説明

吸収性物品およびその製造方法

【課題】着用者から排出がされた体液がより漏れにくい吸収性物品を提供する。
【解決手段】本発明の吸収性物品1は、透液性の表面シート20と、表面シート20と対向する位置に設けられた不透液性の裏面シート30と、表面シート20および裏面シート30の間に設けられた吸収体40と、表面シート20および吸収体40の間に設けられたセカンドシート50とを備え、厚み方向に加熱圧縮して表面シート20からセカンドシート50の内部までの複数の凹部70が形成され、凹部70において表面シート20の繊維は熱可塑変形しており、かつ凹部70の底部において表面シート20の繊維の線状の形状は維持されており、表面シート20は接着剤を使用してセカンドシートと接合し、セカンドシート50は、パルプを有するエアレイド不織布を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナ、失禁パッド、失禁ライナなどの吸収性物品およびその製造方法に関し、とくに薄型の吸収性物品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面層から吸収層にかけて複数の凹部が形成されている薄型の吸収性物品が従来技術として知られている(たとえば、特許文献1)。この吸収性物品は、凹部を形成している表面層と吸収層を形成する繊維とが接合されているため、薄型の吸収層を使用した場合であっても、表面層から吸収層にかけて形成された凹部が湿潤状態でも潰れにくくなっている。これにより、凹部から吸収層へ体液を常に浸透させやすくできる。また、表面層の嵩を大きくできるため、吸収性物品の肌への当たりが柔らかくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−291234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品に形成された凹部から吸収体へ体液をさらに浸透させやすくし、着用者から排出された体液がより漏れにくい薄型の吸収性物品が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の吸収性物品は、透液性の表面シートと、表面シートと対向する位置に設けられた不透液性の裏面シートと、表面シートおよび裏面シートの間に設けられた吸収体と、表面シートおよび吸収体の間に設けられたセカンドシートとを備え、厚み方向に加熱圧縮して表面シートからセカンドシートの内部までの複数の凹部が形成され、凹部において、表面シートの繊維は熱可塑変形しており、かつ凹部の底部において、表面シートの繊維の線状の形状は維持されており、表面シートは接着剤を使用してセカンドシートと接合し、セカンドシートは、パルプを有するエアレイド不織布を含む。
また、本発明は、透液性の表面シートと、表面シートと対向する位置に設けられた不透液性の裏面シートと、表面シートおよび裏面シートの間に設けられた吸収体と、表面シートおよび吸収体の間に設けられたセカンドシートとを備えた吸収性物品であって、本体部を有し、表面シートからセカンドシートの内部までの複数の凹部が形成され、吸収性物品の長手方向中央の幅方向における本体部の幅が10cmである場合、水平面に対して10°傾けた板の上に、該板の平らな面に沿って、吸収性物品の長手方向が水平になるように配置して、表面シートにおける、吸収性物品の長手方向および幅方向の中央の位置に、人工経血を96ml/分の注入速度で7ml注入したとき、表面シートに注入された人工経血が、吸収性物品の本体部から流れ落ちることなく、吸収性物品にすべて吸収される。
さらに、本発明は、透液性の表面シートと、表面シートと対向する位置に設けられた不透液性の裏面シートと、表面シートおよび裏面シートの間に設けられた吸収体と、表面シートおよび吸収体の間に設けられたセカンドシートとを備えた吸収性物品の製造方法において、セカンドシートを作製するためのセカンドシート用シートを用意する工程と、セカンドシート用シートの表面に接着剤を塗布する工程と、表面シートを作製するための表面シート用シートを用意する工程と、セカンドシート用シートの接着剤の塗布面に表面シート用シートを積層して、表面シート用シートとセカンドシート用シートとの複合シートを作製する工程と、表面シートの繊維の融点に対して50℃低い温度以上かつ表面シートの繊維の融点未満の温度で、厚み方向に加熱圧縮して表面シート用シートからセカンドシート用シートの内部までの複数の凹部を、複合シートに形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着用者から排出がされた体液がより漏れにくい吸収性物品、とくに薄型の吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における吸収性物品の平面図である。
【図2】図2(a)は、図1のA−A断面図であり、図2(b)は、図2(a)の凹部の部分を拡大した断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態における吸収性物品の製造方法を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態における吸収性物品の製造方法で作製された吸収性物品の凹部近傍の断面を示す顕微鏡写真である。
【図5】図5は、傾斜時吸収試験の試験方法を説明するための図である。
【図6】図6は、傾斜時吸収試験の試験方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明の一実施形態の吸収性物品を説明する。本発明の一実施形態の吸収性物品は、薄型の生理用ナプキンである。ここで、薄型の生理用ナプキンとは、たとえば、4mm以下の厚さの生理用ナプキンをいう。また、薄型の吸収性物品とは、たとえば、4mm以下の厚さの吸収性物品をいう。
【0009】
図1および図2は、本発明の一実施形態の吸収性物品を説明するための図である。図1は、本発明の一実施形態における吸収性物品の平面図である。図2(a)は、図1のA−A断面図である。図2(b)は、図2(a)の凹部の部分を拡大した断面図である。本発明の一実施形態における吸収性物品1は、透液性の表面シート20と、表面シート20と対向する位置に設けられた不透液性の裏面シート30と、表面シート20および裏面シート30の間に設けられた吸収体40と、表面シート20および吸収体40の間に設けられたセカンドシート50と、表面シート20の幅方向の両側に設けられ、表面シート20と重なる領域61を有するサイドシート60とを備える。表面シート20は接着剤を使用してセカンドシート50と接合している。
【0010】
吸収性物品1は、本体部14と、本体部14の長手方向の中央から幅方向に突出する一対のウイング部11とを有する。本体部14と、ウイング部11との間の境界は、ウイング部11に対して一方の長手方向端側にある吸収性物品1の幅方向側の側辺15と、ウイング部11に対して他方の長手方向端側にある吸収性物品1の幅方向側の側辺16とを結んだ線17である。したがって、吸収性物品1の長手方向の中央における本体部14の幅は、一対の線17の間の距離になる。なお、吸収性物品にウイング部がない場合、吸収性物品全体が本体部になる。
【0011】
裏面シート30の表面シート20と対向する面における反対側の面の上に粘着部80が設けられている。図1で、吸収性物品1の幅方向が、x軸方向であり、長手方向がy軸方向である。図1で、吸収性物品1の平面方向は、x軸およびy軸により形成される平面が広がる方向である。
【0012】
吸収性物品1には、ピンエンボス加工により厚み方向に加熱圧縮して表面シート20からセカンドシート50の内部までの複数の凹部70が形成されている。ここで、ピンエンボス加工とは、ローラに設けられたピンを使用して行うエンボス加工である。凹部70の内面は、表面シート20で覆われている。また、吸収性物品1は、厚み方向に加熱圧縮することによって表面シート20、セカンドシート50および裏面シート30を接合して形成したシール部12を長手方向両側に有する。
【0013】
表面シート20は、吸収性物品の着用時に着用者の肌に接するシートである。表面シート20には、好ましくは、加熱により(たとえば、サーマルボンド方式で)ボンディングされた不織布が使用される。たとえば、熱融着繊維を含むウェブを加熱することによって、ウェブ中の熱融着繊維が軟化し、さらに一部が溶融してウェブ中の繊維同士を接着させることによって、不織布は作製される。熱融着繊維は、たとえば単一型と複合型とに分類される。単一型の熱融着繊維は、単一の樹脂からなる繊維であり、単一型の熱融着繊維には、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、未延伸ポリエステル繊維、ポリエチレン−酢ビ共重合物繊維、塩ビ−酢ビ共重合物繊維などがある。
【0014】
複合型の熱融着繊維とは、低融点の樹脂と高融点の樹脂とを組み合わせて作製された熱融着繊維である。複合型の熱融着繊維には、サイド・バイ・サイド型の複合繊維と、芯鞘型複合繊維とがある。サイド・バイ・サイド型の複合繊維には、ポリエチレンとポリプロピレンとを組み合わせたもの、低融点プロピレンとプロピレンとを組み合わせたものなどがある。芯鞘型複合繊維には、鞘にポリエチレンを芯にポリプロピレンを用いたもの、鞘にポリエチレンを芯にポリエステルを用いたもの、鞘に低融点ポリエステルを芯にポリエステルを用いたもの、鞘に低融点ポリプロピレンを芯にポリプロピレンを用いたもの、鞘にポリプロピレンを芯にポリエステルを用いたもの、鞘にナイロン−6を芯にナイロン66を用いたものなどがある。
【0015】
表面シート20に用いる不織布の繊維は、熱可塑性繊維であることが好ましい。これにより、吸収性物品1に凹部を形成するときに生じた表面シート20の繊維の変形は、表面シート20が湿潤状態になっても維持されるので、吸収性物品1に形成された凹部70を湿潤状態になっても潰れにくくすることができる。
【0016】
セカンドシート50は、表面シート20に排出された着用者の体液を拡散させたり、吸収性物品1の表面近傍の部分の剛性を高めたりすることができる。セカンドシートには、好ましくはエアレイド不織布が使用される。エアレイド不織布とは、エアレイ法によって作製された、パルプを含む不織布である。また、エアレイ法とは、一般的には、パルプを乾燥状態で機械的にほぐし、セルロース繊維を単繊維化し、ウェブ(パルプ繊維マット)を連続的に形成した後、バインダーを使用して、ウェブ中の繊維間同士を固着させる方法である。
【0017】
セカンドシート50に用いるエアレイド不織布のバインダーに、熱融着繊維を使用してもよい。エアレイド不織布のバインダーとして、たとえば、表面シート20の不織布に使用可能な熱融着繊維と同じものを使用することができる。熱融着繊維は熱可塑性を有するので、吸収性物品1に凹部を形成するときに生じたセカンドシート50の繊維の変形は、表面シート20が湿潤状態になっても維持される。したがって、吸収性物品1に形成された凹部70を湿潤状態になっても潰れにくくすることができる。また、セカンドシート50に用いるエアレイド不織布のバインダーとして、熱融着繊維と、熱融着繊維以外の粉末状、ネット状、フィルム状または繊維状のバインダーとの両方を使用してもよい。
【0018】
一般に、エアレイド不織布の剛性は、表面シート20の剛性よりも高いため、エアレイド不織布を含むセカンドシート50を表面シート20と吸収体40との間に設けることによって、吸収性物品の表面近傍の部分の剛性が高くなる。これにより、歩いたり座ったりするなどの体の動きおよび寝ていたりするなどの姿勢の変化によって吸収性物品1が変形し、その吸収性物品1の変形によって、表面シート20からセカンドシート50の内部まで形成されている凹部70の底の部分でセカンドシート50が吸収体40から剥離することを抑制することができる。
【0019】
また、エアレイド不織布は親水性であるため、着用者の体液の吸収は速く、着用者が排出した体液が表面シート20の表面および/または中を平面方向に拡散する前に、着用者が排出した体液を表面シート20から吸収して、吸収体40に移動させることができる。これにより、歩いたり座ったりするなどの体の動きおよび寝ていたりするなどの姿勢の変化によって吸収性物品1が傾いて、吸収性物品1の長手方向または幅方向への体液の拡散が速くなった場合でも、吸収性物品1から体液が漏れることを抑制できる。
【0020】
セカンドシート50に用いるエアレイド不織布の例としては、化学パルプ、熱融着繊維およびバインダーからなる不織布がある。熱融着繊維は、たとえば、芯が250〜260℃の融点を有するポリエステルであり、鞘が融点115〜130℃の融点を有するポリエチレンである芯鞘型複合繊維である。バインダーは、たとえばエチレン酢酸ビニル系バインダーである。
【0021】
表面シート20からセカンドシート50の内部まで設けられている凹部70は、表面シート20の繊維の融点に対して50℃低い温度以上かつ表面シート20の繊維の融点未満の温度で厚み方向に加熱圧縮して形成された。表面シート20の繊維の融点とは、表面シート20の繊維同士を接合させるバインダー繊維の融点である。たとえば、表面シート20の繊維がサイド・バイ・サイド型の複合繊維の場合、表面シート20の繊維の融点は、複合繊維の低融点側の樹脂の融点であり、表面シート20の繊維が芯鞘型複合繊維の場合、表面シート20の融点は、芯鞘型複合繊維の鞘の部分の樹脂の融点である。
【0022】
このため、凹部70の底部13において、表面シート20の繊維は溶融しておらず、加熱圧縮する前の表面シート20の繊維の形状は、すなわち、表面シート20の繊維の線状の形状は維持されている。
【0023】
したがって、凹部70の底部13において、表面シート20は、セカンドシート50と熱融着していない。ここで、熱融着とは、表面シート20とセカンドシート50とを厚み方向に加熱圧縮したとき、表面シート20の中の熱融着繊維の一部または全部が溶融して、表面シート20の中の熱融着繊維がセカンドシート50の繊維に接着することをいう。たとえば、表面シート20の中の熱融着繊維が芯鞘型複合繊維の場合、熱融着とは、表面シート20とセカンドシート50とを厚み方向に加熱圧縮したとき、熱融着繊維の鞘の部分が溶融して、表面シート20の中の熱融着繊維がセカンドシート50の繊維に接着することをいう。
【0024】
したがって、凹部70の底部13において、表面シート20はフィルム化されず、凹部70の中に溜まった着用者の体液は、凹部70の底部13から吸収体40に速やかに移行する。ここで、フィルム化とは、表面シート20の繊維が融着して、表面シート20の複数の繊維が合体して、多孔質のまたは孔の開いていない膜になることをいう。これにより、着用者の体液が凹部70の中に滞留している時間を短くすることができる。凹部70の中に滞留している時間が長くなると、凹部70の中に滞留している体液が表面シート20および/またはセカンドシート50の中を平面方向に拡散し、吸収性物品1から体液が漏れる場合がある。また、これにより、歩いたり座ったりするなどの体の動きおよび寝ていたりするなどの姿勢の変化によって吸収性物品1が傾いて、吸収性物品1の長手方向または幅方向への体液の拡散が速くなったときでも、吸収性物品1から体液が漏れることを抑制できる。
【0025】
一方、一般に、エンボス加工により吸収性物品に凹部を形成すると、凹部の底の部分で表面シートはフィルム化する。この場合、凹部70の底部13の液透過性が低下し、着用者の体液が凹部70の中に滞留している時間が長くなる。そして、凹部70の中に滞留している体液が、表面シート20および/またはセカンドシート50の長手方向または幅方向に拡散して、吸収性物品1から着用者の体液が漏れ出る可能性がある。とくに、歩いたり座ったりするなどの体の動きおよび寝ていたりするなどの姿勢の変化によって吸収性物品1が傾いて、吸収性物品1の長手方向または幅方向への体液の拡散が速くなったとき、吸収性物品1から体液が漏れる危険性が高くなる。
【0026】
また、凹部70の底部13において、表面シート20はフィルム化されていないので、凹部70の底部13において、表面シート20が硬くなることを抑制することができる。
【0027】
また、凹部70において、表面シート20の繊維は熱可塑変形している。これにより、表面シート20およびセカンドシート50が湿潤状態になっても、凹部70は維持される。
【0028】
表面シート20からセカンドシート50の内部まで形成された凹部70は、たとえばピンエンボス加工により形成される。凹部70は、好ましくは千鳥状に配置されている。凹部70の開口部分の平面方向の形状は好ましくは円形である。なお、凹部70の配置は千鳥状に限定されず、たとえばマス目状であってもよい。また、凹部70の開口部分の平面方向の形状は円形に限定されず、たとえば、凹部70の開口部分の平面方向の形状は、正方形、長方形、三角形などの他の多角形、星形、楕円形でもよい。凹部70の開口部分の平面方向の大きさは、すべて同じであってもよいし、吸収性物品1における位置にしたがって異なるようにしてもよい。また、凹部70の深さは、すべて同じであってもよいし、吸収性物品1における位置にしたがって異なるようにしてもよい。
【0029】
凹部70の平面方向の開口部分の直径は、たとえば1.2mmである。千鳥状に配置されている凹部70において、幅方向に隣接する凹部70の中心間の距離(ピッチ)は、たとえば3mmであり、長手方向に隣接する凹部70の中心間の距離(ピッチ)は、たとえば2mmである。
【0030】
上述したように、表面シート20は接着剤を使用してセカンドシート50と接合している。これにより、表面シート20がセカンドシート50と熱融着していない温度で、表面シート20およびセカンドシート50を厚み方向に加熱圧縮した場合でも、表面シート20がセカンドシート50から剥離することを抑制することができる。
【0031】
表面シート20をセカンドシート50に接合させるための接着剤は、好ましくは感圧性接着剤である。感圧性接着剤には、たとえば、スチレン系ブロックポリマーなどの熱可塑性高分子、天然樹脂系または合成樹脂系の粘着付与剤樹脂、パラフィン系オイルなどの可塑性材料がある。スチレン系ブロックポリマーには、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)などが挙げられる。天然樹脂系の粘着付与剤樹脂には、αピネン、βピネンもしくはジペンテンの共重合体であるテルペン系樹脂、ガムロジン、トール油ロジンもしくはウッドロジンであるロジン系樹脂、またはこれらの水添物やエステルなどが挙げられる。また、合成樹脂系の粘着付与剤樹脂には、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素添加石油樹脂、DCPD系石油樹脂、ピュアーモノマー系石油樹脂等が挙げられる。また、可塑性材料には、粘度を下げるパラフィンオイル系、タック性を上げるナフテンオイル、凝集力を下げたり色や臭いを付与したりするアロマオイルが挙げられる。
【0032】
また、表面シート20またはセカンドシート50に接着剤を均一に塗布してもよいし、所定のパターンに塗布してもよい。接着剤の表面シート20またはセカンドシート50への塗布パターンには、幅方向に所定の間隔を開けて平行に並んでいる、長手方向に延びる平行線パターン、幅方向に平行に並んでいる、長手方向に延びる帯状パターン、振幅が幅方向であり長手方向に延びる波線が幅方向に平行に並んでいる波状パターン、長手方向延びるらせんを幅方向に並べたらせん状パターンなどがある。接着剤の塗布坪量は1〜10g/m2であることが好ましい。これにより、接着剤が全体に分布されて、なおかつ接着剤が存在することによる吸収性物品1の硬質感を減少することができ、吸収性物品1の使用感が良好になる。
【0033】
裏面シート30は、吸収体40で吸収した着用者からの体液が厚さ方向で外側に漏れることを抑制するためのシートである。裏面シート30には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを主体としたフィルム、通気性の樹脂フィルム、スパンボンドまたはスパンレースなどの不織布に通気性の樹脂フィルムを接合したシートなどを用いることができる。裏面シート30は、着用時に着用者に対して違和感を生じさせない程度の柔軟性を有することが好ましい。
【0034】
上述したように、吸収性物品1の長手方向両側には、シール部12が設けられている。シール部12は、ヒートエンボス加工などで、表面シート20、セカンドシート50および裏面シート30を厚み方向に加熱圧縮して形成される。シール部12では、表面シート20、セカンドシート50および裏面シート30が接合されている。
【0035】
吸収体40は、着用者から排出された体液を吸収して保持する。吸収体40は、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないことが好ましい。吸収体40として、たとえば、フラッフ状パルプもしくはエアレイド不織布と高吸収性ポリマー(SAP)とからなる吸収体を使用できる。フラッフ状パルプの代わりに、たとえば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨンおよびアセテートなどの人工セルロース繊維を吸収体に使用してもよい。吸収性繊維と高吸収性ポリマーとが全体的に均一に分布した吸収体をティッシュなどの液透過性材料で覆ってもよい。吸収体40に用いるエアレイド不織布には、たとえば、パルプと熱融着繊維とを熱融着させた、またはパルプをバインダーで固着させた不織布が挙げられる。水溶性高分子が適度に架橋した三次元網目構造を有し、30〜60倍の水を吸収するが本質的に水不溶性であり、一旦吸収された水は多少の圧力を加えても離水しない高吸収性ポリマーを、吸収体40に用いる高吸収性ポリマーとして使用することが好ましい。この高吸収性ポリマーには、たとえば、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状または繊維状のポリマーが挙げられる。吸収体の形状および構造は必要に応じて変えることができる。また、吸収体のサイズや吸収能力などは用途に対応して変動される。
【0036】
吸収体40のセカンドシート50側の面は略平坦であることが好ましい。これにより、表面シート20およびセカンドシート50の一部が吸収性物品1の平面方向の面に対して傾くことによって吸収性物品1の長手方向または幅方向への体液の拡散が速くなることを、抑制できる。一方、吸収体40のセカンドシート50側の面に段差や盛り上がっている部分を設けた場合、表面シート20およびセカンドシート50の一部における吸収性物品1の平面方向の面に対する傾きが大きくなり、吸収性物品1の長手方向または幅方向から体液が漏れる可能性が高くなる場合がある。
【0037】
吸収性物品1の平面方向における吸収体40の大きさは、吸収性物品1の平面方向における表面シート20、セカンドシート50および裏面シート30の大きさよりも小さい。また、吸収性物品1の平面方向における吸収体40の存在領域は、吸収性物品1の平面方向における表面シート20、セカンドシート50および裏面シート30の存在領域の内側である。しかし、吸収性物品1の平面方向における吸収体40の大きさは、吸収性物品1の平面方向における表面シート20、セカンドシート50または裏面シート30の大きさと同じであってもよい。
【0038】
シール部12は、吸収体40の長手方向の端の長手方向外側に設けられている。これにより、吸収体40に吸収しきれず拡散した体液がシール部12でせき止められ、体液が吸収性物品1の長手方向から漏れることを抑制することができる。
【0039】
サイドシート60は、表面シート20の幅方向の両側部に設けられており、長手方向に延びている。サイドシート60は、表面シート20と重なる領域61を有する。サイドシート60の幅方向内側の端62は、表面シート20に固定されておらず、自由端になっている。これにより、着用者が吸収性物品1を着用したとき、サイドシート60の幅方向内側の端62の部分が起立し、体液が吸収性物品1の外側へ漏れることを防止するための防漏壁を形成する。サイドシート60は、疎水性または撥水性を有することが好ましい。サイドシート60には、たとえば、スパンボンド不織布やSMS不織布などが使用される。また、サイドシート60は着用者の肌と接触するため、肌への擦れ刺激を低減できるエアスルー不織布をサイドシート60に使用することが好ましい。
【0040】
上述したように、裏面シート30の表面シート20と対向する面における反対側の面の上に粘着部80が設けられている。粘着部80は、吸収性物品1をシーツなどの下着に固定する。感圧性接着剤を塗布することによって粘着部80は形成される。粘着部80を形成するための感圧性接着剤には、たとえば、スチレン系ブロックポリマーなどの熱可塑性高分子、天然樹脂系または合成樹脂系の粘着付与剤樹脂、パラフィン系オイルなどの可塑性材料がある。
【0041】
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態における吸収性物品1の製造方法の概略を説明する。粉砕パルプおよび高吸収性ポリマーの混合物である吸収材222を、不図示の粉砕パルプ供給装置からパターンドラム220に供給する。パターンドラム220の外周部には吸収材を詰める型として凹部224が形成されている。パターンドラム220の内部は吸引226されており、パターンドラム220に供給された吸収材222は、凹部224の中に吸い込まれる。そして、吸収材222は圧縮され、吸収体228へと成形されることによって、吸収体228が作製される。作製された吸収体228は、不図示の吸収体カッタによって所定の形状になるように切断される。
【0042】
次に、帯状の表面シート−セカンドシート複合シート262が、吸収体228の下に配置される。表面シート−セカンドシート複合シート262は、表面シート20を作製するための表面シート用シートとセカンドシート50を作製するためのセカンドシート用シートとが重なっている複合シートである。表面シート−セカンドシート複合シート262には、表面シート用シートからセカンドシート用シートの内部まで凹部が形成されている。表面シート−セカンドシート複合シート262の作製方法は、後に説明する。
【0043】
サイドシート60を作製するための一対の帯状のサイドシート用シート272がサイドシートロール270から供給される。表面シート−セカンドシート複合シート262の幅方向両側に、表面シート−セカンドシート複合シート262の表面シート用シートと一部重なるように、供給された一対のサイドシート用シート272を積層される。
【0044】
次に、裏面シート30を作製するための裏面シート用シートが巻き込まれている裏面シートロール280から帯状の裏面シート用シート282が供給される。そして、裏面シート用シート282と表面シート−セカンドシート複合シート262とが吸収体228を挟むように、裏面シート用シート282は表面シート−セカンドシート複合シート262に積層される。このようにして、吸収性物品の連続体268は形成される。不図示のラウンドシール装置によって、吸収性物品の連続体268にシール部を形成した後、カッタ290を使用して吸収性物品の連続体268を吸収性物品の形状となるように切断して吸収性物品1が作製される。
【0045】
なお、透液性の表面シートと、表面シートと対向する位置に設けられた不透液性の裏面シートと、表面シートおよび前記裏面シートの間に設けられた吸収体と、表面シートおよび前記吸収体の間に設けられたセカンドシートとを備えた吸収性物品を製造することができれば、吸収性物品の製造方法は、上述の製造方法に限定されない。
【0046】
次に、図3を参照して、表面シート−セカンドシート複合シート262の作製方法概略を説明する。セカンドシート50を作製するためのセカンドシート用シートが巻き込まれているセカンドシートロール230から帯状のセカンドシート用シート232が供給される。接着剤塗工装置240を使用して、セカンドシート用シート232の表面に感圧性接着剤242を塗布する。接着剤塗工装置240には、たとえば、スロットコーターなどの接触式コーター、ならびにスプレーコーター、カーテンコーターおよびスパイラルコーターなどの非接触式コーターがある。
【0047】
表面シート20を作製するための表面シート用シートが巻き込まれている表面シートロール250から帯状の表面シート用シート252が供給される。そして、供給された表面シート用シート252は、セカンドシート用シート232の感圧性接着剤242の塗布面に積層される。
【0048】
セカンドシート用シート232に表面シート用シート252を積層した複合シート254は、エンボス加工装置260に供給される。エンボス加工装置260では、表面シート用シート252の繊維の融点に対して50℃低い温度以上かつ表面シート用シート252の繊維の融点未満の温度で、厚み方向に加熱圧縮して表面シート用シート252からセカンドシート用シート232の内部までの複数の凹部を複合シート254に形成する。複合シート254を加熱圧縮する温度が、表面シート用シート252の繊維の融点に対して50℃低い温度よりも低い場合、表面シート用シート252の繊維は熱可塑変形しない場合があり、複合シート254に形成された凹部の形状を維持することが難しい場合がある。また、この場合、着用者の体圧が吸収性物品に印加されたとき、表面シートからセカンドシートの内部までに形成された複数の凹部が潰れてしまい、吸収性物品の体液の吸収が遅くなったり、体液が吸収性物品の中に広がりやすくなったりする場合がある。複合シート254を加熱圧縮する温度が、表面シート用シート252の繊維の融点以上の場合、複合シート254に形成された凹部の底の部分がフィルム化したり、表面シート用シートが硬くなったりする場合がある。凹部の底の部分がフィルム化すると、凹部に溜まっている体液の吸収速度が遅くなったり、凹部に溜まっている体液が拡散して吸収性物品から体液が漏れやすくなる場合がある。
【0049】
表面シート用シート252の繊維の融点とは、表面シート用シート252の繊維同士を接合させるバインダー繊維の融点である。たとえば、表面シート用シート252の繊維がサイド・バイ・サイド型の複合繊維の場合、表面シート用シート252の繊維の融点は、複合繊維の低融点側の樹脂の融点であり、表面シート用シート252の繊維が芯鞘型複合繊維の場合、表面シート用シート252の繊維の融点は、芯鞘型複合繊維の鞘の部分の樹脂の融点である。
【0050】
エンボス加工装置260は、上段ロール264と下段ロール266を含む。上段ロール264は、半径方向に突出する複数のピンを外周面上に設けた彫刻ロールである。下段ロール266は、外周面が平滑であるプレーンロールである。なお、下段ロール266を上段ロール264の雌型の彫刻ロールとしてもよい。また、下段ロール266を弾性ロールとしてもよい。
【0051】
上段ロール264および下段ロール266は加熱され得る。上段ロール264および下段ロール266を加熱する方式には、たとえば、電気加熱方式、誘導加熱方式、熱循環加熱方式、蒸気加熱方式およびガス加熱方式などがある。なお、複合シート254を厚み方向に加熱圧縮することができれば、上段ロール264および下段ロール266の一方のみを加熱するようにしてもよい。
【0052】
また、厚み方向に加熱圧縮して表面シート用シート252からセカンドシート用シート232の内部までの複数の凹部を複合シート254に形成することができれば、凹部を複合シート254に形成する方法はロールエンボス加工に限定されない。たとえば、平板エンボス加工、高周波エンボス加工または超音波エンボス加工で凹部を複合シート254に形成してもよい。
【0053】
たとえば、上段ロール264および下段ロール266の表面の温度を表面シート用シート252の繊維の融点に対して50℃低い温度以上かつ表面シート用シート252の繊維の融点未満の温度にすることによって、表面シート用シート252の繊維の融点に対して50℃低い温度以上かつ表面シート用シート252の繊維の融点未満の温度で、複合シート254を厚み方向に加熱圧縮することができる。たとえば、表面シート用シート252の繊維が、芯鞘型複合繊維であり、芯が250〜260℃の融点を有するポリエステルであり、鞘が115〜130℃の融点を有するポリエチレンである場合、上段ロール264および下段ロール266の表面の温度は、たとえば60℃以上、120℃未満となる。
【0054】
上段ロール264と下段ロール266との間を複合シート254が通過するとき、上段ロール264の加熱されたピンによって、複合シート254に凹部が形成される。上段ロール264のピンおよび下段ロール266の温度は、表面シート用シート252の繊維の融点未満の温度であるので、形成された凹部の底の部分で複合シート254の表面シート用シート252の繊維は融解せず、複合シート254の表面シート用シート252はフィルム化しない。また、上段ロール264のピンおよび下段ロール266の温度は、表面シート用シート252の繊維の融点に対して50℃低い温度以上であるので、複合シート254がピンに差し込まれたときに表面シート用シート252の繊維は軟化して変形し、上段ロール264と下段ロール266との間を複合シート254が通過した後も表面シート用シート252の繊維の変形は維持される。
【0055】
複合シート254がエンボス加工装置260を通過すると、表面シート用シートからセカンドシート用シートの内部までの凹部が形成されている表面シート−セカンドシート複合シート262が作製される。上述したように、作製された表面シート−セカンドシート複合シート261は、次の工程で吸収体228の下に配置される。
【0056】
以上の製造方法で作製された吸収性物品1の凹部70近傍の断面を示す顕微鏡写真を図4に示す。表面シート20の繊維は、芯が250〜260℃の融点を有するポリエステルであり、鞘が115〜130℃の融点を有するポリエチレンである芯鞘型複合繊維である。セカンドシート50は、化学パルプと、芯が250〜260℃の融点を有するポリエステルであり、鞘が融点115〜130℃の融点を有するポリエチレンである芯鞘型複合繊維と、エチレン酢酸ビニル系バインダーとからなる。エンボス加工により厚み方向に表面シート20およびセカンドシート50を加熱圧縮するときの温度は100℃であった。図4に示すように、凹部70の底部13において表面シート20の繊維の線状の形状は維持されている。また、凹部70において表面シート20の繊維は、曲がっており、熱可塑変形していることがわかる。さらに、凹部70の底部13において表面シート20の繊維は溶融しておらず、表面シート20はセカンドシートと熱融着していない。そして、凹部70の底部13において表面シート20は、フィルム化していない。
【0057】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0059】
実施例および比較例について、傾斜時吸収試験を行った。傾斜時吸収試験とは、水平面に対して傾けた試料に所定量の人工経血を注入して、試料から人工経血が漏れるか調べる試験である。試料を傾けることによって、試料に注入された人工経血は、重力により試料の幅方向の端または長手方向の端から漏れやすくなる。したがって、傾斜時吸収試験によって、人工経血が試料からどの程度漏れるかを調べることによって、どの程度、体液が漏れにくい試料であるかを判定することができる。また、吸収性物品の着用中、着用者の姿勢や動きによって吸収性物品は傾く。したがって、傾斜時吸収試験を行うことによって、着用者が姿勢を変えた場合であっても、または着用者が動いた場合であっても、体液が漏れにくい試料であるかを判定することができる。以下、図5および図6を参照して傾斜時吸収試験の方法を詳細に説明する。
【0060】
(傾斜時吸収試験)
図5に示すように、水平面440に対して所定の角度(θ)傾けた板420の上に、板420の平らな面に沿って、裏面シートが板側になるように試料420を配置した。水平面440に対する板420の角度(θ)を以下、「板の傾斜角」と呼ぶ。図6(a)に示すように、試料410は、試料410の長手方向が水平面440に対して垂直になるように配置するか、または、図6(b)に示すように、試料410の長手方向が水平面440と平行になるように、すなわち、試料410の長手方向が水平になるように配置した。試料410が板420から滑り落ちる場合は、粘着剤を使用して試料410を板420に固定した。試料410のウイング部11は、板420側に折り曲げた。試料の長手方向および幅方向の中央の位置412にオートビュレット430(Metrohm社製、マルチドジマット776)の先端(ビュレット先端径:1.3mm)を接触させて、オートビュレット430から、所定の量の人工経血を所定の注入速度で試料に注入した。注入された人工経血のうち試料から流れ落ちて試料から漏れた人工経血は、板420の下方に配置されたシャーレ450に回収された。
【0061】
人工経血を注入した後の試料410の重さから人工経血を注入する前の試料410の重さを引き算することによって試料410に吸収された人工経血の量を算出した。または、人工経血を回収した後のシャーレ450の重さから空のシャーレ450の重さを引き算することによって試料から漏れた人工経血の量を算出した。傾斜時吸収試験で使用する人工経血は、グリセリン(和光純薬工業(株)製 和光一級)80g、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)(和光純薬工業(株)製 化学用)8g、塩化ナトリウム(NaCl)(和光純薬工業(株)製 試薬特級)10g、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)(和光純薬工業(株)製 和光一級)4g、食用色素製剤(光洋プロダック(株)製):赤色102号8g、赤色2号2g、黄色5号2gをイオン交換水1000ccに混合し、溶解することによって作製した。
【0062】
前記表面シートからセカンドシートの内部までの複数の凹部を形成するときの好適な温度範囲を調べるために、傾斜時吸収試験で注入した人工経血の吸収性物品における吸収速度および吸収性物品の幅方向の拡散長を調べた。
【0063】
(吸収速度)
傾斜時吸収試験で人工経血の注入を開始してから、表面シートから吸収されることによって表面シートの表面から人工経血が消えるまでの時間を計測した。この計測した時間が吸収速度(秒)となる。
【0064】
(拡散長)
傾斜時吸収試験で注入した人工経血の拡散領域において、人工経血の拡散領域における吸収性物品の長手方向の端の位置と、人工経血の注入位置との間の距離が拡散長となる。
【0065】
(試料)
次に、傾斜時吸収試験に使用した試料を説明する。試料には、表面シートおよびセカンドシートからなる試料と、吸収性物品の試料との2種類の試料がある。表面シートおよびセカンドシートからなる試料は、実施例1および比較例1〜5であり、吸収性物品の試料は、実施例2〜5および比較例6〜13である。
【0066】
実施例1〜5および比較例6〜8において、板エンボス加工の方法で、2秒間加熱圧縮することによって表面シートおよびセカンドシートに凹部を形成した。吸収性物品を量産するときは、ロールエンボス加工の方法で表面シートおよびセカンドシートに凹部を形成される場合がある。この場合、板エンボス加工の方法の場合に比べて、高い温度でかつ短い時間で表面シートおよびセカンドシートを加熱圧縮することが好ましい。
【0067】
(表面シートおよびセカンドシートからなる試料)
(1)実施例1
試料の厚さ:1.00mm
試料の厚さは、PEACOCK厚み計を使用して、荷重3.0gf/cm2の条件で測定した。以下同じ。
(a)表面シート
目付:25g/m2
厚さ:0.5mm
大きさ:85mm×230mm
材質:芯が250〜260℃の融点を有するポリエステルであり、鞘が115〜130℃の融点を有するポリエチレンである芯鞘型複合繊維を含む不織布。
繊度:2.8dtex
(b)セカンドシート
目付:40g/m2
厚さ:0.4〜0.8mm
大きさ:55mm×230mm
材質:化学パルプと、芯が250〜260℃の融点を有するポリエステルであり、鞘が融点115〜130℃の融点を有するポリエチレンである芯鞘型複合繊維と、エチレン酢酸ビニル系バインダーとからなるエアレイド不織布。
(c)凹部
凹部のパターン:千鳥パターン
凹部の穴径:1.2mm
長手方向のピッチ:2mm
幅方向のピッチ:3mm
加熱圧縮温度:100℃
加熱圧縮時間:2秒
(d)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
材質:スチレン系ホットメルト接着剤
塗布量:5g/m2
【0068】
(2)比較例1
【表1】

【0069】
(3)比較例2
【表2】

【0070】
(4)比較例3
恒安集団有限公司製の製品「七度空間少女系列純棉日用」から取り出した表面シートからなる試料。
試料の厚さ:0.80mm
(a)表面シート
材質:スパンレース不織布。
【0071】
(5)比較例4
ユニ・チャーム株式会社製の製品「センターインコンパクトふわふわタイプ昼用」から取り出した表面シートおよびセカンドシートからなる試料。
試料の厚さ:2.00mm
(a)表面シート
目付:30g/m2
厚さ:0.7mm
大きさ:85mm×240mm
材質:芯がポリエステルであり、鞘がポリエチレンである芯鞘型複合繊維を含む不織布。
(b)セカンドシート
目付:65g/m2
厚さ:0.5〜0.9mm
大きさ:67mm×215mm
材質:上層は、芯がポリエステルであり、鞘がポリエチレンである芯鞘型複合繊維の不織布であり、下層は、化学パルプと、芯が250〜260℃の融点を有するポリエステルであり、鞘が融点115〜130℃の融点を有するポリエチレンである芯鞘型複合繊維と、エチレン酢酸ビニル系バインダーとからなる複合エアレイド不織布である。
(c)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
材質:スチレン系ホットメルト接着剤
塗布量:1.5g/m2
塗布パターン:スパイラル
【0072】
(6)比較例5
【表3】

【0073】
(吸収性物品の試料)
(1)実施例2
試料の中央の厚さ:2.93mm
(a)表面シート
実施例1と同じ。
(b)セカンドシート
実施例1と同じ。
(c)凹部
加熱圧縮温度:80℃
それ以外、実施例1と同じ。
(d)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
実施例1と同じ
(e)吸収体
材質:粉砕パルプとSAP(アクリル系高吸収性ポリマー)との混合物をティッシュ(目付:15g/m2)でサンドイッチ
目付:250〜300g/m2(長手方向の両端側)
350〜400g/m2(長手方向の中央)
厚さ:1.35〜1.45mm(長手方向の両端側)
1.5mm(長手方向の中央)
【0074】
(2)実施例3
試料の厚さ:実施例2と同じ。
(a)表面シート
実施例2と同じ。
(b)セカンドシート
実施例2と同じ。
(c)凹部
加熱圧縮温度:100℃
それ以外、実施例2と同じ。
(d)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
実施例2と同じ。
(e)吸収体
実施例2と同じ。
【0075】
(3)実施例4
試料の厚さ:実施例2と同じ。
(a)表面シート
実施例2と同じ。
(b)セカンドシート
実施例2と同じ。
(c)凹部
加熱圧縮温度:110℃
それ以外、実施例2と同じ。
(d)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
実施例2と同じ。
(e)吸収体
実施例2と同じ。
【0076】
(4)実施例5
試料の厚さ:実施例2と同じ。
(a)表面シート
実施例2と同じ。
(b)セカンドシート
実施例2と同じ。
(c)凹部
加熱圧縮温度:120℃
それ以外、実施例2と同じ。
(d)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
実施例2と同じ。
(e)吸収体
実施例2と同じ。
【0077】
(5)比較例6
試料の厚さ:実施例2と同じ。
(a)表面シート
実施例2と同じ。
(b)セカンドシート
実施例2と同じ。
(c)凹部
加熱圧縮温度:加熱なし。
それ以外、実施例2と同じ。
(d)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
実施例2と同じ。
(e)吸収体
実施例2と同じ。
【0078】
(6)比較例7
試料の厚さ:実施例2と同じ。
(a)表面シート
実施例2と同じ。
(b)セカンドシート
実施例2と同じ。
(c)凹部
加熱圧縮温度:60℃
それ以外、実施例2と同じ。
(d)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
実施例2と同じ。
(e)吸収体
実施例2と同じ。
【0079】
(7)比較例8
試料の厚さ:実施例2と同じ。
(a)表面シート
実施例2と同じ。
(b)セカンドシート
実施例2と同じ。
(c)凹部
加熱圧縮温度:130℃
それ以外、実施例2と同じ。
(d)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
実施例2と同じ。
(e)吸収体
実施例2と同じ。
【0080】
(8)比較例9
【表4】

【0081】
(9)比較例10
【表5】

【0082】
(10)比較例11
恒安集団有限公司社製の製品「七度空間少女系列純棉日用」
試料の中央の厚さ:4.35mm
(a)表面シート
比較例3と同じ。
(b)セカンドシート
比較例3と同じ
(c)吸収体
材質:パルプとSAPとの混合物をティッシュ(目付:19g/m2)でサンドイッチ
目付:300g/m2
厚さ:3mm
【0083】
(11)比較例12
ユニ・チャーム株式会社製の製品「センターインコンパクトふわふわタイプ昼用」
試料の中央の厚さ:7.05mm
(a)表面シート
比較例4と同じ
(b)セカンドシート
比較例4と同じ
(c)表面シートとセカンドシートを接着する接着剤
比較例4と同じ
(e)吸収体
材質:上段は、粉砕パルプとSAPとの混合物をティッシュ(目付:13.5g/m2)でサンドイッチしたもの。下段はSAPシート。
【0084】
(12)比較例13
【表6】

【0085】
(結果)
板の傾斜角を90°にし、試料の長手方向が水平面に対して垂直になるように試料を配置し、3mlの人工経血を7ml/分の注入速度で注入したときの傾斜角度表面シートおよびセカンドシートからなる試料の傾斜時吸収試験の結果を以下の表1に示す。
【0086】
【表7】

【0087】
板の傾斜角を45°にし、試料の長手方向が水平面に対して垂直になるように試料を配置し、3mlの人工経血を7ml/分の注入速度で注入したときの傾斜角度表面シートおよびセカンドシートからなる試料の傾斜時吸収試験の結果を以下の表2に示す。
【0088】
【表8】

【0089】
板の傾斜角を45°にし、試料の長手方向が水平になるように試料を配置し、3mlの人工経血を7ml/分の注入速度で注入したときの傾斜角度表面シートおよびセカンドシートからなる試料の傾斜時吸収試験の結果を以下の表3に示す。
【0090】
【表9】

【0091】
板の傾斜角を10°にし、試料の長手方向が水平面に対して垂直になるように試料を配置し、3mlの人工経血を96ml/分の注入速度で注入したときの傾斜角度表面シートおよびセカンドシートからなる試料の傾斜時吸収試験の結果を以下の表4に示す。
【0092】
【表10】

【0093】
板の傾斜角を10°にし、試料の長手方向が水平になるように試料を配置し、3mlの人工経血を96ml/分の注入速度で注入したときの傾斜角度表面シートおよびセカンドシートからなる試料の傾斜時吸収試験の結果を以下の表5に示す。
【0094】
【表11】

【0095】
板の傾斜角を10°にし、試料の長手方向が水平面に対して垂直になるように試料を配置し、3mlの人工経血を96ml/分の注入速度で注入したときの吸収性物品の試料の傾斜時吸収試験の結果を以下の表6に示す。
【0096】
【表12】

【0097】
板の傾斜角を10°にし、試料の長手方向が水平になるように試料を配置し、3mlの人工経血を96ml/分の注入速度で注入したときの吸収性物品の試料の傾斜時吸収試験の結果を以下の表7に示す。
【0098】
【表13】

【0099】
板の傾斜角を10°にし、試料の長手方向が水平になるように試料を配置し、7mlの人工経血を96ml/分の注入速度で注入したときの吸収性物品の試料の傾斜時吸収試験の結果を以下の表8に示す。
【0100】
【表14】

【0101】
表面シートおよびセカンドシートに凹部を形成するために加熱圧縮したときの温度を変えた試料(実施例2〜5、比較例6〜8)について、板の傾斜角を10°にし、試料の長手方向が水平になるように試料を配置し、3mlの人工経血を96ml/分の注入速度で注入したときの吸収性物品の試料の吸収速度および拡散長の結果を以下の表9に示す。
【0102】
【表15】

【0103】
以上の傾斜時吸収試験から、表8に示すように、本発明の一実施形態における吸収性物品の一つである実施例3と従来の吸収性物品である比較例9〜13との中で実施例3のみが、水平面に対して10°傾けた板の上に、板の平らな面に沿って、吸収性物品の長手方向が水平になるように配置して、表面シートにおける、吸収性物品の長手方向および幅方向の中央の位置に、人工経血を96ml/分の注入速度で7ml注入したとき、表面シートに注入された人工経血が、ウイング部を折り曲げた吸収性物品から流れ落ちることなく、吸収性物品にすべて吸収された。したがって、吸収性物品の幅が10cmである場合、水平面に対して10°傾けた板の上に、板の平らな面に沿って、吸収性物品の長手方向が水平になるように配置して、表面シートにおける、吸収性物品の長手方向および幅方向の中央の位置に、人工経血を96ml/分の注入速度で7ml注入したとき、表面シートに注入された人工経血が、ウイング部を折り曲げた吸収性物品から、すなわち、本体部から流れ落ちることなく、吸収性物品にすべて吸収される吸収性物品と、本発明に係る吸収性物品を特定することができる。
【0104】
表9に示すように、以上の傾斜時吸収試験から、表面シートの繊維の融点に対して50℃低い温度以上かつ表面シートの繊維の融点未満の温度である80℃、100℃、110℃、120℃の温度で、厚み方向に加熱圧縮して表面シートからセカンドシートの内部までの複数の凹部を形成することによって、吸収性物品における体液の吸収を速くして、吸収性物品における体液の拡散を小さくできることがわかった。比較例6は、吸収は速く、拡散は比較的小さいものの、表面シートおよびセカンドシートに凹部を確実に形成することができなかった。また、表9から、板エンボス加工の方法で加熱圧縮するときの最適温度は80℃であることがわかった。したがって、ロールエンボス加工の方法で吸収性物品を量産する場合、80℃よりも高い温度、たとえば、100℃で、2秒間よりも短い時間だけ加熱圧縮することが好ましいことがわかった。
【符号の説明】
【0105】
1 吸収性物品
11 ウイング部
12 シール部
13 凹部の底
20 表面シート
30 裏面シート
40 吸収体
50 セカンドシート
60 サイドシート
62 サイドシートの幅方向内側の端
70 凹部
80 粘着部
220 パターンドラム
230 セカンドシートロール
240 接着剤塗工装置
250 表面シートロール
260 エンボス加工装置
262 表面シート−セカンドシート複合シート
264 上段ロール
266 下段ロール
270 サイドシートロール
280 裏面シートロール
290 カッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと、
前記表面シートと対向する位置に設けられた不透液性の裏面シートと、
前記表面シートおよび前記裏面シートの間に設けられた吸収体と、
前記表面シートおよび前記吸収体の間に設けられたセカンドシートとを備え、
厚み方向に加熱圧縮して前記表面シートから前記セカンドシートの内部までの複数の凹部が形成され、
前記凹部において、前記表面シートの繊維は熱可塑変形しており、かつ前記凹部の底部において、前記表面シートの繊維の線状の形状は維持されており、
前記表面シートは接着剤を使用して前記セカンドシートと接合し、
前記セカンドシートは、パルプを有するエアレイド不織布を含む吸収性物品。
【請求項2】
前記エアレイド不織布は、熱融着繊維をさらに含む請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体の前記セカンドシート側の面は略平坦である請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記表面シートの幅方向の両側に設けられ、前記表面シートと重なる領域を有する一対の不透液性のサイドシートとをさらに備え、
前記サイドシートの幅方向内側の端は、自由端である請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
長手方向両側に、厚み方向に加熱圧縮して、前記表面シート、前記セカンドシートおよび前記裏面シートを接合するシール部を、前記吸収体の長手方向の端の長手方向外側に有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
透液性の表面シートと、
前記表面シートと対向する位置に設けられた不透液性の裏面シートと、
前記表面シートおよび前記裏面シートの間に設けられた吸収体と、
前記表面シートおよび前記吸収体の間に設けられたセカンドシートとを備えた吸収性物品であって、
本体部を有し、
前記表面シートから前記セカンドシートの内部までの複数の凹部が形成され、
前記吸収性物品の長手方向中央の幅方向における本体部の幅が10cmである場合、水平面に対して10°傾けた板の上に、該板の平らな面に沿って、前記吸収性物品の長手方向が水平になるように配置して、前記表面シートにおける、前記吸収性物品の長手方向および幅方向の中央の位置に、人工経血を96ml/分の注入速度で7ml注入したとき、前記表面シートに注入された該人工経血が、前記吸収性物品の本体部から流れ落ちることなく、前記吸収性物品にすべて吸収される吸収性物品。
【請求項7】
透液性の表面シートと、前記表面シートと対向する位置に設けられた不透液性の裏面シートと、前記表面シートおよび前記裏面シートの間に設けられた吸収体と、前記表面シートおよび前記吸収体の間に設けられたセカンドシートとを備えた吸収性物品の製造方法において、
前記セカンドシートを作製するためのセカンドシート用シートを用意する工程と、
前記セカンドシート用シートの表面に接着剤を塗布する工程と、
前記表面シートを作製するための表面シート用シートを用意する工程と、
前記セカンドシート用シートの前記接着剤の塗布面に前記表面シート用シートを積層して、前記表面シート用シートと前記セカンドシート用シートとの複合シートを作製する工程と、
前記表面シートの繊維の融点に対して50℃低い温度以上かつ前記表面シートの繊維の融点未満の温度で、厚み方向に加熱圧縮して前記表面シート用シートから前記セカンドシート用シートの内部までの複数の凹部を、前記複合シートに形成する工程とを含む吸収性物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111127(P2013−111127A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258236(P2011−258236)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】