説明

吸収性物品

【課題】臀部の丸みに隙間なくフィットし、経血等が臀部を伝いにくくする。
【解決手段】平面視で、臀部に対応する位置の幅方向中央部に、略幅方向に沿って後側に凸の湾曲状に形成される幅方向溝9と、この幅方向溝9の両側部からそれぞれ後側に向けて略長手方向に沿って湾曲状に形成される長手方向溝10とからなるM字形溝M1、M2を長手方向に2つ形成するとともに、前記M字形溝M1、M2は、前記長手方向溝10の頂部を、前記幅方向溝9の頂部より長手方向後側の位置に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、臀部の丸みに隙間なくフィットし、経血等が臀部を伝いにくくした吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネート不織布などの不透液性バックシートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性トップシートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、体液漏れを防止するための手段が種々講じられている。これら体液漏れ防止手段の一つとして、吸収体に熱エンボスによって凹状溝を形成する技術が存在する。
【0004】
たとえば、下記特許文献1では、女性の排血口はもとより会陰部に対しても吸収体を密着させ得るようにすることを目的として、吸収性物品の幅方向中央部に使用面側に高い吸収体の中高部を有するとともに、この中高部の両側にそれぞれ、ほぼ吸収性物品の長手方向に延長されるエンボスが形成され、かつ前記左右一対のエンボスは、エンボス離間幅の拡大領域を形成するように夫々のエンボスラインが吸収性物品の中心側に曲率中心を有する曲線によって形成される第1の膨出形状エンボスと、この第1の膨出形状エンボスの後部側に連続して、吸収性物品の外方側に曲率中心を有する曲線によって形成される中間弧状エンボスを介してそれぞれのエンボスラインが吸収性物品の中心側に曲率中心を有する曲線によって形成される第2の膨出形状エンボスとを有する吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、吸収性物品の後方に突出する第1突端部P1を有すると共に、前記第1突端部P1の該吸収性物品における幅方向に防漏溝が形成される略U字状の第1U字部U1と、前記第1U字部U1の後方側に形成され、後方に突出する第2突端部P2を有すると共に、前記第2突端部P2の幅方向に防漏溝が形成される略U字状の第2U字部U2と、前記第2U字部U2の後方側に形成され、後方に突出する第3突端部P3を有すると共に、前記第3突端部P3の幅方向に防漏溝が配置されない略U字状の第3U字部U3とからなる防漏溝部を備えた吸収性物品が開示されている。
【特許文献1】特開2006−149798号公報
【特許文献2】特開2007−152033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の吸収性物品では、第1の膨出形状エンボスの後部側に連続して中間弧状エンボスを介して第2の膨出形状エンボスが形成されているため、女性の排血口はもとより会陰部に対しても吸収体を密着させることができるようになり、従って、従来の製品よりも更に身体への密着性が向上し、後側への伝い漏れを確実に防止できるようになるなどの効果を有している。
【0007】
しかしながら、経血等が何らかの理由により会陰部を越えて後側に漏れる場合も起こりうる。この場合、吸収性物品の表面が臀部の丸みに隙間なくフィットしていなければ、経血が臀部を伝って後側へ漏れるおそれがある。
【0008】
一方、上記特許文献2記載の吸収性物品のように、吸収性物品の幅方向中央部に複数のU字部U1,U2,U3が形成された場合、長手方向に曲げ変形が加えられると、これらU字部に曲げ力が集中して、各U字部を折り基点として吸収体が折れ曲がり、吸収性物品が臀部の丸みに沿って湾曲するようになる。
【0009】
ところが、ショーツに装着された吸収性物品は、股間部において大腿部からの内側方向への圧縮力を受けることによって、吸収体を幅方向に圧縮し、股間部より後側(臀部側)においても内側方向への内方圧縮力が作用する。このような内方圧縮力は、前記折り基点に集中して作用し、折り基点が極度に圧縮されるようになるため、吸収性物品が臀部の丸みに沿うことができず、身体から離れて隙間が発生する。そのため、経血等が臀部を伝い、後側への漏れが生じるようになる。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、臀部の丸みに隙間なくフィットし、経血等が臀部を伝いにくくした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性トップシートとバックシートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
平面視で、臀部に対応する位置の幅方向中央部に、略幅方向に沿って後側に凸の湾曲状に形成される幅方向溝と、この幅方向溝の両側部からそれぞれ後側に向けて略長手方向に沿って湾曲状に形成される長手方向溝とからなるM字形溝が長手方向に複数形成されるとともに、
前記M字形溝は、前記長手方向溝の頂部が、前記幅方向溝の頂部より長手方向後側の位置に形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、平面視で、臀部に対応する位置の幅方向中央部に、略幅方向に沿って後側に凸の湾曲状に形成される幅方向溝と、この幅方向溝の両側部からそれぞれ後側に向けて略長手方向に沿って湾曲状に形成される長手方向溝とからなるM字形溝が長手方向に複数形成されているため、吸収性物品を装着したときに長手方向に曲げ変形が加えられると、後側に凸の湾曲状に形成された前記幅方向溝の頂部に曲げ応力が集中して、この頂部を折り基点として幅方向に折りジワが形成され、臀部の丸みに沿って折れ曲がるようになる。
【0013】
一方、大腿部からの圧力によって内側方向に作用する内方圧縮力は、長手方向溝の頂部で最大となる。このとき前記長手方向溝の頂部は、前記幅方向溝の頂部より長手方向後側の位置に形成されているため、前記折り基点となる幅方向溝の頂部より後側にずれた位置で内方圧縮力が最大となり、折り基点にかかる力が分散し、前記折り基点に極度の圧縮力が作用せず、吸収性物品の表面が臀部の丸みに隙間なくフィットし、経血等が臀部を伝いにくくすることができるようになる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記M字形溝は、前記長手方向溝の頂部における曲率半径が、前記幅方向溝の頂部における曲率半径より大きく形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、長手方向溝の頂部における曲率半径が、前記幅方向溝の頂部における曲率半径より大きく形成されているため、長手方向溝が前記内方圧縮力を広い範囲に分散して受けるようになり、折り基点にかかる内方圧縮力をより分散できるようになる。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記長手方向溝は、後側端部が、前側端部より幅方向外側の位置に形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、長手方向溝は、後側端部が、前側端部より幅方向外側の位置に形成されているため、大腿部の方向から伝播する内方圧縮力を適確に受け止めることができ、折り基点にかかる内方圧縮力をより分散できるようになる。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記M字形溝のうちの少なくとも一つは、前記長手方向溝が、幅方向中央側に凸の湾曲状に形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記M字形溝のうちの少なくとも一つは、前記長手方向溝が、幅方向外側に凸の湾曲状に形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項4、5記載の発明は、長手方向溝が凸に湾曲する方向を示したものであり、幅方向内側に凸に湾曲させても良いし、幅方向外側に凸に湾曲させても良い。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記M字形溝は、相隣接する前記M字形溝同士の一部が連続的に形成されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明は、M字形溝が折り基点にかかる圧力を制御するとともに、吸収性物品表面を経血等が伝うのを防止するために、相隣接する前記M字形溝同士の一部を連続的に形成するようにしたものである。
【0023】
請求項7に係る本発明として、前記M字形溝は、それぞれ大きさが異なっている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、臀部の丸みに隙間なくフィットし、経血等が臀部を伝いにくくした吸収性物品が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
図1は本発明の第1形態例に係る生理用ナプキン1の展開図であり、図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図である。
【0026】
前記生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性バックシート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性トップシート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部Hを含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSとから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性バックシート2と透液性トップシート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性バックシート2と、前記立体ギャザーBSを形成しているサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性バックシート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0027】
また、本生理用ナプキン1においては、平面視で、臀部に対応する位置の幅方向中央部に、略M字形に形成されたM字形溝M、M…が長手方向に複数形成されている。図示例では、前記M字形溝M、M…は、前側のM字形溝M1と後側のM字形溝M2とが2つ形成されている。さらに、本生理用ナプキン1では、少なくとも体液排出部Hを含む前側の領域に、該体液排出部Hの周囲に長手方向に細長い前側溝8aが形成されるとともに、その前側には、間を空けて略傘形状の前端独立溝8bが形成されている。なお、前記前側溝8a及び前端独立溝8bは、任意の形態で良く、なくても良い。
【0028】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性バックシート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性バックシート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性バックシート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0029】
次いで、前記透液性トップシート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性トップシート3に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0030】
前記吸収体4としては、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。前記吸収体4は形状保持等のためにクレープ紙5によって囲繞するのが望ましい。特に、前記吸収体4を薄型吸収体とした場合、吸収体を臀部にフィットさせにくくなるため、本発明が特に有効である。前記薄型吸収体とは、着用者の違和感を低減するため、吸収体の厚みを小さく形成したものであり、例えば0.5mm〜5mm程度の厚みのものである。
【0031】
一方、前記透液性トップシート3の幅寸法は、図示例では、図2および図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBSは前記透液性トップシート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を18〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0032】
前記サイド不織布7は、図2および図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性バックシート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性バックシート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップW、Wを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層12…,13…を備え、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wが折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0033】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材19が配設されるとともに、前記糸状弾性伸縮部材19の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材20,20が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、前記糸状弾性伸縮部材19配設部位を屈曲点として、断面く字状に内側に開口を向けたポケットP、Pを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0034】
〔M字形溝Mの構造〕
図4及び図5は、第1形態例に係るM字形溝Mの平面図である。前記M字形溝Mは、詳細には図4に示されるように、平面視で、臀部に対応する位置の幅方向中央部に、略幅方向に沿って後側に凸の湾曲状に形成される幅方向溝9と、この幅方向溝9の両側部からそれぞれ後側に向けて、略長手方向に沿って幅方向中央側に凸の湾曲状に形成される長手方向溝10とから構成されている。図示例では、かかるM字形溝Mは、長手方向に対して前後に2つのM字形溝M1、M2が形成されている。
【0035】
ここで、前記M字形溝Mは、前記長手方向溝10の頂部b1が、前記幅方向溝9の頂部a1より長手方向後側の位置に形成されるようにする。すなわち、図4に示されるように、M字形溝Mの前端部から、幅方向溝9の頂部a1までのナプキン長手方向距離をL1、長手方向溝10の頂部b1までのナプキン長手方向距離をL2とすると、L1<L2の関係となるようにする。ここで、幅方向溝9の頂部a1とは、幅方向線に対して前記幅方向溝9が後側に極大となる部分のことを指し、長手方向溝10の頂部b1とは、長手方向線に対して前記長手方向溝10が幅方向中央側に極大となる部分のことを指す。
【0036】
また、前記M字形溝Mは、図4に示されるように、長手方向溝10の頂部b1における曲率半径R2が、幅方向溝9の頂部a1における曲率半径R1より大きく形成されることが好ましい。すなわち、R1<R2の関係となるようにすることが好ましい。
【0037】
さらに、前記長手方向溝10は、後側端部d1が、前側端部c1よりより幅方向外側の位置に形成されていることが好ましい。すなわち、図4に示されるように、M字形溝Mの幅方向中心線から、長手方向溝10の前側端部c1までのナプキン幅方向距離をL3、後側端部d1までのナプキン幅方向距離をL4とすると、L3<L4の関係となるようにすることが好ましい。
【0038】
以上のように形成されるM字形溝Mによれば、次のような効果が得られる。なお、前側のM字形溝M1と後側のM字形溝M2とは同様の効果を有するため、前側のM字形溝M1を例に挙げ、説明する。
【0039】
先ず、図5に示されるように、臀部の前後方向に沿うように生理用ナプキン1が長手方向に曲げられられることによって吸収体4に作用する曲げ力(図5中の「曲げ力」)は、幅方向溝9の頂部a1において最大となり、その両側に向かうに従って小さくなる。このため、吸収体4は、この頂部a1が折り基点X1となって、幅方向に折りジワが形成され、臀部の丸みに沿って折れ曲がるようになる。
【0040】
また、大腿部からの圧力によって内側方向に作用する内方圧縮力(図5中の「内方圧縮力」)は、長手方向溝10の頂部b1において最大となりその前後側に向かうに従って小さくなる。ここで、従来の生理用ナプキンのように、幅方向溝9が前側に凸の湾曲状に形成されると、前記折り基点X1に内方圧縮力が集中的に作用して、折り基点X1が極度に圧縮され、折りジワが深くなり、吸収体4が臀部の表面から離れる。このため、臀部表面と生理用ナプキン1の表面との間に隙間が生じて、経血等が臀部を伝い易くなり、その結果、経血等の漏れが生じる。これに対して、本発明では、前記幅方向溝9が後側に凸の湾曲状に形成されるとともに、M字形溝M1において長手方向溝10の頂部b1が、幅方向溝9の頂部a1(折り基点X1)より長手方向後側の位置に形成されているため、内方圧縮力は、この折り基点X1より後側にずれた位置(b1)で最大となり、前記折り基点X1にかかる力が分散する。このため、折り基点X1に極度の圧縮力が作用せず、生理用ナプキン1の表面が臀部の丸みに隙間なくフィットし、経血等が臀部を伝いにくくなる。
【0041】
また、長手方向溝10の頂部b1における曲率半径R2が、幅方向溝9の頂部a1における曲率半径R1より大きく形成されているため(R1<R2)、長手方向溝が前記内方圧縮力を広い範囲に分散して受けるようになり、折り基点X1にかかる内方圧縮力がより分散できるようになる。
【0042】
さらに、前記長手方向溝10において、後側端部d1が、前側端部c1より幅方向外側の位置に形成されているため(L3<L4)、大腿部の方向から伝播する内方圧縮力を適確に受け止めることができ、折り基点X1にかかる内方圧縮力をより分散できるようになる。
【0043】
加えて、前記M字形溝Mで囲まれた部分では、前記内方圧縮力によって、吸収体が表面側に隆起し、臀部の溝に適度にフィットするようになる。
【0044】
一方、図6及び図7は、第2形態例に係るM字形溝M’の平面図である。第2形態例として、図6に示されるように、略幅方向に沿って後側に凸の湾曲状に形成される幅方向溝9と、この幅方向溝9の両側部からそれぞれ後側に向けて略長手方向に沿って幅方向外側に凸の湾曲状に形成される長手方向溝11とから構成されるM字形溝M’が長手方向に2つ形成されている。ここで、図6に示される例では、前側のM字形溝M1’と後側のM字形溝M2’とが独立的に形成されているが、前側のM字形溝M1’の長手方向溝11の後端部と、後側のM字形溝M2’とが、図中の点線で示した間欠部11a、11aにおいて連続して、一体的に形成されるようにしてもよい(図7参照)。
【0045】
第2形態例にかかるM字形溝M’によれば、上記M字形溝Mと比較して、次のような効果が得られる。
【0046】
図7に示されるように、前記M字形溝M’で囲まれた部分が前記M字形溝Mより広いため、前記内方圧縮力によって、吸収体が広い面積で表面側に隆起し、臀部に広い面積でフィットできるようになる。
【0047】
ところで、前記M字形溝M、M’は、種々の形態で形成することができる。図8に示されるように、前記第1形態例に係るM字形溝M(図8(A)参照)及び第2形態例に係るM字形溝M’(図8(B)参照)は、それぞれ前側のM字形溝M1、M1’と後側のM字形溝M2、M2’とが、大きさが異なるように形成することができる。具体的には、図示例のように、前側のM字形溝M1、M1’より後側のM字形溝M2、M2’の方が大きくなるように形成することが好ましい。これにより、後側のM字形溝M2、M2’で囲まれた部分の吸収体が、より高く隆起したり、より広く臀部にフィットさせたりすることができるようになる。
【0048】
また、図9に示されるように、前側と後側のM字形溝を異なる形態のM字形溝によって形成することができる。すなわち、同図(A)に示されるように、前側のM字形溝を前記第1形態例に係るM字形溝M1とし、後側のM字形溝を前記第2形態例に係るM字形溝M2’とした場合、臀部後側でよりフィットさせることができる。一方同図(B)に示されるように、臀部前側のM字形溝を前記第2形態例に係るM字形溝M1’とし、後側のM字形溝を前記第1形態例に係るM字形溝M2とした場合、臀部前側でよりフィットさせることができるようになる。
【0049】
一方、前記M字形溝M、M’で囲まれた部分の吸収体4において、この部分の厚みや柔らかさを変化させ、より臀部側(表面側)に盛り上げやすく構成して、身体にフィットさせやすくすることができる。
【0050】
また、前記M字形溝M、M’は、透液性トップシート3の表面側から付加されるエンボスとしても良いし、吸収体4のみに付加されるエンボスとしても良い。エンボスパターンは、図示例のように連続した曲線状でも良いし、ステッチ状またはドット状でも良い。また、M字形溝M、M’の各部においてエンボス溝の幅及び/又は深さを変化させることもできる。これにより、M字形溝M、M’にかかる力を調整することができる。
【0051】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、M字形溝Mが前側と後側に2つ形成されるようにしたが、長手方向に3つ以上形成されるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1形態例に係る生理用ナプキン1の展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】M字形溝Mの拡大平面図である。
【図5】M字形溝Mにかかる圧力分布を示した図である。
【図6】M字形溝M’の拡大平面図である。
【図7】M字形溝M’にかかる圧力分布を示した図である。
【図8】M字形溝Mの変形例(その1)を示す図である。
【図9】M字形溝Mの変形例(その2)を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…生理用ナプキン、2…不透液性バックシート、3…透液性トップシート、4…吸収体、5…クレープ紙、7…サイド不織布、9…幅方向溝、10・11…長手方向溝、M・M1・M2…M字形溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性トップシートとバックシートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
平面視で、臀部に対応する位置の幅方向中央部に、略幅方向に沿って後側に凸の湾曲状に形成される幅方向溝と、この幅方向溝の両側部からそれぞれ後側に向けて略長手方向に沿って湾曲状に形成される長手方向溝とからなるM字形溝が長手方向に複数形成されるとともに、
前記M字形溝は、前記長手方向溝の頂部が、前記幅方向溝の頂部より長手方向後側の位置に形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記M字形溝は、前記長手方向溝の頂部における曲率半径が、前記幅方向溝の頂部における曲率半径より大きく形成されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記長手方向溝は、後側端部が、前側端部より幅方向外側の位置に形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記M字形溝のうちの少なくとも一つは、前記長手方向溝が、幅方向中央側に凸の湾曲状に形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記M字形溝のうちの少なくとも一つは、前記長手方向溝が、幅方向外側に凸の湾曲状に形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記M字形溝は、相隣接する前記M字形溝同士の一部が連続的に形成されている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記M字形溝は、それぞれ大きさが異なっている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−82059(P2010−82059A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252706(P2008−252706)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】