説明

吸収性パッド

【課題】着用者の身体に対するフィット性に優れた使い捨て吸収性パッドの提供。
【解決手段】吸収性パッドは、縦軸11と、横軸12と、縦軸11の方向に並ぶ前部域15aおよび後部域15bを有する吸収性繊維構造体10からなり、前部域15aの可撓性が後部域15bのそれよりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸収性パッドに関し、さらに詳しくは、パッド着用者の身体に対するフィット性に優れた使い捨て吸収性パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吸収性パッドは、周知であって、衣服側の面にパッドの長手方向に沿う凹状領域を設けたり(特許文献1参照)、両側縁近傍にパッドの上面から下面へ向かってくぼむ一対の凹部を設けたり(特許文献2参照)、肌当接面および非肌当接面に複数の溝を設けたり(特許文献3参照)することによって屈曲し易くした使い捨て吸収性パッドも、周知である。
【特許文献1】特開2003−210507号公報
【特許文献2】特開2000−166967号公報
【特許文献3】特開平10−99372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された吸収性パッドは、凹状領域で着用者の身体側を頂点として容易に折れ曲がるが、折れ曲がった頂点以外の部分ではパッドが着用者の身体に密着せず、体液がその密着していない部分を伝わっていわゆる横洩れが生じることがある。また、特許文献2に開示された吸収性パッドは、一対の凹部で屈曲し、パッドの幅全体で逆U字形を描くように変形し易いが、着用時に体圧が加えられるとパッドがU字形に湾曲することがあり、必ずしも着用者の身体に密着しないという問題がある。さらにまた、特許文献3に開示された吸収性パッドは、溝で屈曲して複数の山型の隆起部を形成するが、隆起部間の谷部では着用者の身体に密着することができないという問題がある。
【0004】
この発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、特に着用者の陰部に当接する部分におけるフィット性に優れた吸収性パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのこの発明に係る吸収性パッドは、縦軸と、横軸と、体液を吸収する第一面と、第一面の反対側の第二面と、縦軸の方向に並ぶ前部域および後部域を有する吸収性繊維構造体からなり、前部域の可撓性が後部域のそれよりも高いことを特徴とする。
【0006】
このように、前部域の可撓性が後部域のそれよりも高く構成されることによって、吸収性パッドは、前部域では容易に変形するが、後部域では前部域ほど変形しない。その結果、前部域では、着用者の身体にぴったりとフィットし、体液の漏れを効果的に防止することができる。一方、後部域では、ゆとりを残して着用者の身体を覆うから、便などの固形排泄物を着用者の身体に押し付けることなくそこに収容することができる。
【0007】
前部域の可撓性を後部域のそれよりも高くするためには、前部域では、より可撓性の高い材料で吸収性パッドを構成し、後部域では、より可撓性の低い材料で吸収性パッドを構成してもよいし、また、前部域における吸収性パッドの密度を後部域におけるそれよりも高く構成してもよい。さらには、吸収性パッドにおいて、縦軸に沿って延びる第一可撓軸と、第一可撓軸から横軸の方向両側へ離間して縦軸の方向へ延びる一対の第二および第三可撓軸とが前部域に独占的に位置するように構成してもよい。第一,第二,第三可撓軸が吸収性パッドの前部域に独占的に位置している場合には、吸収性パッドは、第一可撓軸で折れ曲がることによって着用者の陰部にフィットし、さらに、一対の第二および第三可撓軸に沿って屈曲することによって着用者の鼠蹊部にフィットする。
【0008】
上記一対の第二および第三可撓軸は、第一可撓軸とほぼ並行であればよいが、吸収性パッドが着用者の股間によりよくフィットするためには、上記一対の第二および第三可撓軸が、第一可撓軸に向かって凸となる弧を描くことが好ましい。
【0009】
なお、第二可撓軸と第三可撓軸とは、縦軸に関して対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0010】
ここで、上記第一可撓軸が貫通条孔であり、かつ、上記一対の第二および第三可撓軸が条溝であることが好ましい。
【0011】
第一可撓軸が貫通条孔であると、吸収性繊維構造体の表面積が大きくなり、吸収性パッドの体液吸収能が向上する。また、貫通条孔に沿って吸収性パッドが屈曲すると、貫通条孔の縁が陰部の狭い隙間に入り込み、着用者の陰部に対するフィット性が向上する。一対の第二および第三可撓軸が条溝、すなわち、貫通していない溝であると、吸収性パッドは、一対の条溝で緩やかに屈曲し、一対の条溝に挟まれた部分が第一面側に盛り上がるように変形する。このように、第一可撓軸が貫通条孔であり、かつ、一対の第二および第三可撓軸が条溝であると、着用者の陰部およびに鼠蹊部に対する吸収性パッドのフィット性が向上する。
【0012】
貫通条孔および一対の条溝の形状は、特に限定されるものではなく、矩形状または長円形状など任意の形状を採用することができる。対をなす条溝どうしは、形状および大きさが互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。貫通条孔および一対の条溝は、連続的に延びていてもよいし、断続的に延びていてもよい。
【0013】
第二可撓軸と第三可撓軸との離間寸法は、着用者の股間幅に応じて適宜決定すればよいが、着用者の股間に対する吸収性パッドのフィット性を高めるためには、60〜90mmであることが好ましい。
【0014】
なお、一対の第二可撓軸および第三可撓軸が、第一可撓軸に向かって凸となる弧を描く場合における第二可撓軸と第三可撓軸との離間寸法は、第二可撓軸と第三可撓軸との最短距離である。
【0015】
吸収性繊維構造体の厚み寸法は、十分な量の体液を吸収することができ、なおかつ、吸収性パッドが着用者の股間に挟まれたときに着用者が不快感を覚えない程度の厚さであればよいが、10mm以下であることが好ましく、2.5mm〜10mmであることがより好ましい。横軸の方向における貫通条孔の幅寸法は、吸収性パッドの屈曲し易さを考慮しつつ、吸収性繊維構造体の厚さ寸法に応じて適宜決定すればよいが、5〜25mmであることが好ましく、8〜15mmであることがより好ましい。吸収性繊維構造体の厚み寸法および貫通条孔の幅寸法が上述の範囲内にあると、吸収性パッドが貫通条孔で屈曲しても、貫通条孔の縁どうしが接しにくく、吸収性パッドの屈曲部位が吸収性繊維構造体の存在しない状態に保たれる。その結果、着用者の陰部に当接する部分が湿潤状態になりにくく、着用者が不快感を覚えることを効果的に防止することができる。
【0016】
縦軸の方向における貫通条孔の長さ寸法は、貫通条孔の位置が着用者の陰部の位置と一致し易いように、吸収性パッドの大きさに応じて適宜決定すればよいが、縦軸の方向における吸収性繊維構造体の長さ寸法の10〜60%であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。
【0017】
縦軸の方向における一対の条溝の長さ寸法は、一対の条溝の位置が着用者の鼠蹊部の位置と一致し易いように、吸収性パッドの大きさに応じて適宜決定すればよいが、縦軸の方向における吸収性パッドの長さ寸法の10〜50%であることが好ましい。上記範囲内であれば、一対の条溝の長さ寸法が互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0018】
一対の条溝は、第一面から凹んでいても、第二面から凹んでいてもよいが、吸収性パッドが第一面側に凸となるように変形し易くするためには、第二面から凹んでいるか、または、第一および第二面の両面から凹んでいるのがよい。
【0019】
一対の条溝が、第一面および第二面の両面から凹んでいる場合には、吸収性パッドが第一面側に凸となるようにより変形し易くするために、第一面から凹んでいる一対の条溝の深さ寸法が第二面から凹んでいる一対の条溝のそれと同じであるかそれよりも小さいことが好ましい。
【0020】
吸収性繊維構造体は、単層構造でも複層構造でもよいが、複層構造の場合は、上層および下層の二層構造が好適である。吸収性繊維構造体が上層および下層の二層構造のものであると、吸収性繊維構造体の第一面側と第二面側とで、吸収性繊維構造体の形状あるいは大きさや、貫通条孔および一対の条溝の形状あるいは大きさを異ならせることが容易になる。
【0021】
第一面と第二面とで貫通条孔の長さ寸法および幅寸法が同じであってもよいが、第一面と第二面とで貫通条孔の長さ寸法および幅寸法が異なっていることが好ましい。第一面と第二面とで貫通条孔の長さ寸法および幅寸法が異なっていると、吸収性繊維構造体の上層および下層の積層工程で多少のずれが生じたとしても、吸収性パッドの第一面側からみた貫通条孔の大きさはほぼ一定に保たれる。第一面と第二面とで貫通条孔の長さ寸法および幅寸法をそれぞれ異ならせる場合、第一面における貫通条孔の長さ寸法および幅寸法が第二面におけるそれらよりも大きくてもよいし、またその逆であってもよいが、吸収性パッドが屈曲したときに着用者の陰部のより奥まった部分にフィットするためには、第一面における貫通条孔の長さ寸法が第二面における貫通条孔のそれより大きく、かつ、第一面における貫通条孔の幅寸法が第二面における貫通条孔のそれより大きいことが好ましい。
【0022】
第一面は、透液性を有していることが好ましく、透液性シートで形成されることがより好ましい。第二面は、疎水性を有していることが好ましく、撥水剤で処理するか、疎水性シートで形成されることがより好ましい。それによって、吸収性パッドは、第一面では体液を吸収し、第二面では吸収した体液が漏れ出ることを防止する。
【0023】
吸収性パッドは、体液を吸収する吸収性繊維構造体のみからなるものでもよいが、第一面が透液性を有し、第二面が疎水性を有する吸収性パッドを容易に構成するためには、第一面に位置する透液性シートと、第二面に位置する疎水性シートと、両シート間に介在する吸液性コアとからなることが好ましい。
【0024】
ここで、透液性シート,疎水性シートおよび吸液性コアの形成材料としては、通常公知の材料を特に制限なく用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係る吸収性パッドは、前部域では、容易に変形し、着用者の身体にフィットして体液漏れを防止することができると同時に、後部域では、密着せずに着用者の身体を覆って、便などの固形排泄物を着用者の身体に押し付けることなく収容することができる。
【0026】
この発明のその他の構成、材料などについては、実施の形態における記述がここに援用される。ただし、この発明は、実施の形態に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図面を参照して、この発明の実施形態について説明すると、以下のとおりである。
(第一実施形態)
【0028】
図1は、この発明の第一実施形態に係る吸収性パッドを裏面側からみた部分破断平面図である。図2は、図1の2−2線断面図である。図3は、着用された状態にある吸収性パッドを示した図2相当断面図である
【0029】
図1に示されているとおり、吸収性パッドは、吸収性繊維構造体10を含む。吸収性繊維構造体10は、縦軸11と、それに直交する横軸12と、体液を吸収する表面(第一面)13と、その反対側の裏面(第二面)14と、縦軸11の方向に並ぶ前部域15aおよび後部域15bとを有し、主に、表面13を形成する透液性トップシート13aと、裏面14を形成する疎水性バックシート14aと、両シート間に介在する吸液性コア16とから構成される。
【0030】
吸収性繊維構造体10は、さらに、吸液性コア16の横方向の両側縁近傍で縦方向に延びる一対のバリヤカフ17を含む。バリヤカフ17の縦方向の両端と横方向の外側の近位縁とがトップシート13aに接合されている(図2参照)。バリヤカフ17の横方向の内側の遠位縁には、糸ゴムなどの弾性部材18が取り付けられ、これによってバリヤカフ17が起立性向を有する(図2参照)。
【0031】
トップシート13aおよびバックシート14aは、吸液性コア16の周縁から延出して互いに重なり合う部分で接合されている(図2参照)。
【0032】
トップシート13aは、坪量がおよそ20g/mの公知の熱可塑性合成繊維不織布から形成されている。熱可塑性合成繊維としては、例えば、ポリオレフィン系,ポリエステル系,ポリアミド系などの合成樹脂から製造されているものが挙げられる。
【0033】
バックシート14aは、坪量がおよそ23g/mの公知の液抵抗性熱可塑性プラスチックフィルムから形成されている。このフィルムの材料としては、例えばポリオレフィン系の合成樹脂が挙げられる。
【0034】
吸液性コア16は、フルッフパルプと、超吸水性ポリマー粒子と、場合によっては、熱可塑性合成繊維との混合物から形成されている。高吸水性ポリマー粒子の含有率はおよそ20〜30%である。図示されていないが、吸液性コア16は、型崩れ防止などの目的から、ティシュペーパなどの液拡散性シートで包括するとともに、適宜圧縮することで構成されている。
【0035】
バリヤカフ17は、坪量がおよそ15g/mの公知の熱可塑性合成繊維複合不織布から形成されている。熱可塑性合成繊維としては、例えば、ポリオレフィン系,ポリエステル系,ポリアミド系などの合成樹脂から製造されているものが挙げられる。
【0036】
縦軸の方向における吸液性コア16の長さ寸法Lは、420mmである。横軸の方向における吸液性コア16の幅寸法Wは、150mmである。吸液性コア16の厚さ寸法Hは、6.50mmである。
【0037】
吸収性パッドは、縦軸11に沿って延びる貫通条孔(第一可撓軸)21と、貫通条孔21の横軸12の方向両側へ離間して縦軸12の方向に延びる一対の条溝(第二可撓軸,第三可撓軸)22,23とを備えており、これら貫通条孔21と一対の条溝22,23とは、前部域15aに独占的に位置している。すなわち、本実施形態においては、貫通条孔21および一対の条溝22,23を含む吸収性パッドのおよそ縦半分が前部域15aであり、残りが後部域15bである。
【0038】
図2に示されているように、貫通条孔21においては、吸液性コア16が実質的に存在していない。
【0039】
縦軸11の方向における貫通条孔21の長さ寸法L1は、130mmであって、縦軸11の方向における吸液性コア16の長さ寸法Lの30%である。横軸の方向における貫通条孔21の幅寸法W1は、12mmである。
【0040】
トップシート13aおよびバックシート14aは、図2に示されているように、表面13および裏面14上で平坦に延びて貫通条孔21を覆っていてもよいし、図示されていないが、吸液性コア16の外形に沿って延びて貫通条孔21の内側で互いに接合されていてもよい。
【0041】
一対の条溝22,23は、貫通条孔21とほぼ並行に縦軸11の方向に連続して直線的に延びている。この一対の条溝22,23は、吸液性コア16を貫通しておらず、裏面14から凹んでいる。
【0042】
一対の条溝の深さ寸法はH2,H3は、5.35mmである。縦軸11の方向における一対の条溝22,23の長さ寸法L2,L3は、どちらも130mmであって、縦軸11の方向における吸液性コア16の長さ寸法Lの30%に相当する。条溝22,23どうしの離間寸法Pは、75mmである。
【0043】
図3に示されているように、吸収性パッドは、貫通条孔21および一対の条溝22,23に沿って屈曲して変形し易く、前部域15aの可撓性が、後部域15bのそれよりも高い。
【0044】
吸液性コア16の厚さ寸法Hと貫通条孔21の幅寸法W1とが前述の大きさであることによって、吸収性パッドが貫通条孔21で屈曲しても、図3に示されているように、貫通条孔21の縁どうしが接しずに、着用者の陰部に当接する部分が吸液性コア16の存在しない状態に保たれる。このような吸収性パッドは、着用者の陰部に当接する部分が湿潤状態になりにくいから、着用者が不快感を覚えることがない。
【0045】
吸収性パッドは、従来公知の技術により製造することができる。貫通条孔21は、吸液性コア16の成形過程で、所定のパターンを形成している金型を用い、フルッフパルプが堆積しない部分を設けることにより形成することができるが、成形後の吸液性コア16を型抜きすることによって形成してもよい。一対の条溝22,23は、成形後の吸液性コア16にエンボス処理を施すことにより形成することができるが、吸液性コア16の成形過程で、所定のパターンを形成している金型を用い、他の部分よりも厚みの薄い部分を設けることによって形成してもよい。
【0046】
吸収性パッドは、それ単独で使用されるよりむしろ使い捨てのおむつやおむつカバーあるいはその他の下着類とともに使用されるのが好適であり、着用者の身体に固定するための手段を必ずしも必要としない。
(第二実施形態)
【0047】
図4は、この発明の第二実施形態に係る吸収性パッドの図2相当断面図である。この第二実施形態に係る吸収性パッドおいては、第一実施形態に係るそれと同じ主要な部材,部位にはそれぞれ100を加えた数の符号を付して、その説明を省略してある。
【0048】
第二実施形態に係る吸収性パッドが第一実施形態に係るそれと異なる点は、一対の条溝122,123が、表面113および裏面114の両面から凹んでいることである。表面114から凹んでいる一対の条溝122,123の深さ寸法H2a,H3aは、どちらも1.95mmであり、裏面114から凹んでいる一対の条溝122,123の深さ寸法H2b,H3bは、どちらも3.40mmである。
【0049】
一対の条溝122,123が、表面113および裏面114の両面から凹んでおり、なおかつ、表面113から凹んでいる条溝122,123の深さ寸法H2a,H3aが裏面114から凹んでいる条溝122,123の深さ寸法H2b,H3bよりも小さく構成されていることによって、この吸収性パッドは、表面113側に凸となるように変形し易くなり、着用者の股間にフィットする。
(第三実施形態)
【0050】
図5は、この発明の第三実施形態に係る吸収性パッドの図1相当部分破断平面図である。
【0051】
この第三実施形態に係る吸収性パッドおいては、第一実施形態に係るそれと同じ主要な部材,部位にはそれぞれ200を加えた数の符号を付して、その説明を省略してある。
【0052】
第三実施形態に係る吸収性パッドが第一実施形態に係るそれと異なる点は、一対の条溝222,223が、縦軸211の方向に断続的に延びており、貫通条孔221に向かって凸となる弧を描いていることである。この場合、一対の条溝222,223の離間寸法Pは、条溝222,223どうしの最短距離であって、75mmである。
【0053】
一対の条溝222,223が貫通条孔221に向かって凸となる弧を描いていることによって、この吸収性パッドは、着用者の股間によりよくフィットする。
(第四実施形態)
【0054】
図6は、この発明の第四実施形態に係る吸収性パッドの図1相当部分破断平面図である。図7は、図6の7−7線断面図である。図8は、図6の8−8線断面図である。図9は、吸収性パッドの図7相当断面図である。
【0055】
この第四実施形態に係る吸収性パッドおいては、第一実施形態に係る吸収性パッドと同じ主要な部材,部位にはそれぞれ300を加えた数の同じ符号を付して、その説明を省略してある。
【0056】
第四実施形態に係る吸収性パッドが第一実施形態に係るそれと異なる点は、以下のとおりである。
【0057】
図7,8に示されているように、吸収性繊維構造体310は、複層構造であって、上層コア316aおよび下層コア316bの二層からなる吸液性コア316を含む。上層コア316aは、縦軸311の方向におけるほぼ中央においてくびれた瓢箪様の外形形状を有する。一方、下層コア316bは、ほぼ矩形の外形形状を有する。上層コア316aと下層コア316bとの間には、ティシュペーパなどの液吸収拡散シート324が介在している。この液吸収拡散シート324の坪量はおよそ15g/mである。
【0058】
上層コア316aおよび下層コア316bには、それぞれ、横軸312の方向のほぼ中央で貫通している貫通条孔321a,321bと貫通していない一対の条溝322a,323a,322b,323bとが形成されている。上層コア316aと下層コア316bとは、互いの貫通条孔321a,321bの位置と互いの一対の条溝322a,323a,322b,323bの位置とがそれぞれ一致するように積層されている(図7参照)。
【0059】
上層コア316aの厚み寸法Haは、3.00mmであり、下層コア316bの厚み寸法Hbは、3.50mmである。上層コア316aにおいて表面313から凹んでいる条溝322a,323aの深さ寸法H2aは、1.95mmであり、下層コア316bにおいて裏面314から凹んでいる条溝322b,323bの深さ寸法H2bは、3.40mmである。上層コア316aの表面313における貫通条孔321aの幅寸法W1aと下層コア316bの裏面314における貫通条孔321bの幅寸法W1bとが異なっており、幅寸法W1aは12mmであり、幅寸法W1bは10mmである(図7参照)。上層コア316aの表面313における貫通条孔321aの長さ寸法L1aと下層コア316bの裏面314における貫通条孔321bの長さ寸法L1bとが異なっており、長さ寸法L1aは130mmであり、長さ寸法L1bは110mmである(図8参照)。
【0060】
JIS P8125に準拠したテーパー法により測定した一対の条溝における吸収性パッドの剛軟度が、10〜70g・cmの範囲にあることが好ましい。上記剛軟度が10g・cmより小さいと、吸収性パッドが山型に屈曲して変形しにくい。上記剛軟度が70g・cmより大きいと、屈曲した吸収性パッドが着用者の股間に触れたときに、着用者が強い違和感を覚える虞がある。
【0061】
図7に示されているように貫通条孔321a,321bの部分における吸液性コア316の断面形状は、階段状であるが(図8を併せて参照)、図9に示されているように、表面313から裏面314に向かって先細となる形状であってもよい。
【0062】
吸液性コア316が、縦軸311の方向におけるほぼ中央においてくびれた瓢箪様の外形形状を有していることによって、この吸収性パッドの縦軸311の方向におけるほぼ中央部分が着用者の股間の最も幅狭の部分に当たり易くなる。その結果、吸収性パッドの屈曲の位置が着用者の股間の位置と一致し易くなる。
【0063】
吸液性コア316が、上層コア316aと下層コア316bとからなる二層構造であることによって、表面313側と裏面314側とで、貫通条孔321a,321bおよび条溝322a,323a,322b,323bの長さ寸法,幅寸法および深さ寸法が異なる吸液性コア316を製造することが容易になる。
【0064】
吸液性コア316が二層構造であって、なおかつ、表面313における貫通条孔321aの大きさが裏面314における貫通条孔321bの大きさより大きいことによって、上層コア316aおよび下層コア316bを積層する工程で多少のずれが生じたとしても、吸液性コア316の表面313側からみた貫通条孔の大きさがほぼ一定に保たれ、吸収性パッドが屈曲したときに着用者の陰部のより奥まった部分にフィットすることができる。また、貫通条孔321a,321bの部分における吸液性コア316の断面形状が階段先状あるいは先細形状であることによって、吸液性コア316の表面積が大きくなり、吸収性パッドの体液吸収能が向上する。
【0065】
さらに、上層コア316aと下層コア316bとの間に液吸収拡散シート324が介在していることによって、吸収された体液が液吸収拡散シート324に到達すると、体液が液吸収拡散シート324を伝って隅々にまで拡散し、吸液性コア316において局所的な体液の飽和が起こることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の第一実施形態に係る吸収性パッドを示す部分破断平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】着用された状態にある吸収性パッドの図2相当断面図である。
【図4】この発明の第二実施形態に係る吸収性パッドを示す図2相当断面図である。
【図5】この発明の第三実施形態に係る吸収性パッドを示す図1相当部分破断平面図である。
【図6】この発明の第四実施形態に係る吸収性パッドを示す図1相当部分破断平面図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】吸収性パッドの図7相当断面図である。
【符号の説明】
【0067】
10,110,210,310 吸収性繊維構造体
11,211,311 縦軸
12,212,212 横軸
13,113,213,313 表面(第一面)
13a,113a,213a,313a トップシート(透液性シート)
14,114,214,314 裏面(第二面)
14a,114a,214a,314a バックシート(疎水性シート)
15a,215a,315a 前部域
15b,215b,315b 後部域
16,116,216,316 吸液性コア
21,121,221,321a,321b 貫通条孔(第一可撓軸)
22,122,222,322a,322b 条溝(第二可撓軸)
23,123,223,323a,323b 条溝(第三可撓軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸と、横軸と、体液を吸収する第一面と、前記第一面の反対側の第二面と、前記縦軸の方向に並ぶ前部域および後部域を有する吸収性繊維構造体からなり、前記前部域の可撓性が前記後部域のそれよりも高い吸収性パッド。
【請求項2】
前記縦軸に沿って延びる第一可撓軸と、前記第一可撓軸から前記横軸の方向両側へ離間して前記縦軸の方向へ延びる一対の第二および第三可撓軸とが前記前部域に独占的に位置している請求項1記載の吸収性パッド。
【請求項3】
前記一対の第二および第三の可撓軸が、前記第一可撓軸とほぼ並行である請求項2記載の吸収性パッド。
【請求項4】
前記一対の第二および第三可撓軸が、前記第一可撓軸に向かって凸となる弧を描く請求項2に記載の吸収性パッド。
【請求項5】
前記第一可撓軸が貫通条孔であり、かつ、前記第二および第三可撓軸が条溝である請求項2〜4のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項6】
前記第二可撓軸と第三可撓軸との離間寸法が60〜90mmである請求項2〜5のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項7】
前記吸収性繊維構造体の厚み寸法が10mm以下であり、かつ、前記横軸の方向における前記貫通条孔の幅寸法が5〜25mmである請求項5または6に記載の吸収性パッド。
【請求項8】
前記縦軸の方向における前記貫通条孔の長さ寸法が、前記縦軸の方向における前記吸収性繊維構造体の長さ寸法の10〜60%である請求項5〜7のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項9】
前記縦軸の方向における前記条溝の長さ寸法が、前記縦軸の方向における前記吸収性繊維構造体の長さ寸法の10〜50%である請求項5〜8のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項10】
前記条溝が前記第二面から凹んでいる請求項5〜9のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項11】
前記条溝が前記第一および第二面の両面から凹んでおり、かつ、前記第一面から凹んでいる条溝の深さ寸法が前記第二面から凹んでいる条溝のそれと同じであるかそれよりも小さい請求項5〜10のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項12】
前記吸収性繊維構造体が複層構造である請求項1〜11のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項13】
前記第一面における前記貫通条孔の長さ寸法と前記第二面における前記貫通条孔のそれとが異なり、かつ、前記第一面における前記貫通条孔の幅寸法と前記第二面における前記貫通条孔のそれとが異なる請求項5〜12のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項14】
前記第一面が透液性シートで形成されている請求項1〜13のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項15】
前記第二面が疎水性を有する請求項1〜14のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項16】
前記第二面が疎水性シートで形成されている請求項1〜15のいずれかに記載の吸収性パッド。
【請求項17】
前記吸収性繊維構造体が、前記第一面に位置する透液性シートと、前記第二面に位置する疎水性シートと、両シート間に介在する吸液性コアとからなる請求項1〜16のいずれかに記載の吸収性パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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