説明

吸収性物品用の表面シート及びその製造方法

【課題】表面液流れを軽減することができ、また、通気性やクッション性に優れる、吸収性物品用の表面シート及びその効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】何れも不織布からなる第1層1及び第2層2を有し、第1層1が肌当接面を形成している吸収性物品用の表面シート10であり、第1層1の一部が肌当接面側に突出して形成された多数の肌当接凸部6と、第1層1及び第2層2それぞれの一部13,23が非肌当接面側に突出して形成された多数の導液凹部3とを有し、第1層1及び第2層2は、導液凹部3の下端部31において互いに接合されて、表面シートの平面内の一方向及びそれに交差する交差方向の両方向にそれぞれ多数の接合部4が形成されており、前記両方向の何れにおいても、第2層2より第1層1の方が、相隣接する前記接合部4,4間の長さが長くなっており、第1層1及び第2層2は、前記両方向の何れにおいても、断面が波状をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品の肌当接面に好適に用いられる表面シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の表面シートとして、着用者の肌に当接される面に凹凸を形成したものが汎用されている。凹凸を有する表面シートによれば、凹凸の存在により着用者の肌との接触面積が低減するので、べたつき感やムレの低減を図ることができる。また、表面シートの表面を液が流れる表面液流れを軽減することができる。
凹凸を有する表面シートとして、特許文献1には、2枚の不織布を部分的に熱融着させ、熱融着部以外で一方の不織布に不連続な凸部を形成した表面シートが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−174234
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の表面シートは、通気性やクッション性の点で改善の余地があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、表面液流れを軽減することができ、また、通気性やクッション性に優れる、吸収性物品用の表面シート及びその効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、何れも不織布からなる第1層及び第2層を有し、第1層が肌当接面を形成している、吸収性物品用の表面シートであって、第1層の一部が肌当接面側に突出して形成された多数の肌当接凸部と、第1層及び第2層それぞれの一部が非肌当接面側に突出して形成された多数の導液凹部とを有しており、第1層及び第2層は、前記導液凹部の下端部において互いに接合されて、表面シートの平面内の一方向及びそれに交差する交差方向の両方向にそれぞれ多数の接合部が形成されており、前記両方向のいずれにおいても、第2層より第1層の方が、相隣接する前記接合部間の長さが長くなっており、第1層及び第2層は、前記両方向の何れにおいても、断面が波状をなしている、吸収性物品用の表面シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、請求項1記載の吸収性物品用の表面シートの製造方法であって、第1層を、周面が凹凸形状となっているロールの該周面に沿うように変形させる凹凸変形工程と、変形した状態の第1層を、第2層と接合させて、接合部及び凸部を有する凹凸シートを得る接合工程と、該凹凸シートの前記接合部を、第1層側から第2層側に向かって凸部材により押し込み、導液凹部を形成する導液凹部形成工程とを具備する、吸収性物品用の表面シートの製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品用の表面シートは、表面液流れを軽減することができ、また、通気性やクッション性に優れている。
本発明の吸収性物品用の表面シートの製造方法は、そのような表面シートを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の吸収性物品用の表面シートの第1実施形態を示す平面図であり、図2は、図1のII−II線部分断面図である。
第1実施形態の表面シート10は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッドなどの吸収性物品の肌当接面に用いられる。
【0010】
表面シート10は、図1及び図2に示すように、何れも不織布からなる第1層1及び第2層2を有する。第1層1は、表面シート10における、着用者の肌側に向けられる面(肌当接面)を形成し、第2層2は、表面シート10における、吸収体側に向けられる面(非肌当接面)を形成している。
【0011】
また、表面シート10は、第1層1の一部が肌当接面側に突出して形成された多数の凸部6(肌当接凸部)を有している。肌当接凸部は、表面シート10を、吸収性物品の表面シートとして用いたときに着用者の肌に当接する凸部である。
また、表面シート10は、第1層1及び第2層2それぞれの一部13,23が非肌当接面側に突出して形成された多数の導液凹部3を有している。導液凹部3は、内部30に液を取り込み可能な貫通孔ないし止め穴を有し、内部に取り込んだ液を、表面シート10の下に配される吸収体へと移行させ得るものである。
第2層2は、図1及び図2に示すように、表面シート10の平面内の一方向(図中X方向)及びそれに直交(交差)する交差方向(図中Y方向)の何れにおいても、上方に向かって凸の断面形状を有しており、その頂部(図2において最も上方に位置する部分)の下面24の位置を基準P1として、より下方に位置する、第1層1及び第2層2それぞれの一部13,23が導液凹部3を形成している。
本実施形態において、X方向は、製造時の流れ方向(機械方向,MD)であり、Y方向は、製造時の流れ方向に直交する方向(機械方向に直交する方向,CD)である。
【0012】
導液凹部3は、X方向及びY方向の何れにおいても、隣接する導液凹部3の貫通孔30,30間に所定の間隔を開けて多数形成されている。また、表面シート10における導液凹部3は、図2に示すように、導液凹部3の下端部が略円形に開口している。
導液凹部3の高さT3は、0.2〜3.0mm、特に0.5〜2.5mmであることが好ましく、表面シート10の厚みT1に対する比(T3/T1)は、0.1〜0.9、特に0.2〜0.8であることが好ましい。尚、面シート10の厚みT1は、0.5〜3.5mm、特に1.0〜3.0mmであることが好ましい。
【0013】
表面シート10は、第1層1及び第2層2が、導液凹部3の下端部31において互いに接合されて形成された接合部4を、X方向及びY方向の両方向にそれぞれ多数有している。
より詳細には、接合部4は、X方向及びY方向の何れにおいても、隣接する接合部4,4間に所定の間隔を開けて多数形成されている。個々の接合部4は、貫通孔30の周囲に環状に形成されており、個々の接合部4において第1層1と第2層2とは熱融着している。
【0014】
そして、X方向及びY方向の何れの方向においても、第2層2より第1層1の方が、相隣接する接合部4,4間の長さが長くなっている。
相隣接する接合部4,4間の長さは、凸部6を挟んでその両側に位置する接合部4,4間の長さ(例えば、図2の4Aと4Bとの間の長さ)を、第1層1の肌当接面側の面1a又は第2層2の肌当接面側の面2aに沿って測定した長さである。
第1層1の相隣接する接合部4,4間の長さL1は、第2層2の相隣接する接合部4,4間の長さL2に対する比(L1/L2)が1.1〜4.0であることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.5であり、更に好ましくは1.5〜2.0である。
【0015】
第1層1は、図1及び図2に示すように、X方向及びY方向の何れにおいても、凸部6を形成する部分と導液凹部3を形成する部分とを交互に有し、X方向及びY方向の何れにおいても断面形状が波状をなしている。
また、第2層2も、図1及び図2に示すように、X方向及びY方向の何れにおいても、第1層1の凸部6を形成する部分の下に位置して凸をなしている部分と導液凹部3を形成する部分とを交互に有し、X方向及びY方向の何れにおいても断面形状が波状をなしている。
ここで、断面形状が波状であるとは、肌当接面側に向かって凸の断面形状を有する部分と非肌当接面側に向かって凸の断面形状を有する部分とを交互に有することを意味する。尚、非肌当接面側に向かって凸の断面形状を有する部分は、本実施形態の表面シート10のように、導液凹部3の下端部が開口し、第1層1及び第2層2が、その開口部によって分断されているものであっても良い。
【0016】
尚、本実施形態の表面シート10における凸部6及び導液凹部3は、図1に示すように、表面シート10の面と平行な一方向であるX方向に交互に且つ一列をなすように配置されており、そのような列が、前記X方向と交差するY方向に多列に形成されている。互いに隣接する列における凸部6と導液凹部3は、それぞれ、X方向にずれて配置されており、より具体的には、半ピッチずれて配置されている。
【0017】
本実施形態の表面シート10によれば、導液凹部3が平面方向に分散配置されているため、表面シート上に排出された液が表面シートの表面上を流れにくく、スポット吸収性や漏れ防止性に優れている。
また、第1層1の断面形状及び第2層2の断面形状が肌当接面側に凸状を有する波状を形成することにより、肌や吸収体との間に離間部分が生じ、平面方向や垂直方向に通気可能な空間を有するようになる。また、接合部4が、導液凹部3に形成されているため、前記波状の構造が、圧力等の外力によっても潰されにくい。特に、第2層2より第1層1の方が、相隣接する接合部4,4間の長さが長くなった構造は、二重のアーチ状構造となり、その構造が接合部によって固定されることから、形状保持効果が非常に高い。従って、通気性に優れている。
また、同様に圧力等の外力によっても接合部4及び二重のアーチ状構造によって、形状保持効果が非常に高く、構造の潰れがおこりにくく、二重構造により構造の復元性が高い。従って、クッション性にも優れている。
【0018】
更に、表面シートで最も低い(吸収体に近い)部位として導液凹部3を有することによって、液を集め易くすることができる他、凸部6において第2層2が凸形状をなすことにより、第1層1と接触する第2層2の部分を多くすることができるため、第1層1内の液を第2層2へと移行させることができる。従って、吸収体への液の移行性にも一層優れている。
【0019】
また、凸部6は、図3及び図4に示すように、表面シート10の前記交差方向(図3中Y方向)において、導液凹部30より長い形状(平面視形状)を有しており、該凸部6は、導液凹部3の側方(真横)に位置する部分における頂部の幅W1〔図4(a)参照〕が、導液凹部3の側方(真横)に位置しない部分における頂部の幅W2〔図4(b)参照〕よりも狭くなっているか、又は、導液凹部3の側方(真横)に位置する部分における頂部の高さT2〔図4(a)参照〕が、導液凹部3の側方(真横)に位置しない部分における頂部の高さT3〔図4(b)参照〕より低くなっている。頂部の高さT2,T3は、図4に示すように、各々の頂部と接合部4との間の高低差である。前記高さT2を求める際の接合部4の高さ位置は、導液凹部3の側方(真横)に位置しない部分の高さ位置を基準にする。
導液凹部3の側方に位置する部分では、導液凹部3による非肌当接面側へ突出する突出部4’と第2層2の肌当接面側への凸部が形成されているが、導液凹部3が幅方向側方に位置しない部分では、導液凹部3による非肌当接面側へ突出する突出部4’の形成がないため厚みが小さく、第2層2の肌当接面側への凸部も小さいか殆ど形成されていない。
【0020】
導液凹部3を側方に有する部分と有しない部分とでは幅方向に隣接する凸部6の頂部形状が異なることは、肌との接触が少なく肌と表面シートとの隙間に液が留まりにくくなると共に、隙間の液は頂部幅が狭いまたは頂部が低い部分に集まり易く、液が導液凹部3へ導かれ易くなる効果を奏する。また、異なる断面形状を有する凸部6が主に第1層1に形成されることから、第1層1における凸部6の形状保持性を高めることができるため、上述した二重構造、中空構造による効果をより高めることができる。
【0021】
なお、導液凹部3を側部に有する部分と有しない部分による凸部6の頂部形状は、導液凹部3の高さT3と、頂部と導液凹部3との平面視距離によって、頂部を狭くしない形状や頂部を低くする形状等所望の形状とすることができる。
【0022】
また、本実施形態の表面シート10においては、第1層1及び第2層2における導液凹部3を構成する部分13,23は、それぞれ、導液凹部3の下端部31に向かって繊維密度が漸増している。これにより、吸収体への液の移行性に一層優れている。
第1層1及び第2層2それぞれの繊維密度が漸増しているか否かは、上方に向かって凸の断面形状を有する第2層2の該凸の頂部の下面24の位置P1よりやや下の位置における繊維密度と、導液凹部3の下端部31における繊維密度とを比較して判断する。
具体的な方法としては、下記(1)又は下記(2)の方法を採用できる。
(1)表面シートの坪量が略均一(一様)である場合(あるいは略均一と判断できる場合)、切断面の厚みを計測する。
(2)表面シートの坪量が不均一である場合(あるいは不均一と判断した場合)、表面シートの断面における繊維間の平均距離を計測する。
【0023】
本実施形態の表面シート10においては、導液凹部3の下端部31に接合部4が形成されている。このように、導液凹部3が形成され、シートに引き伸ばし力が加わっている場合においては、上記(2)の方法が好ましいが、導液凹部3の形状によっては第1層及び/又は第2層が全体的に引伸ばされている場合もあるため、2通りの算出方法について後で説明する。
【0024】
また、本実施形態の表面シート10においては、表面シート10の凸部6を有する部分における、第1層1と第2層2との間に内部空洞の中空部5が形成されている。表面シート10に、中空部5が形成されていることによって、2層重なった構造では空気の通過が起こりにくくなるが、1層ごとに通過できるようになるため、通気性が高められる。さらに、着用者の体圧が表面シート10に加わった場合、先ず第1層1による凸形状が変形し、次いで第2層2による凸形状が変形するという2段の変形過程を経ることから、肌触りやクッション性に一層優れている。
更に、本実施形態の表面シート10は、第1層1が、接合部4より上方に突出して凸部6が形成されている。
【0025】
凸部6の頂部における第1層1と第2層2との間の高さT6は、0.1〜3.0mm、特に0.2〜1.5mmであることが好ましく、表面シート10の厚みT1に対する比(T6/T1)は、0.1〜0.8、特に0.15〜0.6であることが好ましい。
【0026】
繊維密度は、繊維間の距離が小さいほど毛管力が大きくなる現象を捉えるため計測するものであり、この状態を比較するために、前述した(1)の方法では、厚みの違いによって、(2)の方法では直接繊維間の距離を計測する。
まず、(1)の方法について説明する。
接合部4,4を通る切断部分は、フェザー安全剃刀(株)の品番FAS−10等やその他の手段によって、サンプルの構造が破壊されないよう断面を作成する。断面の計測は、JEOL製電子顕微鏡JCM−5100を使用し、スパッター時間30秒(Pt)、加速電圧10KVの条件でおこなうが、計測部両端のエンボス部4の少なくとも一方が撮影されるか、複数枚の画像を組み合わせて前記エンボス部4がわかる状況とし、撮影画像より各計測部の厚みを計測する。(画像の計測は、印刷あるいはPC画面上のどちらを使用してもよい)(1)の方法においては、エンボス部4で囲まれた領域の中央部の厚みをエンボス部4,4間の厚みと各々の層の坪量より密度を算出する。
【0027】
次に、(2)の方法について説明する。
(1)と同様に断面を計測するが、(1)の測定に加えて拡大倍率500〜1000倍の断面を併せて撮影する。拡大撮影画像各々の対象測定部位において幅方向(平面方向)に繊維本数が3〜7本の領域において、画像解析装置(NEXUS製NEWQUBE ver.4.20)を使用して、繊維の最近接重心間距離を求める。上記計測においては、厚み方向に略全体的に計測し、且つ最近接重心間距離の重複が生じないようにする。また、断面は少なくとも3箇所、好ましくは5箇所、より好ましくは10箇所の計測し、その平均値を用いる。(2)の方法においては、最近接重心間距離を用いる。
【0028】
次に、上述した表面シート10の好ましい製造方法を、図5〜図8を参照して説明する。
先ず、図5に示すように、ロール状の原反1’から第1層1を繰り出し、また、それとは別にロール状の原反2’から第2層2を繰り出す。そして、繰り出した第1層1を、周面が凹凸形状となっている第1のロール11と第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2のロール12との噛み合わせ部に噛み込ませ、第1層1を、第1のロール11の周面の凹凸形状に沿うように変形させる。
【0029】
図6には、第1のロール11の要部拡大図が示されている。第1のロール11は、所定の歯幅を有する平歯車11a,11b,・・を複数枚組み合わせてロール状に形成したものである。各歯車の歯幅は、表面シート10の凸部5におけるY方向の寸法を決定する。隣り合う歯車は、その歯のピッチが半ピッチずつずれるように組み合わされている。その結果、第1のロール11は、その周面が凹凸形状となっている。
【0030】
第1のロール11における各歯車の歯溝部には吸引孔11cが形成されている。この歯溝部は、第1のロール11の周面における凹凸形状のうちの凹部に相当するものである。吸引孔11cは、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1のロールと第2のロールとの噛み合い部から第2不織布2との合流部までの間で吸引が行われる様に制御されている。従って、第1のロール11と第2のロール12との噛み合いによって凹凸賦形された第1層1は、吸引孔11cによる吸引力によって第1のロール周面に密着し、その凹凸賦形された状態が保持される。この場合、図6に示すように、隣り合う歯車間に所定の空隙Gを設けておくと、第1層1に無理な伸長力や、ロールの凹凸噛み合いによる切断効果を加えることなく第1層1を第1のロール11の周面に密着させられる。
【0031】
そして、図5に示すように、第1層1を第1のロール11の周面に引き続き吸引保持した状態下に、第2層2を重ね合わせ、その重ね合わせたものを第1のロール11とアンビルロール14との間で挟圧する。このとき、第1のロール11とアンビルロール14の両方又はアンビルロール14のみを所定温度に加熱しておく。これによって、第1のロール11における凸部上、つまり各歯車の歯の上に位置する、第1層1及び第2層2が熱融着によって接合される。
【0032】
これにより、図7に示すような、略平坦な接合部4A及び凸部6を有する凹凸シート10Aが得られる。凹凸シート10Aにおける凸部6は、接合部4A以外の部分における第1層1が第2層2と離れる方向に突出して形成されている。また、凹凸シート10Aにおける接合部4A及び凸部6は、図7に示すように、凹凸シート10Aの流れ方向(X方向)に交互に且つ一列をなすように配置されており、そのような列が、前記X方向と直交(交差)するY方向に多列に形成されている。Y方向に互いに隣接する列における接合部4Aと凸部6は、それぞれ、X方向にずれて配置されており、より具体的には、半ピッチずれて配置されている。凹凸シート10Aを得るまでの工程は、特開2004−174234号公報に記載の表面シートの製造方法と同様に行うことができる。
【0033】
尚、図7に示すように、凹部シート10Aの凸部6を有する部分の厚みH(図7参照)は0.5mm以上、特に1.0〜3.5mmであることが好ましく、凹部シート10Aの接合部4Aにおける厚みh(図7参照)は0.8mm以下、特に0.02〜0.4mm以下であることが好ましく、これらの厚みの比(H/h)は少なくとも2以上、特に4以上であることが好ましい。また、凹凸シート10Aの100cm2当たりの凸部6の個数は200〜2000個、特に500〜1500個であることが好ましい。
【0034】
凸部6のX方向の底部寸法A(図7参照)は0.5〜5.0mm、特に1.0〜4.0mmであることが好ましい。凸部6のY方向の底部寸法B(図7参照)は1.0〜10mm、特に2.0〜7.0mmであることが好ましい。接合部4は、X方向の寸法C(図7参照)が0.1〜2mm、特に0.2〜1.0mmであることが好ましく、Y方向の寸法D(図7参照)が0.2〜5.0mm、特に0.5〜3.0mmであることが好ましい。
【0035】
得られた凹凸シート10Aは、更に搬送して、図5及び図8に示すように、周面に多数の穿孔ピン(凸部材)16が突設されているピンロール15と、周面に穿孔ピン16が挿入される凹部18が形成されている凹ロール17との間に導入し、ピンロール15の穿孔ピン16により、凹凸シート10Aの接合部4Aを、第1層1側から第2層2側に向かって押し込む。本実施形態で用いたピンロール15の周面には、ロール15の周方向に多数の穿孔ピン16が一定間隔で一列をなすように形成されており、そのような穿孔ピン16の列が、ロール軸長方向に多列に形成されている。また、隣接する列における穿孔ピン16同士は、半ピッチ分周方向にずれた位置に形成されている。
また、凹ロール17は、ピンロール15と同期して回転するようになされており、その周面における各穿孔ピン16に対応する位置は所定形状の凹部18となっている。
【0036】
また、穿孔ピン16は加熱しておき、ピンロール15によって加えられる、物理的な力と熱により、凹凸シート10Aが、表面シート10のような凹凸形状に賦形される。
本実施形態の方法によれば、このようにして、上述した構成の表面シート10が得られる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態の表面シート10’及びその製造方法について、図9及び図10を参照して説明する。
第2実施形態の表面シート10’は、導液凹部3の下端部31が開口していない点を除いて、上述した表面シート10と同様の構成を有する。従って、第2実施形態の表面シート10’については、上述した表面シート10との相違点について説明し、同様の点については、同一の符号を付して説明を省略する。また、特に説明しない点は、好ましい要件や製造方法を等を含めて、表面シート10についての説明が適宜適用される。
【0038】
第2実施形態の表面シート10’においては、導液凹部3の下端部31において、第1層1及び第2層2が互いに積層された状態で熱融着されている。表面シート10’における接合部4は、導液凹部3の底部からその近傍の側壁部に亘って形成されており、接合部4における第1層1及び第2層2も凹状の立体形状を有している。
第2実施形態の表面シート10’によれば、第1実施形態の表面シート10と同様の作用効果が奏される。但し、導液凹部3の下端部31が開口していないため、吸収体の液を見え難くすることが出来る。。
【0039】
第2実施形態の表面シート10’は、上述した表面シート10の製造方法と同様にして製造した凹凸シート10Aを、図10に示すように、周面に多数の押圧ピン16’が突設されているピンロール15と、周面に押圧ピン16’が挿入される凹部18が形成されている凹ロール17との間に導入し、ピンロール15の押圧ピン16’により、凹凸シート10Aの接合部4Aを、凹部18内に押し込むことによって得られる。
【0040】
ピンロール15の周面には、ロール15の周方向に多数の押圧ピン16’が一定間隔で一列をなすように形成されており、そのよう押圧ピン16’の列が、ロール軸長方向に多列に形成されている。また、隣接する列における押圧ピン16’同士は、半ピッチ分周方向にずれた位置に形成されている。また、凹ロール17は、ピンロール15と同期して回転するようになされており、その周面における各押圧ピン16’に対応する位置は所定形状の凹部18となっている。また、ピンロール15及び/又は凹ロール17を加熱しておき、ピンロール15により加えられる物理的な力と、両ロール又は一方のロールにより加えられる熱により、凹凸シート10Aが、表面シート10’のような凹凸形状に賦形される。尚、表面シート10’は、X方向及びY方向の何れの方向においても、図9と同様の断面形状を有している。
【0041】
尚、第1層1及び第2層2を構成する不織布としては、吸収性物品の形成材料として公知の各種の不織布を特に制限なく用いることができる。例えば、カード法又はエアレイド法により得た繊維ウエブにエアースルー法で繊維同士の熱融着点を形成したエアースルー不織布、カード法により得た繊維ウエブにヒートロール法で繊維同士の熱融着点を形成したヒートロール不織布、ヒートエンボス不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド−メルトブローン複合不織布(SM,SMS,SMMS等の略号で示される場合もある)、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0042】
本発明の表面シートは、吸収性物品の表面シートとして用いられる。吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0043】
以上、本発明の表面シート及びその製造方法の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は、上記の各実施形態に制限されず、適宜変更可能である。
例えば、表面シートの接合部4の平面視形状は、略矩形状の他、円形状、楕円形状、長円状等他の形状とすることもできる。また、一方向に交差する方向は、一方向に直交する方向に代えて、該一方向に60や45度等の90度以外の角度で交差する方向であっても良い。
また、導液凹部3や凸部6が、隣接する列においてX方向にずれる程度は、1/2ピッチに代えて、1/3ピッチ、1/4ピッチ等、任意の大きさとすることができる。
【0044】
また、表面シート10,10’は、凹凸シート10Aの総ての接合部4Aが同様の態様で押し込まれたものでなくても良く、例えば、一部の接合部4Aについては、該接合部4Aの一部と共に凸部6の一部がピン16,16’等によって押し込まれ、導液凹部3の貫通孔又は止め穴の周方向の一部のみに接合部4が形成されていても良い。また、ピン16,16’等によって押し込まれず、平坦な状態を維持した接合部4Aがある程度の割合で残っていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品用の表面シートの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す表面シートのII−II線部分断面図である。
【図3】図3は、図1に示す表面シートの拡大模式平面図である。
【図4】図4は、(a)図3のIII−III線模式断面図及び(b)図3のIV−IV線模式断面図である。
【図5】図5は、図1に示す表面シートの製造方法の概略を示す模式図である。
【図6】図6は、図5における第1のロールの要部拡大図である。
【図7】図7は、図5における凹凸シートの一部分を示す拡大斜視図である。
【図8】図8は、図1の表面シートの製造中に、ピンロール及び凹ロールで凹凸シートの接合部を押し込む様子を示す断面図(両ロールの軸長方向に沿う断面図)である。
【図9】図9は、本発明の吸収性物品用の表面シートの第2実施形態を示す図2相当図である。
【図10】図10は、図9の表面シートの製造中に、ピンロール及び凹ロールで凹凸シートの接合部を押し込む様子を示す断面図(両ロールの軸長方向に沿う断面図)である。
【符号の説明】
【0046】
10,10’ 表面シート
1 第1層
2 第2層
3 導液凹部
4 接合部
5 中空部
6 凸部
10A 凹凸シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
何れも不織布からなる第1層及び第2層を有し、第1層が肌当接面を形成している、吸収性物品用の表面シートであって、
第1層の一部が肌当接面側に突出して形成された多数の肌当接凸部と、第1層及び第2層それぞれの一部が非肌当接面側に突出して形成された多数の導液凹部とを有しており、
第1層及び第2層は、前記導液凹部の下端部において互いに接合されて、表面シートの平面内の一方向及びそれに交差する交差方向の両方向にそれぞれ多数の接合部が形成されており、前記両方向のいずれにおいても、第2層より第1層の方が、相隣接する前記接合部間の長さが長くなっており、
第1層及び第2層は、前記両方向の何れにおいても、断面が波状をなしている、吸収性物品用の表面シート。
【請求項2】
第1層及び第2層における前記導液凹部を構成する部分は、それぞれ、該導液凹部の下端部に向かって繊維密度が漸増している、請求項1記載の吸収性物品用の表面シート。
【請求項3】
前記肌当接凸部における第1層と第2層との間に内部空洞の中空部が形成されている、請求項1又は2記載の吸収性物品用の表面シート。
【請求項4】
前記肌当接凸部は、前記一方向又は前記交差方向において、前記導液凹部より長い形状を有しており、該肌当接凸部は、該導液凹部の側方に位置する部分における頂部の幅が、該導液凹部の側方に位置しない部分における頂部の幅より狭くなっている、請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品用の表面シート。
【請求項5】
請求項1記載の吸収性物品用の表面シートの製造方法であって、
第1層を、周面が凹凸形状となっているロールの該周面に沿うように変形させる凹凸変形工程と、変形した状態の第1層を、第2層と接合させて、接合部及び凸部を有する凹凸シートを得る接合工程と、該凹凸シートの前記接合部を、第1層側から第2層側に向かって凸部材により押し込み、導液凹部を形成する導液凹部形成工程とを具備する、吸収性物品用の表面シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−89965(P2009−89965A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264897(P2007−264897)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】