説明

吸収性物品

【課題】吸収体に溝部を設けることによる利点を維持しつつ、横臥姿勢時における横漏れを効果的に防止する。
【解決手段】上記課題は、吸収体23の少なくとも股間部C2における、幅方向中央部と左右両側縁部との間に、表裏面に貫通するスリット状の溝部40が、前後方向に沿ってそれぞれ延在されており、トップシート22の表面における、吸収体23の両溝部40又はその幅方向外側近傍と重なる位置を付根部分52として装着者の身体側に突出する内側立体ギャザー50が、吸収体23の溝部40に沿って設けられており、吸収体23の両溝部40のうち少なくとも幅方向中央側の側部が、内側立体ギャザー50の付根部分52よりも幅方向中央側に位置している、パッドタイプ吸収性物品200により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横臥姿勢での漏れ防止性能を改善した、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成人向けの排泄物吸収性物品(おむつ)としては、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品の他に、これらと併用することを想定した、より小型のフラットタイプと呼ばれるもの等が提供されている。
このような吸収性物品において要求される重要な特性として、拡散性及び吸収速度が知られている。すなわち、吸収体の尿拡散性が乏しいと、吸収体を有効に使用できないだけでなく、吸収体による吸収が高速且つ多量に排泄される尿に追い付かず(つまり吸収速度が遅く)、尿がトップシート表面を伝って移動し、いわゆる横漏れ(脚周りの隙間からの漏れ)を発生するおそれがある。
このような拡散性及び吸収速度に起因する漏れを防止する手段としては、従来、吸収体における幅方向中央部と左右両側縁部との間に、表裏面に貫通するスリット状の溝部を、股間部及びその前後両側にわるように前後方向に沿って延在させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、このような溝部は、装着者が座位や仰向け、うつ伏せの姿勢のときには尿の拡散促進及び吸収速度の向上をもたらし、漏れ防止効果を向上させるものであるが、吸収体が無い部分でもあるため、横方向への移動尿量が多い横臥姿勢のときには吸収体の側部の吸収可能量が不足し、横漏れを起き易くするという問題点を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3208289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、上述の溝部による利点を維持しつつ、横臥姿勢時における横漏れを効果的に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
表面を形成する透液性トップシートと、裏面側に位置する液不透過性シートと、これらの間に介在された吸収体とを備え、
前記吸収体の少なくとも股間部における、幅方向中央部と左右両側縁部との間に、表面から厚み方向の中間部まで窪む凹状又は表裏面に貫通するスリット状の溝部が、前後方向に沿ってそれぞれ延在されており、
前記トップシートの表面における、前記吸収体の両溝部の幅方向外側の縁又はその近傍を付根部分として装着者の身体側に突出する内側立体ギャザーが、前記溝部に沿って設けられており、
前記吸収体の両溝部のうち少なくとも幅方向中央側の側部が、内側立体ギャザーの付根部分よりも幅方向中央側に位置しており、
前記トップシートの表面における、前記内側立体ギャザーの付根部分に対して幅方向外側に間隔を空けた位置を付根部分として装着者の身体側に突出する外側立体ギャザーが、前記吸収体の両側縁部に沿って設けられている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
このように、通常設けられる外側立体ギャザーだけでなく、吸収体の両溝部又はその幅方向外側近傍と重なる位置を付根部分として装着者の身体側に突出する内側立体ギャザーを設けることにより、横方向への移動尿量が多い横臥姿勢のときであっても、トップシート表面を伝って移動する尿を確実に塞き止め、前後方向に拡散させ、或いは近傍の吸収体で吸収することができる。
しかも、溝部の少なくとも幅方向中央側の側部が内側立体ギャザーの付根部分よりも幅方向中央側に位置しているため、溝部による拡散促進及び吸収速度向上の効果は維持される。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記トップシートは前記溝部の両側面及び底面に沿うように窪んでおり、
前記トップシートの表面における前記溝部の幅方向外側の側面の深さ方向中間部より幅方向外側に、前記内側立体ギャザーの付根部分が位置しており、
前記トップシートの表面における前記内側立体ギャザーの付根部分より幅方向中央側は装着者の身体側に露出している、
請求項1記載の吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
このような構造となっていると、溝部内の尿を溝部の幅方向中央側の側面を介して溝部の幅方向中央側の吸収体へ吸収させるだけでなく、溝部の幅方向外側の側面を介して内側立体ギャザーの下を通り抜けて溝部の幅方向外中央側の吸収体へ吸収させることができる。よって、外側立体ギャザーと内側立体ギャザーとの間に位置する吸収体を、内側立体ギャザーを乗り越えた尿の吸収に用いるのはもちろん、内側立体ギャザーの内側に位置する尿の吸収にも用いることができ、内側立体ギャザーを設けたことに起因する基本吸収量の減少を回避することができる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記内側立体ギャザーは、前記付根部分から突出する突出部分と、この突出部分のうち前後方向両端部に設けられた前記トップシート表面に対する固定部分と、前記突出部分のうち前後の固定部分間に位置する非固定の自由部分と、この自由部分の少なくとも先端部に、前後方向に伸張した状態で固定された弾性伸縮部材とを有するものであり、
前記溝部における前後方向の少なくとも一方側の部分が、端部に向かうにつれて幅方向外側に向かうように湾曲又は屈曲した湾曲又は屈曲部分とされており、
前記内側立体ギャザーの付根部分は、前記溝部の湾曲又は屈曲部分の先端部の前後両側及び幅方向外側をコ字状に取り囲む凹部を有している、
請求項2記載の吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
吸収体に溝部を設けると、尿が溝部を通路として移動し、拡散性が向上する。よって、上述のような湾曲又は屈曲部分を設けると、より広範囲の吸収体を吸収に利用できるため好ましい。しかし、装着者が横臥姿勢にあるときに、溝部に上述のような湾曲又は屈曲部分があると、尿が溝部に沿って幅方向外側に移動して端部に集中し、そこから前後方向に向かって過度に拡散するおそれがある。これに対して、上述のように、内側立体ギャザーの付根部分が、溝部の湾曲又は屈曲部分の先端部の前後両側及び幅方向外側をコ字状に取り囲む凹部を有すると、溝部の端部に集中する尿を内側立体ギャザーの付根部分で取り囲んで一時的に蓄えることができ、前後方向への過度の拡散を防止できるため好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり本発明によれば、吸収体に溝部を設けることによる利点を維持しつつ、横臥姿勢時における横漏れを効果的に防止できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】パッドタイプ吸収性物品の展開状態の内面側を示す平面図である。
【図2】要部のみを示す平面図である。
【図3】図1のY−Y断面図である。
【図4】図1のZ−Z断面図である。
【図5】図2の要部のみを示す平面図である。
【図6】内側立体ギャザーの付根部分の各種取り付け位置を示す要部拡大断面図である。
【図7】二層構造の吸収体を有する例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。なお、本発明の用語のうち「股間部」とは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、製品によって、図示形態のように物品の前後方向中央若しくはその近傍から前側の所定部位までの範囲であったり、物品の前後方向中央の所定範囲であったりするものである。物品の前後方向中間あるいは吸収体の前後方向中間に幅の狭い括れ部分を有する場合は、いずれか一方又は両方の括れ部分の最小幅部位を前後方向中央とする所定の前後方向範囲を意味する。また、「前側部分(腹側部分)」は股間部よりも前側の部分を意味し、「後側部分(背側部分)」は股間部よりも後側の部分を意味する。
【0014】
図1〜図4は、本発明に係るパッドタイプ吸収性物品例200を示している。このパッドタイプ吸収性物品200は、股間部C2と、その前後両側に延在する前側部分F2及び後側部分B2とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)Mは350〜800mm程度、全幅W1は130〜400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より狭い)とすることができ、この場合における股間部C2の前後方向長さは10〜150mm程度、前側部分F2の前後方向長さは50〜400mm程度、及び後側部分B2の前後方向長さは50〜400mm程度とすることができる。
【0015】
パッドタイプ吸収性物品200は、外面に外装シート32が積層された不透液性バックシート21の内面と、透液性トップシート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有している。
【0016】
吸収体23の裏面側には、不透液性バックシート21が吸収体23の周縁より若干食み出すように設けられている。不透液性バックシート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0017】
また、不透液性バックシート21の外面は、不織布からなる外装シート32により覆われており、この外装シート32は、所定の食み出し幅をもってバックシート21の周縁より外側に食み出している。外装シート32としては各種の不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0018】
吸収体23の表面側は、透液性トップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体23の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0019】
トップシート22と吸収体23との間には、図2に二点鎖線で示すように、中間シート25を介在させるのが望ましい。この中間シート25は、吸収体23により吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えばメッシュフィルム等を用いるのが望ましい。トップシート22の前端を0%としトップシート22の後端を100%としたとき、中間シート25の前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シート25の後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シート25の幅25wは後述する吸収体23の幅Lの50〜90%程度であるのが好ましい。
【0020】
パッドタイプ吸収性物品200の前後方向両端部では、外装シート32および透液性トップシート22が吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。また、パッドタイプ吸収性物品200の両側部では、外装シート32が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部からトップシート22の側部までの部分の内面には、外側立体ギャザーを構成する外側ギャザーシート24の幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり貼り付けられ、吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。これらを含め、素材貼り合わせ部分は、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成でき、図1では斜線模様及び点模様、図4等の断面図では点模様で示されている。これらエンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFは周縁部をなし、これらにより囲まれる部分が主吸収部分をなす。外装シート32を設けない場合、外装シート32に代えて不透液性バックシート21をサイドフラップ部SFまで延在させ、サイドフラップ部SFの外面側を形成することができる。
【0021】
外側ギャザーシート24の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0022】
外側ギャザーシート24の幅方向中央側の部分24cはトップシート22の上にまで延在している。外側ギャザーシート24,24は、幅方向外側の部分24xが付根部分として前後方向全体にわたり物品内面(図示形態ではトップシート22表面および外装シート32内面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、前後方向の両端部では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部間では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない。この非固定の自由部分は、図1に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して起立可能なバリヤ部となる部分であり、その起立基端24bは外側ギャザーシート24における幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。また、自由部分の幅方向中央側の端部には、外側ギャザー弾性伸縮部材24Gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この外側ギャザー弾性伸縮部材24Gとしては、糸状、紐状、帯状等の細長状に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0023】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、吸収体23はクレープ紙等の液透過性包装シート(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は、相対的に前側の部分が後側の部分よりも幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。
【0024】
吸収体23における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m2程度とするのが好ましい。
【0025】
吸収体23は、股間部C2を含む前後方向中間の所定部分が幅の狭い括れ部分23nとして形成されている。この括れ部分23nの最小幅L3は、括れ部分23nの前後に位置する非括れ部分の幅L1の50〜65%程度であるのが好ましい。また、物品前端を0%とし物品後端を100%としたとき、括れ部分23nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの最小幅L3となる部位(最小幅部位)は25〜30%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0026】
吸収体は、幅方向中央部と左右両側縁部との間に、表裏面に貫通するスリットからなる溝部40が、前側部分F2内から股間部C2をとおり後側部分B2内まで前後方向に沿ってそれぞれ延在されている。
【0027】
溝部40は直線状に延在していても良いが、図示例のように前後方向の少なくとも一方側の部分が、端部に向かうにつれて幅方向外側に向かうように湾曲又は屈曲した湾曲又は屈曲部分とされているのが好ましい。より詳細には、図示例の溝部40は、吸収体23の括れ部分23nのうち後側に向かうにつれて幅が拡大し始める後側拡幅開始位置(最小幅部位)23wよりも後側において、後側に向うにつれてより幅方向外側に位置するように延在するか、又は幅方向に沿って幅方向中央側から幅方向外側に向かって延在する拡散促進部分41を有している。この拡散促進部分41は図示例のように吸収体23の括れ部分23nに沿う円弧状等の曲線状をなしているのが好ましいが、直線状であっても良い。
【0028】
このような構造を有していると、座位時のように厚さ方向の圧縮力が加えられた状態でも、溝部40が尿の拡散経路として確保されるため、図5に矢印で示すように、股間部C2の排泄位置(図中の黒塗り星マーク)において局所的に吸収体23に至った尿が溝部40に沿って後側に拡散する過程で、溝部40の拡散促進部分41に沿って幅方向外側にも拡散し、より広範囲に拡散供給される。よって、拡散性及び吸収速度に優れ、逆戻りが発生し難く成る。また、溝部40が股間部C2に存在していることにより、物品の股間部C2と身体とのフィット性が良好となる。
【0029】
なお、このような観点から、溝部40の拡散促進部分41の前端は、吸収体23の括れ部分23nにおける後側拡幅開始位置23wを通る幅方向線上またはその近傍に位置しているのが好ましい。また、溝部40の拡散促進部分41における幅方向外側縁の接線と前後方向とのなす角をθ1とし、吸収体23の括れ部分23nの側縁の接線と前後方向とのなす角をθ2としたとき、溝部40の拡散促進部分41と対応する前後方向範囲内の各前後方向位置において、次の関係式、
0° ≦ θ1 ≦ 90°
θ1−20° ≦ θ2 ≦ θ1+20°
を満足するように構成されているのが好ましく、
特に、次の関係式、
0° ≦ θ1 ≦ 40°
θ1−10° ≦ θ2 ≦ θ1+5°
を満足するように構成されているのが好ましい。
【0030】
さらに、溝部40の拡散促進部分41の後端は吸収体23の側縁から離間しているのが好ましい。この場合、その幅方向離間距離L1が、吸収体23における括れ部分23nの後端の幅をLとしたとき、10mm ≦ L1 ≦ L/3の関係を満足するように構成されているのが好ましく、特に50mm ≦ L1 ≦ L/3の関係を満足するように構成されているのが好ましい。このように、溝部40の拡散促進部分41の後端を吸収体23の側縁からある程度離間させつつ、十分に吸収体23の側部まで延在させることにより、溝部40による幅方向の拡散が過大とならない範囲で、吸収体23に対して十分に広範囲に尿を拡散することができるようになる。
【0031】
また、吸収性物品の全長をMとし、溝部40の拡散促進部分の後端よりも後側部分B2の前後方向長さをM1とし、溝部40の拡散促進部分41の後端よりも前側部分の前後方向長さをM2としたとき、M/2 ≦ M2 < Mの関係を満足するように構成されているのが好ましく、特にM/7 ≦ M2 < M/3の関係を満足するように構成されているのが好ましい。このように、溝部40の拡散促進部分41の後端を十分に後側に延在させつつも、物品後端から十分に離間させることにより、溝部40による後側への拡散が適度となる。溝部40をあまりに物品後側まで延在させると、後側への拡散が過大となって、いわゆる背漏れが発生するおそれがある。
【0032】
溝部40の幅wは適宜定めることができるが、通常の場合10〜30mmの範囲内にあるのが好ましく、特に10〜15mmの範囲内にあるのが好ましい。溝部40の幅wが狭過ぎると溝部が幅方向に潰れ易くなり、狭過ぎると溝部40内に上下部材(例えば吸収体23の包装シート)が入り込み、いずれにせよ拡散のための空間が減少するため好ましくない。
【0033】
一方、溝部40は、拡散促進部分41の前側に連続する部分として、左右の溝部間隔dが20〜40mmである導入部分42を有しているのが好ましい。より好ましい間隔dは10〜40mmである。この導入部分42の前後方向長さは、物品全長の10〜35%程度、特に12〜35%程度であるのが好ましい。
【0034】
さらに、溝部40は、この導入部分42の前端から幅方向外側に向きを変えて、吸収体23の側縁に向かって延在する前側間隔拡大部43を有している。前側間隔拡大部43は、前側に向うにつれてより幅方向外側に位置するように延在するか、又は幅方向に沿って幅方向中央側から幅方向外側に向かって延在する曲線状又は直線状をなしているのが好ましい。また、この前側間隔拡大部43は先端が図示形態のように吸収体23の側縁に貫通しているのが好ましいが、吸収体23の側縁までは到達させずに、側縁から離間させることもできる。
【0035】
他方、股間部C2へのフィット性を高めるために、パッドタイプ吸収性物品200の幅方向両側部における吸収体23の裏面側に、前側部分F2から後側部分B2にわたり延在するように糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材を設けることもできるが、溝部40の存在により股間部C2へのフィット性が高くなるため、図示形態のように省略することができる。
【0036】
特徴的には、トップシート22の表面における、吸収体23の両溝部40の幅方向外側の縁又はその近傍を付根部分52として装着者の身体側に突出する内側立体ギャザー50が、溝部40に沿って設けられるとともに、吸収体23の両溝部40における少なくとも幅方向中央側の側部が、内側立体ギャザー50の付根部分52よりも幅方向中央側に位置している。
【0037】
このような内側立体ギャザーを有していると、横方向への移動尿量が多い横臥姿勢のときであっても、トップシート22表面を伝って移動する尿を確実に塞き止め、前後方向に拡散させ、或いは近傍の吸収体23で吸収することができ、且つ、溝部40の少なくとも幅方向中央側の側部が内側立体ギャザー50の付根部分52よりも幅方向中央側に位置しているため、溝部40による拡散促進及び吸収速度向上の効果は維持される。
【0038】
図示例の内側立体ギャザー50は、付根部分52から突出する突出部分53と、この突出部分53のうち前後方向両端部に設けられたトップシート22表面に対する固定部分54と、突出部分53のうち前後の固定部分54間に位置する非固定の自由部分55とを有する内側ギャザーシート51と、この内側ギャザーシート51の自由部分55の少なくとも先端部に、前後方向に伸張した状態で固定された内側ギャザー弾性伸縮部材56とを有している。内側ギャザーシート51及び内側ギャザー弾性伸縮部材56としては、外側ギャザーシート24及び外側ギャザー弾性伸縮部材24Gの項で述べた素材から適宜選択することができる。
【0039】
内側立体ギャザー50の前後方向範囲は適宜定めることができ、溝部40に沿う部分を有する限り、自由部分55の前後方向範囲が溝部40の前後方向範囲内の一部(例えば股間部C2)となるように構成しても良いが、自由部分55の前後方向範囲が溝部40の前後方向範囲より広い構成とするのが好ましい。特に、吸収性物品200を製造する際、吸収性物品200の前後方向が製造ラインの流れ方向に沿う場合には、図示例のように、内側ギャザーシート51を外側ギャザーシート24と同様に吸収性物品の前端から後端まで連続させるとともに、その前端部及び後端部に固定部分24を設けるのが好ましい。また、内側立体ギャザー50の自由部分55の前後方向範囲は、外側立体ギャザーの自由部分の前後方向範囲と同じでも良いが、より狭い範囲とすることもできる。
【0040】
内側立体ギャザー50の付根部分52の幅方向位置は、吸収体23の溝部40における幅方向中央側の側部よりも幅方向外側に位置していれば良く、したがって、内側立体ギャザー50の付根部分52の幅方向中央側の端部が、図6(a)に示すように溝部40の幅方向外側に位置していても良く、図6(b)に示すように、溝部40の幅方向外側の側面と重なるように位置していても良く、また図6(c)に示すように溝部40の底部と重なるように位置していても良い。しかし、図示形態のように、トップシート22が溝部40の両側面及び底面に沿うように窪んでいる場合において、図6(c)に示す構造を採用すると、外側立体ギャザーと内側立体ギャザー50との間に位置する吸収体23を、内側立体ギャザー50を乗り越えた尿の吸収には役立つが、内側立体ギャザー50の内側に位置する尿の吸収には用いることができない。
【0041】
よって、図6(a)及び(b)に示す例のように、内側立体ギャザー50の付根部分52を、吸収体23の溝部40の幅方向外側の側面の深さ方向中間部より幅方向外側に位置させて、トップシート22の表面における内側立体ギャザー50の付根部分52より幅方向中央側は装着者の身体側に露出させるのが好ましい。これにより、溝部40内の尿を溝部40の幅方向中央側の側面を介して溝部40の幅方向中央側の吸収体23へ吸収させるだけでなく、溝部40の幅方向外側の側面を介して内側立体ギャザー50の下を通り抜けて溝部40の幅方向外中央側の吸収体23へ吸収させることができる。よって、外側立体ギャザーと内側立体ギャザー50との間に位置する吸収体23を、内側立体ギャザー50を乗り越えた尿の吸収に用いるのはもちろん、内側立体ギャザー50の内側に位置する尿の吸収にも用いることができ、内側立体ギャザー50を設けたことに起因する基本吸収量の減少を回避することができる。
【0042】
また、内側立体ギャザー50の付根部分52の側縁と外側立体ギャザー24の起立基端とは十分に離間しているのが好ましく、通常の場合20〜180mm程度であるのが好ましい。さらに、内側立体ギャザー50の自由部分55の先端は、幅方向中央側に折りたたんだ状態で、物品の幅方向中央線から0〜150mm程度離間しているのが好ましい。
【0043】
他方、上述のように、溝部40における前後方向の少なくとも一方側の部分が、端部に向かうにつれて幅方向外側に向かうように湾曲又は屈曲した湾曲又は屈曲部分とされている場合は、図1に示すように、内側立体ギャザー50の付根部分52が、溝部40の湾曲又は屈曲部分の先端部の前後両側及び幅方向外側をコ字状に取り囲む凹部57を有するように、内側立体ギャザー50の取付位置等を設計するのが好ましい。このような凹部57は接着剤の間欠塗布により形成することができる。そして、このように、内側立体ギャザー50の付根部分52が、溝部40の湾曲又は屈曲部分の先端部の前後両側及び幅方向外側をコ字状に取り囲む凹部57を有すると、溝部40の端部に集中する尿を内側立体ギャザー50の付根部分52で取り囲んで一時的に蓄えることができ、前後方向への過度の拡散を防止できる。
【0044】
<その他>
上記例では、吸収体23が一層構造となっているが、図7に示すように上層23U、下層23Bからなる二層構造とすることもでき、また図示しないが三層以上とすることもできる。
【0045】
図7に示す二層構造の吸収体23は、下層23Bの上に、下層23Bの幅Lよりも幅L2が狭く且つ少なくとも股間部C2から後側部分B2にかけて前後方向に延在する上層23Uが積層された二層構造となっている。上層23Uの前後方向長さは下層23Bの前後方向長さと同じであっても良いが、70〜85%程度とするのが望ましい。また、上層23Uの全幅は下層23Bの全幅の40〜60%程度とするのが望ましい。さらに、下層23Bの繊維目付けは例えば80〜400g/m2程度、高吸収性ポリマーの目付けは例えば50〜400g/m2程度とすることができ、上層23Uの繊維目付けは例えば80〜300g/m2程度、高吸収性ポリマーの目付けは例えば10〜200g/m2程度とすることができる。
【0046】
このような二層構造の吸収体23において溝部40を設ける場合、図示例のように上層23Uにのみ溝部40を設ける他、図示しないが上層23U表面から厚み方向の下層23Bの中間部まで窪む凹状又は上層23U表面から下層23B裏面に貫通するスリット状の溝部を設けることもできる。なお、これらの例からも理解できるように、吸収体23が一層構造の場合であっても、溝部40を、表面から厚み方向の中間部まで窪む凹状部分とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、パッドタイプ吸収性物品、パンツタイプ若しくはテープタイプ使い捨ておむつ、または生理用ナプキン等、吸収性物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0048】
21…不透液性バックシート、22…透液性トップシート、23…吸収体、23U…上層、23B…下層、24…外側ギャザーシート、32…外装シート、40…溝部、50…内側立体ギャザー、200…パッドタイプ吸収性物品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を形成する透液性トップシートと、裏面側に位置する液不透過性シートと、これらの間に介在された吸収体とを備え、
前記吸収体の少なくとも股間部における、幅方向中央部と左右両側縁部との間に、表面から厚み方向の中間部まで窪む凹状又は表裏面に貫通するスリット状の溝部が、前後方向に沿ってそれぞれ延在されており、
前記トップシートの表面における、前記吸収体の両溝部又はその幅方向外側近傍と重なる位置を付根部分として装着者の身体側に突出する内側立体ギャザーが、前記溝部に沿って設けられており、
前記吸収体の両溝部のうち少なくとも幅方向中央側の側部が、内側立体ギャザーの付根部分よりも幅方向中央側に位置しており、
前記トップシートの表面における、前記内側立体ギャザーの付根部分に対して幅方向外側に間隔を空けた位置を付根部分として装着者の身体側に突出する外側立体ギャザーが、前記吸収体の両側縁部に沿って設けられている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートは前記溝部の両側面及び底面に沿うように窪んでおり、
前記トップシートの表面における前記溝部の幅方向外側の側面の深さ方向中間部より幅方向外側に、前記内側立体ギャザーの付根部分が位置しており、
前記トップシートの表面における前記内側立体ギャザーの付根部分より幅方向中央側は装着者の身体側に露出している、
請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記内側立体ギャザーは、前記付根部分から突出する突出部分と、この突出部分のうち前後方向両端部に設けられた前記トップシート表面に対する固定部分と、前記突出部分のうち前後の固定部分間に位置する非固定の自由部分と、この自由部分の少なくとも先端部に、前後方向に伸張した状態で固定された弾性伸縮部材とを有するものであり、
前記溝部における前後方向の少なくとも一方側の部分が、端部に向かうにつれて幅方向外側に向かうように湾曲又は屈曲した湾曲又は屈曲部分とされており、
前記内側立体ギャザーの付根部分は、前記溝部の湾曲又は屈曲部分の先端部の前後両側及び幅方向外側をコ字状に取り囲む凹部を有している、
請求項2記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−156032(P2011−156032A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18450(P2010−18450)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】