説明

吸収性物品

【課題】肌あたりのよい綿繊維を素材としたトップシートを有する吸収性物品において、トップシートに十分な撥水性を持たせ、かつ表面の液残りを防止できる吸収性物品を提供する。
【解決手段】透液性トップシートを、綿繊維40〜100重量%、合成繊維60〜0重量%から形成されるスパンレース不織布で構成する。前記不織布には表裏を貫通する多数の開口を設け、片面または両面に撥水剤を塗布する。トップシートの肌当接面の吸水度(JIS L 1907 バイレック法)を0〜5mmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド、使い捨ておむつ等の使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性バックシートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性トップシートとの間に綿状パルプ等からなる圧縮復元性を有する吸収体を介在したものが用いられている。
【0003】
トップシートは肌当接面を形成するものであるため、柔軟であることや、排泄液の吸収後でも乾燥した肌触りが得られること、肌に対して刺激が少ないこと等が要求されている。このような要求を満たす素材として、合成繊維の不織布、樹脂性メッシュシートが吸収性物品の分野、特に生理用ナプキンの分野で広く採用されている。しかし、合成繊維からなるトップシートは、痒みやかぶれ等の要因となる、という問題があった。
【0004】
これを解決するものとして、綿繊維(コットン)を素材としたトップシートが提案されているが、吸収性物品においては、トップシートが高い透液性を有し、素早く液を吸収体に到達させることが望まれるのに対し、通常の脱脂綿繊維をトップシートに含有させた場合、トップシート自体が高い保液性を有し、表面にべたつき感が残り易い、という問題があった。
【0005】
このような背景のもと、原綿に付着している天然油脂を残存させつつ漂白した綿繊維と、少なくとも繊維表面がオレフィン系重合体からなる熱可塑性短繊維とから構成されたスパンレース不織布を、吸収性物品のトップシートとして使用することが提案されている(特許文献1参照)。この技術では、綿繊維に残存する天然油脂の弱い撥水性と、熱可塑性短繊維の優れた撥水性とにより、トップシートの保液性が抑制される。さらに、吸収した液をトップシートの下の吸収層へ速やかに移動させるために、トップシートに開口を多数設けることも提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−139594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたトップシートは、原綿繊維の漂白に特殊な漂白処理が必要であり、しかもそれを行っても天然油脂が減少せざるを得ず、更にスパンレース法による不織布形成においても水流交絡工程による水洗作用により油脂が減少せざるを得ないため、結果的には撥水性が不十分となり、表面の液残りによるべたつきを十分に防止し、また、吸収した排泄液を十分に隠蔽できるものではなかった。
【0008】
また、特許文献1に開示されたトップシートの撥水性は、原綿に付着している天然油脂の残存量に依存するため、綿繊維の特徴を生かすべく綿繊維を高配合にすると撥水性が低下し、表面の液残りによるべたつきや、吸収した排泄液隠蔽性の低下が、より一層顕著になることも問題点であった。
【0009】
さらに、特許文献1に開示されたトップシートにおいては、撥水性の微細な調整や、部分的な撥水性の付与が困難であるとの問題点もあった。
【0010】
そこで、本発明の主たる課題は、肌あたりが良く、痒みやかぶれ等の要因になり難い等の綿繊維の数々の特徴を生かしつつも、表面の液残りによるべたつきを十分に防止でき、また、吸収した排泄液を十分に隠蔽できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置されたバックシートの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品において、
前記トップシートは、40〜100重量%の綿繊維と60〜0重量%の合成繊維とからなるスパンレース不織布に撥水剤が塗布され、肌当接面の吸水度が0mm〜5mmとされてなるものであり、且つ少なくとも排泄口部分に、表裏を貫通する多数の開口を有するものである、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
このように、本発明のトップシートにおいては、綿繊維高配合のスパンレース不織布を採用したことによって、肌あたりが良く、痒みやかぶれ等の要因になり難い等の綿繊維の数々の利点がもたらされる。しかも、その際に問題となる表面の液残りは、撥水剤の塗布(外添)により肌当接面の吸水度を十分に低く確保することによって、十分に改善される。ただし、単に吸水度を低くするだけでは、排泄物の液分はトップシートを透過しづらく、横モレ等の要因となるため、本発明では、トップシートにおける少なくとも排泄口部分に、表裏を貫通する多数の開口を設けることにより、速やかな液吸収を可能にしている。
【0013】
その結果、本発明によれば、表面の液残りによるべたつきを十分に防止できるようになる。また、トップシートの撥水性により、吸収した排泄液がトップシートの表面側に戻り難く且つトップシート自体も保液し難いことと、綿繊維の高配合によるトップシートの透明性の低さとが相まって、吸収した排泄液を十分に隠蔽できるようになる。
【0014】
なお、本発明における吸水とは、JIS L 1907 バイレック法の規定により測定される吸水度を意味する。また、排泄口部分とは、排泄口(生理用ナプキンにあっては排血口)と対向する部分を意味する。
【0015】
<請求項2記載の発明>
前記トップシートに用いられる合成繊維は、オレフィン系樹脂を原料とする繊度1.0〜3.0dtexの短繊維であり、
前記トップシートは、厚みが0.2〜2.0mm、繊維目付けが25〜60g/m2、個々の開口の面積が0.5〜8.0mm2、及び開口率が15〜65%であり、
前記撥水剤は、ステアリン酸化合物を含み、
前記撥水剤の塗布量は、繊維100重量部に対して、0.05〜0.15重量部であり、
生理用ナプキンである、
請求項1記載の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
生理用ナプキンの場合、このような構成を採用するのが好ましい。特に、撥水剤塗布量が多過ぎたり、個々の開口の面積が小さ過ぎたり、開口率が低過ぎたりするとトップシートを液が透過し難くなり、個々の開口の面積が大き過ぎると、一度開口を透過して吸収体側に移動した排泄液が開口を通じて逆戻りしたり、トップシートをその裏面側の部材に対して接着する接着剤等が開口を介して肌に付着したりするおそれがある。よって、上記の各数値範囲の組み合わせが非常に重要である。なお、開口率とは、トップシートの全面積に占める開口の総面積の割合を意味する。
【0017】
<請求項3記載の発明>
前記トップシートと前記吸収体との間に親水性不織布からなる中間シートを有する、請求項2に記載の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
このような親水性不織布からなる中間シート自体は従来から知られているが、本発明のように、非常に高い撥水性を有する開口トップシートと組み合わせて用いると、トップシートの高い撥水性にも関わらず、撥水性と親水性との差により、開口への排泄液の導入及び開口から中間シートへの排泄液の移動が極めて円滑となり、吸収速度を顕著に向上できるようになる利点がある。
【0019】
<請求項4記載の発明>
前記撥水剤が前記トップシート全面に塗布された、請求項3記載の吸収性物品。
【0020】
<請求項5記載の発明>
前記トップシートにおける吸収体側面の吸水度が肌当接面の吸水度より高くなっている、請求項4記載の吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
トップシート表面に付着した液体は、開口を通じて裏面側へ移動する際、吸収体側の面(裏面)の撥水性が肌当接面よりも低いことにより、極めて円滑に移動するようになる。また、この際、トップシートの裏面に沿う拡散が過度に抑制されないため、トップシートの吸収体側における拡散性も良好となる。さらに、トップシートの吸収体側に移動した排泄液は、撥水性の差により排泄液の移動が一方向となり、肌当接面側に戻り難くなるため、逆戻り防止効果がより一層のものとなる。
【0022】
なお、トップシートの吸収体側面と肌当接面の吸水度の差異は、JIS L 1907 バイレック法による吸水度の測定において、吸水後のシート両面を目視で比較することにより確認可能である。
【0023】
<請求項6記載の発明>
前記トップシート上に、前記撥水剤が塗布された撥水部分と、撥水剤が塗布されていない親水部分とを有し、前記撥水部分は排泄口部分を含むように設けられ、前記親水部分は前記排泄口部分の幅方向両側の部分を含むように設けられている、請求項3に記載の吸収性物品。
【0024】
(作用効果)
排泄口部分は排泄液を直接に受ける部分であるため撥水剤を塗布して逆戻り防止性を高め、一方、排泄口部分の幅方向両側の部分は、特に脚の動きによる擦れ等でかぶれや痒みを生じやすいため、撥水剤を塗布せずに綿繊維が本来有する吸湿性、吸汗性をそのまま発揮させることによって、総合的な着用感を顕著に向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、肌あたりが良く、痒みやかぶれ等の要因になり難い等の綿繊維の数々の特徴を生かしつつも、表面の液残りによるべたつきを十分に防止でき、また、吸収した排泄液を十分に隠蔽できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】生理用ナプキンの展開図である。
【図2】その横断面図(図1のII−II線矢視図)である。
【図3】その横断面図(図1のIII−III線矢視図)である。
【図4】トップシート表面の撥水剤塗布パターンの例を示す展開図である。(A)幅方向両側部に親水部分を有するパターン、及び(B)前後方向両端及び幅方向両側部に親水部分を有するパターン。
【図5】実施例及び比較例1〜3に係る吸収性物品の排泄液隠蔽性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
<生理用ナプキンの基本構造の一例>
図1は本発明に係る吸収性物品として、生理用ナプキンの一例を示した展開図である。図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図である。図中に例示される生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性バックシート2と、肌当接面3Fをなし、経血やおりものなどを速やかに透過させるトップシート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4,5と、吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部を含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSとから主に構成され、かつ吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では不透液性バックシート2とトップシート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している不透液性バックシート2と、立体ギャザーBSを形成しているサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性バックシート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップWB、WBが形成されている。図示例においては、吸収体4,5は、吸収体4の部分が中高部を形成する二層構造となっているが、一層構造としてもよく、また、同一の大きさ、形状の吸収体を重ねた二層構造としてもよい。
【0028】
不透液性バックシート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。不透液性バックシート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。不透液性バックシート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0029】
吸収体4,5としては、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。吸収体4,5は形状及びポリマー粉末保持等のためにクレープ紙等の包装シート4L,5Lによって囲繞するのが望ましい。図示例では、下層吸収体4の上側における幅方向中央部に沿って上層吸収体5が設けられているが、上層吸収体5及びその包装シート5Lを省略し、単一の吸収体4のみとする等、公知の吸収体構造を採用することができる。
【0030】
図示例では、トップシート3は吸収体4の幅よりも若干幅が広い程度とされ、吸収体4を覆うだけに止まり、トップシート3の幅方向外側は、トップシート3の両側部表面から延在するサイド不織布7(トップシートとは別の部材)により覆われている。サイド不織布7の幅方向中央側の部分は、立体ギャザーBSを形成している。サイド不織布7としては、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いることができる。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を15〜23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系や、パラフィン系等の撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0031】
サイド不織布7は、図2および図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性バックシート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これらサイド不織布7と不透液性バックシート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップWB、WBを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップWB、WBの外面側にはそれぞれ粘着剤層12…,13…を備え、ショーツに対する装着時に、ウイング状フラップW、Wが折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0032】
一方、サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材19が配設されるとともに、糸状弾性伸縮部材19の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材20,20が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、糸状弾性伸縮部材19配設部位を屈曲点として、断面くの字状に内側に開口を向けたポケットを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0033】
他方、本生理用ナプキン1においては、詳細には図4に示されるように、下層吸収体4の使用面側には、幅方向中央部にナプキン長手方向に細長く、かつ周方向に閉じた環状のエンボス凹部8によって区画される領域に、周囲に対して使用面側に高く隆起する上層吸収体5による中高部が形成されている。エンボス凹部8は、トップシート3の表面から吸収体4内まで食い込むように形成されている。中高部の厚みは、厚くし過ぎると下層吸収体4の剛性が上がり身体への密着性が低下するため3〜20mm、好ましくは5〜15mmとするのが好ましい。また、エンボス凹部8の後側には、エンボス凹部8に対して所定の間隔を空けて略逆傘形状の後端独立エンボス9が形成されている。
【0034】
<トップシート>
トップシート3は、吸収体4、5の表面側を覆う部分である肌当接面3Fを形成するものであり、綿繊維を含有するスパンレース不織布で構成されるのが特徴である。スパンレース不織布は、接着剤を使用しない、柔軟性を有する、等の利点を有する。
【0035】
トップシート3の不織布は、綿繊維単独で使用することもできるが、毛羽立ちが生じやすいため、合成繊維と混合して使用することが好ましい。合成繊維と混合して形成された不織布は、熱融着性を有し成型しやすい、液透過性に優れる、コシのあるシートとなるため皺やよじれによる液漏れが起こりにくい、等の利点を有する。不織布を形成する繊維の混合割合は、綿繊維が重量%、40〜100重量%、合成繊維が60〜0重量%であり、より好適には、綿繊維を40〜60重量%、合成繊維を60〜40重量%とする。最適な条件として、綿繊維約50重量%、合成繊維約50重量%を混合して形成した不織布を好ましく使用できる。トップシート3の厚みは0.2〜2.0mm、好適には0.5〜1.2mm、繊維目付けは25〜60g/m2、好適には30〜40g/m2とする。繊維目付けが25g/m2未満であるとシートの地合いムラや強度低下の原因となる他、排泄液の隠蔽性に劣るようになり、60g/m2を超えると排泄液を保持し易くなるという問題がある。
【0036】
綿繊維としては、木綿の原綿、精練・漂白した綿繊維あるいは精練・漂白後、染色を施した綿繊維、精練・漂白した脱脂綿繊維、さらには糸もしくは布帛になったものを解繊した反毛等、あらゆる綿繊維を使用できるが、特に綿繊維の油分により繊維の状態でも若干撥水性を備えた未脱脂綿が好ましい。
【0037】
トップシート3を構成する合成繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等、もしくはその複合繊維、共重合体、ブレンド体を使用することができる。使用される繊維の繊維長は、長繊維、短繊維、あるいはこれらを混合したもののうち、いずれを使用してもよい。繊度は、1.0〜3.0dtexが好ましい。
【0038】
トップシート3の透液性を高めるため、表離を貫通する多数の開口を設ける。具体的には、開口は、スパンレース不織布製造時の水流交絡工程において、繊維材料をメッシュ状支持体に担持させることで形成することができる。この場合、使用するメッシュの条件を変更することで、個々の開口のサイズ、開口率を調整することが可能である。もちろん、製造後の不織布にパンチ(打ち抜き)加工を施して開口を形成しても良い。開口は、トップシート全体に設けても、排泄口(生理用ナプキンの場合は排血口)と対応する部位にのみ設けても、全体に設けても良い。個々の開口は0.5〜8.0mm2、好ましくは約5mm2とし、開口率は15〜65%とする。開口が0.5mm2未満であれば経血が吸収体4,5へ移行しにくくトップシート表面の液残りの要因となり、8.0mm2を超えると開口からの液の逆戻り、吸収体4,5構成素材の表面露出の要因となる。
【0039】
トップシート3には撥水剤が外添塗布される。撥水剤としては、パラフィン系、シリコン系等の既知のもののうち、肌への刺激性の少ないものを適宜選択して使用することができるが、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸マグネシウム等の刺激性の少ない油脂を適宜選択して使用することがより好ましい。生理用ナプキンにおいてステアリン酸化合物を含む撥水剤を用いる場合、その塗布量は、繊維100重量部に対して、0.05〜0.15重量部とするのが好ましい(両面塗布の場合は両面の塗布量合計)。より好ましい塗布量は約0.08〜0.12重量部である。撥水剤塗布量は、0.05重量部未満であると撥水効果が不足することがあり、0.15重量部を超えると撥水性が高すぎ、かえって水分を透過しづらくなる。
【0040】
撥水剤は、肌当接面のみに塗布しても、肌当接面と吸収体4,5側の面との両面に塗布してもよいが、少なくとも、肌当接面の吸水度(JIS L 1907 バイレック法)は、0mm〜5mm、好適には0mm〜2mmとなるようにする。
【0041】
特に、トップシート3における吸収体4,5側の面の吸水度が肌当接面の吸水度より高くなっているとより好ましい。したがって、吸収体4,5側の面の吸水度(JIS L 1907)は、0mm〜10mm、特に2mm〜4mm程度であるのが好ましい。このような吸水度の差は、トップシートの3肌当接面にのみ撥水剤を塗布することで簡単に得ることができるが、トップシート3の両面に撥水剤を塗布することもでき、その場合は、吸収体4,5側の面には肌当接面よりも少ない量を塗布することとする。なお、撥水剤をトップシート3の肌当接面のみに塗布した場合であっても、厚み、目付によっては、吸収体4,5側の面も撥水性を有するものとなる。撥水剤の塗布面を片面にするか、両面にするか、両面にする場合に両面の塗布量の比はどうするかは、トップシート3の厚み、目付、開口等の条件と併せて、透液性と吸湿性をバランスよく保持できるよう、適宜選択する。
【0042】
撥水剤の塗布方法は、転写、噴霧、刷毛塗り、含浸、ディッピング等の既知の方法を適宜使用できる。シートの両面の吸水度に差異を持たせる場合には、転写による塗布方法を好ましく使用できる。
【0043】
撥水剤は、製造効率の観点から、全面塗布することが好ましいが、排泄液を受ける部分のみに塗布してもよい。例えば、図4(A)に示すように、幅方向両側部を除いて塗布剤塗布部分40を設けてもよい。また、図4(B)に示すように、幅方向中央かつ前後方向中間の部分にのみ、撥水剤塗布部分40を設けてもよい。
【0044】
<中間シート>
本発明に係る吸収性物品のトップシート3は多数の開口を有する。開口から吸収体4,5を構成するパルプ、ポリマー、接着剤等が露出するのを防ぐため、トップシート3と吸収体4,5の間に中間シート6を配することが好ましい。中間シート6は、吸収体4,5からの逆戻りの防止、クッション様効果により着用時の肌触りを柔らかくする効果も有する。
【0045】
図示例の中間シート6は、筒状に折り畳まれて2層構造となっているが、折り畳まずに単層構造としても良い。中間シート6は、肌当接面の全体にわたり設けても、幅方向中央且つ前後方向中間部(特に股間部)にのみ設けてもよい。
【0046】
中間シート6の素材は液透過性を有するものであれば良いが、親水性を有するものが特に好適である。このような親水性中間シート6を、本発明の撥水性開口トップシート3と組み合わせることにより、トップシート3の液透過性及び逆戻り防止性が顕著に向上する。このような親水性素材としては、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等、もしくはその複合繊維、共重合体、ブレンド体といった合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。不織布を構成する繊維は、長繊維、短繊維、あるいはこれらの混合のいずれも使用できる。繊度は、3.0〜7.0dtexであることが好ましい。中間シート6は、エアスルー、エアレイド、スパンボンド等の既知の形態の不織布をいずれも使用できるが、通気性を低下させないエアスルーの使用が好ましい。また、耐久親水不織布の使用が、より好ましい。中間シート6の目付けは、20〜30g/m2が好ましい。中間シート6は、トップシート3の裏面に接するように配置され、トップシート3の裏面にホットメルト又は熱融着(エンボス)により接合するのが望ましい。
【実施例】
【0047】
図1〜図3と同じ構造を有し、トップシートの構成繊維と撥水剤塗布の有無の条件のみ異なる吸収性物品を製造し、実施例及び比較例1,2とした。併せて、従来品を比較例3とした。実施例、比較例1〜3の吸収性物品の製造条件は、表1に示す通りである。表中の綿繊維は漂白綿、合成繊維はポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維(繊度5.6dtex、)を使用した。撥水剤としては、ステアリン酸化合物を主成分とする油剤を使用した。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例、比較例1〜3は、すべて中間シートを配したものを使用した。中間シートは、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維(繊度5.6dtex)のエアスルー不織布を使用した。
これらの吸収性物品の前後、幅方向の中央付近に人工経血3ccを3分間隔で3回注入し、吸収速度、経血隠蔽性、液の逆戻り量の検討を行った。
【0050】
〔吸収速度〕
3回目の人工経血注入時のトップシート表面から液が吸収体側に移行するまでの所要時間を計測した。
【0051】
〔逆戻り量〕
3回目の滴下の1分後、予め重量を測定してあるろ紙を乗せ、一定時間経過後に、5g/cm2荷重の錘を5分間載荷し、載荷後にろ紙重量を再度測定し、載荷前後の重量差から逆戻り量(g)を算出した。
【0052】
実施例、比較例1〜3の吸収性物品の吸収速度、逆戻り量は、表1に示す通りの結果となった。また、これらの吸収性物品の隠蔽性を示す写真を図5に示した。トップシートの不織布を形成する繊維が綿100%である場合、吸収性物品は、撥水剤塗布のない状態では吸収速度が遅く、逆戻り量が多く、着用感が良くないことが判明した(比較例2)。トップシートの不織布に綿繊維と合成繊維を混在させることにより、吸収スピードは向上するが、逆戻り量は依然として多く、また良好な隠蔽性も見られなかった(比較例1)。綿繊維と合成繊維を混在させた不織布に撥水剤を塗布することによって、吸収スピードの高さ、逆戻り量の少なさが従来品(比較例3)と同等となった(実施例)。さらに、隠蔽性においては、従来品よりも良好な結果が得られた。なお、従来品に比して、実施例の吸収性物品は綿独特の柔らかい肌あたりと風合いを有するものであった。
【0053】
以上より、本発明に係る吸収性物品は、従来品と同等の吸収スピードと逆戻り防止性を有し、従来品と同等以上の排泄液隠蔽性と着用感を有することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド、使い捨ておむつ等の使い捨て吸収性物品全般に利用可能なものである。
【符号の説明】
【0055】
1…生理用ナプキン、2…不透液性バックシート、3…トップシート、4…下層吸収体、5…上層吸収体、6…中間シート、7…サイド不織布、8…エンボス凹部、9…後端独立エンボス、40…撥水剤塗布部、BS…立体ギャザー、W…ウイング状フラップ、WB…臀部側ウイング状フラップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置されたバックシートの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品において、
前記トップシートは、40〜100重量%の綿繊維と60〜0重量%の合成繊維とからなるスパンレース不織布に撥水剤が塗布され、肌当接面の吸水度が0mm〜5mmとされてなるものであり、且つ少なくとも排泄口部分に、表裏を貫通する多数の開口を有するものである、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートに用いられる合成繊維は、オレフィン系樹脂を原料とする繊度1.0〜3.0dtexの短繊維であり、
前記トップシートは、厚みが0.2〜2.0mm、繊維目付けが25〜60g/m2、個々の開口の面積が0.5〜8.0mm2、及び開口率が15〜65%であり、
前記撥水剤は、ステアリン酸化合物を含み、
前記撥水剤の塗布量は、繊維100重量部に対して、0.05〜0.15重量部であり、
生理用ナプキンである、
請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートと前記吸収体との間に親水性不織布からなる中間シートを有する、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記撥水剤が前記トップシート全面に塗布された、請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートにおける吸収体側面の吸水度が肌当接面の吸水度より高くなっている、請求項4記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記トップシート上に、前記撥水剤が塗布された撥水部分と、撥水剤が塗布されていない親水部分とを有し、前記撥水部分は排泄口部分を含むように設けられ、前記親水部分は前記排泄口部分の幅方向両側の部分を含むように設けられている、請求項3に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−269029(P2010−269029A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124545(P2009−124545)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】