説明

吸収性物品の製造方法及び吸収性物品

【課題】 生産速度を上げても、製品品質を低下させることなく、製造コストを低減できる吸収性物品の製造方法、及び、吸収性物品の製造方法によって製造された吸収性物品を提供する。
【解決手段】 本発明に係る吸収性物品の製造方法は、バックシート120Aと不織布シート120Bとが貼り付けられた裏面シート20と、裏面シート20に貼り付けられる吸収体30とを少なくとも備える吸収性物品1を製造する。吸収性物品の製造方法は、型押ロール機構520によって、バックシート120Aを所定の機械方向MDに沿って搬送しながらバックシート120Aを延伸するシート延伸工程S20と、バックシート120Aを不織布シート120Bに貼り付け、複合シート120を形成するシート貼合工程S40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシート状資材が貼り付けられた複合シートと、複合シートに貼り付けられる吸収体とを少なくとも備える吸収性物品の製造方法、及び、吸収性物品の製造方法によって製造された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつなどの吸収性物品は、着用者の肌に接する表面シートと、着用者から最も離れる裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に設けられる吸収体とを備える。これらの表面シート或いは裏面シートには、材料の異なる複数のシートから構成されるものがある。例えば、裏面シートは、液体を透過しない液不透過性のシート状のバックフィルムと、バックフィルムよりも外側に設けられるシート状のバック不織布とが重ねられている。
【0003】
このような材料の異なる2つのシートを重ねて複合シートを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された技術では、材料の異なるシート状資材が重ねられた状態でギア延伸法によって延伸される。
【0004】
汎用の液不透過性のシート状資材は硬いが、複合シートに延伸加工を施すことによって、柔らかくすることができる。また、複合シートに延伸加工を施すと幅方向の寸法を拡幅できるため、製造ラインに投入する資材量を減らすことができ、製造コストの低減が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−316359号公報(第4頁、第1図など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した複合シートの製造方法では、生産速度の高速化に十分に対応できないことが懸念される。複合シートを構成するシート状資材の各々は、いわゆる伸度の値が異なるため、延伸加工において延伸量の限界値が異なる。
【0007】
生産速度が高速化すると、製造ラインを搬送されるシート状資材にかかる負荷が大きくなるため、延伸量が限界値近くまで延伸されたシート状資材は、ダメージを受け易くなる。これにより、製造歩留まりが低下してしまうため、シート状資材の延伸量を抑える必要があった。このように、従来の複合シートの製造方法では、生産速度の高速化と製造コストの低減との両立が難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、生産速度を上げても、製品品質を低下させることなく、製造コストを低減できる吸収性物品の製造方法、及び、吸収性物品の製造方法によって製造された吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、所定の伸度を有する第1シート状資材(バックシート120A)と、前記第1シート状資材よりも小さい伸度を有する第2シート状資材(不織布シート120B)とが貼り付けられた複合シート(裏面シート20)と、前記複合シートに貼り付けられる吸収体(吸収体30)とを少なくとも備える吸収性物品の製造方法であって、外周に複数の凸部が形成され、前記複合シートを挟んで一方の凸部(凸部532)の間に他方の凸部(凸部542)が嵌合する一対のロール機構(型押ロール機構520)によって、前記第1シート状資材を所定の搬送方向(機械方向MD)に沿って搬送しながら前記第1シート状資材を延伸する工程A(シート延伸工程S20)と、前記延伸された第1シート状資材を前記第2シート状資材に貼り付け、前記複合シートを形成する工程B(シート貼合工程S40)とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特徴によれば、生産速度を上げても、製品品質を低下させることなく、製造コストを低減できる吸収性物品の製造方法、及び、吸収性物品の製造方法によって製造された吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施形態に係る吸収性物品1を示す平面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る吸収性物品1を示す断面図(図1のA−A断面図)である。
【図3】図3は、本実施形態に係る吸収性物品1を示す断面図(図1のB−B断面図)である。
【図4】図4(a)は、本実施形態に係る裏面シート20の伸度を示す表である。図4(b)は、本実施形態に係る裏面シート20の伸度を示すグラフである。
【図5】図5(a)は、本実施形態に係る裏面シート20を示す平面図である。図5(b)は、本実施形態に係る裏面シート20を示す拡大断面図(図5(a)のA−A断面図)である。
【図6】図6は、本実施形態に係るバックフィルム20Aのみを示す平面図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る吸収性物品の製造方法を説明するための図である。
【図8】図8(a)は、本実施形態に係る延伸装置500の一部を示す拡大斜視図である。図8(b)は、本実施形態に係る型押ロール機構520の軸方向断面図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る拡幅ロール機構600を示す斜視図である。
【図10】図10は、変更例に係る型押ロール機構520Aの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本実施形態に係る吸収性物品の製造方法及び吸収性物品について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0013】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
まず、本実施形態に係る吸収性物品の製造方法によって製造される吸収性物品1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る吸収性物品1を示す平面図である。図2は、本実施形態に係る吸収性物品1を示す断面図(図1のA−A断面図)である。図3は、本実施形態に係る吸収性物品1を示す断面図(図1のB−B断面図)である。なお、本実施形態では、吸収性物品1は、オープン型のおむつである。
【0015】
図1〜3に示すように、吸収性物品1は、着用者の前胴回り(お腹側)から後胴回り(背中側)に向かう方向(以下、長手方向L)に向かって縦長の形状を有する。
【0016】
吸収性物品1は、長手方向Lにおいて、着用者の前胴回りに対応する前胴回り領域S1と、着用者の後胴回りに対応する後胴回り領域S2と、着用者の股下に対応し、前胴回り領域S1と後胴回り領域S2との間に位置する股下領域S3とを有する。
【0017】
また、吸収性物品1は、長手方向Lに直交する幅方向Wにおいて、後述する吸収体30を含む中央領域C1と、幅方向Wに対して中央領域C1の外側に位置する一対の側部領域C2とを有する。
【0018】
このような吸収性物品1は、表面シート10と、裏面シート20と、吸収体30とを備える。また、吸収性物品1には、ウエストフラップ部40と、サイドフラップ部50とが設けられる。
【0019】
表面シート10は、着用者の肌に接する側に設けられる。表面シート10は、吸収体30を包み込むように配設される。表面シート10は、親水性不織布や織物、開口プラスチックフィルム、開口疎水性不織布などの液透過性のシートによって形成される。
【0020】
裏面シート20は、着用時において吸収性物品1の外側に設けられる。裏面シート20は、液体を透過しない液不透過性(例えば、ポリエチレン)のシート状のバックフィルム20A(第1シート状資材)と、バックフィルムよりも外側に設けられるシート状のバック不織布20B(第2シート状資材)とによって形成される。
【0021】
バックフィルム20Aに後述する延伸加工が施された後(延伸後)の幅方向Wの長さは、バック不織布20Bの幅方向Wの長さよりも短く、吸収体30の幅方向Wの長さよりも長い。このような裏面シート20は、複数のシート状資材が貼り合わされた複合シートを構成する。なお、裏面シート20の詳細については、後述する。
【0022】
吸収体30は、表面シート10と裏面シート20との間に設けられる。吸収体30は、着用者の体液を吸収する。吸収体30は、粉砕パルプや高吸収性ポリマーなどの混合粉体30Aと、混合粉体30Aを被覆するティッシュ等の被覆材30Bとによって形成される。
【0023】
ウエストフラップ部40は、長手方向Lに対する前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2に設けられる。ウエストフラップ部40は、前胴回り領域S1に位置する一対の前側フラップ部40Aと、後胴回り領域S2に位置する一対の後側フラップ部40Bとを有する。
【0024】
前側フラップ部40Aは、幅方向W外側に向かって、裏面シート20に貼り付けられるサイドシート60が延出することによって形成される。なお、前側フラップ部40Aは、サイドシート60の代わりに、バック不織布20Bが延出することによって形成されてもよい。
【0025】
後側フラップ部40Bは、前側フラップ部40Aと同様に、幅方向W外側に向かって、サイドシート60が延出することによって形成される。なお、後側フラップ部40Bは、前側フラップ部40Aと同様に、サイドシート60の代わりに、バック不織布20Bが延出することによって形成されてもよい。後側フラップ部40Bにおける吸収体30が設けられる側の面には、前胴回り領域S1に係止する係止部41が設けられる。
【0026】
係止部41は、例えば、面ファスナーによって形成される。この場合、面ファスナーが雄部材となり、前胴回り領域S1の係止部41が係止される領域に被係止部として雌部材が設けられる。なお、前胴回り領域S1が不織布によって構成されていれば、前胴回り領域S1自体が被係止部の役割を果たしてもよい。
【0027】
サイドフラップ部50は、吸収体30よりも幅方向W外側において長手方向Lに沿って設けられる。サイドフラップ部50には、長手方向Lに伸縮性を有するゴム(例えば、ポリウレタン)からなる紐状体51が設けられる。紐状体51は、長手方向Lに伸張した状態で、裏面シート20に接合される。なお、紐状体51は、幅方向W内側から外側に向けて、第1紐状体51A、第2紐状体51B、第3紐状体51C及び第4紐状体51Dによって構成される。
【0028】
次に、上述した裏面シート20の構成について、図面を参照しながら説明する。図4(a)は、本実施形態に係る裏面シート20の伸度を示す表である。図4(b)は、本実施形態に係る裏面シート20の伸度を示すグラフである。図5(a)は、本実施形態に係る裏面シート20を示す平面図である。図5(b)は、本実施形態に係る裏面シート20を示す拡大断面図(図5(a)のA−A断面図)である。
【0029】
図4(a)及び図4(b)に示すように、裏面シート20を構成するバック不織布20Bの伸度は、バックフィルム20Aの伸度よりも小さい。
【0030】
図5(a)に示すように、裏面シート20を構成するバックフィルム20Aは、延伸部21と、未延伸部22とを有する。なお、裏面シート20を構成するバック不織布20Bは、延伸加工が施されていない。
【0031】
延伸部21は、バックフィルム20Aの厚さ方向Tにバックフィルム20Aが押圧されることによって形成される領域である。つまり、延伸部21は、延伸加工が施されることによって未延伸部22よりも坪量(単位面積当たりの質量)が少ない領域である。
【0032】
延伸部21は、図5(b)に示すように、延伸量が大きい粗部21Lと、拡張量が粗部21Lよりも小さい密部21Tとが交互に形成される。なお、粗部21L及び密部21Tは、長手方向Lに連続し、かつ幅方向Wに複数並んだ状態で配設される。
【0033】
延伸部21は、中央領域C1に位置する中央延伸部分21Aと、側部領域C2の一部に位置する端部延伸部分21Bとを有する。中央延伸部分21Aの延伸量は、端部延伸部分21Bの延伸量よりも大きいことが好ましい。なお、本実施形態では、側部領域C2の一部とは、幅方向W外側に位置する縁部分20Eを含む縁部領域C3を除いた股下領域S3を示す。
【0034】
ここで、端部延伸部分21Bは、必ずしも側部領域C2の一部に設けられる必要はなく、側部領域C2全域に設けられていてもよく、図6に示すように、股下領域S3に設けられていなくてもよい。また、中央延伸部分21Aは、必ずしも中央領域C1の全域に設けられる必要はなく、中央領域C1の少なくとも一部に設けられていればよく、例えば、図5に示すように、長手方向L外側に位置する縁部分20Eを含む縁部領域C4を除いた中央領域C1に設けられていてもよい。
【0035】
このような延伸部21は、裏面シート20に延伸加工が施される前の裏面シート20に対して3.0倍以下で拡張されることが好ましい。また、延伸部21は、幅方向Wに拡幅されて平坦になった状態でバック不織布20Bと接合される(図7参照)。
【0036】
未延伸部22は、厚さ方向Tにバックフィルム20Aが押圧されていない領域である。つまり、未延伸部22は、延伸部21を除いた領域となる。未延伸部22は、延伸部21と異なり、幅方向Wに延伸されていない。未延伸部22は、一対の側部領域C2に設けられる。
【0037】
次に、上述した吸収性物品1を製造する吸収性物品の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態に係る吸収性物品の製造方法を説明するための図である。
【0038】
図7に示すように、吸収性物品の製造方法では、裏面シート20と吸収体30とを少なくとも備える吸収性物品1を製造する。具体的には、吸収性物品の製造方法は、シート加熱工程S10と、シート延伸工程S20と、シート拡幅工程S30と、シート貼合工程S40と、吸収体接合工程S50と、紐状体配置工程S60と、サイドフラップ形成工程S70と、ウエストフラップ配置工程S80と、製品切断工程S90とを備える。
【0039】
シート加熱工程S10では、後述する加熱ロール510によって、バックフィルム20Aが連続したバックシート120Aを搬送方向(以下、機械方向MD)に沿って搬送しながら、バックシート120Aを加熱する。
【0040】
シート延伸工程S20では、加熱されたバックシート120Aを、後述する型押ロール機構520によってバックシート120Aの厚さ方向Tに押圧する。これにより、バックシート120Aの幅方向W(すなわち、機械方向MDに直交する交差方向CD)にバックシート120Aが延伸され、バックシート120Aに延伸部21及び未延伸部22が形成される。なお、中央延伸部分21Aの延伸量は、端部延伸部分21Bの延伸量よりも大きいことが好ましい。
【0041】
シート拡幅工程S30では、延伸されたバックシート120Aを、後述する拡幅ロール機構600によって、バックシート120Aの幅方向W外側に向けて平坦状になるまで拡幅(拡張)する。
【0042】
シート貼合工程S40では、拡幅されたバックシート120Aと、バック不織布20Bが連続した不織布シート120Bとを貼り付け、複合シート120を形成する。このとき、バックシート120Aは、延伸部21が幅方向Wに拡幅されて平坦になった状態で不織布シート120Bに貼り付けられる。
【0043】
吸収体接合工程S50では、表面シート10が接合された吸収体30を、形成された複合シート120上に接合(載置)する。
【0044】
紐状体配置工程S60では、複合シート120の機械方向MDに対して紐状体51を伸張させた状態で、当該紐状体51を吸収体30の幅方向W外側に対応する複合シート120上に配置する。
【0045】
サイドフラップ形成工程S70では、バックシート120Aよりも幅方向Wに延出した不織布シート120Bを幅方向W内側に折り返すことによって、当該不織布シート120Bで紐状体51を包み、サイドフラップ部50を形成する。
【0046】
ウエストフラップ配置工程S80では、予め形成された前側フラップ部40Aと、係止部41が取り付けられた後側フラップ部40Bとを複合シート120に接合する。
【0047】
製品切断工程S90では、吸収体30、サイドフラップ部50及びウエストフラップ部40が設けられた複合シート120を幅方向Wに沿って一製品の大きさに切断し、吸収性物品1を製造する。
【0048】
次に、上述したシート加熱工程S10及びシート延伸工程S20で使用される延伸装置500の構成について、図面を参照しながら説明する。図8(a)は、本実施形態に係る延伸装置500の一部を示す拡大斜視図である。図8(b)は、本実施形態に係る型押ロール機構520の軸方向断面図である。
【0049】
図8(a)に示すように、延伸装置500は、バックシート120Aを機械方向MDに沿って搬送しながら交差方向CDに延伸する。延伸装置500は、加熱ロール510と、型押ロール機構520とを備える。
【0050】
加熱ロール510は、型押ロール機構520よりも機械方向MDの上流側に設けられる。加熱ロール510は、機械方向MDに沿って回転しながら、バックシート120Aが型押ロール機構520を通過する前にバックシート120Aを加熱する。加熱ロール510は、所定の温度(例えば、100度)に設定される。
【0051】
型押ロール機構520は、加熱ロール510を通過したバックシート120Aを加熱するとともに、バックシート120Aの厚さ方向Tにバックシート120Aを押圧する。型押ロール機構520は、所定の温度(例えば、60度)に設定される。
【0052】
このような型押ロール機構520は、図8(b)に示すように、外周に複数の凸部(いわゆる、延伸刃)が形成され、バックシート120Aを挟んで一方の凸部532の間に他方の凸部542が嵌合する一対のロール機構によって構成される。
【0053】
凸部532及び凸部542の形状は、ロール機構の軸芯方向における断面において、ロール機構の外周から外側に向けて先細状である。本実施形態では、凸部532及び凸部542の形状は、ロール機構の軸芯方向における断面において、略三角形状である。
【0054】
凸部532及び凸部542には、フェライト系ステンレス(SUS430 2B)が使用される。例えば、凸部532の厚みt1及び凸部542の厚みt2は、それぞれ0.7〜1.0mmである。また、凸部532及び凸部542の外表面には、研磨加工が施されることが好ましい。
【0055】
このような延伸装置500では、例えば、加熱ロール510の温度が100度である。型押ロール機構520の温度が60度である。凸部532と凸部542とが嵌合した際のロール機構の軸芯方向に直交する方向に沿った長さ(L)が1.6mmである。複数の凸部532の間隔(p1)及び複数の凸部542の間隔(p2)が2.5mmである。この条件によって、延伸装置500は、バックシート120Aに延伸加工を施す前のバックシート120Aに対して1.3倍の拡張加工を施すことができる。
【0056】
なお、延伸装置500では、上述した諸条件を適宜変更することによって、バックシート120Aが幅方向Wに延伸する倍率(延伸倍率)を変更できる。また、バックシート120Aの中央領域C1と側部領域C2とに対応する凸部532や凸部542の高さが異なっていてもよい。これにより、中央領域C1での延伸倍率と、側部領域C2での延伸倍率とを変更できる。
【0057】
次に、上述したシート拡幅工程S30で使用される拡幅ロール機構600の構成について、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施形態に係る拡幅ロール機構600を示す斜視図である。
【0058】
図9に示すように、拡幅ロール機構600は、型押ロール機構520により延伸されたバックシート120Aを、バックシート120Aの交差方向CD外側に向けて平坦状になるまで拡幅する。この結果、延伸部21に設けられた延伸部21(粗部21L及び密部21T)が平らになり、延伸部21が拡幅する。拡幅ロール機構600は、第1拡張ロール機構610と、第2拡張ロール機構620とを備える。
【0059】
第1拡張ロール機構610は、バックシート120Aの一方の側部120Eを挟持する。第1拡張ロール機構610は、第1上側押圧ロール611と、第1下側押圧ロール612とを備える。
【0060】
第1上側押圧ロール611は、バックシート120Aの一面側(上面側)に配設される。第1上側押圧ロール611は、バックシート120Aの上面に接した状態で、軸芯を中心にバックシート120Aを送り出す送出方向に沿って回転する。
【0061】
第1下側押圧ロール612は、バックシート120Aを挟んで、第1上側押圧ロール611の反対側(下面側)に配設される。第1下側押圧ロール612は、第1上側押圧ロール611との間でバックシート120Aを挟持する。第1下側押圧ロール612は、バックシート120Aの下面に接した状態で、軸芯を中心にバックシート120Aを送り出す送出方向に沿って回転する。
【0062】
第1上側押圧ロール611及び第1下側押圧ロール612では、バックシート120Aの中心線CL側が機械方向MDの先寄りに位置する。すなわち、第1上側押圧ロール611及び第1下側押圧ロール612は、バックシート120Aの平面視において、交差方向CDに対して傾斜している。これにより、第1上側押圧ロール611及び第1下側押圧ロール612は、バックシート120Aを平坦状になるまで拡幅できる。
【0063】
第2拡張ロール機構620は、バックシート120Aの他方の側部120Eを挟持する。第2拡張ロール機構620は、第2上側押圧ロール621と、第2下側押圧ロール622とを備える。なお、第2拡張ロール機構620の構成は、第1拡張ロール機構610と同様である。従って、第2拡張ロール機構620の説明については省略する。
【0064】
このような拡幅ロール機構600では、第1上側押圧ロール611及び第1下側押圧ロール612の交差方向CDに対する傾斜角や、第2上側押圧ロール621及び第2下側押圧ロール622の交差方向CDに対する傾斜角を適宜変更することによって、バックシート120Aの拡幅度合いを変更できる。
【0065】
以上説明した本実施形態では、バックシート120Aを延伸した後に、延伸されたバックシート120Aを不織布シート120Bに貼り付ける。つまり、伸度の異なるバックシート120Aと不織布シート120Bとに一緒に延伸加工を施さずに、バックシート120Aのみに延伸加工を施す。これによれば、バックシート120Aよりも伸度が小さい不織布シート120Bを延伸しないため、生産速度の高速化によるダメージを不織布シート120Bが受けにくい。このため、不織布シート120Bの製造不良が低減し、製造歩留まりが低下することを抑制できる。従って、生産速度の高速化を実現しつつ、裏面シート20(バックシート120A)を柔らかくすることができ、製品品質を低下させることを抑制できる。
【0066】
また、従来の技術では、バックシート120Aと不織布シート120Bとに延伸加工を施す場合、不織布シート120Bの伸度に合わせて延伸加工を施す必要があった。これに対して、本実施形態では、不織布シート120Bよりも伸度が大きいバックシート120Aのみに延伸加工を施すため、バックシート120Aの延伸量をより一層多くできる。このため、製造ラインに投入するバックシート120Aの資材量を減らすことができ、製造コストの低減が図れる。
【0067】
本実施形態では、中央延伸部分21Aの延伸量は、端部延伸部分21Bの延伸量よりも大きいことが好ましい。なお、バックシート120Aは、機械方向MDに引っ張られた状態で搬送される。このため、バックシート120Aには、機械方向MDに張力が働いているため、バックシート120Aの縁部は幅方向内側に向けて入り込いやすい(いわゆる、ネックイン現象が発生しやすい)。従って、バックシート120Aの端部延伸部分21Bには、均等に延伸加工を施すことが難しい。そのため、中央延伸部分21Aの延伸量を積極的に大きくし、バックシート120A全体の幅方向Wへの延伸度合いを一定にできる。
【0068】
本実施形態では、バックフィルム20Aの延伸後の幅方向Wの長さは、バック不織布20Bの幅方向Wの長さよりも短く、吸収体30の幅方向Wの長さよりも長い。つまり、バックフィルム20Aとバック不織布20Bとが重ならない部分が設けられる。これによれば、吸収体30により吸収した着用者の体液をバック不織布20B側(すなわち、吸収性物品1の外側)へ漏らすことなく、側部領域C2での通気性を向上できる。
【0069】
本実施形態では、バックフィルム20A(延伸後のバックシート120A)は、股下領域S3に設けられる。これによれば、前胴回り領域S1や後胴回り領域S2にバックフィルム20Aを設けない場合には、バックシート120Aの資材量を減らすことができ、製造コストの低減が図れるとともに、前胴回り領域S1や後胴回り領域S2での通気性が向上する。
【0070】
本実施形態では、シート延伸工程S20とシート貼合工程S40との間でシート拡幅工程S30が行われる。すなわち、バックシート120Aが型押ロール機構520により押圧されることで微小の凹凸(粗部21L及び密部21T)が設けられた延伸部21が形成される。次いで、バックシート120Aは、一旦形成された微小の凹凸が拡幅ロール機構600により平ら(平坦状)になるまで拡幅される。次いで、バックシート120Aは、一旦形成された微小の凹凸が平坦状のまま、不織布シート120Bとが接合される。
【0071】
ところで、バックシート120Aは、機械方向MDに対して引っ張られた状態で搬送されるため、バックシート120Aの幅が狭くなる現象(いわゆる、ネックイン現象)が発生する場合がある。しかし、本実施形態では、上述したように、拡張されて平坦状になったバックシート120A上に不織布シート120Bが接合される。つまり、一旦平坦状になったバックシート120Aの幅が狭くなる前に、バックシート120Aに不織布シート120Bが接合される。このため、微小の凹凸が平坦状で維持される。従って、製造ラインに投入するバックシート120Aの資材量を減らしつつ、裏面シート20が着用者に触れた場合であっても、着用者への不快感を確実に抑制できる。
【0072】
また、凸部532及び凸部542には、フェライト系ステンレス(SUS430 2B)が使用される。例えば、凸部532の厚みt1及び凸部542の厚みt2は、それぞれ0.7〜1.0mmである。これによれば、凸部532及び凸部542の耐久性を考慮しながら、生産速度の高速化を実現しつつ、裏面シート20(バックシート120A)を柔らかくすることができる。
【0073】
特に、凸部532及び凸部542の外表面には、研磨加工が施されることが好ましい。これによれば、凸部532及び凸部542の外表面に研磨加工が施されていない場合と比べて、凸部532及び凸部542とバックシート120Aとの摩擦が低減する。このため、バックシート120Aに穴あき(ピンホール)が発生することを抑制できる。
【0074】
(変更例)
上述した実施形態に係る型押ロール機構520は、以下のように変更してもよい。なお、上述した実施形態に係る型押ロール機構520と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0075】
図10は、変更例に係る型押ロール機構520Aの軸方向断面図である。上述した実施形態では、凸部532及び凸部542の形状は、ロール機構の軸芯方向における断面において、略三角形状である。これに対して、変更例では、図10(a)に示すように、凸部532及び凸部542の形状は、ロール機構の軸芯方向における断面において、略矩形状である。凸部532及び凸部542には、面取りR(例えば、R0.2mm)が施されている。なお、凸部532及び凸部542には、必ずしも面取りRが施される必要はないことは勿論である。
【0076】
ここで、凸部532及び凸部542の形状は、図10(b)に示すように、ロール機構の軸芯方向における断面において、略台形状であってもよい。この場合、凸部532及び凸部542を形成するそれぞれ側面は、ロール機構の軸芯方向に直交する方向に対して所定角度α(例えば、30〜90度)で傾斜した状態で対向することが好ましい。
【0077】
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0078】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、吸収性物品1の構成については、実施形態で説明したものに特に制限されるものではなく、目的に応じて設定できることは勿論である。例えば、吸収性物品1は、オープン型のおむつであるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、パンツ型のおむつや生理用ナプキン、パンティーライナーなどであってもよい。
【0079】
また、表面シート10や裏面シート20、吸収体30、ウエストフラップ部40及びサイドフラップ部50は、実施形態で説明した構成に限定されるものではなく、異なる構成であってもよく、目的に応じて適宜変更できる。例えば、後側フラップ部40Bに設けられる係止部41は、面ファスナーによって形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、粘着テープなどによって形成されていてもよい。また、紐状体51は、ゴムであるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、伸縮性を有するシートであってもよく、伸縮性を有する部材であればよい。
【0080】
また、延伸装置500は、バックフィルム20Aに延伸部21を形成するための一例として説明したため、その他の構成であってもよく、裏面シート20に延伸部21を形成できればよいことは勿論である。例えば、延伸装置500は、必ずしも加熱ロール510と型押ロール機構520とを備える必要はなく、型押ロール機構520のみによって構成されていてもよい。
【0081】
また、拡幅ロール機構600は、第1拡張ロール機構610と、第2拡張ロール機構620とを備えるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、少なくとも何れか一方のみを備えていればよく、バックシート120Aの一方の側部120Eまたは他方の側部120E側でバックシート120Aを拡幅してもよい。
【0082】
また、吸収性物品の製造方法は、シート加熱工程S10〜製品切断工程S90を有するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、少なくともシート延伸工程S20と、シート貼合工程S40と、吸収体接合工程S50とを有していればよく、目的に応じて適宜設定できることは勿論である。
【0083】
また、吸収性物品の製造方法では、バックフィルム20Aに延伸加工を施すものとして説明したが、これに限定さるものではなく、バックフィルム20Aに加えて、バックフィルム20Aとは別にバック不織布20Bにも延伸加工を施してもよい。この場合、バックフィルム20Aの伸度と異なるバック不織布20Bの伸度に合わせて、延伸度合いを変えることが好ましい。
【0084】
また、吸収性物品の製造方法では、バックフィルム20Aに延伸加工を施すものとして説明したが、これに限定さるものではなく、その他のシートに延伸加工を施してもよい。例えば、表面シート10が2枚のシートによって構成される場合、何れか伸度が大きい方のシートに延伸加工を施してもよいことは勿論である。
【0085】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0086】
1…吸収性物品、10…表面シート、20…裏面シート、20A…バックフィルム、20B…バック不織布、20E…縁部分、21…延伸部、21A…中央延伸部分、21B…端部延伸部分、21L…粗部、21T…密部、22…未延伸部、30…吸収体、30A…混合粉体、30B…被覆材、40…ウエストフラップ部、40A…前側フラップ部、40B…後側フラップ部、41…係止部、50…サイドフラップ部、51(51A〜51D)…紐状体、60…サイドシート、120…複合シート、120A…バックシート(第1シート状資材)、120B…不織布シート(第2シート状資材)、120E,120E…側部、500…延伸装置、510…加熱ロール、520…型押ロール機構、532,542…凸部、600…拡幅ロール機構、610…第1拡張ロール機構、611…第1上側押圧ロール、612…第1下側押圧ロール、620…第2拡張ロール機構、621…第2上側押圧ロール、622…第2下側押圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の伸度を有する第1シート状資材と、前記第1シート状資材よりも小さい伸度を有する第2シート状資材とが貼り付けられた複合シートと、前記複合シートに貼り付けられる吸収体とを少なくとも備える吸収性物品の製造方法であって、
外周に複数の凸部が形成され、前記複合シートを挟んで一方の凸部の間に他方の凸部が嵌合する一対のロール機構によって、前記第1シート状資材を所定の搬送方向に沿って搬送しながら前記第1シート状資材を延伸する工程Aと、
前記延伸された第1シート状資材を前記第2シート状資材に貼り付け、前記複合シートを形成する工程Bと
を有する吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記第1シート状資材は、液体を透過しない液不透過性シートであり、
前記第2シート状資材は、不織布である請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記工程Aにおいて、前記第1シート状資材の幅方向の長さが延伸される請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
前記第1シート状資材の幅方向の中央領域において延伸される延伸量は、前記中央領域よりも幅方向外側に位置する縁部領域において延伸される延伸量よりも大きい請求項3に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項5】
前記工程Aと前記工程Bとの間で行われ、前記第1シート状資材の幅方向の側部の少なくとも一方に設けられる拡幅ロール機構によって、前記第1シート状資材を前記第1シート状資材の幅方向外側に向けて平坦状になるまで拡幅する工程を有する請求項1乃至4の何れか一項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項6】
着用者の肌に接する表面シートと、着用者から最も離れる裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられる吸収体とを備える吸収性物品であって、
前記表面シート又は前記裏面シートの少なくとも一方は、
所定の伸度を有する第1シート状資材と、
前記第1シート状資材よりも小さい伸度を有する第2シート状資材と
を有し、
前記第1シート状資材は、延伸された状態で前記第2シート状資材に重ねられる吸収性物品。
【請求項7】
前記第1シート状資材の延伸後の幅方向の長さは、前記第2シート状資材の幅方向の長さよりも短く、前記吸収体の幅方向の長さよりも長い請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
延伸後の前記第1シート状資材は、着用者の股下に対応する股下領域に対応する位置に設けられる請求項6に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−50492(P2011−50492A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200702(P2009−200702)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】