説明

吸収性物品の個装体

【課題】開封操作を片手で容易に行うことができ、吸収性物品を容易且つ迅速に取り出すことができる吸収性物品の個装体を提供すること。
【解決手段】吸収性物品1(以下、物品1)と包装材5とを具備する物品1の個装体10であり、包装材5は、物品1より幅の広い幅広部51と幅広部51より幅の狭い幅狭部52とからなり、物品1は、幅狭部52と共にその長手方向に一体的に巻回及び/又は折り畳まれてロール状物Rとされており、幅広部51は、ロール状物Rを内包した状態で物品1の長手方向に折り畳まれ、且つ幅方向両端縁部51bの、相対向する重ね合わせ部分が接合されてシール部53が形成されており、シール部53の長手方向の長さが、物品1の長手方向の長さの1/3以下であり、個装体を親指と他の指の間に挟んで持ち、その親指又は他の指を一方向にずらすことで該シール部53の全域を剥離させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品と、該吸収性物品の非肌当接面側に粘着剤を介して剥離可能に粘着され、該吸収性物品を包装する包装材とを具備する吸収性物品の個装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンティライナー(おりものシート)、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品は、包装材と共に折り畳まれ、該包装材の所定箇所が封止されることにより個別包装されて市販されている。この個別包装された吸収性物品を使用する場合には、通常、包装材の封止されている部分を引き剥がす、折り畳まれていた吸収性物品を展開する、吸収性物品を包装材から引き剥がす、吸収性物品を正しく装着するなどの操作が必要であり、吸収性物品の取り出し・装着作業に意外に手間取ることがある。また、包装材の接着部分が長いため、そこを剥がす時に大きな音がすることもある。このため、ユーザーからは、吸収性物品の速やかな取り出し・装着が可能な個別包装が要望されている。また、例えばパンティライナーや生理用ナプキンなどは、個別包装された状態でバッグなどに入れられて携帯されることが少なくなく、嵩張らずコンパクトに個別包装されていることも要望されている。
【0003】
上記要望に対応した技術として、特許文献1には、衛生ナプキン等のパッドと、ラッパー(包装材)とを有し、該ラッパーの縦方向エッジは該パッドの縦方向エッジより短く、該パッドの縦方向部分の50%を越える部分が該ラッパーと重なり、該パッドの一部は該ラッパーと重ならず、該ラッパーの縦サイドは該パッドの縦サイドを越えて延びる使い捨て製品が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている使い捨て製品は、パッドがラッパーにより個別包装された状態において、該ラッパーの全周縁が封止されているため、封止部分の引き剥がし作業に手間がかかり、パッドの取り出しに時間がかかり、且つ剥がす時の音も大きくなってしまう。更に、この使い捨て製品は、勿論、片手で開封することは困難である。
【0005】
また、特許文献2には、生理用ナプキンの包装方法として、ナプキンを、該ナプキンの外形より大きな包装材上に載置した後、該包装材のナプキンの長辺側に位置する両側端部を、ナプキンの一部を覆うように内側に折り曲げ、次いで、該包装材のナプキンの短辺側に位置する両側端部を、ナプキンとともにナプキンの長手方向に折り曲げ、その折り曲げ状態を粘着シール等により固定する方法が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献2の方法で得られる生理用ナプキンの個装体においては、両手を使って粘着シール等を剥離した後、更に包装材を開いてナプキンを取り出さなければならず、ナプキンの取り出しに時間がかかる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−5227号公報
【特許文献2】特開平3−176376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、開封操作を片手で容易に行うことができ、吸収性物品を容易且つ迅速に取り出すことができる吸収性物品の個装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、吸収性物品と、該吸収性物品の非肌当接面側に粘着剤を介して剥離可能に粘着され、該吸収性物品を包装する包装材とを具備する吸収性物品の個装体であって、前記包装材は、前記吸収性物品より幅の広い幅広部と、該幅広部より幅の狭い幅狭部とからなり、前記吸収性物品は、前記幅狭部と共に該吸収性物品の長手方向に一体的に巻回され及び/又は折り畳まれてロール状物とされており、前記幅広部は、該ロール状物を挟み込んだ状態に該吸収性物品の長手方向に折り畳まれ、且つ該吸収性物品の両端縁から外方に延出した該幅広部の幅方向両端縁部において、該幅広部の相対向する重ね合わせ部分が接合されてシール部が形成されており、前記シール部の長手方向の長さが、前記吸収性物品の長手方向の長さの1/3以下であり、個装体を親指と他の指の間に挟んで持ち、その親指又は他の指を一方向にずらすことで該シール部の全域を剥離させ得るようになされている吸収性物品の個装体を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収性物品の個装体によれば、開封操作を片手で容易に行うことができ、吸収性物品を容易且つ迅速に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の吸収性物品の個装体を、その好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の個装体10は、図1〜図3に示すように、パンティライナー(おりものシート)1と、該パンティライナー1の非肌当接面側(着用時に着用者の肌側とは反対側に配される側)に粘着剤4を介して剥離可能に粘着され、該パンティライナー1を包装する包装材5とを具備しており、該包装材5は、パンティライナー1より幅の広い幅広部51と、該幅広部51より幅の狭い幅狭部52とからなる。
【0012】
本実施形態の個装体10は、図3(a)〜(c)及び図4ように、パンティライナー1が、幅狭部52と共に該パンティライナー1の長手方向に一体的に巻回及び/又は折り畳まれてロール状物Rとされており、幅広部51は、該ロール状物Rを挟み込んだ状態にパンティライナー1の長手方向に折り畳まれ、且つ該ロール状物Rの両端縁から外方に延出した該幅広部51の幅方向両端縁部51b,51bにおいて、該幅広部51の相対向する重ね合わせ部分が接合されてシール部53,53が形成されているものである。
【0013】
本実施形態の個装体10について詳述すると、パンティライナー1は、図1に示すように、個装体の展開状態において、長手方向の中央部付近がやや細幅の長円形状を有している。パンティライナー1の長手方向の長さL及び幅方向の長さW(最大幅部分の長さ)の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、Lは8〜18cm程度、好ましくは12〜16cm程度、Wは、4〜7cm程度、好ましくは5〜6cm程度である。
【0014】
パンティライナー1は、図2に示すように、液保持層2及び防漏層3を具備している。液保持層2と防漏層3とは、接着材、ヒートエンボス加工等の公知の接合処理により一体化されている。斯かる構成のパンティライナー1は、肌当接面側(着用時に着用者の肌側に配される側)から液を吸収して、その液を漏らさないように保持可能である。
【0015】
粘着剤4は、パンティライナー1を下着の所定箇所に固定するためのものであり、本実施形態においては、図2に示すように、パンティライナー1の非肌当接面側の略全域に所定のパターンで塗布されている。粘着剤4は、パンティライナー1の長手方向の一端側の一部が幅広部51に粘着し、残りの部分が幅狭部52に粘着している。粘着剤4の塗工パターンは、従来公知の種々のパターンを採用し得るが、本実施形態における粘着剤の塗布パターンは、パンティライナー1の幅方向に沿って粘着剤を連続的に又は不連続に塗布してなる粘着剤塗布部が、該パンティライナー1の長手方向に所定間隔を置いて多列に形成された塗布パターンである。
【0016】
包装材5は、図1〜図3に示すように、個装体の展開状態において、縦長に形成されており、その長手方向一端側が、幅方向の長さが相対的に長い幅広部51となっており、その他の部分が、幅方向の長さが相対的に短い幅狭部52となっている。幅広部51及び幅狭部52は、何れもパンティライナー1よりも幅広の矩形形状を有している。パンティライナー1は、その長手方向及び幅方向を、包装材5の長手方向及び幅方向にそれぞれ一致させて、包装材5の幅方向中央部に粘着剤4により粘着されている。従って、「幅広部51の幅方向」及び「幅狭部52の幅方向」は、それぞれ、パンティライナー1の長手方向と直交する方向と同方向であり、「幅広部51の幅方向と直交する方向」及び「幅狭部52の幅方向と直交する方向」は、それぞれ、パンティライナー1の長手方向と同方向である。
【0017】
幅広部51の幅方向の長さW1(図1参照)は、パンティライナー1の幅方向の長さWに対して、好ましくは105〜160%、更に好ましくは110〜150%の範囲にある。また、幅広部51の幅方向の長さW1は、幅狭部52の幅方向の長さW2に対して、好ましくは105〜160%、更に好ましくは110〜150%の範囲にある。
【0018】
幅広部51の幅方向と直交する方向の長さL1は、パンティライナー1の長手方向の長さLに対して、好ましくは5〜40%、更に好ましくは20〜30%の範囲にある。
また、幅広部51は、パンティライナー1の長手方向一端(長手方向に最も突出した部分)から外方に向けて延出した延出部分51aを有している。
【0019】
本実施形態の個装体10おけるシール部53は、その長手方向の長さL3(図4参照)が、パンティライナー1の長手方向の長さLの1/3以下である。シール部53の長さが、この長さを超えると、指をずらすだけでシール部を剥離させることが難しくなる。
シール部の長さを抑えて片手での開封を容易とする一方、パンティライナー1の全体が幅広部51に内包されるようにする観点から、シール部53の長さL3は、パンティライナー1の長手方向の長さLの10〜40%であることが好ましく、20〜30%であることがより好ましい。また、数値的には、シール部53の長手方向の長さL3は、好ましくは5〜40mm、更に好ましくは10〜30mmである。
また、シール部53の幅W3は、好ましくは2〜10mm、更に好ましくは3〜7mmである。
【0020】
また、幅広部51は、図3(c)に示すように、該幅広部51の長手方向(幅方向に直交する方向と同じ)の略中央部を折り線B1として、2つ折り状態に折り畳まれている。そして、その2つ折り状態とされた幅広部51の相対向する重ね合わせ部分同士が接合されてシール部53,53が形成されている。
このように折り畳まれた幅広部51によりシール部が形成されていると、個装体1を親指と他の指の間に挟んで持ち、その指を一方向に一回ずらすだけでシール部53の全域を容易に剥離させることができ、片手での開封操作が一層容易となる。
【0021】
本実施形態におけるシール部53は、図6に示すように、幅広部51の幅方向と直交する方向(図中X方向)に間欠的に、幅広部の重ね合わせ部分間が接合された接合部53aを有している。即ち、X方向に、幅広部の重ね合わせ部分間が接合された接合部53aと該重ね合わせ部分間が接合されていない非接合部53bとを交互に有している。このような構成を有することにより、片手でシール部53を剥離することが一層容易とある。尚、接合部53aは、幅広部51の幅方向(図中Y方向)と平行に形成されていても良いが、該幅方向に対して斜めに形成されていることが好ましい。接合部53aの中心線のY方向に対する傾斜角度θは、例えば5〜85度とすることができる。
尚、シール部53が、本実施形態におけるように、交互に形成された接合部53aと非接合部53bとから形成されている場合、シール部53の長手方向の長さは、非接合部53bを含めた長さとする。
【0022】
包装材5は、少なくとも幅広部における、パンティライナー1と反対側の面の摩擦係数が0.7以下であることが、シール部53において包装材同士間にすべりが生じ易くなり、片手での開封が一層容易となることから好ましく、0.2〜0.5であることがより好ましい。
包装材5の摩擦係数は、以下のようにして測定する。
<摩擦係数の測定方法>
図10(a)に示すように包装材(個装フィルム)を、吸収性物品の長手方向と同じ方向に70mm以上×それに直交する方向に70mm以上の大きさにカットして試験片61とする(n=3)。
図10(b)のように、試験片61の流れ方向の幅に対する中央部にカッターで穴62を開ける。この穴は、摩擦係数測定治具(以下、すべり片)63に設けられたつり手64が入る程度の大きさとし、あまり大きく開けない。尚、流れ方向とは、つり手を引いてスベリ片をすべらせる方向である。
すべり片63のステンレス板((株)浅沼商会 FEROTYPE PLATE:64mm×64mm×6mm、重量200g)に、図10(b)及び(c)で示すように同じ方向を維持しながら、試験片61の穴62につり手64を通し、該試験片61をすべり片63に固定する。試験片61のすべり片63に対する固定は、試験片61で、すべり片63における、後述するスベリ台と対向させる一面(64mm×64mm)及びそれに隣接する四面を覆い、残りの一面上に位置した試験片61の周縁部を、粘着テープ65で接着して行う。
この時、試験片を張り過ぎたり、たるませて貼り付けたりしないよう注意する。
一方、準備したスベリ台上に、上記試験片61と同様に包装材を切断して得た試験片66を、65mm以上×80mm以上の大きさとなるように取り貼り付けて固定する。この試験片66も張り過ぎたり、たるませて貼り付けたりしないよう注意する。尚、試験片66を固定したスベリ台の面は水平にする。
試験片66の上に、試験片61を貼り付けたスベリ片63を置き、その天面に1kgの荷重をかけて、引張り速度200mm/min、引張り距離60mm、チャート速度30mm/minの条件にて測定を行う。
記録されたチャートの荷重の平均値を摩擦係数とする。
【0023】
また、個装体10の展開状態、具体的には、シール部53における幅広部51の接合された重ね合わせ部分を引き剥がして該幅広部51を展開した状態(シール部の接合状態を破壊して幅広部を展開した状態)において、該シール部53を形成していた部分(シール部形成部)の長手方向の長さは、パンティライナー1の長手方向の長さLの50%以下であることが好ましく、30〜40%であることが更に好ましい。シール部形成部の長さをパンティライナーの全長に対して斯かる割合に調整することにより、パンティライナーをより一層コンパクトに個別包装できるようになると共に、シール部を片手で剥離させることが一層容易となる。本実施形態のシール部53のように、交互に形成された接合部53aと非接合部53bとからなるシール部53の場合、上記の「シール部形成部の長手方向の長さ」は、接合部53aのみの長さを合計した値とする。
【0024】
本実施形態におけるパンティライナー1の液保持層2は、3次元的に捲縮した潜在捲縮性繊維を含む層を1層以上具備している。液保持層がこのような層を具備していることにより、個装体の内部に巻回されあるいは折り畳まれているパンティライナーの巻き癖が少なく、シール部の開封時に展開しやすいため、個装体の開封及びその後のパンティライナーの取り出しが一層容易となる。
【0025】
潜在捲縮性繊維は、加熱前は、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、且つ所定温度での加熱によって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。熱可塑性ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。潜在捲縮性繊維の含有量は、液保持層2の重量に対して、好ましくは40〜100重量%、更に好ましくは70〜100重量%である。
【0026】
本実施形態においては、図5に示すように、液保持層2は、潜在捲縮性繊維を含む第1繊維層21と、潜在捲縮性繊維を含まないか又は潜在捲縮性繊維を第1繊維層21よりも低い含有率で含む第2繊維層22とからなり、該第1繊維層21と第2繊維層22とは、部分的に接合されて接合部23で一体化されており、多層不織布2とされている。多層不織布2の第2繊維層22側には、凹凸形状が形成されている。上記多層不織布(液保持層)2は、第1繊維層形成材と第2繊維層形成材とを互いに積層した状態で、両者を熱又は超音波エンボス等により部分的に熱融着して、多数の熱融着部が分散状態に形成された中間体を製造した後、該中間体に熱処理を施して、第1繊維層形成材を熱収縮させて得られたものである。
【0027】
本実施形態の個装体10は、例えば、次のようにして得られる。先ず、パンティライナー1を、図3(a)に示すように包装材5上に載置し、パンティライナー1の幅狭部52上に位置する部分を、パンティライナー1の肌当接面側が内側となるように幅狭部52と共に一体的に折り曲げて、図3(b)に示すような状態とする。この折り曲げの際には、パンティライナー1の長手方向の一端部と他端部とが重なるようにパンティライナー1の長手方向中央部を折り線として2つ折りすることが、肌当接面を衛生的に維持する観点から好ましい。
【0028】
次いで、上記のように2つ折りしたパンティライナー1を、幅狭部52と共に、幅広部51から遠い側から巻き始め、パンティライナー1の全体が幅広部51上に載るまで巻回して、図3(c)に示す状態とする。尚、図3(b)に示す状態から、パンティライナー1及び幅狭部52を一体的に巻回する代わりに、パンティライナー1及び幅狭部52を一体的に1回あるいは2回折り畳むことによって、パンティライナー1の全体を幅広部51上に載せることもできる。
また、図3(a)に示す状態から、パンティライナー1及び幅狭部52を一体的に巻き始め、巻回のみによってパンティライナー1の全体を幅広部51上に載せることもできる。また、図7に示すように、パンティライナー1を、包装材5とともに、肌当接面側から見て一つの山折り線B2及び二つの谷折り線B3、B3で略W字状に折り曲げることによって、パンティライナー1の全体を幅広部51上に乗せることもできる。
【0029】
このようにして、パンティライナー1は、幅狭部52と共に一体的に巻回され及び又は折り畳まれてコンパクトなロール状物Rとされ、該ロール状物Rは、幅広部51のパンティライナー当接面側における幅方向中央部に載置される。
【0030】
そして、図3(c)に示す状態から、幅広部51を、そのパンティライナー側の面を内側にしてその幅方向と直交する方向(パンティライナーの長手方向)に二つに折り畳み、折り畳まれて相対向している該幅広部51の重ね合わせ部分の端縁を揃える。
このようにして、幅広部51を、ロール状物Rを挟み込んだ状態にパンティライナー1の長手方向に折り畳んだ後、ロール状物Rの両端縁から外方に延出した該幅広部51の幅方向両端縁部51b,51bにおいて、該幅広部51の相対向する重ね合わせ部分を、各端縁部51b,51bに沿ってヒートシール、接着剤、エンボス加工等の公知の接合方法により接合することにより、シール部53,53を形成する。このようにして、図4に示す形態の個装体10が得られる。図4に示す個装体10においては、ロール状物Rの全体が幅広部51に内包された状態となっている。
【0031】
本実施形態の個装体10によれば、パンティライナー1が、幅広部51と幅狭部52とからなる包装材5を用いて上述したように個別包装されており、シール部53の長さが、パンティライナーの長さの1/3以下とされているため、個装体のコンパクト化が図られていると共に、図8に示すように、個装体10を、親指と他の指の間に挟んで持ち、例えば、親指を、図中矢印A又はBで示す何れか一方向にずらすだけでシール部53,53の全域を剥離させることができる。本実施形態の個装体10によれば、このようにして、個装体の開封操作を片手で容易且つ迅速に行うことができ、パンティライナーを取り出したきわめて容易である。また、シール部53の長さが短いため、剥離音も軽減されている。
【0032】
本実施形態の個装体10の形成材料について説明する。
パンティライナー1を構成する液保持層2としては、上述した多層不織布2に代えて、液透過性の表面シートと液保持性の吸収体とを積層したもの等を用いることができる。表面シートとしては、各種製法による不織布、開孔フィルム、これらの積層体等を用いることができる。吸収体としては、パルプ繊維等の繊維集合体又はこれと吸水性ポリマーとを併用したもの等を用いることができる。また、吸収体として、吸収紙、乾式パルプシート、積繊したシート状パルプウエブ、吸収性ポリマーシート(不織布、紙、高吸収性ポリマー等により構成)等の吸収シートを用いることもできる。
【0033】
パンティライナー1を構成する防漏層3としては、パンティライナーや生理用ナプキン等の吸収性物品の裏面シートとして従来用いられている各種のシート材を好ましく用いることができる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等を用いることができる。また、SMS不織布等の耐水性の高いシートを用いることもできる。
【0034】
粘着材4としては、パンティライナーや生理用ナプキン等の吸収性物品の粘着部形成用に用いられている各種の粘着剤を特に制限無く用いることができ、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等が挙げられる。
【0035】
包装材5(幅広部51、幅狭部52)としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、紙、SMS不織布等の不織布、あるいはこれらの複合材料等を用いることができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
例えば、本発明の個装体は、図9に示すように、長手方向における幅広部51の前後それぞれに幅狭部52,52を有する包装材5を用いたものであっても良い。図9に展開状態を示す個装体においては、パンティライナー1における、幅狭部52,52上に位置する部分を、それぞれ幅狭部52と共に巻回し及び/又は折り畳んで2つのロール状物とし、次いで、2つのロール状物を挟み込むように幅広部51を2つ折りし、その幅広部51における、パンティライナー1の両端縁から外方に延出した該幅広部51の幅方向両端縁部51b,51bにおいて、該幅広部51の相対向した重ね合わせ部分が接合されてシール部が形成されている。各幅狭部52上に位置する部分の巻回及び/又は折り畳み方法の一例としては、図9中に示す折り線B4において、パンティライナー1を肌当接面側に幅狭部52と共に折り曲げた後、折り線B5で更に肌当接面側を内側にして折り曲げて、パンティライナー1の全体を幅広部51上に載せる方法が挙げられる。
【0037】
上述した各実施形態においては、幅広部51と幅狭部52とが一枚の連続したシートから形成されていたが、別のシートから形成した幅広部51と幅狭部52をつなげて包装材5として用いることもできる。
また、接合部と非接合部とを長手方向に交互に有するシール部における接合部は、その平面視形状が、上述した実施形態のように平行四辺形状のものに代えて、円形、楕円形、星型、線状等であっても良い。
【0038】
また、本発明に係る吸収性物品は、上述したパンティライナー(おりものシート)以外に、生理用ナプキン、失禁パッド等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態の吸収性物品の個装体を展開し、これを吸収性物品(パンティライナー)側から見た状態を示す平面図である。
【図2】図1のX−X線断面を模式的に示す縦断面図である。
【図3】本発明の個装体の製造手順を説明するための図で、図3(a)は、包装材上に吸収性物品を載置した状態を示す斜視図、図3(b)は、図3(a)に示す展開状態の吸収性物品を幅狭部と共に2つ折りした状態を示す斜視図、図3(c)は、巻回及び/又は折り畳んで吸収性物品の全体を幅広部上に載せた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態の吸収性物品の個装体を示す斜視図である。
【図5】図2におけるY−Y線で挟まれた部分(液保持層)の一部の拡大断面図である。
【図6】図4に示す個装体のシール部の詳細を示す図である。
【図7】本発明の個装体の製造手順の他の例を説明するための図で、パンティライナーを包装材と共に折り畳んだ状態を模式的に示すパンティライナー及び包装材の長手方向に沿う断面を示す模式断面図である。
【図8】図4に示す個装体を親指と他の指との間に挟んで持った状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態の吸収性物品の個装体を展開し、これを吸収性物品(パンティライナー)側から見た状態を示す平面図である。
【図10】摩擦係数の測定方法の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 パンティライナー(おりものシート)
2 液保持層
3 防漏層
4 粘着剤
5 包装材
10 個装体
51 幅広部
52 幅狭部
53 シール部
R ロール状物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品と、該吸収性物品の非肌当接面側に粘着剤を介して剥離可能に粘着され、該吸収性物品を包装する包装材とを具備する吸収性物品の個装体であって、
前記包装材は、前記吸収性物品より幅の広い幅広部と、該幅広部より幅の狭い幅狭部とからなり、
前記吸収性物品は、前記幅狭部と共に該吸収性物品の長手方向に一体的に巻回され及び/又は折り畳まれてロール状物とされており、前記幅広部は、該ロール状物を挟み込んだ状態に該吸収性物品の長手方向に折り畳まれ、且つ該吸収性物品の両端縁から外方に延出した該幅広部の幅方向両端縁部において、該幅広部の相対向する重ね合わせ部分が接合されてシール部が形成されており、
前記シール部の長手方向の長さが、前記吸収性物品の長手方向の長さの1/3以下であり、個装体を親指と他の指の間に挟んで持ち、その親指又は他の指を一方向にずらすことで該シール部の全域を剥離させ得るようになされている吸収性物品の個装体。
【請求項2】
前記幅広部は、該幅広部の略中央部を折り線として2つ折り状態に折り畳まれている請求項1記載の吸収性物品の個装体。
【請求項3】
前記シール部は、前記幅広部の前記重ね合わせ部分間が接合された接合部と該重ね合わせ部分間が接合されていない非接合部とを長手方向に交互に有している請求項1又は2記載の吸収性物品の個装体。
【請求項4】
前記幅広部は、吸収性物品とは反対側の面の摩擦係数が0.7以下である請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品の個装体。
【請求項5】
前記個装体の展開状態において、前記シール部を形成していた部分の長手方向の長さは、前記吸収性物品の長手方向の長さの1/2以下である請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品の個装体。
【請求項6】
前記吸収性物品は、液保持層及び防漏層を具備し、該液保持層は、3次元的に捲縮した潜在捲縮性繊維を含む層を1層以上具備する請求項1〜5の何れかに記載の吸収性物品の個装体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−97923(P2007−97923A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293253(P2005−293253)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】