説明

吸収性シート体及びおしゃぶり

【課題】おしゃぶりを継続して使用しても、衛生な状態を維持する。
【解決手段】吸収性シート体10は、座板部2に乳首部3が設けられたおしゃぶり1に取り付けられ、透水層11の内側に吸収層12が設けられるとともに、乳首部3が挿通される挿通部13が形成されており、乳児がおしゃぶり1を継続して使用しても、よだれ等を吸収層12に吸収させて吸収層12内で保水することによって、乳児の肌と接する吸収性シート体10の主面部によだれ等が溜まることがなく、衛生な状態を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性シート体及びこの吸収性シート体を備えるおしゃぶりに関する。
【背景技術】
【0002】
乳児が口の中に入れて使用するおしゃぶりは、座板部と、この座板部に設けられた乳首部からなる。乳首部は、乳首と略同形状であり、乳児が乳首の代わりとしてくわえる部分であるため、柔らかい弾性材料で成形されている。座板部は、この乳首部を支持するため、機械的剛性を有する合成樹脂等で成形されている。
【0003】
おしゃぶりは、継続して使用していると、乳児のよだれ等がおしゃぶりの座板部等に溜まり不衛生な状態になりがちである。また、おしゃぶりは、合成樹脂等からなる座板部と乳児の肌が継続して接するため、肌が圧迫されて肌荒れ等を起こす虞がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために特許文献1のおしゃぶりは、座板部の乳首部が設けられている側の面、すなわち、座板部と乳児の肌が接する面にガーゼ等で緩衝部を設けている。特許文献1のおしゃぶりは、おしゃぶりを継続して使用しても緩衝部が乳児の肌と接することになり、乳児の肌への圧迫を緩衝させ、乳児の肌荒れ等が起こることを防止することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1のおしゃぶりは、緩衝部によって肌荒れ等が起こることを防止することはできるが、緩衝部が高い吸収力と保水力を有しておらず、継続して使用することによる乳児のよだれ等を緩衝部で吸収及び保水することができず、よだれ等が緩衝部又はおしゃぶりの座板部等に溜まりやすい。
【0006】
【特許文献1】特開2001−276186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、長期に亘って衛生的な状態を維持することができる吸収性シート体及びこの吸収性シート体を備えるおしゃぶりを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、吸収性シート体の交換が容易なおしゃぶりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明に係る吸収性シート体は、座板部に乳首部が設けられたおしゃぶりに取り付けられ、透水層の内側に吸収層が設けられるとともに、上記乳首部が挿通される挿通部が形成されている。
【0010】
また、上述した目的を達成するために本発明に係るおしゃぶりは、座板部と、上記座板部に設けられた乳首部と、透水層の内側に吸収層が設けられるとともに、上記乳首部に挿通される挿通部が形成され、上記座板部に取り付けられる本発明に係る吸収性シート体とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乳児がおしゃぶりを継続して使用しても、よだれ等を吸収性シート体の高吸収性及び高保水性を有する吸収層に吸収させて吸収層内で保水することができ、幼児と接する吸収性シート体の主面部によだれ等が溜まることを防止することができ、衛生な状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用したおしゃぶり1及び吸収性シート体10について、図面を参照して説明する。
【0013】
本発明を適用したおしゃぶり1は、図1に示すように、おしゃぶり1を使用する乳児のよだれ等を本発明を適用した吸収性シート体10に吸収させて吸収性シート体10内に保水させることで、おしゃぶり1を継続して使用しても、おしゃぶり1を衛生な状態に維持させるものである。
【0014】
このおしゃぶり1は、図2に示すように、座板部2と、この座板部2に設けられた乳首部3とを備えるものである。
【0015】
乳首部3は、座板部2の略中央に設けられている。乳首部3は、略球状の先端部3aと、この先端部3aと連続し先端部3aより小さな断面略楕円形状の基部3bとからなる。(以下、先端部3a及び基部3bを単に乳首部3ともいう。)乳首部3は、乳児が乳首の代わりとしてくわえる部分であるため、例えば、熱湯等による加熱殺菌によっても容易に劣化せず、柔らかい弾性材料で成形され、例えばシリコーンゴム等で成形されている。
【0016】
なお、乳首部3は、上述した形状に限定されるものではなく、例えば断面略円形状でもよく、さらに先端部3aより大きな基部3bからなる形状でもよい。
【0017】
座板部2は、図2に示すように、使用者である乳児の両頬側である左右方向に広く、乳児の口元を覆い、乳児の口の中に入りきらない程度の大きさを有し、楽に鼻呼吸をすることができるように平面視上側を湾曲させて凹ませた平面視略矩形状に形成されている。座板部2は、乳児が乳首をくわえたとき、おしゃぶり1が乳児の両頬近傍に密接するように、図3に示すように、乳児の両頬近傍の領域の湾曲に沿った曲面形状に形成されている。座板部2は、乳児の肌と接する部分であるため、熱湯等による加熱殺菌によって容易に劣化せず、また、この乳首部3を支持するため、機械的剛性を有する合成樹脂で成形され、例えばポリプロピレンやポリカーボネート等で成形されている。座板部2は、図2に示すように、乳首部3の左右両側2箇所に、乳児が乳首部3をくわえても楽に呼吸をすることができるように、略円形状の呼吸孔4が形成されている。座板部2は、乳首部3が設けられていない側の面に、持ち運びや乳児の口からおしゃぶり1を取り出す等のために取手部5が取り付けられている。
【0018】
なお、座板部2の呼吸孔4は、乳首部3の左右両側2箇所に限定されるものではなく、呼吸孔4の配置位置、数又は形状は、座板部2の大きさ、形状等によって適宜変更可能である。
【0019】
取手部5は、図3に示すように、リング形状であり、座板部2の乳首部3が設けられていない側の面に回動可能に取り付けられている。取手部5は、座板部2と同様に、熱湯等による加熱殺菌によって容易に劣化せず、また、機械的剛性を有する合成樹脂で形成され、例えばポリプロピレンやポリカーボネート等で成形されている。
【0020】
本発明を適用した吸収性シート体10は、図3に示すように、おしゃぶり1の乳首部3が挿通され、座板部2に取り付けられる。この吸収性シート体10は、本発明を適用したおしゃぶり1に取り付けられ、おしゃぶり1を使用する乳児のよだれ等を吸収して内部に保水することで、おしゃぶり1を継続して使用しても、おしゃぶり1を衛生な状態に維持させるものである。
【0021】
吸収性シート体10は、透水性を有する透水層11a,11b(以下、透水層11a,11bを単に透水層11ともいう。)の内側に吸収層12を設けている。吸収性シート体10は、透水層11と吸収層12との主面部略中央におしゃぶり1の乳首部3が挿通される挿通部13が形成されている。吸収性シート体10は、透水層11の主面部の周縁近傍に、加熱圧着処理が施されて透水層11を接合し、透水層11によって吸収層12を挟持し、透水層11に設けるシール部14が全周に亘って形成されている。吸収性シート体10は、図2に示すように、一方の透水層11aの主面部で、吸収層12及び他方の透水層11bが積層されていない側の面に、おしゃぶり1の座板部2に取り付けるための粘着層15が設けられている。
【0022】
透水層11は、図1及び図3に示すように、平面視略矩形状に形成されたおしゃぶり1の座板部2の一主面部を覆い、座板部2によだれ等が付かないような形状に形成され、例えば、座板部2の形状に対応させ、略同一又はやや大きな平面視略矩形状に形成されている。透水層11は、透水性を有する不織布で形成され、使用者である乳児のよだれ等を素早く吸収性シート体10内に吸い取り、吸収層12へ導く。
【0023】
なお、透水層11は、一方の透水層11aの主面部で、吸収層12及び他方の透水層11bが積層されていない側の面に、防水シート等を設けて、吸収性シート体10内に吸い取ったよだれ等が座板部2と対向する側に漏れるのを防ぐようにしてもよい。また、透水層11は、一方の透水層11aに粘着層15又は防水シートを設けることに限定されず、他方の透水層11bに設けるようにしてもよい。
【0024】
吸収層12は、図3に示すように、透水層11の内側に挟持されて設けられる層で、高吸水性、高保水性及び高吸収速度特性等を有する吸収繊維が加工された不織布が用いられ、例えば、ベルオアシス(登録商標)(帝人ファイバー株式会社製)が用いられている。吸収層12は、吸収繊維が加工された不織布を用いることで、吸収性シート体10全体の薄型化を図ることが出来る。吸収層12は、透水層11が対向する内側の面に設けられた図示しない接着剤によって、透水層11の内側の面に接着されている。吸収層12は、加熱圧着処理が施されて接合された透水層11により挟持され、シール部14より内側に形成されている。
【0025】
なお、吸収層12は、吸収性高分子ポリマー等の吸収剤を用いてもよい。なお、吸収層12は、接着剤等を用いらずに透水層11により挟持されて設けてもよい。
【0026】
なお、透水層11及び吸収層12には、主面部に、乳児がおしゃぶり1の乳首部3をくわえても楽に呼吸ができるように、呼吸孔4の配置位置に対応させて、貫通孔を設けてもよい。
【0027】
挿通部13は、図2に示すように、透水層11及び吸収層12の主面部略中央に設けられた平面視略十字形状の切り込みである。挿通部13の近傍は、挿通部13に沿って加熱圧着処理が施されてシール部14が形成され、透水層11が接合されている。挿通部13は、透水層11及び吸収層12に平面視略十字形状の切り込みを設けることによって、おしゃぶり1の乳首部3の先端部3aが挿通部13を挿通する際に、図1に示すように、先端部3aの挿通方向にめくれ上がった切れ込み間のコーナ片16a〜16d(以下、コーナ片16a〜16dを単にコーナ片16ともいう。)が、先端部3aが挿通部13を挿通した後、先端部3aより小さく形成されている基部3bの外周に沿って次第にめくれ上がる。このため、コーナ片16は、基部3bの外周に隙間なく当接されている。
【0028】
挿通部13によるコーナ片16のめくれ上がる量は、乳児が乳首部3をくわえたとき、コーナ片16が唇にかからない程度が好ましい。また、挿通部13は、透水層11及び吸収層12に平面視略十字形状の切り込みを設けることによって、曲面形状に形成されているおしゃぶり1の座板部2に沿って透水層11及び吸収層12がしわにならないように取り付けられている。
【0029】
なお、挿通部13は、平面視略十字形状の切り込みを設けることに限定されるものではなく、切れ込みの数は、例えば挿通されるおしゃぶり1の乳首部3の形状等によって適宜変更可能である。また、挿通部13は、切れ込み間の透水層11及び吸収層12の片のめくれ上がりを少なくするため、平面視略十字形状に切り込みを設けるとともに、切り込みの略中央に、略円形状、略楕円形状等の挿通されるおしゃぶり1の乳首部3の基部3bの断面形状及び大きさに対応させた貫通孔を設けてもよい。
【0030】
粘着層15は、図2に示すように、一方の透水層11aの主面部に設けられ、吸収性シート体10をおしゃぶり1の座板部2に取り付けるための再剥離可能な感圧接着剤である。粘着層15は、透水層11aの主面部の上下2箇所に帯状に設けられている。粘着層15は、図1に示すように、吸収性シート体10をおしゃぶり1の座板部2に取り付けることで、おしゃぶり1から吸収性シート体10が極めて容易に外れたり、ずれたりすることを防止するとともに、挿通部13によって吸収性シート体10がしわにならないよう座板部2に取り付けられている状態を維持させている。粘着層15は、図示はしないが、粘着層15の表面を使用寸前まで保護する剥離紙が設けられている。
【0031】
なお、粘着層15は、主面部の上下2箇所に帯状に設けられることに限定されるものではなく、数、配置位置等は適宜変更可能である。また、粘着層15を設けず、吸収性シート体10をおしゃぶり1の乳首部3に挿通されている状態で用いてもよい。
【0032】
更に、粘着層15を設けない場合、例えば座板部2の外周面に係止突起部を設け、吸収性シート体10を係止突起部に係止させることで、吸収性シート体10を位置決めし、さらにしわにならないように座板部2に取り付けてもよい。
【0033】
なお、吸収性シート体10は、透水層11a,11bの内側に挟持されて吸水層12が設けられることに限定されず、一枚の透水層11を重なるように折り曲げた内側に挟持されて吸水層12を設けるようにしてもよい。
【0034】
以上のように構成された吸収性シート体10が取り付けられるおしゃぶり1は、図3に示すように、乳児が継続しておしゃぶり1を使用していると、乳児のよだれ等を透水性を有する透水層11が吸収性シート体10の内部に吸い取り、吸収層12へ導く。そして、おしゃぶり1は、高吸収性、高保水性を有し、さらに高吸収速度特性を有する吸収層12によってよだれ等が素早く吸収されて吸収層12内で保水される。
【0035】
おしゃぶり1は、よだれ等が高吸収速度特性を有する吸収層12によって素早く吸収され吸収層12内に保水されることで、使用者である乳児の肌と接する透水層11の主面部が衛生な状態に維持され、挿通部13によって、吸収性シート体10がしわにならないようにおしゃぶり1の座板部2に取り付けられ、さらに粘着層15によって、しわにならないよう取り付けられた状態が維持されることで、継続して使用してもおしゃぶり1の使い心地が維持される。
【0036】
次に、おしゃぶり1に取り付けられている吸収性シート体10を取り外す場合、再剥離可能な感圧接着剤でおしゃぶり1の座板部2に取り付けられている吸収性シート体10は、引っ張る等して座板部2から剥離され、乳首部3から取り外される。
【0037】
次に、吸収性シート体10を再度おしゃぶり1に取り付ける場合、新しい吸収性シート体10は、粘着層15に設けられている剥離紙が剥がされ、図1に示すように、この吸収性シート体10の挿通部13におしゃぶり1の乳首部3が挿通され、吸収性シート体10の透水層11aに設けられた粘着層15を介しておしゃぶり1の座板部2に取り付けられる。
【0038】
吸収性シート体10をしゃぶり1に取り付けるときに、おしゃぶり1は、吸収性シート体10に平面視略十字形状の切り込みが設けられているので、おしゃぶり1の乳首部3の先端部3aが吸収性シート体10の挿通部13に挿通する際に、先端部3aの挿通方向にめくれ上がった切れ込み間の吸収性シート体10の片が、先端部3aが挿通部13を挿通した後、先端部3aより小さく形成されている基部3bの外周に沿って次第に吸収性シート体10の片のめくれ上がり、基部3bの外周に隙間なく吸収性シート体10が設けられる。
【0039】
本発明を適用したおしゃぶり1は、乳児がおしゃぶり1を継続して使用しても、よだれ等を高吸収性、高保水性を有し、さらに高吸収速度特性を有する吸収層12に吸収させて吸収層12内で保水することによって、幼児の肌と接する吸収性シート体10の主面部によだれ等が溜まることがなく、おしゃぶり1の衛生な状態を維持することができる。
【0040】
おしゃぶり1は、挿通部13によって、吸収性シート体10がしわにならないようにおしゃぶり1の座板部2に取り付けることができ、さらに粘着層15によって、吸収性シート体10がしわにならないよう取り付けられた状態が維持されることで、継続して使用しても吸収性シート体10にしわが出来難く、おしゃぶり1の使い心地を維持することができる。
【0041】
おしゃぶり1は、吸収性シート体10に設けられた挿通部13によって、おしゃぶり1の乳首部3の基部3bの外周に隙間なく吸収性シート体10を設けることができ、おしゃぶり1の乳首部3と乳首部3が挿通される吸収性シート体10の挿通部13との隙間から座板部2によだれ等が付くことを防止することができて、おしゃぶり1の衛生な状態を維持することができる。
【0042】
また、本発明を適用したおしゃぶり1は、粘着層15によって取り外しが容易に行えることによって、吸収性シート体の交換が容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用した吸収性シート体とこの吸収性シート体を取り付けた後のおしゃぶりの要部斜視図である。
【図2】本発明を適用した吸収性シート体とこの吸収性シート体を取り付ける前のおしゃぶりの要部斜視図である。
【図3】本発明を適用した吸収性シート体とおしゃぶりの要部横断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 おしゃぶり、2 座板部、3 乳首部、4 呼吸孔、5 取手部、10 吸収性シート体、11 透水層、12 吸収層、13 挿通部、14 シール部、15 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座板部に乳首部が設けられたおしゃぶりに取り付けられる吸収性シート体において、
上記吸収性シート体は、透水層の内側に吸収層が設けられるとともに、
上記乳首部が挿通される挿通部が形成されていることを特徴とする吸収性シート体。
【請求項2】
上記透水層の一方の面には、上記座板部に貼着するための粘着層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の吸収性シート体。
【請求項3】
座板部と、
上記座板部に設けられた乳首部と、
上記乳首部が挿通され、上記座板部に取り付けられる吸収性シート体とを備え、
上記吸収性シート体は、透水層の内側に吸収層が設けられるとともに、上記乳首部が挿通される挿通部が形成されていることを特徴とするおしゃぶり。
【請求項4】
上記透水層の一方の面には、上記座板部に貼着するための粘着層が設けられていることを特徴とする請求項3記載のおしゃぶり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−43643(P2008−43643A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224186(P2006−224186)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(391027424)株式会社フクヨー (11)
【Fターム(参考)】