説明

吸収式冷温水システム

【課題】排熱等を利用したベース機をより優先的に運転させつつ、ピーク時において適切な冷却効果を得ることが可能な吸収式冷温水システムを提供する。
【解決手段】吸収式冷温水システム1は、排熱及び再生可能エネルギーの少なくとも一方を加熱源としたベース機2と、燃料を燃焼させて発生する熱を加熱源とした直焚き機3と、これらの運転を制御する制御装置4とを備えている。また、制御装置4は、ベース機2について、室内機5に供給する冷水温度が第1温度(例えば7℃)となるように運転を制御すると共に、直焚き機3について、室内機5から戻ってくる冷水温度が第2温度(例えば12.5℃)となるように運転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷温水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸発器、吸収器、再生器及び凝縮器の循環サイクルによって冷水を得ると共に、この冷水を室内機に供給して冷房に利用する吸収式冷温水機が知られている。また、吸収式冷温水機では、室内機に供給される冷水温度に基づいて制御を行うようになっている。すなわち、冷水温度が高まると燃焼を強め、冷水温度が低くなると燃焼を弱める。
【0003】
また、このような吸収式冷温水機には、再生器に供給された吸収液を加熱するために、太陽熱などの再生可能エネルギーや排熱を加熱源として利用するものと、燃焼器などの直焚き用の加熱源を備えるものとがあり、これら双方の吸収式冷温水機は組み合わされて使用されることがある。
【0004】
また、双方の吸収式冷温水機が組み合わされた吸収式冷温水システムにおいて冷房能力を得るにあたっては、なるべく排熱等を利用することが好ましい。このため、冷房負荷が小さいときには排熱等を利用した吸収式冷温水機(以下ベース機という)のみを使用し、冷房負荷が高まったときにベース機と直焚きによる吸収式冷温水機(以下直焚き機)とを併用することが望ましい。
【0005】
このため、従来の吸収式冷温水システムにおいては、両者の運転温度に差を設けることとしている。すなわち、直焚き機は、ベース機よりも設定温度を高くしておく。これにより、冷水温度がやや高くなったとしてもベース機しか運転されず、直焚き機は停止したままとすることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−133637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の吸収式冷温水システムにおいて、直焚き機の設定温度を高くすると、ピーク運転時における冷水温度も高まってしまい、冷却効果に支障をきたしてしまう。そこで、設定温度を高くしないとすると、ベース機を優先的に運転させることに支障をきたしてしまう。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、排熱等を利用したベース機をより優先的に運転させつつ、ピーク時において適切な冷却効果を得ることが可能な吸収式冷温水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吸収式冷温水システムは、排熱及び再生可能エネルギーの少なくとも一方を加熱源とし、蒸発器、吸収器、再生器及び凝縮器による循環サイクルによって室内機にて使用される冷水を得る第1吸収式冷温水機と、燃料を燃焼させて発生する熱を加熱源とし、蒸発器、吸収器、再生器及び凝縮器による循環サイクルによって室内機にて使用される冷水を得る第2吸収式冷温水機と、第1吸収式冷温水機と第2吸収式冷温水機との運転を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、第1吸収式冷温水機について、室内機に供給する冷水温度が第1温度となるように運転を制御すると共に、第2吸収式冷温水機について、室内機から戻ってくる冷水温度が第2温度となるように運転を制御することを特徴とする。
【0010】
この吸収式冷温水システムによれば、第1吸収式冷温水機について、室内機に供給する冷水温度が第1温度となるように運転を制御すると共に、第2吸収式冷温水機について、室内機から戻ってくる冷水温度が第2温度となるように運転を制御する。すなわち、第1吸収式冷温水機は出口温度制御であり、第2吸収式冷温水機は入口温度制御である。このように、制御方式を変えたとしても、負荷率100%の運転において適切な温度の冷水を室内機に供給することができるため、適切な冷却効果を得ることができる。
【0011】
また、第2吸収式冷温水機において入口温度制御を行っているため、定格運転における温度の冷水が入力されたとしても、運転を開始することなく停止したままとすることができる。一例を挙げると、定格運転で12.5℃の冷水を入力して7℃の冷水を出力し、且つ、出口温度制御において例えば10℃で運転を開始し7℃運転を停止するものとする(2℃オフセットさせた場合には、12℃で運転を開始し9℃運転を停止する)。この場合、出口温度制御であると、12.5℃の冷水を入力すると運転を開始してしまう。これに対して、入口温度制御であると例えば15.5℃で運転を開始し12.5℃で運転を停止することとなり、12.5℃の冷水を入力しても運転を開始しないこととなる。このように、制御方式の違いから、仮に高い温度の冷水が第2吸収式冷温水機に入力されたとしても、運転を開始し難くすることができる。
【0012】
従って、排熱等を利用したベース機をより優先的に運転させつつ、ピーク時において適切な冷却効果を得ることができる。
【0013】
また、この吸収式冷温水システムにおいて、制御手段は、第2吸収式冷温水機の入口温度が、第1吸収式冷温水機の定格運転時における入口温度よりも所定温度高い温度にて第2吸収式冷温水機の運転を停止し、この停止温度よりも更に高い温度にて第2吸収式冷温水機の運転を開始することが好ましい。
【0014】
この吸収式冷温水システムによれば、第1吸収式冷温水機の定格運転時における入口温度よりも所定温度高い温度にて第2吸収式冷温水機の運転を停止し、停止温度よりも更に高い温度にて第2吸収式冷温水機の運転を開始する。このように、運転及び停止の温度を高い側へオフセットさせることで、一層第2吸収式冷温水機よりも第1吸収式冷温水機を優先的に運転させ易くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、排熱等を利用したベース機をより優先的に運転させつつ、ピーク時において適切な冷却効果を得ることが可能な吸収式冷温水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る吸収式冷温水システムを示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係るベース機となる吸収式冷温水機の基本構成の一例を示す構成図である。
【図3】図2に示したベース機の制御の様子を示す図である。
【図4】本実施形態に係る直焚き機となる吸収式冷温水機の基本構成の一例を示す構成図である。
【図5】図4に示した直焚き機の制御の様子を示す図である。
【図6】比較例となる直焚き機の制御の様子を示す図である。
【図7】比較例に係る吸収式冷温水システムの詳細動作を示すタイミングチャートである。
【図8】本実施形態に係る吸収式冷温水システムの詳細動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1を示すブロック図である。図1に示すように、吸収式冷温水システム1は、ベース機(第1吸収式冷温水機)2と、直焚き機(第2吸収式冷温水機)3と、制御装置(制御手段)4とを有し、制御装置4によりベース機2及び直焚き機3が制御され、冷水を室内機5に供給するものである。室内機5は、供給された冷水を利用して冷房効果を得るものである。
【0018】
このような吸収式冷温水システム1においてベース機2及び直焚き機3から出力された冷水は混合されたうえで室内機5に供給される。室内機5では冷水が冷房に利用されて昇温し、昇温した冷水が再度ベース機2及び直焚き機3に供給されて冷却される。その後冷水は、室内機5と、ベース機2及び直焚き機3とを循環することとなる。
【0019】
図2は、本実施形態に係るベース機2となる吸収式冷温水機の基本構成の一例を示す構成図である。なお、本実施形態では、いわゆる二重効用吸収冷温水機を一例として説明するが、これに限られるものではなく、ベース機及び直焚き機は、単効用や三重効用の吸収冷温水機であってもよい。
【0020】
ベース機2は、定格運転において室内機5から12.5℃の冷水を入力して7℃の冷水を出力するように運転するものであり、図2に示すように、高温再生器10、分離器12、低温再生器14、凝縮器16、蒸発器18、吸収器20、溶液循環ポンプ22、高温及び低温溶液熱交換器24,26を備え、これらを配管接続することにより吸収冷凍サイクルを構成したものである。
【0021】
高温再生器10は、例えば冷媒となる水(以下、冷媒が蒸気化したものを冷媒蒸気と称し、冷媒が液化したものを液冷媒と称する)と、吸収液となる臭化リチウム(LiBr)とが混合された希溶液(吸収液の濃度が薄い溶液)を加熱するものである。この高温再生器10には加熱装置10aが設けられている。加熱装置10aは、排熱や太陽熱などの再生可能エネルギーにより希溶液を加熱する構成となっている。また、高温再生器10は、希溶液を加熱して希溶液から蒸気を放出させることにより、冷媒蒸気と中間濃溶液(吸収液の濃度が中程度の溶液)とを生成する。高温再生器10は、これら冷媒蒸気と中間濃溶液とを分離器12に供給する。
【0022】
分離器12は、冷媒蒸気と中間濃溶液とを分離するものである。また、分離器12は、分離した中間濃溶液を高温溶液熱交換器24に供給し、分離した冷媒蒸気を低温再生器14に供給する。
【0023】
高温溶液熱交換器24は、分離器12から供給された中間濃溶液と、吸収器20から溶液循環ポンプ22により送られてきた希溶液とを熱交換するものである。また、高温溶液熱交換器24は、熱交換により温度が低下した中間濃溶液を低温再生器14に供給する。
【0024】
低温再生器14は、熱交換により温度が低下した中間濃溶液と、分離器12から供給された冷媒蒸気と熱交換するものである。この低温再生器14において、中間濃溶液は再加熱されることとなり、再び蒸気を放出して濃度の高い濃溶液となる。また、低温再生器14は、濃溶液を低温溶液熱交換器26に供給し、冷媒蒸気を凝縮器16に供給する。
【0025】
凝縮器16は、低温再生器14から供給された冷媒蒸気を液化させるものである。この凝縮器16内には、冷水伝熱管16aが挿通されている。冷水伝熱管16aには冷却水が供給されており、蒸発した冷媒蒸気は冷水伝熱管16a内の冷却水によって液化する。さらに、凝縮器16は液冷媒貯蔵室16bを有しており、液化した冷媒は液冷媒貯蔵室16bにて貯蔵される。また、液冷媒貯蔵室16bは、貯蔵した液冷媒を蒸発器18に供給する。
【0026】
蒸発器18は、液冷媒を蒸発させるものである。この蒸発器18内には、液冷媒分配器18aと冷水伝熱管18bが設けられている。液冷媒分配器18aは、液冷媒貯蔵室16bから供給される液冷媒を導入し、液冷媒を冷水伝熱管18bに向けて散布するものである。
【0027】
冷水伝熱管18bは、室内機と接続されており、室内機による冷却によって暖められた水が流れている。また、蒸発器18内は、真空状態となっている。このため、冷媒である水の蒸発温度は約5℃となる。よって、冷水伝熱管18b上に落ちた液冷媒は冷水伝熱管18bの温度によって蒸発することとなる。また、冷水伝熱管18b内の水は、液冷媒の蒸発によって温度が奪われる。これにより、冷水伝熱管18b内の水は冷水として室内機5に供給され、室内機5は冷水を利用して冷風を室内に供給することとなる。
【0028】
また、蒸発器18は、仕切りを介して吸収器20と隣接して設けられており、蒸発した冷媒は、仕切りを越えて吸収器20に供給される。
【0029】
低温溶液熱交換器26は、低温再生器14において暖められた濃溶液と、吸収器20から溶液循環ポンプ22により送られてきた希溶液とを熱交換するものである。また、低温溶液熱交換器26は、熱交換により温度が低下した濃溶液を吸収器20に供給する。
【0030】
吸収器20は、蒸発器18において蒸発した冷媒を吸収するものである。この吸収器20内には低温溶液熱交換器26から濃溶液が供給され、蒸発した冷媒は濃溶液によって吸収され、希溶液が生成される。また、吸収器20には、冷水伝熱管20aが挿通されている。冷水伝熱管20aには冷却水が流れており、濃溶液の冷媒の吸収により吸収熱は、冷水伝熱管20aの冷却水により除去される。なお、この冷水伝熱管20aは、冷水伝熱管16aと接続されている。
【0031】
また、吸収器20は、冷媒の吸収により濃度が低下した希溶液を溶液循環ポンプ22によって高温再生器10に供給する。なお、希溶液は、上記したように、高温及び低温溶液熱交換器24,26により熱交換されて温度が上昇した状態で高温再生器10に供給される。
【0032】
また、ベース機2は、第1温度センサ28を備えている。第1温度センサ28は、冷水伝熱管18bの出口側(すなわち室内機5に供給される側)の冷水温度を検出するものである。また、第1温度センサ28は、検出した冷水温度を制御装置4に送信する構成となっている。
【0033】
制御装置4は、ベース機2の全体を制御するものである。この制御装置4は、冷水伝熱管18bの出口側の冷水温度に基づいて、加熱装置10aを制御する。具体的に制御装置4は、第1温度センサ28により検出された冷水伝熱管18bの出口側の冷水温度に基づいて、以下のようにして運転を制御する。
【0034】
図3は、図2に示したベース機2の制御の様子を示す図である。図3に示すように、まずベース機2の運転が停止しているとする(off)。そして、第1温度センサ28により検出される冷水温度が10℃に達すると、制御装置4はベース機2の運転を開始させる(Low運転)。ここで、制御装置4はベース機2を低負荷モードで運転開始させる。低負荷モードとは、冷房負荷の大きさが約50%で足りるときの運転モードである。
【0035】
また、低負荷モードにおいて第1温度センサ28により検出される冷水温度が7℃(第1温度)に達すると、制御装置4はベース機2の運転を停止させる(off)。一方、制御装置4は、低負荷モードにおいて第1温度センサ28により検出される冷水温度が15℃に達すると、運転モードを高負荷モードに移行させる(Hi運転)。ここで、高負荷モードとは、冷房負荷の大きさが約100%であるときなどに開始される運転モードである。
【0036】
また、高負荷モードにおいて第1温度センサ28により検出される冷水温度が6.5℃まで低下すると、制御装置4はベース機2を高負荷モードのままLow運転させる(Low運転)。さらに、この状態において、第1温度センサ28により検出される冷水温度が10.5℃まで上昇すると、制御装置4はベース機2を高負荷モードのままHi運転させる(Hi運転)。
【0037】
加えて、本実施形態に係る制御装置4は、時間積分を行ってベース機2の運転を制御するようになっている。すなわち、低負荷モードのLow運転において第1温度センサ28により検出される冷水温度が10℃〜12℃の範囲内に収まっているとする。このとき、制御装置4は、冷水温度を時間積分し、時間積分された値が第1所定値に達すると、運転モードを高負荷モードに切り替える(Hi運転)。なお、制御装置4は、(冷水温度−10℃)により得られた値を時間積分するようになっているが、特に10℃に限らず、他の温度であってもよい。
【0038】
同様に、高負荷モードのLow運転において第1温度センサ28により検出される冷水温度が5℃〜7℃の範囲内に収まっているとする。このとき、制御装置4は、冷水温度を時間積分し、時間積分された値が第2所定値に達すると、運転を停止させる(off)。なお、制御装置4は、(冷水温度−7℃)により得られた値を時間積分するようになっているが、特に7℃に限らず、他の温度であってもよい。
【0039】
以上のように、制御装置4は、ベース機2を制御する。特に、ベース機2は、ベース機2から室内機5に供給される冷水、すなわち出口冷水温度によって制御される。これを出口温度制御と称する。
【0040】
図4は、本実施形態に係る直焚き機3となる吸収式冷温水機の基本構成の一例を示す構成図である。なお、本実施形態では、いわゆる二重効用吸収冷温水機を一例として説明するが、これに限られるものではなく、ベース機及び直焚き機は、単効用や三重効用の吸収冷温水機であってもよい。また、図4に示す構成のうち、図2に示す構成と同一の符号を付したものについては、図2に示したものと同じであるため、説明を省略する。
【0041】
直焚き機3は、定格運転において室内機5から12.5℃の冷水を入力して7℃の冷水を出力するように運転するものである。この直焚き機3は、高温再生器10に燃焼装置10bを備えている。燃焼装置10bは、ガスなどの化石燃料を燃焼させて希溶液を加熱する構成となっている。
【0042】
さらに、直焚き機3は、第2温度センサ29を備えている。第2温度センサ29は、冷水伝熱管18bの入口側(すなわち室内機5から冷水が戻ってくる側)の冷水温度を検出するものである。また、第2温度センサ29は、検出した冷水温度を制御装置4に送信する構成となっている。
【0043】
制御装置4は、直焚き機3の全体を制御するものである。この制御装置4は、冷水伝熱管18bの出口側の冷水温度に基づいて、燃焼装置10bを制御する。具体的に制御装置4は、第1温度センサ28により検出された冷水伝熱管18bの入口側の冷水温度に基づいて、以下のようにして運転を制御する。
【0044】
図5は、図4に示した直焚き機3の制御の様子を示す図である。図5に示すように、まず直焚き機3の運転が停止しているとする(off)。そして、第2温度センサ29により検出される冷水温度が15.5℃に達すると、制御装置4は直焚き機3の運転を開始させる(Low運転)。ここで、制御装置4は直焚き機3を低負荷モードで運転開始させる。
【0045】
また、低負荷モードにおいて第2温度センサ29により検出される冷水温度が12.5℃(第2温度)に達すると、制御装置4は直焚き機3の運転を停止させる(off)。一方、制御装置4は、低負荷モードにおいて第2温度センサ29により検出される冷水温度が20.5℃に達すると、運転モードを高負荷モードに移行させる(Hi運転)。
【0046】
また、高負荷モードにおいて第2温度センサ29により検出される冷水温度が12℃まで低下すると、制御装置4は直焚き機3を高負荷モードのままLow運転させる(Low運転)。さらに、この状態において、第2温度センサ29により検出される冷水温度が16℃まで上昇すると、制御装置4は直焚き機3を高負荷モードのままHi運転させる(Hi運転)。
【0047】
加えて、本実施形態に係る制御装置4は、時間積分を行って直焚き機3の運転を制御するようになっている。すなわち、低負荷モードのLow運転において第2温度センサ29により検出される冷水温度が15.5℃〜17.5℃の範囲内に収まっているとする。このとき、制御装置4は、冷水温度を時間積分し、時間積分された値が第3所定値に達すると、運転モードを高負荷モードに切り替える(Hi運転)。なお、制御装置4は、(冷水温度−15.5℃)により得られた値を時間積分するようになっているが、特に15.5℃に限らず、他の温度であってもよい。
【0048】
同様に、高負荷モードのLow運転において第2温度センサ29により検出される冷水温度が10.5℃〜12.5℃の範囲内に収まっているとする。このとき、制御装置4は、冷水温度を時間積分し、時間積分された値が第4所定値に達すると、運転を停止させる(off)。なお、制御装置4は、(冷水温度−12.5℃)により得られた値を時間積分するようになっているが、特に12.5℃に限らず、他の温度であってもよい。
【0049】
以上のように、制御装置4は、直焚き機3を制御する。特に、直焚き機3は、室内機5から直焚き機3に供給される冷水、すなわち入口冷水温度によって制御される。これを入口温度制御と称する。
【0050】
次に、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1の動作を説明するが、これに先立って比較例となる吸収式冷温水システムの動作を説明する。まず、比較例となる吸収式冷温水システムにおいて直焚き機は、以下のように制御されていた。
【0051】
図6は、比較例となる直焚き機の制御の様子を示す図である。なお、比較例となる直焚き機は、直焚き機から室内機に供給される冷水温度を検出するセンサ(第1センサ28相当)を備え、出口温度制御が行われている。すなわち、比較例となる直焚き機は、直焚き機から室内機5に供給される冷水温度によって制御されている。
【0052】
図6に示すように、まず直焚き機の運転が停止しているとする(off)。そして、温度センサにより検出される冷水温度が12℃に達すると、制御装置は直焚き機の運転を開始させる(Low運転)。ここで、制御装置は直焚き機を低負荷モードで運転開始させる。
【0053】
また、低負荷モードにおいて温度センサにより検出される冷水温度が9℃に達すると、制御装置は直焚き機の運転を停止させる(off)。一方、制御装置は、低負荷モードにおいて温度センサにより検出される冷水温度が17℃に達すると、運転モードを高負荷モードに移行させる(Hi運転)。
【0054】
また、高負荷モードにおいて温度センサにより検出される冷水温度が8.5℃まで低下すると、制御装置は直焚き機を高負荷モードのままLow運転させる(Low運転)。さらに、この状態において、温度センサにより検出される冷水温度が12.5℃まで上昇すると、制御装置は直焚き機を高負荷モードのままHi運転させる(Hi運転)。
【0055】
また、低負荷モードのLow運転において温度センサにより検出される冷水温度が12℃〜14℃の範囲内に収まっているとする。このとき、制御装置は、冷水温度を時間積分し、時間積分された値が第1規定値に達すると、運転モードを高負荷モードに切り替える(Hi運転)。
【0056】
同様に、高負荷モードのLow運転において温度センサにより検出される冷水温度が7℃〜9℃の範囲内に収まっているとする。このとき、制御装置は、冷水温度を時間積分し、時間積分された値が第2規定値に達すると、運転を停止させる(off)。
【0057】
このように、比較例において制御装置は、本実施形態に係るベース機2の制御温度を2℃高くオフセットした出口温度制御を行っている。このため、比較例では以下のような運転が行われてしまい、ベース機2の優先運転において改善の余地があった。
【0058】
便宜的に図1を参照する。なお、比較例の直焚き機については符号6を付すものとする。まず、比較例の吸収式冷温水システムは、室内機5の負荷率が100%である場合、2台の吸収式冷温水機2,6を運転させる。よって、負荷率が50%である場合、一方の吸収式冷温水機2(すなわちベース機2)のみを作動させれば足りるはずである。
【0059】
ここで、負荷率50%の場合、9.75℃の冷水を室内機に供給すれば、適切な冷却効果を得ることができるとし、室内機5から12.5℃の冷水が2台の吸収式冷温水機2,6に出力されるとすると、ベース機2及び直焚き機6の双方に、12.5℃の冷水が入力される。この際、ベース機2は12.5℃の冷水を7℃まで冷却し、直焚き機3は運転せず12.5℃の冷水をそのまま出力すれば、両者の中間の温度である9.75℃の冷水が室内機5に供給される。
【0060】
しかし、図6に示したように、直焚き機6に12.5℃の冷水が入力すると、直焚き機6は入力した冷水をそのまま出力するため、出口温度が12.5℃となり運転を開始してしまう。すなわち、ベース機2のみで足りるにも拘わらず、直焚き機6が運転してしまい、ベース機2を優先的に運転させるという観点において改善の余地がある。
【0061】
そこで、直焚き機6が運転を開始する温度をさらに高くすることも考えられる。すなわち、オフセットする温度を大きくすることも考えられる。しかし、このような場合には直焚き機6の運転時において直焚き機6から出力される冷水の温度も高くなってしまい、室内機5の負荷率が100%である場合、2台の吸収式冷温水機2,6を運転させたとしても適切な冷却効果を得ることができなくなる可能性がある。
【0062】
次に、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1の動作を図1を参照して説明する。上記説明と同様に、負荷率50%の場合、9.75℃の冷水を室内機に供給すれば、適切な冷却効果を得ることができる。そして、室内機5から12.5℃の冷水が2台の吸収式冷温水機2,3に出力される。このとき、ベース機2及び直焚き機3の双方に、12.5℃の冷水が入力される。この際、ベース機2は12.5℃の冷水を7℃まで冷却する。
【0063】
一方、直焚き機3については、図5からも明らかなように、入口温度制御を行っており、15.5℃の冷水が入力されると運転を開始し、12.5℃の冷水が入力されると運転を停止する。このため、室内機5から12.5℃の冷水が供給されたとしても、運転停止状態を維持することができる。このように、制御方式の違いから、仮に12.5℃という高い温度の冷水が直焚き機3に入力されたとしても、直焚き機3の停止状態を維持してベース機2の優先運転を行うことができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1は、比較例に係る吸収式冷温水システムよりも冷却効果について勝っている。すなわち、比較例に係る直焚き機6は、100%運転において9℃の冷水を出力する。一方、本実施形態に係る直焚き機3は、入口温度制御により室内機5から供給される冷水温度が12.5℃となるように制御するが、100%運転において出力される冷水温度は7℃である。
【0065】
このように、100%運転において比較例に係る直焚き機6は9℃の冷水を出力するのに対し、本実施形態に係る直焚き機3は7℃の冷水を出力する。よって、冷却効果に関しては比較例よりも本実施形態に係る吸収式冷温水システム1が勝っているといえる。
【0066】
なお、本実施形態に係る直焚き機3についても制御温度を数℃高くオフセットしてもよい。これにより、一層直焚き機3よりもベース機2を優先的に運転させ易くすることができる。
【0067】
次に、比較例に係る吸収式冷温水システムの詳細動作を説明する。図7は、比較例に係る吸収式冷温水システムの詳細動作を示すタイミングチャートである。なお、図7では室内機5の負荷率が50%であるとする。すなわち、2台の吸収式冷温水機2,6のうち、一方が運転していれば充分な冷却効果を得ることができるはずである。
【0068】
図7に示すように、時刻0においてベース機2の出口冷水温度はT1である。この温度T1が例えば10℃であるとすると、ベース機2は、運転を開始する(Low運転)。
【0069】
その後、出口冷水温度はベース機2の運転により低下していく。しかし、ベース機2の出口冷水温度は温度T2(例えば7℃)まで低下しない。このため、ベース機2は、運転を停止しないこととなる。その後、冷房負荷によって入口温度が高まってくると、これに合わせてベース機2の出口温度も高まってくる。しかし、ベース機2の出口冷水温度は温度T3(例えば12℃)まで達しない。このため、ベース機2は、高負荷モード(Hi運転)に移行しないこととなる。以後、ベース機2の出口冷水温度は7℃を下回ることなく、12℃を上回ることがない。すなわち、ベース機2はLow運転を続けることとなる。
【0070】
また、比較例に係る直焚き機6は、制御温度が2℃高くオフセットされている。このため、温度T1が例えば10℃であるとすると、直焚き機6は時刻0において運転を開始しないこととなる。しかし、時刻0以降、冷房負荷によって入口温度が高まってくると、これに合わせて直焚き機6の出口温度も高まってくる。そして、時刻t1において直焚き機6の出口温度がT3(12℃)に達すると、直焚き機6は運転を開始してしまう。
【0071】
その後、2台の吸収式冷温水機2,6が運転することにより冷水温度が下がり、直焚き機6の出口温度がT4に達する。ここで、温度T4が9℃であるとすると、直焚き機6は運転を停止することとなる。以降、直焚き機6は、運転の開始と停止とを繰り返すこととなる。
【0072】
このように、比較例では室内機5の負荷率が50%にも拘わらず、時刻t1〜t2のように、2台の吸収式冷温水機2,6が運転する時間があり、ベース機2の優先運転という面において改善の余地がある。
【0073】
次に、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1の詳細動作を説明する。図8は、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1の詳細動作を示すタイミングチャートである。なお、図8では直焚き機6の制御温度が2℃高くオフセットされている。また、図8では室内機5の負荷率が50%であるとする。すなわち、2台の吸収式冷温水機2,3のうち、一方が運転していれば充分な冷却効果を得ることができるはずである。
【0074】
図8に示すように、時刻0においてベース機2の出口冷水温度はT1である。この温度T1が例えば10℃であるとすると、ベース機2は、運転を開始する(Low運転)。
【0075】
時刻0以降、冷房負荷によって入口温度が高まってくると、これに合わせてベース機2の出口温度も高まってくる。そして、時刻t1においてベース機2の出口温度がT3(12℃)を超えて積算値が第1所定値に達すると、ベース機2は高負荷モードに移行し、Hi運転を行う。
【0076】
そして、ベース機2がHi運転を行ったことにより、入口温度が低下し、時刻t2において温度T2を下回り、例えば6.5℃に達したとする。これにより、ベース機2は、高負荷モードのままLow運転を行う。以後、ベース機2は、高負荷モードのままHi運転とLow運転とを繰り返すこととなる。
【0077】
また、本実施形態に係る直焚き機3は入口温度制御である。このため、温度T1が例えば10℃であるとすると、直焚き機3は運転開始の温度T6(2℃オフセットのため17.5℃)に達しておらず、運転を開始しないこととなる。その後、冷房負荷によって入口温度が高まってくる。
【0078】
そして、時刻t1において入口温度はT5(例えば約16℃)まで達する。しかし、この時点においても入口温度は運転開始17.5℃に達しておらず、直焚き機3は、運転を開始しないこととなる。その後、ベース機2がHi運転に移行したことにより入口温度が低下することとなる。
【0079】
そして、時刻t2において入口温度はT3未満となる。このとき、ベース機2がLow運転に移行するため、再度入口温度は上昇することとなる。以後、入口温度はT6に達することなく、温度の上昇及び低下を繰り返すこととなる。すなわち、直焚き機3は、運転を行うことなくoffのままとなる。
【0080】
このようにして、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1によれば、ベース機2について、室内機5に供給する冷水温度が第1温度(例えば7℃)となるように運転を制御すると共に、直焚き機3について、室内機5から戻ってくる冷水温度が第2温度(例えば12.5℃)となるように運転を制御する。すなわち、ベース機2は出口温度制御であり、直焚き機3は入口温度制御である。このように、制御方式を変えたとしても、負荷率100%の運転において適切な温度の冷水を室内機5に供給することができるため、適切な冷却効果を得ることができる。
【0081】
また、直焚き機3において入口温度制御を行っているため、定格運転における温度の冷水が入力されたとしても、運転を開始することなく停止したままとすることができる。一例を挙げると、定格運転で12.5℃の冷水を入力して7℃の冷水を出力し、且つ、出口温度制御において例えば10℃で運転を開始し7℃運転を停止するものとする(2℃オフセットさせた場合には、12℃で運転を開始し9℃運転を停止する)。この場合、出口温度制御であると、12.5℃の冷水を入力すると運転を開始してしまう。これに対して、入口温度制御であると例えば15.5℃で運転を開始し12.5℃で運転を停止することとなり、12.5℃の冷水を入力しても運転を開始しないこととなる。このように、制御方式の違いから、仮に高い温度の冷水が直焚き機3に入力されたとしても、運転を開始し難くすることができる。
【0082】
従って、排熱等を利用したベース機2をより優先的に運転させつつ、ピーク時において適切な冷却効果を得ることができる。
【0083】
また、ベース機2の定格運転時における入口温度(例えば12.5℃)よりも所定温度(例えば2℃)高い温度にて直焚き機3の運転を停止し、停止温度よりも更に高い温度(例えば17.5℃)にて直焚き機3の運転を開始する。このように、運転及び停止の温度を高い側へオフセットさせることで、一層直焚き機3よりもベース機2を優先的に運転させ易くすることができる。
【0084】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態に係る吸収式冷温水機1において各種構成等については図示したものに限られるものではない。
【符号の説明】
【0085】
1…吸収式冷温水システム
2…ベース機(第1吸収式冷温水機)
3,6…直焚き機(第2吸収式冷温水機)
4…制御装置(制御手段)
5…室内機
10…高温再生器
10a…加熱装置
10b…燃焼装置
12…分離器
14…低温再生器
16…凝縮器
16a…冷水伝熱管
16b…冷媒貯蔵室
18…蒸発器
18a…液冷媒分配器
18b…冷水伝熱管
20…吸収器
20a…冷水伝熱管
22…溶液循環ポンプ
24…高温溶液熱交換器
26…低温溶液熱交換器
28,29…温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排熱及び再生可能エネルギーの少なくとも一方を加熱源とし、蒸発器、吸収器、再生器及び凝縮器による循環サイクルによって室内機にて使用される冷水を得る第1吸収式冷温水機と、
燃料を燃焼させて発生する熱を加熱源とし、蒸発器、吸収器、再生器及び凝縮器による循環サイクルによって室内機にて使用される冷水を得る第2吸収式冷温水機と、
前記第1吸収式冷温水機と前記第2吸収式冷温水機との運転を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1吸収式冷温水機について、室内機に供給する冷水温度が第1温度となるように運転を制御すると共に、前記第2吸収式冷温水機について、室内機から戻ってくる冷水温度が第2温度となるように運転を制御する
ことを特徴とする吸収式冷温水システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2吸収式冷温水機の前記入口温度が、前記第1吸収式冷温水機の定格運転時における入口温度よりも所定温度高い温度にて前記第2吸収式冷温水機の運転を停止し、この停止温度よりも更に高い温度にて前記第2吸収式冷温水機の運転を開始する
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷温水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−47576(P2013−47576A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185471(P2011−185471)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(501418498)矢崎エナジーシステム株式会社 (79)
【Fターム(参考)】