説明

吸収性物品

【課題】内腿の窪みや裏腿の窪みに対するフィット性を向上させる。
【解決手段】上記課題は、下層吸収部10及びその上に位置する上層吸収部20を有し、上層吸収部20のうち、尾骨対向部TPよりも前側に位置する上層前側部分20Fは左側部分30及び右側部分40に分かれており、これら左側部分及び右側部分における自由部分の下層吸収部10側に、隆起用弾性伸縮部材36,46が前後方向に伸長した状態で固定されており、これら左側部分30及び右側部分40の隆起用弾性伸縮部材36,46は、左側部分30及び右側部分40の各自由部分のうち、内腿対向部IS及び裏腿対向部BSの少なくとも一方に設けられ且つこれ以外の部分に設けられていない、吸収性物品200により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内腿の窪みや裏腿の窪みに対するフィット性を向上させた吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
拘縮等が原因で、寝たきりの人や車いすが手放せない人、自分では体の向きや位置を変えられない人においては、太腿が痩せて、内腿の窪みや裏腿に窪みを生ずる。
従来の吸収性物品は、立体ギャザーにより脚周りのフィット性を確保するようになっているが、上述のような内腿の窪みや腿外側の窪みに対しては十分なフィット性が得られず、脚周りからの漏れが発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−330383号公報
【特許文献2】特開2005−279004号公報
【特許文献3】特開2009−125203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、内腿の窪みや裏腿の窪みに対するフィット性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
尾骨対向部と、尾骨対向部の前側をなす物品前側部分と、この物品前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む物品後側部分とを有し、
下層吸収部、及びその上に位置する上層吸収部が、それぞれ物品前側部分から物品後側部分にかけて前後方向に延在し、前記下層吸収部は少なくとも上層吸収部側の面から、及び前記上層吸収部は少なくとも下層吸収部側の面から、それぞれ排泄物を吸収するように構成され、
前記上層吸収部は、尾骨対向部の前側をなす上層前側部分と、上層前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む上層後側部分とから構成され、
少なくとも前記上層前側部分は、幅方向中央に対して左側に位置する左側部分、及び右側に位置する右側部分からなり、これら左側部分の幅方向中央側の側縁及び右側部分の幅方向中央側の側縁の離間部分には、下層吸収部が露出しており、
前記左側部分及び右側部分は、幅方向外側の側縁部が前記下層吸収部の表面に対して固定され、この固定部よりも幅方向中央側の部分では少なくとも前端部以外の部分が前記下層吸収部の表面に対して固定されていない自由部分とされており、
前記上層前側部分には、前記左側部分及び右側部分のそれぞれにおける前記自由部分の前記下層吸収部側に、隆起用弾性伸縮部材が前後方向に伸長した状態で固定されており、
これら左側部分及び右側部分の隆起用弾性伸縮部材は、前記左側部分及び右側部分の各自由部分のうち、内腿対向部及び裏腿対向部の少なくとも一方に設けられ且つこれ以外の部分に設けられていない、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
本発明では、上層吸収部のうち、少なくとも尾骨対向部よりも前側に位置する上層前側部分は左側部分及び右側部分に分かれており、これら左側部分及び右側部分の内腿対向部及び裏腿対向部が、隆起用弾性伸縮部材の収縮作用により収縮方向にアーチ状をなすように装着者の肌側にそれぞれ盛り上がり、内腿の窪み及び裏腿の窪みに入り込んでフィットするようになる。その結果、内腿の窪みや裏腿の窪みに起因する漏れの防止効果に優れるようになる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記左側部分及び右側部分が幅方向にアーチ状をなしている、請求項1記載の吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
このようなアーチ状をなしていることによって、左側部分及び右側部分が裏腿の窪みに対して良好にフィットするようになる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記左側部分及び右側部分は、幅方向外側の側縁部が前記下層吸収部の表面に対して固定され、この固定部よりも幅方向中央側の部分では前端部は前記下層吸収部の表面に対して固定されるものの前端部以外の部分は前記下層吸収部の表面に対して固定されていない自由部分とされ、且つこの自由部分の幅方向中央側の縁部に、先端部弾性伸縮部材が各縁部に沿う方向に伸長した状態で固定されており、
前記上層前側部分は、前記左側部分の幅方向中央側の側縁及び右側部分の幅方向中央側の側縁が、後端部では一致又は近接するとともに、後端部から前側に向かうにつれて離間距離が拡大しつつ装着者の脚の付け根に沿って鼠径部に達するように形成されており、
前記上層後側部分と前記下層吸収部との間が、前記上層前側部分における左側部分と右側部分との離間部分を入口とするポケットとして構成されている、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【0010】
本項記載の発明では、上層吸収部における左側部分及び右側部分の幅方向中央側の側縁は、後端部では一致又は近接し、後端部から前側に向かうにつれて離間距離が拡大するように形成されており、さらにこれら左側部分及び右側部分が先端部弾性伸縮部材の収縮作用により装着者の肌側に盛り上がるようになっている。また、これら左側部分と右側部分との離間部分を入口とするポケットが、上層後側部分と下層吸収部との間に形成される。よって、このポケットの入口縁部は、上層前側部分における左側部分及び右側部分の幅方向中央側の側縁により形成され、その後端部では両側縁が一致又は近接することにより山状をなして肛門又はその近傍にフィットし、後端部から前側では両側縁が装着者の各脚の付け根に沿って鼠径部までフィットするようになる。その結果、股間部においても上層吸収部が身体表面にフィットし、肌を伝う尿もポケットへ導入して、上層吸収部及び下層吸収部の少なくとも一方により吸収することができ、褥瘡が発生し易い尾骨部及び仙骨部の尿汚染を低減することができる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
前記上層吸収部は、上層吸収体と、上層吸収体における下層吸収部側の反対側を覆う液不透過性シートとを有するものである、請求項3記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
このように、上層吸収体における下層吸収部側の反対側の面を覆うように液不透過性シートを設けると、ポケット内に導入した排泄物が上層吸収部を介して装着者の肌に逆戻りするのを防止できるため好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によれば、仙骨部や尾骨部の尿汚染の防止性能が向上する等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】吸収パッドの展開状態の内面側を示す平面図である。
【図2】下層吸収部のみを示す平面図である。
【図3】上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【図4】図1のX−X断面図である。
【図5】図1のY−Y断面図である。
【図6】図1のZ−Z断面図である。
【図7】上層前側部分の盛り上がり状態を示す股間部断面図である。
【図8】吸収性物品の斜視図である。
【図9】他の形態の上層前側部分の盛り上がり状態を示す股間部断面図である。
【図10】他の形態の上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【図11】他の吸収パッドの展開状態の内面側を示す平面図である。
【図12】他の吸収パッドの下層吸収部のみを示す平面図である。
【図13】図11のX−X断面図である。
【図14】股間部に対する上層前側部分のフィット性を説明するための概略図である。
【図15】他の形態の上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【図16】他の形態の上層吸収部のみを示す一部破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。なお、「尾骨対向部」、「仙骨対向部」、「股間部」とは、使用時に身体の尾骨、仙骨、股間と対向する部分を意味し、製品によって異なるものである。また、断面図における点模様は、ホットメルト接着剤による接着、あるいは素材の融着により形成される固定部を示している。
【0016】
図1〜図8は、本発明に係る吸収パッド例200を示している。この吸収パッド200は、尾骨対向部Cと、尾骨対向部Cの前側をなす物品前側部分Fと、この物品前側部分Fよりも後側であって尾骨対向部Cを含む物品後側部分Bとを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)L1は350〜700mm程度、全幅W1は130〜400mm程度とすることができ、この場合における前側部分Fの前後方向長さは150〜400mm程度、及び後側部分Bの前後方向長さは200〜300mm程度、尾骨対向部Cの前後方向長さは40〜100mm程度、とすることができる。
【0017】
吸収パッド200は、下層吸収部10、及びその上に位置する上層吸収部20が、それぞれ物品前側部分Fから物品後側部分Bにかけて前後方向に延在しているものである。図示例では、下層吸収部10及び上層吸収部20ともに、物品全長全体にわたり設けられているが、いずれか一方を他方より短く、例えば下層吸収部10よりも上層吸収部20を短く構成することもできる。
【0018】
(下層吸収部)
下層吸収部10は、下層裏面側シート11の内面と下層表面側シート13との間に、下層吸収体14が介在された基本構造を有している。
より詳細には、下層吸収体14としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、下層吸収体14はクレープ紙等の液透過性包装シート(図示せず)により包むことができる。
【0019】
下層吸収体14における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付けは0〜400g/m2程度とするのが好ましい。
【0020】
また、下層吸収体14の形状は、図示例のように股間部がその前後両側よりも幅の狭い括れ部分14Nとなる形状の他、前側の部分が後側の部分よりも相対的に幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。下層吸収体14の寸法は適宜定めることができるが、前後方向長さL2は、物品全長L1の85〜95%程度とすることができ、下層吸収体14の幅W2は、物品幅W1の70〜95%程度とすることができる。また、括れ部分14Nの最小幅W4は、下層吸収体幅W2の35〜65%程度であるのが好ましい。また、物品前端を0%とし物品後端を100%としたとき、括れ部分14Nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分14Nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分14Nの最小幅W4となる部位(最小幅部位)は25〜50%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0021】
特徴的には、この括れ部分14Nの存在によって、下層吸収部10における股間部の幅W4が、上層吸収部20の上層前側部分20Fにおける股間部の幅W3よりも狭くなっている。このW4<W3となる部分の前後方向長さは、物品全長L1の20〜55%程度とするのが好ましい。もちろん、図10〜図13に示すように、下層吸収部10における股間部の幅W4を、上層吸収部20の上層前側部分20Fにおける股間部の幅W3より広くすることもできる。
【0022】
下層吸収体14の裏面側には、下層裏面側シート11が下層吸収体14の周縁から食み出るように設けられている。下層裏面側シート11としては、液不透過性シートの他、製品によっては液透過性シートを用いることもできる。液不透過性シートとしてはポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムの他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートの他、不織布にシリコンなどにより撥水処理を施した撥水性不織布を用いることができる。
【0023】
また、下層裏面側シート11の外面の一部又は全体は、不織布からなる外装シート12により覆うことができる。外装シート12としてはスパンボンド不織布等、公知の不織布を用いることができる。不織布の繊維素材としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0024】
下層吸収体14の表面側は下層表面側シート13により覆われている。図示形態では下層表面側シート13の側縁から下層吸収体14が一部食み出ているが、下層吸収体14の側縁が食み出ないように下層表面側シート13の幅を広げることもできる。下層表面側シート13としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシート等の液透過性シートを用いることができ、不織布としてはエアスルー不織布やスパンレース不織布等、公知の不織布を用いることができる。不織布の繊維素材としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0025】
下層表面側シート13と下層吸収体14との間には、図示しない中間シートを介在させることができる。この中間シートは、下層吸収体14により吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えば嵩の高い不織布、メッシュフィルム等を用いるのが望ましい。下層表面側シート13の前端を0%とし下層表面側シート13の後端を100%としたとき、中間シートの前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シートの後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シートの幅は物品幅W1の30〜65%程度であるのが好ましい。
【0026】
(上層吸収部)
上層吸収部20は、上層裏面側シート21と上層表面側シート23との間に上層吸収体24が介在された基本構造を有している。
上層裏面側シート21及び上層表面側シート23としては、下層表面側シート13と同様の素材の中から適宜選択することができ、下層表面側シート13と同一の素材を用いることも、異なる素材を用いることもできる。
【0027】
また、上層吸収体24としては、下層吸収体14と同様の素材の中から適宜選択することができ、下層吸収体14と同一の素材を用いることも、異なる素材を用いることもできる。上層吸収体24の幅W3は、下層吸収体14の幅W2よりも狭くするのが好ましく、特に下層吸収体14の幅W2の30〜50%程度とするのが好ましいが、同じ又はより広くすることもできる。
【0028】
さらに、図示形態のように、上層吸収体24と上層表面側シート23との間に、液不透過性シート25を介在させると好ましい。これに代えて又はこれとともに、上層表面側シートを液不透過性シートで構成することもできる。これらの場合における液不透過性シート25としては、下層裏面側シート11と同様の素材の中から適宜選択することができ、下層裏面側シート11と同一の素材を用いることも、異なる素材を用いることもできる。
【0029】
上層吸収部20の前後端部は、上層裏面側シート21及び上層表面側シート23が上層吸収体24の前後端よりも前後両側にそれぞれ延出して貼り合わされることにより形成されており、一方、下層吸収部10の前後端部は、下層裏面側シート11、外装シート12および下層表面側シート13が下層吸収体14の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされることにより形成されており、吸収性物品200の前後端部には、これら下層吸収部10の前後端部と上層吸収部20の前後端部とが貼りあわされて形成された、上層吸収体24及び下層吸収体14の無いエンドフラップ部EFとなっている。
【0030】
また、上層吸収部20の両側部は、上層裏面側シート21及び上層表面側シート23が上層吸収体24の両側縁よりも側方にそれぞれ延出して貼り合わされることにより形成されており、一方、下層吸収部10の両側部は、下層裏面側シート11、外装シート12および下層表面側シート13が下層吸収体14の両側縁よりも側方にそれぞれ延在されて貼り合わされることにより形成されており、吸収性物品200の両側部には、これら下層吸収部10の両側部と上層吸収部20の両側部とが貼りあわされて形成された、上層吸収体24及び下層吸収体14の無いサイドフラップ部SFとなっている。
【0031】
特徴的には、上層吸収部20は、尾骨対向部TPの前側をなす上層前側部分20Fと、上層前側部分20Fよりも後側であって尾骨対向部TPを含む上層後側部分20Bとから構成されており、図示例では、上層前側部分20Fの前端部は物品前端部まで達しており、後端部は物品後端部まで達している。
【0032】
このうち、上層前側部分20Fは、幅方向中央に対して左側に位置する左側部分30、及び右側に位置する右側部分40から構成されている。これら左側部分30の幅方向中央側の側縁及び右側部分40の幅方向中央側の側縁は、後端部では一致又は近接するとともに、後端部から前側に向かうにつれて離間距離が拡大しつつ装着者の脚の付け根に沿って鼠径部に達するように形成されており、これら左側部分30の幅方向中央側の側縁及び右側部分40の幅方向中央側の側縁の離間部分には、下層吸収部10が露出している。これら左側部分30及び右側部分40の幅方向中央側の各側縁は、図示例では直線状をなしている(両側縁がV字状をなしている)が、曲線状をなしていても良い。これら側縁の交差角(内角)θは適宜定めることができるが、20〜50度程度が好適である。
【0033】
また、上層前側部分20Fの左側部分30及び右側部分40は、幅方向外側の側縁部31,41が下層吸収部10の表面に対して固定され、この固定部31,41よりも幅方向中央側の部分では前端部32,42は固定されるものの前端部以外の部分33,43は下層吸収部10の表面に対して固定されていない自由部分とされている。固定部31,41の幅方向中央側の側縁は、図示例のように、上層吸収体24の幅方向外側の側縁より幅方向中央側に位置しているのが好ましいが、上層吸収体24の幅方向外側の側縁と同じか又はより幅方向外側に位置させることも可能である。この固定部31,41は、ホットメルト接着剤による接着、あるいは素材の融着により形成することができる。
【0034】
そして、上層前側部分20Fの左側部分30及び右側部分40には、自由部分33,43の幅方向中央側の縁部に、先端部弾性伸縮部材35,45が各縁部に沿う方向に伸長した状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この先端部弾性伸縮部材35,45としては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム等を用いることができる(後述の基端部弾性伸縮部材も同様)。図示例では、左側部分30及び右側部分40の幅方向中央側の縁部における上層吸収体24の無い縁部に設けられているが、上層吸収体24の幅方向中央側の端部の表面側又は裏面側に設けることもできる。
【0035】
さらに、図示例では、自由部分33,43の幅方向外側の縁部における上層吸収体24の裏面側に、隆起用弾性伸縮部材36,46が前後方向に伸長した状態でホットメルト接着剤等により固定されている。隆起用弾性伸縮部材36,46は、自由部分33,43の幅方向外側の縁部に設ける他、図9に示すように、自由部分33,43の幅方向中間部にも設けることができる。隆起用弾性伸縮部材36,46は、左側部分30及び右側部分40の各自由部分のうち、内腿対向部IS及び裏腿対向部BSに設け、両者の間及び前後両側には設けていないが、図11に示すように内腿対向部IS及び裏腿対向部BSのいずれか一方(図示例では内腿対向部IS)に設け且つその前後両側には設けないこともできる。内腿対向部IS及び裏腿対向部BSの位置は製品により異なるが、通常の場合、内腿対向部ISは括れ部分14Nの前後方向中央から前側に20〜100mmの部位とし、裏腿対向部BSは括れ部分14Nの前後方向中央から後側に20〜100mmの部位とすることができる。また、各隆起用弾性伸縮部材36,46の前後方向長さは、上層前側部分20Fの前後方向長さの10〜25%程度とするのが好ましい。
【0036】
一方、上層後側部分20Bは、両側部37及び後端部38が下層吸収部10の表面に固定され、これら固定部37,38により囲まれる部分は非固定とされており、この非固定の部分と下層吸収部10との間が、上層前側部分20Fにおける左側部分30と右側部分40との離間部分を入口とするポケット50として構成されている。上層後側部分20Bの固定部も、ホットメルト接着剤による接着、あるいは素材の融着により形成することができ、特に、両側部の固定部37は上層前側部分20Fの左右両側の固定部31,41とそれぞれ連続するように形成するのが望ましい。
【0037】
以上のように構成された吸収性物品においては、図7及び図8に示すように、隆起用弾性伸縮部材36,46が内腿対向部IS及び裏腿対向部BSにのみ作用するように前後方向に間欠的に設けられているため、図8に示されるように、左側部分30及び右側部分40の内腿対向部IS及び裏腿対向部BSが、隆起用弾性伸縮部材36,46の収縮作用により収縮方向(左側部分30及び右側部分40の幅方向中央側の側縁に沿う方向)にアーチ状をなすように装着者の肌側にそれぞれ盛り上がり、図14に模式的に示すように、脚100の内腿の窪み101及び裏腿の窪み102に入り込んでフィットするようになる。その結果、内腿の窪みや裏腿の窪みに起因する漏れの防止効果に優れるようになる。
【0038】
また、上層前側部分20Fにおける左側部分30及び右側部分40が先端部弾性伸縮部材35,45の収縮作用により装着者の肌側に盛り上がるとともに、内腿の窪みや裏腿の窪みに対してフィットするようになる。この際、下層吸収部10における股間部の幅が、上層吸収部20の上層前側部分20Fにおける股間部の幅よりも狭いと、装着者の股間が狭い場合や脚の動きにより股間が狭くなり、これに伴い物品の股間部が装着者の股間に挟まれて狭くなったとき、上層前側部分20Fの両側部が下層吸収部10の両脇に逃げ出て落ち込むことにより、左側部分30及び右側部分40が盛り上がりによる窪みに対するフィット性を維持したまま、脚周りに追従して姿勢変化及び位置変化することができる。その結果、漏れの防止効果がより一層のものとなる。
【0039】
特に、図7に示されるように、左側部分30及び右側部分40が全体的に、幅方向にアーチ状(幅方向外側から中央側に向かうほど傾きが減少する弓なり形状)をなし、上層前側部分20Fの左側部分30及び右側部分40の身体側面が山状に隆起すると、図14に模式的に示すように、脚100の裏腿の窪み102に対するフィット性が更に向上する。この観点から、隆起用弾性伸縮部材36,46は、図10に示すように内腿対向部ISにのみ設ける形態でも十分なフィット性向上を図ることができる。なお、図中の符号UPは排尿口の位置を示し、符号APは肛門の位置を示している。
【0040】
さらに、以上のように構成された吸収性物品においては、上層前側部分20Fにおける左側部分30及び右側部分40が先端部弾性伸縮部材35,45の収縮作用により装着者の肌側に盛り上がるとともに、その間の離間部分が上層後側部分20Bと下層吸収部10との間に形成されるポケット50の入口となる。そして、このポケット50の入口縁部は、上層前側部分20Fの後端部では両側縁が一致又は近接することにより山状をなして肛門又はその近傍にフィットし、上層前側部分20Fの後端部から前側では両側縁が装着者の各脚の付け根に沿って鼠径部までフィットするようになる。その結果、股間部においても上層吸収部20が身体表面にフィットし、肌を伝う尿もポケット50へ導入して、上層吸収部20及び下層吸収部10の少なくとも一方により吸収することができ、尾骨部及び仙骨部の尿汚染を低減することができる。
【0041】
また、図示例のように、上層吸収体24における下層吸収部10側の反対側の面を覆うように液不透過性シート25を設けると、ポケット50内に導入した排泄物が上層吸収部20を介して装着者の肌に逆戻りするのを防止できるようになり、尾骨部及び仙骨部の尿汚染を低減する効果がより一層のものとなる。
【0042】
<その他>
(イ)上層吸収部20を下層吸収部10の上に重ねた場合、厚みが増加することにより、身体表面に突出する部分である仙骨や尾骨に対して圧力が集中し、褥瘡防止の観点からは好ましくはない。よって、図示のように、上層吸収部20の厚みを尾骨対向部TPにおいて周囲よりも薄くし、尾骨に対する圧力集中を軽減するのは好ましい。具体的には、上層吸収体24における尾骨対向部TPに、エンボス加工による凹部を設けたり、素材の目付けを局所的に少なくして薄肉としたり、打ち抜き加工や成形により貫通孔を設けたりするといった手法により、上層吸収部20の尾骨対向部TPを周囲よりも薄くすることができる。なお、尾骨対向部TPに代えて又はこれとともに、仙骨対向部においても上層吸収部20の厚みを周囲より薄くすることができる。また、上層吸収部20のみならず下層吸収部10についても同部位の厚みを薄くすることができる。
(ロ)図15に示すように、左側部分30及び右側部分40の幅方向中央側の側縁30e,40eは前後方向に沿う直線状をなしていても良い。
(ハ)上層後側部分20Bは、両側部37及び後端部38が下層吸収部10の表面に固定され、これら固定部37,38により囲まれる部分は非固定のポケット50となっているが、後端部38のみ等、前後方向の少なくとも一部が下層吸収部10の表面に対して固定されているだけでも良い。
(ニ)上記例では、左側部分30及び右側部分40は上層前側部分20Fにのみ設けられているが、上層後側部分20Bの途中まで設けたり(図示略)、図16に示すように上層吸収部20の前後方向全体にわたるように、つまり左側部分30及び右側部分40を別体として設けたりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、吸収パッド、パンツタイプ若しくはテープタイプ使い捨ておむつ等、吸収性物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0044】
10…下層吸収部、11…下層裏面側シート、12…外装シート、13…下層表面側シート、14…下層吸収体、20…上層吸収部、21…上層裏面側シート、23…上層表面側シート、24…上層吸収体、30…左側部分、40…右側部分、50…ポケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尾骨対向部と、尾骨対向部の前側をなす物品前側部分と、この物品前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む物品後側部分とを有し、
下層吸収部、及びその上に位置する上層吸収部が、それぞれ物品前側部分から物品後側部分にかけて前後方向に延在し、前記下層吸収部は少なくとも上層吸収部側の面から、及び前記上層吸収部は少なくとも下層吸収部側の面から、それぞれ排泄物を吸収するように構成され、
前記上層吸収部は、尾骨対向部の前側をなす上層前側部分と、上層前側部分よりも後側であって尾骨対向部を含む上層後側部分とから構成され、
少なくとも前記上層前側部分は、幅方向中央に対して左側に位置する左側部分、及び右側に位置する右側部分からなり、これら左側部分の幅方向中央側の側縁及び右側部分の幅方向中央側の側縁の離間部分には、下層吸収部が露出しており、
前記左側部分及び右側部分は、幅方向外側の側縁部が前記下層吸収部の表面に対して固定され、この固定部よりも幅方向中央側の部分では少なくとも前端部以外の部分が前記下層吸収部の表面に対して固定されていない自由部分とされており、
前記上層前側部分には、前記左側部分及び右側部分のそれぞれにおける前記自由部分の前記下層吸収部側に、隆起用弾性伸縮部材が前後方向に伸長した状態で固定されており、
これら左側部分及び右側部分の隆起用弾性伸縮部材は、前記左側部分及び右側部分の各自由部分のうち、内腿対向部及び裏腿対向部の少なくとも一方に設けられ且つこれ以外の部分に設けられていない、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記左側部分及び右側部分が幅方向にアーチ状をなしている、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記左側部分及び右側部分は、幅方向外側の側縁部が前記下層吸収部の表面に対して固定され、この固定部よりも幅方向中央側の部分では前端部は前記下層吸収部の表面に対して固定されるものの前端部以外の部分は前記下層吸収部の表面に対して固定されていない自由部分とされ、且つこの自由部分の幅方向中央側の縁部に、先端部弾性伸縮部材が各縁部に沿う方向に伸長した状態で固定されており、
前記上層前側部分は、前記左側部分の幅方向中央側の側縁及び右側部分の幅方向中央側の側縁が、後端部では一致又は近接するとともに、後端部から前側に向かうにつれて離間距離が拡大しつつ装着者の脚の付け根に沿って鼠径部に達するように形成されており、
前記上層後側部分と前記下層吸収部との間が、前記上層前側部分における左側部分と右側部分との離間部分を入口とするポケットとして構成されている、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記上層吸収部は、上層吸収体と、上層吸収体における下層吸収部側の反対側を覆う液不透過性シートとを有するものである、請求項3記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−194152(P2011−194152A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66831(P2010−66831)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】