視図である。
【図4】図4は、吸液量の測定に使用するナイロンメッシュ袋を説明するための図である。
【図5】図5は、粉砕パルプの繊維の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、マニラ麻の葉鞘の断面構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の吸収性物品の種類及び用途は特に限定されるものではない。吸収性物品としては、例えば、使い捨てオムツ、生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁パッド、汗取りシート等の衛生用品・生理用品が挙げられ、これらはヒトを対象としてもよいし、ペット等のヒト以外の動物を対象としてもよい。本発明の吸収性物品が吸収対象とする液体は特に限定されるものではなく、例えば、使用者の液状排泄物、体液等が挙げられる。
以下、使い捨てオムツを例として、本発明の吸収性物品の実施形態を説明する。
【0026】
本発明の一実施形態に係るオムツ1は、図1及び2に示すように、液透過性シート2と、液透過性シート2の下側に設けられた液不透過性シート3と、液透過性シート2の上側に設けられた補助シート4と、液透過性シート2及び液不透過性シート3の間に設けられた吸収体5とを備えている。液透過性シート2、液不透過性シート3及び補助シート4は、略同一寸法の砂時計形状であり、展開状態(使用者の着用前)のオムツ1は、図1に示すように、砂時計形状である。
【0027】
オムツ1は、使用者の液状排泄物を吸収する目的で使用者に着用される。この際、図3に示すように、補助シート4が内側(使用者の肌側)に、液不透過性シート3が外側(使用者の着衣側)に位置するように使用者に着用される。吸収対象となる液状排泄物としては、例えば、尿、経血、下り物等が挙げられるが、通常、主として尿である。
【0028】
オムツ1は、図1に示すように、着用時に使用者の腹部に当てられる前面部11と、着用時に使用者の股間部に当てられる中間部12と、着用時に使用者の尻部及び/又は背部に当てられる後面部13とを有しており、オムツ1が使用者に着用されると、図3に示すように、前面部11の両側部111a,111bと後面部13の両側部131a,131bとが互いに接合され、前面部11の端部112と後面部13の端部132とによってウエスト開口部が形成されるとともに、中間部12の両側部121a,121bが使用者の大腿部に当てられ、中間部12の両側部121a,121bによってレッグ開口部が形成される。また、図1に示すように、前面部11の端部112及び後面部13の端部132には弾性部材100a,100bが、中間部12の両側部121a,121bには弾性部材100c,100dが設けられており、オムツ1が使用者に着用されると、図3に示すように、弾性部材100a,100bの弾性収縮力によりウエスト開口部にウエストギャザーが形成されるとともに、弾性部材100c,100dの弾性収縮力によりレッグ開口部にレッグギャザー(レッグ側のカフ)が形成される。
【0029】
図1及び2に示すように、補助シート4の中央には開口部90が設けられており、液透過性シート2の一部(吸収体5を覆う部分)は補助シート4の開口部90から露出している。使用者の液状排泄物は、補助シート4の開口部90から進入し、液透過性シート2を通じて吸収体5に浸透し、吸収体5で吸収される。吸収体5に吸収された液状排泄物の漏れは、液不透過性シート3によって防止される。
【0030】
図1及び2に示すように、補助シート4の開口部90の両側には、液不透過性シートで形成された防漏カフ6a,6bが設けられている。図2に示すように、防漏カフ6a,6bの一方の端部は、液透過性シート2と補助シート4との間に挟まれて固定された固定端であり、他方の端部は、補助シート4の開口部90から露出する自由端である。図2に示すように、防漏カフ6a,6bの自由端には、弾性部材61a,62bが設けられており、オムツ1が使用者に着用されると、図3に示すように、レッグ開口部の内側に防漏カフ6a,6bが使用者の大腿部に向けて立ち上がる。
【0031】
液透過性シート2は、使用者の液状排泄物が透過し得るシートであり、使用者がオムツ1を着用したときの肌触りを向上させる目的で、使用者の肌(特に股間部)と接触する面に設けられている。
【0032】
液透過性シート2は、使用者の液状排泄物が透過し得る限り特に限定されるものではない。液透過性シート2としては、例えば、不織布、織布、液体透過孔が形成された合成樹脂フィルム、網目を有するネット状シート等が挙げられるが、これらのうち不織布が好ましい。
【0033】
不織布は、例えば、ウェブ(フリース)を形成し、繊維同士を物理的・化学的に結合させることにより製造することができ、この際、ウェブの形成方法としては、例えば、スパンボンド法、乾式法(カーディング方式、エアレイド方式)、湿式法等を用いることができ、結合方法としては、例えば、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、スパンレース法等を用いることができる。
【0034】
液透過性シート2の材料、厚み、目付、密度等は、使用者の液状排泄物が透過し得る範囲で適宜設定することができる。液透過性シート2として不織布を用いる場合、不織布を構成する繊維として、例えば、天然繊維(羊毛,コットン等)、再生繊維(レーヨン,アセテート等)、無機繊維(ガラス繊維,炭素繊維等),合成樹脂繊維(ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブチレン,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−アクリル酸エチル共重合体,エチレン−アクリル酸共重合体,アイオノマー樹脂等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタラート,ポリトリメチレンテレフタラート,ポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド)等を用いることができる。不織布を構成する繊維は、単一成分で構成されていてもよいし、芯・鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維で構成されていてもよい。不織布を構成する繊維の繊度は、好ましくは1.0〜20dtex、さらに好ましくは1.2〜4.4dtexであり、繊維長は、好ましくは5〜75mm、さらに好ましくは25〜51mmである。不織布の目付は、好ましくは10〜100g/m2、さらに好ましくは20〜35g/m2であり、繊維密度は、好ましくは0.001〜0.2g/cm3、さらに好ましくは0.015〜0.08g/cm3である。不織布の3g/cm2加重下における厚みは、好ましくは0.1〜3mmであり、さらに好ましくは0.5〜2mmである。
【0035】
液不透過性シート3は、使用者の液状排泄物が透過し得ないシートであり、吸収体5に吸収された液状排泄物の漏れを防止する目的で、使用者の着衣と接触する面に設けられている。液透不過性シート3は、着用時のムレを低減させるために、液不透過性に加えて、通気性を有することが好ましい。
【0036】
液不透過性シート3は、使用者の液状排泄物を透過し得ない限り特に限定されるものではない。液不透過性シート3としては、例えば、防水処理を施した不織布(例えば、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等)、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート等が挙げられる。
【0037】
補助シート4は、液透過性であってもよいし、液不透過性であってもよいが、通常は液不透過性である。補助シート4としては、例えば、防水処理を施した不織布(例えば、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等)、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート等が挙げられる。
【0038】
吸収体5は、非木材パルプと木材パルプとを含む混合材料で構成された吸収層である。なお、吸収体5は、吸収体5の崩壊を防止するためにティッシュ(図示しない)で覆われているが、吸収体5の崩壊を防止する必要がなければ、ティッシュを省略してもよい。
【0039】
吸収体5に含まれる非木材パルプの水中沈降時間は2〜5秒、好ましくは2.5〜4秒である。
【0040】
非木材パルプが多孔質構造(中空構造)であると、多孔質構造内に空気が含まれるため、非木材パルプの水中沈降時間が長くなる(すなわち水中沈降速度が遅くなる)。したがって、水中沈降時間が2〜5秒である非木材パルプは、多孔質構造(中空構造)を有すると考えられる。多孔質構造を有する非木材パルプは、比表面積及び空隙率が木材パルプよりも大きいので、吸液性は木材パルプよりも大きい。一方、多孔質構造の液体保持力が弱いので、多孔質構造を有する非木材パルプの保液性は、木材パルプと同程度又はそれよりも小さい。但し、多孔質構造を有する非木材パルプは、木材パルプよりも加圧時(圧縮時)の空隙率が大きいので、加圧時保液性は木材パルプよりも大きい。このように、多孔質構造を有する非木材パルプの吸液性及び加圧時保液性は、木材パルプよりも優れている一方、通常時(非加圧時)保液性は、木材パルプよりも劣っている。
【0041】
したがって、吸収体5は、水中沈降時間が2〜5秒である非木材パルプと、木材パルプとを含むことにより、非木材パルプの優れた吸液性及び加圧時保液性と、木材パルプの優れた通常時(非加圧時)保液性とを兼ね備えている。これにより、吸収体5は、使用者の液状排泄物を速やかに吸収するとともに、吸収体5への加圧による液状排泄物の染み出し(リウエット)を防止する。
【0042】
また、非木材パルプの多孔質構造の液体保持力が弱いので、液状排泄物は非木材パルプから木材パルプに速やかに移行する。したがって、吸収体5に繰り返し液状排泄物を吸収させても、吸収体5は優れた吸液性を発揮する。例えば、吸収体5は、吸収体5に人工尿40mLを吸収させた後、人工尿40mLを8mL/秒の滴下速度で滴下したときの吸収時間が10秒以下であるという優れた吸液性を発揮する。なお、人工尿としては、例えば、0.9%生理食塩水が用いられる。
【0043】
非木材パルプの水中沈降時間は、非木材パルプが水面に接してから水面下に沈降するまでの時間であり、具体的には、次のようにして測定された時間である。円筒型のカゴ(重量3g、直径50mm、深さ80mm)の中に、5.0gの非木材パルプを均一に詰める。なお、カゴは、銅線(直径0.4mm)で形成されており、銅線間隔は20mmである。2Lビーカーに水深が200mmになるまでイオン交換水を入れる。非木材パルプを詰めたカゴを横にし、2Lビーカーの水面に対して10mmの高さから落とし、カゴが水面に接してから水面下に沈むまでの時間(秒)を測定し、これを水中沈降時間(秒)とする。
【0044】
吸収体5に含まれる非木材パルプは、水中沈降時間が2〜5秒であるという特性に加え、下記特性のうち1種又は2種以上を有することが好ましい。
・非木材パルプの見かけ嵩密度が0.04〜0.07g/cm3である。
・非木材パルプの人工尿吸収量が自重の20倍以上である。
・非木材パルプの平均繊維径が8〜25μm(好ましくは10〜20μm)である。
・非木材パルプのリグニン含有量が0.5質量%以下(好ましくは0.3質量%以下)である。
【0045】
見かけ嵩密度が0.04〜0.07g/cm3である非木材パルプは、比表面積及び空隙率が木材パルプよりも大きいので、木材パルプよりも優れた吸液性及び加圧時保液性を有する。非木材パルプの見かけ嵩密度が0.04g/cm3よりも小さいと、吸収体5の強度及び保形性が不十分となる可能性があり、非木材パルプの見かけ嵩密度が0.07g/cm3よりも大きいと、吸収体5の吸液量が不十分となる可能性がある。
【0046】
非木材パルプの見かけ嵩密度は、次のようにして算出される。非木材パルプ10gを100mm×100mmに積層し、その上に100mm×100mmの板を載せ、板の上に100g荷重の重りを載せる。重りを載せてから10秒後の積層パルプの厚みを見かけ嵩(cm3)とし、見かけ嵩密度(g/cm3)を算出する。
【0047】
人工尿吸収量が自重の20倍以上である非木材パルプは、木材パルプよりも優れた吸液性を有する。非木材パルプの人工尿吸収量が自重の20倍よりも小さいと、木材パルプの吸液性とあまり変わらないので、非木材パルプの作用効果が小さくなる。なお、人工尿吸収量を測定する際、人工尿としては、例えば0.9%生理食塩水が用いられる。
【0048】
平均繊維径が8〜25μmである非木材パルプは、単位質量あたりの繊維本数(すなわち容積)が木材パルプよりも多いので、見かけ嵩密度が木材パルプよりも小さくなり、比表面積及び空隙率が木材パルプよりも大きくなる。また、繊維間距離が木材パルプよりも小さくなり、毛細管力が木材パルプよりも大きくなる。したがって、平均繊維径が8〜25μmである非木材パルプは、木材パルプよりも優れた吸液性及び加圧時保液性を有する。また、繊維本数の増加により、繊維同士の絡み合いが増加するので、吸収体5を軽量化・薄型化しても吸収体5の強度が保持される。
【0049】
リグニン含有量が0.5質量%以下である非木材パルプは、リグニンに起因する繊維径の増加及び親水性の低下が防止され、木材パルプよりも優れた吸液性及び加圧時保液性を有する。
【0050】
木材パルプの原料としては、例えば、N材(針葉樹)、L材(広葉樹)等を挙げられる。木材パルプは、木材の幹の樹皮を取り除いた後、そのまま又はチップ化したものを機械的、半化学的又は化学的に処理して製造することができる。
【0051】
非木材パルプの一般的な原料としては、例えば、リンター、マニラ麻、ケナフ、エスパルト草、ワラ、竹、バナナ等が挙げられるが、上記特性を有する非木材パルプを簡便かつ効率よく取得するためには、マニラ麻の葉鞘又はバナナの茎を原料とすることが好ましい。マニラ麻の葉鞘を原料とする場合、葉鞘の芯近傍部又は芯と外皮との中間部を用いることが好ましい。
【0052】
図6を参照して、マニラ麻の葉鞘について説明する。図6に示すように、マニラ麻の葉鞘40の断面構造は、芯41、第1層42、第2層43、第3層44及び最外層45に分類される。マニラ麻の葉鞘の芯近傍部は、マニラ麻の葉鞘40の芯に近い部分(第1層42及び第2層43)に該当し、マニラ麻の葉鞘の芯と外皮との中間部は、マニラ麻の葉鞘40の最外層45に近い部分(第3層44)に該当する。
【0053】
マニラ麻を原料とするアバカ繊維は、マニラ麻の原料となる部分に基づいて、AD、EF、S2、S3等の階級に分類される。ADは、マニラ麻40の第1層42を原料としたアバカ繊維であり、光沢のある純白の繊維である。EFは、マニラ麻40の第2層43を原料としたアバカ繊維であり、柔軟純粋繊維真中部分の繊維であり、淡い象牙色である。S2は、マニラ麻40の第3層44を原料としたアバカ繊維であり、淡黄土色又は淡紫色である。S3は、マニラ麻40の最外層45を原料としたアバカ繊維であり、暗赤色又は紫色であり、主にロープに使用される。
【0054】
また、マニラ麻を原料とするアバカ繊維は、マニラ麻の原料となる部分に基づいて、I、G、H等の階級に分類される。Iは、マニラ麻40の第2層43を原料としたアバカ繊維であり、淡黄色である。Gは、マニラ麻40の第3層44を原料としたアバカ繊維であり、鈍暗白色であり、結束が発生しやすい。Hは、マニラ麻40の最外層45を原料としたアバカ繊維であり、黒色に近い茶褐色であり、主にロープに使用される。
【0055】
また、マニラ麻を原料とするアバカ繊維は、マニラ麻の原料となる部分に基づいて、JK、M1等の階級に分類される。JKは、マニラ麻40の第3層44を原料としたアバカ繊維であり、淡褐色又は淡緑色であり、主にパルプとして使用される。M1は、マニラ麻40の最外層45を原料としたアバカ繊維であり、暗褐色から黒色の繊維であり、主にロープに使用される。
【0056】
マニラ麻の葉鞘の芯近傍部を原料とするアバカ繊維は、AD、EF又はIのアバカ繊維に該当し、マニラ麻の葉鞘の芯と外皮との中間部を原料とするアバカ繊維は、S2、G又はJKのアバカ繊維に該当する。また、マニラ麻の外皮を原料とするアバカ繊維は、S3、H又はM1のアバカ繊維に該当する。
【0057】
吸収体5に含まれる非木材パルプと木材パルプとの質量比は、吸収体5が備えるべき特性(例えば、吸収性、軽量性等)に応じて適宜調節し得るが、好ましくは3:1〜1:3であり、さらに好ましくは2:1〜1:2である。両者の質量比がこのような範囲にあると、非木材パルプの優れた吸液性及び加圧時保液性と、木材パルプの優れた通常時(非加圧時)保液性とが効果的に発揮される。
【0058】
非木材パルプ及び木材パルプの合計含有量は、吸収体5が備えるべき特性(例えば、吸収性、軽量性等)に応じて適宜調節し得るが、好ましくは吸収体5の30質量%以上であり、さらに好ましくは吸収体5の50質量%以上である。両者の合計含有量がこのような範囲にあると、非木材パルプの優れた吸液性及び加圧時保液性と、木材パルプの優れた通常時(非加圧時)保液性とが効果的に発揮される。
【0059】
吸収体5は、非木材パルプ及び木材パルプに加えて、吸収性ポリマーを含むことが好ましい。非木材パルプの多孔質構造の液体保持力は弱いので、液状排泄物は非木材パルプから吸収性ポリマーに速やかに移行する。したがって、吸収体5が吸収性ポリマーをさらに含むことにより、吸収体5に繰り返し液状排泄物を吸収させても、吸収体5は優れた吸液性を発揮する。なお、吸収性ポリマー間には非木材パルプが入り込むため、吸収性ポリマーが液状排泄物を吸収して膨潤(ゲル形成)しても、膨潤した吸収性ポリマー同士の合着が防止される。したがって、液状排泄物を吸収して膨潤した吸収性ポリマーは、液状排泄物が吸収体5に浸透する際の障壁(ゲルブロッキング)とならない。これにより、液状排泄物が吸収体5に浸透せずに溢れ出す現象(オーバーフロー現象)が防止される。
【0060】
吸収性ポリマーは、好ましくは高吸収性ポリマーである。高吸収性ポリマーは、架橋構造を有する親水性ポリマーであり、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等が挙げられるが、これらのうちポリアクリル酸塩系(特に、ポリアクリル酸ナトリウム系)が好ましい。
【0061】
吸収体5に含まれる吸収性ポリマーの量は、オムツ1が備えるべき特性(例えば吸収性、軽量性等)に応じて適宜調節し得るが、吸収体5の通常20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%である。吸収性ポリマーの含有量がこのような範囲にあると、オムツ1の吸収性(吸液速度)及び保液性(リウエット防止作用)の両機能が向上する。
【0062】
吸収体5の厚み、目付、密度等は、オムツ1が備えるべき特性(例えば吸収性、軽量性等)に応じて適宜調節し得るが、厚みは、通常1〜10mm、好ましくは2〜8mm、さらに好ましくは3〜7mmであり、目付は、通常100〜1000g/m2、好ましくは200〜800g/m2、さらに好ましくは400〜600g/m2であり、密度は、通常0.01〜1g/cm3、好ましくは0.03〜0.5g/cm3、さらに好ましくは0.05〜0.3g/cm3である。厚み、目付、密度がこのような範囲にあると、オムツ1の吸収性(吸液速度)及び保液性(リウエット防止作用)の両機能が向上する。
【0063】
オムツ1は、常法に従って製造することができ、シート同士の接着には、例えば、ホットメルト型接着剤等の接着剤を用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
【0065】
〔試験例1〜7〕
(1)粉砕パルプ1(試験例品1)の調製
マニラ麻の葉鞘の芯近傍部を原料とするアバカBKP(小倉貿易(株)製、AK104)を繊維状に粉砕して粉砕パルプ1を調製した。なお、BKPは、晒しクラフトパルプを意味する(以下同様)。
【0066】
(2)粉砕パルプ2(試験例品2)の調製
マニラ麻の葉鞘の芯と外皮との中間部を原料とするアバカBKP(小倉貿易(株)製、AK102)を繊維状に粉砕して粉砕パルプ2を調製した。
【0067】
(3)粉砕パルプ3(試験例品3)の調製
マニラ麻の外皮近傍部を原料とするアバカBKP(小倉貿易(株)製、AK102)を繊維状に粉砕して粉砕パルプ3を調製した。
【0068】
(4)粉砕パルプ4(試験例品4)の調製
バナナの茎を原料とするバナナBKP(小倉貿易(株)製)を繊維状に粉砕して粉砕パルプ4を調製した。
【0069】
(5)粉砕パルプ5(試験例品5)の調製
針葉樹(米松)を原料とする木材パルプ(針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP))を繊維状に粉砕して粉砕パルプ5を調製した。
【0070】
(6)粉砕パルプ6(試験例品6)の調製
さとうきび(絞りかす)を原料とするバカスBKP(小倉貿易(株)製)を繊維状に粉砕して粉砕パルプ6を調製した。
【0071】
(7)粉砕パルプ7(試験例品7)の調製
ケナフ(靭皮)を原料とするケナフBKP(小倉貿易(株)製)を繊維状に粉砕して粉砕パルプ7を調製した。
【0072】
(8)粉砕パルプ1〜7(試験例品1〜7)の評価試験
粉砕パルプ1〜7の平均繊維径(μm)、リグニン含有量(重量%)、沈降時間(秒)、繊維比重(g/cm3)、見かけ嵩密度(g/cm3)、吸液量(g/g)、加圧時吸液量(g/g)及び保液量(g/g)を、以下のようにして測定した。
【0073】
<平均繊維径>
Metso automation製カヤーニ繊維長測定器FiberLab3.8を使用して、約20000本のパルプの繊維径を測定し、パルプの平均繊維径(μm)を算出した。
【0074】
<リグニン含有量>
パルプのリグニン含有量(重量%)は、P.J.Van Soest等の方法(Proc.Nutr.Soc.,32123(1973))に準じて測定した。
【0075】
<沈降時間>
円筒型のカゴ(重量3g、直径50mm、深さ80mm)の中に、5.0gのパルプ繊維を均一に詰めた。なお、カゴは、銅線(直径0.4mm)で形成されており、銅線間隔は20mmである。2Lビーカーに水深が200mmになるまでイオン交換水を入れた。パルプ繊維を詰めたカゴを横にし、2Lビーカーの水面に対して10mmの高さから落とし、カゴが水面に接してから水面下に沈むまでの時間(秒)を測定し、これを沈降時間(秒)とした。
【0076】
<繊維比重>
パルプの繊維比重(g/cm3)は、Heガス比較式比重計(東京サイエンス社製)を用いて、JIS M 8717に準拠して測定した。
【0077】
<見かけ嵩密度>
粉砕パルプ10gを100mm×100mmに積層し、その上に100mm×100mmの板を載せ、板の上に100g荷重の重りを載せた。重りを載せてから10秒後の積層パルプの厚みを見かけ嵩(cm3)とし、見かけ嵩密度(g/cm3)を算出した。
【0078】
<吸液量,加圧時吸液量,保液量>
(a)2Lビーカーに0.9%生理食塩水を1000mL入れ、液温を測定した。0.9%生理食塩水は、27.0gの塩化ナトリウム(試薬1級)を3Lビーカーに入れた後、イオン交換水と塩化ナトリウムとの合計量が3000gになるまで、3Lビーカーにイオン交換水を加えることによって調製した。
(b)250メッシュのナイロンメッシュ(NBC工業製,N−NO.250HD)を200mm×200mmの大きさに切り出し(図4(a)に示すナイロンメッシュ21)、重量(x(g))を測定した後、図4(a)に示すようにB−B一点鎖線の部分を折って、ナイロンメッシュ21を半分に折った。図4(b)に示すように、折られた部分が右側になるように配置した後、下端から5mm上の位置、右端から5mm左の位置及び左端から5mm右の位置にヒートシール22形成して、上端23が開放しているナイロンメッシュ袋24を作製した。重量を予め測定しておいたサンプル(y(g))をナイロンメッシュ袋24に入れ、不図示のヒートシールを形成して、ナイロンメッシュ袋24の開放している上端23を閉じた。
(c)サンプル入りの袋を0.9%生理食塩水に完全浸漬させ、3分間放置した。
(d)放置後、サンプル入りの袋を引き上げ、3分間、自然放置にて水切りを行った。
(e)サンプル入りの袋の重量(z1(g))を測定した。
(f)次式から通常時(非加圧時)の吸液量を計算した。
吸液量(g/g)=((z1−x)−y)/y
(g)(e)の後、サンプル入りの袋の上にアクリル板を載せ、アクリル板の上にさらに、100mm×100mmあたり3.5kg荷重となる重りを載せ、3分間放置した。
(h)重り及びアクリル板を取り除き、サンプル入りの袋の重量(z2(g))を測定した。
(i)次式から加圧時吸液量を計算した。
加圧時吸液量(g/g)=((z2−x)−y)/y
(j)(h)の後、サンプル入りの袋を遠心分離器で脱水した。この際、遠心分離器は国産遠心(株)社製分離機 型H130を用いた。遠心分離機の回転数は、850rpm(150G)とした。
(k)脱水後のサンプル入りの袋の重量(z3)を測定した。
(l)次式から保液量を計算した。
保液量(g/g)=((z3−x)−y)/y
【0079】
粉砕パルプ1〜7の平均繊維径(μm)、リグニン含有量(重量%)、沈降時間(秒)、繊維比重(g/cm3)、見かけ嵩密度(g/cm3)、吸液量(g/g)、加圧時吸液量(g/g)及び保液量(g/g)を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
粉砕パルプ1、2及び4(アバカBKP(AK104,102),バナナBKP)は、以下の全ての特性を満たしたが、その他の粉砕パルプは、1種以上の特性を満たさなかった。
・水中沈降時間が2〜5秒である。
・見かけ嵩密度が0.04〜0.07g/cm3である。
・人工尿吸収量が自重の20倍以上である。
・平均繊維径が8〜25μmである。
・リグニン含有量が0.5質量%以下である。
【0082】
また、粉砕パルプ1、2及び4(アバカBKP(AK104,102),バナナBKP)の通常時(非加圧時)吸液量及び加圧時吸液量は、粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))よりも優れていたが、保液量は、粉砕パルプ5と同程度又はそれよりも劣っていた。
【0083】
このようなアバカパルプ及びバナナパルプの特性は、次の理由に基づくと考えられる。アバカパルプ、バナナパルプ及び木材パルプのそれぞれの繊維の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図5に示す。図5(a)はアバカパルプの繊維の断面のSEM写真であり、図5(b)はバナナパルプの繊維の断面のSEM写真であり、図5(c)は木材パルプの繊維の断面のSEM写真である。図5に示すように、アバカパルプ及びバナナパルプは多孔質構造(中空構造)である一方、木材パルプは多孔質構造(中空構造)ではない。アバカパルプ及びバナナパルプは、多孔質構造の空隙内部に水分を取り込むことができるので、吸液性及び加圧時保液性が優れているものと推測される。
【0084】
〔実施例1〜5及び比較例1〜5〕
(1)実施例品1の作製
粉砕パルプ1(アバカBKP(AK104))、粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が188g/m2(粉砕パルプ1)、62g/m2(粉砕パルプ5)及び250g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料1を調製した。木枠(縦:100mm,横:100mm)の内側にティシュ(目付:16g/m2)を配置し、ティシュ上に混合材料1を積層した。ティシュ及び混合材料1の積層体を取り出し、混合材料1上に別のティシュ(目付:16g/m2)を載せ、ティシュで覆われた吸収体1を作製した。吸収体1の上面側に表面シートとしてエアースルー不織布(縦:100mm,横:100mm,目付:25g/m2)を配置し、吸収性物品サンプル(実施例品1)を作製した。
【0085】
(2)実施例品2の作製
粉砕パルプ1(アバカBKP(AK104))、粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が125g/m2(粉砕パルプ1)、125g/m2(粉砕パルプ5)及び250g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料2を調製し、混合材料2を用いて、実施例品1と同様にして、吸収性物品サンプル(実施例品2)を作製した。
【0086】
(3)実施例品3の作製
粉砕パルプ1(アバカBKP(AK104))、粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が62g/m2(粉砕パルプ1)、188g/m2(粉砕パルプ5)及び250g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料3を調製し、混合材料3を用いて、実施例品1と同様にして、吸収性物品サンプル(実施例品3)を作製した。
【0087】
(4)実施例品4の作製
粉砕パルプ4(バナナBKP)、粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が125g/m2(粉砕パルプ4)、125g/m2(粉砕パルプ5)及び250g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料4を調製し、混合材料4を用いて、実施例品1と同様にして、吸収性物品サンプル(実施例品4)を作製した。
【0088】
(5)実施例品5の作製
粉砕パルプ1(アバカBKP(AK104))、粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が75g/m2(粉砕パルプ1)、75g/m2(粉砕パルプ5)及び350g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料5を調製し、混合材料5を用いて、実施例品1と同様にして、吸収性物品サンプル(実施例品5)を作製した。なお、実施例品5は、実施例品1〜4よりもSAP比率を高めた仕様である。
【0089】
(6)比較例品1の作製
粉砕パルプ1(アバカBKP(AK104))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が250g/m2(粉砕パルプ1)及び250g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料6を調製し、混合材料6を用いて、実施例品1と同様にして、吸収性物品サンプル(比較例品1)を作製した。
【0090】
(7)比較例品2の作製
粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が250g/m2(粉砕パルプ5)及び250g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料7を調製し、混合材料7を用いて、実施例品1と同様にして、吸収性物品サンプル(比較例品2)を作製した。
【0091】
(8)比較例品3の作製
粉砕パルプ3(アバカBKP(AK101))、粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が125g/m2(粉砕パルプ3)、125g/m2(粉砕パルプ5)及び250g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料8を調製し、混合材料8を用いて、実施例品1と同様にして、吸収性物品サンプル(比較例品3)を作製した。
【0092】
(9)比較例品4の作製
粉砕パルプ7(ケナフBKP)、粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が125g/m2(粉砕パルプ7)、125g/m2(粉砕パルプ5)及び250g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料9を調製し、混合材料9を用いて、実施例品1と同様にして、吸収性物品サンプル(比較例品4)を作製した。
【0093】
(10)比較例品5の作製
粉砕パルプ5(木材パルプ(NBKP))及びSAP(住友精化製,アクアキープSA60S)を、それぞれの目付が150g/m2(粉砕パルプ5)及び350g/m2(SAP)となるように均一に混合して混合材料10を調製し、混合材料10を用いて、実施例品1と同様にして、吸収性物品サンプル(比較例品5)を作製した。なお、比較例品5は、比較例品1〜4よりもSAP比率を高めた仕様である。
【0094】
(11)実施例品1〜5及び比較例品1〜5の評価試験
実施例品1〜5及び比較例品1〜5の吸収体の重量及び厚みを、以下のようにして測定した。
【0095】
<重量,厚み>
吸収性物品の表面シート全体に霧状の水0.1gを均一に吹きかけ、プレス機を用いて均一に4MPaの荷重を付加して密度を一定にした後、厚み計(PEACOCK製,型式J−B,バネなし)を用いて、吸収体の重量(g)及び厚み(mm)を測定した。
【0096】
実施例品1〜5及び比較例品1〜5の吸収時間及びリウエット量を、以下のようにして測定した。また、上記試験例と同様にして、吸液量及び加圧時吸液量を測定した。
【0097】
<吸収時間,リウエット量>
(a)円筒(内径:60φ,高さ:50mm)を、吸収性物品の表面シート上(吸収体中央部分に相当する部分)に設置した。
(b)円筒内に0.9%生理食塩水(以下「人工尿」という)を8mL/秒の注入速度で40mL注入した。
(c)人工尿の注入開始から、人工尿が吸収性物品に吸収されて円筒内から消えるまでの時間(秒)を計測し、これを吸収時間1(秒)とした。なお、人工尿40mLを注入するのに5秒を要するので、吸収時間が5秒に近いほど、吸収速度が大きいことになる。
(d)人工尿の注入開始から5分後に、さらに人工尿を8mL/秒の注入速度で40mL注入し、吸収時間1と同様に、円筒内から消えるまでの時間(秒)を計測し、これを吸収時間2(秒)とした。
(e)さらに5分経過後、吸収性物品から円筒を取り除き、円筒が設置されていた位置に、予め重量を測定しておいた約50gのろ紙(100mm×100mm)を設置し、ろ紙の上に、100mm×100mmあたり3.5kgの荷重を付加する重りを設置した。
(f)重りを設置してから3分後にろ紙を回収し、ろ紙の重量を測定した。吸収性物品への設置前後のろ紙の重量から、ろ紙に吸収された人工尿の量を算出し、これをリウエット量(g)とした。
【0098】
実施例品1〜5及び比較例品1〜5の吸収時間1、吸収時間2、リウエット量、吸液量及び加圧時吸液量を表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
実施例品1〜4と比較例品1とを比較すると、いずれも総パルプ含有量が50重量%であるにも関わらず、吸液量及び加圧時吸液量は同程度であるか又は実施例品1〜4の方が大きく、リウエット量及び吸収時間2は同程度であるか又は実施例品1〜4の方が小さかった。したがって、非木材パルプ(アバカBKP(AK104),バナナBKP)と木材パルプ(NBKP)とを混合した場合、非木材パルプ単独の場合よりも、通常時(非加圧時)の吸液性、加圧時吸液性、保液性、及び液体を繰り返し吸収させた場合の吸液性が向上することが判明した。
【0101】
実施例品1〜4と比較例品2とを比較すると、いずれも総パルプ含有量が50重量%であるにも関わらず、吸液量及び加圧時吸液量は実施例品1〜4の方が大きく、リウエット量及び吸収時間2は実施例品1〜4の方が小さかった。また、実施例品5と比較例品5とを比較すると、いずれも総パルプ含有量が30重量%であるにも関わらず、吸液量及び加圧時吸液量は同程度であるか又は実施例品5の方が大きく、リウエット量、吸収時間1及び吸収時間2は実施例品1〜4の方が小さかった。したがって、非木材パルプ(アバカBKP(AK104),バナナBKP)と木材パルプ(NBKP)とを混合した場合、木材パルプ単独の場合よりも、通常時(非加圧時)の吸液性、加圧時吸液性、保液性、及び液体を繰り返し吸収させた場合の吸液性が向上することが判明した。
【0102】
実施例品1〜4と比較例品3,4とを比較すると、いずれも総パルプ含有量が50重量%であるにも関わらず、吸液量及び加圧時吸液量は同程度であるか又は実施例品1〜4の方が大きく、リウエット量及び吸収時間2は同程度であるか又は実施例品1〜4の方が小さかった。したがって、木材パルプと混合する非木材パルプがアバカBKP(AK104),バナナBKPの場合、他の非木材パルプの場合よりも、通常時(非加圧時)の吸液性、加圧時吸液性、保液性、及び液体を繰り返し吸収させた場合の吸液性が向上することが判明した。
【符号の説明】
【0103】
1 使い捨てオムツ(吸収性物品)
2 液透過性シート
3 液不透過性シート
5 吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非木材パルプと木材パルプとを含む吸収体であって、
前記非木材パルプの水中沈降時間が2〜5秒である、前記吸収体。
【請求項2】
前記非木材パルプの見かけ嵩密度が0.04〜0.07g/cm3である、請求項1記載の吸収体。
【請求項3】
前記非木材パルプの人工尿吸収量が自重の20倍以上である、請求項1又は2記載の吸収体。
【請求項4】
前記非木材パルプの平均繊維径が8〜25μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
前記非木材パルプのリグニン含有量が0.5質量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項6】
前記非木材パルプが、マニラ麻の葉鞘を原料とするアバカパルプ又はバナナの茎を原料とするバナナパルプである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項7】
前記アバカパルプが、マニラ麻の葉鞘の芯近傍部又は芯と外皮との中間部を原料とするアバカパルプである、請求項6記載の吸収体。
【請求項8】
前記非木材パルプと前記木材パルプとの質量比が3:1〜1:3である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項9】
前記非木材パルプ及び前記木材パルプの合計含有量が、前記吸収体の30質量%以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項10】
吸収性ポリマーをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項11】
前記吸収体に人工尿40mLを吸収させた後、人工尿40mLを8mL/秒の滴下速度で滴下したときの吸収時間が10秒以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項12】
液透過性シート、
液不透過性シート、及び
前記液透過性シートと前記液不透過性シートとの間に設けられた吸収体
を備えた吸収性物品であって、
前記吸収体が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の吸収体である前記吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−75014(P2013−75014A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216542(P2011−216542)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】