説明

吸収性物品

【課題】吸収性物品と着用者の肌との間に滞留する湿気を効率よく速やかに排出することができ、快適に着用することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシート18と、液不透過性材料からなるバックシート20と、シート材70,76からなり、内部空間60が形成された管状を呈し、その頂部側に、伸張状態の起立用伸縮材64が固定されたチューブ状隔壁62Aと、を備え、チューブ状隔壁62Aには、起立用伸縮材64を挟んだ両側に、相対向する二つの側面が形成され、第1の側面に第1の孔66が形成されるとともに、第2の側面にも第2の孔68が形成されており、チューブ状隔壁62Aは、第1の孔66が股下部4側に配向し、第2の孔68が後身頃6の端縁6c側に配向するように、後身頃6の端縁6cに沿って配置されている吸収性物品1A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体、トップシート及びバックシートを備えた吸収性物品に関するものである。より具体的には、吸収性物品と着用者の肌との間に滞留する湿気を外部に排出する排気機構を備えた吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、使い捨ておむつ、尿パッド等の吸収性物品は、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、を備えている。
【0003】
このような吸収性物品は、トップシートが着用者の肌と接するように使用され、排泄物はトップシートの液透過性部分を透過して吸収体に吸収・保持される。そして、吸収体の裏面側に配置された液不透過性のバックシートによって、排泄物が外部に漏洩することが防止される。
【0004】
ところで、吸収性物品の着用時には、尿や汗、体液等から発生する湿気が吸収性物品と着用者の肌との間に滞留し易い。この湿気は、かぶれ等のスキントラブルの原因となり、蒸れ、べたつき等の不快感を生じさせるため好ましくない。
【0005】
そこで、吸収性物品と着用者の肌との間の空間に滞留する湿気を外部に排出し、吸収性物品内部の湿度を低下させるために、種々の提案がなされている。例えば、多数の微細孔が形成されたフィルムを用いたバックシート材や防漏シート等が提案されている(特許文献1及び2参照)。また、トップシートと吸収体の間に、吸湿剤が密封された吸湿剤封入体を配した吸収性物品も提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−348163号公報
【特許文献2】特開2007−020664号公報
【特許文献3】特開2003−116912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のバックシート材や特許文献2に記載の防漏シートは、フィルムに形成された多数の微細孔によって、漏れを防止しつつ透湿性を向上させることが可能であり、吸収性物品と着用者の肌との間の湿気をある程度排出することができる。しかしながら、これらの発明はバックシート材等の本来的な性能である防漏性を確保した上で、透湿性を改善するものに留まる。従って、透湿性の向上には自ずと限界があり、吸収性物品と着用者の肌との間に滞留する湿気を効率よく排出可能なものではないというのが現状であった。
【0008】
また、特許文献3に記載の吸収性物品は、吸湿剤を用いて湿気を吸収させることによって、吸収性物品と着用者の肌との間の湿度を低下させることを期待できる。しかしながら、吸湿剤により湿気を吸収する方法では、速やかに湿気を除去することができないという点で解決すべき課題を残すものであった。
【0009】
本発明は、吸収性物品と着用者の肌との間に滞留する湿気を効率よく速やかに排出することができ、快適に着用することができる吸収性物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、シート材からなり、その第1の側面、第2の側面の双方に湿気が通過可能な孔が形成された管状の隔壁(チューブ状隔壁)を、少なくとも後身頃の端縁に沿って付設することとした。そして、着用者の動作に伴うチューブ状隔壁の変形を利用し、ポンプ類似の排気機構で吸収性物品と着用者の肌との間に滞留する湿気を吸収性物品の外部に積極的に排出することによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の吸収性物品が提供される。
【0011】
[1] 前身頃、股下部及び後身頃の各部から構成され、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、シート材からなり、外部から仕切られた内部空間が形成された管状を呈し、その頂部側に、前記内部空間の形成方向に向かって伸張状態の起立用伸縮材が固定されたチューブ状隔壁と、を備え、前記チューブ状隔壁には、前記起立用伸縮材を挟んだ両側に、相対向する二つの側面が形成され、第1の側面に前記内部空間と外部空間とを連通する第1の孔が形成されるとともに、第2の側面にも前記内部空間と外部空間とを連通する第2の孔が形成されており、前記チューブ状隔壁は、前記第1の側面及び前記第1の孔が前記股下部側に配向し、前記第2の側面及び前記第2の孔が前記後身頃の端縁側に配向するように、前記後身頃の端縁に沿って配置されている吸収性物品。
【0012】
[2] 前記チューブ状隔壁として、第1のチューブ状隔壁と第2のチューブ状隔壁とを備え、前記第1のチューブ状隔壁は、前記第1の側面及び前記第1の孔が前記股下部側に配向し、前記第2の側面及び前記第2の孔が前記後身頃の端縁側に配向するように、前記後身頃の端縁に沿って配置され、前記第2のチューブ状隔壁は、前記第1の側面及び前記第1の孔が前記股下部側に配向し、前記第2の側面及び前記第2の孔が前記前身頃の端縁側に配向するように、前記前身頃の端縁に沿って配置されている前記[1]に記載の吸収性物品。
【0013】
[3] 前記チューブ状隔壁は、前記内部空間を形成する管状の外殻部が形成されるとともに、前記内部空間に延出されるベロ部が形成されており、前記ベロ部に前記起立用伸縮材が固定されている前記[1]又は[2]に記載の吸収性物品。
【0014】
[4] 前記外殻部と前記ベロ部が、一体的なシート材によって形成されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0015】
[5] シート材によって構成され、一つのウエスト周り開口部及び一対の脚周り開口部が形成されたパンツ型を呈する外装シートと、前記吸収体が内包されたパッド状を呈し、前記外装シートの内面側に固定された吸収性本体と、を備え、前記外装シートは、前記シート材が、内面に配置されるインナーシートと外面に配置されるアウターシートとが貼り合わされて構成され、前記外装シートのウエスト周り部分には、前記外装シートの層間に、伸張状態のウエスト周り伸縮材が固定され、前記外装シートの腹周り部分には、前記インナーシートと前記アウターシートとの層間に、伸張状態の腹周り伸縮材が固定され、前記吸収性本体は、前記吸収体、前記トップシート及び前記バックシートが一体的なパッド状に構成された、パンツ型使い捨ておむつである前記[1]〜[4]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0016】
[6] 前記外装シートの前端部及び後端部のうち少なくとも一方の端部は、おむつのウエスト周り端縁を基点に内側に折り返されて折り返し部を形成しており、前記折り返し部を構成するシート材によって、前記チューブ状隔壁が形成されている前記[5]に記載の吸収性物品。
【0017】
[7] 前記折り返し部が、前記インナーシートと前記アウターシートとの積層部分によって形成され、前記インナーシートと前記アウターシートとの積層部分によって、前記チューブ状隔壁が形成されている前記[6]に記載の吸収性物品。
【0018】
[8] 前記インナーシート及び前記アウターシートは、一方のシートの前端縁及び後端縁のうち少なくとも一方の端縁から、他方のシートの端部がはみ出して単層部分を形成するように貼り合わされており、前記単層部分の少なくとも一部は、おむつの内側に折り返されて折り返し部を形成しており、前記折り返し部は、前記吸収性本体の一方の端部を被覆するように、前記インナーシート及び前記トップシートの表面に貼り合わされており、
前記折り返し部の表面に、前記チューブ状隔壁が付設されている前記[5]に記載の吸収性物品。
【0019】
[9] 前記インナーシート及び前記アウターシートは、一方のシートの前端縁及び後端縁のうち少なくとも一方の端縁から、他方のシートの端部がはみ出して単層部分を形成するように貼り合わされており、前記単層部分の少なくとも一部は、おむつの内側に折り返されて折り返し部を形成しており、前記折り返し部は、その一部が前記吸収性本体の一方の端部を被覆するように、前記インナーシート及び前記トップシートの表面に貼り合わされるとともに、他の一部が前記チューブ状隔壁を形成している前記[5]に記載の吸収性物品。
【0020】
[10] 前記外装シートの前記ウエスト周り伸縮材に代えて、前記外装シートのウエスト周り部分に、前記チューブ状隔壁が配置されている前記[5]〜[9]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0021】
[11] 前記インナーシート及び前記アウターシートは、一方のシートの前端縁及び後端縁のうち少なくとも一方の端縁から、他方のシートの端部がはみ出して単層部分を形成するように貼り合わされており、前記単層部分の少なくとも一部は、おむつの内側に折り返されて折り返し部を形成しており、前記折り返し部は、前記吸収性本体の一方の端部を被覆するように、前記インナーシート及び前記トップシートの表面に貼り合わされており、前記外装シートは、その股下部分及び腹周り部分は、前記インナーシートと前記アウターシートとが貼り合わされて構成されており、そのウエスト周り部分は、前記単層部分同士が貼り合わされて構成されている前記[10]に記載の吸収性物品。
【0022】
[12] 前記チューブ状隔壁が、吸収性物品の前身頃及び後身頃のうち少なくとも一方の腹周り部分に配置されている前記[5]〜[11]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0023】
[13] 前記チューブ状隔壁が、吸収性物品の前身頃及び後身頃のうち少なくとも一方のウエスト周り部分と腹周り部分の両部分をカバーするように配置されている前記[5]〜[11]のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0024】
本発明の吸収性物品は、吸収性物品と着用者の肌との間に滞留する湿気を効率よく速やかに排出することができ、快適に着用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の吸収性物品を実施するための最良の形態について、テープ型使い捨ておむつ及びパンツ型使い捨ておむつの例により具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える吸収性物品(例えば、尿パッド等)を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
なお、作図の都合上、図7Aにおいては、腹周り伸縮材を捨象した形で作図を行った。また、図7B、図8〜図11における図中の×印は、ホットメルト接着剤による接合部を示す。
【0027】
[1]定義等:
「テープ型使い捨ておむつ」とは、図1A及び図1Bに示す吸収性物品1Aのように、吸収体22と、トップシート18と、バックシート20とを備え、後身頃6の左右の各側縁6a,6bから延出するように配置された、前身頃2と後身頃6とを固定するための止着テープ11を更に備えた使い捨ておむつを意味するものとする。
【0028】
「前身頃」とは、図1Aに示す吸収性物品1Aのように、着用者に吸収性物品を装着した際に、着用者の腹側(身体前方)を覆う部分(図中、符号2)、「股下部」とは、着用者に吸収性物品を装着した際に、着用者の股下を覆う部分(図中、符号4)、「後身頃」とは、着用者に吸収性物品を装着した際に、着用者の背側(身体後方)を覆う部分を意味するものとする(図中、符号6)。
【0029】
「パンツ型使い捨ておむつ」とは、例えば、図7A〜図7Eに示す吸収性物品1Fのように、シート材によって構成され、一つのウエスト周り開口部10及び一対の脚周り開口部12が形成されたパンツ型を呈する外装シート16と、吸収体22が内包されたパッド状を呈し、外装シート16の内面側に固定された吸収性本体14と、を備えたものである。
【0030】
パンツ型使い捨ておむつ1Fにおいては、外装シート16は、シート材が、内面に配置されるインナーシート16aと外面に配置されるアウターシート16bとが貼り合わされて構成され、外装シート16のウエスト周り部分には、外装シート16の層間に(この例では、インナーシート16aとアウターシート16bとの層間に)、伸張状態のウエスト周り伸縮材42が固定され、外装シート16の腹周り部分には、インナーシート16aとアウターシート16bとの層間に、伸張状態の腹周り伸縮材44が固定されている。吸収性本体14は、吸収体22、トップシート18及びバックシート20が一体的なパッド状に構成されている。
【0031】
[2]本発明の吸収性物品の構成:
本発明の吸収性物品は、図1A及び図1Bに示す吸収性物品1Aのように、シート材70,76からなり、外部から仕切られた内部空間60が形成された管状を呈し、その頂部側に、内部空間60の形成方向に向かって伸張状態の起立用伸縮材64が固定されたチューブ状隔壁62Aを備え、チューブ状隔壁62Aには、起立用伸縮材64を挟んだ両側に、相対向する二つの側面が形成され、第1の側面に内部空間60と外部空間とを連通する第1の孔66が形成されるとともに、第2の側面にも内部空間60と外部空間とを連通する第2の孔68が形成されており、チューブ状隔壁62Aは、第1の側面及び第1の孔66が股下部4側に配向し、第2の側面及び第2の孔68が後身頃6の端縁6c側に配向するように、後身頃6の端縁6cに沿って配置されているものである。
【0032】
このような構成では、尿や体液から発生し、吸収性物品(主としてトップシート18)と着用者の肌との間に滞留する湿気が、第1の孔66からチューブ状隔壁62の内部空間60に入り込む。一方、第2の孔68からは、外気がチューブ状隔壁62の内部空間60に入り込む。湿気と外気はチューブ状隔壁62の内部空間60において混ざり合った後、第1の孔66と第2の孔68から排出される。また、シート材70,76によって形成されたチューブ状隔壁62Aは着用者の動作によって容易に変形するので、第1の孔66からチューブ状隔壁62の内部空間60に入り込んだ湿気が、着用者の動作によってチューブ状隔壁62Aが潰れる際に、第1の孔66と第2の孔68から排出される。そして、チューブ状隔壁62が潰れた状態から管状構造に回復する際に、再び、第1の孔66はおむつ内部の湿気を、第2の孔68は外気を吸い込む。即ち、ポンプ類似の排気機構で前記湿気を積極的に吸収性物品1Aの外部に排気することもできる。
【0033】
このような排気機構を用いれば、微多孔性のバックシートを用いた場合よりも湿気の排出量を大きくすることができ、吸湿剤により湿気を吸収する方法と比較して短時間に効果が発現される。即ち、吸収性物品と着用者の肌との間に滞留する湿気を効率よく速やかに排出することが可能となるため、かぶれ等のスキントラブルや、蒸れ、べたつき等の不快感を生ずることが少なく、快適に着用することができる。
【0034】
なお、図1A及び図1Bに示す吸収性物品1Aは、本発明をテープ型使い捨ておむつに適用した例であるが、例えば、図7A及び図7Bに示すように、本発明をパンツ型使い捨ておむつに適用することもできる。吸収性物品1Fは、シート材70からなり、外部から仕切られた内部空間60が形成された管状を呈し、その頂部側に、内部空間60の形成方向に向かって伸張状態の起立用伸縮材64が固定されたチューブ状隔壁62Fを備え、チューブ状隔壁62Fには、起立用伸縮材64を挟んだ両側に、相対向する二つの側面が形成され、第1の側面に内部空間60と外部空間とを連通する第1の孔66が形成されるとともに、第2の側面にも内部空間60と外部空間とを連通する第2の孔68が形成されており、チューブ状隔壁62Fは、第1の側面及び第1の孔66が股下部4側に配向し、第2の側面及び第2の孔68が後身頃6の端縁6c側に配向するように、後身頃6の端縁6cに沿って配置されているものである。
【0035】
[2−1]チューブ状隔壁:
図1A及び図1Bに示すように、チューブ状隔壁62Aは、シート材70,76からなり、外部から仕切られた内部空間60が形成された管状を呈し、その頂部側に、内部空間60の形成方向に向かって伸張状態の起立用伸縮材64が固定された部材である。
【0036】
[2−1A]材質:
「シート材」は、前記排気機構を機能させるため、変形容易なシート材であることが好ましい。また、撥水性材料や液不透過性材料からなるシート材で構成すれば、立体ギャザーと同様の効果を付与することも可能である。このようなシート材としては、カードエンボス、スパンボンド等の製法により製造された不織布や、防水性の高いSMS、SMMS等の不織布シート、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる。また、部分的に、孔空き不織布を使用することもできる。
【0037】
但し、チューブ状隔壁は必ずしも撥水性材料や液不透過性材料によって構成する必要はない。例えば、弱い親水性をもった材質によりチューブ状隔壁を構成してもよい。このような材質でチューブ状隔壁を構成すると、着用者の汗等が吸収されるため、チューブ状隔壁の表面に滞留した汗等によるスキントラブルを防止することができ、好ましい。
【0038】
[2−1B]管状構造:
図1Bに示すように、チューブ状隔壁62Aは、外部から仕切られた内部空間60が形成された管状を呈する部材である。「外部から仕切られた」とは、シート材を境界にして、チューブ状隔壁の内部空間と外部とが認識できる構造となっていればよく、気密的又は液密的に空間が区画されている必要はない。例えば、図1Bに示す吸収性物品1Aは、チューブ状隔壁62Aを構成するシート材70,76に、第1の孔66及び第2の孔68が形成され、内部空間60と外部空間は連通した状態にある。しかし、シート材70,76を境界にしてチューブ状隔壁62Aの内部空間60と外部空間とが明確に認識しうる構造となっている。
【0039】
本発明の吸収性物品においては、図1Bに示すように、チューブ状隔壁62Aが、複数枚のシート材70,76からなり、その複数枚のシート材70,76が、少なくともチューブ状隔壁62Aの頂部において相互に積層されて積層部が形成され、その積層部の層間に、起立用伸縮材64が伸張状態で固定されていることが好ましい。このような構造とすることで、チューブ状隔壁を着用者の肌に十分フィットさせることができ、着用者のウエスト部の動作をロスなくチューブ状隔壁(ひいては内部空間)の変形に利用することができる。従って、内部空間の圧縮・復元を活発に行わせることができ、湿気の排気性を向上させることができる。
【0040】
図1A及び図1Bに示すチューブ状隔壁62Aは、例えば、図1Dに示すような方法で作製することができる。まず、(a)図に示すように、シート材70とシート材76を一部が重なり合うように貼り合わせる。この際、シート材70,76の層間には伸張状態の起立用伸縮材64を挟み込んで固定する。また、剥離防止のため、シート材70,76の積層部にヒートシールによって接合部82を形成する。その後、シート材70のみからなる部分に第1の孔66を、シート材70とシート材76との積層部に第2の孔68を形成し、起立用伸縮材64の配置部分より接合部82側の部分で折り畳む。
【0041】
次いで、(b)図に示すように、シート材70の縁部に接着剤84を塗工し、起立用伸縮材64の配置部分より第1の孔66側の部分で折り畳む。更に、(c)図に示すように、接着剤84により、シート材70同士を貼り合わせ、チューブ状隔壁62A及び内部空間60を形成する。最後に、(d)図に示すように、チューブ状隔壁62Aを接着剤86等により吸収性物品本体(図示の例ではトップシート18)に貼り合わせることで、図1Bに示す吸収性物品1Aのような吸収性物品が得られる。
【0042】
この際、接着剤84及び接着剤86はチューブ状隔壁62Aが剥離しない限度において幅狭く塗工されていることが好ましい。接着剤86によって形成されるシート材70とトップシート18との接着部及び接着剤84によって形成されるシート材70同士の接着部を幅狭く形成することで、チューブ状隔壁62Aが接着部に拘束されることなく、起立用伸縮材64によって十分に立ち上がり、チューブ状隔壁62Aの有する排気効果が向上する。吸収性物品やチューブ状隔壁の構造により好ましい接着幅は異なるが、チューブ状隔壁の幅の10〜80%に相当する間隔で接着されていることが好ましい。なお、ここにいうチューブ状隔壁の「幅」とは、チューブ状隔壁が平面状に畳まれた状態の吸収性物品の前後方向の幅を意味するものであり、「接着幅」とは、チューブ状隔壁を固定する接着剤84の外縁と接着剤86の外縁の間隔を意味するものである。
【0043】
図1Bに示す吸収性物品1Aは、シート材76をチューブ状隔壁62Aの頂部のみならずチューブ状隔壁62Aの第2の側面にまで配置した例である。これに対し、図2に示す吸収性物品1Bは、起立用伸縮材64を配置するチューブ状隔壁62Bの頂部のみにシート材76を配置し、チューブ状隔壁62Bの第1の側面や第2の側面にはシート材76を配置していない例である。即ち、チューブ状隔壁62Bの第1の側面及び第2の側面をシート材70のみによって形成し、この部分に第1の孔66、第2の孔68を形成している。
【0044】
上記のような形態は、チューブ状隔壁62Bの第1の側面及び第2の側面が一枚のシート材70によって構成され柔軟性に優れる。従って、第1の側面及び第2の側面を複数枚のシート材で構成した場合と比較してチューブ状隔壁62Bをより容易に起立させることができ、着用者の肌への追従性を高めることができる。また、起立用伸縮材64を固定する部分のみにシート材76を配置しているため、シート材76の使用量を減らすことができる。
【0045】
また、図2に示すチューブ状隔壁62Bは、シート材70とシート材76との間に起立用伸縮材64を直接挟み込み固定した例である。一方、図3Aに示すチューブ状隔壁62Cは、シート材76を二つ折りに折り畳み、その折り畳み部分の層間に起立用伸縮材64を挟み込んで固定した例である。
【0046】
図3Aに示す構造は、起立用伸縮材64が着用者の肌に直接接触し難く、起立用伸縮材64によって着用者の肌が強く刺激されることが少ない。従って、伸縮材の接触によるカブレ等のスキントラブルを抑制することができる。また、図3Aのような構造は、シート材70とシート材76を異なる素材からなるシートによって構成することができる点において好ましい。例えば、着用者の肌と接触するシート材70として親水性の不織布シートを用い、シート材76として撥水性(疎水性)の不織布シートを用いることができる。また、シート材70として孔開きの不織布シート、シート材76として通常の(孔の開いていない)不織布シートを用いることもできる。シート材70として孔開きの不織布シートを用いることで、別途第1の孔66、第2の孔68を形成する必要がなくなるため好ましい。
【0047】
更に、図3Aに示すチューブ状隔壁62Cは、シート材70と、起立用伸縮材64を挟み込んだシート材76とをスパイラル状に塗工した接着剤(ホットメルト接着剤等)によって固定している。このような固定方法は、シート材70,76を全面的に接着固定した場合とは異なり、シート材70,76の間に空隙が形成され易く、前記のスキントラブル抑制効果が向上する。
【0048】
図3Aに示すチューブ状隔壁62Cは、例えば図3Bに示す方法で得ることができる。まず、シート材76の半面に接着剤102を塗工する。図示の例では接着剤102を面状に塗工している((a)図)。次いで、接着剤102の塗工部に伸張状態の起立用伸縮材64を配置する((b)図)。更に、シート材76の半面を折り返し、シート材76の折り畳み部分の層間に起立用伸縮材64を挟み込んで固定する((c)図)。
【0049】
一方、シート材70の表面には、スパイラル状に接着剤100を塗工しておく((d)図)。次いで、接着剤100の塗工部分に対して、起立用伸縮材64を配置固定したシート材76を貼り合わせ((e)図)、シート材70に第1の孔66、第2の孔68を穿設する((f)図)。更に、シート材70の一部(図面左側の領域)をシート材76に重ねるように折り畳む((g)図)。シート材70の側縁(図面右側の側縁)に沿って接着剤104を塗工し、シート材70を更に折り畳むとともに、接着剤104の塗工部分に対してシート材70のもう一方の側縁を貼り合わせることにより((h)図)、チューブ状隔壁62Cを得る((i)図)。
【0050】
また、本発明の吸収性物品においては、図4Aに示す吸収性物品1Dのように、チューブ状隔壁62Dが一枚のシート材70からなり、その一枚のシート材70の縁部が折り返されて折り返し部が形成され、その折り返し部の層間に起立用伸縮材64が伸張状態で固定されているものも好ましい。
【0051】
即ち、図1Bに示す吸収性物品1Aでは、2枚のシート材70,76によってチューブ状隔壁62Aを形成しているが、二枚のシート材を用いずに一枚のシート材によってチューブ状隔壁を形成することもできる。例えば、一枚のシート材をチューブ状隔壁の管状の外殻部を形成した後、その底部に当たる部分で折り返して折り返し部を形成し、その折り返し部に起立用伸縮材を伸張状態で固定すればよい。こうすることにより、一枚のシート材のみによって、図1Bに示す吸収性物品1Aのチューブ状隔壁62Aと同様の効果を奏するチューブ状隔壁を形成することができる。
【0052】
中でも、図4Bに示すように、内部空間60を形成する管状の外殻部90が形成されるとともに、内部空間60に延出されるベロ部92が形成されており、ベロ部92に起立用伸縮材64が固定されていることが好ましく、外殻部90とベロ部92が、一体的なシート材70によって形成されていることが更に好ましい。
【0053】
図4Bの例では、チューブ状隔壁62Dが、シート材70の一の端部E1側の領域70aによって、外部から仕切られた内部空間60を形成する外殻部90が形成されるとともに、シート材70の他の端部E2側の領域によって、内部空間60に延出されるベロ部92が形成されており、ベロ部92に起立用伸縮材64が固定されている。後述する図7Bに示す吸収性物品1F、図10に示す吸収性物品1I、図11に示す吸収性物品1Jも、そのようなベロ部が形成されたチューブ状隔壁62F,62I,62Jを備えた吸収性物品の例である。
【0054】
「ベロ部」とは、チューブ状隔壁の内部空間に突出するシート状の部分を意味する。「ベロ部」はチューブ状隔壁の管状の外殻部を構成するのではなく、専ら起立用伸縮材を配置するために設けられたチューブ状隔壁の内部構造を構成する部材である。
【0055】
図4Bは、図4Aのチューブ状隔壁62Dの部分を拡大して示す一部拡大断面図である。この図では説明の便宜上、シート材70のうち一の端部E1側の領域70aを斜線による塗りつぶしで、他の端部E2側の領域70bをドットパターンによる塗りつぶしで示してある。
【0056】
シート材70は、端部E1側の領域70a(一の端部E1から第1の折り返し点P1に至るまでの部分)と、端部E2側の領域70b(第1の折り返し点P1から端部E2に至るまでの部分)とからなる。そして、領域70aが外部から仕切られた内部空間60を形成する外殻部90を形成し、領域70bが内部空間60に延出されるベロ部92を形成している。ベロ部92は第2の折り返し点P2で折り返されて、その折り返し部分の層間に起立用伸縮材64が挟み込まれ固定されている。ベロ部92の折り返し点P2は外殻部90の内面に接着剤94により接合されている。
【0057】
図4Bに示す構造によれば、起立用伸縮材64が挟み込まれて固定されたベロ部92と着用者の肌に直接接触する外殻部90との間に空気層96が形成される。従って、図1B,図2に示す構造と比較して、起立用伸縮材64が着用者の肌を強く刺激することがなく、伸縮材の接触によるカブレ等のスキントラブルを有効に防止することができる。
【0058】
図4A及び図4Bに示すチューブ状隔壁62Dは、例えば、図4Cに示すような方法で作製することができる。まず、(a)図に示すように、シート材70の端部を折り返し、シート材70の層間に伸張状態の起立用伸縮材64を挟み込んで固定する。この際、接着剤94を塗布しておく。更に、端部E2側の領域70bを折り畳む。こうすることにより、(b)図に示すように、接着剤94によって、端部E2側の領域70bと端部E1側の領域70aとが重ねられた状態で接着される。この際、剥離防止のため、端部E2側の領域70bと端部E1側の領域70aとの積層部に、ヒートシールによって接合部82を形成する。端部E2側の領域70bの接着剤94で接着された部分と接合部82との間の部分がチューブ状隔壁のベロ部となる部分である。
【0059】
その後、(c)図に示すように、端部E1側の領域70aのみからなる部分に第2の孔68を、端部E2側の領域70bと端部E1側の領域70aとの積層部に第1の孔66を形成する。この際、接着剤98を塗布しておく。更に、端部E1側の領域70aのみからなる部分を折り畳む。
【0060】
(d)図に示すように、接着剤98によって、端部E2側の領域70bと端部E1側の領域70aとが接着される。こうすることによって、ベロ部を有するチューブ状隔壁62Dを形成することができる。
【0061】
[2−1C]起立用伸縮材:
図1A及び図1Bに示すように、チューブ状隔壁62Aは、その頂部側に、内部空間60の形成方向に向かって伸張状態の起立用伸縮材64が固定されている。「内部空間の形成方向」とは、チューブ状隔壁を構成する管状構造の2つの端部開口を結ぶ方向を意味する。この起立用伸縮材64の収縮力によって、チューブ状隔壁62Aが立体的に起立し、中空管状構造が維持される。また、変形容易なシート材70,76と起立用伸縮材64によって形成される内部空間60は力を加えれば自在に変形し、力が加わらない状態では元の形状に戻る。従って、ポンプ類似の排気機構を良好に機能させることができる。起立用伸縮材の種類、配置方法等は、後述する脚周り伸縮材等に準ずる構成とすればよい。
【0062】
起立用伸縮材は、その材質、太さ、伸張率等によっても異なるが、複数本配置することが好ましい。例えば、図1A及び図1Bに示す吸収性物品1Aは、チューブ状隔壁62Aの頂部に5本の起立用伸縮材64を配置した例である。
【0063】
[2−1D]孔:
図1A及び図1Bに示すように、チューブ状隔壁62Aには、起立用伸縮材64を挟んだ両側に、相対向する二つの側面が形成されている。この「側面」とは、チューブ状隔壁が起立した状態における側面を意味する。より具体的には、チューブ状隔壁のうち、起立用伸縮材の配置領域(複数の起立用伸縮材が配置されている場合には、最も外側に配置された2本の起立用伸縮材64で挟まれた領域)及び固定領域(チューブ状隔壁の底面部であって、おむつ本体に固定されている領域)を除いた部分を意味する。
【0064】
そして、チューブ状隔壁62Aには、第1の側面に内部空間60と外部空間とを連通する第1の孔66が形成されるとともに、第2の側面にも内部空間60と外部空間とを連通する第2の孔68が形成されている。また、チューブ状隔壁62Aは、第1の側面及び第1の孔66が股下部4側に配向し、第2の側面及び第2の孔68が後身頃6の端縁6c側に配向するように配置されている。このような構造とすることで、第1の孔66から湿気が取り込まれ、内部空間60で外気と混合された後、第2の孔68から吸収性物品1Aの外部に湿気が排出される。
【0065】
「孔」とは、チューブ状隔壁62Aの内部空間60と外部空間とを連通させる開口部を意味し、その形状は特に限定されない。例えば、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形等)等の形状を挙げることができる。なお、「孔」には、常時開口しているもののみならず、後述するようなスリットによって形成され、吸気・排気の際のみ開口するようなものも含む。
【0066】
チューブ状隔壁は、軌跡が凸形状のスリット又は交差する複数本のスリットによって第1の孔又は第2の孔が形成されていることが好ましい。第1の孔又は第2の孔を単なる開口部とするのではなく、前記スリットによって形成することで、極めて容易に第1の孔に弁的に機能する舌片を付設することができる。前記舌片により、排気経路に尿や体液が侵入することを抑制しつつ、湿気を通過させることができる。
【0067】
スリットの形態は特に限定されないが、「軌跡が凸形状のスリット」としては、図5Aに示すような、a)湾曲部を有するスリット74A、b)屈曲部を有するスリット74B等を挙げることができる。また、「交差する複数本のスリット」としては、同じく図5Aに示すような、c)二本のスリットが交差する十字状のスリット74C、d)3本のスリットが交差する星型のスリット74D等を挙げることができる。
【0068】
図5A及び図5Bに示すように、スリット74Aにより、略楕円状の舌片72A及び略楕円状の第1の孔66Aを形成することができ、スリット74Bにより、三角形状の舌片72B及び三角形状の第1の孔66Bを形成することができる。また、スリット74Cにより、三角形状の舌片72C及び矩形状の第1の孔66Cを形成することができ、スリット74Dにより、三角形状の舌片72D及び六角形状の第1の孔66Dを形成することができる。
【0069】
図1A及び図1Bに示すように、チューブ状隔壁62Aは、第1の孔66及び第2の孔68を複数形成することが好ましい。第1の孔及び第2の孔を複数形成することによって、その湿気を吸収性物品外部に排出し易くなる。
【0070】
「複数」の具体的な数は制限されない。孔の開口面積によっても異なるが、孔1個当たり開口面積が0.5〜10mmであれば、第1の孔、第2の孔各々5〜200個形成することが好ましく、10〜100個形成することが更に好ましい。5個以上とすることで、排気機能を確保することができる。一方、200個以下とすることで尿や体液が排気経路に流入することを有効に防止することができる。
【0071】
[2−1E]配置数:
本発明の吸収性物品には、チューブ状隔壁を1個備えるもののみならず、2個以上備えるものも含まれる。具体的には、図6に示す吸収性物品1Eのように、チューブ状隔壁として、第1のチューブ状隔壁62Aに加えて第2のチューブ状隔壁62Eを備え、第1のチューブ状隔壁62Aは、第1の側面及び第1の孔66が股下部4側に配向し、第2の側面及び第2の孔68が後身頃6の端縁6c側に配向するように、後身頃6の端縁6cに沿って配置され、第2のチューブ状隔壁62Eは、第1の側面及び第1の孔66が股下部4側に配向し、第2の側面及び第2の孔68が前身頃2の端縁2c側に配向するように、前身頃2の端縁2cに沿って配置されているものが好ましい。このような形態は、ウエスト周りの全周(前身頃側、後身頃側の双方)において、チューブ状隔壁の有する湿気の排出効果を得ることができる。
【0072】
第2のチューブ状隔壁は、既に述べたチューブ状隔壁と材質、構造等について特に異なることはなく、後身頃の端縁ではなく、前身頃の端縁に沿って配置されることが異なる。この場合、図6に示すように、チューブ状隔壁62A,62Eは、吸収性物品1Eの幅方向に向かって直線的に配置し、一対のチューブ状隔壁62A,62Eを平行に配置することが一般的である。
【0073】
[2−1F]配置位置:
図1Aに示すように、チューブ状隔壁62Aは、少なくとも後身頃6の端縁6cに沿って配置される。「端縁に沿って」とは、端縁と略平行に(即ち、おむつの幅方向に沿って直線的に)配置されていることを意味する。
【0074】
従って、本発明においては、チューブ状隔壁が後身頃の端縁に沿っている限り、端縁との位置関係は限定されない。但し、着用者の動作が大きいウエスト周りに近い部分、具体的には、後身頃の端縁近傍(端縁との最短距離が5mm以内の領域)に配置することが好ましい。着用者の動作によってチューブ状隔壁(ひいては、その内部空間)が大きく変形するため、前記排気機構を良好に機能させることができるからである。
【0075】
なお、チューブ状隔壁は起立用伸縮材によって立体的に起立するので、立体ギャザー的な機能を発揮させることも可能である。前記のように、チューブ状隔壁を後身頃の端縁近傍に配置することで、排泄物の背中漏れを有効に防止することができる。
【0076】
チューブ状隔壁を配置する際には、管状構造の左右縁部を、ホットメルト接着剤等を用いて封着することによって、内部空間が解放されないように縁部開口を閉塞することが一般的である。
【0077】
本発明の吸収性物品は、図7A及び図7Bに示す吸収性物品1F、図9に示す吸収性物品1Hのように、チューブ状隔壁62F,62Hが、吸収性物品の前身頃及び後身頃のうち少なくとも一方の腹周り部分に配置されていることも好ましい。ウエスト周りの端縁(この場合、後身頃の端縁6c)から離隔して腹周り部分に配置することで、図1A及び図1Bに示す吸収性物品1Aのようにウエスト周りの端縁(この場合、後身頃の端縁6c)近傍にチューブ状隔壁62Aを付設した場合と比較して、湿気を排出する際に、股下部近傍に滞留する湿気をより早くチューブ状隔壁に取り込むことができる。
【0078】
更に、本発明の吸収性物品は、図11に示す吸収性物品1Jのように、チューブ状隔壁62Jが、吸収性物品1Jの前身頃2及び後身頃6のうち少なくとも一方のウエスト周り部分と腹周り部分の両部分をカバーするように配置されていることが好ましい。このような構成は、チューブ状隔壁62Jが起立することによって、吸収性物品1J本体のウエスト周りから腹周りに至る広い範囲を着用者の肌から浮かせた状態とすることができる。従って、ウエスト周りのみにチューブ状隔壁62Aを付設した吸収性物品1A(図1A等)や、腹周りのみにチューブ状隔壁62Fを付設した吸収性物品1F(図7A等)と比較して、チューブ状隔壁62Jの内部空間60の容積が大きく、配置部位も広範囲にわたることから、より多くの湿気を効率的に排出することができる。また、チューブ状隔壁62Jの配置部位が広範囲にわたることで、ウエスト周り、腹周りのいずれの部分における着用者の動きもチューブ状隔壁62Jの変形に変換することができる。従って、図1Aや図7Aに示す吸収性物品1A,1Fのような形態と比較して、効率的に湿気を排出することができる。
【0079】
[2−1G]外装シートとの関係:
チューブ状隔壁は、他の部材から独立したシート材によって構成されていてもよいし、吸収性物品の他の部材を構成するシート材と一体的に構成されていてもよい。例えば、パンツ型使い捨ておむつの外装シートとチューブ状隔壁とを連続する一体的なシート材により構成することもできる。
【0080】
図8に示す吸収性物品1Gは、外装シート16の前端部及び後端部のうち少なくとも一方の端部が、おむつのウエスト周り端縁を基点に内側に折り返されて折り返し部を形成しており、その折り返し部を構成するシート材によって、チューブ状隔壁62Gが形成されているものである。この例では、外装シート16の後端部が、おむつのウエスト周り端縁を基点に内側に折り返されて折り返し部を形成している。そして、その折り返し部はインナーシート16aとアウターシート16bとの積層部分によって形成されており、その折り返し部の一部によって、チューブ状隔壁62Gが形成されている。このようにおむつの端部に第2の孔68を外向きに形成することで外気を取り入れ易くなる。また、着用者の動作によって形状変化が起こりやすいウエスト周り端部にチューブ状隔壁62Gを配置することで、チューブ状隔壁62Gが変形して前記排気機構を良好に機能させることができる。また、外装シート16の折り返し部分でチューブ状隔壁62Gを形成することによって、別体のチューブ状隔壁を吸収性物品の本体に取り付けた場合と比較して、製造工程を複雑にすることを回避することができる。即ち、簡便に製造することができる。
【0081】
また、パンツ型使い捨ておむつにおいては、図7A及び図7Bに示すように、インナーシート16a及びアウターシート16bは、一方のシートの前端縁及び後端縁のうち少なくとも一方の端縁から、他方のシートの端部がはみ出して単層部分を形成するように貼り合わされ(図示の例では、インナーシート16aの後端部から、アウターシート16bの後端部がはみ出してアウターシート16bのみからなる単層部分が形成されている。)、単層部分の少なくとも一部は、おむつの内側に折り返されて折り返し部を形成し、その折り返し部は、吸収性本体14の一方の端部を被覆するように、インナーシート16a及びトップシート18の表面に貼り合わされることがある。
【0082】
このような形態は、インナーシート又はアウターシートによって吸収性本体の端部が被包される形となり、吸収性本体の後身頃側の端部からの漏れを防止し得る点において好ましい。また、折り返し部が単層部分で形成されるため、インナーシートとアウターシートとの複層部分をそのまま折り返した場合と比較して、いずれかのシートの分だけ折り返し部を薄くすることができる。即ち、折り返し部を形成したことによる柔軟性の低下を極力抑制し、着用感に優れたおむつを構成することができる。
【0083】
なお、「単層部分の少なくとも一部が、・・・折り返し部を形成し」とは、a)単層部分の一部が折り返されている、b)単層部分の全部が折り返されている、c)単層部分の全部とこれに連続する複層部分が折り返されている、の3形態を含む趣旨である。
【0084】
図9に示す吸収性物品1Hは、インナーシート16aの後端縁から、アウターシート16bの後端部がはみ出して単層部分を形成するように貼り合わされており、単層部分の全部が、おむつの内側に折り返されて折り返し部を形成し、その折り返し部が、吸収性本体14の後端部を被覆するように、インナーシート16a及びトップシート18の表面に貼り合わされている例である。但し、本発明においては、図9とは逆に、アウターシートの後端縁から、インナーシートの後端部がはみ出して単層部分を形成するように貼り合わされていてもよい。この場合には、折り返されたインナーシートは、インナーシート自体の表面とトップシートの表面に対して貼り合わされることになる。
【0085】
前記のような形態では、図7A及び図7Bに示す吸収性物品1Fのように、折り返し部の表面に、チューブ状隔壁62Fが付設されていることが好ましい。折り返し部にチューブ状隔壁を付設すると、チューブ状隔壁62Fは吸収性本体14を構成するトップシート18に直接接触することがなく、尿や便に触れ難い。従って、チューブ状隔壁62Fが尿や便で濡れたり、汚れたりすることが少なく、着用者に対して不快感を与え難い。
【0086】
また、インナーシートやアウターシートが折り返し部を有する場合には、図9に示す吸収性物品1Hのように、折り返し部の一部が吸収性本体14の一方の端部を被覆するように、インナーシート16a及びトップシート18の表面に貼り合わされるとともに、他の一部がチューブ状隔壁62Hを形成していることが好ましい。換言すれば、図9に示す形態のように、折り返されたアウターシート16b(又はインナーシート)と、チューブ状隔壁62Hを構成するシート材70とが連続する1枚のシートにより構成されていることが好ましい。
【0087】
図9の形態では、アウターシート16bの折り返し部がチューブ状隔壁62Hの底面を兼ねることになる。このような形態は、折り返し部の表面にチューブ状隔壁62Fを付設した吸収性物品1Fと比較して(図7B参照)、チューブ状隔壁の底面側のシート積層数を1枚減らすことができる。また、チューブ状隔壁の底面と、アウターシート等の折り返し部とを接着する接着剤等も不要である。従って、底部側の柔軟性に優れ、着用者の動作に追従して変形し易い(即ち、湿気の排出効果が高い)チューブ状隔壁とすることができる。
【0088】
[2−1H]ウエスト周り伸縮材との関係:
本発明の吸収性物品においては、図10に示す吸収性物品1I、図11に示す吸収性物品1Jのように、外装シート16のウエスト周り伸縮材に代えて、外装シート16のウエスト周り部分に、チューブ状隔壁62I,62Jが配置されていることも好ましい。このような形態では、チューブ状隔壁をウエスト周り伸縮材として機能させることができる。チューブ状隔壁が着用者のウエスト周りにフィットするため、ウエスト周り伸縮材を別途配置しなくてもウエスト周り開口部からの漏れを防止し得るからである。
【0089】
このように、ウエスト周り伸縮材に代えて、チューブ状隔壁を配置した場合には、図10及び図11に示すように、外装シート16の股下部分及び腹周り部分は、インナーシート16aとアウターシート16bとが貼り合わされて構成されており、そのウエスト周り部分は、単層部分同士が貼り合わされて構成されていることが好ましい。外装シートは、その層間に伸縮材を配置する目的でインナーシートとアウターシートを貼り合わせているため、ウエスト周り伸縮材を配置しない場合には、その部分を貼り合わせ構造とする必要がない。そして、前記の構造であればインナーシート、アウターシートいずれかのシートの分だけ外装シートを薄くすることができ、外装シートの柔軟性を向上させ、着用感に優れたおむつを構成することができる。図10及び図11に示す形態は、いずれもウエスト周り部分にインナーシート16aを配置せず、アウターシート16bのみで構成した例である。
【0090】
[3]吸収性物品の構成部材:
本発明の吸収性物品は、図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aのように、吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体22の表面を被覆するように配置されたトップシート18と、液不透過性材料からなり、吸収体22の裏面を被覆するように配置されたバックシート20とを備えるものである。
【0091】
[3−1]吸収体:
「吸収体」は、着用者の尿等を吸収し、保持するための部材であり、吸収性材料によって構成される。
【0092】
「吸収性材料」としては、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す。)、親水性シート等を挙げることができる。「フラッフパルプ」としては、木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、「SAP」としては、ポリアクリル酸ナトリウムを、「親水性シート」としては、ティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布等を用いることが好ましい。
【0093】
吸収体は、1種又は2種以上の吸収性材料を単層又は複層のマット状に成形したものを用いることが好ましい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプのマット中に混在させるか、フラッフパルプのマットの層間に層状に配置して用いればよい。
【0094】
吸収体は、矩形状、砂時計型、ひょうたん型、T字型等、所望の形状に成形して用いることができる。吸収体は、SAPの脱落を防止し、形状安定性を付与するという目的から、親水性シートによって被包されていることが好ましい。通常、吸収体はトップシートとバックシートの間に挟みこまれ、両シートと一体化された状態で用いられる。
【0095】
[3−2]トップシート:
トップシートは、着用者の尿等を透過させる必要から、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0096】
「液透過性材料」としては、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、脂肪族ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0097】
「不織布」としては、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。「親水化処理」は、界面活性剤を塗布、スプレー、含浸等させることにより行うことができる。
【0098】
トップシートは、「少なくとも一部」、具体的には、トップシートを平面的に見た場合に、少なくとも吸収体の表面近傍は液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0099】
なお、吸収性物品の着用者の肌側に位置するシートが全てトップシートによって構成されている必要はない。即ち、着用者の肌と接するシートが、トップシートを含む複数のシートによって構成され、トップシートと他のシートがシートの表面方向に向かって継ぎ合わされたような構造となっていてもよい。
【0100】
例えば、図1A及び図1Cに示す吸収性物品1Aは、テープ型使い捨ておむつであり、おむつの幅方向中央部には液透過性材料からなるトップシート18を配置し、おむつのサイドフラップ部分には液の透過に対して抵抗性を示す通気撥水性材料からなるサイドシート19を配置した例である。通気撥水性シートとしては、カードエンボス、スパンボンド等の製法により製造された不織布であってもよいが、防水性の高いSMS、SMMS等の不織布シートが更に好ましい。
【0101】
[3−3]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(おむつの装着時において着用者の肌から遠い側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0102】
バックシートの配置位置については特に制限はない。吸収体で吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の存在する部分にバックシートが配置されていることが好ましい。
【0103】
バックシートを構成する液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができ、中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは、0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されており、液不透過性ではあるが透湿性を有するため、おむつ内部の蒸れを防止することができるという利点がある。
【0104】
なお、図1Cに示すように、バックシート20の外表面側にカバーシート24を貼り合わせてもよい。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0105】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0106】
[3−4]立体ギャザー:
本発明の吸収性物品は、図1Cに示す吸収性物品1C、図7Cに示す吸収性物品1Fのように、撥水性シート32からなり、吸収体22の両側に配置された左右一対の立体ギャザー26(26a,26b)を備えていることが好ましい。
【0107】
立体ギャザーの構成は、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に使用される構成を採用することができる。例えば、図1C又は図7Cに示すように、撥水性シート32の層間に立体ギャザー伸縮材36を挟み込んで固定し、その立体ギャザー伸縮材36の収縮力によってギャザー(襞)を形成したもの等を好適に用いることができる。
【0108】
なお、立体ギャザーは、前記のように立体ギャザー用の撥水性シートを別途付設してもよいし、おむつを構成するシート材(例えば、撥水性のサイドシート等)の一部によって形成してもよい。撥水性シートは、カードエンボス、スパンボンド等の製法により製造された不織布であってもよいが、防水性の高いSMS、SMMS等の不織布シートが更に好ましい。
【0109】
また、本発明の吸収性物品がパンツ型使い捨ておむつである場合には、図7A及び図7Cに示すように、吸収性本体14の側縁と立体ギャザー26の内面との間隙に、吸収性本体14の側縁に沿って立体ギャザー伸縮材38を付設してもよい。この位置に立体ギャザー伸縮材38を付設すると、当該部分が収縮して、吸収性本体14の側縁が上側に向かって反るので、尿や便が吸収性本体14を構成する部材の内部を徐々に浸透して、吸収性本体14の側縁から染み出すことを防止することができる。従って、前記染み出しに起因する排泄物の漏れを有効に防止することができる。
【0110】
[3−5]止着テープ:
本発明の吸収性物品は、図1Aに示すように、後身頃6の左右の各側縁6a,6bから延出するように配置された、前身頃2と後身頃6とを固定するための止着テープ11を備えていてもよい。即ち、本発明の吸収性物品には、いわゆるテープ型使い捨ておむつが含まれる。
【0111】
止着テープのファスニング部材としては、粘着剤により固定を行う粘着ファスナーであってもよいが、機械的な結合により固定を行うメカニカルファスナー(面状ファスナー)
を用いることが好ましい。メカニカルファスナーは、止着力が高いことに加え、複数回の脱着を行っても止着力が低下することがないという利点がある。
【0112】
例えば、図1Aに示す吸収性物品1Aは、ファスニング部材として、メカニカルファスナー46を用いた例である。止着テープ11の先端近傍には、フック材46aが付設される一方、前身頃2には、ループ材46bからなるフロントパッチ13が付設されており、フロントパッチ13に対して、止着テープ11を止め付けることが可能なように構成されている。
【0113】
止着テープの数は特に限定されず、着用者の体型(具体的には、ウエスト周り、脚周り等)の寸法に合わせて、適当な数の止着テープを付設すればよい。一般的には、乳幼児用の使い捨ておむつであれば一対(左右1個ずつ)、成人用の使い捨ておむつであれば二対(左右2個ずつ)が付設される。
【0114】
[3−6]各種伸縮材:
本発明の吸収性物品が使い捨ておむつである場合は、脚周り伸縮材、ウエスト周り伸縮材、腹周り伸縮材等の伸縮材を配置することが好ましい。
【0115】
脚周り伸縮材は、脚周り開口部に沿って配置される伸縮材である。図1A及び図1Cに示す吸収性物品1Aにおいては、吸収体22の側縁に沿って、直線的に左右3本ずつの脚周り伸縮材40が配置されている。また、図7A,図7D,図7Eに示す吸収性物品1Fにおいては、脚周り開口部12のカーブに沿って、左右2本ずつの脚周り伸縮材40が配置されている。この脚周り伸縮材を配置することによって、脚周り開口部に伸縮性に富むギャザー(レグギャザー)を形成することができる。従って、脚周りに隙間が形成され難くなり、脚周り開口部からの尿漏れを効果的に防止することができる。
【0116】
この脚周り伸縮材は、糸ゴムや平ゴム等によって構成される。そして、脚周り伸縮材は、立体ギャザーの起立線より外側の部分に配置されていることが好ましい。このような構成とすると、立体ギャザーの十分な防漏効果を確保しつつ、股下部の装用感・装着感を向上させることができる。
【0117】
ウエスト周り伸縮材は、ウエスト周り開口部に沿って配置される伸縮材である。ウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。このウエストギャザーにより、ウエスト周りに隙間が形成され難くなり、ウエスト周りからの尿漏れを防止することができる他、着用者へのおむつのフィット性が良好となり、おむつのずり下がりが防止される。
【0118】
図1Aに示す吸収性物品1Aは、おむつの後身頃6の端縁に沿って帯状のウエスト周り伸縮材42を配置した例である。この帯状のウエスト周り伸縮材42は、ウレタンフォーム等の伸縮性フォームによって構成されている。図示の例では、後身頃(背側)のみにウエスト周り伸縮材42を配置しているが、前身頃(腹側)にウエスト周り伸縮材を配置してもよい。また、図7Dに示す吸収性物品1Fは、おむつの後身頃6の端縁に沿って糸状のウエスト周り伸縮材42を配置した例である。
【0119】
なお、パンツ型使い捨ておむつにあっては、外装シートのウエスト周り部分に、その外装シートの層間に伸張状態のウエスト周り伸縮材が固定されることが一般的である。「外装シートの層間」とは、図7Bに示すような、インナーシート16aとアウターシート16bとの貼り合わせ部分の層間に、ウエスト周り伸縮材42が固定されたものに限定されない。例えば、インナーシート又はアウターシートの折り返し部分の層間等に、ウエスト周り伸縮材が固定されたものも含まれる。
【0120】
本発明の吸収性物品がパンツ型使い捨ておむつである場合は、図7D及び図7Eに示すように、腹周り伸縮材44を配置することも好ましい。
【0121】
腹周り伸縮材は、ウエスト周り開口部と脚周り開口部との間の部分(即ち、着用者の腹周りに相当する部分)に配置される伸縮材である。腹周り伸縮材を配置することによって、着用者の腹周りに伸縮性に富むタミーギャザーを形成することができる。このタミーギャザーは、ウエストギャザーと相俟って、おむつのフィット性やずり下がり防止効果を一層優れたものとすることができる。
【0122】
これらの伸縮材については、ギャザーの収縮の程度等を勘案した上で、構成材料、その材料の伸長率、固定時の伸長状態等を決定すればよい。
【0123】
伸縮材としては、従来の使い捨ておむつで使用されてきた伸縮材を好適に用いることができる。具体的には、天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性糸からなる糸ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を挙げることができる。
【0124】
伸縮材は、十分な伸縮力を作用させるため、伸長状態で固定することが好ましい。例えば、伸縮材が天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴムの弾性糸からなる糸ゴムである場合には、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することがより好ましい。このような範囲の伸長状態で固定することにより、着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させることが可能となる。
【0125】
前記のような伸縮材は、おむつの他の構成部材に対して、接着剤その他の手段により固定される。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着であってもよい。
【0126】
[4]適用対象:
なお、本発明の吸収性物品は、既に説明したようなテープ型使い捨ておむつ、パンツ型使い捨ておむつの他、尿パッド等の吸収性物品にも適用することができる。
【0127】
「尿パッド」とは、インナーパッド、補助パッドとも称され、専ら尿吸収を目的とする吸収パッドである。この尿パッドは、下着の内面や使い捨ておむつのトップシートの表面に載置した状態で用いられる。尿パッドは、使い捨ておむつと同様に、吸収体と、吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートとを備えるが、着用者の腰周りを被包する部分を持たない小型のパッド状に構成されることが一般的である。
【実施例】
【0128】
本発明の吸収性物品について、図面を参照しながら更に具体的に説明する。但し、本発明の吸収性物品は、その発明特定事項を備えた吸収性物品を全て包含するものであり、以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
〔実施例1〕
実施例1の吸収性物品として、テープ型使い捨ておむつを作製した。具体的な構造は、図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aの構造とした。この吸収性物品1Aは、乳児用Lサイズのものであり、前後方向長さを485mm、後身頃6の幅(側縁6a,6b間の長さ)を325mmとした。
【0130】
吸収性物品1Aは、SMS不織布製のシート材70と、これとは別体のSMS不織布製のシート材76によって構成した。チューブ状隔壁62Aの形成は、図1Dに示す方法で行った。シート材70,76は、チューブ状隔壁62Aの頂部及び第2の側面に相当する部分において相互に積層し積層部を形成した。
【0131】
吸収性物品1Aでは、前記積層部の層間には、チューブ状隔壁62Aの起立用伸縮材64として5本の伸縮材を伸張状態で配置した。立体ギャザー伸縮材36の固定長さは380mm、伸張率(伸張時長さ/非伸長時長さ×100)は、300%とした。
【0132】
チューブ状隔壁62Aの第1の側面及び第2の側面には、幅方向の左端から右端に向かって、30個×2列のパターンで各60個の第1の孔66、第2の孔68を形成した。第1の孔66及び第2の孔68の形状は長軸3mm、短軸2mmの楕円形状とし、開口面積は4.7cmとした。
【0133】
チューブ状隔壁62Aは、後身頃6の端縁6cに沿って配置した。端縁6cとチューブ状隔壁の固定部の間の距離は10mmとした。これにより、シート材70,76によって外部から区画された内部空間60を形成した。この内部空間60の最大断面積は3.1cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の吸収性物品は、乳幼児用又は介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用の使い捨ておむつ、尿パッド等の吸収性物品に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1A】本発明の吸収性物品の一の実施形態を示す図であり、吸収性物品を展開し、トップシート側から見た状態を示す概略平面図である。
【図1B】図1Aに示す吸収性物品のX−X’断面を示す概略断面図である。
【図1C】図1Aに示す吸収性物品のY−Y’断面を示す概略断面図である。
【図1D】図1Aに示す吸収性物品のチューブ状隔壁を形成する方法を示す工程図である。
【図2】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図であり、図1Bに対応する断面を示す概略断面図である。
【図3A】本発明の吸収性物品の更に別の実施形態を示す図であり、図1Bに対応する断面を示す概略断面図である。
【図3B】図3Aに示す吸収性物品のチューブ状隔壁を形成する方法を示す工程図である。
【図4A】本発明の吸収性物品の更にまた別の実施形態を示す図であり、図1Bに対応する断面を示す概略断面図である。
【図4B】図4Aに示す吸収性物品のチューブ状隔壁の部分を拡大して示す一部拡大断面図である。
【図4C】図4Aに示す吸収性物品のチューブ状隔壁を形成する方法を示す工程図である。
【図5A】本発明の吸収性物品の隔壁に形成される第1の孔の実施形態を示す概略平面図である。
【図5B】図5Aに示す第1の孔が開孔した状態を示す概略平面図である。
【図6】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図であり、吸収性物品を展開し、トップシート側から見た状態を示す概略平面図である。
【図7A】本発明の吸収性物品を展開し、トップシート側から見た状態を示す概略平面図である。
【図7B】図7Aに示す吸収性物品のX−X’断面を示す概略断面図である。
【図7C】図7Aに示す吸収性物品のY−Y’断面を示す概略断面図である。
【図7D】図7Aに示す吸収性物品を組み立てて正面側から見た状態を示す概略斜視図である。
【図7E】図7Aに示す吸収性物品から吸収性本体を除去し、外装シートの部分のみを示す概略平面図である。
【図8】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図であり、図7Bに対応する断面を示す概略断面図である。
【図9】本発明の吸収性物品の更に別の実施形態を示す図であり、図7Bに対応する断面を示す概略断面図である。
【図10】本発明の吸収性物品の更にまた別の実施形態を示す図であり、図7Bに対応する断面を示す概略断面図である。
【図11】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す図であり、図7Bに対応する断面を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0136】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J:吸収性物品、2:前身頃、2c:端縁、4:股下部、6:後身頃、6a,6b:側縁、6c:端縁、11:止着テープ、13:フロントパッチ、18:トップシート、19:サイドシート、20:バックシート、22:吸収体、24:カバーシート、32:撥水性シート、36,38:立体ギャザー伸縮材、40:脚周り伸縮材、42:ウエスト周り伸縮材、44:腹周り伸縮材、46:メカニカルファスナー、46a:フック材、46b:ループ材、60:排気経路、62A,62B,62C,62D,62E,62F,62G,62H,62I,62J:チューブ状隔壁、64:起立用伸縮材、66,66A,66B,66C,66D:第1の孔、68:第2の孔、70:シート材、70a,70b:領域、72A,72B,72C,72D:舌片、74A,74B,74C,74D:スリット、76:シート材、82:接合部、84,86:接着剤、90:外殻部、92:ベロ部、94,98,100,102,104:接着剤、96:空気層、E1:一の端部、E2:他の端部、P1:第1の折り返し点、P2:第2の折り返し点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃、股下部及び後身頃の各部から構成され、
吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、シート材からなり、外部から仕切られた内部空間が形成された管状を呈し、その頂部側に、前記内部空間の形成方向に向かって伸張状態の起立用伸縮材が固定されたチューブ状隔壁と、を備え、
前記チューブ状隔壁には、前記起立用伸縮材を挟んだ両側に、相対向する二つの側面が形成され、第1の側面に前記内部空間と外部空間とを連通する第1の孔が形成されるとともに、第2の側面にも前記内部空間と外部空間とを連通する第2の孔が形成されており、
前記チューブ状隔壁は、前記第1の側面及び前記第1の孔が前記股下部側に配向し、前記第2の側面及び前記第2の孔が前記後身頃の端縁側に配向するように、前記後身頃の端縁に沿って配置されている吸収性物品。
【請求項2】
前記チューブ状隔壁として、第1のチューブ状隔壁と第2のチューブ状隔壁とを備え、
前記第1のチューブ状隔壁は、前記第1の側面及び前記第1の孔が前記股下部側に配向し、前記第2の側面及び前記第2の孔が前記後身頃の端縁側に配向するように、前記後身頃の端縁に沿って配置され、
前記第2のチューブ状隔壁は、前記第1の側面及び前記第1の孔が前記股下部側に配向し、前記第2の側面及び前記第2の孔が前記前身頃の端縁側に配向するように、前記前身頃の端縁に沿って配置されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記チューブ状隔壁は、前記内部空間を形成する管状の外殻部が形成されるとともに、前記内部空間に延出されるベロ部が形成されており、
前記ベロ部に前記起立用伸縮材が固定されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記外殻部と前記ベロ部が、一体的なシート材によって形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
シート材によって構成され、一つのウエスト周り開口部及び一対の脚周り開口部が形成されたパンツ型を呈する外装シートと、前記吸収体が内包されたパッド状を呈し、前記外装シートの内面側に固定された吸収性本体と、を備え、
前記外装シートは、前記シート材が、内面に配置されるインナーシートと外面に配置されるアウターシートとが貼り合わされて構成され、
前記外装シートのウエスト周り部分には、前記外装シートの層間に、伸張状態のウエスト周り伸縮材が固定され、
前記外装シートの腹周り部分には、前記インナーシートと前記アウターシートとの層間に、伸張状態の腹周り伸縮材が固定され、
前記吸収性本体は、前記吸収体、前記トップシート及び前記バックシートが一体的なパッド状に構成された、パンツ型使い捨ておむつである請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記外装シートの前端部及び後端部のうち少なくとも一方の端部は、おむつのウエスト周り端縁を基点に内側に折り返されて折り返し部を形成しており、
前記折り返し部を構成するシート材によって、前記チューブ状隔壁が形成されている請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記折り返し部が、前記インナーシートと前記アウターシートとの積層部分によって形成され、
前記インナーシートと前記アウターシートとの積層部分によって、前記チューブ状隔壁が形成されている請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記インナーシート及び前記アウターシートは、一方のシートの前端縁及び後端縁のうち少なくとも一方の端縁から、他方のシートの端部がはみ出して単層部分を形成するように貼り合わされており、
前記単層部分の少なくとも一部は、おむつの内側に折り返されて折り返し部を形成しており、
前記折り返し部は、前記吸収性本体の一方の端部を被覆するように、前記インナーシート及び前記トップシートの表面に貼り合わされており、
前記折り返し部の表面に、前記チューブ状隔壁が付設されている請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記インナーシート及び前記アウターシートは、一方のシートの前端縁及び後端縁のうち少なくとも一方の端縁から、他方のシートの端部がはみ出して単層部分を形成するように貼り合わされており、
前記単層部分の少なくとも一部は、おむつの内側に折り返されて折り返し部を形成しており、
前記折り返し部は、その一部が前記吸収性本体の一方の端部を被覆するように、前記インナーシート及び前記トップシートの表面に貼り合わされるとともに、他の一部が前記チューブ状隔壁を形成している請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記外装シートの前記ウエスト周り伸縮材に代えて、前記外装シートのウエスト周り部分に、前記チューブ状隔壁が配置されている請求項5〜9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記インナーシート及び前記アウターシートは、一方のシートの前端縁及び後端縁のうち少なくとも一方の端縁から、他方のシートの端部がはみ出して単層部分を形成するように貼り合わされており、
前記単層部分の少なくとも一部は、おむつの内側に折り返されて折り返し部を形成しており、
前記折り返し部は、前記吸収性本体の一方の端部を被覆するように、前記インナーシート及び前記トップシートの表面に貼り合わされており、
前記外装シートは、その股下部分及び腹周り部分は、前記インナーシートと前記アウターシートとが貼り合わされて構成されており、そのウエスト周り部分は、前記単層部分同士が貼り合わされて構成されている請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記チューブ状隔壁が、吸収性物品の前身頃及び後身頃のうち少なくとも一方の腹周り部分に配置されている請求項5〜11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記チューブ状隔壁が、吸収性物品の前身頃及び後身頃のうち少なくとも一方のウエスト周り部分と腹周り部分の両部分をカバーするように配置されている請求項5〜11のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図7E】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−57787(P2010−57787A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227957(P2008−227957)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】