説明

吸収式冷温水機

【課題】吸収器内において自由落下する吸収液の偏倚現象を防止して熱交換効率を向上させることができる吸収式冷温水機を提供する。
【解決手段】吸収式冷温水機は、内部に伝熱管が複数の行をなすように曲げられて配設され、上部に低温再生器から吸収液が流入され、吸収液と伝熱管を通って流れる流体とが熱交換するように構成された吸収器と、吸収器の内部上端に位置し上記低温再生器からの吸収液を受けて下方へと散布する第1トレイと、吸収器の内部中間に位置し第1トレイから散布された吸収液を受けて下方へと散布する第2トレイと、を含み、伝熱管の一部は上記第2トレイの下方で複数の行をなしつつ曲げられて配設され、残りの一部は第1トレイの下方で複数の行をなしつつ曲げられて配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷温水機に係り、特に、吸収器内において自由落下する吸収液が円滑に分散できるようにした吸収式冷温水機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収式冷温水機は、冷媒蒸気の液体溶解度が温度、圧力に応じて変わることを用いるものであって、冷媒としては、水が使用され、蒸発された冷媒を回収するための吸収液としては、臭化リチウム(LiBr)などが使用される。
【0003】
一般に、吸収式冷温水機は、稀吸収液を外部の熱源を利用して加熱・濃縮して冷媒蒸気と中間吸収液を得る高温再生器と、この高温再生器で生成された中間吸収液を高温再生器で生成された冷媒蒸気で加熱して再び冷媒を蒸発分離する低温再生器と、この低温再生器で生成された冷媒蒸気を凝縮すると共に低温再生器で凝縮された冷媒液と混合する凝縮器と、凝縮器から供給される冷媒液を蒸発させて冷媒蒸気を得る蒸発器と、この蒸発器で生成された冷媒蒸気を低温再生器から供給される濃吸収液に吸収して稀吸収液を得る吸収器と、上記高温及び低温再生器から吸収器へと循環する吸収溶液から顕熱を回収して省エネルギーを図る低温及び高温熱交換器と、これらを接続する配管類と、冷媒ポンプ及び溶液ポンプとで構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来の吸収式冷温水機では、吸収器の内部上端に吸収液を散布するための散布装置(トレイ)が設置され、トレイの下方には冷却水管が配設されている。トレイから散布された吸収液(濃吸収液)が冷却水管に沿って下方へ垂れ落ちることにより、冷媒の蒸発と吸収液の冷却、及び吸収現象が発生する。
【0005】
図1に示されたように、冷却水管Pは、吸収器の内部において上端から下端までに亘って複数の行をなすように曲げられてなる束(bundle)構造を有しており、トレイの真下に位置した1番目の冷却水管P1は、約82.2%の吸収液濡れ率を有するのに対し、最下端(図1では、13番目)の冷却水管P13は、約23.3%の吸収液濡れ率を有する。
【0006】
これは、従来の吸収式冷温水機では、吸収器内に1つのトレイだけが設置されており、該トレイから吸収液が散布されるため、吸収液が下方へと流れていくにつれて吸収液が偏倚するような現象が発生してしまうためである。このような吸収液の偏倚現象は、冷媒の蒸発と、臭化リチウムの冷却及び吸収を悪化させ、製品の性能を落とすようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−205689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、吸収器内において自由落下する吸収液の偏倚現象を防止して、冷媒の蒸発と、吸収液としての臭化リチウムの冷却及び吸収効率を増大させることにより性能を向上させることができるように構成した吸収式冷温水機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような本発明の目的は、内部に伝熱管が複数の行をなすように曲げられて配設され、上部に低温再生器から吸収液が流入され、濃吸収液と伝熱管を通って流れる流体とが互いに熱交換するように構成された吸収器と、吸収器の内部上端に位置し上記低温再生器からの吸収液を受けて下方へと散布する第1トレイと、吸収器の内部中間に位置し第1トレイから散布された吸収液を受けて下方へと散布する第2トレイと、を含み、伝熱管の一部は上記第2トレイの下方で複数の行をなしつつ曲げられて配設され、残りの一部は第1トレイの下方で複数の行をなしつつ曲げられて配設されることを特徴とする吸収式冷温水機を提供することにより達成される。
【0010】
本発明の一実施の形態においては、上記伝熱管は、その内部を冷却水が流れる冷却水管であって、上記第2トレイの下方で複数の行をなしつつ曲げられてから、上記第2トレイの上方へ延びていき、上記第1トレイの下方で再び複数の行をなしつつ曲げられてなる構成を有していてもよい。
【0011】
また、本発明の他の実施の形態においては、上記第1トレイの下方に位置する上記伝熱管の一部は、上記吸収器の下流側の稀吸収液配管から分岐され、その内部を上記吸収器から排出された稀吸収液が流れる分岐管であり、上記第2トレイの下方に位置する上記伝熱管の残りの一部は、その内部を冷却水が流れる冷却水管であってよい。また、本実施の形態による吸収式冷温水機は、上記第2トレイの下方の上記冷却水管の中間に位置する第3トレイを更に含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による吸収式冷温水機によれば、吸収器内において散布される吸収液による伝熱管の濡れ性を高めることにより、冷媒の蒸発と、吸収液としての臭化リチウムの冷却及び吸収効率を増加させることによって吸収式冷温水機の性能を向上させるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の吸収式冷温水機の吸収器における、吸収液による伝熱管(冷却水管)の濡れ状態を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態による吸収式冷温水機の概略図である。
【図3】図2に示す吸収式冷温水機における吸収器の詳細図である。
【図4】本発明の他の実施の形態による吸収式冷温水機の概略図である。
【図5】図4に示す吸収式冷温水機における吸収器の詳細図である。
【図6】図5に示す吸収器の他の例を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による吸収式冷温水機の実施の形態を添付した図面を参照して詳しく説明する。
【0015】
図2は、本発明の一実施の形態による吸収式冷温水機1の概略図であり、図3は、図2に示す吸収式冷温水機1における吸収器32の詳細図である。
【0016】
図2に示されたように、吸収式冷温水機1は、稀吸収液を外部の熱源を利用して加熱・濃縮して冷媒蒸気と中間吸収液を得る高温再生器10と、この高温再生器10で生成された中間吸収液を高温再生器10で生成された冷媒蒸気で加熱して再び冷媒を蒸発分離する低温再生器23と、この低温再生器23で生成された冷媒蒸気を凝縮すると共に低温再生器23で凝縮された冷媒液と混合する凝縮器21と、凝縮器21から供給される冷媒液を蒸発させて冷媒蒸気を得る蒸発器31と、この蒸発器31で生成された冷媒蒸気を低温再生器23から供給される濃吸収液に吸収して稀吸収液を得る吸収器32と、上記高温及び低温再生器10、23から吸収器へと循環する吸収溶液から顕熱を回収して省エネルギーを図る低温熱交換器40及び高温熱交換器50と、これらを接続する配管類とを備える。
【0017】
高温再生器10にはバーナー11が収容される。上記吸収器32から上記高温再生器10へと延びている稀吸収液配管83には吸収液ポンプ72、低温熱交換器40、及び高温熱交換器50が順に設置される。また、上記高温再生器10から低温再生器23へと延びている管は冷媒蒸気管81であり、上記凝縮器21から上記蒸発器31へと延びている管は冷媒液流下管82であり、上記吸収器32へと延びてきている管は冷却水管86である。
【0018】
このような吸収式冷温水機1の運転時、上記高温再生器10のバーナー11から燃料ガス(例えば、LPG、LNGなど)が燃焼すると、上記吸収器32から供給された稀吸収液が加熱されて沸騰し、冷媒蒸気が稀吸収液から分離する。このような加熱により、稀吸収液が濃縮されつつ濃度がより濃くなった中間吸収液になる。一方、冷媒蒸気は、冷媒蒸気管81に沿って移動して上記低温再生器23へ流入される。そして、上記高温再生器10から低温再生器23へと流れ込まれてきた中間吸収液は、低温再生器23で加熱されることで冷媒液として凝縮され、凝縮された冷媒液は、上記凝縮器21へと流れていく。上記凝縮器21では、上記低温再生器23から供給された冷媒蒸気が凝縮され、冷媒液と共に上記蒸発器31へ移動する。
【0019】
上記蒸発器31では、冷媒ポンプ71の作動によって冷媒液が散布される。そして、上記蒸発器31で気化した冷媒蒸気は、上記吸収器32へ流れていき散布された吸収液に吸収される。一方、上記高温再生器10で冷媒蒸気が分離され濃度が上昇した中間吸収液は、中間吸収液配管84、高温熱交換器50を経て上記低温再生器23へ流れていく。
【0020】
上記中間吸収液は、上記高温再生器10から流れ込まれてきた冷媒蒸気が内部を流れている加熱器25によって加熱される。そして、上記中間吸収液から冷媒蒸気が分離され吸収液の濃度が更に上昇する。上記低温再生器23で加熱された濃溶液は、濃溶液配管85へ流れ込まれ、上記低温熱交換器40を経て上記吸収器32へ流れていき、トレイ111、112から散布されることで上記冷却水管86に滴下される。
【0021】
そして、吸収液は、上記蒸発器31を経由して流れ込まれてくる冷媒蒸気を吸収することで濃度が低くなる。濃度が低くなった吸収液は、上記吸収液ポンプ72の駆動力によって低温熱交換器40及び高温熱交換器50で予熱されてから高温再生器10に流入される。なお、図面符号13はバーナーに燃料を供給する燃料タンクを示し、図面符号15はバーナーに燃焼空気を供給する送風機を示すが、これらの構成についての詳しい説明は省略することにする。
【0022】
図3に示されたように、本実施の形態では、吸収器32の内部に複数のトレイ111、112が設置される。具体的に、吸収器32の内部上端には第1トレイ111が位置し、内部中間部には第2トレイ112が位置する。そして、冷却水管86は、第2トレイ112の下方で複数の行をなすようにジグザグに曲げられてなる束形態で配設されてから、第2トレイ112の上方へ延びていき、第1トレイ111の下方で再び複数の行をなすようにジグザグに曲げられてなる束形態で配設され、引き続き、吸収器32の外部に延出して凝縮器21に連結される。
【0023】
第1トレイ111に流入された吸収液(濃吸収液)は、第1トレイ111の下方へと均一に散布される。散布された吸収液は、第1トレイ111と第2トレイ112との間に位置した冷却水管86を濡らしてから第2トレイ112に集水され、再び第2トレイ112の下方へと均一に散布される。第2トレイ112から散布された吸収液は、第2トレイ112の下方に位置した冷却水管86を濡らしてから、吸収器32の外部に排出される。
【0024】
図面において具体的に図示していないが、第1及び第2トレイ111、112は、底面に複数の穴が穿孔されている構造を有することにより、集水された吸収液が底面の穴から下方へと均一に排出される。
【0025】
本実施の形態における、各トレイ111、112から冷却水管86の最下端行までの行数は、従来技術による冷却水管の行数より小さい。このため、吸収液による冷却水管86の濡れ率は、図1に示されたような従来技術による冷却水管の濡れ率より高くなり、その結果、冷媒の蒸発と、吸収液をなす臭化リチウムの冷却及び吸収効率を増大させることにより、吸収式冷温水機の全体的な性能を向上させる。
【0026】
一方、図4は、本発明の他の実施の形態による吸収式冷温水機1'の概略図であり、図5は、図4に示す吸収式冷温水機1'における吸収器32の詳細図であり、図6は、図5に示す吸収器32の他の例を示した図である。
【0027】
図4に示されたように、本実施の形態による吸収式冷温水機1'は、図2に示す吸収式冷温水機1に比べて、吸収器32の上部に溶液冷却吸収器90が更に備えられているという点に差異がある。吸収器32と溶液冷却吸収器90は、一つの空間内で上下に区画されてなるものであって、互いに連通している。稀吸収液配管83の吸収液ポンプ72の下流側には分岐管91が連結される。分岐管91は、溶液冷却吸収器90を経由して低温熱交換器40に連結される。その他の構成は、図2の吸収式冷温水機1と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0028】
図5に示されたように、第1トレイ111は、溶液冷却吸収器90の内部上端に設置され、第2トレイ112は、溶液冷却吸収器90の下方に設置されている吸収器32の内部上端に設置される。
【0029】
稀吸収液配管83から分岐された分岐管91は、溶液冷却吸収器90へと延びていき、第1トレイ111の下方で複数の行をなすようにジグザグに曲げられてなる束形態で配設され、溶液冷却吸収器90から更に延びていき、低温熱交換器40に連結される。吸収器32の内部における第2トレイ112の下方には冷却水管86が複数の行をなすようにジグザグに曲げられてなる束形態で配設され、上記冷却水管86は更に延びていき、凝縮器21に連結される。
【0030】
このように構成された吸収器32及び溶液冷却吸収器90では、第1トレイ111に流入された吸収液(濃吸収液)が、第1トレイ111の下方へと均一に散布されることで溶液冷却吸収器90の内部に位置した分岐管91を濡らすようになる。以降、吸収液は第2トレイ112に集水されてから、第2トレイ112の下方へと均一に散布されることで吸収器32の内部に位置した冷却水管86を濡らすようになる。
【0031】
このようにして、分岐管91及び冷却水管86が吸収液によって均一に濡らされることにより、製品の性能が向上する。
【0032】
また、図6に示されたように、図5に示された吸収器32にトレイを更に一つ設置することもできる。すなわち、溶液冷却吸収器90の内部上端に第1トレイ111を設置し、吸収器32の内部上端には第2トレイ112を設置し、これに加えて、吸収器32の内部中間部にも第3トレイ113を設置することにより、吸収液による冷却水管86の濡れ率を図5の場合よりも一層高めることができる。
【0033】
以上では、本発明の特定の好適な実施の形態について図示しまた説明した。しかし、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも種々の変形実施が可能であろう。
【符号の説明】
【0034】
10:高温再生器
21:凝縮器
31:蒸発器
32:吸収器
40:低温熱交換器
50:高温熱交換器
86:冷却水管
90:溶液冷却吸収器
91:分岐管
111、112、113:トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に伝熱管が複数の行をなすように曲げられて配設され、上部に低温再生器から吸収液が流入され、該吸収液と前記伝熱管を通って流れる流体とが互いに熱交換するように構成された吸収器と、
前記吸収器の内部上端に位置し、前記低温再生器からの吸収液を受けて下方へと散布する第1トレイと、
前記吸収器の内部中間に位置し、前記第1トレイから散布された吸収液を受けて下方へと散布する第2トレイと、
を含み、
前記伝熱管の一部は前記第2トレイの下方で複数の行をなしつつ曲げられて配設され、残りの一部は第1トレイの下方で複数の行をなしつつ曲げられて配設されることを特徴とする吸収式冷温水機。
【請求項2】
前記伝熱管は、その内部を冷却水が流れる冷却水管であって、前記第2トレイの下方で複数の行をなしつつ曲げられてから、前記第2トレイの上方へ延びていき、前記第1トレイの下方で再び複数の行をなしつつ曲げられたことを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷温水機。
【請求項3】
前記第1トレイの下方に位置する前記伝熱管の一部は、前記吸収器の下流側の稀吸収液配管から分岐され、その内部を前記吸収器から排出された稀吸収液が流れる分岐管であり、
前記第2トレイの下方に位置する前記伝熱管の残りの一部は、その内部を冷却水が流れる冷却水管であることを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷温水機。
【請求項4】
前記第2トレイの下方の前記冷却水管の中間に位置する第3トレイを更に含むことを特徴とする請求項3に記載の吸収式冷温水機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−236477(P2009−236477A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−977(P2009−977)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(508303139)エルエス エムトロン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】