説明

吸収性物品

【課題】トップシートに綿繊維を含みつつも、フィットエンボスを形成しても皺の生じにくいトップシートを備える吸収性物品を提供すること。
【解決手段】透液性トップシート3と、透液性トップシート3の裏面側に配置されたバックシート2との間に、吸収体4,5が介在されて成り、透液性トップシート3の表面側から透液性トップシート3及び吸収体4を一体的に押圧することで形成されるフィットエンボス8を備える吸収性物品において、透液性トップシート3は、綿繊維と合成繊維とからなる不織布であり、且つ、綿繊維の配合率を50重量%未満とされた第1領域3aと、綿繊維の配合率を50重量%以上とされた第2領域3bとを有している、吸収性物品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキンや吸収パッドの吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキンや吸収パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートやポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性であるバックシートと、合成繊維の不織布や樹脂性メッシュシートなどの透液性であるトップシートとの間に、綿状パルプなどから成り体液を吸収可能とされた吸収体が介在されたものが用いられている。そして、このような吸収性物品では、フィット性を高め、液漏れを防止するために、下記特許文献1に示される「凹部5」のような、肌当接面側からトップシート及び吸収体を一体的に押圧することで形成されるフィットエンボスがしばしば設けられる。
【0003】
ところで、トップシートは肌当接面を形成するものであるため、柔軟であることや、体液の吸収後でも乾燥した肌触りが得られること、肌に対して刺激が少ないことなどが要求される。しかし、合成繊維からなるトップシートは、痒みやかぶれ等の要因となる、という問題があった。このような問題を解決するものとして、綿繊維(コットン)を素材としたトップシートが提案されているが、吸収性物品においては、トップシートには、高い透液性と、素早く液を吸収体に到達させる機能とが望まれるのに対し、通常の綿繊維をトップシートに含有させた場合、トップシート自体が高い保液性を呈し、表面にべたつき感が残り易い、という問題があった。このような背景のもと、綿繊維と合成繊維とから構成された不織布を、吸収性物品のトップシートとして使用することが提案されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−33054号公報
【特許文献2】特開2005−139594号公報
【特許文献3】特開2004−324038号
【特許文献4】特開2007−9356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、綿繊維は合成繊維よりも伸張率が低くコシがあるため、トップシートに綿繊維が含まれていると、フィットエンボスを形成する際にトップシートに皺が寄ってしまい、装着感やフィット性が悪化してしまうという問題があった。
そこで、本発明の主たる課題は、トップシートに綿繊維を含みつつも、フィットエンボスを形成しても皺の生じにくいトップシートを備える吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記課題を解決するための手段とそれらの作用効果を示す。
〔請求項1に係る発明〕
透液性トップシートと、透液性トップシートの裏面側に配置されたバックシートとの間に、吸収体が介在されて成り、透液性トップシートの表面側から透液性トップシート及び吸収体を一体的に押圧することで形成されるフィットエンボスを備える吸収性物品において、
透液性トップシートは、綿繊維と合成繊維とからなる不織布であり、且つ、綿繊維の配合率を50重量%未満とされた第1領域と、綿繊維の配合率を50重量%以上とされた第2領域とを有している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0007】
(作用効果)
本請求項に係る発明では、透液性トップシートが、綿繊維よりも合成繊維を多く含む領域(第1領域)を備えることによって、透液性トップシートが綿繊維で構成されているよりも伸びやすくなるため、透液性トップシートの表面側から透液性トップシート及び吸収体を一体的に押圧することで形成されるフィットエンボスが形成されることによる皺の発生を抑えることができる。また、これと共に、合成繊維よりも綿繊維の方が多く含まれる領域(第2領域)も備えているため、第2領域に含まれる綿繊維によって透液性トップシートに柔軟性を付与することができ、体液の吸収後でも乾燥した肌触りが得られ、且つ、肌に対して刺激が少ない。
【0008】
〔請求項2に係る発明〕
フィットエンボスは、排泄口部の両側に、それぞれ前後方向に曲線状に延在しており、
第1領域及び第2領域は、それぞれ前後方向に沿って延在する領域であり、
第1領域又は第2領域の少なくとも一方は複数設けられており、且つ、第1領域及び第2領域は、少なくともフィットエンボスの存在する前後領域に配されており、
第1領域と第2領域とは、幅方向に交互に配されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
一般的な生理用ナプキンや吸収パッドなどの吸収性物品では、本請求項に係る発明のように、フィットエンボスは排泄口部の両側に延在して形成される。このようなフィットエンボスが形成されると、前後方向に延在する皺が発生しやすいため、皺の発生を抑えることのできる第1領域は、前後方向に沿って延在していることが好ましい。
【0010】
また、本請求項に係る発明では、第1領域と第2領域とが、それぞれ前後方向に沿って延在する領域であり、第1領域又は第2領域の少なくとも一方は複数設けられており、第1領域及び第2領域は、少なくともフィットエンボスの存在する前後領域に配されており、且つ、第1領域と第2領域とは、幅方向に交互に配されているため、第1領域及び第2領域の両者の利点をフィットエンボスの存在する前後領域全体に亘って得ることができる。
【0011】
〔請求項3に係る発明〕
透液性トップシートにおける幅方向両端部には、第1領域が配置されており、これらの第1領域で透液性トップシートは隣接する部材に対して熱融着されている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
本請求項に係る発明では、透液性トップシートにおける幅方向両端部には、合成繊維を多く含む第1領域が配置されており、透液性トップシートの幅方向両端部において、隣接する部材に対して熱融着されている。このため、透液性トップシートが幅方向両端部から捲れにくくなる。
【0013】
〔請求項4に係る発明〕
透液性トップシートには、前後方向に延在する開口が複数設けられており、これらの開口は、幅方向長さよりも前後方向長さの方が長い、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
本請求項に係る発明では、透液性トップシートに開口が複数設けられているため、合成繊維よりも綿繊維を多く含むために伸びにくい第2領域の存在によって伸びにくくなっている透液性トップシートが伸びやすくなる。また、これらの開口は、幅方向長さよりも前後方向長さの方が長くなっているため、開口の面積あたりの幅方向に対する引っ張り強度の低下を抑えることができる。
【0015】
〔請求項5に係る発明〕
透液性トップシートにおける幅方向両端部には、透液性トップシートを幅方向両側に向かって引張した状態に保つサイドエンボスが前後方向に直線的に設けられており、
サイドエンボスは、透液性トップシートの表面側から透液性トップシート及び透液性トップシートに隣接する部材を一体的に押圧することで形成される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
本請求項に係る発明では、透液性トップシートにおける幅方向両側には、透液性トップシートを幅方向両側に向かって引張した状態に保つサイドエンボスが設けられているため、幅方向に延在する皺の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、トップシートに綿繊維を含みつつも、フィットエンボスを形成しても皺の生じにくいトップシートを備える吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る吸収性物品の第1実施形態を示す展開図であり、透液性トップシート側から見た状態を示している。
【図2】図1のII−II矢視に対応する断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視に対応する断面図である。
【図4】本発明に係る吸収性物品の第1実施形態における透液性トップシートを示す平面図である。
【図5】本発明に係る吸収性物品の第2実施形態における透液性トップシートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る吸収性製品の第1実施形態を、図1〜図4を参照しつつ説明する。なお、図中の方向に関する語句は、説明の便宜上用いたものに過ぎない。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1〜図3に示すのは、本発明に係る吸収性物品の一例である生理用ナプキンの第1実施形態である。図中に示される生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性のバックシート2と、肌当接面3Fをなし、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性トップシート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4,5と、吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも排泄口部を含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSとから主に構成されている。
【0021】
吸収体4の周囲においては、その上下端縁部ではバックシート2と透液性トップシート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出しているバックシート2と、立体ギャザーBSを形成しているサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これらバックシート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップWB、WBが形成されている。
【0022】
バックシート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。バックシート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。バックシート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。なお、バックシート2は、必ずしも不透液性である必要はなく、不透液性でないシートからバックシート2を形成する場合、バックシート2の裏面に、さらに不透液性のシートを積層することもできる。
【0023】
吸収体4,5としては、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。吸収体4,5は形状及びポリマー粉末保持等のためにクレープ紙等の包装シート4L,5Lによって囲繞するのが望ましい。図示例では、下層吸収体4の上側における幅方向中央部に沿って上層吸収体5が設けられているが、上層吸収体5及びその包装シート5Lを省略し、単一の吸収体4のみとする等、公知の吸収体構造を採用することができる。
【0024】
図示例では、透液性トップシート3は吸収体4の幅よりも若干幅が広い程度とされ、吸収体4を覆うだけに止まり、透液性トップシート3の幅方向外側は、透液性トップシート3の両側部表面から延在するサイド不織布7(トップシートとは別の部材)により覆われている。サイド不織布7の幅方向中央側の部分は、立体ギャザーBSを形成している。サイド不織布7としては、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いることができる。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を18〜23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系や、パラフィン系等の撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0025】
サイド不織布7は、図2および図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えてバックシート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これらサイド不織布7とバックシート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップWB、WBを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップWB、WBの外面側にはそれぞれ粘着剤層12…,13…を備え、ショーツに対する装着時に、ウイング状フラップW、Wが折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0026】
一方、サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材19が配設されるとともに、糸状弾性伸縮部材19の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材20,20が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、糸状弾性伸縮部材19配設部位を屈曲点として、断面くの字状に内側に開口を向けたポケットを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0027】
他方、本生理用ナプキン1においては、詳細には図2に示されるように、下層吸収体4の使用面側には、幅方向中央部にナプキン長手方向に細長く、かつ周方向に閉じた環状のフィットエンボス8によって区画される領域に、周囲に対して使用面側に高く隆起する上層吸収体5による中高部が形成されている。フィットエンボス8は、図1に示されるように、装着者の排泄口と対応する排泄口部Zを囲むようにして設けられている。この他、フィットエンボス8は、周方向に閉じた環状に設けられていなくても良いが、この場合、少なくとも排泄口部Zの両側に、それぞれ前後方向に曲線状に延在するよう設けられる。フィットエンボス8が少なくとも排泄口部Zの両側に前後方向に曲線状に延在するよう設けられていることによって、装着者の排泄口に生理用ナプキン1がフィットするようになっている。
【0028】
フィットエンボス8は、透液性トップシート3の表面から吸収体4内まで食い込むように形成されている。中高部の厚みは、厚くし過ぎると下層吸収体4の剛性が上がり身体への密着性が低下するため3〜20mm、好ましくは5〜15mmとするのが好ましい。
【0029】
図1及び図2に示すように、透液性トップシート3と吸収体4,5との間には、中間シート6を配されている。中間シート6は、吸収体4,5からの逆戻りの防止、クッション様効果により着用時の肌触りを柔らかくする効果も有する。
【0030】
図示例の中間シート6は、筒状に折り畳まれて2層構造となっているが、折り畳まずに単層構造としても良い。中間シート6は、肌当接面の全体にわたり設けても、幅方向中央且つ前後方向中間部(特に股間部)にのみ設けてもよい。
【0031】
中間シート6の素材は液透過性を有するものであれば良いが、親水性を有するものが特に好適である。このような親水性中間シート6を、透液性トップシート3と組み合わせることにより、透液性トップシート3の液透過性及び逆戻り防止性が顕著に向上する。このような親水性素材としては、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等、もしくはその複合繊維、共重合体、ブレンド体といった合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。不織布を構成する繊維は、長繊維、短繊維、あるいはこれらの混合のいずれも使用できる。
【0032】
中間シート6としては、エアスルー、エアレイド、スパンボンド等の既知の形態の不織布をいずれも使用できるが、通気性を低下させないエアスルーの使用が好ましい。また、耐久親水不織布の使用が、より好ましい。中間シート6は、透液性トップシート3の裏面に接するように配置され、透液性トップシート3の裏面にホットメルト又は熱融着(エンボス)により接合するのが望ましい。
【0033】
(透液性トップシート3)
透液性トップシート3は、図2に示すように、吸収体4、5の表面側を覆う部分である肌当接面3Fを形成するものであり、綿繊維と合成繊維とから成る不織布で構成されるのが特徴である。不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。この中でも特に、スパンレース不織布は、接着剤を使用しない、柔軟性を有する、などの利点を有するため好ましい。
【0034】
図4に示すように、透液性トップシート3は、綿繊維の配合率を50重量%未満とされた第1領域3aと、綿繊維の配合率を50重量%以上とされた第2領域3bとから構成されている。第1領域3a及び第2領域3bは、前後方向に沿う帯状の領域であり、それぞれ複数設けられている。第1領域3aと第2領域3bとは、幅方向に交互に配されており、透液性トップシート3の幅方向両端部には、第1領域3aがそれぞれ配されている。透液性トップシート3は、図2及び図3に示すように、幅方向両端部の第1領域3aで隣接する部材であるバックシート2とサイド不織布7とに対して熱融着されている。
【0035】
また、透液性トップシート3の幅方向中央には、第2領域3bが配されており、すべての第1領域3a及び第2領域3bは、透液性トップシート3の幅方向中央(符号Cで示されるセンターライン)を軸として対称に現れている。なお、図4中の符号8Xは、フィットエンボス形成部分を示しており、符号Aは、少なくともフィットエンボス形成部分8Xの存在する前後領域(フィットエンボス8の存在する前後領域でもある)を示している。
【0036】
第1領域3aの綿繊維の配合率は、50重量%未満とされるが、好ましくは10重量%以上50重量%未満とされ、より好ましくは、30重量%以上50重量%未満とされる。この一方、第2領域3bの綿繊維の配合率は、50重量%以上とされるが、好ましくは50重量%以上90重量%未満され、より好ましくは、50重量%以上70重量%未満とされる。
【0037】
トップシート3の厚みは0.2〜2.0mm、好適には0.5〜1.2mm、繊維目付けは25〜60g/m2、好適には30〜40g/m2とする。繊維目付けが25g/m2未満であると排泄液の隠蔽性に劣るようになり、60g/m2を超えると排泄液を保持し易くなるという問題がある。
【0038】
第1領域3aの幅方向長さは10〜30mmとされ、第2領域3bの幅方向長さは10〜30mmとされており、より好ましくは、第1領域3aの幅方向長さは10〜20mmとされ、第2領域3bの幅方向長さは10〜20mmとされる。但し、第1領域3aの幅方向長さよりも、第2領域3bの幅方向長さの方が5〜10mm長いとされる。透液性トップシート3がこのように形成されていると、綿繊維の風合いを良好に得ることができる。
【0039】
透液性トップシート3を構成する綿繊維としては、木綿の原綿、精練・漂白した綿繊維あるいは精練・漂白後、染色を施した綿繊維、さらには糸もしくは布帛になったものを解繊した反毛等、あらゆる綿繊維を使用できるが、特に精練・漂白した親水性の脱脂綿繊維が好ましい。
【0040】
透液性トップシート3を構成する合成繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等、もしくはその複合繊維、共重合体、ブレンド体を使用することができる。使用される繊維の繊維長は、長繊維、短繊維、あるいはこれらを混合したもののうち、いずれを使用してもよい。繊度は、1.0〜3.0dtexが好ましい。
【0041】
次に、本実施形態に係る生理用ナプキン1の作用効果を説明する。
本実施形態に係る生理用ナプキン1では、透液性トップシート3が、綿繊維よりも合成繊維を多く含む第1領域3aを備えることによって、透液性トップシート3が綿繊維で構成されているよりも伸びやすくなるため、透液性トップシート3の表面側から透液性トップシート3及び吸収体4を一体的に押圧することで形成されるフィットエンボス8が形成されることによる皺の発生を抑えることができる。また、これと共に、合成繊維よりも綿繊維の方が多く含まれる領域第2領域3bも備えているため、第2領域3bに含まれる綿繊維によって透液性トップシート3に柔軟性を付与することができ、体液の吸収後でも乾燥した肌触りが得られ、且つ、肌に対して刺激が少ない。
【0042】
本実施形態に係る生理用ナプキン1では、第1領域3aと第2領域3bとが、それぞれ前後方向に沿って延在すると共に、幅方向において交互に配されているため、両者の利点を透液性トップシート3全体に亘って得ることができる。
【0043】
本実施形態に係る生理用ナプキン1では、透液性トップシート3における幅方向両端部には、合成繊維を多く含む第1領域3aが配置されており、透液性トップシート3の幅方向両端部において、隣接する部材であるバックシート2とサイド不織布7に対して熱融着されている。このため、透液性トップシート3が幅方向両端部から捲れにくくなっている。
【0044】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る吸収性物品の第2実施形態について、図5を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る生理用ナプキン1は、透液性トップシート3に複数の開口10が設けられている点で第1実施形態に係る生理用ナプキン1と異なり、その他の点で一致する。
【0045】
本実施形態に係る生理用ナプキン1では、透液性トップシート3には、開口10が均一且つ千鳥状に設けられており、個々の開口10の面積は0.5〜8.0mm2、好ましくは5mm2とし、透液性トップシート3の面積に対する開口10全ての総面積は15〜65%とする。開口が0.5mm2未満であれば経血が吸収体4,5へ移行しにくく透液性トップシート3表面の液残りの要因となり、8.0mm2を超えると開口10からの液の逆戻り、吸収体4,5構成素材の表面露出の要因となる。また、開口10は、前後方向長さが1.0〜3.5mm、幅方向長さが0.65〜2.9mmとされた楕円形状を成しており、幅方向長さよりも前後方向長さの方が長くなるよう形成されている。なお、図5に示す例では、開口10は、透液性トップシート3全体に設けられているが、開口10の配置はこれに限定されず、第1領域3aにのみ、又は、第2領域3bにのみ設けるということもできる。その中でも特に透液性トップシート3に皺が発生しにくいという理由から、開口10は透液性トップシート3全体に設けられていることが好ましい。
【0046】
前後方向に隣接する一対の開口10同士の離間距離L1は、1.0〜5.0mmとされており、より好適には2.0〜3.0mmとされる。この一方幅方向に隣接する一対の開口10同士の離間距離L2は、1.0〜5.0mmとされ、より好適には2.0〜3.0とされる。前後方向に隣接する一対の開口10同士の離間距離L1が1.0mm未満、或いは幅方向に隣接する一対の開口10同士の離間距離L2が1.0mm未満であると、開口10が密になりすぎて透液性トップシート3の強度が著しく低下してしまう。この一方、前後方向に隣接する一対の開口10同士の離間距離L1が5.0mm超過、或いは幅方向に隣接する一対の開口10同士の離間距離L2が5.0mm超過であると、開口10が疎になりすぎて開口10を形成することによるメリットを十分に享受することができない。
【0047】
開口10は、スパンレース不織布製造時の水流交絡工程において、繊維材料をメッシュ状支持体に担持させることで形成することができる。この場合、使用するメッシュの条件を変更することで、個々の開口10のサイズ、開口率を調整することが可能である。もちろん、製造後の不織布にパンチ(打ち抜き)加工を施して開口10を形成しても良い。
【0048】
本実施形態に係る生理用ナプキン1では、透液性トップシート3に開口10が複数設けられているため、透液性が向上すると共に、合成繊維よりも綿繊維を多く含むために伸びにくい第2領域3bの存在によって伸びにくくなっている透液性トップシート3が伸びやすくなる。また、開口10は、幅方向長さよりも前後方向長さの方が長くなっているため、開口の面積あたりの幅方向に対する引っ張り強度の低下を抑えることができる。開口10は、均一に千鳥状に設けられているため、開口10の存在によって幅方向の強度が弱まりにくくなっていると共に、開口10を形成したことによる皺の発生を抑えることができる。
【0049】
〔その他の実施形態〕
(サイドエンボス)
図4及び図5に示すように、透液性トップシート3の幅方向両端部に配されたサイドエンボス形成部分9には、サイドエンボスを設けることができる。これらのサイドエンボスは、透液性トップシート3の表面側から透液性トップシート3及び透液性トップシート3に隣接する部材であるバックシート2及びサイド不織布7を一体的に押圧することで形成される。また、サイドエンボスは、透液性トップシート3を幅方向両側に向かって引張した状態で形成される。このため、透液性トップシート3の幅方向に延在する皺の発生を抑えることができる。なお、サイドエンボスは、図4及び図5において符号9で示されるサイドエンボス形成部分のように、前後方向に直線的に設けられていることが好ましい。サイドエンボスは、直線的に設けられていれば破線や一点鎖線などの線状であっても良い。
【0050】
(撥水剤)
透液性トップシート3には、撥水材を塗布することもできる。透液性トップシート3に撥水剤が塗布されていると、透液性トップシート3に含まれる親水性の綿繊維が体液を保持することによって、透液性トップシート3がべたついてしまうことを軽減することができる。
【0051】
第1実施形態の透液性トップシート3に撥水材を塗布する場合、第1領域3aには撥水材を塗布せず、第2領域3bにのみ撥水材を塗布することが好ましい。このように撥水剤が塗布されていることによって、第2領域3bがべたついてしまうことを軽減できる。第1領域3aに撥水剤が塗布しないのは、撥水剤が透液性トップシート3の全体に塗布されていると、体液が透液性トップシート3を通過することを妨げてしまうからである。また、第2領域3bに撥水剤を塗布するとしたのは、第2領域3bの方が第1領域3aに比べて綿繊維の配合率が高く、体液によってべたつきやすいためである。
【0052】
第2実施形態の透液性トップシート3に撥水材を塗布する場合、撥水剤は透液性トップシート3の全体に塗布することが好ましい。第2実施形態の透液性トップシート3には、開口10が設けられているため、撥水剤の塗布によって、体液が透液性トップシート3をほとんど通過できなくなってしまうようなことがないからである。
【0053】
撥水剤としては、パラフィン系、シリコン系等の既知のもののうち、肌への刺激性の少ないものを適宜選択して使用することができるが、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸マグネシウム等の刺激性の少ないもの、中でも天然のものを適宜選択して使用することがより好ましい。生理用ナプキンにおいてステアリン酸化合物を含む撥水剤を用いる場合、その塗布量は、繊維100重量部に対して、0.05〜0.15重量部とするのが好ましい(両面塗布の場合は両面の塗布量合計)。より好ましい塗布量は約0.08〜0.12重量部である。撥水剤塗布量は、0.05重量部未満であると撥水効果が不足することがあり、0.15重量部を超えると撥水性が高すぎ、かえって水分を透過しづらくなる。
【0054】
撥水剤は、透液性トップシート3の表面(肌当接面)のみに塗布しても、表面と裏面(吸収体4,5側の面)との両面に塗布してもよいが、少なくとも、表面の吸水度(JIS L 1907 バイレック法)は、0mm〜5mm、好適には0mm〜2mmとなるようにする。
特に、透液性トップシート3における裏面の撥水度が表面の撥水度より低くなっている、換言すれば、透液性トップシート3における表面の吸水度が裏面の吸水度より低くなっているとより好ましく、その場合の裏面の吸水度(JIS L 1907 バイレック法)は、2〜10mm、特に2〜4mm程度であるのが好ましい。このような吸収度差は、トップシートの3表面にのみ撥水剤を塗布することで簡単に得ることができるが、透液性トップシート3の両面に撥水剤を塗布することもでき、その場合は、裏面には表面よりも少ない量を塗布することとする。なお、撥水剤を透液性トップシート3の表面のみに塗布した場合であっても、厚み、目付によっては、裏面も撥水性を有するものとなる。撥水剤の塗布面を片面にするか、両面にするか、両面にする場合に両面の塗布量の比はどうするかは、透液性トップシート3の厚み、目付、開口等の条件と併せて、透液性と吸湿性をバランスよく保持できるよう、適宜選択することが好ましい。
【0055】
撥水剤の塗布方法は、転写、噴霧、刷毛塗り、含浸、ディッピング等の既知の方法を適宜使用できる。透液性トップシート3の両面の撥水度又は吸水度に差異を持たせる場合には、転写による塗布方法を好ましく使用できる。撥水剤は、製造効率の観点から、全面塗布することが好ましいが、排泄口部Zのみ、或いは排泄口部Z及びその周辺に塗布してもよい。
【0056】
(第1領域3a及び第2領域3bの配置)
上述した例では、透液性トップシート3の幅方向中央には、第2領域3bが配されているが、第1領域3aが配されていても良い。要は、透液性トップシート3の幅方向両端部には、第1領域3aがそれぞれ配されており、且つ、すべての第1領域3a及び第2領域3bが、透液性トップシート3の幅方向中央(符号Cで示されるセンターライン)を軸として対称に現れていれば良い。
【0057】
第1領域3a及び第2領域3bは、図4及び図5に示した例のように、透液性トップシート3の全面に形成されていなくとも良く、少なくともフィットエンボス形成部分8Xの存在する前後領域Aに形成されていれば良い。少なくともフィットエンボス形成部分8Xの存在する前後領域Aに形成されていると、フィットエンボス8形成時の皺の発生を抑えることができる。この他には、第1領域3a又は第2領域3bの少なくとも一方が複数設けられており、他方は単数設けられている形態も提案される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る吸収性物品は、生理用ナプキンや吸収パッドとして利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・生理用ナプキン(吸収性物品)
2・・・バックシート
3・・・透液性トップシート
3a・・・第1領域
3b・・・第2領域
4・・・吸収体
5・・・吸収体
8・・・フィットエンボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性トップシートと、透液性トップシートの裏面側に配置されたバックシートとの間に、吸収体が介在されて成り、透液性トップシートの表面側から透液性トップシート及び吸収体を一体的に押圧することで形成されるフィットエンボスを備える吸収性物品において、
透液性トップシートは、綿繊維と合成繊維とからなる不織布であり、且つ、綿繊維の配合率を50重量%未満とされた第1領域と、綿繊維の配合率を50重量%以上とされた第2領域とを有している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
フィットエンボスは、排泄口部の両側に、それぞれ前後方向に曲線状に延在しており、
第1領域及び第2領域は、それぞれ前後方向に沿って延在する領域であり、
第1領域又は第2領域の少なくとも一方は複数設けられており、且つ、第1領域及び第2領域は、少なくともフィットエンボスの存在する前後領域に配されており、
第1領域と第2領域とは、幅方向に交互に配されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
透液性トップシートにおける幅方向両端部には、第1領域が配置されており、これらの第1領域で透液性トップシートは隣接する部材に対して熱融着されている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前後方向に延在する開口が複数設けられており、これらの開口は、幅方向長さよりも前後方向長さの方が長い、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
透液性トップシートにおける幅方向両端部には、透液性トップシートを幅方向両側に向かって引張した状態に保つサイドエンボスが前後方向に直線的に設けられており、
サイドエンボスは、透液性トップシートの表面側から透液性トップシート及び透液性トップシートに隣接する部材を一体的に押圧することで形成される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−279604(P2010−279604A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136223(P2009−136223)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】