説明

吸収性物品

【課題】排泄物と着用者の肌とを隔離するバリアシートを備えるとともに、バリアシートに形成された連通部の開口面積が狭くなるのを防止することを課題とする。
【解決手段】吸収性物品は、シャーシの身体側にあって股下域においてシャーシから離間可能に形成されたバリアシート3と、バリアシート3の身体側であって前後方向Zに延びる一対の防漏カフ4とを含んでいる。バリアシート3と防漏カフ4とは接合部位48を介して接合されている。接合部位48は、シャーシから離間可能な防漏カフ4の自由縁部に位置するとともにバリアシート弾性部材39に重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸収性物品に関し、さらに詳しくは使い捨てのおむつ、排便トレーニングパンツ、失禁ブリーフ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排泄物と着用者の肌とが接触しないように、スキンコンタクトシートを備えた使い捨ておむつとして、例えば特開2002−11044号公報(特許文献1)が公知である。この特許文献1によれば、おむつはトップシートとバックシートと、これらトップシートとバックシートの間に配置される吸収体と、トップシートの着用者肌側に配置されたスキンコンタクトシートとを備え、スキンコンタクトシートには排泄物をトップシート側に通過させる連通開口と、この連通開口を囲むように伸長状態で取り付けられる弾性部材とを備えている。
【特許文献1】特開2002−11044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記おむつは、前後方向および幅方向と、前後ウエスト域およびこれら前後ウエスト域間の股下域とを備えている。このおむつの着用状態においては、股下域が着用者の両脚付け根で挟まれることによって幅方向に湾曲する。股下域が幅方向に湾曲すると、スキンコンタクトシートも幅方向内側に押し付けられ、これが撓んで連通開口の開口面積が狭くなる傾向にある。
【0004】
また連通開口は、曲線を画いているので、これを囲むように取り付けられた弾性部材も曲線を画き、伸長状態で取り付けられたこの弾性部材の収縮時には、曲線が直線となるように、すなわち、開口面積を狭くするように移動する。したがって、開口面積が狭くなる傾向が顕著に現れる。
連通開口の開口面積が狭くなれば、着用者の外性器が連通開口の開口縁に接触しやすくなり、接触の刺激により肌トラブルを引き起こす可能性もある。
【0005】
本発明では、排泄物と着用者の肌とを隔離するバリアシートを備えるとともに、バリアシートに形成された連通部の開口面積が狭くなるのを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前後方向および幅方向と、身体側および着衣側と、前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置する股下域と、前記股下域に配置される吸液構造体とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記股下域において前記シャーシから離間可能に形成されたバリアシートと、前記バリアシートの身体側であって前記幅方向に対向し前記前後方向に延びる一対の防漏カフとを含み、前記バリアシートは、前記前後方向に延びるとともに伸長状態で取り付けられるバリアシート弾性部材を含み、前記吸液構造体が前記股下域から前記前後ウエスト域に湾曲して、前記バリアシートと前記吸液構造体との間に空隙を形成する吸収性物品の改良に関わる。
【0007】
前記吸収性物品において、前記バリアシートは、前記前後方向に延びるとともに前記幅方向に対向離間する両側部分と、前記両側部分の間をつなぐ中間部分と、前記空隙の内部に向かって排泄物を通過させることが可能であって前記両側部分および前記中間部分によって画成される連通部とを含み、前記防漏カフは、前記シャーシに接合される固定縁部と、前記シャーシに接合されることなく前記シャーシから離間可能な自由縁部と、前記自由縁部に伸長状態で取り付けられ前記防漏カフを前記シャーシから離間させるカフ弾性部材とを含み、前記バリアシートと前記防漏カフとは接合部位を介して接合され、前記接合部位は、前記自由縁部に位置するとともに前記バリアシート弾性部材に重なること特徴とする。
【0008】
本発明は、前後方向および幅方向と、身体側および着衣側と、前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置する股下域と、前記股下域に配置される吸液構造体とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記股下域において前記シャーシから離間可能に形成されたバリアシートと、前記バリアシートの身体側であって前記幅方向に対向し前記前後方向に延びる一対の防漏カフとを含む吸収性物品の改良に関わる。
【0009】
前記吸収性物品において、前記バリアシートは、前記前後方向に延びるとともに前記幅方向に対向離間する両側部分と、前記両側部分の間をつなぐ中間部分と、前記両側部分に伸長状態で取り付けられ前記前後方向に延びるバリアシート弾性部材と、前記幅方向に延びるとともに前記前後方向に対向する前後端縁とを含み、前記前後端縁が前記シャーシの身体側に接合され、前記吸液構造体が前記股下域から前記前後ウエスト域に湾曲することによって、前記バリアシートと前記吸液構造体との間に空隙を形成し、前記バリアシートは、前記空隙の内部に向かって排泄物を通過させることが可能であって前記両側部分および前記中間部分によって画成される連通部を形成し、前記防漏カフは、前記シャーシに接合される固定縁部と、前記シャーシに接合されることなく前記シャーシから離間可能な自由縁部と、前記自由縁部に伸長状態で取り付けられるカフ弾性部材とを含み、前記自由縁部は前記シャーシの身体側に対して起立、倒伏可能であって、倒伏したときには前記バリアシートの両側部分それぞれに重なるように形成され、
前記バリアシートと前記防漏カフとは、前記バリアシート弾性部材を含む部位であって、前記自由縁部において接合され、前記防漏カフが起立したときには、前記両側部分が前記幅方向外側へ変位することにより、前記連通部が前記幅方向に狭くなるのを抑制することを特徴とする。
【0010】
好ましい実施態様のひとつとして、前記連通部は、前記中間部分を介して前記前後方向の前側に位置する前方連通部と、前記前後方向の後側に位置する後方連通部とを含み、前記接合部位は、前記前方連通部の前記幅方向の外側に位置する前記両側部分に形成される。
【0011】
好ましい他の実施形態のひとつとして、前記前方連通部は、前記前後方向の寸法を二等分する連通中心線を含み、前記接合部位は、前記中心線よりも前記中間部分側に位置する。
【0012】
好ましい他の実施形態のひとつとして、前記バリアシートは、前記前後方向に対向し前記幅方向に延びる前後端縁を含み、前記前方連通部は、前記両側部分に位置する両内側縁と、前記両内側縁をつなぐとともに前記中間部分に位置し湾曲した閉鎖縁とを含み、前記バリアシート弾性部材は、前記閉鎖縁の湾曲に沿った曲線部を含み、前記接合部位は、前記曲線部に重なって形成される。
【0013】
好ましい他の実施形態のひとつとして、前記防漏カフは、前記自由縁部の前記前後方向に延びるとともに伸長状態で取り付けられる補助弾性部材を備える。
【0014】
好ましい他の実施形態のひとつとして、前記補助弾性部材は、少なくともその一部が前記バリアシート弾性部材に重なって取り付けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明において、バリアシートと防漏カフとを接合し、接合部位はバリアシートの両側部分に位置するバリアシート弾性部材に重なるようにしている。したがって、バリアシートの両側部分は、防漏カフがシャーシから離間するのに伴って引っ張られるから連通開口を狭くすることがない。また、接合部位はバリアシート弾性部材に重なっているので、バリアシート弾性部材に対して直接引張力を作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
吸収性物品として使い捨ておむつを用い、本発明の一例を説明する。
<第1の実施形態>
【0017】
図1〜6は、本発明の第1の実施形態を示している。図1はおむつ1の着用状態を示した図であり、説明のためその一部を破断している。図示したように、おむつ1は吸液性のシャーシ2とバリアシート3と防漏カフ4とを含む。シャーシ2はパンツ型に形成され、幅方向X、上下方向Yおよび前後方向Zと、身体側内面5および着衣側外面6と、前ウエスト域7、後ウエスト域8および前記前後ウエスト域7,8間に位置する股下域9を有している。シャーシ2は、内側シート11と外側シート12と、これら内外側シート11,12の間に介在する不透液性の防漏シート13とによって形成されている。
【0018】
前後ウエスト域7,8においては、互いのウエスト側縁部14,15の対向面が重なり合い、間欠的に並ぶ複数の接合部16において互いに接合されてシーム部が形成されている。
接合部16でウエスト側縁部14,15が接合されることにより、前後ウエスト域7,8で囲まれた領域にウエスト開口18が形成されるとともに、接合部16と股下域9とで囲まれた一対の脚開口19が形成されている。ウエスト開口18の周縁部に沿って複数条のウエスト弾性部材20が延び、脚開口19の周縁部に沿って複数条の脚弾性部材21が延びている。それら弾性部材20,21は、内側シート11と外側シート12との間にあり、これらシート11,12の少なくとも一方に接着剤(図示せず)を介して伸長状態で接合されている。
【0019】
図2は図1のII−II線断面図であり、説明のためその一部を破断している。図2に示すように、シャーシ2の身体側内面5に吸液構造体10が配置され、吸液構造体10よりもさらに身体側にバリアシート3が配置され、バリアシート3のさらに身体側に防漏カフ4が配置されている。吸液構造体10は前後ウエスト域7,8の間において前後方向Zに延設されているが、これは少なくとも股下域9に位置していればよい。この吸液構造体10は、内側シート11の内側に沿って配置された吸液性パネル23を含む。
【0020】
吸液性パネル23は、ティッシュペーパ等の吸液拡散シート24で包まれる吸液性芯材25と、吸液拡散シート24をさらに覆う内面シート26とで形成されている。吸液性パネル23の着衣側は外側シート12の内側に配置された防漏シート13で被覆され、芯材25に吸収された体液がおむつ1から漏れるのを防止する。防漏シート13は、吸液性パネル23の底面に直接接合されることもある。
【0021】
バリアシート3の前端縁27と後端縁28は、その近傍が接着または溶着により内面シート26に接合されている。前端縁27と後端縁28とは、それぞれ前ウエスト域7および後ウエスト域8に位置している。図示したようなパンツ型の状態においては、股下域9が湾曲するとともに、後に説明するバリアシート弾性部材の収縮によって、バリアシート3は内面シート26から上下方向Yに離間している。バリアシート3の前後端縁27,28は内面シート26に接合されているので、バリアシート3全体はハンモックを吊り下げたような形状を有する。このような形状により、バリアシート3と吸液性パネル23との間に空隙29が形成される。防漏カフ4は後に説明するカフ弾性部材によって起立するようにしてバリアシート3から離間して、前後方向Zに延びる壁を形成している。
【0022】
図3は図1の接合部16における前後ウエスト域7,8の接合をはずし、おむつ1を前後方向Zと幅方向Xとに展開して得られるおむつ1の平面図である。おむつ1は、平面状になるように各弾性部材の伸縮力を作用させない状態を示している。おむつ1は、幅方向Xの寸法を二等分する縦中心線P−Pと、前後方向Yの寸法を二等分する横中心線Q−Qとを有し、縦中心線P−Pに関して左右対称である。
【0023】
シャーシ2はほぼ砂時計型に形成され、吸液性パネル23は矩形に形成され、シャーシ2の内側シート11に積層されている。
バリアシート3は、幅方向Xに対向離間する両側部分30,31と両側部分30,31の間をつなぐ中間部分32とを有し、中間部分32は股下域9に位置している。両側部分30,31および中間部分32によって前後方連通部33,34を形成している。前方連通部33は、中間部分32から前ウエスト域7に向かって延びるほぼU字形であり、後方連通部34は、中間部分32から後ウエスト域8に向かって延びるほぼU字形である。前方連通部33は、両側部分30,31に位置する両内側縁35と、これら両内側縁35をつなぐ湾曲した閉鎖縁36とによって画成される。後方連通部34は両側部分30,31に位置する両内側縁37と、これら両内側縁37をつなぐ湾曲した閉鎖縁38とによって画成される。前方連通部33と後方連通部34とはその閉鎖縁36,38を形成する中間部分32によって画成されている。
【0024】
防漏カフ4は、縦中心線P−Pに対称に前後方向Zに延びる一対のシートから形成され、このシートは不織布やプラスチックフィルム等であり好ましくは不透液性である。各防漏カフ4は、バリアシート3の両側部分30,31の身体側に重なるようにして形成されている。防漏カフ4の幅方向Xの寸法は、バリアシート3の両側部分30,31と同程度であるか、あるいはそれよりも大きくなるようにしている。
【0025】
このおむつ1を着用するときには、前方連通部33に着用者の外性器が臨み、後方連通部34に肛門が臨み、中間部32に外性器と肛門との間の肌が当接するように着用状態を整える。このとき、前方連通部33の閉鎖縁36が横中心線Q−Qよりも前方に位置し、後方連通部34の閉鎖縁38が横中心線Q−Qの上、または横中心線Q−Qの付近に位置していることが好ましい。このように着用すると、吸液性パネル23が前後方向Zに湾曲するとともに、バリアシート3がバリアシート弾性部材39の収縮により浮き上がって着用者の肌に接触するとともに、バリアシート3と吸液性パネル23との間に空隙29を形成する(図2参照)。そして前後方連通部33,34を介して排泄物を空隙29に通過させ、排泄物と着用者の肌とが直接接触しないようにしている。
【0026】
図4は、吸液性パネル23、バリアシート3、防漏カフ4の詳細を示し説明のためその一部を破断した図である。バリアシート3は、両側部分30,31が吸液性パネル23側に折り返されて二枚重ねになっている。この二枚重ねになった両側部分30,31の間にバリアシート弾性部材39を図示しない接着剤によって接合している。バリアシート弾性部材39は、両側部分30,31の前後方向Zに亘って伸長状態で取り付けられている。
【0027】
前後方連通部33,34は中間部分32から前後ウエスト域7,8に向かって延びるほぼU字形であり、内側縁35,37ではほぼ直線を有し、閉鎖縁36,38では曲線を画いている。バリアシート弾性部材39は、前後方連通部33,34に沿って配設される。したがって、バリアシート弾性部材39は、内側縁35,37の近傍においては直線部39aを有し、閉鎖縁36,38の近傍においては幅方向Xの内側に向かって曲線部39bを有している。さらに、前後方連通部33,34をつなぐ中間部分32においては、縦中心線P−Pに向かって凸状部39cを有している。
【0028】
バリアシート3は、少なくとも前後端縁27,28においてその両側部分30,31で折り返された部分を吸液性パネル23の内面シート26に接着剤40を介して接合している。本実施形態のように、両側部分30,31が折り返されている場合には、両側部分30,31の前後方向Zに亘って内面シート26に接合されていてもよい。この場合には、折り返された部分のシートが伸展してバリアシート3全体が上方へ移動可能となるからである。
【0029】
防漏カフ4はZ字を画くように3枚重に折り畳まれたシートから形成されている。具体的には、吸液性パネル23とシャーシ2との間に位置する第1面41と、第1面41からバリアシート3の着用者側に折り返され両側部分30または31に重なる第2面42と、第2面42の着用者側に折り重ねられた第3面43とを有している。すなわち、第1、第2、第3面41,42,43の順に着用者側へと折り重なり、第1面41と第2面42とは、吸液性パネル23を介して重なり、第2面42と第3面43とは直接重なっている。第3面43に位置する側縁44はカフ弾性部材45を取り付け可能とするために折り返されている。カフ弾性部材45は、折り返された側縁44の間に伸長状態で接合され、前後方向Zに亘って取り付けられている。
【0030】
防漏カフ4は、前後端部分46,47において、第1面41を吸液性パネル23に接合し、第2面42をバリアシート3に接合し、第3面43を第2面42に接合している。この防漏カフ4にカフ弾性部材45の収縮力が作用すると、第2面42および第3面43を伸展させてバリアシート3から離間して、図2に示すような壁を形成する。シャーシ2の内側シート11に接合される部分を固定縁部とし、第2面42および第3面43においてバリアシート3から離間する部分、すなわち接合されていない部分を自由縁部としている。
【0031】
このようなバリアシート3と防漏カフ4とは、接合部位48において互いに接合される。接合部位48は、幅方向Xにおいて固定縁部と自由縁部との間に形成するとともに、バリアシート弾性部材39の曲線部39bに重なる位置に形成している。より具体的には、接合部位48は接着剤49によって形成され、接着剤49はバリアシート3の前端縁27から約150mmの位置まで帯状に塗布されている。したがって、接着剤49は曲線部39bおよび直線部39aにおいて連続的に塗布されている。接着剤49の幅方向Xの寸法は約5mmとしている。
【0032】
接合部位48は、前方連通部33の前後方向Zの寸法を二等分する連通中心線q−qよりも中間部分32側に位置することが好ましい。本実施形態では、前方連通部33の前端縁27から閉鎖縁36までの前後方向Zの寸法Aは約175mmとし、前端縁27から接合部位48の中間部分32側の端部までの前後方向Zの寸法Bは約150mmとしている。したがって、連通中心線q−qよりも中間部分32側に位置させる場合には、寸法Bを約88mm以上にするのが好ましい。
バリアシート弾性部材39の曲線部39bは、前方連通部33の閉鎖縁36に沿って曲線を画いているが、その曲線の曲率半径は一定ではなく、中間部分32側では緩やかにカーブし、内側縁35に向かうにしたがってきついカーブになっている。前記接合部位48は最もきつくカーブしている部分に形成するのが望ましい。
【0033】
上記のような寸法関係の場合には、寸法Bを約88mm以上としているが、この寸法Bは少なくとも約50mmとするのが望ましい。50mm以下の場合には、防漏カフ4によってバリアシート3を引き上げる効果が小さいからである。すなわち、防漏カフ4は、その前端部分46において第1,2,3面41,42,43が互いに接合されているので、前端部分46ではバリアシート3から離間せず、その近傍でも離間距離は短くなる。離間距離が短くなれば、防漏カフ4によってバリアシート3を引き上げる距離も短くなり、前方連通部33の開口面積減少を防止する効果が低くなる。
【0034】
このようなおむつを着用したときの、バリアシート3、防漏カフ4および吸液性パネル23を示したのが図5である。図6は図4のVI−VI線端面図であり、二点鎖線はおむつを着用した状態を示している。図6ではバリアシート3の側部分31側について説明しているが、側部分30においても同様である。
【0035】
図5,6に示したように、おむつの着用状態においては、バリアシート弾性部材39およびカフ弾性部材45が収縮する。バリアシート弾性部材39の収縮により、吸液性パネル23が湾曲するとともに、バリアシート3が吸液性パネル23から浮き上がるように離間する。カフ弾性部材45の収縮により、防漏カフ4の第2面42および第3面43の自由縁部が吸液性パネル23から離間する方向に伸展し、倒伏状態から起立する。防漏カフ4の起立に伴い、第2面42に位置する接合部位48で接合された側部分31が吸液性パネル23から離間する方向でかつ幅方向Xの外側であって矢印Cで示す方向に引き上げられる。このように側部分31が引き上げられることで前方連通部33の開口を広げるように引っ張られる。したがって、着用者の両脚に挟まれて、前方連通部33が狭くなるような力が作用したとしても、これが狭くなるのを防止することができる。
【0036】
接合部位48をバリアシート弾性部材39と重なる位置に形成したことによって、防漏カフ4による引張力を効率的にバリアシート3に作用させることができる。すなわち、バリアシート弾性部材39が取り付けられた部分はその収縮力によりバリアシート3の弛みがない状態になっているが、バリアシート弾性部材39が取り付けられていない部分はシートに弛みが生じている。弛んだシートを引っ張ってもバリアシート3全体が引き上げられる量は少なく、効率的にカフ弾性部材45による引張力を作用させることができないからである。
【0037】
接合部位48は、バリアシート弾性部材39の曲線部39bに重なるように形成しているので、より効果的に前方連通部33の開口を狭くするのを防止するという効果を発揮することができる。すなわち、曲線部39bではその弾性部材が直線に戻るように収縮しようとする。直線に戻ろうとすると、バリアシート弾性部材39が前方連通部33の閉鎖縁36をその内側に押して開口が狭くなるように作用する。しかし、この曲線部39bに重なる位置に接合部位48を形成することによって、開口を狭くするバリアシート弾性部材39を引っ張ってその動きを規制することができる。
接合部位48は、曲線部39bにおいてカーブが最もきつくなる部分に形成しているが、このカーブが最もきつくなる部分が、上記の開口を狭くする傾向が大きいからである。
ただし、接合部位48は曲線部39b以外の直線部39aに形成するようにしてもよく、バリアシート弾性部材39の形状等によって適宜変更できるものである。
【0038】
接合部位48を介してバリアシート3の両側部分30,31を幅方向Xの外側に引っ張ることができるので、バリアシート3は両側から引っ張られて緊張状態を維持することができる。緊張状態が維持されるので、図2の点線で示したようにバリアシート3の中間部分32が吸液性パネル23側に垂れ下がってしまうのを防止できる。バリアシート3の緊張状態が維持されれば、バリアシート3を着用者の肌に確実に接触させることができる。バリアシート3の緊張状態によって、着用者の動きに追従してバリアシート3が肌に接触することができ、常にバリアシート3を着用者の肌に接触させることができる。
バリアシート3が緊張状態を維持することによって、吸液性パネル23の湾曲を維持することもでき、この湾曲により排泄物を受ける空隙29を維持することができる。
【0039】
この実施形態では、接合部位48を帯状に塗布した接着剤49で形成しているが、例えば曲線部39bのみ、あるいは直線部39aのみに局所的に接着剤を塗布することによって形成してもよい。
接合部位48は、前方連通部33においてのみ形成することとしているが、後方連通部34にも形成するようにしてもよい。ただし、前方連通部33に外性器を臨ませ、後方連通部34に肛門を臨ませるようにしていることから、連通部の開口が狭くなることの問題点は前方連通部33において発生しやすい。開口が狭くなったことにより、前方連通部33が外性器に接触し、肌トラブルを引き起こしかねないという問題が発生する可能性があるからである。
【0040】
バリアシート弾性部材39として、曲線部39bを有するものを用いているが、これを有している必要はなく、その前後に亘って直線を画くようなものであってもよいし、中間部分32に向かってV字を画くようなものであってもよい。バリアシート弾性部材39に接合部位48を重ねるようにして形成しているが、必ずしもこれらが完全に一致する必要はなく、バリアシート弾性部材39にカフ弾性部材45による引張力が作用する程度に接近していればよい。
また前後方連通部33,34の二つの連通部を形成しているが、いずれか一方の連通部のみであってもよし、前後ウエスト域7,8において閉鎖されていてもよい。すなわち、連通部はU字形に限らず、例えばO字形に穴が開いているシートを用いることもできる。
【0041】
接合部位48を形成する接着剤49としては一般的なゴム系ホットメルト接着剤を使用することができる。また、接合部位48をソニックシールやヒートシール等の一般的な接合手段を用いて形成するようにしてもよい。
バリアシート3および防漏カフ4は、それぞれ一枚のシートで形成されているが、二枚のシートを張り合わせて形成するようにしてもよい。この場合には、バリアシート弾性部材39およびカフ弾性部材45をそれぞれ二枚のシートの間に挟んで取り付けることができる。また、防漏カフ4とバリアシート弾性部材39に重なったときには、バリアシート弾性部材39が直接着用者の肌に接触することがなく、肌への刺激を低減することができる。
<第2の実施形態>
【0042】
図7,8は第2の実施形態を示したものであり、防漏カフ4に補助弾性部材を取り付けたことを特徴とする。この特徴以外の構成については第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
この実施形態においては、補助弾性部材として防漏カフ4の前後方向Zに延びる第1補助弾性部材50と第2補助弾性部材51とを備えている。
【0043】
図7に示したように、第1および第2補助弾性部材50,51は防漏カフ4の第2面42に取り付けるとともに、第1補助弾性部材50を第2補助弾性部材51よりも幅方向Xの内側に位置するようにしている。また、第1および第2補助弾性部材50,51の前後方向Zの寸法は、中間部分32に亘るとともに接合部位48にまで延びるように配設している。この実施形態では、接合部位48に沿って前端部分46まで、第1および第2補助弾性部材50,51が延びるようにしている。このような第1および第2補助弾性部材50,51は前後方向Zに伸長状態で取り付けられる。また、第1補助弾性部材50は、接合部位48と重なるように取り付けられている。
【0044】
図8は図7のVIII−VIII線端面図であり、二点鎖線はバリアシート弾性部材39、カフ弾性部材45、第1および第2補助弾性部材50,51が収縮した状態を示している。第1補助弾性部材50が接合部位48と重なるように取り付けられることによって、バリアシート弾性部材39と接合部位48を形成する接着剤49と第1補助弾性部材50とが重なるように位置する。
【0045】
このような第1補助弾性部材50が収縮した際には接合部位48を中間部分32方向へ引っ張ることができる(図7参照)。言い換えれば、前後方向Zの後方へと引っ張ることができる。このように接合部位48を後方へと引っ張る力は、前方連通部33の閉鎖縁36の開口を広げるように作用する。
この第2の実施形態では、カフ弾性部材45の収縮によって、接合部位48を引っ張り、さらに第1補助弾性部材50によって前方連通部33の開口を広げる方向に引っ張ることができるので、開口が狭くなるのをより一層防止することができる。
【0046】
第2補助弾性部材51は、第1補助弾性部材50にほぼ平行に、かつ幅方向Xの外側に取り付けられている。この第2補助弾性部材51は接合部位48から離れてはいるものの、接合部位48を前後方向Zの後方に引っ張る効果を有するものである。また、第2補助弾性部材51を取り付けることによって、防漏カフ4の特に第2面42における弛みを防止することができ、より効果的にカフ弾性部材45の引張力を接合部位48に作用させることができる。
【0047】
この実施形態においては第1および第2補助弾性部材50,51を取り付けることとしているが、必ずしも両方の弾性部材が必要ではない。いずれか一方のみを取り付ける場合には、第1補助弾性部材50を取り付けるほうが好ましい。直接接合部位48に引張力を作用させることができるからである。また、3条以上の補助弾性部材を設けてもよい。第1および第2補助弾性部材50,51としては糸状のゴムひもを用いることができるほか、伸縮性の不織布等を用いることもできる。
【0048】
図9および図10は、補助弾性部材の他の態様を示したものである。図9に示した補助弾性部材52は前後方向Zに延びるとともに伸長状態で取り付けられている。補助弾性部材52は接合部位48に対して交差して重なっている。すなわち、補助弾性部材52は、直線部52aと傾斜部52bとを備え、少なくとも傾斜部52bが接合部位48に重なるようにしている。このように取り付けることによって、接合部位48には、前後方向Zへの引張力だけでなく、幅方向Xへの引張力も作用する。幅方向Xへの引張力が作用すれば、バリアシート3の前方連通部33の内側縁35を幅方向Xの外側に引っ張ることができ、開口が狭くなるのを防止するという効果をより一層発揮することができる。
【0049】
この実施態様では、接合部位48は帯状のものではなく、前端部分46から離間した局所的に接着剤を塗布した例を示している。
この態様によれば、接合部位48に対して幅方向Xへの引張力を作用させることができればよく、傾斜部52bの傾斜角度や傾斜の向きは適宜変更することができる。
【0050】
図10に示した補助弾性部材53は、幅方向Xに延びるとともに伸長状態で取り付けられている。補助弾性部材53は前後方向Zに二条並べて取り付けられ、少なくともその一部が接合部位48に重なるようにしている。このような補助弾性部材53が収縮すれば、接合部位48を幅方向Xの外側に引っ張る力が作用する。接合部位48を介してバリアシート弾性部材39および前方連通部33の内側縁35も外側に引っ張られるからその開口が狭くなるのを防止することができる。
【0051】
本発明において、バリアシート3および防漏カフ4は液抵抗性かつ通気性の不織布等、内側シート11および外側シート12は通気性不織布等、防漏シート13はプラスチックフィルム等、吸液性パネル23を形成する吸液性芯材25はフラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物等、それぞれ当技術分野の慣用素材を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1の実施形態のおむつの斜視図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図1の展開図。
【図4】図2の要部説明図。
【図5】図4の着用状態を示した斜視図。
【図6】図4のVI−VI線端面図。
【図7】第2の実施形態を示す図4と同様の説明図。
【図8】図7のVIII−VIII線端面図。
【図9】他の態様を示す図4と同様の説明図。
【図10】他の態様を示す図4と同様の説明図。
【符号の説明】
【0053】
1 おむつ
2 シャーシ
3 バリアシート
4 防漏カフ
5 身体側内面
6 着衣側外面
7 前ウエスト域
8 後ウエスト域
9 股下域
10 吸液構造体
27 前端縁
28 後端縁
29 空隙
30 側部分
31 側部分
32 中間部分
33 前方連通部
34 後方連通部
39 バリアシート弾性部材
39b 曲線部
45 カフ弾性部材
48 接合部位
50 第1補助弾性部材
51 第2補助弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向および幅方向と、身体側および着衣側と、前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置する股下域と、前記股下域に配置される吸液構造体とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記股下域において前記シャーシから離間可能に形成されたバリアシートと、前記バリアシートの身体側であって前記幅方向に対向し前記前後方向に延びる一対の防漏カフとを含み、
前記バリアシートは、前記前後方向に延びるとともに伸長状態で取り付けられるバリアシート弾性部材を含み、
前記吸液構造体が前記股下域から前記前後ウエスト域に湾曲して、前記バリアシートと前記吸液構造体との間に空隙を形成する吸収性物品において、
前記バリアシートは、前記前後方向に延びるとともに前記幅方向に対向離間する両側部分と、前記両側部分の間をつなぐ中間部分と、前記空隙の内部に向かって排泄物を通過させることが可能であって前記両側部分および前記中間部分によって画成される連通部とを含み、
前記防漏カフは、前記シャーシに接合される固定縁部と、前記シャーシに接合されることなく前記シャーシから離間可能な自由縁部と、前記自由縁部に伸長状態で取り付けられ前記防漏カフを前記シャーシから離間させるカフ弾性部材とを含み、
前記バリアシートと前記防漏カフとは接合部位を介して接合され、前記接合部位は、前記自由縁部に位置するとともに前記バリアシート弾性部材に重なること特徴とする前記吸収性物品。
【請求項2】
前後方向および幅方向と、身体側および着衣側と、前ウエスト域、後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置する股下域と、前記股下域に配置される吸液構造体とを有するシャーシと、前記シャーシの前記身体側にあって前記股下域において前記シャーシから離間可能に形成されたバリアシートと、前記バリアシートの身体側であって前記幅方向に対向し前記前後方向に延びる一対の防漏カフとを含む吸収性物品において、
前記バリアシートは、前記前後方向に延びるとともに前記幅方向に対向離間する両側部分と、前記両側部分の間をつなぐ中間部分と、前記両側部分に伸長状態で取り付けられ前記前後方向に延びるバリアシート弾性部材と、前記幅方向に延びるとともに前記前後方向に対向する前後端縁とを含み、前記前後端縁が前記シャーシの身体側に接合され、前記吸液構造体が前記股下域から前記前後ウエスト域に湾曲することによって、前記バリアシートと前記吸液構造体との間に空隙を形成し、
前記バリアシートは、前記空隙の内部に向かって排泄物を通過させることが可能であって前記両側部分および前記中間部分によって画成される連通部を形成し、
前記防漏カフは、前記シャーシに接合される固定縁部と、前記シャーシに接合されることなく前記シャーシから離間可能な自由縁部と、前記自由縁部に伸長状態で取り付けられるカフ弾性部材とを含み、前記自由縁部は前記シャーシの身体側に対して起立、倒伏可能であって、倒伏したときには前記バリアシートの両側部分それぞれに重なるように形成され、
前記バリアシートと前記防漏カフとは、前記バリアシート弾性部材を含む部位であって、前記自由縁部において接合され、
前記防漏カフが起立したときには、前記両側部分が前記幅方向外側へ変位することにより、前記連通部が前記幅方向に狭くなるのを抑制することを特徴とする前記吸収性物品。
【請求項3】
前記連通部は、前記中間部分を介して前記前後方向の前側に位置する前方連通部と、前記前後方向の後側に位置する後方連通部とを含み、
前記接合部位は、前記前方連通部の前記幅方向の外側に位置する前記両側部分に形成される請求項1または2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記前方連通部は、前記前方連通部における前記前後方向の寸法を二等分する連通中心線を含み、
前記接合部位は、前記中心線よりも前記中間部分側に位置する請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記バリアシートは、前記前後方向に対向し前記幅方向に延びる前後端縁を含み、前記前方連通部は、前記両側部分に位置する両内側縁と、前記両内側縁をつなぐとともに前記中間部分に位置し湾曲した閉鎖縁とを含み、
前記バリアシート弾性部材は、前記閉鎖縁の湾曲に沿った曲線部を含み、
前記接合部位は、前記曲線部に重なって形成される請求項3または4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記防漏カフは、前記自由縁部の前記前後方向に延びるとともに伸長状態で取り付けられる補助弾性部材を備える請求項1〜5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記補助弾性部材は、少なくともその一部が前記バリアシート弾性部材に重なって取り付けられる請求項6記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−125315(P2009−125315A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303731(P2007−303731)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】