説明

吸収性物品

【課題】生理用ナプキンの前方側を使用者に認識させ、横漏れの原因とならないプレス溝を設けた吸収性物品を提供すること。また、肌ストレスの原因となる湿気を外部に逃がすプレス溝を設けた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品1は、肌当接面側に表面シート2、非肌当接面側に裏面シート3及びこれら両シート間に配された吸収体4とを具備する縦長の吸収性物品である。表面シート2は、肌当接面側に畝と溝が交互に形成された縦長の凹凸構造を有しており、この表面シート2には、表面シート2と吸収体4とが圧縮して形成されたプレス溝6を有し、このプレス溝6は、吸収性物品1の長手方向に縦長に延び、長手方向前方1aの幅方向中央領域に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキンの漏れ防止機能を十分に発揮させるために、使用者が生理用ナプキンの前方側と後方側とを間違って装着しないように、表面シートと吸収体とを固定するエンボス(以下、プレス溝とも言う)を生理用ナプキンの前方側に多く設け、生理用ナプキンの前方側を使用者に認識させる技術が特許文献1に開示されている。
しかしながら、引用文献1に記載のプレス溝は、生理用ナプキンの幅方向に延びて設けられているため、使用者の体液が、そのプレス溝を伝わって横漏れの原因となっていた。また、横漏れをせずとも、体液による湿気がプレス溝部に溜まり、使用者の肌ストレスが増す原因となっていた。
また、ドライ感や風合いを向上させ吸収性物品の使用感を高めるために、表面シートに複数の開孔を設け、隣接する開孔間の頂部を連続的に連ね、表面シートに断面視で凹凸構造を形成し、使用者の肌と表面シートとの接触面積を低く抑える技術が特許文献2に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−230592号公報
【特許文献2】特開平8−246322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、生理用ナプキンの前方側を使用者に認識させ得る、液の長手方向流れの原因とならないプレス溝を設けた吸収性物品を提供することにある。また、前記プレス溝を前方側に設けることによって、肌ストレスの原因となる湿気を外部に逃がすことのできるようにした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、肌当接面側に表面シート、非肌当接面側に裏面シート及びこれら両シート間に配された吸収体とを具備する縦長の吸収性物品において、前記表面シートは、肌当接面側に畝と溝が交互に形成された縦長の凹凸構造を有し、さらには、前記表面シートと前記吸収体とが圧縮して形成されたプレス溝を有し、該プレス溝は、前記吸収性物品の長手方向に縦長で、かつ長手方向前方の幅方向中央領域に形成されている吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の吸収性物品によれば、設けたプレス溝により、生理用ナプキンの前方側を使用者に認識させることができる。また、設けたプレス溝は、液の長手方向流れの原因とならず、湿気を外部に逃がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の吸収性物品の表面材の好ましい一実施形態について、図1〜3に基づいて説明する。尚、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を示している。
【0008】
図1は本実施形態の生理用ナプキン1の平面図であり、図2は吸収性物品1のX−X線の断面拡大図である。
本実施形態の生理用ナプキン1は、図1,2に示すように、肌当接面側に配置された液透過性の表面シート2、非肌当接面側に配置された液難透過性の裏面シート3及びこれら両シート2,3間に介在された液保持性の吸水体4とを具備し、表面シート1及び裏面シート2は、吸収体4の長手方向の両端部から延出する部分において接合部5を形成する実質的に縦長の吸収性物品である。吸収体4の大きさは、接合部5を除く全体に配されている。表面シート2は、肌当接面側に畝と溝が交互に形成された凹凸構造を有している。また、表面シート2には、表面シート2と吸収体4とを固着し吸収性物品1の長手方向に延びるプレス溝6が、吸収性物品1の長手方向前方1aの幅方向中央領域に形成されている。
【0009】
本実施形態の生理用ナプキン1は、図1に示すように、全体形状が実質的に縦長の長方形状である。吸収性物品1の長手方向前方領域1aとは、装着時に、着用者の前側に位置し、着用者の排泄部に対抗配置される排泄部対向領域より前方の領域をいう。
【0010】
本実施形態の生理用ナプキン1のプレス溝6は、表面シート2と吸収体4とを圧縮して形成されたものであり、本実施形態の吸収性物品1のプレス溝6は、図1に示すように、3列のプレス溝6が設けられており、それぞれ、生理用ナプキン1の長手方向に縦長の長方形状であり、吸収性物品1の幅方向に略等間隔を置いて、吸収性物品1の長手方向に平行に且つ生理用ナプキン1の幅方向から見て重なる範囲を有するように配置されている。隣接するプレス溝6の間隔は、5〜20mmである。長手方向前方1aの中央領域に設けられたプレス溝6の数は、一列のみ設けられていても良いが、好ましくは2〜5列である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の生理用ナプキン1のプレス溝6は縦長の長方形状であり、本実施形態の生理用ナプキン1のプレス溝6の長さL1は、20〜55mmであり、図2に示すように、プレス溝6の幅W1は、1〜7mmである。プレス溝6は、長手方向に交互に深さが浅い部分と深い部分が配置されており、図2に示されているのは深い部分である。本実施形態の生理用ナプキン1の3列のプレス溝6は、それぞれ、同形・同大である。
【0012】
本実施形態の生理用ナプキン1の表面シート2は、図1に示すように、肌当接面に凹凸構造を有しており、複数の凹凸部が吸収性物品1の長手方向に平行に直線状に延びて形成されており、畝と溝(以下、凹凸構造とも言う)を形成している。また、表面シート2の凹凸構造の凸部2aの方向とプレス溝6の溝部の方向とが一致している。
【0013】
本実施形態の生理用ナプキン1の表面シート2は、図3に示すように、多数の開孔7を有する不織布であり、多数の開孔7を不織布に加工することにより、長手方向に平行に延びる凸部2aと凹部2bとからなる断面視で畝と溝(凹凸構造)を形成している。表面シート2の凸部2aの頂部とそれに隣接する凸部2aの頂部との間隔W2は、1〜7mmであり、凸部2aの頂部と凹部2bの底部との距離(凸部2aの高さ)hは、0.3〜2mmである。このような表面シート2として、例えば、特開平8−246322に記載のシートが使用できる。
【0014】
本実施形態の生理用ナプキン1は、図1に示すように、肌当接面側において、長手方向前方の前方領域1a、長手方向後方の後方領域1b及び長手方向の両側部領域それぞれに亘って繋がった圧搾溝が設けられ、これらの圧搾溝からなる全周溝7を備えている。全周溝7は表面シート2と吸収体4とを固着しており、全周溝7とプレス溝6とは生理用ナプキン1の長手方向前方領域1aにおいて、互いに交差している。
【0015】
本実施形態の生理用ナプキン1の全周溝7は、使用時に表面シート2及び吸収体4の皺・ヨレの発生を抑え、着用者へのフィット性及び体液の吸収性を高めるために設けられており、図1に示すように、全周溝7の長手方向の長さL2は、60〜155mmであり、幅方向への長さW3は、30〜53mmである。また、全周溝7の溝幅は、プレス溝6の幅W1と同じである。図1に示すように、3列のプレス溝6のいずれも、全周溝7と生理用ナプキン1の長手方向前方領域1aにおいて、交差している。
【0016】
本実施形態の生理用ナプキン1の裏面シート3及び吸収体4としては、従来の吸収性物品等において用いられる各種材料を用いることができる。裏面シート3としては、例えば、水蒸気透過性で且つ液不透過性のフィルムシートである。また吸収体4としては、例えば、吸収体の厚みが2〜10mmであり、フラッフパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物がティッシュペーパーに包被されて構成されている。
【0017】
本実施形態の生理用ナプキン1の表面材1としては、各種公知の不織布を用いることができる。例えば、カード法によるエブ化後エアスルー法やヒートロール法により製造され繊維間を融着した不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
【0018】
本実施形態の生理用ナプキン1のプレス溝6及び全周溝7の形成方法としては、公知のエンボス法を利用することができる。例えば、超音波エンボス、熱エンボスが利用できる。本実施形態のプレス溝6及び全周溝7は、熱エンボスにより形成されている。
【0019】
次に上述した本発明の一実施形態の生理用ナプキンを使用した際の作用効果について説明する。
本実施形態の生理用ナプキン1は、図1に示すように、吸収性物品1の長手方向前方1aの中央領域に、3列のプレス溝6が設けられているので、使用者が生理用ナプキンの前方側と後方側とを間違って装着することを防止することがでできる。3列のプレス溝6は、それぞれ、吸収性物品1の長手方向に平行に配置されているが、表面シート2と吸収体4がプレス溝6によって一体化されて、液が吸収体4に導かれ易くされているため、長手方向に液が流れ、漏れを誘発することがない。特に、本実施形態では長手方向に交互に浅い部分と深い部分が形成されており、吸収体4への液の導き易さと液の長手方向への流れを抑制するように形成されている。また、使用者の肌と吸収性物品1との間に、3列のプレス溝6による空間が、吸収性物品1の長手方向に開いており、プレス溝6によって剛性が高められているので、装着圧による空間の閉塞や使用者体型さらに動きに追従しやすい。更に、該生理用ナプキン1の変形による空間の潰れが無く、プレス溝部に体液の湿気が溜まることを抑え、使用者の肌ストレスを解消することができる。プレス溝6の幅W1が1mm以下では液の導液性や空間形成がなされず、7mm以上では装着による空間の閉塞が起こりやすくなる。プレス溝6は吸収体の厚みに対して50〜80%で形成されていることが上述した効果を得る点から好ましい。
【0020】
また、本実施形態の生理用ナプキン1は、表面シートとして、畝と溝(凹凸構造)を有する表面シート2を用いており、ドライ感や風合いを向上させ吸収性物品の使用感を高めているが、表面シート2の凸部2aの方向とプレス溝6の溝部の方向とが一致しているので、図2に示すように、プレス溝6を設けることにより形成された剛性のあるプレス溝面と使用者の肌が接触することがない。詳述すると、3本のプレス溝6は、生理用ナプキン1の幅方向から見て、プレス溝6同士が重なる範囲を有するように生理用ナプキン1の幅方向に並列して設けられており、それぞれのプレス溝6が重なる範囲において、プレス溝6と隣接するプレス溝6との間のプレス溝6が存在しない部分には、表面シート2の畝と溝が交互に形成された縦長の凹凸構造の凸部2aを複数有している。よって、使用者の肌は、プレス溝面と接触する前に、表面シート2の凸部2aと接触する。従って、凹凸構造を有する表面シート2にプレス溝6を設けても、表面シート2の使用感は損なわれず、プレス溝6により、吸収体4と一体化されているため吸収体4に液が導かれやすく前方方向への液流れを抑制し、また体液の湿気を逃がすことができるので、使用者の肌ストレスを解消することができる。
【0021】
さらに、プレス溝6同士の間の部分には、表面シートの凹凸構造の凸部2aが複数配され、プレス溝6間に固定されているため、クッション性等の風合いを高く保つことができる。そのため、表面シート2の凹凸構造の延びる方向と同じ方向にプレス溝6が形成されていることが、凸部2aを潰さない観点から好ましく、表面シート2の凸部2aの頂部と頂部の間隔W2は、プレス溝6の間隔の10〜50%とされていることが凹凸構造の固定性の観点から好ましい。
【0022】
また、本実施形態の生理用ナプキン1は、吸収性物品1の長手方向前方領域1aにおいて、全周溝7の一部と3列のプレス溝6とが交差しており、吸収性物品1の長手方向前方領域1aの剛性が生理用ナプキン1の幅方向及び長手方向に高くなっているので、使用者が生理用ナプキン1をしっかり挟持することができる。さらに表面シート2の凹凸構造の固定がより高くされており、使用感が良好となる。
【0023】
本発明の吸収性物品は、上述の実施形態の生理用ナプキンに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の実施形態の生理用ナプキンにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0024】
例えば、上述の生理用ナプキン1の実施形態においては、長手方向前方1aの中央領域に設けられたプレス溝6は、図1に示すように、接合部5の内側に位置する部位に形成されているが、本実施形態のように前方部に幅方向に延びる全周溝7を形成している場合には、前方端の接合部5に達するように形成しても良い。このように形成すれば、使用者の肌と吸収性物品1との間に、3列のプレス溝6による空間が、開いているので、プレス溝部に体液の湿気が溜まることを極力抑えることができる。
【0025】
また、上述の生理用ナプキン1の実施形態においては、3列のプレス溝6は、それぞれ、吸収性物品1の幅方向に略等間隔を置いて、配置されているが、吸収性物品1の幅方向に略等間隔である必要はない。例えば、プレス溝6が5列である場合には、吸収性物品1の幅方向に行くに従って、間隔を広く置いて配置しても良く、またその逆でも良い。また、上述の生理用ナプキン1の実施形態においては、3列のプレス溝6は、それぞれ、吸収性物品1の長手方向に平行に配置されているが、吸収性物品1の長手方向に延びていれば平行でなくても良い。
【0026】
また、上述の生理用ナプキン1の実施形態においては、3列のプレス溝6は、それぞれ、長方形状であるが、長方形状である必要はなく、吸収性物品1の長手方向に延びる形状であれば良い。また、上述の生理用ナプキン1の実施形態においては、3列のプレス溝6は、それぞれ、同形・同大であるが、同形・同大である必要はなく、例えば、吸収性物品1の幅方向中央に位置するプレス溝6の長さを一番長くし、吸収性物品1の幅方向に行くに従って、プレス溝6の長さを徐々に短くしても良く、またその逆でも良い。また、例えば、吸収性物品1の幅方向中央に位置するプレス溝6の幅を一番広くし、吸収性物品1の幅方向に行くに従って、プレス溝6の幅を徐々に狭くしても良く、またその逆でも良い。
【0027】
また、上述の生理用ナプキン1の実施形態においては、表面シート2の凹凸構造は、吸収性物品1の長手方向に平行に直線状に延び、畝を形成しているが、凹凸構造を有していれば良い。使用者の肌が、プレス溝面と接触する前に、表面シート2の凸部2aと接触するように、プレス溝6を設ける方向と表面シート2の凹凸構造の延びる方向が一致していることが好ましい。
【0028】
また、上述の生理用ナプキン1の実施形態においては、表面シート2は、多数の開孔7を有する不織布であるが、凹凸構造を有するフィルムであっても良い。また、開孔を有さずとも良い。例えば、表面シート2が2枚のシートからなり、それらのシートが部分的に接合されて多数の接合部が形成されており、一方のシートがこれらの接合部以外の部分において突出して多数の凸部を形成している立体複合シートであっても良い。
【0029】
また、上述の生理用ナプキン1の実施形態においては、リング状に繋がった圧搾溝からなる全周溝7を備えているが、全周溝7を備えなくても良い。
【0030】
本発明の吸収性物品は、生理用ナプキン以外にも、例えば、パンティーライナー、失禁パッド、展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ等の吸収性物品に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の吸収性物品(生理用ナプキン)の一実施形態の平面図である。
【図2】図1の吸収性物品のX−X断面図である。
【図3】本発明の吸収性物品(生理用ナプキン)の表面シートの一実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 吸収性物品(生理用ナプキン)
1a 吸収性物品の長手方向前方領域、1b 吸収性物品の長手方向後方領域
2 表面シート
2a 凸部、2b 凹部
3 裏面シート
4 吸収体
5 接合部
6 プレス溝
7 全周溝
L1 プレス溝の長さ、W1 プレス溝の幅
W2 凸部の頂部と隣接する凸部の頂部との間隔
h 凸部の高さ
L2 全周溝の長手方向の長さ、W3 全周溝の幅方向の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に表面シート、非肌当接面側に裏面シート及びこれら両シート間に配された吸収体とを具備する縦長の吸収性物品において、
前記表面シートは、肌当接面側に畝と溝が交互に形成された縦長の凹凸構造を有し、
さらには、前記表面シートと前記吸収体とが圧縮して形成されたプレス溝を有し、該プレス溝は、前記吸収性物品の長手方向に縦長で、かつ長手方向前方の幅方向中央領域に形成されている吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性物品の肌当接面側における長手方向前後領域、長手方向の両側部領域に亘り繋がった圧搾溝からなる全周溝を有し、該全周溝と前記プレス溝は吸収性物品の少なくとも長手方向前方領域において互いに交差してなる請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記プレス溝は前記吸収性物品の幅方向に並列して複数本形成されており、該プレス溝同士間のプレス溝が存在しない部位には、前記畝と溝が交互に形成された縦長の凹凸構造を有する請求項1、2記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−142401(P2009−142401A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321272(P2007−321272)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】