説明

吸収性物品及びその個装吸収性物品

【課題】柔軟に局部にフィットすることが可能で装着感を損なわず、大きな体圧を受けても復元性に優れ、局部に対するフィット性を維持し得る中高部構造とした吸収性物品を提供する。
【解決手段】中高部6は、シート材料10を交互に山折りと谷折りとを繰り返しながら多重に折り返して蛇腹状とし、取付け状態で基端側となる折返し部8において先端部同士を互いに接合し、かつ前記基端側となる折返し部8から先端側となる折返し部9に向かう面同士が互いに対面する部位において前記基端側となる折返し部8から前記先端側となる折返し部9に向かう中間点までの区間を接合し、前記基端側となる折返し部8の接合点17から両側の外側面の中間に亘る範囲18を表面シート3上に接合し、展開状態で、前記基端側となる折返し部8の接合点17を中心として複数の中空セル6A〜6Cが放射状に連接した断面形状となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品、詳しくは体圧を受けても復元性に優れ、フィット性を持続し続ける中高部を備えた吸収性物品及びその個装吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドなどの吸収性物品としては、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネート不織布などからなる不透液性裏面シートと、不織布または透孔性プラスチックシートなどからなる透液性表面シートとの間に綿状パルプなどからなる吸収体を介在させたものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、体液の漏れを防止するための手段が種々講じられている。これら体液漏れ防止手段の一つとして、排血部に吸収体の厚みを増厚した中高部を形成し、局部との密着性を向上させる技術が存在する。近年は、この中高部の構造に関しても、種々の改良が試みられている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、排出された体液が、吸収性物品の中高部に吸収性される前及び/又は後に、吸収性物品の幅方向へ移動するのを防止するために、表面シート、裏面シート、及びこれらの両シート間に介在された吸収体を具備し、該吸収体が中高部を有しており、実質的に縦長に形成された吸収性物品において、前記中高部の両側縁に沿って前後方向に延びる、一対の防漏クッション堤を設けたものが提案されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、吸収性物品の幅方向中央部に使用面側に隆起した中高部の吸収量を増加することによって経血等の漏れを防止するために、透液性の表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された幅方向中央部に、少なくとも排血部から臀裂部に至る範囲に亘って使用面側に隆起した中高部が形成された吸収性物品において、前記中高部は、前記表面シートと吸収体との間に配置された上層吸収体と、該上層吸収体の下面側に配置された体液伝達シートとによって構成され、前記上層吸収体には、前記表面シート側から多数のエンボスが付与され、前記体液伝達シートは、前記エンボスの付与による前記上層吸収体の圧縮部分の密度より高密度とされる吸収性物品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−346305号公報
【特許文献2】特開2010−57526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先ず、一般的な中高部の場合は、吸収体と同じ材料、すなわちパルプ繊維を主体とする繊維により構成されており、大きな体圧を受けパルプ繊維が圧縮されると、復元性に乏しいため元の形状に戻らず、局部に対するフィット性や密着性が低下し、横漏れが生じることがあった。前記特許文献1記載の発明は、中高部の両側縁に沿って前後方向に延びる、一対の防漏クッション堤を設けることで横方向への漏れを防止するものであるが、前記防漏クッション堤が著しく装着感を低下させるという問題点があった。更に、前記特許文献2記載の発明は、中高部の吸収量を増加させうる点で優れているものの、中高部が高密度に圧縮されるため、中高部の硬さが増し装着感が損なわれる。また、やはり大きな体圧を受けパルプ繊維が圧縮されると、復元性に乏しいため元の形状に戻らず、局部に対するフィット性や密着性が低下するという問題があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、柔軟に局部にフィットすることが可能で装着感を損なわず、大きな体圧を受けても復元性に優れ、局部に対するフィット性を維持し得る中高部構造とした吸収性物品およびその個装吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性の表面シートと裏面シートとの間に、吸収体が介在されるとともに、体液排出部位であって表面側の幅方向中央部に中高部を有する吸収性物品であって、
前記中高部は、シート材料を交互に山折りと谷折りとを繰り返しながら多重に折り返して蛇腹状とし、取付け状態で基端側となる折返し部において先端部同士を互いに接合し、かつ前記基端側となる折返し部から先端側となる折返し部に向かう面同士が互いに対面する部位において前記基端側となる折返し部から前記先端側となる折返し部に向かう中間点までの区間を接合し、
前記基端側となる折返し部の接合点から両側の外側面の中間までの範囲を表面シート上に接合し、吸収性物品の展開状態で、前記基端側となる折返し部の接合点を中心として複数の中空セルが放射状に連接した断面形状となるようにしたことを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明は、中高部の構造を、シート材料を交互に山折りと谷折りとを繰り返しながら多重に折り返して蛇腹状とし、取付け状態で基端側となる折返し部において先端部同士を互いに接合し、かつ前記基端側となる折返し部から先端側となる折返し部に向かう面同士が互いに対面する部位において前記基端側となる折返し部から前記先端側となる折返し部に向かう中間点までの区間を接合し、前記基端側となる折返し部の接合点から両側の外側面の中間までの範囲を表面シート上に接合し、吸収性物品の展開状態で、前記基端側となる折返し部の接合点を中心として複数の中空セルが放射状に連接した断面形状となるようにしたものである。
【0011】
上記構造の中高部は、柔軟に局部にフィットすることが可能で装着感を損なわない。また、各中空セル同士を接着している複数の側壁部が支柱となっているため、一般的なパルプ繊維からなる中高部よりも体圧を受けても復元性を有し、局部に対するフィット性を維持し得るようになるとともに、体圧によって潰された際、中空セル内部の空気が外へ排出されるため蒸れを防止できる。更には、前記中空セルは折り畳むことが可能であるとともに、展開させると扇状に拡がるため、個装状態で薄くでき、持ち運びがし易いなどの利点を有する。
【0012】
なお、本発明の「前記基端側となる折返し部から前記先端側となる折返し部に向かう中間点までの区間を接合し、」との構成は、前記基端側となる折返し部から前記先端側となる折返し部に向かう中間点までの全区間を接合する場合の他、前記基端側となる折返し部から前記先端側となる折返し部に向かう中間点までの区間の内、間の部分を非接合とし、前記中間点となる部分を接合する態様とを含むものである。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記シート材料は、少なくとも吸収シートと表面材とを貼り合わせた積層シート材料とする請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、前記シート材料として、少なくとも吸収シートと表面材とを貼り合わせた積層シート材料とするものである。前記表面材としては、不織布や多孔のプラスチックシート(メッシュシート)とすることができ、多孔のプラスチックシートとした場合は、吸収シートとの間に親水性不織布からなるセカンドシートを介在させるのが望ましい。前記吸収シートとしては、エアレイドパルプ不織布やこれに化学繊維を混合し熱融着したものなどを使用することで、体液の吸収が図れるようになっている。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記シート材料は、透液性の不織布又はスポンジシートと、表面材とを貼り合わせた積層シート材料とする請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、前記シート材料として、透液性の不織布又はスポンジシートと、表面材とを貼り合わせた積層シート材料とするものである。本態様は、中高部では吸収性を持たせず、周囲に吸収体に体液を吸収させる技術思想の下、中高部を構成する材料としては、透液性の素材を用いるものである。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記中高部の前端部及び後端部は長手方向に沿う傾斜面とされ、前記表面シートの中高部配置部位にスリット状の通孔を形成し、前記中高部の上部側のみを前記スリット状の通孔を通して外部に露出させてある請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明は、前記中高部の前端部及び後端部は、肌との当たりを考えて長手方向に沿う傾斜面とするのが望ましい。しかし、この場合は、前端縁及び後端縁が肌に当たって痛みを感じることがあるため、この前後端縁を隠すために、前記表面シートの中高部配置部位にスリット状の通孔を形成し、前記中高部の上部側のみを前記スリット状の通孔を通して外部に露出させるようにしたものである。なお、前記一方側の折返し部の接合点から両側の外側面の中間までの範囲を表面シート上に接合し、吸収性物品の展開状態で、前記一方側の折返し部の接合点を中心とする複数の中空セルを放射状に連接した断面形状とする点は同様である。
【0019】
請求項5に係る発明として、前記中高部の前端部及び後端部は長手方向に沿う傾斜面とされ、前記表面シート及び吸収体の中高部配置部位にスリット状の通孔を形成し、前記中高部の上部側のみを前記スリット状の通孔を通して外部に露出させてある請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明は、前記中高部の前端部及び後端部は、肌との当たりを考えて長手方向に沿う傾斜面とするのが望ましいが、この場合は、前端縁及び後端縁が肌に当たって痛みを感じることがあるため、この前後端縁を隠すために、前記表面シート及び吸収体の中高部配置部位にスリット状の通孔を形成し、前記中高部の上部側のみを前記スリット状の通孔を通して外部に露出させるようにしたものである。
【0021】
請求項6に係る発明として、請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品を幅方向中央位置で長手方向に沿って表面シート同士が対面するように内折りとした状態で、包装シートの上面に載置し、長手方向に複数回に折り畳み両側縁の開口部を封止したことを特徴とする個装吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明は、本発明の吸収性物品の好ましい個装形態を示したものである。前述したように、本吸収性物品の場合は、前記中空セルは折り畳むことが可能であるとともに、展開させると扇状に拡がるため、吸収性物品を幅方向中央位置で長手方向に沿って表面シート同士が対面するように内折りとした状態で(この状態で、前記中空セルは折り畳まれた状態にある。)、包装シートの上面に載置し、長手方向に複数回に折り畳み両側縁の開口部をヒートシール、接着剤等により封止したものである。中高部に嵩がないため、個装状態で薄くでき、持ち運びがし易い。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、柔軟に局部にフィットすることが可能で装着感を損なわず、大きな体圧を受けても復元性に優れ、局部に対するフィット性を維持し得る中高部構造を備えた吸収性物品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】その裏面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視図である。
【図5】中高部6の製作要領を示す、(A)は展開図、(B)は折り畳み断面を示す模式図、(C)は変形例に係る折り畳み断面を示す模式図である。
【図6】中高部6の断面図である。
【図7】中高部6の傾斜面処理の例を示す要部展開図である。
【図8】中高部6の前後端を隠す場合の第1態様を示す縦断面図である。
【図9】中高部6の前後端を隠す場合の第2態様を示す、(A)は吸収体平面図、(B)は組合せ要領である。
【図10】中高部6の前後端を隠す場合の第2態様を示す縦断面図である。
【図11】本生理用ナプキン1の個装要領を示す図(その1)である。
【図12】本生理用ナプキン1の個装要領を示す図(その2)である。
【図13】本生理用ナプキン1の個装要領を示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部を含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSとから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と、前記立体ギャザーBSを形成しているサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されるとともに、これよりも臀部側に位置する部分にヒップホールド用フラップW、Wが形成され、かつ前記吸収体4の裏面側の本体ズレ止め粘着剤層11と各ウイング状フラップW、Wの裏面側のウイングズレ止め粘着剤層12、12と各ヒップホールド用フラップW、Wの裏面側のヒップズレ止め粘着剤層13、13とが形成されるとともに、これら本体ズレ止め粘着剤層11、ウイングズレ止め粘着剤層12及びヒップズレ止め粘着剤層13が剥離紙30(30A〜30C)によって剥離可能に覆われている。なお、前記剥離紙30は、剥離し易いように、隅角部を斜めにカットする隅切りを行うようにしてもよい。
【0027】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記吸収体4が配設される前記裏面シート2の非使用面側(外面)には、図2に示されるように、1または複数条の本体ズレ止め粘着剤層11が形成されるとともに、前記ウイング状フラップW、Wを形成する前記裏面シート2の非使用面側(外面)には、それぞれウイングズレ止め粘着剤層12、12が形成され、前記ヒップホールド用フラップW、Wを形成する前記裏面シート2の非使用面側(外面)には、それぞれヒップズレ止め粘着剤層13、13が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0028】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0029】
前記吸収体4は、少なくともパルプ繊維を含有し、任意に合成繊維を混合することができる。合成繊維を混合する場合は、前記パルプ繊維:合成繊維との比率を重量換算で80〜20:20〜80、好ましくは40〜60:60〜40で混合したものが望ましい。
【0030】
前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができ、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
前記吸収体4は高吸水性樹脂を含有することができる。前記高吸収性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。配合量を多くすると所謂ゲルブロッキング現象が起きるため、パルプ繊維及び合成繊維の合計重量に対して重量換算で1〜10%の割合で配合するのが望ましい。なお、高吸水性樹脂含有率が50%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなるため望ましくない。
【0032】
前記パルプ繊維は、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0033】
一方、前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図3および図4の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBSは前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を10〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0034】
前記サイド不織布7は、図3および図4に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置にヒップホールド用フラップW、Wを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよびヒップホールド用フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層12…,13…を備え、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを折返し線RL近傍位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、ヒップホールド用フラップW、Wをショーツの内面に止着するようになっている。
【0035】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材19が配設されるとともに、前記糸状弾性伸縮部材19の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材20,20が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図4に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、図3に示されるように、前記糸状弾性伸縮部材19配設部位を屈曲点として、断面く字状に内側に開口を向けたポケットP、Pを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0036】
本生理用ナプキン1では、体液排出部位であって表面側の幅方向中央部に中高部6を有する。
【0037】
〔中高部6について〕
以下、中高部6について詳述する。
【0038】
前記中高部6は、図5(A)に示されるように、シート材料10を交互に山折りと谷折りとを繰り返しながら多重に折り返して蛇腹状とし、次いで図5(B)に示されるように、取付け状態で基端側となる折返し部8において先端部8a、8a…同士を接着剤14、14…により接合し、かつ前記基端側となる折返し部8から先端側となる折返し部9に向かう面同士が互いに対面する部位において前記基端側となる折返し部8から前記先端側となる折返し部9に向かう中間点までの区間を接着剤15,15により接合したものである。接合態様は、図5(B)に示されるように、折返し部8から中間点までの全区間を接着剤15により接合する場合の他、図5(C)に示されるように、中間点までの区間の内、間の部分を非接合とし、前記中間点となる部分を接合する態様とを含むものである。
【0039】
そして、図6に示されるように、前記基端側となる折返し部8の接合点17(束部)から両側の外側面の中間までの範囲18,18を表面シート3上に接合し、生理用ナプキン1の展開状態で、前記基端側となる折返し部8の接合点17を中心として複数の中空セル6A〜6Cが放射状に連接した断面形状となるようにしたものである。
【0040】
前記シート材料10としては、少なくとも吸収シートと表面材とを貼り合わせた積層シート材料、具体的には、吸収シートと、表面材とからなる2層構造のシート材料や、吸収シートと、表面材と、前記吸収シートと表面材との間に親水性不織布からなるセカンドシートを介在させた3層構造のシート材料などを使用することができる。
【0041】
前記吸収シートとしては、例えばエアレイドパルプ不織布やこれに化学繊維を混合し熱融着したものなどを好適に使用することができる。
【0042】
前記表面材としては、無孔又は多孔の不織布や多孔のプラスチックシート(メッシュシート)とすることができ、多孔のプラスチックシートとした場合は、吸収シートとの間に親水性不織布からなるセカンドシートを介在させるのが望ましい。セカンドシートの不織布種別としては、嵩のあるエアスルー不織布が望ましい。
【0043】
前記シート材料10としては、吸収シートを用い吸収性能を持たせる場合の他、周囲に吸収体4に体液を吸収させる技術思想の下、中高部を構成する材料としては、吸収性を有さず、液透液性の素材を用いるようにしてもよい。この場合は、透液性の不織布又はスポンジシートと、表面材とを貼り合わせた積層シート材料とするのがよい。
【0044】
前記中高部6の製作要領の前述したとおりであるが、装着感を良好とするために、前記中高部6の前端部及び後端部は長手方向に沿う傾斜面6a、6bとしている。その展開図では、図5(A)に示すように、両側縁部に横V字状の切欠きが中空セル毎に形成されたシート材料10を使用することになるが、前記傾斜面6a、6bは、方形のシート材料10を交互に山折りと谷折りとを繰り返しながら多重に折り返して蛇腹状とした後、束ねた状態で端部を斜めに裁断して形成することも可能である。また、前記傾斜面6a、6bが切り口のままとなっていると、肌に対する当たりが強くなり、装着感を損なうため、図7に示されるように、方形のシート材料10を用い、各中空セル6A〜6Cの側縁中央から切込み10aを入れ、三角形部分を裏面側に折り返すようにしてもよい。
【0045】
また、前記中高部6は、図6に示されるように、各中空セル6A〜6Cが膨らみを持った状態とするのが望ましいが、本形態例のように、吸収シートを含んだ厚みのあるシート材料10を使用した場合、先端側となる折返し部9の折り癖が強いと先端側に膨らみが出づらい。そこで、図5(A)に示されるように、各中空セル6A〜6Cの構成部分において、前記先端側となる折返し部9の折り線を跨ぐように、例えば平面視で矩形状を成す、V溝状の刻印エンボスライン16を形成するのが望ましい。これにより、前記先端側となる折返し部9の折り線の折り癖が緩和され、模式的には、図6に示されるように、先端面が膨出形状をした中空セル6A〜6Cとすることが可能となる。
【0046】
ところで、中高部6の前後部に夫々、前記傾斜面6a、6bを設けたことによって、前端縁及び後端縁が肌に当たって痛みを感じることがあるため、この前後端縁を隠し、肌に当たらないようにすることで装着感を向上させるのが望ましい。この場合の第1の態様としては、図8に示されるように、前記表面シート3の中高部配置部位にスリット状の通孔3aを形成し、前記中高部6の上部側のみを前記スリット状の通孔3aを通して外部に露出させるようにする。第2の態様としては、図9(A)に示されるように、吸収体4の中高部配置部位にスリット状の通孔4aを形成し、図9(B)に示されるように、前記中高部6の上部側のみを前記スリット状の通孔4aを通して外部に露出させるようにし、次いで、図10に示されるように、表面シート3にも同様に、中高部配置部位にスリット状の通孔3aを形成し、前記中高部6の上部側のみを前記スリット状の通孔3aを通して外部に露出させるようにする。なお、前記第1態様及び第2態様においても、前記一方側の折返し部8の接合点17から両側の外側面の中間までの範囲18,18を表面シート3上に接合し、ナプキン1の展開状態で、前記一方側の折返し部8の接合点17を中心とする複数の中空セル6A〜6Cを放射状に連接した断面形状とする点は同様である。
【0047】
一方、本生理用ナプキン1の場合は、前記基端側となる折返し部8の接合点17を中心に、前記中空セル6A〜6Cは蛇腹状に折り畳むことが可能であるとともに、展開させると扇状に拡がるため、個装に当たっては、図11に示されるように、生理用ナプキン1を幅方向中央位置の折り線Kで長手方向に沿って表面シート3同士が対面するように内折りとした状態で(この状態で、前記中空セル6A〜6Cは折り畳まれた状態にある。)、包装シート21の上面に載置する。この状態では、図12に示されるように、包装シート21の両側縁部分は、ヒートシール代として数mm〜数十mmが確保されている。そして、長手方向に複数回折り畳むようにする。図示例は、A、B、Cの順で四つ折りに折り畳んでいる。その後、図13に示されるように、両側縁の開口部21b、21bをヒートシールにより封止し、タグテープ22によりシート端縁を仮止めする。本生理用ナプキン1の場合は、中高部6を折り畳むことができ、個装状態で薄くできるため、持ち運びし易いものとなる。
【0048】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、中高部6を3つの中空セル6A〜6Cによって構成したが、中空セル数は任意であり、2つ、或いは4以上とすることも可能である。好ましいのは、3〜5個の中空セル数である。
【符号の説明】
【0049】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…中高部、6A〜6C…中空セル、6a・6b…傾斜面、7…サイド不織布、8…基端側となる折返し部、9…先端側となる折返し部、10…シート材料、11…本体ズレ止め粘着剤層、12…ウイングズレ止め粘着剤層、13…ヒップズレ止め粘着剤層、14・15…接着剤、21…包装シート、BS…立体ギャザー、S…個装シート、W…ウイング状フラップ、W…ヒップホールド用フラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと裏面シートとの間に、吸収体が介在されるとともに、体液排出部位であって表面側の幅方向中央部に中高部を有する吸収性物品であって、
前記中高部は、シート材料を交互に山折りと谷折りとを繰り返しながら多重に折り返して蛇腹状とし、取付け状態で基端側となる折返し部において先端部同士を互いに接合し、かつ前記基端側となる折返し部から先端側となる折返し部に向かう面同士が互いに対面する部位において前記基端側となる折返し部から前記先端側となる折返し部に向かう中間点までの区間を接合し、
前記基端側となる折返し部の接合点から両側の外側面の中間までの範囲を表面シート上に接合し、吸収性物品の展開状態で、前記基端側となる折返し部の接合点を中心として複数の中空セルが放射状に連接した断面形状となるようにしたことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記シート材料は、少なくとも吸収シートと表面材とを貼り合わせた積層シート材料とする請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記シート材料は、透液性の不織布又はスポンジシートと、表面材とを貼り合わせたシート材料とする請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中高部の前端部及び後端部は長手方向に沿う傾斜面とされ、前記表面シートの中高部配置部位にスリット状の通孔を形成し、前記中高部の上部側のみを前記スリット状の通孔を通して外部に露出させてある請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記中高部の前端部及び後端部は長手方向に沿う傾斜面とされ、前記表面シート及び吸収体の中高部配置部位にスリット状の通孔を形成し、前記中高部の上部側のみを前記スリット状の通孔を通して外部に露出させてある請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品を幅方向中央位置で長手方向に沿って表面シート同士が対面するように内折りとした状態で、包装シートの上面に載置し、長手方向に複数回に折り畳み両側縁の開口部を封止したことを特徴とする個装吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−50498(P2012−50498A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193614(P2010−193614)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】