説明

吸収性物品

【課題】着用者に良好な触感及びクッション感を与え、賦形された凸部がつぶれにくく、しかも便や尿、汗等の排泄物の吸収性能に優れた吸収性物品を提供する。また、上記の優れた機能を維持し、とくに液分を多く含むような軟便の吸収隠蔽性に優れた吸収性物品を提供する。
【解決手段】液透過性のトップシート1と、吸収体3と、液不透過性のバックシート5とを有する吸収性物品10であって、前記トップシート1は、上層及び下層を有し、該両層の間に空洞を保持して前記上層側に突出した凸部を有し、前記上層は上側の第一層と下側の第二層とを有し、前記第一層を構成する繊維が前記第二層を構成する繊維より細い吸収性物品10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使い捨ておむつ、生理用ナプキン、尿取りシート、パンティライナー等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は通常着用者の肌に直接当てて使用される。特に、肌荒れのしやすいようなところに用いられることが多く、しかも長時間に亙って着用されることがある。そのため肌あたりのやさしいものが望まれる。他方、吸収性物品には基本的な機能として液体等の吸収液保持性が要求される。
【0003】
このような吸収性物品用の表面シートの開発が試みられており、例えば、実質的に伸縮しないシート状物からなる上層と下層とを有し、この両層が多数の接合部で接合されており、前記両層の間に空間を形成して前記上層に多数の凸部を形成したシートが提案されている(特許文献1、2参照)。この従来の表面シートにおいて、前記凸部の底面は矩形にされ、凸部が全体として直方体状又は截頭四角錐体状にされている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−174234号公報
【特許文献2】特開2006−341455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、着用者に良好な触感及びクッション感を与え、賦形された凸部がつぶれにくく、しかも便や尿、汗等の排泄物の吸収性能に優れた吸収性物品の提供を目的とする。また本発明は、上記の優れた機能を維持し、とくに液分を多く含むような軟便の吸収隠蔽性に優れた吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、液透過性のトップシートと、吸収体と、液不透過性のバックシートとを有する吸収性物品であって、前記トップシートは、上層及び下層を有し、該両層の間に空洞を保持して前記上層側に突出した凸部を有し、前記上層は上側の第一層と下側の第二層とを有し、前記第一層を構成する繊維が前記第二層を構成する繊維より細い吸収性物品によって達成された。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品は、着用者に良好な触感及びクッション感を与え、賦形された凸部がつぶれにくく、しかも便や尿、汗等の排泄物の吸収性能に優れる。また本発明の吸収性物品は、上記の良好な着用感及び吸収機能を維持し、とくに液分を多く含むような軟便において高い吸収隠蔽性を示すという優れた作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の吸収性物品における好ましい実施形態としての使い捨ておむつを一部切欠して模式的に示す斜視図である。同図に示した使い捨ておむつ10はこの種の物品の一般的な形態を有しており、液透過性のトップシート1、吸収体3、液不透過性のバックシート5を有する。
【0009】
バックシート5は1枚のシートからなるものであっても、複数のシートからなるものであってもよい。本実施形態において、バックシート5には横漏れ防止ギャザー12が設けられており、乳幼児の運動等による股関節部分における液体等の横漏れを効果的に防止しうる。本実施形態のおむつにおいては、さらに機能的な構造部やシート材等を設けてもよい。
【0010】
本実施形態のおむつはテープ型のものとして示しており、背側rのフラップ部にはテープ13が設けられている。このテープを腹側fのフラップ部に設けたテープ貼付部(図示せず)に貼付して装着固定することができる。このとき、おむつ中央cを緩やかに内側に折り曲げて、吸収体3が乳幼児の臀部から下腹部に亙って沿わされるように着用する。これにより排泄物が的確に吸収体3に吸収保持される。
【0011】
本実施形態のおむつにおいては、トップシート1と吸収体3との間にサブシート2が配設されている。ドライ時においては後述する柔らかく突出した凸部を複数配したトップシート1を乳幼児の肌に当接するように設けたことで、表面材が肌に密着しないために、着用者にとってベタつかず良好な肌触りとクッション感とを与えることができる。また、後述するように適度に丸みを帯びた凸部が多数表面シートに連設されているため、外観においても柔らかさを感じさせ、やさしい印象を与えることができる。
【0012】
通常、一度液を吸収した吸収体性物品は肌当りがあまり良くなく、吸収体が直接肌に当たると、表面に残った液及び加圧時に吸収体側から戻ってくる液の影響を受けてベタついた感じを与えてしまう。
これに対し、本実施形態のおむつにおいては、肌に直接あたる部分は凸部分のみであることから、肌に付着する水分の量を少量に抑えることができる。また、少量の軟便を吸収したときにも、凸部が肌に触れることから、肌へ付着する便の量を抑えることができる。また、便が拡散しようとするとき、形成された凸部による防壁効果によってその現象を緩和することができる。一方、軟便の量が多い場合には、便が表面材中の主に空洞に一時ストックされ、同時に便の水分が積極的に吸収体側へ吸収するように促される。その結果、便に含まれる水分が減少し空洞内で乾燥固化される。また、凹部に入り込んだ便に関しても積極的に水分が吸収され、凹部に捉えられるようにして固化され、肌への便のこびりつきが低減される。さらに、母親にとっては便をお尻拭きなどで落とす作業が減り、赤ちゃんにとっても肌へのダメージが抑えられる。
【0013】
表面材1中のシール部分の周辺においては、シール部分に向かって繊維が凝集されていることから毛管力も大きくなることが考えられる。
【0014】
本実施形態のおむつにおいては、バックシート5と吸収体3との間にフィルムシート4が配され、バックシート側への液体等の防漏性が一層高められている。本実施形態のおむつにおいて、上述したバックシート5、フィルムシート4、吸収体3等には通常この種のおむつに用いられる材料を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0015】
図2は図1に示したおむつの領域IIの周辺を拡大して一部断面により示す斜視図である。本実施形態のトップシート1は、第一層27及び第二層28からなる上層21と、下層22とを有する。そして、このトップシート1の下側には、サブシート2、吸収体3、フィルムシート4、及びバックシート5がこの順で配されている。
【0016】
本実施形態のトップシート1において、上層21は上側の第一層27と下側の第二層28とからなる。ここで第一層27を構成する繊維は、第二層28を構成する繊維よりも細くなっている。各層の具体的な繊維径は吸収性物品の種類や用途に応じて適宜定めればよいが、好ましくは第一層に用いる繊維の繊度を、第二層に用いる繊維の繊度の10〜70%とすることが好ましく、20〜60%とすることがより好ましい。さらに詳しくは、第一層の繊維の繊度を1.0〜4.4dtexとすることが好ましく、1.2〜3.3dtexとすることがより好ましい。第二層に用いる繊維の繊度は2.2〜7.8dtexとすることが好ましく、3.3〜5.6dtexとすることがより好ましい。なお各層を構成する繊維が2種以上の異なる繊度の繊維からなる場合には、その層の繊度とは、各繊維の質量比率から繊度を平均し求めた値をいう。
【0017】
本実施形態におけるトップシート1は、上層21側に連続的もしくは間欠的に突出した多数の凸部25を有している。本実施形態について更に詳しくいうと、凸部25は、凹凸賦形された上層21が下層22との間に空洞26を形成するように接合されている。このとき図6に示したような4ポイントシールパターンで上層と下層とが接合されているトップシートは、断面方向を違えることにより2種の異なる断面形状を持つ。具体的に図6に示した線q1での断面は、上層21と下層22とが凹部24により間欠的に接合される図3に示したような断面となる。一方、線q2での断面は両シートが接合されずに凸部頂部より低くされてはいるが凹部より高さのある連結部29を介して凸部25が連続した形状となる(図4参照)。そして、ドーム状の凸部内部空洞26は連結部内部空間29aにより連繋されており、一度トップシート中に吸収された軟便は、空洞26が連続的に形成された空間ネットワークを経由して拡散しうる。このため肌に便が多く付着することを防ぐことができる。
【0018】
また、図7に示したような6ポイントシールパターンで上層と下層とが接合されているトップシートは、断面方向を違えることにより3種の異なる断面形状を持つ。具体的には、図7に示した線r1での断面は、図6中の線q1と同様に、図3に示したような上層21と下層22とが凹部24により間欠的に接合される断面図となる(ただし図3は2つの連続した凸部を示しているのに対し、図7に示した断面線r1では1つの凸部の範囲のみが示されている。)。次に線r2での断面は、図6の線q2と同様に、図4に示したような連結部29で凸部25が連続した構造を持つ。また、線r3での断面には、凸部25をつなぐ尾根部71が配され、その内部にチャンネル72を形成するように空洞が存在する断面形状である(図5参照)。このチャンネル72内を経由して便が拡散しうる。なお、6ポイントシールパターンにおいては、尾根部71及び連結部29の両者が凸部を連結しており、これらを区別して第1の連結部(尾根部)71及び第2の連結部(連結部)29ということがある。このとき、第2の連結部29の内部空間29aがなく、上層と下層とが接合されていてもよく、あるいは連結部29が凸部を連結しない突起状の小凸部であってもよい。なお、凸部の幅は、q1、q2、r1、r2、r3において異なることがあるが、図3〜5においてその幅の関係を示すものではない

【0019】
本実施形態のトップシート1においては、凸部25は稜がとがった直方体状ではなく、図示したもののように内部に空洞を保持した丸みを帯びたドーム状であることが好ましい。このようにすることで、凸部25の持つエアクッション機能が効果的に発揮され、肌への当りがやさしく、柔らかな触感が得られる。
【0020】
本実施形態の吸収性物品においては、トップシート1と吸収体3との間にサブレイヤ2が配置されている(図2参照)。このサブレイヤの緩衝作用により、立体賦形されたトップシートの凸部25がより潰れにくく、感触及びクッション感を一層良化することができる。つまり、肌側(トップシート側)から圧力がかかった場合に、トップシートの下にサブレイヤが配されていることによってその応力を緩衝することができる。また、上記サブレイヤがあることにより後述するトップシート1の液体吸収作用及び拡散作用を高めることができる。具体的には、液体の横方向における流れを縦方向より抑え横漏を一層効果的に抑制し、液拡散性及び液吸収性を制御して高めることができる。サブレイヤに用いられる材料としては、不織布(ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミなどの熱可塑性樹脂からなる繊維や、これらの樹脂2種類以上からなる複合繊維から構成されるものが挙げられる)、パルプ、又はカーリーセルロースを積繊しシート状にしたものを用いることが好ましい。
【0021】
図3は図2に示した領域IIIのトップシート部分の特定の断面を拡大して示す断面図である。本実施形態において凸部25はシート状の上層21を賦形して設けられた突出部であり、図3に示した断面においては凹部24において上層21と下層22とが接合されている。ここで、別の断面においては前述のように凹部の下部が接合されていなくてもよい。すなわち、例えば図4に示したように、凹状の連結部29の下方に空間29aが形成され、空洞26が連続した形態であってもよい。
【0022】
本実施形態において凸部25は上述したように丸みを帯びた略山形の形状を有し、凸部25において肩部sは丸みを帯びていることが好ましい。該凸部は機能的に凸部頂部21a(第一層頂部27a、第二層頂部28a)、凸部壁部21b(第一層壁部27b、第二層壁部28b)、凸部底部21c(第一層底部27c、第二層底部28c)に区分しうる。ここで、凸部壁部21bがより下層22と平行になる方向に傾斜した状態であると、肩部sが丸みを帯びたものとなりやすく好ましい。このように丸みを帯びた稜(肩部)を有する凸部25とし、凸部頂部21aの面積を低減することにより、トップシート1が着用者と直接接触する部分の面積を減少させることができる。これにより、ドライ時においては良好なクッション感とともにサラッとした感触を与えうる。また、排泄時においては、適度な点接触となり排泄物を吸収したシートが面で広く着用者の肌に接触するのを避けることができることから、ベタつく感じを避けることができる。また、接触面積が下がることから肌に接触する液の戻り感を低減させることができる。また、シート全体ではなく肌へ点で接触することから、水分に由来する肌への付加も緩和される。さらには吸収性物品がずれるようなときにもそのクッション効果から表面シートの摩擦による違和感が低減され、柔らかで滑らかな触感となり、装着感に優れたものとなる。上述したトップシートとしての、柔らかさ、滑らかさ、サラッとした触感、ないしはそのような印象を与える見た目の良さは、凸部を矩形基調の直方体状又は截頭四角錐体状としたのでは得がたい。
【0023】
上述したような所望の丸みを帯びた凸部の形状は、上層21を1層構造とした例えば上記特許文献1,2に記載された製造方法により上層を単に賦形しても得られない。これに対し本実施形態においては、上層を少なくとも2層構造とし、外側の第一層27の繊維を低繊度のものとし、内側の第二層28の繊維を高繊度のものとすることにより、上述した所望の凸部の形状としている。凸部25は内部に空洞26を保持するため、製造時に賦形した直後、あるいは時間が経つにつれ、安定な形状に至るまで多少変形することがある。ここで本実施形態においては、上層21を構成する繊維が外側において細くなるようにしたため、上層21内において厚み方向に剛性の勾配が生じる。この剛性勾配が影響して上述した安定形状への変化において丸みを帯びた凸部を造形したと考えられる。また、後述するように製造時に凸部25が吸引力を生じる歯車により賦形されるとき、この吸引により上層21の表面は歯車に強く密着する。このとき本実施形態のように各層の繊維径に勾配をつけたことで、勾配のないときに対して上記の密着状態が変化し、丸みを帯びた凸部25が得られることが考えられる。
【0024】
さらに、本実施形態のように、凸部を構成する上層21の外側第一層27の繊維を内側第二層28の繊維より細くすることで、機能的形状の凸部をつぶれにくいものとし、良好な触感及びクッション感を得ることができるため好ましい。この作用についていうと、凸部を構成する内側の第二層28の繊維がより太いため、圧縮時には、特に凸部壁部21bが倒れこみにくくなることが考えられる。換言すると、凸部内側の第二層28が橋脚のように支える作用を示し、凸部を潰れにくいものにすると考えられる。一方、凸部頂部21aは適度な弾力で変形しうるようにされており、あたかも剛性の高い筒状の壁部に嵩高い綿をのせたような、良質のクッション性が得られる。そして、圧縮していないときには、第二層の繊維がより太いことによる復元力が作用し、上述した橋脚のように支える作用と相俟って層内の剛性が効き、凸部が圧縮されたときにも元の形状に戻りやすい。このようにして、圧縮時には凸部25が所定の高さを維持しながら弾力的に変形し、非圧縮時には速やかに元の形状に戻る。
【0025】
さらにまた、本実施形態のように、凸部を構成する上層21の外側第一層27の繊維を内側第二層の繊維より細くすることで、液体等の吸収性において優れた作用を発揮する。これについて具体的にいうと、上述のように第二層の繊維が第一層の繊維よりも太いことから、通常第二層の繊維間隔は第一層よりも広がる。これにより第二層側には繊維の疎な空間が形成されるため、例えば液分を多く含む軟便を引き込んで強く捕集する作用を示す。そして、凸部25の内部の空洞26に特に軟便の固形分を取り込んで隠蔽し、着用者の肌に軟便が直接触れる違和感を抑制しうる。
【0026】
さらに、凹部24の周辺においては、上層21を構成する第一層底部27c及び第二層底部28cの繊維はやや延伸されながら圧縮されている。このため上層底部21cには大きな毛管力により液体を強く引き込む作用が生じる。これにより、軟便であっても液分を多く含むような場合に上層底部21cの周辺に液体が集中して溜まり、この液分が下層を通じ吸収体に素早く送り込まれる。このとき上述したサブレイヤをトップシート1と吸収体3との間に配設することにより、液分の送り込み作用が一層高まり好ましい。
【0027】
上述したように、凸部を構成する上層21の内側第二層は繊維径が太く通常繊維間隔が広がっているため、半固形状の軟便であっても空洞内に効果的に捕集されていく。このとき下層22の繊維径を第一層27と同程度にしておくと、この下層22は立体賦形されないため繊維間隔は広がらず、軟便が下層22を介して吸収体3の方に入り込みにくくなる。このようにして、軟便の固形分を空洞26内に効果的に閉じ込め、一方で液分のみを素早く吸収体に取り込むことができる。すなわち、液分を多く含む軟便であっても、固形分を空洞26に留め、吸収体を汚損して吸収機能等を過度に劣化させないようにすることができる。一方で、液分のみを選択に吸収体に移行させ、着用者に対しては清潔でかつサラッとした極めて良好な着用感を与えることができる。
【0028】
すなわち、トップシートを構成する繊維を上述のように所定のものとして、好ましくは第二層の繊維間隔を第一層より広げ、より好ましくはさらに第一層の繊維間隔を下層より広いものとすることにより、とくに液分を多く含む軟便における高い処理作用を示す。本発明において繊維間距離とは特に断らない限りシートの所定領域における平均繊維間距離をいい、不織布の厚さ、目付け、及び構成ウェブの繊維構成によって算出されるもので、下記の式で定義される。
【0029】
【数1】

ここで、tは不織布の厚さ[mm]、wは不織布の目付[g/m]、dは繊維ウェブを構成する繊維の繊度[デニール]である。本発明の吸収性物品シートの繊維間距離は、上層の第1層が70〜100μmであることが好ましい。また、第2層は120〜160μmであることが好ましい。また、下層は70μm〜90μmであることが好ましい。
【0030】
本発明の吸収性物品用シートにおいては複数の凸部25を略千鳥格子状に配置することが好ましい。ここで、千鳥格子状の配置とは、各列の凸部を該列に直交する方向に投影したときに、凸部の投影像が一列おきに重なり、重なった投影像の間隔が一定になるような配置である。略千鳥状の配置はそれのみではなく、凸部の位置が製造上不可避的な量においてわずかにずれている場合も含む。なお、このような千鳥格子状に配置した凸部パターンは、後述するようなロール歯車により賦形する態様についていうと、各歯車の歯幅を調節し、各歯車間での歯が交互に隣接するように配置することにより形成することができる。
【0031】
図6は略千鳥格子状の凸部配置の好ましい形態としての4ポイントシールパターンを模式化して示したパターン図である。このパターン図では、トップシートの平面図を12行・12列のマス目に座標化して、エンボス接合部等の位置関係を模式的に示している。この4ポイントシールパターンにおいては、4点の接合部(トップシートにおいて凹部となる部分)24からなる接合単位の少なくとも1点を隣接する接合単位どうしが互いに共有するようにしてエンボス接合部が広く配設されている。図6に示したパターン図についてさらに具体的に説明すると、エンボス(1,3),(3,1),(3,5),(5,3)の4点で第1接合単位が構成されている。ここで( )内の数値は、(行番号,列番号)を表す。その右隣りにおいてはエンボス(3,5)を共有して、(1,7),(3,9),(5,7)とともに第2接合単位を構成している。第1接合単位の下方には、第1接合単位の点(5,3)を共有して、(7,1),(7,5),(9,3)とともに第3接合単位を構成している。さらにこの右側の第4接合単位は、エンボス(3,5),(5,3),(7,5),(5,7)を第1〜3のいずれかと共有して構成されている。このようにして、一部のエンボス接合部(凹部)24を互いに共有しながら広く4ポイントエンボスパターンが形成されている。
【0032】
そして、本実施形態においては各接合単位の4点の接合部が取り囲むようにして、各接合単位の略中央に、前記の凸部頂部が配されるようにされている。具体的にいうと、第1接合単位の(3,3)、第2接合単位の(3,7)、第3接合単位の(7,4)、第4接合単位の(5,5)にそれぞれ凸部頂部が配されている。
【0033】
ここで4ポイントシールパターンにおける凸部の連設形態についていうと、上述のように図6のエンボス(3,1)から(11,9)に向かう方向に引いた補助線q1におけるトップシート断面では、凹部24において上層21と下層22とが接合されている。具体的に図3に示したように、上層21と下層22とが接合界面24aで接合され、空洞26がそれぞれ区分された断面形態となる。一方、エンボス(1,9)から(9,1)に向かう方向に引いた補助線q2の断面では、接合部を介さず内部空洞が連続した形態となる。具体的には、図4に示したように、連結部29の内部に空間29aが形成され、隣接する空洞26が連続した状態とされている。すなわち、4ポイントシールパターンにおいては、断面方向により凸部内部の空洞の連続状態が異なっている。このように4ポイントシールパターンにより、空洞が連続した部分のある形態とすることで、上述した軟便及びその液分が広くトップシート1の面方向に拡散しやすく、吸収保持作用が高まるように配されている点で好ましい。
【0034】
図7は6ポイントシールパターンを模式化して示したパターン図である。これについて詳述すると、エンボス(1,2),(1,4),(3,1),(3,5),(5,2),(5,4)の6点で第1の6点の接合部からなる接合単位(第1接合単位)が構成されている。そして右隣りの第2接合単位は、エンボス(1,8),(1,10),(3,7),(3,11),(5,8),(5,10)の6点で構成されている。さらに第1接合単位の下方の第3接合単位は、第1接合単位の下部の2点(5,2),(5,4)を共有するようにして、(7,1),(7,5),(9,2),(9,4)とともに6点で構成されている。さらにこの右の第4接合単位は、エンボス(3,5),(3,7),(5,4),(7,5),(5,8)を第1〜3要素のいずれかと共有し、エンボス(7,7)と合わせた6点で構成されている。このようにして各接合単位の一部を互いに共有しつつ、6点パターンが広く繰り返され構成されている。そして、凸部の頂部が、第1〜4の接合単位の略中央に、具体的には第1接合単位の(3,3)、第2接合単位の(3,9)、第3接合単位の(7,3)、第4接合単位の(5,6)にそれぞれ配されている。
【0035】
上述のようにして6ポイントシールパターンで上層21と下層22とを接合することにより、通常前記接合単位をなす6点の接合部を結ぶようにして前記凸部の間に凹部が形成される。そして、図3に示したトップシート断面のように深さのある凹部24を有する断面(r1線断面)だけでなく、図4に示したような比較的浅い凹状の連結部29を有する(ただし、内部に空間29aがなくてもよい。)断面(r2線断面)、及び図5に示し尾根部71にトンネル状のチャンネル72を有する断面(r3線断面)が形成される。
【0036】
このように、凸部を形成したトップシートのシールパターンにおいて、接合部1点に対して、その隣接する列・行に第2の接合部を配置させないことで凸部分を連続させつつ、凸部を潰れにくいものとすることができる。これにより、先に述べた凸部の形状的作用及び上層を2層構造とした繊維径・繊維密間配による作用が協働してなす、良好な感触、クッション感、凸形状のつぶれにさ、液体等の吸収性を一層際立たせることができる。特に、賦形された凸部25が着用時に圧縮されたときにも面で支え潰れにくく、高い液体等の吸収隠蔽性とあいまって、肌への軟便の逆戻りや不快な付着を一層効果的に抑制することができる。
【0037】
トップシート1の凸部25は、上述したような作用を考慮し、その高さ(図3の断面図でいうと、下層22の上面から凸部頂部21aの頂点までの距離)を0.6〜2.0mmとすることが好ましく、0.8〜1.8mmとすることがより好ましい。また、凸部25の幅を1.5〜4.0mmとすることが好ましく、2.0〜6.0mmとすることがより好ましい。凹部24の幅(補助線u−u間の距離)を0.5〜2.0mmとすることが好ましく、0.8〜1.4mmとすることがより好ましい。
【0038】
上層21(第一層27及び第二層28)及び下層22は、それぞれ同じ種類の繊維材料からなるものであっても、異なる繊維材料からなるものであってもよいが、いずれのシートも実質的に伸縮しないシート材からなることが好ましい。上層21及び下層22に用いられる不織布は特に限定されないが、ヒートボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。また、上層21と下層22とを後述するように熱融着によって接合する場合には、前記不織布に熱融着繊維が含まれることが好ましい。熱融着繊維としては、PET/PE、PP/PEなどの芯鞘構造のものが好ましい。また、前記不織布には、界面活性剤等を用いた親水化処理を施すことが好ましい。上層21及び下層22の構成繊維の種類のうち、好ましい組み合わせはPET/PE繊維どうしの組み合わせである。
【0039】
本実施形態のトップシート1の上層21においては、第一層27の坪量が第二層28よりも低いまたは同じであることが好ましい。第一層27の厚さが第二層28よりも薄いまたは同じであることが好ましい。また、上層21の坪量が下層22よりも高いまたは同じであることが好ましい。上層21の厚さは下層22よりも厚いまたは同じであることが好ましい。下層22を構成する繊維の繊度は、第二層のものより低いことが好ましく、第一層と同等であることが好ましい。なお、第一層27と第二層28との境界は例えば図3に模式化して示したもののように明確なものでなくてもよく、むしろ互い層の繊維が絡み合いながら繊度勾配の傾斜的な界面を形状することが実際的である。
【0040】
次に、本実施形態の吸収性物品におけるトップシート1の好ましい製造方法を図面を参照しながら説明する。図8は発明の製造方法における好ましい実施態様としてのトップシート成形工程の一部を模式的に示す側面図である。同図に示すように、まず上層21を原反ロール(図示せず)から繰り出す。これとは別に、下層22を原反ロール(図示せず)から繰り出す。上層21及び下層22はそれぞれ、そのMD方向(方向d及びd)に沿って繰り出される。繰り出された上層21を、周面が凹凸形状となっている第1ロール11と、その凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロール12との噛み合わせ部Pに噛み込ませて上層21を凹凸賦形する。このとき上層21は第一層(図示せず)及び第二層(図示せず)からなる2層構造とされており、合流部Pにおいて第二層側で下層22と接合するようにされている。
【0041】
このように上層21を第1ロール11と第2ロール12との噛み合わせ部に噛み込ませて上層21を凹凸賦形する場合、第1ロール11を吸引しておくことが好ましい。吸引は、第1ロール11と第2ロール12との噛み合い部から上層21と下層22との合流部Pを経て両シートを貼り合わせた複合シート(吸収性物品用シート)を送り出す部分Pまでの間で行われるように制御することが好ましい。従って、第1ロール11と第2ロール12との噛み合いによって凹凸賦形された上層21は、第1ロール11に形成された吸引部(図示せず)もしくは空隙部(図示せず)による吸引力によって第1ロールの周面に密着し、その凹凸賦形された状態が保持される。
【0042】
合流部Pでは、上層21を第1ロール11の周面に吸引密着させた状態で、別に供給されている下層22と積層するが、両シートを第1ロール11と第3ロール13とで挟圧することが好ましく、第3ロール13としては凹凸を有しないアンビルロールを用いることが好ましい。このとき、第1ロール11と第3ロール13の両方又は第3ロール13のみを所定温度に加熱しておくことが好ましい。これによって、第1ロール11の歯車の凸部先端に位置する上層21と下層22とが熱融着によって接合される。この接合によって凹部24(図3、図5参照)が形成される。一方、歯車の凹部においては上層21及び下層22は挟圧されず、熱融着が起こりにくい。その結果、2つの凹部24間には接合されていない賦形部が形成され、そこに凸部25が形成される。
【0043】
本実施態様においては、上層21と下層22とが貼り合わされた複合シートが、第1ロール11及び第4ロール14によって再度この部分Pで加熱圧挟される。このとき第4ロール14は第3ロール13と同様に外周に凹凸を有さない平滑ロールであることが好ましく、所定の温度に加熱されていることが好ましい。このように送り出し部Pで合流部Pに引き続き再度加熱圧挟し両シートの接合加工を行うことで、適切に接着力を高めしっかりと固定された凹部24が形成され、凸部の形状安定性が維持される。
【0044】
このようにして、第一層及び第二層からなる上層と、下層22を下層とを接合し、この両層の間に空洞を保持した良好な凸部を多数有するトップシート1を製造することができる。
【0045】
本発明の吸収性物品についてテープタイプの使い捨ておむつを例に詳しく説明したが、本発明はこれに限らず、パンツタイプのおむつや、その他ナプキン、尿取りシート、パンティライナー等であってもよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0047】
(参考例)
図8に示した製造装置を用いて図7に示した6ポイントシールパターンでそれぞれ1層構造とした上層と下層とを接合したトップシートを作製し、これを用いて乳幼児用おむつ(試験体1)を作製した。このとき、トップシートの上層の繊維の繊度を2.2dtex、下層の繊度の繊度を2.2dtexとした。得られた上層における繊維間隔は100μm、下層の繊維間隔は55μmであった。トップシートの上層の厚さは約70μm、下層の厚さは約50μmであり、隣接する凸部の間隔は約2.5mm、凸部の高さは約1.3mmであった。
試験体1について、パネル(使い捨ておむつを使用中の乳幼児をもつ母親)6名が試験体のトップシート側(おむつ内側)の見た目及び感触(手触り)について評価した。その結果、おむつのトップシートを配した肌当接面側の見た目(やわらかさ、なめらかさ、サラっと感)においては実用上満足を得られるものであったが、感触(手触り)においてはさらに改良の余地があるという評価結果となった。
【0048】
(実施例)
上記試験体1に対して、トップシートの上層を第1層及び第2層からなる2層構造とした以外、同様にして乳幼児用おむつ(試験体2)を作製した。このとき、トップシートの上層における第1層の繊維の繊度を2.2dtex、第2層の繊維の繊度を4.4dtex、下層の繊度の繊度を2.2dtexとした。得られた第1層における繊維間隔は90μm、第2層の繊維間隔は140μm、下層の繊維間隔は55μmであった。試験体2におけるトップシートの上層の厚さ、下層の厚さ、隣接する凸部の間隔、凸部の高さは、試験体1とほぼ同じであった。
試験体2について上記と同様のパネル評価試験を行った結果、試験体2のおむつは、そのトップシートが配された肌当接面側からみた見た目(やわらかさ、なめらかさ、サラっと感)において実用上満足ないしは高い満足が得られるレベルのものであった。しかも、上記試験体1に対して感触(手触り)が大幅に改善され、試験体2のおむつのトップシート部分の感触は、やわらかさ、なめらかさ、サラっと感のすべての項目において実用上高い満足が得られるレベルのものと評価された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の吸収性物品における好ましい実施形態としての使い捨ておむつを一部切欠して模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示したおむつの領域IIの周辺を拡大して一部断面により示す斜視図である。
【図3】図2に示した領域IIIのトップシート部分を拡大して示す断面図である。
【図4】トップシートの別の断面を示す断面図である。
【図5】トップシートのさらに別の断面を示す断面図である。
【図6】4ポイントシールパターンを座標化して示したパターン図である。
【図7】6ポイントシールパターンを座標化して示したパターン図である。
【図8】本発明の製造方法における好ましい実施態様としてのトップシート成形工程の一部を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 トップシート
2 サブレイヤ
3 吸収体
4 フィルムシート
5 バックシート
10 吸収性物品
21 上層
22 下層
24 凹部(接合部)
25 凸部
26 空洞
27 第一層
28 第二層
29 連結部(第2の連結部)
71 尾根部(第1の連結部)
72 チャンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、吸収体と、液不透過性のバックシートとを有する吸収性物品であって、
前記トップシートは、上層及び下層を有し、該両層の間に空洞を保持して前記上層側に突出した凸部を有し、
前記上層は上側の第一層と下側の第二層とを有し、前記第一層を構成する繊維が前記第二層を構成する繊維より細い吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートと前記吸収体との間にサブレイヤを配置した請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
4点の接合部からなる接合単位の少なくとも1点を隣接する接合単位どうしが互いに共有するようにして接合部を設ける4ポイントシールパターンで前記上層と前記下層とが接合されており、かつ、前記接合単位をなす4点の接合部が取り囲むようにして前記凸部が形成されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
6点の接合部からなる接合単位の少なくとも2点を隣接する接合単位どうしが互いに共有するようにして接合部を設ける6ポイントシールパターンで前記上層と前記下層とが接合されており、かつ、前記接合単位をなす6点の接合部が取り囲むようにして前記凸部が形成されている請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第二層を構成する繊維間距離が、前記第一層を構成する繊維間距離より大きい請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第一層を構成する繊維間距離が、前記下層を構成する繊維間距離より大きい請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−131593(P2009−131593A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106163(P2008−106163)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】