説明

吸収性物品の個装体

【課題】使用者に向けた表示を有し、該表示によって使用者に感情的な効果を与え得る吸収性物品の個装体を提供すること。
【解決手段】本発明の個装体10は、吸収性物品1と個装シート9との積層体15をその長手方向に折り畳み、個装シート9の所定箇所を封止してなる。個装体10は、積層体15が長手方向に折り畳まれて形成された、折り畳み部16と、積層体15の長手方向一端側を含んで構成され、折り畳み部16の外面上に重ね合わされて折り畳み部16との間に開封口17を形成する、開封口形成部18とを有している。開封口形成部18の外面18aに、使用者に向けた第1の表示30が、開封前の個装体10の目視において視認可能に設けられており、折り畳み部16の外面16aにおける、開封口形成部18が重ね合わされる部分に、使用者に向けた第2の表示31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品を個装シートと共に長手方向に折り畳み、該個装シートの所定箇所を封止してなる吸収性物品の個装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)等の吸収性物品は、個装シートと共に折り畳まれ、個別個装(個装)されて市販等されている。また、吸収性物品やこれを包む個装シートに、使用者に向けた表示を設けることが知られている。このような表示は、文字や図柄等を含んで構成されているものが多く、印刷等により外部から視認可能に設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バックシートに図柄が設けられたナプキン本体と個装シートとを具備する個装生理用ナプキンにおいて、個装シートを透かして図柄を視認できるように個装シートの透明度を設定することが記載されている。特許文献1に記載の個装生理用ナプキンによれば、バックシートに設けられた図柄によって、開封前においては、それが生理用ナプキンであることを意識させず、使用後においては、吸収した経血をカムフラージュできるとされている。
【0004】
また、特許文献2には、パーソナルケア製品(吸収性物品)と、開封口として機能する自由縁を有するラップ材(個装シート)とを具備する個装体において、該ラップ材に、該自由縁の位置についての明確な指示を与える少なくとも1つの感覚的表示を設けることが記載されている。特許文献2に記載の技術によれば、このような感覚的表示を個装シートに設けることで、使用者は、開封口の位置を容易に見つけ出すことができ、開封作業をスムーズに行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−199786号公報
【特許文献2】特表2007−521117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の個装生理用ナプキンにおいては、前述した効果を奏させるために、個装シートとして透明性の高いものを用いる必要がある。しかし、生理用ナプキンには、通常、該ナプキンを下着に固定する粘着部が設けられており、これに起因して、個装シートに、該粘着部に対する剥離機能が付与される場合があるところ、一般に、剥離容易性と透明性とは二律背反の関係にあり、個装シートに実用上十分な剥離機能を付与すると、個装シートの透明性が低下する場合がある。また、個装シートは、使用時や携帯時の柔軟性や、個装体を開封するときの個装シートに起因する音等に対応するため、多層化あるいは複合化される場合があるところ、個装シートの多層化あるいは複合化は、透明性の低下を招く場合がある。このような実情の下、特許文献1に記載の個装生理用ナプキンは、実際には、個装シートの低い透明性のため、バックシートに設けられた図柄の視認性が良好とは言えず、該図柄のおおよその色彩は判別できても、該図柄の細かな輪郭等は認識され難い。また、前述したように個装シート自体に剥離機能を付与せずに、個装シートとは別体の剥離シートを該個装シートに重ねて使用する場合があるが、その場合でも、透明性の低い剥離シートの存在により、特許文献1に記載の個装生理用ナプキンにおいては、バックシートに設けられた図柄の視認性が低い状態は変わらない。また、特許文献1に記載の個装生理用ナプキンにおいては、特に、開封前の開封口及びその近傍は、個装シートが重ねられた部分を有しているため、バックシートに設けられた図柄の視認性、認識性に劣る。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術は、開封前に開封口の位置を使用者に容易に認識させる目的で、開封前の個装体の外面を構成する個装シートの外面に、印刷パターンやエンボス加工パターン等を適宜組み合わせてなる感覚的表示を個装シートに施すというものであり、特許文献2には、開封口の認識以外の目的、例えば、見る者に感情的な効果を与え、吸収性物品使用前の憂鬱な気分を軽減させる等の目的は記載されていない。
【0008】
従って本発明の課題は、使用者に向けた表示を有し、該表示によって使用者に感情的な効果を与え得る吸収性物品の個装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、吸収性物品と個装シートとの積層体をその長手方向に折り畳み、該個装シートの所定箇所を封止してなる吸収性物品の個装体であって、前記積層体が長手方向に折り畳まれて形成された、折り畳み部と、該積層体の長手方向一端側を含んで構成され、該折り畳み部の外面上に重ね合わされて該折り畳み部との間に開封口を形成する、開封口形成部とを有し、前記開封口形成部の外面に、使用者に向けた第1の表示が、開封前の前記個装体の目視において視認可能に設けられており、前記折り畳み部の外面における、前記開封口形成部が重ね合わされる部分に、使用者に向けた第2の表示が設けられている、吸収性物品の個装体を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収性物品の個装体によれば、使用者に向けた表示によって使用者に感情的な効果を与えることができ、使用者の嗜好に訴え、使用者の吸収性物品使用前の憂鬱な気分を軽減する等の効果が発現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態としての生理用ナプキンの個装体を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す個装体の一部を開封した状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す個装体における生理用ナプキンを示す概略図で、表面シート側を示す平面図である。
【図4】図4は、図1に示す個装体における生理用ナプキンを示す概略図で、裏面シート側を示す底面図である。
【図5】図5は、図1に示す個装体の構成及び製造手順を説明するための展開図である。
【図6】図6は、図5の展開図を裏面側から見た部分破断展開図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態としての生理用ナプキンの個装体の図2相当図である。
【図8】図8(a)は、図7に示す個装体の構成及び製造手順を説明するための展開図、図8(b)は、図8(a)に示す状態から積層体の一部を折り畳んだ状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の吸収性物品の個装体の第1実施形態である生理用ナプキンの個装体について、図1〜図6を参照して説明する。第1実施形態の個装体10は、図1に示すように、生理用ナプキン1を個装シート9により個別に個装してなる生理用ナプキンの個装体であり、生理用ナプキン1と個装シート9との積層体15をその長手方向に折り畳み、個装シート9の所定箇所を封止してなる。尚、生理用ナプキン1(積層体15)の長手方向とは、図中Y方向のことであり、Y方向に直交する生理用ナプキン1(積層体15)の幅方向を、図中X方向として以下説明する。個装シート9の長手方向及び幅方向は、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向と一致している。
【0013】
本実施形態における生理用ナプキン1(以下、ナプキン1ともいう)は、図3及び図4に示すように、肌当接面を構成する表面シート2、非肌当接面を構成する裏面シート3及びこれら両シート2,3間に介在された液保持性の吸収体4を具備し、実質的にY方向に縦長の形状を有している。表面シート2は、液透過性の中央シート2a及びその左右両側に一部を重ねた状態で接合された撥水性の側部シート2b,2bからなる。
【0014】
ナプキン1は、Y方向に縦長に形成された本体5と、該本体5の長手方向(Y方向)に沿う左右両側縁から幅方向(X方向)の外方に延出する一対のウイング部6,6を具備している。ウイング部6は、使用者の液排泄部に対向配置される液排泄部対向部Aの左右両側に形成されている。ウイング部6は、吸収体4のY方向の両側縁からX方向に延出した表面シート2及び裏面シート3により形成されている。
【0015】
ウイング部6は、裏面シート3側の面に、粘着剤の塗工により形成されたウイング部粘着部61を有している。ウイング部6は、ナプキン1をショーツ等の下着に固定する際に、裏面シート3側に折り曲げられ、ウイング部粘着部61を介して該下着の非肌対向面に粘着固定されるものである。下着の非肌対向面には、2層構造のクロッチ部の上層における下層側の面も含まれる。本体5は、裏面シート3側の面に、粘着剤の塗工により形成された矩形状の本体粘着部51を有している。
【0016】
第1実施形態の個装体10は、例えば、下記のようにして得られる
先ず、図5に示すように、ナプキン1を、該ナプキン1よりも幅広でY方向に長い長方形形状の個装シート9上に載置して、ナプキン1と個装シート9との積層体15を得る。
ナプキン1を、個装シート9上に載置する前には、予め、図6に示すように、ナプキン1の本体粘着部51を、第1剥離シート7によって被覆しておくと共に、第1剥離シート7及び/又は個装シート9の相対向面に接着剤71を塗工しておく。それにより、ナプキン1を個装シート9上に載置し、必要に応じて加圧等をすることにより、第1剥離シート7が接着剤71を介して個装シート9に固定される。図6に、第1剥離シート7が、接着剤71を介して個装シート9に固定された固定部72〜74を示した。尚、第1剥離シート7で本体粘着部51を被覆した後に、第1剥離シート7を個装シート9に固定するのに代えて、個装シート9に固定した後の第1剥離シート7で、本体粘着部51を被覆するようにしても良い。
【0017】
また、ウイング部6,6は、図5に示すように、本体5の長手方向(Y方向)に沿う両側縁に沿って本体5の表面シート2側(肌当接面側)に折り曲げると共に、その状態のウイング部のウイング部粘着部61,61を一枚の第2剥離シート8によって被覆しておく。第2剥離シート8は、図5に示すように、ナプキン1の長手方向(Y方向)において、一部が少なくともウイング部粘着部61よりも長手方向(Y方向)の前方に延出するように配置されていることが好ましく、図5に示すように、第2剥離シート8の一部がウイング部6〔ウイング部6の前端6a(図3参照)〕よりも長手方向(Y方向)の前方に延出するように配置されていることが好ましい。
【0018】
そして、ナプキン1を個装シート9上に載置した状態において、ナプキン1の長手方向(Y方向)の後方側の領域Rを、Br線を折り軸として、個装シート9と共に長手方向に表面シート2側に折り曲げる。即ち、ナプキン1の長手方向(Y方向)の後端1bから所定長さの図5中Rで示す領域を、表面シート2側が谷側となるように前方に向かって折り曲げ、当該領域Rを、当該領域Rよりも長手方向(Y方向)の前方に位置する図5中Mで示す領域上に重ねる。これが、積層体15を3つ折りする際の第1回目の折り曲げである。
【0019】
次いで、ナプキン1の長手方向(Y方向)の前方側の領域Fを、Bf線を折り軸として、個装シート9と共に長手方向に表面シート2側に折り曲げる。即ち、ナプキン1の長手方向(Y方向)の前端1aから所定長さの図5中Fで示す領域(ナプキン1の前方領域)を、表面シート2側が谷側となるように後方に向かって折り曲げ、図5中Mで示す領域に重ねた図5中Rで示す領域上に重ねる。これが、積層体15を3つ折りする際の第2回目の折り曲げである。
この第2回目の折り曲げの前には、図5に示すように、第2剥離シート8の外面(ナプキン1の対向面とは反対側の面)のナプキン前端1a寄りの部分に接着剤81を塗工しておくことが好ましい。接着剤81の塗工により、ナプキン1の前方領域Fを折り曲げ、必要に応じて加圧等をすることにより、第2剥離シート8の折り返された部分82が、図2に示すように、接着剤81を介して、後述する折り畳み部16の外面16aを形成する、個装シート9の外面に固定される。このように第1回目及び第2回目の折り曲げを行うことにより、ナプキン1は、個装シート9と共に長手方向に3つ折りされた状態となる。即ち、ナプキン1と個装シート9との積層体15は、長手方向に3つ折りされた状態となる。尚、吸収性物品(生理用ナプキン)の前方側の領域(前方領域)Fは、着用時に着用者の腹に近い側であり、吸収性物品の後方側の領域Rは、着用時に着用者の背中に近い側である。
【0020】
そして、その折り畳まれた状態のナプキン1の両側縁から幅方向(X方向)の外方に延出する個装シート9の両側部をヒートエンボス加工等の公知の接合方法により接合して側方封止部11を形成すると共に、個装シート9の開封開始端9aを公知のタブテープ12で所定箇所に止着することにより、図1に示すナプキン1の個装体10が得られる。開封開始端9aとその下方に位置する個装シート9との間は、側方封止部11を除き、接合されておらず隙間が形成されており、その隙間が開封口17となっている。
【0021】
第1実施形態の個装体10は、図1及び図2に示すように、積層体15の一部〔積層体15の長手方向一端側を除く部分(図5中M及びRで示す部分)〕が長手方向に折り畳まれて形成された、折り畳み部16と、積層体15の長手方向一端側(図5中Fで示す部分)を含んで構成され、該折り畳み部16の外面16a上に重ね合わされて該折り畳み部16との間に開封口17を形成する、開封口形成部18とを有している。開封口形成部18は、折り軸Bfで折り畳み部16に連接されており、折り軸Bfとは反対側に位置する、開封口形成部18のナプキン長手方向Yの一端は、個装シート9の開封開始端9aとなっている。図2に示すように、開封口形成部18の内面18b側には、ナプキン1の前方領域F(図5参照)が配されている。前方領域Fは、図1に示す如き個装体10の開封前において、第2の表示31を覆うように、開封口形成部18の内面18b側に配されている。
【0022】
図1に示すように、開封口形成部18の外面18aには、文字及び/又は図柄を含んで構成される、使用者に向けた第1の表示30が、開封前の個装体10の目視において視認可能に設けられている。第1実施形態における第1の表示30は、複数(4個)の互いに同じ図柄(ハート柄)の表示30a、30b、30c、30dを含んで構成されている。複数の表示30a〜30dは、外面18aを形成する個装シート9の外面に、積層体15(ナプキン1)の幅方向Xに沿って〔開封開始端9a(開封口17)に沿って〕所定間隔を置いて配置されており、個々に独立した表示となっている。
【0023】
また、図2に示すように、折り畳み部16の外面16aにおける、開封口形成部18が重ね合わされる部分には、文字及び/又は図柄を含んで構成される、使用者に向けた第2の表示31が設けられている。第1実施形態における第2の表示31は、第1の表示30を構成する複数の図柄(表示30a〜30d)と同数(4個)の表示31a、31b、31c、31dを含んで構成されている。複数の表示31a〜31dは、使用者に向けたメッセージであり、該複数のメッセージは互いに異なっている。該複数のメッセージを、図2中、A,C,E,Zで示した。メッセージは、使用者に向けた情報の一種であり、文字及び/又は図柄を1つ以上含んで構成されている。複数の表示31a〜31dは、外面16aを形成する個装シート9の外面に、積層体15(ナプキン1)の幅方向Xに沿って〔開封開始端9a(開封口17)に沿って〕所定間隔を置いて配置されており、個々に独立した表示となっている。
【0024】
第1の表示30及び第2の表示31は、何れも個装シート9の外面に、印刷により、該外面の地色(例えば白色)以外の色彩の印刷インクが付与されて形成されており、印刷インクが付着してなるインク付着部を含んで構成されている。また、前述したように、第1の表示30は図柄(ハート柄)を、第2の表示31は文字(メッセージ)を、それぞれ含んで構成されており、第1の表示30と第2の表示31とは、外見上互いに異なっている。
【0025】
第2の表示31は、図1に示す如き個装体10の開封前においては、その全体が開封口形成部18で被覆(遮蔽)され隠されている。そのため、第2の表示31は、個装体10の外面に露出している第1の表示30に比して、個装体10の開封前においては目視で視認し難く、実質的に隠蔽されている。但し、図2に示す如き個装体10の開封後においては、開封口形成部18による被覆状態が解除されているため、第2の表示31は、第1の表示30と同様に、目視で視認可能である。開封口形成部18は、不織布やパルプ積繊体等を含んで構成されているナプキン1(ナプキン1の前方領域F)と樹脂フィルムや不織布等からなる個装シート9との積層体15の一部であり、通常有色(白色)で不透明であるため、該開封口形成部18によって被覆される表示を隠蔽し得る。特に、開封口形成部18において、ナプキン1の配置部(ナプキン1と個装シート9との積層部分)は、ナプキン1が配されておらず個装シート9のみからなる部分に比して透明性が低く隠蔽性が高いため、折り畳み部16の外面16aにおける、該配置部が重ね合わされる部分に第2の表示31が設けられていると、開封口形成部18による第2の表示31の隠蔽性が更に高まる。
【0026】
また、図1に示す如き個装体10の開封前において、第1の表示30と第2の表示31とは重なっている。即ち、第2の表示31を構成する複数の表示(メッセージ)31a〜31dは、個装体10の開封前において、第1の表示30を構成する複数の表示(図柄)表示30a〜30dと重なる位置に配置されている。更に説明すると、第1実施形態においては、折り畳み部16の外面16aにおける、第1の表示30を構成する複数の表示30a〜30dそれぞれに対応する位置に、第2の表示31を構成する複数の表示31a〜31dが設けられており、複数の表示30a〜30dと複数の表示31a〜31dとが1対1で重なって設けられている。第2の表示31(複数の表示31a〜31d)は、第1の表示30(複数の表示30a〜30d)の略真下に位置している。ここで、「1対1で重なって設けられている」とは、個装体10の開封前において、第1の表示30を構成する複数の表示30a〜30dそれぞれが、第2の表示31を構成する複数の表示31a〜31dのうちの1つとのみ重なり、且つ複数の表示31a〜31dのうちの1つに複数の表示30a〜30dのうちの2つ以上が重なることを除外する意味である。このように、個装体10の開封前において両表示30,31が重なっている、特に、複数の表示どうしが1対1で重なって設けられていることにより、1)開封前における第2の表示31の隠蔽性が更に高まる、及び2)開封前に重なっていた表示どうしの間に何らかの関連性があることを、個装体10を開封した使用者に認識させ易い、等の効果が奏される。
【0027】
前記2)の効果について更に説明すると、個装体10を開封する際には、ナプキン1の使用者は、先ず、第1の表示30を構成する複数の表示30a〜30dを見た後に、個装体10を開封し、開封口形成部18で被覆されていた第2の表示31を構成する表示31a〜31dを見ることとなる。ここで、例えば、ハート柄の表示30aと、開封前に表示30aと重なっていたメッセージ(図2中のアルファベットの「A」)である表示31aとは、外見こそ互いに異なるものの、ナプキン1の使用者が開封口形成部18をめくるだけで視線を変えずに両表示30a,31aを見ることができるため、使用者によって容易且つ自然に関連付けられる。このような使用者による関連性の認識の容易性は、他の表示30b〜30dと31b〜31dとの関係にも当てはまる。また、開封前に互いに重なっている表示どうしが使用者によって容易に関連付けられるようになされていることに付随して、開封前に互いに重なっていない表示どうし(例えば表示30aと表示31b)は、使用者によって関連付けられ難く、互いに無関係と認識され易い。従って、複数の表示30a〜30dと複数の表示31a〜31dとが1対1で重なって設けられていることにより、第1の表示30における個々の表示30a〜30dは、複数の表示の中から使用者が選択可能な選択肢として機能し、第2の表示31における個々の表示31a〜31dは、該選択肢に対応する選択結果として機能し得る。第1の表示30と第2の表示31とがこのような、選択肢とその選択結果という関係にあると、個装体10の所定箇所に何らかの情報が単に表示されているだけの場合に比して、個装体10を開封する楽しみがより大きく且つ確実に得られるようになり、使用者のナプキン1使用前の憂鬱な気分を軽減することが可能となる。
【0028】
前記2)の効果を利用し、「個装体を開封する楽しみ」の如き、感情的な効果を使用者に一層確実に与えるようにするためには、開封口形成部18による第2の表示31の隠蔽性が高く、個装体10の開封前において第2の表示31が目視で視認し難いことが重要である。仮に、第2の表示31が個装体10の開封前から明確に視認できてしまうと、第1の表示30による前述した選択肢としての機能が十分に活用されず、ナプキン1の使用者が、開封前に複数の表示30a〜30dの一部を選択した後、開封してその選択結果(表示31a〜31dの一部)を見る楽しみが低減するおそれがある。開封口形成部18による第2の表示31の隠蔽性を高める方法としては、前述した、a)折り畳み部16の外面16aにおける、ナプキン1(ナプキン1の前方領域F)の配置部が重ね合わされる部分に第2の表示31を設ける方法(即ち、開封口形成部18の内面18b側に、ナプキン1の前方領域Fを、第2の表示31を覆うように配する方法)の他、b)個装シート9として隠蔽性の高いシートを用いる、c)個装体10の開封前に互いに重なる表示(例えば表示30aと表示31a)を、それぞれ、同一の色彩あるいは同系統(同色相)の色彩で表す、d)第1の表示30を、これと重なる第2の表示31よりも大きくする、等の方法が挙げられる。
【0029】
第1実施形態の個装体10においては、図2に示すように、ウイング部粘着部61を被覆する第2剥離シート8の一部である、折り返された部分82が、接着剤81を介して、第2の表示31が設けられている折り畳み部16の外面16aを形成する、個装シート9の外面に固定されているため、第2剥離シート8を個装シート9の内面に固定した場合とは異なり、個装シート9をナプキン1の後端1bから延出させる必要がない。そのため、個装シート9のナプキン後端1bから延出する部分が前方折り軸Bf又はその近傍に達して折り曲げられること、あるいは個装シート9の斯かる延出部分の存在による積層体15の剛性の向上に起因する、個装シート9のシワやヨレを防止することができ、これにより、折り畳み部16の外面16aに設けられた第2の表示31が視認され易くなされている。
【0030】
また、第2剥離シート8は、第1剥離シート7(図6参照)よりも幅方向長さが長くされることがあるが、この第2剥離シートを第2剥離シートより幅方向長さの長い個装シート9の外面に固定することで、製造工程で固定が安定し、容易かつ安定したナプキン1の取出しが行える個装体10とすることができる。尚、第2剥離シート8の一部を個装シート9に固定するのは、ナプキン1を取り出す際に第2剥離シート8を床に落としてしまうことを防止したり、第2剥離シート8を個装シート9とは別に処理する煩わしさをなくすためである。
【0031】
図2に示すように、第2剥離シート8の一部(折り返された部分82)を折り畳み部16の外面16aに固定した場合、第2の表示31(表示31a〜31d)は、該一部と重ならないように設けられることが、表示の視認性及び第2剥離シート8と個装シート9との接合安定性の点から好ましい。具体的には、第2の表示31は、折り返された部分82のナプキン幅方向Xに沿う端部82aから2mm以上離間した位置に設けられることが好ましい。また、折り返された部分82のナプキン長手方向Yの長さL8(図2参照)は、4〜15mmが好ましい。尚、第2剥離シート8(折り返された部分82)が透明性の高い材料で形成されている場合には、第2の表示31は、その透明性の高い部分82と重なっていても良く、その場合、該部分82を介して第2の表示31を視認することができる。
【0032】
第1の表示30及び第2の表示31は、何れも、主として使用者に向けた表示で、使用者に感情的な効果を与えることを主たる目的としたものであるが、個装体10の製造においても有利に作用する。即ち、前述したように、表示30,31は、何れも個装シート9に施されており、また、個装体10の製造方法は、ナプキン1を個装シート9上に載置する工程を有しているところ、図5及び図6に示すように、個装シート9の一面の長手方向Yの一端側(ナプキン1の前端1a及びその近傍に対応する部分並びにその近傍)に第1の表示30が幅方向Xに沿って設けられ、他端側(ナプキン1の後端1b及びその近傍に対応する部分並びにその近傍)に第2の表示31が幅方向Xに沿って設けられていると、これらの表示30,31を目印として、ナプキン1を個装シート9上の所定位置に精度良く載置しやすく、仕上がり精度の高い吸収性物品(生理用ナプキン)の個装体を安定して連続生産することが可能となる。尚、図5及び図6は、第1及び第2の表示の位置を明確に示すために、それらを示す符号30及び31のみを記載している。
【0033】
このように、使用者に向けた表示を製造上の目印として用いる観点から、第1の表示30における個々の表示30a〜30dは、それぞれ、図柄の大きさが等しい、上面又は下面側の基点位置が等しい〔個々の表示の長手方向Yの少なくとも一端が揃っている(即ち、個々の表示の長手方向Yの少なくとも一端が幅方向Xに延びる1本の仮想直線上にある)〕等、個装体の製造に用いられる位置センサーの認識の基準となることが好ましい。第2の表示31における個々の表示31a〜31dについても同様である。また、図示していないが、第2の表示31は、製造上の位置センサーの感知を向上する観点から、幅方向Xに延びる線形状(破線や実線の直線及び曲線)の図柄を含んで構成されていても良い。例えば、図2に示す如き文字(メッセージ)の近傍で且つ該文字の上方及び/又は下方に、該文字に沿って幅方向Xに延びる線形状の図柄を追加して設けることも好ましい。ナプキン1と個装シート9との積層体15の折り位置(折り軸)近傍に、文字や線形状の図柄等を含んで構成される表示30,31が幅方向Xに印刷されていることにより、個装体10の製造工程で、積層体15を折り曲げる際の折り位置を判断する基線として、表示30,31を目印に、表示30,31を構成する図柄等の印刷部位の光透過変化などを使用する位置センサーにて、表示30,31近傍での折り位置を読み取ることができ、表示30,31を、折り位置を精度良く制御することにも利用することができる。
【0034】
第1実施形態の個装体10について更に説明すると、個装体10を構成するナプキン1においては、ウイング部6は、ナプキン1の長手方向Yにおいて前側に偏倚させて形成されている。即ち、図3に示すように、ナプキン1の前端1aからウイング部6の前端6aまでの距離L1と、ナプキン1の後端1bからウイング部6の後端6bまでの距離L2とを比較したときに、距離L1<距離L2となっている。また、ナプキン1においては、ナプキン1の前端1aからウイング部6のナプキン長手方向Yの中央位置6cまでの距離L3と、ナプキン1の後端1bから中央位置6cまでの距離L4とを比較したときに、距離L3<距離L4となっている。
【0035】
第1実施形態においては、このように、ウイング部6がナプキン1の長手方向Yにおいて前側に偏倚させて形成されているため、ナプキン1の前方領域FのY方向の長さを、図5中Mで示す領域、図5中Rで示す領域のY方向の長さよりも短く形成できる。そのため、開封開始端9aの位置を、個装体10のナプキン長手方向Yにおける中央部付近から端部までの広い範囲に自由に設定でき、これにより、開封開始端9aからの開封動作がスムーズにおこなえるように、あるいはタブテープ12が個装体10に沿って湾曲して持ち難くならないように、開封開始端9aの位置を設定できる。
【0036】
第1実施形態の個装体10においては、ナプキン1又は個装シート9の長手方向Yと同方向の長さが短いコンパクトな個装体としながら、開封開始端9aを個装体10のナプキン1又は個装シート9の長手方向(Y方向)中央域とする観点から、ナプキン1の後方側の領域Rを折り曲げる後方折り軸Brを、図5に示すように、ナプキン1の長手方向Yにおけるウイング部6より後方に位置させ、ナプキン1の前方側の領域Fを折り曲げる前方折り軸Bfを、ナプキン1の長手方向Yにおけるウイング部6の中央位置6cより前方に位置させてある。
後方折り軸Brが、図5に示すように、ウイング部6の後端6bより後方にあると、個装体10の開封開始端9aを制御できるだけでなく、ウイング部6における第2剥離シート8で覆われていない部分が、表面シート2側に折られた状態から更に後方折りされることによって起こり易くなる該部分の折皺発生を抑制できる。これにより、ウイング部6の装着性の低下や第2剥離シート8の製造時の剥がれ等を防止できる。前方折り軸Bfが、ウイング部6の中央位置6cより前方にあると、個装体10の開封性が低下し難く、ウイング部6におけるY方向中央域すなわち排泄領域に、X方向に亘る連続する折線が形成されることはなく、横漏れを誘発し難くなる。
【0037】
前方折り軸Bfは、ウイング部6のウイング部粘着部61よりも前方において、ウイング部6の前端6aと重なっていることが好ましい。ウイング部6に折りが形成されていると、粘着部61を介してウイング部6と一体的となっている第2剥離シート8によって、ナプキン1の表面(表面シート2)の折り皺が形成され難く、個装形状も安定化されやすい。尚、前方折り軸Bfとウイング部粘着部61との間の距離L7(図5参照)は、10〜30mm、特に15〜25mm程度であることが好ましい。
【0038】
第1実施形態における個装シート9は、図5及び図6に示すように、ナプキン1の長手方向(Y方向)において、ナプキン1の前端1aより外方に延出している一方、該ナプキン1の後端1b側においては、該後端1bの位置又はそれよりナプキン1の前方側に後端9bを有している。そのため、前方折り軸Bfにおける折り曲げの際に、個装シート9が折れ曲がったり、個装シート9にシワやヨレが生じることが防止され、個装材料が部分的に多く重なることによる側方封止部11のシール性が低下したり、第2剥離シート8と個装シート9との固定が不充分となったりすることが防止される。尚、図5及び図6に示すように、個装シート9が、ナプキン1の後端1bの位置に後端9bを有する態様には、個装シート9の長手方向後方端部9bがBr軸で折り曲げた際にBr軸を越えない場合において、ナプキン1の後端1bから延出する長さL6が、5mm以下の場合も含まれるが、個装シート9がナプキン1の後端1bから延出していないことが好ましい。
【0039】
また、第1実施形態の個装体10においては、図5に示すように、ウイング部粘着部61の全体が後方折り軸Brと前方折り軸Bfとの間に位置している。そのため、第2剥離シート8が後方折り軸Brの折加工による影響を受けず、前方折り軸Bfの折加工では第2剥離シート8によってウイング部6の前方側を抑えながら前方折り軸Bfが形成されるため、第2剥離シート8がウイング部粘着部61から剥がれにくく、折りが整ったナプキン1を提供できる。
【0040】
また、第1実施形態の個別個装10においては、図6に示すように、第1剥離シート7と個装シート9とを固定した固定部72〜74が、ナプキン1の長手方向(Y方向)に離間させて複数形成されている。固定部72〜74は、図6に示すように、後方折り軸Brと前方折り軸Bfと重ならずに配されていることが、後方折り軸Brと前方折り軸Bfを形成しやすい点から好ましい。尚、第2剥離シート8と個装シート9との固定は、個装シート9の加工時の乱れによって、固定強度が低くされる場合があるが、個装シート9と第1剥離シート7との固定部分では個装シート9の加工時の乱れがおこらないため、安定した固定強度が得られる。
【0041】
また、第1実施形態においては、固定部72〜74は、図6に示すように、前方折り軸Bf及び後方折り軸Brによって画成される領域F,M及びR(図5参照)にそれぞれ形成されている。このように固定部72〜74が配されていることにより、ナプキン1、個装シート9及び第1剥離シート7の3つ折り形状が安定化する。
【0042】
また、図6に示すように、ナプキン1の長手方向(Y方向)において、最も前端1a側に位置する固定部72は、本体粘着部51より前方側に形成されている。そのため、折り形成時のズレと開封時の操作性が向上する。
【0043】
また、第2剥離シート8における、前方折り軸Bfによって折り返された部分82の長さL8(図2及び図5参照)は、ナプキン1の長手方向(Y方向)と同方向における第2剥離シート8の接着剤81の後方側の位置からウイング部粘着部61の前方側の端部までの長さL9(図5参照)の30%以上、特に40〜60%であることが、製造時に、第2剥離シート8がウイング部粘着部61から剥がれることや第2剥離シート8の折りの安定の点から好ましく、個装シート9の後端9bが、ナプキン1の後端1bの位置又はそれより前方に位置している場合であっても、第2剥離シート8の折りが安定することによって個装シート9の外面との固定を安定して行うことができる。
【0044】
第1実施形態の個装体10の各部の形成材料としては、生理用ナプキン等の吸収性物品の個装体に、従来用いられているものを特に制限なく用いることができる。
個装シート9としては、樹脂フィルムや不織布等を用いることができ、適宜選択して用いることができるが、滑らかさや、シート強度、耐液性(ホットメルトの染みだし抵抗性)の点からは、スパンボンド不織布(S)とメルトブロー不織布(M)との複合不織布(SM,SMS等)が好ましく、柔軟性の観点からは、バインダー繊維によるエアースルー不織布が好ましい。個装シート9に直接鮮明な印刷(表示31,31)を施す観点からは、フィルム材料又はフィルムと不織布のラミネート構造も好ましく用いられる。第2の表示31の隠蔽性を高める観点からは、フィルム材料又はフィルムと不織布のラミネート構造等が好ましく用いられる。また、第1の表示30と第2の表示31とが重なっており、第1の表示30で第2の表示31の隠蔽性を確保できる場合に限り、個装体10に適度な透過性を付与することで、重なっていた表示どうしの間の関連性を使用者により認識させやすい。この個装体に適度な透過性を付与する観点からは、個装シート9としては、フィルムと不織布とのラミネート構造が好ましく用いられる。
【0045】
第1及び第2剥離シート7,8としては、それぞれ、樹脂フィルムや不織布(特にスパンボンド系の不織布)、紙からなる基材シートに剥離処理を施したもの等を用いることができる。剥離処理としては、例えばシリコン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液等を、塗工するかスプレー塗布し表面に薄い被膜を形成する方法、さらに紫外線照射や熱処理により剥離被膜を安定化させる方法等を挙げることができる。第1剥離シート7と第2剥離シート8とで基材シートの種類や剥離処理が同じであっても異なっていても良い。
第1及び第2剥離シート7,8は、ウイング部粘着部61又は本体粘着部51に当接される面が剥離処理面である一方、それとは反対側の面は、個装材との固定を安定させる観点から剥離処理されていない非剥離処理面であることが好ましい。
【0046】
ウイング部粘着部61及び本体粘着部51形成用の粘着剤としては、それぞれ、生理用ナプキン等の吸収性物品の粘着部形成用に従来用いられている各種の粘着剤を特に制限なく用いることができ、ウイング部粘着部61と本体粘着部51とで、粘着剤の種類が同一であっても異なっていても良い。
【0047】
第1実施形態の個装体10は、通常の生理用ナプキンの個装体と同様に、開封しナプキン1を取り出して使用することができる。第1実施形態の個装体10によれば、使用者に向けた表示30,31によって使用者に感情的な効果を与えることができ、使用者の嗜好に訴え、ナプキン1の使用前の使用者の憂鬱な気分を軽減する等の効果が発現される。特に、第1実施形態においては、第1の表示30と第2の表示31とが、選択肢とその選択結果という関係にあることにより、個装体10を開封する楽しみが得られやすい。また、個装体10の製造時において、個装シート9の外面に印刷された表示30,31が、個装シート9上にナプキン1を配置する際の目印として機能するため、ナプキン1の位置ズレを起こし難く、第1の表示30と第2の表示31の位置関係を精密に制御することができる。例えば、第1の表示30を不要に大きくしなくとも第2の表示31と重なった状態で安定的に生産することができる等の利点がある。その結果、得られる個装体10は、仕上がり精度が高く高品質である。
【0048】
以下、本発明の他の実施形態について図7及び図8を参照して説明する。後述する他の実施形態については、前述した第1実施形態の個装体10と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態の個装体10についての説明が適宜適用される。
【0049】
図7及び図8には、本発明の吸収性物品の個装体の第2実施形態が示されている。前述した第1実施形態の個装体10は、ナプキン1と個装シート9との積層体が長手方向Yに3つ折りされて構成されていたが、第2実施形態の個装体10Aは、積層体15が長手方向Yに4つ折りされて構成されている。個装体10Aは、図8に示すように、ナプキン1Aの前端1aから後端1bに向かって、前方折り軸Bf、中間折り軸Bm、後方折り軸Brを長手方向Yに有している。
【0050】
第2実施形態の個装体10Aは、例えば、下記のようにして得られる。図8(a)に示すように、ナプキン1Aを個装シート9上に載置した状態において、ナプキン1の長手方向(Y方向)の後方側の領域Rのうちの最後方部分を、Br線を折り軸として、個装シート9と共に長手方向に表面シート2側に折り曲げる。即ち、前記最後方部分を、表面シート2側が谷側となるように前方に向かって折り曲げ、該最後方部分を、領域Rにおける中間折り軸Bmと後方折り軸Brとの間に重ねる。これにより、領域Rは2つ折りされる。これが、積層体15を4つ折りする際の第1回目の折り曲げである。
【0051】
次いで、ナプキン1Aの後方側の領域Rを、Bm線を折り軸として、個装シート9と共に長手方向に表面シート2側に折り曲げる。即ち、前記のように2つ折りされた領域Rを、表面シート2側が谷側となるように前方に向かって折り曲げ、図8(a)中Mで示す領域上に重ねる。これが、積層体15を4つ折りする際の第2回目の折り曲げである。
【0052】
次いで、ナプキン1Aの長手方向(Y方向)の前方側の領域Fを、Bf線を折り軸として、個装シート9と共に長手方向に表面シート2側に折り曲げる。即ち、ナプキン1の前方領域Fを、表面シート2側が谷側となるように後方に向かって折り曲げ、図5中Mで示す領域に重ねた図5中Rで示す領域上に重ねる。これが、積層体15を4つ折りする際の第3回目の折り曲げである。そして、第1実施形態と同様に、個装シート9の所定箇所を封止し、タブテープ12を止着することにより、図7に示す個装体10Aが得られる。尚、第2実施形態における第2剥離シート8は、図8に示すように、前方折り軸Bfと中間折り軸Bmとの間に収まっており、従って、第2実施形態における第2剥離シート8は、第1実施形態のように折り軸Bfで折り返されず、第2実施形態の個装体10Aは、前述した、第2剥離シート8が折り返された部分82を有していない。また、個装シート9には、ナプキン1Aとの接触面側に粘着部(図示せず)との剥離を容易にする剥離処理(シリコン処理)が施されているが、該個装シート9の外面(該接触面側とは反対側の面)は、ウイング部6を覆う剥離シート8の粘着部61に対して、容易に接合可能となっている。
【0053】
第2実施形態の個装体10Aによっても第1実施形態と同様の効果が奏される。特に、第2実施形態における折り畳み部16は、積層体15が3つ折りされて構成されているため、比較的高い剛性を有し、該折り畳み部16に設けられた第2の表示31が、折られたり歪んだりし難く、使用者に明瞭に認識され易い。
【0054】
本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、前記実施形態では、第1の表示30及び第2の表示31は、それぞれ、複数の表示を含んで構成されていたが、単一の表示から構成されていても良い。その場合、例えば、単一の第1の表示30を、なぞなぞの如き「問題」とし、単一の第2の表示31を、なぞなぞの「答え」とすることができる。
【0055】
また、第1の表示30及び第2の表示31は、それぞれ、図1、図2及び図7に示す如き形態に制限されず、文字、図柄、色彩等を適宜組み合わせて構成することができる。色彩は、例えば風水における色のように、それ単独で使用者に向けた情報となり得るが、表示30,31は、文字及び/又は図形を主体とし、それに付加的に色彩が用いられているものが好ましい。例えば、選択肢としての第1の表示30の選択結果として機能する、第2の表示31としては、複数個の文字情報、複数個の図形(イラスト)、複数個の色彩違いの図形等とすることができ、文字情報としては、例えば、憂鬱になりがちな生理期間中もぐっすり寝られるアドバイスや、もっとハッピーな気分になるアドバイスや、占い等の情報が挙げられる。
【0056】
さらには、第2の表示31は、折り畳み部16の外面16aにおいて、開封口形成部18が重ね合わされる部分のみに設ける必要はなく、開封口形成部18が重ね合わされない部分に渡って設けることもできる。その場合、個装体10の開封前には、第1の表示30と、第2の表示31における開封口形成部18が重ね合わされない部分とが視認され、開封後には、第2の表示31は、開封口形成部18が重ね合わされる部分と重ね合わされない部分との両方が視認されることとなる。これにより、視認される図柄の一部が変化する効果を付与することができる。
【0057】
また、表面シートは、その全体が一枚の液透過性のシートからなるものを用いることもできる。また、ウイング部は、本体の構成材を延出させて形成されたものに代えて、別材を固定して形成することもできる。
また、第1及び第2剥離シートの形状は、長方形、正方形、台形、六角形、楕円形等、それぞれの機能を達成し得る限り任意の形状とすることができる。
【0058】
また、第1剥離シート7と個装シート9との固定や、第2剥離シート8と個装シート9との固定は、接着剤71,81以外の接合手段によって行っても良く、例えば、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等により接合しても良い。
また、第1剥離シート7が個装シート9に固定された固定部は、図5及び図8中のF及びRに示す領域のみに形成したり、図5及び図8中のF、M及びRに示す領域に連続的に形成しても良い。
また、本体粘着部51は、ナプキン1の前後及び/又は左右に分離して複数設けても良い。また、ウイング部粘着部61も、各ウイング部に複数設けても良い。
【0059】
また、第1実施形態の個装体10の製造において、第2回目の折り曲げの際に、ナプキン1等と共に第2剥離シート8が折れ曲がり易くするために、吸収性物品との合流前に第2剥離シート8に折り曲げ誘導手段を形成しても良い。第2回目の折り曲げの際に、第2剥離シート8は、ナプキン1(吸収性物品)と共に折り軸Bfに沿って折り曲げられる。折り曲げ誘導手段は、第2回目の折り曲げの際に、第2剥離シート8の端部を容易に折れ曲がるようにするために、合流前の加工処理により形成されるもので、第2剥離シート8に幅方向Xに形成したスリット加工、幅方向Xの折り曲げ予定位置の端部にノッチを形成、折り曲げ部分の幅方向Xの側部の切断・除去、折り曲げ予定位置への圧縮加工等を施して、曲げ剛性を低下させることで形成できる。
【0060】
本発明における吸収性物品は、生理用ナプキンの他、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の他の吸収性物品であっても良い。
【符号の説明】
【0061】
10,10A 生理用ナプキンの個装体(吸収性物品の個装体)
1,1A 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 本体
6 ウイング部
8 第2剥離シート
9 個装シート
9a 開封開始端
15 生理用ナプキン(吸収性物品)と個装シートとの積層体
16 折り畳み部
16a 折り畳み部の外面
17 開封口
18 開封口形成部
18a 開封口形成部の外面
30,30a,30b,30c,30d 第1の表示
31,31a,31b,31c,31d 第2の表示
82 第2剥離シートの折り返される(た)部分
Bf 前方折り軸
Br 後方折り軸
F 生理用ナプキン(吸収性物品)の前方領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品と個装シートとの積層体をその長手方向に折り畳み、該個装シートの所定箇所を封止してなる吸収性物品の個装体であって、
前記積層体が長手方向に折り畳まれて形成された、折り畳み部と、該積層体の長手方向一端側を含んで構成され、該折り畳み部の外面上に重ね合わされて該折り畳み部との間に開封口を形成する、開封口形成部とを有し、
前記開封口形成部の外面に、使用者に向けた第1の表示が、開封前の前記個装体の目視において視認可能に設けられており、
前記折り畳み部の外面における、前記開封口形成部が重ね合わされる部分に、使用者に向けた第2の表示が設けられている、吸収性物品の個装体。
【請求項2】
前記個装体の開封前において、前記第1の表示と前記第2の表示とが重なっている請求項1記載の吸収性物品の個装体。
【請求項3】
前記第1の表示及び前記第2の表示は、それぞれ、前記個装シートに施された印刷である請求項1又は2記載の吸収性物品の個装体。
【請求項4】
前記開封口形成部の内面側に、前記吸収性物品の長手方向の前方領域が前記第2の表示を覆うように配されている請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品の個装体。
【請求項5】
前記第1の表示は、複数の図柄を含んで構成されており、該複数の図柄は、互いに同じで且つ前記積層体の幅方向に所定間隔を置いて配置されており、
前記第2の表示は、前記複数の図柄と同数のメッセージを含んで構成されており、該複数のメッセージは、互いに異なり且つ前記個装体の開封前において前記複数の図柄と重なる位置に配置されている請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品の個装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−136099(P2011−136099A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299023(P2009−299023)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】